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7 家出・行方不明[PDF形式46KB]

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7 家出・行方不明[PDF形式46KB]
7 家出・行方不明
事例
事例Ⅰ
A男は、入学した頃から喧嘩が多く、カッとなるとなかなか自分を押さえることができませんでした。5年生に
なり、クラス替えで新たな人間関係がうまく作れず、A男なりに悩んでいる様子が見受けられました。ある日
の給食の時間、ほんの些細なことから友だちと喧嘩になり、「ちくしょー!俺なんかどうなってもいいんだ!」
と叫びながら、ドアを蹴って教室を飛び出していきました。担任をはじめ学校の周りを探しましたが、放課後
になってもA男の所在はつかめませんでした。
事例Ⅱ
中学2年生のA男は、家庭では保護者、特に母親のしつけが厳しく、小学校低学年のころから母親にきつ
く叱られると家を飛び出し、家の近くの公園やマンションの踊り場などで一夜を明かすことがたびたびありま
した。このような様子を心配した近所の方が交番に連絡するといったこともあったようです。
5月の大型連休が明けた頃、A男が登校しなかったので担任が朝学活後、母親に連絡したところ、A男は
前夜から家を出たまま帰ってきていないとのことでした。詳細を尋ねると、卒業生の家に泊まりに行くことに
反対され、母親に叱られたA男は「勝手にしてやる」と言い残して、夜8時ごろ家を出て行ったということがわ
かりました。母親は父親にも相談しましたが、心配しながらもいつものことと思っていたようです。
事例Ⅲ
中学3年生のC子は、勉強が苦手で気の合う友人も少ないことから、学校生活に興味を失い、2年生の後
半から登校しなくなりました。家庭では、昼夜逆転の生活を送り、興味のあるバンドの応援に夢中になってい
るようでした。母親は、そんなC子の様子をさして気にとめる様子も見せず、「あの子のやりたいようにさせて
います。」と答えるばかりでした。夏休みが終わった頃、母親から、「実はC子が2週間ほど家に帰ってきてい
ない」との連絡がありました。バンドの追っかけをして知り合った成人男性から、C子の携帯電話に度々連絡
が入っていることは母親も知っていました。
原
原因
因・・背
背景
景
家出の背景として、保護者の過干渉・放任等の養育態度の問題、家庭や学校での人間関係の葛藤や
不適応、本人自身の不安や悩み、怠学等の問題が考えられます。思春期には、自由や独立へのあこが
れを持ちやすく、このような心性が家出に結びつきやすくなります。
最近では、家庭でちょっとしたトラブルがあるとすぐに家出し、数日間で帰宅するといういわゆる「プチ
家出」も多く見られるようになりました。しかし、家出中に誘拐されたり、繁華街への出入りや出会い系サ
イト等の利用によって性犯罪の被害者(福祉犯罪の被害者)になる場合など、大変心配される状況が増
えてきています。また、不健全な交友関係の拡大や窃盗・恐喝・暴行・傷害などの犯罪の加害者になる場
合、さらに薬物乱用などの危険性も懸念されます。
中学校生徒指導専任教諭協議会の報告でも、かなり多くの家出・行方不明者が報告されています。
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対
対
応
応
基本方針
□ 最悪の場合を想定して、児童生徒の安全確保を最優先し、組織的に対応する。
*「命」の危険性や「犯罪被害」に巻き込まれる可能性がある事案としてとらえる。
□ 正確な情報の把握と、情報の管理に努める。
*発生状況、背景として考えられること、出席状況、行動特性、服装、所持金、所持品、友人関係、卒
業生を含めた交友関係、携帯電話やメールの内容など
□ 保護者と協働し、その意向を踏まえた上で、プライバシーに配慮した対応に心がける。
□ 状況を判断し、保護者に警察への情報提供や捜索願(特異家出人)の提出を促す。
□ 発見・帰宅後、保護者や学校が児童生徒を円滑に受け入れやすい環境を整備する。
□ 警察や児童相談所等関係機関と連携して長期的な支援体制を確立する。
校内体制
【初期対応】
□ 対策チームを編成し、全職員への情報提供と情報管理の徹底を図る。
□ プライバシーに配慮しながら家庭訪問等を実施し、組織的に情報を収集する。
*保護者や交友関係のある児童生徒・塾関係者等からの情報、学校近隣の施設(地区センターやコ
ンビニなど)への出入りや目撃情報等
*情報の収集等、学校の方針については、当該保護者の意向を確認することが必要である。
□ 捜索チームを編成し、地域パトロール等を実施する。
*行動特性等を踏まえた捜索方面の決定、本部への連絡方法の確認、時間による段階的な体制の
縮小等
□ 保護者や警察と緊密に連携を図る。
□ 時間経過や状況に応じて、学校説明会やマスコミ等への発表も想定する。
【中・長期的な対応】
□ 行方不明が長期に及ぶ可能性や不測の事態に備え、適切に職員体制を編成(調整)する。
□ 発見時の状況をシュミレーションし、さまざまな場合についての対応策を検討する。
□ 帰宅後、保護者や学校が子どもを円滑に受け入れられる環境を整備する。
□ 学校や家庭の環境を調整しそれぞれの「居場所」を確保する中で、継続して指導を行う。
□ 教育相談体制を整備し、子どもたちが悩み事や相談事を打ちあけやすい校内環境を構築する。
□ 警察や児童相談所等関係機関と連携して長期的な支援体制を確立する。
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本人への対応
【発見後】
□ 行為に至った心情や背景、交友関係や家庭での様子などを把握する。
□ 課題を明確にする中で、適切に教育相談等を実施する。
□ 学校や家庭の環境を調整しそれぞれの「居場所」を確保する中で、課題の解決にむけて指導を継
続する。
*再発する可能性も考慮する。
□ 必要に応じて、児童相談所、警察等の外部機関との連携を図る。
保護者との協力
【発生直後の対応】
□ 誠意を持って対応し、保護者の心情に配慮しながら情報の収集に努める。
□ 状況を判断し、保護者に警察への情報提供や捜索願の提出を促す。
□ 家庭と常に連絡が取れる状況を確保し、情報を共有する(朝・昼・夜の定時連絡など)。
□ 児童生徒の帰宅(発見)時における家庭での受け入れ環境を調整する。
【中・長期的な対応】
□ 児童生徒・家庭・学校が協働して再発防止等に取り組めるよう、連携を強化する。
専門機関との連携
□
市教委(区派遣指導主事)へ第一報を入れ適切な連携を図る。
□
適宜、当該児童生徒に関する情報を提供するなど、警察と緊密な連携(子どもの身の安全を確
保)を図る。
*事件性がある場合など、警察から学校の対応について一定の要請(「一切、捜索活動を行わな
い」ことや、情報管理の徹底の要請等)が行われる場合もある。
□
児童相談所との連携(今後の家庭状況へのアプローチ、一時保護の可能性)を図る。
□
「協定書」の趣旨を踏まえ、健全育成、犯罪被害防止などの観点から、継続して警察との相互連携
を行う。
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用語・関連法規等
特異家出人
○ 少年の福祉を著しく害する犯罪(少年を虐待し、酷使し、又は有害な業務に就かせる等の悪質
なものをいう。)の被害にかかるおそれのある家出人
○ 遺書、平常の言動その他の事情からみて、自殺するおそれのある家出人
○ 病人、老齢者、おおむね 13 歳以下の年少者等で、家出後自力で生活する能力がないため、そ
の生命又は身体に危険が及ぶおそれのある家出人 等(該当する要件は7項目)
ぐ は ん
虞犯少年(少年法第3条)
次に掲げる事由があって、その性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる
おそ
行為をする虞れのある少年
イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること
ロ
正当な理由がなく家庭に寄りつかないこと
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入りすること
ニ
自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること
不良行為少年(少年警察活動規則第2条)
非行少年には該当しないが、喫煙、飲酒、深夜はいかい、その他自己又は他人の徳性を害する行
為をしている少年をいう。
深夜はいかいの制限(神奈川県青少年保護育成条例第5条)
保護者は、特別の事情がある場合の他は、青少年を深夜(午後11時から午前4時まで)に外出させ
てはならない。
コ ラ ム
【警察への情報提供について②】
行方不明等で保護者が警察に捜索願を提出し、警察が学校に情報提供を求めたとき、学校長や対応し
た職員が横浜市個人情報保護条例等を根拠に、情報の提供を拒む事例が見られます。もちろん、情報提
供を求めている相手が捜査機関(警察)である確認は当然必要ですが、これは、「個人情報の利用及び提
供の制限」の解釈において大きく取り違えをしています。幸い、今までのところ、このような誤った対応で、
大事に至ったケースは確認されていませんが、横浜市個人情報保護条例の主旨を十分に理解し、適切な
対応が望まれるところです。警察との信頼関係にも傷がつきかねません。
個人情報の利用及び提供の制限(横浜市個人情報の保護に関する条例第 10 条)
実施機関は、保有個人情報を利用目的以外の目的(以下「目的外」という。)のために、当該保有個人情
報を当該実施機関の内部において利用し、又は当該実施機関以外のものに提供してはならない。ただ
し、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
1 対教師暴力「用語・関連法規等」参照
(1) 法令等の定めがあるとき。(刑事訴訟法第197条2項など)
(4) 人の生命、身体又は財産を保護するため、緊急かつやむを得ないと認められるとき。
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