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【参考5】 民事訴訟法第248条について

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【参考5】 民事訴訟法第248条について
【参考5】民事訴訟法第248条について
(損害額の認定)
第二百四十八条 損害が生じたことが認められる場合において、損害の性質上
その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全
趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。
○立法趣旨について
第248粂では、損害が発生したことが認められる場合において、損害の
性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所が相当な損
害額を認定することができる旨を定め、もって証明度の軽減を規定していま
す。
損害賠償請求訴訟においては、損害の発生および損害額についての立証責
任が原告にあるため、原告が損害の発生について立証しても、損害額に関す
る立証が効を奏しない場合には、請求が棄却されることになります。このよ
うに、損害が生じたことは認められるが、その性質上、損害額を算定する根
拠につき個別的、具体的な立証が困難であるため、損害額の立証が客観的に
極めて困難な場合には、損害額について厳格な立証を要求すると、原告にと
って不当に不利益になることがあります。そこで、本条の規定を設け、裁判
所は、口頭弁論の全趣旨および証拠調べの結果に基づき\、相当な損害額を認
定することができることとしています。
O「損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるとき」について
判例は、従来から、性質上その額を立証することが極めて困難な類型の損
害である慰謝料について、
諸般の具体的事情を考慮して裁判所が妥当と考え
る金額を示せば足りるとしてきました。
また、同様に、事故により死亡した幼児の将来得べかりし利得を喪失した
ことによる損害の額について、判例(最判昭和39年6月24日民集18巻
5号874頁)は、あらゆる証拠資料に基づき、経験則と良識を活用して、
できる限り蓋然性のある額を算出すべきであり、また、蓋然性に疑いが持た
れるときも、被害者側にとって控え目な算定方法を採用するなどし、算定不
可能として一概に請求を排斥すべきでないとしています。
このように、実務上も、損害の性質上その額を立証することが極めて困難
である場合に適正な損害額を認定することを可能にする考え方が採用されて
いますし、学説もこれを支持しています。
第248条は、このような実務上の考え方を明文化し、原告にとって不当
に不利益な事態が生じないようにすることとしているのです。
(法務省民事局参事官室編『一間一答新民事訴訟法』社団法人商事法務研究会
(平成8年)287、288頁)
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【参考6】事実上の推定について
○事実上の推定とは
事実上の推定は、裁判官の自由心証によって立証主題たる事実について確
信が形成される過程を示すものであり、法律上の推定と異なって、法律要件
事実についての証明責任の転換をもたらすものではない。したがって、要件
事実について証明責任を負う当事者は、裁判官の確信を形成しない限り、法
規不適用の危険を免れないし、逆に相手方は、当該事実についての心証を真
偽不明に追い込むだけで法規の適用による法律効果の発生を妨げられる。
事実上の推定が成立するかどうかは、証拠及び間接事実の証明力、ならび
に経験則の蓋然性との間の相対的関係によって決定される。たとえば、手元
不如意の状態にある借主が、貸主が金銭授受が行われたと主張する日時の直
後にそれに相当する金額をもって第三者に弁済を行った間接事実が認められ
れば、裁判所は、他に特段の事情が認められない限り、金銭授受の事実を確
信することが許されよう。反証の負担を負う借主としては、別の者から融資
を得たなど、他の間接事実を裁判所に確信させない限り、上の事実上の推定
を覆すことは困難である。このように二 証明責任を負わない当事者が主要事
実の反証にあたって、その基礎となる間接事実について裁判所の確信を形成
する負担を負うことがあるが、これは証明責任と矛盾するものではない。
(伊藤眞『民事訴訟法』[第3版]有斐閣(2004年)330∼331頁)
○どのような事実から「平均的な損害」を推定するか
事実上の推定の活用による場合には、どのような事実から平均的損害を推
定するかが問題となるが、業界一般における平均的損害や、当該事案におけ
る実線軍等が考えられよう(裁判例⑲は、大学側は入学辞退者が一定割合存
在することを前提に人的・物的整備をするなど入学辞退による損害の回避措
置を講じているという事実から、大学には平均的損害は存在しないとの事実
を推定したようである。)。
(太田雅之「消費者契約法の適用−その現状と課題−」判例タイムズ121
2号52頁)
○訴訟運営上の留意点について
・主張レベルにおいて
消費者側において、一定金額の平均的損害を主張する場合又は平均的損害
が0であると主張する場合には、その主張の根拠として、解除の時期、事由
等に照らして具体的に理由を主張すべきであることは言うまでもない。
また、相手方の主張する事実を否認する場合には、その理由を記載しなけ
ればならないのは明らかであるから(民訴規79条4項)、例えば、消費者が
平均的損害はないと主張し、事業者側がこれを否認する場合においても、享
業者は、単に「否認する」あるいは「争う」と認否するだけではなく、その
理由として、卿(少なくともいかなる種類の損害がど
の程度発生するのか)にまで踏み込んだ認否をすべきであろう。このことは、
31
事業者には、消費者契約の締結段階においてすら、消費者の権利義務につい
ての必要な情報を提供する努力義務があること(消費者契約法3条1項)に
鑑みれば、当然である※。
裁判所としては、平均的損害に関する消費者の主張あるいは事業者の認否
が不十分なものである場合には、釈明権(民訴149条1項)を適切に行使
して、主張及び認否を促すべきであろう。その際には、生じることが想定さ
れ得る損害の項目について、一つ一つ指摘し、具体的主張及び詳しい認否が
なされるよう留意する必要がある。
・立証レベルにおいて
消費者側において、調査、提出できる証拠を提出すべきことは論を待たな
い。
また、事業者も、消費者契約法3条の趣旨等を踏まえて、反証として証拠
を提出すべきであろう※※。
裁判所としても、平均的損害に関する消費者あるいは事業者の立証活動が
不十分なものである場合には、釈明権を適切に行使して、立証活動を促すべ
きであろう。
※ 同条からすれば、事業者は、本来、契約締結時において、損害賠償額の予定あるいは違約金という、
消費者にとって重要な事項について必要な情報を提供するよう努力すべきものである。したがって、盤
に、契約締結時に情報提供がなされていなかったとしても、少なくとも、平均的損害の有無・金額が現
実に間穎となった場面では、必要な情報を提供するよう努めなければならないと解される。
※※ 裁判例を見ると、事業者が全く証拠を提出しない等の訴訟活動をすることがままあるようである。
現に、筆者も、民事訴訟において、代理人が、「立証責任は相手方にある」と述べて何ら反証活動をしな
いという行動をとることをしばしば体験する。しかしながら、立証責任とは、口頭弁論終結時点で、「あ
る要件事実の存在が真偽不明に終わったために当該法律効果の発生が認められないという不利益又は危
険」を意味するものであり、立証責任が相手方にあるということは、自らは何らの反証活動をしなくて
よいという意味ではないことが特に留意されるべきである。
(朝倉佳秀「消費者契約法9条1号の規定する『平均的損害』の主張・立証責
任に関する一考察一間題点の検討を裁判例の紹介−」判例タイムズ1149号
34頁)
32
【参考7】文書提出命令について
○法務省民事局参事官重箱『一間一答新民事訴訟法』(商事法務研究会、19
96年)42頁
Q133 第220条において、文書提出義務につき、どのような改正がされ
ましたか。
1.旧法は、文書提出義務の対象となる文書を限定列挙していました(旧31
2条各号)。すなわち、当事者が訴訟において引用した文書(第1号)、挙証者
が引渡し請求権または閲覧請求権を有する文書(第2号)、挙証者の利益のため
に文書および挙証者と所持者との法律関係につき作成された文書(第3号)に
限って、文書の所持者は、提出義務を負うものとしていました。このため、わ
が国の裁判権に服する者は誰でも一般的に証人として尋問を受ける義務を負う
ものとされ、証人義務が一般義務と呼ばれているのに対し、文書提出義務は限
定義務であるといわれていました。
しかし、争点の整理に向けて当事者が十分な訴訟準備をすることができるよ
うにするとともに、争点についての審理を充実させるためには、当事者が自分
の手持ち証拠だけはなく、相手方や第三者の手中にある証拠に対しても、もう
少しアクセスすることができるようにする必要があると考えられます。また、
旧法の文書提出命令の制度は、証拠が一方の当事者に偏在している事件におい
て当事者の実質的対等を確保するための証拠収集の手段として十分でないと指
摘がされていました。
2.そこで、新法は、第220条において、第4号を追加し、旧法の規定をそ
のまま踏襲した第1号から第3号までの場合のほか、文書(公務員または公務
員であった者がその職務に閲し保替し、または所持する文書を除きます。)が第
4号のイ、ロおよびハの文書のいずれにも該当しない場合にも、文書の所持者
は提出義務を負うものとし、文書提出義務を一般義務化しました。すなわち、
第4号では、第1号から第3号までのように当事者と文書との間に特別の関係
等があるかどうかということを問題としないで、イ、ロおよびハの文書を除き、
訴訟に協力する国民一般の義務として、文書の所持者は提出義務を負うものと
したわけです。
Q134 文書提出義務について、旧法の制限列挙主義を改め、これを一般義
務としたのは、なぜですか。
法制審議会における審議では、文書提出義務の対象文書の範囲を拡大する方
法および程度について、
2つの方向が議論されました。1つは、証人義務(第
190条)と同様に文書提出義務を一般義務化する考え方であり、他の1つは、
旧法第312条が採用する制限列挙主義を維持しつつ第3号の利益文書・法律
関係文書の範囲を拡大する考え方です。関係各界に対する意見照会の結果でも、
文書提出義務の対象文書の範囲の拡大については賛成の意見が多数を占めまレ
たが、その方法や程度については意見が分かれました。弁護士会を中心に前者
の考え方に賛同する意見が多数でしたが、経済団体や金融機関を中心に、後者
33
の考え方に賛同する意見も相当数寄せられました。後者の意見は、一般義務化
の導入に慎重な検討を求めるものでしたが、その主要な理由の1つとして、提
出義務を一般義務とすると、文書提出命令が濫用されて文書の所持者が不利益
を受けるおそれがあることを挙げていました。
しかし、旧法第312条第3号は、19世紀のドイツ民事訴訟法の「共通文書」
(挙証者と所持者の共同の利益のために、あるいは共同の事務遂行の過程で作
成された文書)について提出義務を認めるという考え方を採り入れたものであ
るといわれています。このため、この利益文書・法律関係文書という概念を拡
張するといっても、それにはおのずと限界がありますし、その外延が一層不明
確になるという問題があるように思われます。また、旧法の下でこれらの文書
の範囲を拡大解釈する見解の中では、秘密やプライバシー
を保護するために証
言拒絶事由を類推適用する見解が有力ですが、提出義務の対象文書の範囲を拡
大することに伴って提出拒絶事由を明文化しなければならないとすると、条文
上はかえって提出義務の範囲を限定したかのような体裁になりかねません。そ
もそも、社会や経済の発展に伴い、権利関係は複雑化・多様化しており、これ
をめぐる紛争の態様にも様々なものが現れています。したがって、起こり得冬
あらゆる形態の訴訟において必要となり得る文書をあらかじめ具体的に想定し、
それを網羅的に列挙することは、技術的にも困難であると考えられます。
そこで、新法は、文書提出命令の濫用等の弊害が生じないように配慮しつつ、
文書提出義務を一般義務化す
(参考)民事訴訟法(平成八年六月二十六日法律第百九号)
(文書提出義務)
第二百二十粂 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。
一 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。
二 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。
三 文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係につ
いて作成されたとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。
イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同
条に規定する事項が記載されている文書
口 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に
著しい支障を生ずるおそれがあるもの
ハ 第百九十七粂第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が
免除されていないものが記載されている文書
二 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあって
は、公務員が組織的に用いるものを除く。)
ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件におい
て押収されている文書
34
【参考8】当事者照会について
第5章 訴訟の事理
第4節 口頭弁論およぴその準備
第3項 口頭弁論の準備
3 当事者照会
当事者照会制度は、争点論理の前提となる事実主張や証拠提出の準備につい
て、釈明権行使などの裁判所の機能の発動によらず、当事者間の直接の応答に
よってこれを行うことを可能にするとの目的をもったものである。この制度は、
当事者間の自主的情報交換によって、争点整理についての裁判所の負担を軽減
するという機能をもつ。
当事者照会の対象事項は、当事者が主張または立証を準備するために必要な
事項のすべてにわたすが、法(163条1号∼6号)は、以下のような照会に
ついては、相手方の回答義務を否定する。第1は、主張または立証の準備の目
的に合敦しない照会である。具体的または個別的でない照会、相手方を侮辱し、
または困惑させる照会、すでにした照会と重複する照会、意見を求める照会が
この類型に属する。第2は、相手方に不当な負担を生じさせる照会である。相
手方が回答するために不相当な費用または時間を要する照会がこれに属する。
第3は、証言拒絶権によって保護される事項についての照会である。
当事者照会の手続は、以下のようなものである。照会は、訴訟の係属中相手
方に対して照会書を送付することによって行われる。照会書には、当事者およ
び代理人の氏名などのほか、照会事項、照会の必要性、回答期間などが記載さ
れ、照会事項は、項目を分けて記載されなければならない。照会に対する回答
も書面によってなされ、その内容も照会事項の項目に対応して記載されなけれ
ばならない。なお、照会事項が法163条各号に該当することを理由として回
答を拒絶する場合には、その条項を記載しなければならない。
当事者照会は、裁判所が関与して行われるものではなく、したがって、旦笠
拒絶が正当なものであるかどうか叫、て蓼判所の判断が示される余地はなく、
また、不当な回答拒絶に対する制裁も予定されていない。したがって、盟会皇
室畳輝明極の往壁など
を求める以外にない。しかし、訴訟法上の義務として回答義務が存在する以上、
正当な理由なくその履行を拒絶することは、当事者に課される信義誠実訴訟追
行義務に違反するし、また、代理人たる弁護士については、弁護士倫理違反空
間題も生じうる。
(伊藤眞『民事訴訟法』(有斐閣、2003年)237頁)
35
(参考)民事訴訟法(平成八年六月二十六日法律第百九号)
(当事者照会)
二三四五六
第百六十三条 当事者は、訴訟の係属中、相手方に対し、主張又は立証を準備するために
必要な事項について、相当の期間を定めて、書面で回答するよう、書面で照睾をすること
ができる。ただし、その照会が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
具体的又は個別的でない照会
相手方を侮辱し、又は困惑させる照会
既にした照会と重複する照会
意見を求める照会
相手方が回答するために不相当な費用又は時間を要する照会
第百九十六条又は第百九十七条の規定により証言を拒絶することができる事項と同
様の事項についての照会
36
【参考9】提訴前の証拠収集について
第11講 民事訴訟法の平成15年改正
二 証拠法一提訴前の証拠収集、鑑定その他
訴えを提起しようとする者が、被告となるべき者に対して訴えの提起を予告
する通知(法文では、予告通知と呼ぶ)をすることによって、4カ月以内に限
り、当事者照会と文書の送付嘱託、調査嘱託、専門家の意見陳述、執行官の現
況調査を、提訴前に求めることができることとなった(132条の2以下)。
被告と予定された者も、予告通知に対して答弁の要旨を記載した書面で返答
したときは、反対方向で当事者照会と文書送付の嘱託等々を求めることができ
る(132条の3)。これらは、提訴前の証拠収集の拡充と位置づけることが
できる。証拠に限定されない情報一般の収集を規定したいというのが私の発想
であるが、改正法もまだ証拠収集という段階にとどまっている。
(略)
予告通知を出すと、第一に、訴えを提起した場合の主張または立証を準備す
るために必要であることが明らかな事項について、書面で回答するよう照会す
ることができることとなった。提訴後の当事者照会(163条)を、提訴前に
前倒しで実施できるようにしたものである。照会できない事項の規定が相手方
等のプライバシー
、営業秘密を含むというように、提訴後のものより拡大され
ているが、これは提訴前であることを考慮して慎重に規定したからであろう。
しかし、提訴後の当事者照会と実質が変わるものでもないはずである(提訴後
では、解釈論として限定されるべきである)。ところで、私のまわりの弁護士
には結構利用しているという人が少なくないのであるが、提訴後の当事者照会
はあまり利用されていないと一般的に言われている。その原因は、提訴後であ
れば釈明を裁判所に求めた方が早いからだという。そうだとすると、提訴前に
は裁判所の釈明はありえないから、提訴前の当事者照会は使われることになろ
う。また、現在でも、提訴前に内容証明郵便を使って弁護士同士で事実上の情
報交換がなされることがあるから、それがこの提訴前の当事者照会に移行する
とすれば、かなり利用されることとなろう仁
(高橋宏志『重点講義民事訴訟法(下)』(有斐閣、2005年)545頁
37
(参考)民事訴訟法(平成八年六月二十六日法律第百九号)
(訴えの提起前における照会)
第百三十二条の二 訴えを提起しようとする者が訴えの被告となるべき者に対し訴えの
提起を予告する通知を書面でした場合(以下この章において当該通知を「予告通知」とい
う。)lこは、その予告通知をした者(以下この章において「予告通知者」という。)は、
その予告通知を受けた者に対し、その予告通知をした日から四月以内に限り、訴えの提起
前に、訴えを提起した場合の主張又は立証を準備するために必要であることが明らかな事
項について、相当の期間を定めて、書面で回答する、よう、書面で照会をすることができる。
ただし、その照会が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一
第百六十三条各号のいずれかに該当する照会
二 相手方又は第三者の私生活についての秘密に関する事項についての照会であって、こ
れに回答することにより、その相手方又は第三者が社会生活を営むのに支障を生ずるおそ
れがあるもの
三 相手方又は第三者の営業秘密に関する事項についての照会
2 前項第二号に規定する第三者の私生活についての秘密又は同項第三号に規定する第
三者の営業秘密に関する事項についての照会については、相手方がこれに回答することを
その第三者が承諾した場合には、これらの規定は、適用しない。
3 予告通知の書面には、提起しようとする訴えに係る請求の要旨及び紛争の要点を記載
しなければならない。
4 第一項の照会は、既にした予告通知と重複する予告通知に基づいては、することがで
きない。
第百三十二条の三 予告通知を受けた者(以下この章において「被予告通知者」という。)
は、予告通知者に対し、その予告通知の書面に記載された前条第三項の請求の要旨及び紛
争の要点に対する答弁の要旨を記載した書面でその予告通知に対する返答をしたときは、
予告通知者に対し、その予告通知がされた日から四月以内に限り、訴えの提起前に、訴え
を提起された場合の主張又は立証を準備するために必要であることが明らかな事項につい
て、相当の期間を定めて、書面で回答するよう、書面で照会をすることができる。この場
合においては、同条第一項ただし書及び同条第二項の規定を準用する。
2 前項の照会は、既にされた予告通知と重複する予告通知に対する返答に基づいては、
することができない。
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【参考10】他の制度について
○不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年五月十五日法律第百三十四号)
(不当な表示の禁止)
第四条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号に
掲げる表示をしてはならない。
−∼三 (略)
2 公正取引書鼻会は、前項第一号に該当する表示か否かを判断するため必要
があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該
表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、第六条第一
項及び第二項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみ
なす。
商品又は役務の効果や性能について、実際のものや競争事業者に係るものよ
りも著しく優良であると→般消費者に誤認される表示が行われた場合、公正取
引委員会は、このような不当表示を排除する行政処分を行うため、調査により、
当該商品又は役務の内容が表示どおりでないことを立証することが必要となる。
しかし、このような立証を行うためには、専門機関による調査・鑑定などが必
要なことから多大な時間を要し、その間も当該商品又は役務が消費者に販売・
提供され続ければ、消費者被害が拡大するという問題がある。
ところで、事業者が商品又は役務の効果や性能の著しい優良性を示す表示を
行った場合、一般消費者は、当該商品または役務には表示どおりの効果や性能
があると認識するほか、通常、事業者がその効果や性能を裏付けるデータ等の
根拠を有しているものと期待するであろう。また、効果や性能の著しい優良性
を示す表示は、一般消費者に対して強い訴求力を有しており、顧客誘引効果も
高い。
このため、このような表示を行う事業者は、当該表示内容を裏付ける合理的
な根拠をあらかじめ有しているべきであり、また、そのような合理的な根拠を
事業者が有していない場合は、実際の商品又は役務に表示どおりの効果や性能
がある可能性は低い。したがって、合理的な根拠無く商品又は役務の効果や性
能の著しい優良性を示す表示は、結果的な表示内容の真偽はともかく、これを
迅速に規制することが必要である。
以上のようなことから、合理的な根拠なく商品又は役務の効果や性能の著し
い優良性を示す表示を迅速に規制できるようにするため、第4条第2項の規定
が設けられている。本規定は、公正取引委員会による調査や立証の手続に関す
る規定であるが、同時に、事業者は合理的な根拠なく商品又は役務の内容に関
する著しい優良性を示す表示を行ってはならないという実態的な内容を有して
いる。
(菅久修一『景品表示法』(商事法務、2005年)60頁)
39
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