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骨盤内臓器の位置評価における体位の影響の検討 The

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骨盤内臓器の位置評価における体位の影響の検討 The
滋賀医大誌
26(1), 17-22, 2013
骨盤内臓器の位置評価における体位の影響の検討
正木
二宮 早苗 1), 2),森川 茂廣 3),遠藤 善裕 2),
紀代子 2),斉藤 祥乃 4),土川 祥 5),森 みどり 4),岡山
1)
2)
3)
4)
5)
久代 2)
京都光華女子大学 健康科学部看護学科
滋賀医科大学 医学部看護学科 臨床看護学講座
滋賀医科大学 医学部看護学科 基礎看護学講座
滋賀医科大学大学院 医学系研究科
滋賀医科大学医学部附属病院 母子・女性診療科
The influence of posture on evaluation of pelvic organ position
Sanae NINOMIYA1), 2), Sigehiro MORIKAWA3), Yoshihiro ENDO2), Kiyoko MASAKI2),
Yoshino SAITO4), Sachi THUCHIKAWA5), Midori MORI4) and Hisayo OKAYAMA2)
1) Department of Nursing, Kyoto Koka Women’s University
2) Department of Clinical Nursing, Shiga University of Medical Science
3) Department of Fundamental Nursing, Shiga University of Medical Science
4) Graduate School of Medicine, Shiga University of Medical Science
5) Shiga University of Medical Science Hospital
Abstract The influence of the gravity should be considered for the evaluation of pelvic organ positions. This study
investigated the influence of posture on pelvic organ positions. Bladder neck position and mobility, and internal uterine os
position in the supine, sitting, and standing postures were compared in 9 parous women (28–48 years). Sagittal T1-weighted
images and T2-weighted images of the pelvis were acquired for evaluating the bladder neck position at rest and at pelvic
strain, and the internal uterine os position at rest, respectively, using a GE SIGNA SP/2 open-configuration magnetic
resonance system. The distance from the pubococcygeal line to the bladder neck and the internal uterine os were measured,
and both of positions were shown as being higher (+) or lower (-) than the pubococcygeal line. Median bladder neck
position in the supine posture at rest was +15.6 mm (range, +9.3 – +23.4). The bladder neck position was significantly lower
in the sitting than in the supine (difference, 6.9 mm; 95% CI, 3.6 to 13.6 mm; p < 0.016) or standing (difference, 15.2 mm;
95% CI, 10.0 to 22.9 mm; p < 0.016) postures. Similarly, the internal uterine os positions were also low in the order of
supine, sitting, and standing postures. The position of bladder neck and internal uterine os showed positive correlation (r =
0.63 to 0.88, p < 0.01). Bladder neck mobility did not differ among postures. But, the bladder neck position at pelvic strain
was also low in the order of supine, sitting, and standing postures. Thus, we suggest that the posture should be considered
for the evaluation of pelvic organs.
Key word pelvic relaxation, position of pelvic organ, mobility of bladder neck, magnetic resonance, parous women.
Received: January 15, 2013.
Accepted: February 15, 2013.
Correspondence: 京都光華女子大学 健康科学部看護学科
二宮 早苗
〒615-0082 京都市右京区西京極葛野町 38
- 17 -
[email protected]
二 宮 早 苗 ほか
32 秒 間 で 撮 像 し た 。撮 像 に は 造 影 剤 を 用 い ず 、膀 胱 に
は じめ に
尿が充満した状態で行った。また、各体位の撮像はそ
れ ぞ れ 10 分 間 程 度 で あ り 、1 時 間 以 内 に す べ て の 撮 像
女性の骨盤底は、その解剖学的特性に加えて、妊
娠・分娩、肥満、加齢、閉経などの影響を受け弛緩し
を終えるように配慮した。
やすい。骨盤底が弛緩すると、骨盤内臓器は下垂し、
膀 胱 頸 部 の 位 置 は 、T 1 強 調 の 3 画 像 の う ち 正 中 の 画
腹 圧 性 尿 失 禁 ( Stress Urinary Incontinence; SUI) や 骨
像を選択し、恥骨下端と第 2 尾骨を結ぶ恥骨尾骨ライ
盤 臓 器 脱 ( Pelvic Organ Prolapse; POP) な ど を 引 き 起
ン ( Pubococcygeal Line, 以 下 PC ラ イ ン と す る ) を 基
こ す [1]。SUI や POP の 症 状 は 、日 中 活 動 時 に 生 じ や す
準点(0 点)として、膀胱頸部までの垂直距離を計測
く臥床時に生じにくいことから、重力の影響が大きい
し [6]、 PC ラ イ ン よ り 頭 側 を ( +)、 足 側 を ( - ) と し て
と考えられる。したがって、骨盤内臓器の位置を評価
表した。膀胱頸部の可動性は、安静時を基準とした腹
するには、重力のかかる方向、すなわち体位を考慮す
圧負荷による足側への下垂量とした。内子宮口の位置
る必要性があると推察される。しかし、画像診断法で
は 、T 2 強 調 の 5 画 像 の う ち 正 中 の 画 像 を 選 択 し 、膀 胱
は、座位や立位などの体位における評価は難しく、臥
頸 部 の 位 置 と 同 様 に PC ラ イ ン か ら 内 子 宮 口 ま で の 垂
位 で の 評 価 が 一 般 的 で あ る [2]。滋 賀 医 科 大 学 で は 、臥
直距離を計測した。計測はすべて、1 人の研究者が行
位のみでなく、座位や立膝位(以下,立位とする)で
い 、1 画 像 に つ き 2 度 計 測 し 、そ の 平 均 値 を 算 出 し た 。
の撮影が可能なオープン核磁気共鳴画像装置
得られたデータの解析には、統計パッケージソフト
( Magnetic Resonance Imaging,GE Healthcare 社 製 ,0.5
SPSS20.0 J for Windows を 用 い た 。基 本 統 計 量 の 算 出 を
テ ス ラ SIGNA SP/2,以 下 オ ー プ ン MR と す る )を 有 し
行 い 、 各 体 位 間 の 比 較 に は Wilcoxon Signed-ranks test
て お り 、女 性 の 骨 盤 内 臓 器 の 位 置 や SUI の 評 価 に 関 す
を 用 い た 後 、 多 重 比 較 法 と し て Bonferroni の 補 正 に よ
る 研 究 を 行 っ て い る [3-4]。 本 研 究 で は 、骨 盤 内 臓 器 の
り 有 意 水 準 を α = 0.05/ 3 = 0.016 と し た 。ま た 、各 体 位
位置評価における体位の影響を検討することを目的と
の 差 の 区 間 推 定 に は Hodges - Lehman estimator を 用 い
し て 、MRI 画 像 を 用 い て 臥 位 ・ 座 位 ・ 立 位 に お け る 膀
た。同体位における安静時と腹圧負荷時の比較には
胱頸部の位置と可動性、内子宮口の位置を比較検討す
Wilcoxon Signed-ranks test、各 体 位 の 位 置 の 関 連 性 の 分
ることとした。
析 に は Spearman の 順 位 相 関 係 数 を 用 い 、い ず れ も 有 意
水 準 を p = 0.05 も し く は p = 0.01 と し た 。
本研究は、ヘルシンキ宣言に則り、対象者のインフ
方法
ォームドコンセントを得て行った。また、滋賀医科大
分 娩 経 験 を 有 す る 20~ 40 歳 代 の 一 般 女 性 9 名 を 対
学 倫 理 委 員 会 の 承 認 を 得 た ( 23-119-1)。
象とした。対象の選定基準は、最終分娩後 1 年以上経
過 し 、 Body Mass Index が 25.0 未 満 で 、 未 閉 経 の 女 性
結果
とした。対象者には、国際尿失禁会議質問票日本語版
シ ョ ー ト フ ォ ー ム ( ICIQ-SF) [5]を 用 い て 、 尿 失 禁 症
対象者の特性を表 1 に示した。対象者 9 名のうち、
状の有無と種類を判別した。
1 名が混合性尿失禁の症状を有していた。
MRI 画 像 は 、 オ ー プ ン MR を 用 い て 臥 位 ・ 座 位 ・ 立
安静時における膀胱頸部と内子宮口の位置を表 2 に
位における骨盤内の矢状断面をグラディエントエコー
示 し た 。臥 位 に お け る 膀 胱 頸 部 の 位 置 は +15.6 mm( 中
法 に よ る T1 強 調 な ら び に フ ァ ー ス ト ス ピ ン エ コ ー 法
央 値 ,範 囲 +9.3~ +25.5)で あ り 、臥 位 よ り も 座 位 が 6.9
に よ る T 2 強 調 に て 撮 像 し た 。臥 位 と 立 位 の 撮 像 に は 下
mm 低 く ( 中 央 値 の 差 , 95%信 頼 区 間 ; Confidence
腹部と臀部を挟むフレックスコイルを使用し、座位の
撮像には座面からの圧迫のない便座型表面コイルを使
表 1. 対 象 者 の 特 性
n=9
用 し た 。T 1 強 調 画 像 の 撮 像 条 件 は 、繰 り 返 し 時 間 68 ms、
項目
エ コ ー 時 間 4.3 ms( イ ン フ ェ ー ズ )、フ リ ッ プ 角 90 度 、
2
中央値 (範囲)
40.0 (27–48)
年齢 (歳)
撮 像 範 囲 350×350 mm 、 ス ラ イ ス 厚 8 mm を 3 画 像 、
2
21.5 (18.4–24.2)
観 測 マ ト リ ッ ク ス 256×128 、 イ メ ー ジ マ ト リ ッ ク ス
Body mass index (kg/m )
256×256 と し て 、 安 静 時 お よ び 腹 圧 負 荷 時 を 一 動 作 9
分娩回数 (回)
2.0 (1–3)
秒 間 で 撮 像 し た 。T 2 強 調 画 像 の 撮 像 条 件 は 、エ コ ー 時
最終分娩後経過年数 (年)
4.5 (1–16)
2
間 68 ms、 フ リ ッ プ 角 90 度 、 撮 像 範 囲 350×350 mm 、
尿失禁症状の有無 (人数(%))
ス ラ イ ス 厚 8 mm を 5 画 像 、観 測 マ ト リ ッ ク ス 256×128、
イ メ ー ジ マ ト リ ッ ク ス 256×256 と し て 、 安 静 時 の み
- 18 -
有
1 (11.1)
無
8 (89.9)
骨盤内臓器の位置評価における体位の影響の検討
表 2. 安 静 時 に お け る 膀 胱 頸 部 と 内 子 宮 口 の 位 置
n=9
膀胱頸部の位置 (mm)
位置
臥位との位置の差
†
中央値 (範囲)
臥位
+15.6 (+9.3, +25.5)
座位
+11.9 (-6.5, +19.3)
差 [95% CI]
p値
位置
‡
臥位との位置の差
中央値 (範囲)
―
+4.6 (-20.0, +14.5)
立位
内子宮口の位置 (mm)
p値
†
‡
差 [95% CI]
+44.3 (+32.5, +59.3)
―
0.008*
-6.9 [-3.7, -13.6]
+41.3 (+22.9, +50.6)
0.028 *
0.008*
-15.2 [-10.0, -22.9]
+25.3 (+11.8, +46.5)
0.008*
-5.9 [-0.5, -11.3]
-18.7 [-14.6, -26.0]
CI:Confidence Interval.
Wilcoxon signed-ranks test and Bonferroni correction; * p < 0.016. ‡ Hodges-Lehman estimator.
Interval (CI);3.7~ 13.6,p < 0.016)、立 位 で は 15.2 mm
表 3. 各 体 位 に お け る 安 静 時 の 膀 胱 頸 部 と 内 子 宮 口 の
と さ ら に 低 か っ た ( 95% CI; 10.0~ 22.9, p < 0.016)。
位置の関連性
臥 位 に お け る 内 子 宮 口 の 位 置 は +44.3 mm ( +32.5 ~
n=9
膀胱頸部の位置
臥位
座位
+59.3) で あ り 、 臥 位 よ り も 座 位 が 5.9 mm 低 い が 有 意
内子宮口の位置
立位
臥位
座位
差 は な く ( 95% CI; 0.5~ 11.3, p > 0.016)、 立 位 で は
立位
18.7 mm 低 か っ た ( 95% CI; 14.6~ 26.0, p < 0.016)。
膀胱頸部の位置
次に、各体位における安静時の膀胱頸部と内子宮口
臥位
1.00**
座位
0.62**
1.00**
立位
0.80**
0.72**
の 位 置 の 関 連 性 を 表 3 に 示 し た 。膀 胱 頸 部 の 位 置 で は 、
各 体 位 間 の 相 関 係 数 が r = 0.62~ 0.80 で あ り 、 臥 位 と
1.00**
立 位 間( p < 0.01)、座 位 と 立 位 間( p < 0.05)で 有 意 な
内子宮口の位置
正の相関を示した。内子宮口の位置では、各体位間の
臥位
0.63**
0.72**
0.70**
1.00**
座位
0.42**
0.85**
0.57**
0.77**
1.00**
立位
0.60**
0.73**
0.88**
0.68**
0.68**
相 関 係 数 が r = 0.68~ 0.77 で あ り 、 い ず れ も 有 意 な 正
の 相 関 を 示 し た ( p < 0.05)。 ま た 、 同 体 位 に お け る 膀
1.00**
胱 頸 部 と 内 子 宮 口 の 位 置 の 相 関 係 数 は r = 0.63~ 0.88
**
*
*
30
であり、座位・立位においていずれも正の相関を示し
*
臥位
座位
立位
n=9
*
*
20
10
30
PC line
-10
-20
ns
*
-30
安静時
腹圧負荷時
安静時
腹圧負荷時
*
PC lineを基準点とした膀胱頸部の位置(mm)
Spearman's rank correlation coefficient: *p < 0.05, p < 0.01.
*
†
安静時
実線:Wilcoxon signed-ranks test and Bonferroni correction; *p < 0.016, ns = not significant.
点線:Wilcoxon signed-ranks test; ; *p < 0.05.
図 1. 各 体 位 に お け る 安 静 時 と 腹 圧 負 荷 時 の 膀 胱 頸 部 の 位 置 比 較
- 19 -
腹圧負荷時
二 宮 早 苗 ほか
た ( p < 0.01)。 以 上 の 結 果 か ら 、 安 静 時 に お い て 、 膀
ことが明らかとなった。しかし、腹圧負荷時の膀胱頸
胱頸部と内子宮口の位置は関連し、いずれも臥位・座
部の位置は、臥位・座位・立位の順に低く、臥位と立
位・立位の順に低くなることが明らかとなった。
位 間 、 座 位 と 立 位 間 に 有 意 な 差 を 認 め た ( p < 0.016,
図 1)。
各体位における安静時と腹圧負荷時の膀胱頸部の
位 置 を 図 1、 膀 胱 頸 部 の 可 動 性 を 表 4 に 示 し た 。 い ず
また、各体位における安静時の膀胱頸部の位置は、
れの体位においても、腹圧負荷により膀胱頸部は有意
臥位・座位・立位の順にばらつきが大きくなる傾向を
に 下 垂 す る が ( p < 0.05, 図 1)、 各 体 位 間 に お け る 膀
認 め た ( 表 2、 図 1)。
胱頸部の可動性には有意な差はないことから(p >
各 体 位 に お け る 安 静 時 の T 2 強 調 画 像 の 一 例 を 図 2-1、
0.016, 表 4)、 可 動 性 の 評 価 に は 体 位 の 影 響 は 少 な い
図 2-2 に 示 し た 。 各 体 位 の 画 像 か ら 、 膀 胱 底 部 は い ず
表 4. 各 体 位 に お け る 膀 胱 頸 部 の 可 動 性 の 比 較
n=9
膀胱頸部の可動性 (mm)
中央値 (範囲)
臥位との差 (mm)
p 値†
‡
差 [95% CI]
臥位
10.7 (3.8, 23.3)
―
座位
8.7 (1.8, 14.2)
0.038
2.8 [0.3, 5.9]
立位
10.2 (1.9, 20.9)
0.859
0.45 [-7.5, 8.8]
†
座位との差 (mm)
p 値†
‡
差 [95% CI]
―
―
0.314
2.8 [-4.1, 9.5]
‡
Wilcoxon signed-ranks test and Bonferroni correction; 有意水準: α = 0.05/ 3 = 0.016. Hodges-Lehman estimator.
A:臥位
B:座位
C:立 位
図 2-1. 各 体 位 に お け る 安 静 時 の T 2 強 調 画 像 の 一 例 ( 40 歳 女 性 )
A':臥位
B':座位
C':立位
図 2-2. 各 体 位 に お け る 安 静 時 の T 2 強 調 画 像 の 一 例 画 像 の 一 例 ( 48 歳 女 性 )
白線は恥骨尾骨ライン、丸印は膀胱頸部、星印は内子宮口、白矢印は重力の方向を示す。
- 20 -
骨盤内臓器の位置評価における体位の影響の検討
れの体位においても重力側へ伸展し、膀胱頸部は、臥
弛 緩 す る こ と か ら [10]、 骨 盤 底 に 共 に 支 持 さ れ て い る
位では膀胱底部より上方に位置するが、座位・立位で
膀胱と子宮の位置は関連すると考えられる。今回の検
は重力側の最下方に位置することが明らかとなった。
討では対象者数が少ないことから、相関係数が中程度
であっても有意となりにくい可能性が推察される一方、
考察
骨盤底の支持を必要としない臥位では、双方の位置の
関連性が低くなる可能性も示唆された。
MRI 画 像 を 用 い て 、臥 位 ・ 座 位 ・ 立 位 に お け る 膀 胱
また、各体位間における膀胱頸部の可動性には、有
頸 部 の 位 置 と 可 動 性 、内 子 宮 口 の 位 置 を 比 較 し た 結 果 、
意な差はなかったことから、腹圧は重力よりも強く、
安静時の膀胱頸部と内子宮口の位置は関連し、いずれ
体位による影響を受けにくいことが推察された。しか
も臥位・座位・立位の順に低くなることが明らかとな
し、腹圧負荷時の膀胱頸部の位置は、安静時の位置と
った。また、腹圧負荷による膀胱頸部の可動性には体
同様に、臥位・座位・立位の順に低く、腹圧負荷によ
位 の 影 響 は 少 な い が 、腹 圧 負 荷 時 の 膀 胱 頸 部 の 位 置 は 、
る膀胱頸部の位置を含めた評価の際には、体位を考慮
安静時と同様に臥位・座位・立位の順に低くなること
する必要性がある。
が示された。さらに、膀胱底部はいずれの体位におい
さらに、膀胱底部はいずれの体位においても重力側
ても重力側へ伸展し、座位・立位では膀胱頸部が重力
へ伸展し、膀胱頸部は、臥位では膀胱底部より上方に
側の最下方に位置することが明らかとなった。
位置するが、座位・立位では重力側の最下方に位置す
本 研 究 で は 、SUI や POP の 症 状 が 生 じ や す い 座 位 や
ることが明らかとなった。この結果から、座位・立位
立位における骨盤内臓器の位置について、オープン
では腹圧などによる負荷が膀胱頸部に荷重されやすく、
MR を 用 い て 評 価 し た 。 オ ー プ ン MR の 構 造 上 、 成 人
SUI な ど の 評 価 に は こ れ ら の 体 位 が 有 用 で あ る こ と が
では正しい立位姿勢での撮像は不可能であるが、骨盤
示唆された。
内臓器の位置評価には、立膝位でも立位とほぼ同様の
結果が得られたと考える。
本研究では膀胱内蓄尿量の一定化は行わず、膀胱に
尿を充満させ、1 時間以内にすべての撮像を終えるよ
先 行 研 究 に お い て 、 分 娩 経 験 を 有 す る 一 般 女 性 34
う に 配 慮 し た 。我 々 は 先 行 研 究 [4]に お い て 、膀 胱 内 蓄
名( 平 均 年 齢 48.9 歳 )の 安 静 時 に お け る 臥 位 の 膀 胱 頸
尿量は座位の膀胱頸部の位置評価に影響しない可能性
部 の 位 置 は 19.9±4.9 mm( 平 均 値 ±SD) で あ っ た [7]。
を示唆している。臥位や立位での検討はされていない
ま た 他 の 先 行 研 究 で は 、同 条 件 の 女 性 55 名( 年 齢 の 中
が、本研究において撮像時間中に膀胱内蓄尿量が大き
央 値 41.0 歳 )の 安 静 時 に お け る 座 位 の 膀 胱 頸 部 の 位 置
く増大した例はなく、蓄尿量による結果への影響は少
は +8.5 mm( 中 央 値 , 範 囲 - 18.7~ +22.6) で あ っ た [8]。
ないと考える。
これらと本研究の結果が異なる理由として、膀胱頸部
今回の検討では対象者数が少なく、一定条件下の一
の 位 置 は 個 体 差 が 大 き い [8]こ と に 加 え て 、本 研 究 の 対
般女性を対象としていることから、結果を一般化する
象者は 9 名と少ないことから、偏りが生じていた可能
の は 難 し い 。ま た 、SUI や POP な ど の 骨 盤 底 弛 緩 症 状
性が推察される。しかし、本研究では、同じ対象者に
を 有 す る 対 象 者 で は 、異 な る 結 果 を 示 す 可 能 性 が あ る 。
お い て 、各 体 位 に お け る MRI 画 像 を 断 続 的 に 撮 像 し た
し か し な が ら 、臥 位 ・座 位 ・立 位 の 骨 盤 内 臓 器 を MRI
こ と か ら 、偏 り に よ る 結 果 へ の 影 響 は 少 な い と 考 え る 。
画像により比較した報告はなく、本研究は骨盤内臓器
安静時における膀胱頸部と内子宮口の位置は、いず
の位置評価において、体位の影響を考慮する必要性が
れも臥位・座位・立位の順に低かった。また、各体位
あることを改めて示した。
における安静時の膀胱頸部の位置は、同順にばらつき
が 大 き く な る 傾 向 を 認 め た 。 尿 道 は 遠 位 部 1/3 で 固 定
さ れ て い る が 、 膀 胱 底 部 や 近 位 2/3 の 尿 道 は 骨 盤 底 で
結語
支 持 さ れ て い る [9]。し た が っ て 、骨 盤 底 の 支 持 を 必 要
骨盤内臓器の位置評価における体位の影響を検討
としない臥位では、一定の範囲内に位置するが、骨盤
す る こ と を 目 的 と し て 、MRI 画 像 を 用 い て 臥 位・座 位・
底の支持を必要とする座位や立位では、骨盤底の支持
立位における膀胱頸部の位置と可動性、内子宮口の位
力の個体差によって位置の下垂量が大きく異なるので
置を比較検討した。結果、安静時の膀胱頸部と内子宮
はないかと考える。
口の位置は関連し、いずれも臥位・座位・立位の順に
同体位における安静時の膀胱頸部と内子宮口の位
低くなることが明らかとなった。また、腹圧負荷によ
置の関連性について、座位・立位では有意な強い相関
る膀胱頸部の可動性には体位の影響は少ないが、腹圧
を示したが、臥位では有意な相関はなかった。骨盤底
負荷時の膀胱頸部の位置は、安静時と同様に臥位・座
は吊橋に例えられ、構造の一部でも弱くなれば全体が
位・立位の順に低くなることから、骨盤内臓器の位置
- 21 -
二 宮 早 苗 ほか
評価の際には、体位の影響を考慮する必要性があるこ
ラ ,SIGNA SP/2) を 用 い て 撮 像 し た 。 安 静 時 ・ 腹 圧 負
とが示された。さらに、座位・立位では、腹圧などに
荷 時 の 膀 胱 頸 部 の 位 置 は T 1 強 調 画 像 、安 静 時 の 内 子 宮
よ る 負 荷 が 膀 胱 頸 部 に 荷 重 さ れ や す く 、 SUI な ど の 評
口 の 位 置 は T 2 強 調 画 像 を 用 い て 、恥 骨 尾 骨 ラ イ ン か ら
価にはこれらの体位が有用であることが示唆された。
の 垂 直 距 離 を 計 測 し 、頭 側 を( +)、足 側 を( - )と し て
表した。結果、安静時の膀胱頸部と内子宮口の位置は
文献
[1] 中 田 真 木 : 妊 娠 ・ 出 産 と 尿 失 禁 . Current Therapy.
19(12), 51-54, 2005.
[2] 嘉 村 泰 邦 .Functional cine MRI.日 本 女 性 骨 盤 底 医
学 会 誌 . 9(1), 23-26, 2012.
関 連 し ( r = 0.63~ 0.88)、 い ず れ も 臥 位 ・ 座 位 ・ 立 位
の順に低くなることが明らかとなった。また、腹圧負
荷による膀胱頸部の可動性は、いずれの体位間におい
ても差はなく、可動性の評価には体位の影響は少ない
ことが示された。しかし、腹圧負荷時の膀胱頸部の位
置は、安静時と同様に臥位・座位・立位の順に低くな
[3] 二 宮 早 苗 , 岡 山 久 代 , 正 木 紀 代 子 , 他 . 子 宮 摘 出
ることから、骨盤内臓器の位置評価の際には、体位の
術後の腹圧性尿失禁にサポート下着が有用であっ
影響を考慮する必要性があることが示された。また、
た 1 症 例 . 滋 賀 医 科 大 学 看 護 学 ジ ャ ー ナ ル . 8(1),
座位・立位では、膀胱頸部が重力側最下方に位置する
43-46, 2010.
ことから、腹圧などによる負荷が膀胱頸部に荷重され
[4] 二 宮 早 苗 , 齋 藤 い ず み , 遠 藤 善 裕 , 他 . 縦 型 オ ー
プ ン MR を 用 い た 膀 胱 頚 部 位 置 の 評 価 に 影 響 を 与
やすく、腹圧性尿失禁などの評価にはこれらの体位が
有用であることが示唆された。
え る 要 因 の 検 討 . 日 本 女 性 骨 盤 底 医 学 会 誌 . 9(1),
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和 文抄 録
骨盤内臓器の位置評価における体位の影響を検討
す る こ と を 目 的 と し て 、 核 磁 気 共 鳴 画 像 ( MRI) を 用
いて臥位・座位・立膝位(以下,立位とする)におけ
る膀胱頸部の位置と可動性、内子宮口の位置を比較検
討 し た 。分 娩 経 験 を 有 す る 女 性 9 名( 28~ 48 歳 )を 対
象として、臥位・座位・立位における骨盤内の矢状断
面 を オ ー プ ン MR 装 置 ( GE Healthcare 社 製 , 0.5 テ ス
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