...

小水力発電の現状と将来展望

by user

on
Category: Documents
13

views

Report

Comments

Transcript

小水力発電の現状と将来展望
●……
特集1……●
安 全 エ レ ち ゃ ん の
小水
の
と
将来展望
現状
発電
力
●─東京発電株式会社 寄稿
近年は、温室効果ガスの影響から夏季の温度上昇や地域的な集中豪雨などが発生しています。
二酸化炭素(CO2)等の温室効果ガス排出量を削減するためには、水力、地熱、風力など
再生可能エネルギーであるクリーンな非化石エネルギーの活用が欠かせません。
1960年代まで主役だった水力発電は、1963年に日本一の堤高(ダムの高さ)の黒部ダム完成後、
莫大な費用がかかり立地制約(開発拠点の奥地化、社会的コストなど)などの理由により「大規模ダム」は
あまり増えていませんが、既存の河川や農業用水等の流水を利用した「小水力発電」が注目されています。
そこで今回はエレちゃんに代わって、東京発電株式会社から
水力発電の中でも小型の小水力発電の現状と展望について紹介していただきます。
古くて新しい水力エネルギー
これまでの水力発電の歴史
水力エネルギーを使う「水力発電」
水力発電がスタートしてからしばら
は、明治 20 年代から存在する長い
くは、河川の水をそのまま取り込ん
実績に支えられた発電設備です。水
で発 電 する小規 模 方 式が主流で、
が高いところから低いところへ流れ
これを『流れ込み式』と言います。
る力(エネルギー)を、「水車」で回
しかし,第二次世界大戦後の経済
転エネルギーに変えて発電機を動か
成長と共に伸びる電力需要に対応す
しています。
るために、大規模集中型の開発へと
「水 車」というと昔ながらの水 車
転換されました。
小屋を思い出す人もいれば、黒部の
これは山あいにダムを造って水を
太陽で有名な黒部川第四発電所のよ
貯め、一年を通じて一定量の水を利
うな大規模なものを思い出す人もお
用して発電する方式で、『貯水池式』
られるでしょう。もしかすると、都
と言います。これらの水力発電は、
会の水道設備でひっそりと動いてい
地 球 規 模 で“雨→川→海→雲”と
るマイクロ水力発電を思い浮かべる
循環する自然の水の流れを利用して
人もいるかも知れま
再生可能エネルギーには分類されま
せん。
1,000kW以下を小水力発電、上下水
て発電できます。豊富な水資源を有
なお、小水力およびマイクロ水力
道・農業用水など他の目的に使用さ
する日本だからこそ、新たな知恵を
発電の定義は、業界の解釈で出力
れている水を活用したものをマイクロ
絞り再び小水力発電の開発を進める
の違いがありますが、ここでは出力
水力発電としています。
取水口⇨導水管⇨水車発電機⇨放水路
揚水式
調整池
(ダム式)
落差
(m)
今ある設備に
後から
発電設備を
付け足す
水量と落差
水道発電のしくみ
使用水量
(m3/s)
流れ込み式
浄水場
小水力
明治∼
昭和
水力発電の
基本のまま
時代
図1 水力発電の歴史
大規模な流れ込み式水力
(新潟県姫川第七発電所)
貯水池として利用
水量
手動弁
水車
発電機
新設管路
例えば水道発電の場合 既設管路
落差
自動弁
配水池
既設流量調整弁
図2 マイクロ水力発電の仕組み
いま、
なぜ小水力なのか
水力発電 所を建設 するには莫大な
費用がかかります。つまり、昔なが
国の支援策 ∼F
iT制度
づけています。
らの方法では無く今の技術を最大限
こ のFiT制 度 が で き た お か げ
に活用して、徹底したコスト低減を
平成 23 年 8月26日に成立した“電
で、小水力発電で発電事 業をやろ
実現する努力もしなければならない
小規 模な水力発 電から大規 模・
気事業者による再生可能エネルギー
うと考える時、その 発 電 設備 でど
のです。
おり、再生可能エネルギーの一つに
高技術の水力発電へと発展してきま
電気の調達に関する特別措置法”、
れくらいの売電 収 入 が 得られるの
小水力発電を建設する際に一番費
せん。このように水
位置づけられています。
したが、現在では大規 模 水力に適
いわゆる「再生可能エネルギーの固
か、簡単に計 算できるようになりま
用がかかるのは、いわゆる土木工事
力 発 電は、様々な
なお、水力発 電には電 気のピー
した地点の開発はほぼ一段落してい
定 価 格 買 取 制 度(FiT=Feed-in
した。
の部分です。
年代において色々
ク需要に対応する電源として上池と
ます。そこで、再び脚光を浴びてい
Tariff)」は、再生可能エネルギーを
な形で実現され
下池の2つの大きなダム湖を活用す
るのが 1,000kW以下の 発 電 規 模と
継続的に増やしていこうとする国の
ている“古くて
る『揚水式』もあります。これは、
なる「小水力発電」や「マイクロ水
姿 勢 の 表 れで す。この 法 律 では、
新 し い”発 電
日中の電気の足りない時に上池から
力 発 電」で す(図1、2)。小さく
太陽光、風力、バイオマス,地熱、
設備なのです。
下池へ水を落として発電を行い、供
ても水力発電ですから、発電する段
給 電力に余裕のある夜間に電気を
使って下池の水を上池に汲み揚げ
昔ながらの水車
(松本市波田堰の水車)
4
ておいて次の発電に備えるもので、
ことが求められているのです。
出力︻大容量化︼
再生可能エネルギーとしての水力発電
て、一定 規 模 の電 力を“安定”し
電気と保安
2 013 年 9・10月号
注目を浴びる小水力
高所にある水を発 電 所に引き入
土木構築物の省略などによる
れる水 路を、いかに安く仕 上げる
コスト低減
かで発 電事 業の収 支は大きく変わ
中小水力で起こした電気を、普通の
小水力発電の開発を国が強力に
多く生 産され るようになれ ば 市 場
階では二酸化炭素を一切排出しませ
電源が発電した電気よりも高い値段
推し進めている状 況ですが、自然
が安定し,原価も下がり安くなりま
んし、太陽光発電や風力発電と違っ
で買い取ることを電気事業者に義務
の水の 流 れを利 活 用する方 式 で、
す。技術に基づいた理論的なアプ
ります。また、水 車や発 電 機も数
2 013 年 9・10月号
電気と保安
5
安 全 エ レ ち ゃ ん の
小 水 力 発 電 の 現 状 と 将 来 展 望
工事費の
内訳
(割合)
ならなかった場所でも、小水力発
電所として開発することが可能にな
土木工事費:
7割
機械
(電気)
:
工事費
3割
工事種別と内容
土木工事:取水設備、導水管、放水路、等
えん堤
り、かつては建設を諦めなければ
取水口
ロー チでコスト低 減 することによ
機械工事:水車、発電機の回転体、入口弁等
どんな場所で小水力は実現しているの?
県、川崎市、高崎市、甲府市、横
東京発電株 式会社は、関東地方
共存した小水力発電所を運用してい
を中心に 68 箇所の中小水力発電所
ます。
を保有・発電している会社で、これ
浜市など 計8箇 所で、水 道 設備と
発電機
ら発 電 所の平均年齢は 61 歳です。
100 歳を越えて発電しているのが6
水車
休廃止された水力発電所を
再開発して
箇所ありますが、10 歳未満と至近年
に開発したものも14 箇所あります。
正しくメンテナンスを施せば百年
ここでは、この若手の発電所を中心
を超える運転が 可能ですが、実は
に紹介します。
様々な理由で休廃止となってしまっ
発電所内部
電気工事:制御装置、変圧器、配電盤等
ります。
華川発電所のリニューアル前後の状況
いかがでしたか。
小水力発電は、私たちの身の周りにある上下水道、農工業用水、河川の堰堤等を活用して
比較的小規模な水力を利用して発電することができます。
あなたの周りで活用したい水力があればぜひ検討してみませんか。
紹介に当たっては、長年水力発電所の建設から運転・保守などを手がけてきている「東京発電株式会社水力事業
部マイクロ水力発電グループ」の富澤晃グループマネージャー様にご協力を得て寄稿いただきました。
上水道システムに後付けして
在しています。休廃止となった時期
コスト低減を実現する新手法とし
地まで水を引いてくる設備を多少の
て、水道や農業用水など別の目的で
補修で再利用できるケースも多いた
作られた水インフラに潜んでいる水
め、最新技術でコスト低減された水
エネルギーに着目し、その場所を間
車や発電機を用いることで、発電所
借りして発電設備を後付けするもの
として新たな命を吹き込むことがで
があります。水力エネルギーを活用
きます。
安
た小水力発電所が、国内各地に点
ち
エレ ゃんの
全
電
気
さいたま市水道局と東京発電で協
北茨城市花園川の水を利用する華
同じですが、水そのものの取り扱い
同運営する大宮発電 所は、埼玉県
川発電所は、明治 41 年から昭和 46
方法が大きく違います。例えば、水
の運営する大久保浄水場からさいた
年まで運転され、その後廃止されまし
道システムに小水力を設置する場合、
ま市の大宮配水場に流れ込む水のエ
たが、地元の方々のご協力を得て東
発電所はあくまでも「従」であって、
ネルギーを利用して発電しています。
京発電が再開発に着手し、平成 23
水道が正常に運用されるのが「主」
地上部分は公園になっていて注意し
年 2月に運転を再開しています。
目的になります。
ていないと水道施設であることも、
今後、数十 年間に亘って電 気を
ましてや小さな水力発電所が電気を
起こし 続 けられ るよう、しっかり
起こしていることにも気づかない場
守って行きたい小水力発電所です。
所です。起こした電 気は、大 宮配
しっかり保守すれば、長い期間安
水場から水を送り出すポンプで使用
定して電気を起こせる小水力発電設
していますので節電の最先端です。
備は、技術に裏打ちされた発電事業
この他にも東 京発電では、千葉
としてこれからも注目です。
保
安
2
0
1
3
.
9 ・
10 月
号
問題
にもよりますが、河川から発電所跡
すると言う点では従来の水力発電と
と
現在は小規模な水力発電設備の小水力発電や
○○○○水力発電が脚光を浴びています。
クイズ コ ーナー
4文字をお答えください。ヒント(4∼7ページ)
●応募方法 ハガキまたは電子メールに
①クイズの答え ②郵便番号・住所・氏名 ③勤務先名・勤務先住所(ご意見・ご感想がある方はご記入ください)
④本誌や当協会に対するご意見・ご感想(「保安協会はこの点を改善した方が良い」等のご意見もお聞かせください)
をご記入のうえ右記あてにお送りください。
また、当協会ホームページ(http://www.kdh.or.jp/)にもクイズの応募フォームがございますので
ご利用ください。
●応 募 先
〒171-8503 東京都豊島区池袋3-1-2 光文社ビル 関東電気保安協会 広報部
[当協会ホームページアドレス] http://www.kdh.or.jp/
[電子メールアドレス]
[email protected]
●締切期日 平成25年11月20日必着
●発 表 平成26年1・2月号に正解を発表いたします。正解者の中から抽選で100人の方にオリジナル図書カード
(500円分)
を贈呈いたします。なお、当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。
◎ご記入いただいたお客さまの情報は当選者へ図書カード送付の目的、および、ハガキまたはメールで寄せられた
ご意見に対する回答の目的のみに使用し、他の目的には一切使用いたしません。
● 5・6月号正解 ●
イ ン バ ー タ 」でした。
「 たくさんのご応募ありがとうございました。
大宮配水場
6
電気と保安
2 013 年 9・10月号
2 013 年 9・10月号
電気と保安
7
Fly UP