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Motivation Engineering Report Vol.17

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Motivation Engineering Report Vol.17
シニア社員向け多面評価サーベイ
~健全な周囲からの期待の提示によるシニア社員の活性化~
1
はじめに
労働人口の減少が避けられない事実として意識され始めた今日、安部政権では特に女性労働力の活用がクローズ
アップされている。所謂M字カーブの存在など(図1、2参照)日本市場独特の構造的問題が指摘されており、活
用余地が高いことは論を待たない。現場の実感としてもポジティブアクションとしての様々な施策が各企業で模索されて
おり、マクロ施策とミクロ施策に大きな誤謬は認められない。
【図1】 年齢階級別有業率-平成19年,24年 男性
【図2】 年齢階級別有業率-平成19年,24年 女性
その一方で、もう一つの眠れる資源として取り上げられるシニア社員の活用状況についてはどうだろうか。
マクロ政策としての「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」施行により65歳までの希望者の雇用義務化に向
けた制度的対応は大手企業を中心に取られ始められているものの、現場では一部の技術者の活用を除いては、暗
中模索にあるように感じられる。例えば、東京都産業労働局発表の「平成24年度高年齢者の継続雇用に関する実
態調査」では、「高年齢者の雇用確保策の拡充が若年者の雇用に悪影響を与えるか」という問いに対して、「そう思
う」が32.4%、「どちらとも言えない」が29.7%と半数を上回る回答者が、高年齢者の雇用を、若年者雇用との
トレードオフと捉えるという状態から脱し切れていない現実が読み取れる。バブル世代が40代後半にさしかかる一方で、
企業のポストは階層のフラット化の流れの中で減少傾向にあり、従来の処遇を維持することが困難になっており、この
高位のポストで処遇できないシニア社員の大量発生は、「今、ここ」にある危機となりつつある(図3参照)。
2014年8月2日号の週刊ダイヤモンドでは「オジサン世代に増殖中 職場のお荷物社員」という特集が皮肉にも組ま
れており、マクロ施策の狙いと、ミクロ施策の実態の乖離を表象する事象と言えなくも無い。
その意味で、処遇をどう抑えるかというネガティブアクションではなく、処遇に見合う活躍をどう引き出すかというポジティブ
アクションとして対応を考える社会的要請は非常に高いものと思料される。
シニア社員がマズローの欲求階層説が言うところの「帰属欲求」で留まり周囲からは「お荷物」と蔑まれる状況から、より
高次の周囲からの「承認欲求」を満たすべく認識転換を図る契機として、シニア社員への役割期待を今一度見直す
時期に来ていると私どもは考える。
図3にあるように、現下のシニア社員への対策のみな
らず、大きな就業人口の塊として控えているその予備
軍たる40歳代へのキャリア意識の醸成・転換も必
要な状況にある。
【図3】 年齢階級,従業上の地位別有業者数及び割合-平成19年,24年
(図1-3出所:総務省統計局 平成24年就業構造基本調査より)
1
2
シニア社員の持つべき新たなキャリア観~「ヨットクルージング型」キャリア
こうした暗中模索の状況を打ち破る一つのきっかとして、私どもはシニア社員に対する新しいキャリア観を提示したいと
考える。
キャリアの歩み方として一般的に言われているのは、ゴール(登るべき頂上)を定めそこから逆算して足元のキャリアを
描いて行くという「山登り型」キャリアと、足元の仕事に対処する中で徐々に自分らしさや目指すものに気づいてゆくとい
う「筏下り型」キャリアの二つであり、若い時代は「筏下り型」で、そしてある程度経験を積むと「山登り型」でというように
時間軸で語られることが一般的である。
その文脈で言うならば、本論にて対象にしているシニア社員は、「山登り」を終えて目指すべき頂が見えない状況か、
「筏下り」を終えて海に出てしまった状態と言え、何か別のキャリア観が求められているというのが私どもの考えである。
それが、「ヨットクルージング型」キャリアである。
ヨットに対して大海原にて進むべき方向に推進力を与えくれるのは風である。そしてその風は常に向きや強さを変える。
その風の変化に応じて機敏に帆の張り方を変化させ、進むべき方向に対して順風であろうが逆風であろうがその力を
推進力に変換し、前に進んで行くのがヨットである。
シニア社員は、そのような風を自ら捕らえ、その風を推進力に自らの歩みを進めてゆくことが求められると言えるのではな
いだろうか。その意味で、シニア社員は、ヨットを操舵を司る「スキッパー」というロールを自身のキャリアデザインにおいては
果たすこと求められると言える。
しかしながら多くの企業人事から聞こえてくるシニア社員の実態は、職場と言う海原にて風を捕らえることなくただただ
漫然と漂流している筏と例えられるケースが多いとの印象を私どもは持っている。
3
シニア社員に対する役割期待を見える化
上記のような問題意識を背景に、この度私どもは、シニア社員に対する役割期待を網羅的に項目化した、多面
評価サーベイを開発した。ヨットに吹く風を「見える化」するツールと言えるものである。
【1】サーベイの項目
本サーベイでは、シニア社員に期待する役割を、エリクソンの発達段階論を背景に、4つの機能として大きく整
理分類した。
対象となるシニア社員は、エリクソンのモデルでは成年期に該当し、その発達課題は「生殖性」と言われている。
生殖性とは後進への知識・経験の伝承や育成、支援を意味しており、その機能を「伝達機能」と「支援機能」と
整理した。また、生殖性を獲得する上で大切なことが、自分を磨いたり、能力を高める為の努力の継続とされて
おり、それを「自立機能」と整理した。つまり、口だけ出して自身は何も行わないということであれば、生殖性は獲
得出来ないということである。以上に加え、エリクソンのモデルでいう成年期の前世代である初期成年期の発達
課題である親密性(=周囲との関係構築)も、役職の変化・雇用形態の変化、職場の変化等に向き合うシ
ニア社員には再度求められることから、それを「組織化機能」として整理している。
エリク・H・エリクソン提唱の発達課題の一部
想定年齢
時期
心理的課題
20-39歳
初期成年期
親密性
40-64歳
成年期
生殖性
65歳ー
成熟期
統合性
2
そして、これらの大分類を中分類として細分化したのが以下の一覧表である。
大項目
中項目
説明
知識伝承機能
自身の経験や知識を型化し伝承する行動
関係伝承機能
自身が築いた社内・社外のネットワークを伝承する行動
関係構築機能
職場の他の構成員と良好な関係を築く行動
率先垂範機能
職場の良き見本となるべく言動を律する行動
上方支援機能
職場の管理職に対し必要に応じた支援をする行動
下方支援機能
職場のメンバーに対し必要に応じた支援をする行動
自己完結機能
自身に任せられた役割・仕事を自己完遂する行動
自己管理機能
自身の健康や家計状況を管理する行動
伝承機能
組織化機能
支援機能
自立機能
実際のサーベイでは、これらの中項目をさらに因数分解し、合計40個の設問を用意した。
【2】サーベイ分析のフレームワーク
本サーベイにおいては「期待度」と「達成度」の2軸を分析の枠組みとし、
それによって構成される2軸4象限のマトリクス(4eyes® Windows)を以下のように意味づけ
ている。
●分析軸
期待度:シニア社員に対する当該行動の期待度の5段階スケール
達成度:シニア社員の当該行動に対する達成度の5段階スケール
●分析フレームワーク
<4eyes® Windows>
期待度
高
F人的資源
O意欲相乗
P業務効果
E組織風土
D仕事内容
M顧客接続
J情報収集
K判断行動
N目標達成
H制度待遇
L動機形成
B理念戦略
I情報提供
②裏切り仕事
低
2 .7
①やりがい仕事
C事業内容
③ご隠居仕事
G施設環境
④我が道仕事
A会社基盤
達
高成
度
①やりがい仕事:
周囲との調整が出来ており職場における居場所作
全体
りとなっている役割
②裏切り仕事:
周囲の期待を裏切る状態になっているが、居場所
作りになる可能性のある役割
重要度
③ご隠居仕事:
満足度
周囲から無関心な状態で、注力しても居場所作り
につながらない役割
④我が道仕事:
シニア社員の趣味の領域の仕事との周囲の認識
で、これ以上注力するとかえって居場所をなくしてし
まう役割
3 .6
低
3
4
最後に
私どもは、本サーベイの名称をKOSI(孔子)サーベイとした。
シニア社員に求められる4機能の頭文字を合せてKOSIである。
1)伝承機能(Knowledge)
2)組織化機能(Organizing)
3)支援機能(Supporting)
4)自立機能(Independence)
その命名の背景には、KOSI=孔子の生き様がシニア社員に向けてのメタメッセージになるとの想いがある。
「吾、十五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順う。七十に
して心の欲する所に従えども、のりをこえず」とはあまりのも有名な言であるが、50歳代に宿願の政治の世界での
仕事に就いたにも関わらず挫折、そこで初めて天命を知り後の人生を弟子の教育に注いだという孔子の人生そのもの
が、シニア社員への激励になるのではないだろうか。
シニア社員は自らの仕事人生に自分なりの責任を持ち、役割を果たすことが重要であり、技術や時代の変化に適応
した職務能力を習得し、自らの手を動かして仕事をこなすことも含めて、報酬に見合う価値貢献をすることが必要であ
る。その価値に見合う仕事を、本サーベイの結果分析を通して認識し、自己や仕事のあり方、成し方を調整して行くこ
とを期待したい。
KOSI Surveyとは?
調査概要
シニア社員への期待役割とその期待に対する達成度を可視化す
る目的とした調査です。調査対象者の職場のおける上司・同僚に
アンケートを実施します。また、回答結果は右図のような帳票に
アウトプットされるため、周囲の期待と自身の仕事ぶりのマッチ度や
ギャップ状態が一目で把握できる内容になっています。
サーベイ結果帳票
イメージ
質問項目
シニア社員求める4機能について総合的に問う「総合達成度項目」と、「40個の質問項目」から構成されています。
40個の質問項目は、4機能をブレークダウンした8領域に基づいて設計されており、構成する各要素ごとに「期待度:どの程度
求めているか」と「達成度:どの程度実現できているか」について、5段階で回答します。
[設問イメージ]
あなたは、対象者に対して、どのようなことを求めますか?(5段階評価)




サーベイ対象者が、知識や技能を必要に応じて伝承すること
サーベイ対象者が、職場における会議などで積極的に発言・貢献すること
サーベイ対象者が、経営理念や大切にしている考え方を日々体現していること
サーベイ対象者が、職場の他のメンバーの仕事状況について理解していること
など
①全く求めない
②あまり求めない
③まあまあ求める
④とても求める
⑤非常に強く求める
株式会社リンクアンドモチベーション
http://www.lmi.ne.jp/
モチベーションエンジニアリング研究所
所在地
発行責任者
問合せ先
〒104-0061
水田
東京都中央区銀座3-7-3 銀座オーミビル
道男
TEL:03-3538-8671
FAX:03-3538-8672
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