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平成24年度 資源制約に対応する材料再資源化等 に関する調査研究

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平成24年度 資源制約に対応する材料再資源化等 に関する調査研究
日機連24環境
平成24年度 資源制約に対応する材料再資源化等
に関する調査研究
~材料分野から見た“魅力”と“難しさ”の事例集~
平成2 5 年 3月
一般社団法人 日本機械工業連合会
代替材料技術に関する調査専門部会報告書(Ⅴ)
この事業は、競輪の補助金を受けて
実施したものです。
http://ringring-keirin.jp
序
世界を先導する高水準の産業技術力を保持していくことが、わが国経済の持続的発展の重
要な原動力になりますが、中国をはじめとするアジア諸国の生産・技術力の向上や、欧米諸
国の差別化・高付加価値した“もの作り”の進展など、ここ10年余の間に世界の競争構造は
大きく変化し、わが国の産業技術力の相対的低下が懸念されております。
このような状況を打開し、持続的成長を確保していくためには、より付加価値の高い財と
サービスを生み出し、より生産性の高い新事業、新市場を創出していかなければなりません。
そのためには、新技術のシーズ創出につながる基礎研究から基本技術の創造、実用化、市場
の創出まで幅広い視野で、より有機的な産官学の連携を進め、絶え間のない革新技術を生み
出していくことが必要不可欠なことと考えられます。
特に資源の乏しい我が国にとって材料の安定確保は生命線であり、ここ数年の間にレアメ
タルなど重要資源の価格高騰や産地偏在等による入手難の懸念が一層顕在化したことから、
産地依存リスクの低減・分散化を図るとともに重要資源の代替材料開発が重要であり、産官
学が一致協力してその対応に取り組んでいくことが必要です。
このような背景の中で当会では、平成20年度に代替材料技術に関する調査専門部会を設
置して調査を進めました。同専門部会では平成23年度から「資源制約に対応する材料再資
源化等に関する調査研究」をテーマとし、材料再資源化とサプライチェーンにおける部品、
原材料供給に関する課題と着眼点を整理しました。平成24年度は、これらに関する具体的
事例を収集・整理して、産学で共有し、科学、技術、人材の育成に寄与するための「処理困
難課題情報」の簡易ハンドブックの作成を目標に活動を行い、
「材料分野から見た“魅力”と
“難しさ”の事例集」として取り纏めました。
本報告書が産学、異業種間のそれぞれの立場で抱える課題に対する情報共有を促し、更に追加、
拡充がなされていくことで、一層有効に活用されれば幸甚です。
最後に、代替材料技術に関する調査専門部会の5年間に亙る調査活動にご指導、ご協力を
いただいた長井部会長並びに委員、関係者の皆様に厚く御礼を申し上げます。
平成25年3月
一般社団法人
会
i
日本機械工業連合会
長
伊
藤
源
嗣
はしがき
代替材料技術に関する調査専門部会
部会長
長井
寿
(独立行政法人物質・材料研究機構
ナノ材料科学環境拠点マネージャー)
本専門部会は、高度に発達した経済社会の持続可能性を支える必須条件は、
人材(人口)、資源、技術の三つであることを基本認識として活動してきた。
日本は地下資源に乏しく、エネルギーを含めて、原料供給を他国に依存して
おり、他国との信頼感を高めつつ均衡のある貿易によって相互発展する道が不
可欠である。しかしながら、本来であれば人類共通の財産であるべき地下資源
が、資源ナショナリズムの昂進と共に、特定の国が独占しかねない情勢であり、
国際経済・政治の深刻な火種のひとつとなっている。また原子力エネルギーに期
待してきた基本設計が問い直されるとすると新しいエネルギー源の確保と一層
の省エネルギーを追求せざるを得ない。これらの難題の技術的解決はもちろん、
それに挑戦する人材育成にも戦略的な視点が求められる。
このような視点に立ち、平成22年度までに「今後に課題を抱える素材の代
替技術に関する調査研究」を実施、その成果を「提言」としてまとめた。平成
23年度からは、「資源制約に対応する材料再資源化等に関する調査研究~材料
再資源化とサプライチェーンにおける原材料供給の安定化と競争力強化~」として、
その「提言」の具体化方策を検討してきた。
新たな材料再資源化とサプライチェーンにおける部品、原材料供給に関する
課題認識と着眼点の整理を進めた結果、①レアアースやレアメタルばかりでな
くベースメタルや高分子材料などにも特徴的な期待や問題点があることが明ら
かになった。②機械工業会の立場からは分離技術も重要なテーマであることを
確認した。③学の側に対して、特に、金属と化学の融合によって、解決が期待
される課題を提起し、基礎からの解決を望むアプローチを考案することとした。
平成24年度は、以上の調査で得られた課題を産学で共有し、科学、技術、
人材の育成に寄与できるようにするために、例えば「処理困難課題情報」を整
理した簡易ハンドブック、或いはリーフレットのようなものを作成することを
目標に活動を進めた。内容をまとめつつさらにコンテンツを充実させるために、
有識者からの講演や現地訪問などで情報を得ることにも努めた。
最終的には、
「材料分野から見た”魅力”と難しさ”の事例集」というネーミ
ングで纏めることができた。これが、今後多方面で活用されることを望む。
なお、今年度も座学だけでなく現場を訪問し実地で理解する機会も得ること
ができた。講師の方々、受入機関の方々、そして事務局などの多くの方々のご
厚意とご協力により調査研究を終えることができた。ここに篤く謝意を述べて
おきたい。
iii
代替材料技術に関する調査専門部会 委員名簿
(一社)日本機械工業連合会
(研究機関・企業名五十音順)
部会長 独立行政法人 物質・材料研究機構 ナノ材料科学環境拠点マネージャー
長
井
幹
事 日鉄住金総研㈱ 常務取締役
殿
村
重
彰
委
員 東京大学 工学系研究科マテリアル工学専攻 特任准教授
醍
醐
市
朗
委
員 東京大学 大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 准教授
松
浦
宏
行
委
員 東北大学 多元物質科学研究所サステナブル理工学研究センター 准教授
柴
田
悦
郎
委
員 ㈱IHI 基盤技術研究所材料研究部材料評価グループ部長
遊
佐
委
員 川崎重工業㈱
亀
井
委
員 ㈱栗本鐵工所 技術開発室担当部長
栢
岡
委
員 ㈱小松製作所 研究本部業務部企画管理グループ主幹 大 久 保 英 明
委
員 JFEエンジニアリング㈱ 総合研究所開発企画部部長
金
森
聖
一
委
員 ㈱ジェイテクト 材料技術研究部材料技術室室長
後
藤
将
夫
委
員 信越化学工業㈱ シリコーン電子材料技術研究所主任研究員
青
木
良
隆
委
員 ㈱東芝 電力・社会システム技術開発センター金属材料開発部グループ長
久
保
貴
博
委
員 ㈱東レ経営研究所 特別研究員 小
松
秀
雄
委
員 ㈱日本製鋼所
中
島
敏
史
委
員 三井造船㈱ 技術本部玉野技術開発センター長
鎌
田
勤
也
委
員 三菱電機㈱ 先端技術総合研究所マテリアル技術部金属・セラミック材料Gグループマネージャ
荒
技術研究所材料研究部基幹職
技術センター副センター長
事 務 局 (一社)日本機械工業連合会 常務理事
寿
覚
裕
次
理
木
健
石
坂
(一社)日本機械工業連合会 事務局長 兼 業務部長
坂
本
享
夫
(一社)日本機械工業連合会 業務部次長
多
並
輝
行
(一社)日本機械工業連合会 業務部課長
戸
田
(一社)日本機械工業連合会 業務部
高
田
v
清
譲
裕
子
平成24年度の活動概況
会合名
日
時
第 19 回委員会
24.6.8
第 20 回委員会
24.8.31
第 21 回委員会
24.10.19
第 22 回委員会
(見学会)
24.12.5
~12.6
第 23 回委員会
24.12.18
実
施
事
項
京都大学教授、エネルギー科学研究エネルギー応用科学専攻・馬渕 守氏
から「我が国の材料戦略プロジェクトの成果と今後の展開」と題し、第4期科学
技術基本計画のグリーンイノベーションを具現化するため、材料戦略委員会で
取り組んできたグリーンマテリアルビジョン策定等の経緯、第5期に向けての課
題と今後の材料戦略委員会の活動等について話を聞き、質疑応答を行った。
引き続き、24年度の専門部会の活動内容と方法、スケジュール等について検
討を行った。
東 北 大 学 准 教 授 、大 学 院 工 学 研 究 科 金 属 フロンティア工 学 専 攻 ・松 八
重一代氏から「材料再資源化における分離・回収の課題と今後の在り方」
と題 し、鉄 鋼 生 産 周 辺 における資 源 フローに着 目 して、ELV部 品 に随 伴
する合 金 元 素 の種 類・量 分 析 、電 気 炉 溶 解 実 験 からみた合 金 元 素 のメタ
ル・スラグへの分 配 傾 向 、スラグに拡 散 している未 利 用 資 源 としてのリンの
ポテンシャル等について話を聞き、質疑応答を行った。
引 き続 き、今 回 試 行 的 に作 成 した処 理 困 難 課 題 リーフレットに関 して、
各 委 員 から概 要 について報 告 し、今 後 の作 成 作 業 の方 針 、スケジュール
等を確認した。
委員から提 案のあった「資源制約に対応する処理困難課題 リーフレット」
について個 々の内 容 検 討 を行 い、それぞれの「リスク懸 念 度 」と「期 待 度 」
を5段 階 評 価 の基 準 案 に照 らして評 点 付 けを行 うとともに、この検 討 の中
で出てきたジャンルの追加や注目度などから整理していくこととした。
優秀な技術力で我が国のものづくりをリードする(株)小松製作所粟津工
場 (石 川 県 小 松 市 )と独 自 の取 り組 みで工 学 系 人 材 の教 育 ・育 成 で成 果
を挙げている金沢工業大学(石川県野々市市)の現地調査を実施した。
(株)小 松 製 作 所粟 津 工 場では、斉 藤 雅美 総 務 部 長から小 松 製作 所 全
体 及 び粟 津 工 場 の概 要 、生 産 性 30%向 上 やエネルギー使 用 量 50%削
減 など重 点 活 動 の取 り組 みについて説 明 を聞 き質 疑 応 答 を行 った。次 い
で、ホイールローダ、モーターグレーダ、トランスミッション組 立 工 場 を見 学
した。
金沢 工 業大 学では、石 川憲 一 学長 から「金沢 工 業大 学 における工 学 教
育について」と題 し、教 育 改 革への取 り組 みの経 緯、“学 生 主 役の大 学 づ
くり”や“学 生 自 ら考 え行 動 する技 術 者 の育 成 ”等 の教 育 ビジョンとそのた
めの環 境 整 備 、教 育 の実 践 例 等 について説 明 を聞 き、質 疑 応 答 を行 っ
た。引 き続 き、扇 が丘 キャンパス内 のライブラリーセンター、夢 工 房 、数 理
工 教 育 研 究 センター等 の施 設 、さらに“やつかほリサーチキャンパス”にあ
る“ものづくり研究所”の実験設備等を見学した。
「資 源 制 約 に対 応 する処 理 困 難 課 題 リーフレット」に関 して、ジャンル別
整 理 のための項 目 名 とその位 置 づけについて検 討 し、マップ化 した。引 き
続 き、前 回 の議 論 に基 づいて修 正 を加 えたリーフレット内 容 及 びそのジャ
ンルの確 認 を行 った。また、リーフレットのネーミングを検 討 し、「材 料 分 野
から見た“魅力”と“難しさ”の事例集」とすることとした。
vi
会合名
日
時
第 24 回委員会
25.2.4
第 25 回委員会
25.3.21
実
施
事
項
「材 料 分 野 から見 た“魅 力 ”と“難 しさ”の事 例 集 」に関 し、作 成 の背 景 と
位置づけをまとめた目 次 案2章 部分と、修 正を加 えた各事 例 全件(54件)
の内容確認を行った。
学 側 委 員 からの話 題 提 供 として、まず醍 醐 市 朗 委 員 (東 京 大 学 工 学
系マテリアル工学専攻特 任准教授)から「社会のメタボを予防 せよ!」と題
し、社 会 における産 業 間 の物 質 やエネルギー面 でのつながりを分 析 する
産 業エコロジー、日 本のマテリアルフロー、素材 の蓄 積、資 源 消 費の今後
について、次に柴田悦郎委員(東北大学 多元物質科学研究所サステナ
ブル理 工 学 研 究 センター准 教 授 )から「非 鉄 製 錬 とリサイクル」と題 し、非
鉄 製 錬 業 の役 割 、銅 ・鉛 ・亜 鉛 製 錬 プロセス、リサイクル原 料 、各 製 錬 所
間 のリンクによる有 価 金 属 の回 収 などの研 究 内 容 を紹 介 し、意 見 交 換 を
行った。
最 後 に長 井 部 会 長 及 び委 員 から今 年 度 作 成 した事 例 集 に関 連 した報
告を行い、専門部会の活動を締めくくった。
vii
目
次
序
はしがき
代替材料技術に関する調査専門部会 委員名簿
平成24年度の活動概況
目次
本論 ·································································································································································
Ⅰ 材料再資源化の視点からの社会貢献の可能性検討 ·····························································
1. 社会貢献の視点 ···························································································································
2. 代替材料技術に関する調査専門部会の戦略マップ ····························································
3. 材料分野から見た“魅力”と“難しさ”の事例集作成に当たって ·········································
4.収録一覧表 ·····································································································································
1
1
1
3
4
7
Ⅱ 材料分野から見た”魅力”と難しさ”の事例集 ············································································ 9
1. 除染を含むインフラ再生技術 ································································································· 9
1-1. 機能劣化した建築物の「構造」は生かしつつ、機能リフォームするリユース技術 ········ 9
1-2. 代替材料技術の視点からの東日本大震災対応 ··························································· 11
【除染作業の抜本的改善】 ···························································································· 11
【汚染土壌処理】 ············································································································ 12
【震災復興立地】 ············································································································ 14
【がれき処理】 ·················································································································· 15
2. 代替技術 ········································································································································ 17
2-1. 高機能磁石の非 Dy 化 ···································································································· 17
2-2. 難燃剤の非ハロゲン化 ···································································································· 18
2-3. 銅線の非金属代替 ··········································································································· 19
2-4. 銅線の非銅化 ··················································································································· 20
2-5. 高炉鋼でのレアメタル節約 ······························································································ 21
2-6. 鉄鋼(転炉・電炉)スラグの新規利用 ·············································································· 22
2-7. 触媒 Pt の代替 ················································································································· 23
2-8. 熱電素子の有害元素フリー化 ························································································· 24
2-9. 高強度鋳鉄の接種材のレアアースフリー化 ··································································· 25
2-10. はんだ材及び摺動部材の鉛フリー化 ············································································· 26
2-11. 二次電池の Li 代替 ········································································································· 27
2-12. 天然クロマイト砂の人工資源化 ······················································································· 28
2-13. 金属樹脂混合物の処理 ··································································································· 29
3. 無害化 ············································································································································ 31
3-1. 臭素含有プラスチックの分離と処理 ··············································································· 31
3-2. 臭素を無害化し、自然に返す ························································································· 32
3-3. CCA 処理木材の無害化 ································································································· 33
3-4. アルミドロスの無害化 ······································································································· 34
4. エネルギー回収技術 ·················································································································· 35
4-1. 高効率熱電素子の開発 ··································································································· 35
4-2. 熱処理炉からの廃熱低減 ································································································ 36
viii
4-3.
4-4.
4-5.
ムーンライトをもう一度 耐食耐熱材料開発 ··································································· 37
低温廃熱・冷熱有効活用 ································································································ 38
廃熱回収 ··························································································································· 39
5. 世界が羨む材料デザイン ·········································································································· 41
5-1. スクラップ鉄のリサイクル材料設計 ·················································································· 41
5-2. 伸銅品のリサイクル材料設計 ·························································································· 42
5-3. リサイクルを目指した組成開発 ························································································ 43
5-4. チタン合金のリサイクル設計 ···························································································· 44
5-5. 炭素繊維強化複合材料(CFRP)のリサイクル設計 ······················································ 45
6. 世界が羨む社会システムデザイン ··························································································· 47
6-1. 識別手段の革新「電子タグ」システムによる希少金属のリサイクル ······························· 47
6-2. 識別手段とリサイクル規格化 ··························································································· 49
6-3. 合金種統合化とリサイクル規格化 ··················································································· 50
6-4. 都市鉱山からのリサイクルを促進する社会制度 ···························································· 51
6-5. ナショプロでの鉱山・製錬関連技術開発 ······································································· 52
6-6. 識別手段とリサイクル規格化 ··························································································· 53
7. 希少資源の活用・リサイクル技術 ····························································································· 55
7-1. 触媒白金のリサイクル ······································································································ 55
7-2. 白金、パラジウム触媒の回収 ··························································································· 56
7-3. 下水道汚泥からのリン回収 ······························································································ 57
7-4. 希土類ボンド磁石のリサイクル ························································································ 58
7-5. 超硬工具からのタングステン、コバルト回収 ··································································· 59
7-6. 耐酸化コーティングからの貴金属回収 ··········································································· 60
7-7. 微生物による金属回収 ···································································································· 61
7-8. 高分子吸着による金属回収 ···························································································· 62
7-9. 鋳造砂型からの砂回収 ···································································································· 63
7-10. プリント基板からの銅回収 ································································································ 64
7-11. 樹脂めっき部品からの銅回収 ························································································· 65
Ⅲ むすび ················································································································································· 67
講演資料 ···················································································································································· 69
「材料再資源化における分離・回収の課題と今後の在り方」
東北大学 大学院工学研究科 准教授 松八重一代 氏
代替材料技術に関する調査専門部会の活動経過 ········································································· 87
ix
Ⅰ 材料再資源化の視点からの社会貢献の可能性検討
1.社会貢献の視点
日本が世界に先駆けて 21 世紀型の新しい成長を創出してゆく為の戦略において、材料に求められる
課題を整理し、更には材料の中でも本部会のミッションである「代替材料技術」の視点で、より効果的
に社会貢献に結び付く内容を検討し、戦略マップの形で整理するとともに、それに対応する「技術開発
課題」についてリーフレットの形で整理したので、以下に報告する。
安倍首相官邸主導の第 1 回産業競争力会議資料(平成 25 年 1 月 23 日
図 1)に示す如く、大局的に
は「双発型エンジンを持つ産業国家」が提唱されており、その中において材料の占める位置付けは大き
い。又、個別内容を詳細検討した内閣府・新成長戦略(表 1、表 2)において、筆頭戦略分野である「グ
リーンイノベーション」や 21 の国家戦略プロジェクトの代表例である「環境未来都市」
(図 2)におい
ても、材料に期待される部分は非常に大であるが、その「グリーンイノベーション」全体を支える材料
戦略の概念図を図 3(次ページ)に示す。
はじめに
~「双発型エンジン」を持つ産業国家へ~
「縮小均衡の分配政策から「成長による富の創出」へとかじを切り、
「貿易立国」と「産業投資国家」との「双発型エンジン」の産業国家へ
「課題先進国」日本
・少子高齢化
・インフラの老朽化
コア技術の集中投資
によるイノベーション
・財政赤字
・エネルギー環境制約
海外展開の果実を
イノベーション・雇用へ
貿易立国
他
アジア市場を取り込んだ
積極的な海外展開
産業投資立国
双発型エンジンを持つ産業国家へ
世界が直面する課題解決による海外市場獲得
出典:平成 25 年 1 月 23 日 第 1 回産業競争力会議資料 甘利経済再生担当大臣ご提出資料
図 1 双発型エンジンを持つ産業国家の提唱
表 1 新成長戦略-「強い経済」
表 2 21 世紀の日本の復活に向けた
「強い財政」
「強い社会保障」の実現
21 の国家戦略プロジェクト
出典:平成 22 年 6 月 18 日「新成長戦略」内閣府資料より
出典:平成 22 年 6 月 18 日「新成長戦略」内閣府資料より
-1-
図 2「環境未来都市」構想
出典:平成 22 年 6 月 18 日「新成長戦略」内閣府資料より
図 3 にグリーンイノベーション全体を支える材料戦略を整理した。社会へのサービス提供に及ぼす材
料の性格という視点からカテゴライズを行った後、成長著しい「アジアマーケット」と 21 世紀型差別
化サービス提供で世界をリードすべき「日本マーケット」の双方からのニーズを考慮する視点で検討を
行った。
社会へのサービス
提供の視点
グリーンイノベーション全体を
支える材料戦略
公共性
⑤社会インフラ・建設産業材料
④重工・エネルギー産業材料
機能材料
構造材料
③輸送機械・電機産業材料
個人向け
成長分野であるアジアマーケット対策と、21世紀型
差別化サービス提供*(日本の雇用創出含む)の両立志向
*21世紀型差別化サービス提供とは
例えば1割減の原料消費でも2割増の
サービス提供を可能とするような指向で
、「低コストで人々の時間・空間の
余裕を生み出す」ことを目的に、
材料からソリューションの革新を行う。
経済成長
製品供給に向け
てのプロセス
①高効率製造プロセス
アジアマーケット
日本マーケット
②省資源・省エネ製造プロセス
大量消費
省エネ/エコ
経済成長停滞
図 3 グリーンイノベーション全体を支える材料戦略
-2-
2.代替材料技術に関する調査専門部会の戦略マップ
戦略マップ作成に当たっては、
「社会貢献」に向けての各カテゴリーの具備条件に対する位置付け整理
という観点で行った。図 4 の様に、開発の実行の難しさは、原理の難しさと工夫の難しさの総和で決定
される。その実行の難しさを考慮しつつ、成果の魅力を追求すると下図の左上に近いカテゴリーから優
先的に取り組む事が効率的と考えられ、但し、後述する如く、以降の個別課題を検討する場合には、
「ハ
イリスク/ハイリターン」的な視点も用いており、具体的には、両者を適切なバランスでもって判断する
ものである。
実行の難しさ
工夫の難しさ
エネルギー回収技術
世界が羨む社会システムデザイン
希少資源活用・リサイクル技術
世界が羨む材料デザイン
インフラ再生技術(除染含む)
無害化
代替技術
原理の難しさ
優先度大
魅力
①インフラ再生技術(除染含む)
③無害化
②代替技術
④エネルギー回収技術
⑤世界が羨む材料デザイン
⑥世界が羨む社会システムデザイン
⑦希少資源活用・リサイクル技術
実行の難しさ
図 4 代替材料技術に関する調査専門部会の戦略マップ
-3-
3.材料分野から見た“魅力”と“難しさ”の事例集作成に当たって
前項で示した戦略マップを踏まえ、材料分野の技術開発課題について、産学の現状認識、今後
求められる技術など、産学で共有すべき情報を「材料分野から見た“魅力”と“難しさ”の事例
集」としてリーフレット形式に纏めた。
3-1.事例の収集
(1)専門部会委員の身近に関わる(関心のある)現実的な課題について、出来る限りアウト
プットのイメージが湧くように具体的製品名やソフト技術名を挙げた事例を収集した。
(2)事例は、1件1葉の定型フォーマットを設定し、以下の項目を盛り込んだ。
◇背景
◇現状
・需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等
・リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>
◇課題
・処理困難の理由
・今後波及すると思われる問題点
・課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等(産業側、学側)
・対象物質
・リスク懸念度
◇対応策
・社会・経済的側面での対応
・技術的側面での対応、代替材料技術シーズ
(課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽、特に機械分野における技術課題)
・産学で共有すべき情報、連携すべき事項
・対策後の改善レベル(目標)、メリット
・期待度
3-2.事例集の工夫と特徴
(1)個々の事例に共通する問題点を社会的意義の視点で7つのカテゴリーに分類した。
(2)カテゴリーは、「実行の難しさ」と「成果の魅力」という観点から、取り組みの優先度
の順位付けをした(前項の「実行の難しさ」と「成果の魅力」図を参照、図の左上が上位)
。
優先順位とカテゴリー名
優先順位
カテゴリー
①
除染を含むインフラ再生技術
②
代替技術
③
無害化
④
エネルギー回収技術
⑤
世界が羨む材料デザイン
⑥
世界が羨む社会システムデザイン
⑦
希少資源の活用・リサイクル技術
(3)個々の事例は、その影響の大きさにより「リスク懸念度」と「期待度」を5段階で評価
し、評点の総和の大きい順に整理した。
-4-
「リスク懸念度」と「期待度」の評点は、以下の基準(目安)により専門部会内で検討し
て決定した。
リスク懸念度
5
対策を講じなければ、
・社会的な影響大(環境負荷、
有害性等)
・経済的な影響大(コスト大等)
・処理困難度大(対応技術・プロ
セス無し、効率性等)等
大
期
待
度
5
4
3
2
1
小
4
課題解決することで、
・社会的な影響大(環境負荷低減、
有害性低減等)
・経済的な影響大(コスト削減等)
大
・改善レベルの効果大
・改善シーズの信頼度大
・改善シーズの独創性/差別性大等
3
2
1
<影響の大きさの目安>
5.世界規模
4.国家規模
3.(産業)分野規模
2.地域規模
1.限定規模
小
3-3.事例集の活用に当たって
本事例集は、資源制約への対応や材料分野で産業側が抱える問題、学側が情報を提供できる
ものなど、産学、異業種間での情報共有を大きな目的としている。今回収録した事例は54件
と限られているが、広範な社会、産業界の各所、それぞれの立場で抱える課題に対する情報共
有を促し、更に追加、拡充がなされていくことで、一層有効に活用されることを期待する。
-5-
-7-8-
7.希少資源の
活用・リサイクル技術
6.世界が羨む
社会システムデザイン
5.世界が羨む
材料デザイン
4.エネルギー回収技術
3.無害化
2.代替技術
1.除染を含む
インフラ再生技術
カテゴリー
高濃度汚染物質(10000Bq/kg超)処理
(4)
汚染物質
用メガフロート 汚染封じ込め
高濃度汚染物質(10000Bq/kg超)処理
汚染物質
用メガフロート 汚染減容化
セラミック
Dy
ハロゲン
Cu
複合酸化
物
(5)
(6) 洋上エコタウン
(7) 熱回収可能な防腐処理木材
(8) 再生利用可能なセラミック原料
(9) DyフリーのEV用モーター回転子
(10) ハロゲンフリーの燃料ホースなど
(11) 炭素をベースにした送電材料
(12) リサイクル容易な導電金属ケーブル Cu
レアメタル
高濃度汚染物質(10000Bq/kg超)・
(3)
除染ロボット
(13) レアメタル半減高炉鋼
(14) 人工資源による土、砂、岩礁
代替材料技術の視点からの東日本大震災対応
【除染の抜本的改善対策】
代替材料技術の視点からの東日本大震災対応
【汚染土壌処理】
代替材料技術の視点からの東日本大震災対応
【汚染土壌処理】
代替材料技術の視点からの東日本大震災対応
【震災復興立地】
代替材料技術の視点からの東日本大震災対応
【がれき処理】
代替材料技術の視点からの東日本大震災対応
がれき処理
高機能磁石の非Dy化
難燃剤の非ハロゲン化
銅線の非金属代替
銅線の非銅化
高炉鋼でのレアメタル節約
鉄鋼(転炉・電炉)スラグの新規利用
鋼構造建築物の平均寿命+20年
対策後の改善レベル(目標)
新たなレアアースフリー接種材の レアアースの使用量低減とFCD材の安
開発
定供給
Te、Sb、
(16) 有害元素を含まない熱電モジュール
Se
レアアース
鉛、銅、
窒化、表面改質、コーティング
銀、ビスマス
Li、Na
Cr
樹脂
Br
(17) レアアース半減の球状黒鉛鋳鉄
(18) 非Pbの摺動部材、電装品
(19) ナトリウム電池
(20) 鋳鋼鋳型用人工砂
(21) 再生可能な金相組織観察用試料
(22) 熱回収と臭素物質減容化
(23) 無害な臭化塩作成技術
熱電素子の有害元素フリー化
高強度鋳鉄の接種材のレアアースフリー化
はんだ材及び摺動部材の鉛フリー化
二次電池のLi代替
天然クロマイト砂の人工資源化
金属樹脂混合物の処理
臭素含有プラスチックの分離と処理
臭素を無害化し、自然に返す
Al
Ti
(32) 再生高機能伸銅品
(33) 再生高機能アルミニウム合金
(34) 再生高機能チタン合金
(35) 再生炭素繊維強化複合材料(CFRP) C
伸銅品のリサイクル材料設計
リサイクルを目指した組成開発
チタン合金のリサイクル設計
炭素繊維強化複合材料(CFRP)のリサイクル設計
研究開発シーズの実用化
4
4
日本発のアルミニウムの健全なリサイ
合金種別選別技術、同一合金種に
クルシステムの創生と、安価なアルミ
よる多様な機能発現
ニウム資源の確保
4
4
複合材料の樹脂熱分解による金属 Nd-Fe-Bボンド磁石リサイクル化率:
分離技術
50%
工具破さい材⇒溶射肉盛などの再
新規W、Co地金の消費量減少
利用推進
Nd、Dy
W、Co
(47) 再生Nd-Fe-Bボンド磁石
(48) 再生超硬工具
希土類ボンド磁石のリサイクル
超硬工具からのタングステン、コバルト回収
Pの枯渇防止と輸入量の削減
新規Pt、Pd地金の消費量減少
1
1
2
2
Cu
Cu
(53) 再生銅を使ったプリント基板
(54) 再生銅を使った樹脂めっき部品
プリント基板からの銅回収
樹脂めっき部品からの銅回収
ASRからの回収・リサイクル技術
物理的選別の精緻化
Cu消費量減少
Cu消費量減少
3
1
天然砂の資源枯渇回避
Cr
(52) 再生鋳鋼鋳型用クロマイト砂
鋳造砂型からの砂回収
高温融体物性評価/予測技術
4
1
金属資源の自前確保
高分子吸着による金属回収
4
1
低濃度水溶液(工場・鉱山廃水、海
レアメタルなど 高分子による金属吸着技術
(51)
水など)を資源化
微生物による金属回収
2
低濃度水溶液(工場・鉱山廃水、海
レアメタルなど 微生物による金属吸着・濃縮技術 金属資源の自前確保
(50)
水など)を資源化
耐酸化コーティングからの貴金属回収
4
4
4
5
ジェットエンジン、ガスタービンの
Pt
(49)
再生コーティング
ブラスト、電解、エッチング技術 新規Pt地金の消費量減少
触媒の回収技術
3
高効率な熱循環炉
下水道汚泥からのリン回収
5
化学肥料など起因の下水道汚泥の資
P
(46)
源化
4
Pt、Pd
(45) 高効率のKDPF(排ガス浄化装置)
新規Pt地金の消費量減少
白金、パラジウム触媒の回収
5
4
Pt濃度を高める中間処理
Pt
(44) 燃料電池車の普及
触媒白金のリサイクル
3
3
Mn
(43) Al-Mn含有高張力鋼
識別手段とリサイクル規格化
3
3
(42)
識別手段とリサイクル規格化
レーザーアブレーション・発光分
フェロマンガン使用量の削減
光分析による含有成分の定性分析
4
5
4
4
5
5
4
4
4
リサイクル性の高い設計/機械的
将来的な天然資源の消費削減
選別による精緻な素材選別
3
・工場廃水等から酵母を用いて金
属を回収する技術(京大 植田教授
資源国の外交交渉の武器になり得る金
レアアースなど ら)
属資源(レアアースなど)の安定入手
・高圧硫酸浸出法によるNi精錬技
術(住友金属鉱山)、など
(41) 金属資源の安定確保
ナショプロでの鉱山・製錬関連技術開発
ベースメタル全般合金種別の選別技 Fe、Al、
術
Cu
2
都市鉱山からの金属資源(レアメタ
ル、貴金属、ベースメタル等)回収の
促進
元素選択
性は無し
(40) 有効活用される都市鉱山
ー
3
レーザーアブレーション・発光分 Ni元素の拡散防止、高価なFe-Ni合金
光分析による含有成分の定性分析 の使用量低減
3
携帯電話内にエキストラを載せるノイズ
レアメタル一次回収率>70%
対策
プリント基板にエキストラを載せるノイズ
レアメタル一次回収率>70%
対策
3
マトリックス樹脂を薬液で分解し
CFRP原単位の低減
て炭素繊維を回収する技術
4
3
4
4
銅精錬を害しない合金の添加によ リサイクル伸銅品の安定供給による製
る高機能化
品価格の安定化
リサイクル容易な高機能アルミニウム
Fe,Siなどのユビキタス合金による
合金による製造コスト低下と日本ブラ
成分設計、
ンド向上
リサイクル容易な高機能チタン合金に
鋼材の精錬プロセスで用いられる
よる製造コスト低下と日本ブランド向
ESR技術の援用
上
4
4
ガス成分(特に窒素)を削減する リサイクル容易な高機能高強度鋼によ
技術の導入など
る製造コスト低下と日本ブランド向上
3
1
3
4
燃焼炉の開発…炭化物・バイオマ
スなどの燃料の利用と乾燥・炭化 100℃の熱回収率向上
一括処理
3
4
熱エネルギーのその他蓄積可能な
熱エネルギーのカスケード利用
エネルギーへの転換技術開発
4
4
断熱材、断熱技術の革新
4
耐熱耐食材料の革新(シリコン
系)
新規高性能熱電材料
4
3
3
低温廃熱の利用率向上
最終処分場の延命
温暖化抑制、エネルギー原単位の低減
による低コスト化
耐火物技術
3
3
5
1
4
都市鉱山からのリサイクルを促進する社会制度
Al
Cu
(31) 再生高機能鋼
スクラップ鉄のリサイクル材料設計
(39) アルミニウム合金
Fe
(30) 間接加熱気流乾燥装置
廃熱回収
合金種統合化とリサイクル規格化
非特定
(29) 蓄熱材料、蓄熱システム
低温廃熱・冷熱有効活用
Ni
新材料
(28) 耐熱セラミックス
ムーンライトをもう一度 耐食耐熱材料開発
(38) Ni系ステンレス鋼
新材料
(27) 高断熱の材料技術
熱処理炉からの廃熱低減
識別手段とリサイクル規格化
新材料
(26) 高効率熱電モジュール
高効率熱電素子の開発
(37) 携帯電話/タブレットPC等
新材料
(25) アルミドロス利用技術
アルミドロスの無害化
元素選択
性は無し
Al
(24) Cu、Cr、As回収技術
CCA処理木材の無害化
識別手段の革新「電子タグ」システムによる希少
金属のリサイクル
CCA処理木材の識別、分離技術
Cu、Cr、
As
元素選択
性は無し
5
安全性評価/分散シュミレーショ
最終処分場の延命
ン
Br
(36) プリント基板を有する一般電子部品
4
レーザーソーティング/廃プラか
らの合成ガス製造と臭素の除去固 最終処分場の延命
定
識別手段の革新「電子タグ」システムによる希少
金属のリサイクル
1
高温融体物性評価/予測技術
最終処分場の延命
2
易崩壊性樹脂/簡便、高速、高精 廃棄物量の削減による処分コストの低
度な含有元素分析技術
減
1
1
4
安全で低コストな二次電池
危険評価/予測技術
鋳物砂供給不安の解消と産業廃棄物と
して排出される廃砂の削減
4
3
3
4
3
3
5
5
4
4
3
有用資源の使用量低減
ハロゲン系難燃剤に代替できる難燃材
の開発による土中埋設物の低減
新規熱電材料(ex.鉄シリサイト
系)の合成技術の開発
(15) 排ガス触媒の非Pt化
触媒分散技術、新規金属反応シュ 白金使用量の低減、代替安価金属触媒
ミレーション
使用
4
5
3
銅の使用量低減
計算材料科学によるマルチスケー
使用量を半減化できると、年間3000億
ル解析、材料データベースの構築
円の経費節減と資源リスクの回避
と利用
活用度の低い資源を有効に活用するこ
生物における元素の役割の解明
とにより、豊かな環境国家の新しい需
要を喚起
ナノおよび混練に関る技術
5
3
5
5
5
4
2
2
3
3
3
4
2
2
5
5
5
4
4
4
期待度
炭素系ナノ材料と金属との融合、 銅の資源制約の解消、送電材料の軽量
その物性研究
化
レアメタル(Dy、Nd等);半減
最終処分場の延命
最終処分場の延命
港湾近傍でのハイブリッド洋上発電の
実機化
5000Bq/kg以上の汚染土壌処理可能な
設備の構築
5000Bq/kg以上の汚染土壌処理可能な
設備の構築
4
4
リスク
懸念度
水酸化物添加のコンポジット材料 ハロゲン系難燃剤に代替できる難燃材
開発
の開発による土中埋設物の低減
モーター設計技術
破砕における粒度分布の制御
CCA処理木材の識別、分離技術
有事時の時間軸を明確にした「封
じ込め技術」
プラズマ技術等、エネルギー集約
技術、軽量化/高効率化の為の高
温耐熱材料の開発
大規模浮体技術、耐食性+高強度
の低合金材料の開発
耐放射線ロボット用半導体、シー
ロボットによる除染処理
ルド材料開発
「総合安全診断システム」の構築 鋼構造建築物の平均寿命+20年
接触/非接触 損傷判定技術
代替材料技術シーズ
触媒Ptの代替
Pt
Cu、Cr、
As
建築物全
般
汚染物質
建築物全
般
(2) 鋼構造建築物のリユース
建築物全
般
対象物質
機能劣化した建築物の「構造」は生かしつつ、機
能リフォームするリユース技術
アウトプット/製品・ソフト技術
(1) 鋼構造建築物の再生
番号
機能劣化した建築物の「構造」は生かしつつ、機
能リフォームするリユース技術
課題
4.収録一覧表
4.【材料分野から見た“魅力”と“難しさ”の事例集】 収録一覧表
3
3
4
5
5
6
8
8
8
9
9
6
6
7
7
8
8
8
8
7
7
8
8
8
4
7
7
8
8
6
7
8
9
2
3
5
6
7
8
8
8
8
8
8
9
10
4
4
8
8
8
8
8
8
総合
Ⅱ
材料分野から見た“魅力”と“難しさ”の事例集
1.除染を含むインフラ再生技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
除染を含むインフラ再生技術
機能劣化した建築物の「構造」は生かしつつ、機能リフォームするリユース技術
(1)鋼構造建築物の再生
(現状)
(背景)
都市インフラに適用されている橋梁・橋
脚等の重要構造物は、長期に渡り使用さ
れ、最近では老朽化による安全性の課題
が重視されてきている。一方、一般建築物
系のビルや公共施設については、安全性
の問題というより、外観・美観も含めた意匠
性の著しい低下・陳腐化により、立て替え
/リニューアルが進行している。本件は「次
世代街区」の基本構想を生かしつつ、意
匠性の劣化を補う点で、腐食ネックで更新
される鋼構造物に対して、ドライアイスショットブ
ラスト等再生技術を大々的に導入する事で
リユース率向上を狙うものである。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
一般建築物系のビルや公共施設については、5割以上が意匠性低下で更新さ
れている。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
リサイクルは結果的には行われているが、スクラップまで解体が進んでからのも
のであり、オンサイトでの再活用という形にはなっていない。
(処理困難の理由)
固有技術としての「ドライアイスショットブラスト」は存在し、一部の機械部品とうには実績もあるが、稼働中の
大規模構造物等には全く実績が無く、又、単純な「化粧直し」的発想では、意匠性低下というニーズには許
容され難い。
(今後波及すると思われる問題点等)
リ
ス
意匠性が原因がゆえに、「客が遠のく」という最も重要な理由とされる為、単なるリサイクル性向上という様な
課 謳い文句では、納得してもらえない。
ク
題
懸
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
念
<産業側>
<学側>
度
次世代街区的「スケルトン/インフィル」の 学としては、ます「都市工学」を核として取り込む必要がある。そ
4
基本構想とドッキングして理論武装する必 の中で、再生のシーズ技術としての「ドライアイスショットブラスト」
要がある。
を機械工学の領域から「建設工学」の領域に拡大する必要があ
る。
(対象物質): 建築物全般
(社会・経済的側面での対応)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
①既存建築物の対象発掘 と②新規建築物で
の具現化 に対象を二分する。①においては、
修復技術後の再生技術との組み合わせで実績
を拡大してゆく事が重要。 ②については スケ
ルトンの易再生化とインフィルのリサイクル比率
向上が挙げられる。
オンサイト腐食表面再生の為のロボット/機械技術の充実も必要
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
接触/非接触 損傷判定技術
<特に機械分野における技術課題>
対
応
策 (産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
国(政府): 都市計画の視点からのバックアップ
産業界: 再生専門業者としての事業性を育成する必要あり
大学や研究機関:建築・都市工学からの支援
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
鋼構造建築物の平均寿命+20年
-9-
期待度
4
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
除染を含むインフラ再生技術
機能劣化した建築物の「構造」は生かしつつ、機能リフォームするリユース技術
(2)鋼構造建築物のリユース
(現状)
(背景)
都市インフラに適用されている橋梁・橋脚
等の重要構造物は、長期に渡り使用さ
れ、最近では老朽化による安全性の課題
が重視されてきている。一方、一般建築物
系のビルや公共施設については、安全性
の問題というより、外観・美観も含めた意匠
性の著しい低下・陳腐化により、立て替え
/リニューアルが進行している。本件は「次
世代街区」の基本構想を生かしつつ、意
匠性の劣化を補う点で、腐食ネックで更新
される鋼構造物に対して、ドライアイスショットブ
ラスト等再生技術を大々的に導入する事で
リユース率向上を狙うものである。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
一般建築物系のビルや公共施設については、5割以上が意匠性低下で更新さ
れている。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
リサイクルは結果的には行われているが、スクラップまで解体が進んでからのも
のであり、オンサイトでの再活用という形にはなっていない。
(処理困難の理由)
スケルトン/インフィルの基本構想は既に構築されている。但し、以前は次世代街区の構想を実現する「要
素技術」の一つとしての「リユース技術」の発展が不十分であった。
リ
ス
意匠性が原因がゆえに、「客が遠のく」という最も重要な理由とされる為、単なるリサイクル性向上という様な
課 謳い文句では、納得してもらえない。
ク
題
懸
念
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
度
(今後波及すると思われる問題点等)
4
次世代街区的「スケルトン/インフィル」の 学としては、ます「都市工学」を核として取り込む必要がある。そ
基本構想とドッキングして理論武装する必 の中で、再生のシーズ技術としての「ドライアイスショットブラスト」
を機械工学の領域から「建設工学」の領域に拡大する必要があ
要がある。
る。
(対象物質): 建築物全般
(社会・経済的側面での対応)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
①既存建築物の対象発掘 と②新規建築物で
の具現化 に対象を二分する。①においては、
修復技術後の再生技術との組み合わせで実績
を拡大してゆく事が重要。 ②については スケ
ルトンの易再生化とインフィルのリサイクル比率
向上が挙げられる。
リユース技術に応じた、構造具備条件/寿命判定技術を次世代街区
システムに組み込むシステム開発が必要
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
リユース材の技術情報に基づく「総合安全診断システム」
<特に機械分野における技術課題>
対
応
策 (産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
国(政府): 都市計画の視点からのバックアップ
産業界: 再生専門業者としての事業性を育成する必要あり
大学や研究機関:建築・都市工学からの支援
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
鋼構造建築物の平均寿命+20年
-10-
期待度
4
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
除染を含むインフラ再生技術
代替材料技術の視点からの東日本大震災対応/除染の抜本的改善対策
(3)高濃度汚染物質(10000Bq/kg超)・除染ロボット
(現状)
(背景)
従前より、日本の森林間伐材について
は、放置が問題視されているが、人手不
足、機械導入の経済合理性から、放置さ
れてきている。この度、①バイオマスソース
②鉄砲水回避の為の防災対策 に加え、
③放射能汚染土壌対策 のニーズが加
わってきた為、従前経済合理性が生まれ
なかった処でも可能性が相当広がってい
る。但し、現時点では、放射能除染の諸対
策が円滑に起動していない為に、まだ本
分野の活動は高くないが、潜在的には可
能性の大きい領域である。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
放射性物質の除染が必要な領域において特にニーズが高まっている。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
現時点では、開発されてロボットは全く実用化されていない。
(処理困難の理由)
代表例1)高放射線濃度+がれき散乱環境での、作業/モニターロボットについては、放射線対策と
易作業性のニーズの両立が技術的に困難であり、実績としても有効なものが出せていない。
代表例2)日本の急峻・不規則な山岳地形で、有効に活動できるロボットは、能力/規模/経済性の
全評価項目を同時に満足していない。今回の除染ニーズで、経済性の点が緩和されるのを期にブ
レークスルーしたい。
(今後波及すると思われる問題点等)
課 代表例1)長期に渡る膨大な繰り返し作業の高効率化が大きな課題
代表例2)森林間伐ニーズ+除染ニーズがドッキングすると解決ニーズはかなり高まるものと考えられる。
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
経済合理性が成立する事業スキ ムを新 高度な機械技術が要求される。強度+機動性+多機能性+耐久
経済合理性が成立する事業スキームを新
高度な機械技術が要求される 強度+機動性+多機能性+耐久
規の除染ニーズも取り込んで構築する必 性
要がある。
(対象物質): リ
ス
ク
懸
念
度
4
汚染物質
(社会・経済的側面での対応)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
除染ニーズの定量化/明確化
経済合理性が期待される環境下での「処理ロボット」の費用
対効果改善研究
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
代表例1)①耐放射線ロボット用半導体の研究
②放射シールド構造と作業性の両立
(シールド材料開発)
代表例2)自動車軽量化に資するべく開発されている諸材料お
よび材料利用加工技術の森林伐採ロボットへの展開
<特に機械分野における技術課題>
シールド材料と作業機械の総合最適化
対
応
策 (産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
国(政府): ニーズ明確化後の支援システムの構築
産業界: 事業計画の立案
大学や研究機関:ロボット開発のすそ野を広げる研究
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
ロボットによる除染処理
-11-
期待度
4
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
除染を含むインフラ再生技術
代替材料技術の視点からの東日本大震災対応/汚染土壌処理
(4)高濃度汚染物質(10000Bq/kg超)処理用メガフロート 汚染封じ込め
(現状)
(背景)
放射能汚染物質の除染については、特に
処理サイトが大きな問題となっている。特
に高濃度汚染物質の場合、高温処理等、
重処理設備が必要であるが、その様な処
理設備を引き受ける地方自治体はどこに
も存在しない。これに対し、メガフロートを
用いた海上での除染処理は、通常時にお
いては住民の説得の必要性は無くなる。
最大の問題は「浮遊物は沈む可能性があ
る」という問題であるが、その可能性を極
小化して処理の実用化を指向するもので
ある。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
現状、高濃度汚染土壌処理設備の引き受け手はない。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
同上
(処理困難の理由)
高温ロータリーキルンや、メガフロート等の要素技術は存在する。最大の課題は①悪天候の場合の対処方
法②浮遊物はごく低い確率ではあるものの、沈む という二点があり、容易には十減しない。
(今後波及すると思われる問題点等)
課 海上についても、漁民や、諸外国等、配慮すべき点は多い。
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
有害物の封じ込めの視点での工業的処
理設備の構築が必要であるが、現時点で
は経済合理性が成立しないので、国家的
見地からの支援が必要
(対象物質): <学側>
沈まないものを作る事は容易ではない。「万一沈む」と判った時
沈まないものを作る事は容易ではない。「万
沈む」と判った時
に「安全に停止する」技術を構築する必要がある。基本的には、
有害物の封じ込め/無害化である。
リ
ス
ク
懸
念
度
5
汚染物質
(社会・経済的側面での対応)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
有害物の封じ込めの視点での工業的処理設備
の構築が必要であるが、現時点では経済合理
性が成立しないので、国家的見地からの支援
が必要
「万一沈む」と判った時に「安全に停止する」技術を構築する必要が
ある。基本的には、有害物の封じ込め/無害化の為のガラス封じ込め
的な技術開発が重要→無機材料+機械処理のシナジー効果発揮
(保管容器材料の軽量化開発)
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
有事時の時間軸を明確にした「封じ込め技術」
対
<特に機械分野における技術課題>
応
浮遊コンテナ方式による、危険物の分散/退避技術の構築
策 (産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
国(政府): 除染ニーズに対する国家支援額の明確化
産業界: 国のニーズを受けた産/産連携の体制づくり
大学や研究機関:封じ込めの為の要素技術開発
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
5000Bq/kg以上の汚染土壌処理可能な設備の構築
-12-
期待度
3
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
除染を含むインフラ再生技術
代替材料技術の視点からの東日本大震災対応/汚染土壌処理
(5)高濃度汚染物質(10000Bq/kg超)処理用メガフロート 汚染減容化
(現状)
(背景)
放射能汚染物質の除染については、特に
処理サイトが大きな問題となっている。特
に高濃度汚染物質の場合、高温処理等、
重処理設備が必要であるが、その様な処
理設備を引き受ける地方自治体はどこに
も存在しない。これに対し、メガフロートを
用いた海上での除染処理は、通常時にお
いては住民の説得の必要性は無くなる。
最大の問題は「浮遊物は沈む可能性があ
る」という問題であるが、その可能性を極
小化して処理の実用化を指向するもので
ある。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
現状、高濃度汚染土壌処理設備の引き受け手はない。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
同上
(処理困難の理由)
高温ロータリーキルンや、メガフロート等の要素技術は存在する。最大の課題は①悪天候の場合の対処方
法②浮遊物はごく低い確率ではあるものの、沈む という二点があり、容易には十減しない。
(今後波及すると思われる問題点等)
リ
ス
海上についても、漁民や、諸外国等、配慮すべき点は多い。
課
ク
題
懸
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
念
<産業側>
<学側>
度
有害物の封じ込めの視点での工業的処 沈まないものを作る事は容易ではない。「万一沈む」と判った時
5
理設備の構築が必要であるが、現時点で
理設備の構築が必要であるが
現時点で に「安全に停止する」技術を構築する必要がある。基本的には、
に「安全に停止する」技術を構築する必要がある 基本的には
は経済合理性が成立しないので、国家的 有害物の封じ込め/無害化である。
見地からの支援が必要
(対象物質): 汚染物質
(社会・経済的側面での対応)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
有害物の封じ込めの視点での工業的処理設備
の構築が必要であるが、現時点では経済合理
性が成立しないので、国家的見地からの支援
が必要
高濃度の放射性物質を減容化処理する技術(具体的にはロータリー
キルン等)のコンパクト化/洋上処理化仕様への開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
プラズマ技術等、エネルギー集約技術
軽量化/高効率化の為の高温耐熱材料の開発
<特に機械分野における技術課題>
対
応
策 (産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
国(政府): 除染ニーズに対する国家支援額の明確化
産業界: 国のニーズを受けた産/産連携の体制づくり
大学や研究機関:封じ込めの為の要素技術開発
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
5000Bq/kg以上の汚染土壌処理可能な設備の構築
-13-
期待度
3
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
除染を含むインフラ再生技術
代替材料技術の視点からの東日本大震災対応/震災復興立地
(6)洋上エコタウン
(現状)
(背景)
現在、洋上風力発電については、5MW超
のものが計画されつつあるが、現時点で
は、それらの経済合理性担保が精一杯で
あり、それ以上の付加価値を創出し、差別
化を狙うところまでは行っていない。現時
点でのFSでは、福島沖の平均風速7m以
上の様な沖合立地でしか成立しないが、
津波対策の防波や、漁礁との連携等も含
めた洋上風力総合開発により、新エネル
ギーの比率を拡大する事を狙う。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
風力のエネルギー利用の視点だけでは、左記の如く、沖合の強風地帯での大
規模設備建設でしか、経済合理性は成立しない。一方、分散型とも言える、近
海での多機能洋上風力発電の場合、防災や漁業という多面的な効果が狙える。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
現状では存在しない。
(処理困難の理由)
風力のエネルギー利用の視点だけでは、左記の如く、沖合の強風地帯での大規模設備建設でしか、経済
合理性は成立しない。
(今後波及すると思われる問題点等)
課 風力発電が成立する条件が限定されてしまう
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
一次産業、二次産業等、従前の枠組みに
次産業、二次産業等、従前の枠組みに 学際的な課題に対して、フレキシブルな発想で要素技術をサ
こだわっていては、新事業が形成されな ポートしていただくこと。
い。
(対象物質): リ
ス
ク
懸
念
度
5
建築物全般
(社会・経済的側面での対応)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
防災特に津波対策としての浮体物の評価の充
実
防波技術と発電技術のハイブリッドの為の具備条件の検討が必要
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
大規模浮体技術
耐食性+高強度の低合金材料の開発
<特に機械分野における技術課題>
対
応
策 (産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
国(政府): 防災マスタープラン
産業界: 地域分散型一次二次複合産業
大学や研究機関:防波技術と発電技術のハイブリッドの為の要素技術研究
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
港湾近傍でのハイブリッド洋上発電の実機化
-14-
期待度
3
カテゴリー
除染を含むインフラ再生技術
課題・テーマ 代替材料技術の視点からの東日本大震災対応/がれき処理
アウトプット/製品等
(7)熱回収可能な防腐処理木材
(現状)
(背景)
銅-クロム-ヒ素系(CCA)防腐剤を用いて
防腐処理された木材は戦後日本の主要木
質材料であり、海外からの輸入も2000年前
後まで続いた。木質系材料の耐久年数から
今後20~30年間で大量のCCA処理木材が
廃棄物として発生することが予想される。東
日本大震災により大量の木造建造物等が
破壊され、がれきとなっており、CCA処理木
材が相当量含まれると考えられる。木材で
あるため野焼きなどの単純焼却処理が行わ
れる可能性があるが、重金属による環境汚
染の危険がある。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
現時点では生産禁止、ただし過去数十年間で生産された
木材の約60%がCCA処理木材。枕木、電柱、建築用土台
などとしてその大部分が国内に蓄積している。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
廃木材は熱エネルギー回収のため直接燃焼されることが
多い。リサイクルされる木材はごく一部である。
(処理困難の理由)
今後約30万m3のCCA木材が発生するが、エネルギー回収のため燃焼すると、銅-ク
ロム-ヒ素を高濃度に含有する燃焼灰が発生する。また、ヒ素酸化物は蒸気圧が高
く、大部分が気相に移行するため、排ガス処理が必要となる。さらに、東日本大震災
により大量の廃材ががれきに混入していると考えられ、CCA処理の有無の見分けが難
しいため分別処理は困難である。
リ
ス
課
ク
題
懸
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等) 念
<産業側>
<学側>
度
(今後波及すると思われる問題点等)
がれきに含まれる廃木材への混入による、燃焼灰処理コストの増加、排ガス処理設備
コストの高騰、環境汚染リスク
2
通常木材と異なる、海水を被ったがれき廃 燃焼に伴う重金属の分配挙動が提供可
木材の処理の技術的問題点、CCA処理 能、CCA処理木材が塩分を含む場合の重
木材の燃焼処理の特異性・課題の抽出が 金属挙動の更なる調査の必要性
必要
(対象物質): Cu、Cr、As
(社会・経済的側面での対応)
CCA処理木材の適正分別、回収、処理ルート
の確立、速やかな処理を必要とする大量のがれ
きに対応するためには安全に燃焼しつつ熱回
収を進めることが合理的である。
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
燃焼技術の改善による重金属の飛散防止、排
ガスの適正処理、他のヒ素含有物質との共同処
理。例えば火力発電所での石炭との混焼による
ヒ素の回収技術確立。
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・CCA処理木材の識別、分離技術
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
安価な燃焼・熱回収装置、排ガス浄化装置開発
(産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
CCA処理木材の発生経緯、発生量の予測、現行の問題点把握。特に大量に発生したがれきの廃木
材に含まれるCCA処理木材の割合、種類の定量的把握
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
最終処分場の延命
-15-
期待度
2
除染を含むインフラ再生技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
代替材料技術の視点からの東日本大震災対応/がれき処理
(8)再生利用可能なセラミック原料
(背景)
(現状)
日本家屋の屋根材として使用されている瓦は、
取り壊し時に形状を維持して回収することがコ
スト的に困難であることから、建築廃材として排
出される。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
推定排出量は100万トン近くあり、従来はその殆どが安定型処分場で埋め
立て処分をされてきた。しかし近年、適度な粒度に破砕したものが、透水性
舗装材や壁材の骨材として、セメントや樹脂で固化することにより利用され
ている。
(関連する技術の現状)
透水性舗装は雨水の地下浸透による都市の洪水防止や水分の気化冷却
によるヒートアイランド現象の緩和の効果があると考えられており、採用が拡
大している。
また家屋の内壁に調湿機能や化学物質分解機能を有する壁材や塗料を
採用するケースが増加している。
(処理困難の理由)
・扁平な形状であるために処分場での埋め立て効率が悪い。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
・埋立効率の低下は処分場あたりの廃棄物処分可能量の低下をもたらし、結果として廃棄物全体の処
分コストが上昇する。
・東日本大震災において放射能で汚染された地域の廃瓦は最利用するためには除染が必要。
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
・単なる廃材の再利用というだけではなく、良好 ・透水性、保水性のある舗装が環境改善に及ぼす効
な保水性,照り返しの少なさ・作業性の良さ・歩 果に関するリーズナブルな評価手法の提供
行感の良さなどのメリットを活かした製品開発を
進める必要がある。
(対象物質): リ
ス
ク
懸
念
度
2
セラミック
(技術的側面での対応策)
(社会・経済的側面での対応策)
・公共工事等での採用による消費量の拡大
・廃材をリサイクルした建築素材の利用を促進するた
めの支援
・効率的な破砕整粒方法および装置の開発
・適切な固化剤およびその配合比の選定
・無機多孔質における除染技術の開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
・破砕における粒度分布の制御
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
最終処分場の延命
-16-
2
2.代
替
技
術
カテゴリー
代替技術
課題・テーマ 高機能磁石の非Dy化
アウトプット/製品等
(9)DyフリーのEV用モーター回転子
(現状)
(背景)
近年、EV(電気自動車)、HEV(ハイブ
リット自動車)などの生産が活発化してい
るが、これらの駆動系に組み込まれるモー
ターの回転子には、レアメタル(ジプロシウ
ム、ネオジウム等)が使われる。このレアメ
タルの生産地は、ほとんど中国であり、近
年の輸出量の制限、もしくは価格高騰が
自動車メーカ、モーター製造メーカに与え
る影響は大きい。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
回転子に使われるレアメタル(ジプロシウム、ネオジウム
等)の使用料=HV生産量は、今後も急激にその使用料
が増加すると思われる。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
回転子に使われるレアメタル(ジプロシウム、ネオジウム
等)は、リサイクルさせるほどのリターンがない。
(処理困難の理由)
これからの変化であり、すなわち駆動系:ガソリンエンジンから、モーターへの移行で
あり、HEV自動車のライフサイクルの一定した状況に至るまでは時間がかかる。
リ
ス
課
ク
題
懸
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等) 念
<産業側>
<学側>
度
(今後波及すると思われる問題点等)
中国側の輸出制限、価格設定次第で国内自動車産業の成長が左右される。また、埋
蔵量の把握そのものの調査も不完全と思われる。
5
北海道大学、東京理科大学などでもレア
北海道大学、東京理科大学などでも ア
アースフリーのモーターを開発研究してい
るが、研究レベルであり、量産化などの製
造課題解決までは至っていない。
(対象物質): Dy
(社会・経済的側面での対応)
対
応
策
CO2排出低減=地球温暖化対策、枯渇が危
ぶまれる化石燃料の使用量削減などの世界的
な動きから,この点におけるHEV自動車への
移行はますます進み、有効な対策は無い。
自動車メーカ、モータメーカが独自にモータ
設計・開発をすすめており、かつクローズ的な
開発案件と思われる。いずれも企業としての大
きな市場・利益絡みの将来案件であり、非公開
的な技術開発である。
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
HEV用モータは、一般的にラジアルギャップ型
モータであり、その構造から回転子の支持板に
積層された電磁鋼鈑などが採用されている。こ
の回転子を貫通するように、レアメタルを含む磁
石が装着されている。レアアースの代替えであ
る安価なフェライト磁石を組み込むためには、
回転子構造はもとよりモーター構造の基本設計
見直しが必要となる。
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・モーター設計技術
(産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
レアメタル(ジプロシウム、ネオジウム等);半減
-17-
期待度
5
代替技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
難燃剤の非ハロゲン化
(10)ハロゲンフリーの燃料ホースなど
(背景)
(現状)
機械装置の燃料ホースやシートファブリックなど
に乗員の安全性確保するために、難燃性であ
ることを定めている、一方で、難燃性であるため
には、ハロゲン系の難燃材を添加する必要があ
り、そのために、リサイクルができなくなる問題が
ある。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
難燃性材添加のゴム部品やシートファブリックはリサイクル不可
難燃性材を除去することは技術的に困難
(関連する技術の現状)
メーカ毎に対応が異なる。
(処理困難の理由)
ハロゲン系難燃剤に代替できる添加材がないため、実質的なリサイクルができない。
(今後波及すると思われる問題点等)
大量の埋設物の処理が必要
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
ハロゲン系難燃剤を使用しないゴム材の使用
促進
(対象物質): <学側>
ハロゲン系難燃剤に代替できる難燃材の開発
リ
ス
ク
懸
念
度
4
ハロゲン系元素
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
難燃性規制の不必要な規制緩和
リサイクルシステムの構築
ハロゲン系難燃剤に代替できる難燃材の開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・水酸化物添加のコンポジット材料開発
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
ハロゲン系難燃剤に代替できる難燃材の開発
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
ハロゲン系難燃剤に代替できる難燃材の開発による土中埋設物の低減
-18-
5
代替技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
銅線の非金属代替
(11)炭素をベースにした送電材料
(背景)
(現状)
銅はベースメタルに分類されているが、銅鉱石
は地球化学的に見て「乏しい資源」である。銅
は送電材料として重要であり、今後も需要の増
加が見込まれるが、資源量から見て対応できな
くなる可能性がある。持続可能な社会を構築す
るためには、銅のリサイクルをさらに徹底すると
共に、銅線を代替できる送電材料の開発が望
まれる。炭素は資源量が豊富で、一定の導電
性があり、線材化も可能である。銅線を代替で
きる素材として期待できる。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
(関連する技術の現状)
銅代替送電材料として超電導線材の検討が進められているが、コ
スト面などで課題が多い。金、銀などの貴金属による代替も、資源
量、コストの両面から期待できない。
(処理困難の理由)
グラファイト構造の炭素は一定の導電性を有するが、導電性のレベルは銅に比べると大幅に
低い。これを銅なみ、または銅以上に引き上げる技術を開発できるかがポイントになる。現在
の炭素繊維はコストが高く、低コストの炭素線材の開発も課題である。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
現在の炭素繊維の製造技術に拘らない炭素線 炭素の導電性に関する基礎知見の蓄積。炭
材の低コスト量産技術
素の構造と導電性の関連、炭素と金属の融
合による導電性の向上など。
(対象物質): リ
ス
ク
懸
念
度
3
Cu
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
炭素の導電性に関するサイエンス面での進歩が必要で
あり、導電性を飛躍的に向上できる技術の開発がポイ
ントになる。なお、カーボンナノチューブは銅に比べて2
桁高い電流密度に耐えられることが知られており、技術
開発の糸口になるかも知れない。
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・炭素系ナノ材料と金属との融合、その物性研究
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
送電材料が具備すべき技術的要件(導電性能、耐久性、施工性など)と経済的要件。
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
銅の資源制約の解消、送電材料の軽量化
-19-
5
代替技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
銅線の非銅化
(12)リサイクル容易な導電金属ケーブル
(背景)
(現状)
➣ケーブルの導体は主に銅合金が使用されて
いるが、銅市場や為替の変動により供給が安定
していない。 構造物の簡易化、作業の効率
化、敷設断面の効率化などの要求によりコンパ
クトで軽量なものが求められている。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
➣現在一般に普及しているケーブルのリサイクルは高いレベルで行なわれ
ている。よって、他の素材に置き換えても同様のリサイクルが可能である。
(関連する技術の現状)
➣新たに使用される素材は銀・アルミ・すずであり、従来通りのケーブルの
リサイクル技術で問題ない。
(処理困難の理由)
➣コーティングする樹脂に成形効率や機械的強度性能に使い勝手の良い熱硬化性のものが使用さ
れた場合には、破砕⇒分別のプロセスをとらざるを得ず、熱可塑性に比べ、手間が掛かる。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
➣銀が使用されるパワーケーブルの場合にはコストが課題となる。 銀ほどではないが、アルミ・すずが
使用される弱電ケーブルでも同様の課題が残る。
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
➣資材調達ルートの確保(=サプライチェーン) ➣導電性能向上に関る研究開発
と製造過程の効率化
(対象物質): リ
ス
ク
懸
念
度
3
Cu (社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
➣リサイクルを含めたサプライチェーンの構築
➣絶縁性・電気特性・耐熱性・耐寒性・耐薬品性・耐候性・難燃
性の技術確立。導体に使用する素材(すず・ニッケル・銀等)の
選定
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
➣ナノおよび混練に関る技術
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
➣混練(=ニーダー)に関る技術
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
➣軽量化が必要な自動車用配線材や電子機器、通信機器、高温機器などへの適応条件の設定
➣耐薬品性が必要な機器の配線材やリード線及びアンモニア冷媒周辺機器の配線材やモーター用巻線
などへの適応条件設定。
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
➣銅(=Cu)の使用量低減
-20-
5
代替技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
高炉鋼でのレアメタル節約
(13)レアメタル半減高炉鋼
(背景)
(現状)
鉄鋼産業はレアメタルの主要な利用産業であ
る。Mn:58%、Cr:97% 、Ni:39%、Mo:82%、
Nb:97%、V:82%などと極めて高い利用率である。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
Mn:358トン、Cr:591トン、Ni:90トン、Mo:28トン、Nb:7.1トン、V:1.9トンが鉄
鋼産業で消費されている。
(関連する技術の現状)
様々な省合金化の試みがなされてきたが、抜本的な対策がなされている訳
ではない。
(処理困難の理由)
Cr、Ni、Moなどはリサイクル過程で除去しにくい元素であり、鉄鋼合金のリサイクルの障壁となる。
(今後波及すると思われる問題点等)
原料鉱石を海外に依存しており、資源リスクが高い
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
鉄鋼材料における元素戦略課題と産業界から
見た計算科学への期待 新日鐵㈱ 潮田浩作
フェロー
http://www.element.jst.go.jp/sympo/20120124
/file/20120124_03_ushioda.pdf
(対象物質): <学側>
構造材料における計算材料科学の現状
大阪大学 尾方成信教授
http://www.element.jst.go.jp/sympo/20120124/file/
20120124_04_ogata.pdf
リ
ス
ク
懸
念
度
4
レアメタル
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
原理原則に立ち返った基礎研究への社会的投資
・削減・代替技術の確立-ユビキタス元素の利用拡大
・機能発現技術の確立
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
「材料ゲノム工学」
計算材料科学によるマルチスケール解析
材料データベースの構築と利用
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
材料機能ニーズの再点検
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
ベクトルのそろった産学連携の推進、特に最先端の実験科学と計算科学の融合
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
使用量を半減化できると、年間3000億円の経費節減と資源リスクの回避
-21-
4
代替技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
鉄鋼(転炉・電炉)スラグの新規利用
(14)人工資源による土、砂、岩礁
(背景)
(現状)
鉄鉱石を炭素で還元し(高炉)さらに過剰な炭
素を酸素で酸化する(転炉)プロセスと、スクラッ
プ鉄を再溶解する(電炉)プロセスが、鉄鋼生
産の二大ルートである。いずれの工程において
も、不純物の除去に伴って複合酸化物である鉄
鋼スラグが発生する。この鉄鋼スラグはセメント
原料、土木資材などで利用されてきたが、その
需要先は年々縮退傾向にある。再資源化の抜
本的な対策への期待が高まっている。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
H23年度統計によると高炉スラグは生産2416万トン、外販2454万トンであ
る。それに対して、製鋼スラグは生産1421万トン、外販900万トンとなってい
る。
(関連する技術の現状)
現行の主要な技術は、粉砕と磁選で、Ca,Si系酸化物と鉄分を分離回収す
るものである。
(処理困難の理由)
・不純物や製鉄原料成分で活性なものや生物毒性を懸念される物質が含まれている
・電炉スラグでは、スクラップ中に含まれる鉄以外の金属元素を吸収しており、それが再利用の障壁と
なる場合がある。
(今後波及すると思われる問題点等)
・最終処分量の増大による負荷(コストや埋め立て地不足など)の増大
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
鐵鋼スラグ協会
http://www.slg.jp/index.html
(対象物質): <学側>
鉄鋼協会 環境・エネルギー・社会工学部会
https://www.isij.or.jp/Bukai/Gakujutsu/EcoSha/ind
ex.htm
リ
ス
ク
懸
念
度
4
複合酸化物
(社会・経済的側面での対応策)
・リスク評価による技術の社会受容性の拡大
・挑戦的課題に対する社会的支援の拡大
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
・リスク評価技術の高度化
・有害性の除去技術
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・生物における元素の役割の解明
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
地球から採取した物質と地球に健全に戻す技術を柔軟にかつ真剣に検討する仕組みを作る必要がある
特に、地表に散布、海洋に構造物を作る場合には、生物学との連携が不可欠
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
活用度の低い資源を有効に活用することにより、
豊かな環境国家の新しい需要を喚起
-22-
期待度
4
カテゴリー
代替技術
課題・テーマ 触媒Ptの代替
アウトプット/製品等
(15)排ガス触媒の非Pt化
(現状)
(背景)
自動車の排ガス規制は、規制値も強化さ
れる方向で、実施される地域が世界的に
拡大している。自動車排ガス触媒に使う元
素は、白金(Pt)やパラジウム(Pd)などの
白金族である。燃料電池が普及した場
合、白金が不足すると言われている。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
30トン
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
あり
(処理困難の理由)
基材に対する含有量が少ない
リ
ス
課
ク
題
懸
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等) 念
<産業側>
<学側>
度
(今後波及すると思われる問題点等)
燃料電池が普及した場合、白金が不足すると考えられる
5
弊社の触媒としてのPt使用量は多く、コス
トの占める割合が多い。真剣に取り組む必
要がある
要がある。
(対象物質): Pt
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
(社会・経済的側面での対応)
白金コスト削減は弊社群馬事業所の喫緊の課
題。湿式法での除害設備も豊富。
・低コストで再生化する技術の開発
・中間処理により白金の濃度を高める技術開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・触媒分散技術、新規金属反応シュミレーション
(白金を表面に分散させることによる反応効率の向
上、コンピュータシュミレーションによる新規金属反応
シュミレーション)
対
応
策
(産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
産業界:パイロットプラント製造。固体、液体両方処理。回収コスト開示。
大学や研究機関:企業間の橋渡し役。元素の純度向上のための技術や省力化につながる技術開発。
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
白金使用量の低減、代替安価金属触媒使用
-23-
期待度
3
代替技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
熱電素子の有害元素フリー化
(16)有害元素を含まない熱電モジュール
(背景)
(現状)
近年自然エネルギーや再生可能エネルギーに
関する技術開発が注目されている。
熱電変換技術は、熱と電気を直接変換できる
技術で、冷却分野においては50年以上前から
実用化されている。また、発電分野において
は、廃熱回収技術として、近年、特に注目され
ている。
熱電変換分野で実用化されている材料は、
300℃以下の温度領域で変換効率の高いBiTe系であるが、今後の市場成長に伴って、含有
元素であるTe,Sb,Seのような毒物・劇物の回収
や再利用は課題でもある。また、熱電発電分野
においては、レアメタルを含むものも多く、資源
再活用が必要である。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
需給量見通し:冷却分野においては、需給のバランスがある程度取れてい
るが、発電分野においては、今後の市長成長とともに、拡大の可能性があ
る
(関連する技術の現状)
他社技術の動向は不明、ただし廃製品回収やリサイクルは実施されていな
い。
(処理困難の理由)
使用部位が局所的で、かつ分散している。また、素子の微小化に伴い、物理的に取り出しにくく、さら
に電子部品内の組み込み型が多いので、経済的にも分離して取り出すのは困難なため、不純物とし
て含有されたまま、産業廃棄物として処理
(今後波及すると思われる問題点等)
埋蔵量の少ない元素の資源枯渇
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
(課題に対して産
学各 の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
回収システムの構築
(対象物質): <学側>
資源再生技術の開発
リ
ス
ク
懸
念
度
5
Te、Sb、Se
(社会・経済的側面での対応策)
少量・分散型製品の回収システムの構築。
再資源化産業が社会に定着するまで国レベルで資
金等の支援するシステムの構築。
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
・Te,Se,Sbの分離・回収技術の開発
・低コスト再生化技術の開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・新規熱電材料(ex.鉄シリサイト系)の合成技術の開発
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
国(政府):再生化支援に関する法制化
産・官・学:再生化・低コスト化技術開発と事業化の共同プロジェクトを実施
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
ハロゲン系難燃剤に代替できる難燃材の開発による土中埋設物の低減
-24-
3
代替技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
高強度鋳鉄の接種材のレアアースフリー化
(17)レアアース半減の球状黒鉛鋳鉄
(背景)
(現状)
建機部品や自動車部品で使用される高強度鋳
鉄の接種材にはレアアースが使用されている
が、レアアースフリーでは組織制御(黒鉛形状
制御)ができないため、2010年の中国のレア
アース供給停止の際に、供給不安問題が発生
した。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
接種材に含まれるレアアースは、生産国が中国に偏在するリスクがあり。
リサイクルプロセス無し[微量添加でリサイクルが技術的・経済的に困難]
(関連する技術の現状)
鋳鉄製造側での接種材添加量の削減検討実施
(処理困難の理由)
高強度鋳鉄の組織制御に必要な接種材は中小の企業で製造し、市場規模から行政に働きかける力
なく、産学連携が困難。接種材の組成開示が企業ノウハウで産学連携が期待できない。
(今後波及すると思われる問題点等)
高強度鋳鉄を必要とする建設機械メーカ、自動車メーカなどの将来の製造不安
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
レアアースフリー化の高強度鋳鉄製造技術確
立
(対象物質): <学側>
鋳鉄の組織制御におけるレアアースの寄与のメカニ
ズム解明
リ
ス
ク
懸
念
度
3
レアアース
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
(社会・経済的側面での対応策)
高強度鋳鉄の組織制御におけるレアアースの寄与のメカニズム
解明による代替材開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・新たなレアアースフリー接種材の開発
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
・FCD材での黒鉛球状化率による機械的性質評価
・球状化のメカニズム解明
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
鋳鉄の組織制御におけるレアアースの寄与のメカニズム解明
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
レアアースの使用量低減とFCD材の安定供給
(レアアース(組成開示には接種メーカの許可が必要)
-25-
期待度
4
代替技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
はんだ材及び摺動部材の鉛フリー化
(18)非Pbの摺動部材、電装品
(背景)
(現状)
欧州のRohs規制やELV廃車規制で、鉛が規制
物質になり、鉛フリー化が進んでおり、一般的
に、鉛はんだはスズ・銀・銅系などに代替が進
む。
一方で、耐焼付性が求められる軸受用ブッ
シュなどの摺動部品の鉛フリー化の達成が技術
的な難易度が高く、遅れているのが現状で、代
替材として、銀、ビスマス系を使用されている。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
鉛フリー化による代替材として、銀、ビスマス代替への動きで、新たな貴金
属のリサイクルが必要。
摺動部品は焼結や銅鋳込み品などで構成されており、鉄スクラップとして
処理
(関連する技術の現状)
軸受ブッシュなどの鉛フリー化は、部品メーカでの開発が個々に進められ
ている。
(処理困難の理由)
摺動部品としての組成開示がない(ノウハウ)ため、貴金属のリサイクルプロセスがとれない。
(今後波及すると思われる問題点等)
貴金属の需要増大による価格高騰及び需給バランス悪化
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
貴金属を使用しない耐焼付き性向上技術の開 耐焼付性向上のメカニズム向上
発(例 窒化、表面改質、コーティング)
リ
ス
ク
懸
念
度
3
(問題となる元素;対策前): 鉛、銅、銀、ビスマス
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
貴金属使用の成分表示
貴金属を使用しない耐焼付き性向上技術の開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・窒化、表面改質、コーティング
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
・代替貴金属の耐焼付きのメカニズム解明
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
貴金属を使用しない耐焼付き性向上技術の開発
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
有用資源の使用量低減
-26-
3
カテゴリー
代替技術
課題・テーマ 二次電池のLi代替
アウトプット/製品等
(19)ナトリウム電池
(現状)
(背景)
リチウムの代わりとして、資源が豊富なナト
リウムを電気エネルギー貯蔵に利用するこ
とが流行。負極にナトリウムを、正極に硫
黄を、電解質にβ-アルミナを利用した高
温作動型二次電池である「NaS電池」、炭
素材料と層状酸化物を用いることにより、リ
チウムを全く用いずに常温で作動する新
しいエネルギーデバイス「ナトリウムイオン
電池」などがある。文部科学省では
2012.07.26に元素戦略プロジェクトとして
「ナトリウム電池」を2017年までに実用化目
標。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
NaS 電池に関し、2011年9月21日火災が発生。モジュール10台が全
焼。短時間で延焼拡大。覚知から鎮圧まで8時間、鎮火まで15日間要し
た。製造販売した日本ガイシは操業以来初めての赤字転落。既設の
NAS電池への安全強化対策の実施を優先することから、2011年度の大
幅な赤字から改善するものの厳しい状況が続く(2012.06)
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
なし
(処理困難の理由)
2Na + 2H2O → 2NaOH +H2
リ
ス
課
ク
題
懸
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等) 念
<産業側>
<学側>
度
(今後波及すると思われる問題点等)
公的資金を投入する基礎段階の研究プロジェクトの課題、目標設定については、民
間等の意見を幅広く事前に調査する必要がある。
公的資金投資に対する評価の正確な伝
達が必要。
達が必要
(対象物質): 4
研究資金ありきの姿勢を払拭して、社会、
企業の求める真のニーズを自主的に把握
企業の求める真の
ズを自主的に把握
する姿勢の強化が必要。
Li、Na
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
(社会・経済的側面での対応)
実用化とは何たるかの理解
性能優先ではない社会ニーズ対応の視点
公的な科学技術経費の有効利用のチェック体
制
対
応
策
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・危険評価、予測技術
(加熱試験・漏洩試験、コンピュータシュミレーション
による発熱状態の解析)
(産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
安全で低リスクな二次電池
-27-
期待度
1
代替技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
天然クロマイト砂の人工資源化
(20)鋳鋼鋳型用人工砂
(背景)
(現状)
鋳鋼は凝固温度が高いため、鋳物への砂の焼
着きが発生しやすいことから、鋳型の表面部分
にはより耐熱性の高いクロマイト砂を使用してい
る。砂は鋳物工場内で再生利用されているが、
劣化して使用できなくなった部分は産業廃棄物
として処分されている。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
クロマイト砂は本質的にクロム鉱石と同一で、南ア,インド,カザフスタンな
どが主な産出国。世界的なクロム需要は増加中である反面、鋳物砂として
の供給は減少中。日本は全量を輸入。廃砂を、再度鋳型砂として使用でき
るようにするリサイクル技術は開発されていない。
(関連する技術の現状)
鋳型用砂としてセラミックスによる人工砂が開発されており、鋳鉄では適用
されている。
(処理困難の理由)
鋳物は製品としての単価が低いため、廃砂をリサイクルするにしても、その処理コストを製品価格に転
嫁することが困難。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
鋳型用に使用したクロマイト砂中には、微量ではあるが6価クロムが生成する可能性が指摘されてお
り、産業廃棄物としての処分も将来的には困難になる可能性が高い。
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
鋳型用砂としての性能、環境対策も含めたコス
トが見合えば、必ずしもクロマイト砂である必要
はない。
(対象物質): リ
ス
ク
懸
念
度
2
Cr
(技術的側面での対応策)
(社会・経済的側面での対応策)
・人工砂による鋳型システムへの転換を促進する社
会的補助
・人工砂(セラミックス製)のコストダウン(安価な製造法、耐久性向
上の両面から)
・人工砂に適したバインダーと砂再生方法の確立
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・高温融体物性評価/予測技術
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
・高度な砂再生設備(不純物除去、破損砂粒の除去)による砂寿
命の延伸
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
鋳物砂供給不安の解消と産業廃棄物として排出される廃砂の削減
-28-
1
代替技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
金属樹脂混合物の処理
(21)再生可能な金相組織観察用試料
(背景)
(現状)
金属材料の特性評価においては金相組織の観
察が幅広く実施されおり、その際に観察対象の
金属を樹脂に埋め込んで、観察用のサンプル
が作成される。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
使用済みのサンプルは樹脂と金属の混合体であり、処理困難廃棄物とし
て路盤材などに分別されて処分されており、樹脂としてもまた金属としても
リサイクルは実施されていない。
(関連する技術の現状)
(処理困難の理由)
・金属に樹脂がかなり強固に固着しており、物理的な分離が容易ではない。
・サンプル作成用としては目的によって種類の異なる樹脂が使用されており、樹脂の種別としても分別
が困難。
・観察対象の金属も案件によって様々な種類、多様な成分のものがあり、まとめてスクラップとして処理
することができない。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
量的にはそれほど多くはないが、狭義のゼロ・
エミッションの達成における課題の一つとなって
いる
(対象物質): リ
ス
ク
懸
念
度
1
樹脂
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
・分離容易な試料作製用樹脂の開発
・樹脂を使用しないサンプル作成方法、観察方法の開発
・廃棄サンプルを路盤材として使用する場合のリスクの明確化
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・易崩壊性樹脂
・簡便、高速、高精度な含有元素分析技術
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
・非定形物体の固定保持技術
・塑性流動を伴わない乾式高精度研磨技術
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
廃棄物量の削減による処分コストの低減
-29-
1
3.無
害
化
無 害 化
カテゴリー
臭素含有プラスチックの分離と処理
アウトプット/製品等 (22)熱回収と臭素物質減容化
課題・テーマ
(背景)
(現状)
今後、小型家電等の廃電子・電気機器の回収
とその資源化が加速されると予想される。電子・
電気機器には臭素系難燃剤含有のプラスチッ
クが使用されているが、その分離と処理を考え
る必要がある。分離技術に関しては、効率的な
ソーティング技術の開発が必要であり、処理に
関しては、焼却処分での熱回収、その際の臭
素除去、また、オイルや合成ガスへの転換、難
しいものとしてはマテリアルリサイクルが挙げら
れる。国内での現実的な処理に関して、議論
する必要がある。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
今後、小型家電等の廃電子・電気機器の回収とその資源化が加速される
と予想されることから、中間処理業者からまとまった量で臭素含有プラス
チックが排出されると考えられる。
(関連する技術の現状)
現状は、都市ごみ焼却や産廃処理されていると考えられる。現在は、拡散
された状態で、量としてはまとまってないと考えられるが、今後、まとまっと
量で排出されるようになった場合、改めて、その処理について考える必要
がある。
(処理困難の理由)
臭素系難燃剤が含有されているため、分別したとしてもマテリアルリサイクルが困難。
(今後波及すると思われる問題点等)
効率的にエネルギー回収を行うこと、臭素処理の問題や臭素の有効利用。
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
産業側
産廃等で排出される臭素含有プラスチックの現
状。マテリアルリサイクル等のリサイクル可能な
臭素含有量の上限値は?
(対象物質): <学側>
学側
臭素含有プラスチックのソーティング技術の開発。臭
素含有プラスチックの熱分解・焼却の挙動解析。臭
素除去技術やその有効利用法など
リ
ス
ク
懸
念
度
4
Br
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
(社会・経済的側面での対応策)
現時点では、最終処分されている小型家電等の資
源化が必要。そのためには、効率的に回収されて、
ある程度まとまった量で中間処理業者で破砕・分別
される必要がある。この場合、銅や貴金属などの資
源化が加速されるが、二次的に臭素含有プラスチッ
クがまとまった量で排出される可能性が高いので、そ
の処理や有効利用法に関しても、有価金属の資源
化と同時に考える必要がある。
対
応
策
画期的なソーティング技術や、合成ガス製造プロセス、臭素除
去ならびに有効利用技術など
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・レーザーソーティング
・廃プラからの合成ガス製造と臭素の除去固定
<特に機械分野における技術課題>
・ソーティング技術
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
臭素含有の廃プラスチックの排出状況とその性状(臭素含有量など)。
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
最終処分場の延命
-31-
5
カテゴリー
無 害 化
課題・テーマ 臭素を無害化し、自然に返す
アウトプット/製品等
(23)無害な臭化塩作成技術
(現状)
(背景)
ハロゲンである臭素(Br)は難燃剤として使用さ
れている。難燃化メカニズムは①酸素を遮断す
る層を形成する。②活性ラジカルを捕捉し、安
定化させて連鎖反応を抑制する。③燃焼系か
ら熱を奪う。④燃焼物を固定化する。⑤不燃性
ガスを発生し可燃性ガスを希釈するということが
ある。これらハロゲン成分は、廃棄物となった
際、燃焼過程で金属塩化物や硫化物などに変
化し、ボイラー管に付着したりすることにより、ボ
イラー管の腐食を引き起こす。また、欧州RoHS
指令などの対応で製品の臭素(Br)含有がない
製品を求める声が強くなっている。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
需要量 7万トン(難燃剤として)
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
なし
(処理困難の理由)
難燃剤以外に用途はほとんど無く、リサイクルしても採算が取れない
リ
ス
課
ク
題
懸
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等) 念
<産業側>
<学側>
度
(今後波及すると思われる問題点等)
不要となった電気電子プラスチック廃棄物に臭素系難燃剤が含まれているため、燃焼
による貴金属の回収を困難とする
5
提供可能な情報:塩素の除害設備
提供可能な情報:塩素
除害設備
(対象物質):
Br
(社会・経済的側面での対応)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
難燃剤以外に用途はほとんど無く、リサイクルし
ても採算が取れないという事実認識。 塩として
海や山へ返すことの安全性認識。
対
応
策
ボイラー管の管壁温度が400℃を越えるようにな
ると、壁面に付着堆積した低融点塩化物が溶
融塩となって急激に起こる設備腐食も、管壁温
度を320℃以下に保てば特に問題とならないこ
とが知られている。
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・耐熱、耐酸性材料
・冷却技術
・除害処理技術(中和)
・安全性評価/分散シュミレーション(NaBrの
安全性評価、海に流した時の分散シュミレー
ション)
(産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
最終処分場の延命
-32-
期待度
3
カテゴリー
無 害 化
課題・テーマ CCA処理木材の無害化
アウトプット/製品等
(24)Cu、Cr、As回収技術
(現状)
(背景)
銅-クロム-ヒ素系(CCA)防腐剤を用い
て防腐処理された木材は戦後日本の主
要木質材料であり、海外からの輸入も
2000年前後まで続いた。木質系材料の耐
久年数から今後20~30年間で大量の
CCA処理木材が廃棄物として発生するこ
とが予想される。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
現時点では生産禁止、ただし過去数十年間で生産された
木材の約60%がCCA処理木材。枕木、電柱、建築用土台
などとしてその大部分が国内に蓄積している。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
廃木材は熱エネルギー回収のため直接燃焼されることが
多い。リサイクルされる木材はごく一部である。
(処理困難の理由)
今後約30万m3のCCA木材が発生するが、エネルギー回収のため燃焼すると、銅-ク
ロム-ヒ素を高濃度に含有する燃焼灰が発生する。また、ヒ素酸化物は蒸気圧が高
く、大部分が気相に移行するため、排ガス処理が必要となる。
リ
ス
課
ク
題
懸
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等) 念
<産業側>
<学側>
度
(今後波及すると思われる問題点等)
廃木材への混入による、燃焼灰処理コストの増加、排ガス処理設備コストの高騰、環
境汚染リスク
CCA処理木材の発生予測、現状の処理
実態の把握
(対象物質): 4
燃焼に伴う重金属の分配挙動が提供可能
Cu、Cr、As
(社会・経済的側面での対応)
CCA処理木材の適正分別、回収、処理ルート
の確立
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
燃焼技術の改善による重金属の飛散防止、排
ガスの適正処理、他のヒ素含有物質との共同処
理。例えば火力発電所での石炭との混焼による
ヒ素の回収技術確立。
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
対
応
策
・CCA処理木材の識別、分離技術
(産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
CCA処理木材の発生経緯、発生量の予測、現行の問題点把握
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
最終処分場の延命
-33-
期待度
3
無 害 化
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
アルミドロスの無害化
(25)アルミドロス利用技術
(背景)
(現状)
アルミニウムは鉱石から精錬する場合には大量
の電気エネルギーを要するが、アルミニウムスク
ラップの再溶解によるリサイクルでは精錬時の
数%程度のエネルギーしか消費しないため、
ベースメタルの中では最もリサイクル効果が高
いとされている。しかしリサイクルにおける再溶
解過程で溶湯表面の酸化やその後の窒化によ
り製品にはそのまま利用できないアルミドロスが
発生する。アルミドロスからは更にアルミニウム
が回収されるが、結果として処理困難な残灰が
残る。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
アルミドロスは国内で年間35万トン以上発生(1997時点)し、そこからアルミ
ニウムを回収した後の残灰は産業廃棄物として埋立処理されている。
東京電力と神戸製鋼により、電力を使ってアルミドロスからアルミを高歩留
まりで回収するとともに、回収後の残灰を有効活用する技術が開発されて
いる。
(関連する技術の現状)
(処理困難の理由)
・残灰は、放置すると自然発火の可能性がある。
・灰に含まれた窒化アルミが水分と反応するとアンモニアなどの有害ガスを発生する。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
・アルミニウム利用の拡大およびリサイクル率向上によるアルミドロスおよび残灰発生量の増大
・新たな産業廃棄物処分場の立地困難化による可処分量の現象と高コスト化
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
(対象物質): <学側>
リ
ス
ク
懸
念
度
3
Al
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
(社会・経済的側面での対応策)
・残灰処理で生成するアルミナはタイル、耐火材、
セメントなどの原料として別途リサイクルする
・アーク炉加熱による熱効率向上
・炉内雰囲気制御による酸化抑制でアルミニウム回収率向上
・残灰の高温加熱による、窒化アルミや塩化アルミの酸化アルミ
への転換
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・耐火物技術
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
・炉内雰囲気の高精度制御
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
高度回収によるAlリサイクル率向上、産業廃棄物排出量削減による処理コスト抑制
最終処分場の延命
-34-
3
4.エネルギー回収技術
エネルギー回収技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
高効率熱電素子の開発
(26)高効率熱電モジュール
(背景)
(現状)
近年自然エネルギーや再生可能エネルギーに
関する技術開発が注目されている。
熱電変換技術は、熱と電気を直接変換できる
技術で、冷却分野においては50年以上前から
実用化されている。また、発電分野において
は、廃熱回収技術として、近年、特に注目され
ている。
熱電変換分野で実用化されている材料は、
300℃以下の温度領域で変換効率の高いBiTe系であるが、今後の市場成長に伴って、含有
元素であるTe,Sb,Seのような毒物・劇物の回収
や再利用は課題でもある。また、熱電発電分野
においては、レアメタルを含むものも多く、資源
再活用が必要である。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
需給量見通し:冷却分野においては、需給のバランスがある程度取れてい
るが、発電分野においては、今後の市長成長とともに、拡大の可能性があ
る
(関連する技術の現状)
他社技術の動向は不明、ただし廃製品回収やリサイクルは実施されていな
い。
(処理困難の理由)
使用部位が局所的で、かつ分散している。また、素子の微小化に伴い、物理的に取り出しにくく、さら
に電子部品内の組み込み型が多いので、経済的にも分離して取り出すのは困難なため、不純物とし
て含有されたまま、産業廃棄物として処理
(今後波及すると思われる問題点等)
埋蔵量の少ない元素の資源枯渇
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
(課題に対して産
学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
回収システムの構築
(対象物質):
<学側>
資源再生技術の開発
リ
ス
ク
懸
念
度
4
新材料
(社会・経済的側面での対応策)
少量・分散型製品の回収システムの構築。
再資源化産業が社会に定着するまで国レベルで資
金等の支援するシステムの構築。
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
・Te,Se,Sbの分離・回収技術の開発
・低コスト再生化技術の開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・新規高性能熱電材料
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
国(政府):再生化支援に関する法制化
産・官・学:再生化・低コスト化技術開発と事業化の共同プロジェクトを実施
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
低温廃熱の利用率向上
-35-
4
エネルギー回収技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
熱処理炉からの廃熱低減
(27)高断熱の材料技術
(背景)
(現状)
工業用の熱処理炉では、耐火物で構成される
炉内全体を昇温するのに時間がかかるため、通
常は連続運転しており、継続的に熱が放散され
ている。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
熱処理炉の熱源として化石燃料の燃焼ガスや電気抵抗発熱を利用するも
のが多い。化石燃料は概ね輸入に依存しており、電力も化石燃料ヘの依
存比率が高い。燃焼ガスに関してはリジェネバーナによりある程度排熱回
収が行われているが、炉体からは大気中あるいは冷却水中に熱が放出さ
れている。
(関連する技術の現状)
低密度熱源からのエネルギー回収に関しては、各種技術開発が行われて
いる。
(処理困難の理由)
炉体から放散される熱は低密度熱源であり、現状では効率良く回収、再利用を行う技術が無い。
(今後波及すると思われる問題点等)
熱処理炉以外にも社会には様々な低密度熱源が存在する。
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
(課題に対して産
学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
大規模な事業所では他工程との比較で熱処理
工程での消費エネルギー比率が高いことが認
識されているが、中小の専業業者ではあまり問
題意識は無い。
(対象物質): リ
ス
ク
懸
念
度
4
新材料
(社会・経済的側面での対応策)
低密度熱エネルギーを流通、利用出来るようなシス
テム、インフラの構築。
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
・蓄熱、熱運搬による低密度熱エネルギー利用技術開発
・低密度熱エネルギーから使用しやすい形態への高効率エネ
ルギー変換技術開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・熱電材料
・化学工学
・断熱材、断熱技術の革新
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
・蓄熱システムの高効率化
・エネルギー変換技術の高効率化
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
・低密度熱源の種類や状態に応じた効率の良い熱回収およびエネルギー変換システムの研究開発
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
社会としてのトータルエネルギー放散の抑制(→温暖化抑制)
回収によるエネルギー原単位低減で低コスト化
-36-
期待度
4
カテゴリー
エネルギー回収技術
課題・テーマ ムーンライトをもう一度 耐食耐熱材料開発
アウトプット/製品等
(28)耐熱セラミックス
(現状)
(背景)
オイルショックをきっかけに1978年から
1993年度間で1400億円が投じられ実施さ
れた日本の省エネルギー技術研究開発
についての長期計画であるムーンライト計
画。4400億円が投じられたサンシャイン計
画よりは知られていないが、廃熱利用技術
システム、電磁流体発電、ガスタービンの
改良、汎用スターリングエンジン、燃料電
池技術の開発、ヒートポンプの効率化など
の成果がある。原発依存度低下により、オ
イルショック同様の耐熱セラミックス需要向
上。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
化石燃料の高騰による需要増およびリサイクル経済性向
上。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
なし
(処理困難の理由)
破砕困難(硬い)
リ
ス
難加工性
課
ク
題
懸
念
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
度
<産業側>
<学側>
(今後波及すると思われる問題点等)
4
耐熱、耐酸性材料の需要見通しの開示
耐熱、耐酸性材料
需要見通し 開示
(対象物質):
新材料
(社会・経済的側面での対応)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
鉄にはない特性を生かした省エネ製品開発を
実現する
・易分解を実現する組立技術
・低コストで高純度再生化する技術の開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・窒化ケイ素(Si3N4)
・炭化ケイ素(SiC)
・耐熱耐食材料の革新(シリコン系)
対
応 (産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
策
産業界:パイロットプラント製造。回収コスト開示。
大学や研究機関:何ゆえ、サンシャイン計画やムーンライト計画が失敗に終わったのか、昨今の国家
プロジェクトが何ゆえうまくいかないのかを自らが解析
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
研究開発シーズの実用化
-37-
期待度
3
カテゴリー
エネルギー回収技術
課題・テーマ 低温廃熱・冷熱有効活用
アウトプット/製品等
(29)蓄熱材料、蓄熱システム
(現状)
(背景)
エネルギーの徹底的な有効利用はエネル
ギー由来の二酸化炭素排出の削減に必
須の技術的解決方法である。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
高温の廃熱はそのエクセルギーが大きく、熱源での回収と
その近隣での使用が進められている。一方で低温の廃熱
は有効利用が難しく、総エネルギー量は莫大であるがエ
ネルギー密度が小さい。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
高温廃熱は各種手法による回収・有効利用が進められて
いる。低温廃熱ではほとんどない。
(処理困難の理由)
低温廃熱はエクセルギーが小さく、魅力的な熱源でない。また、熱エネルギーは蓄積
することが難しく、エネルギー密度が小さいため未利用である。
また、冷熱は有効活用されていない。冷熱も絶対値としては魅力的なエネルギー源で
ある。
リ
ス
課
ク
題
懸
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等) 念
<産業側>
<学側>
度
(今後波及すると思われる問題点等)
エネルギー原料価格の高騰、供給不安の問題が顕在化した場合に、低温廃熱・冷熱
の有効利用がキーテクノロジーとなる。
4
低温廃熱源、冷熱源の定量的な把握、エ 低温廃熱のエネルギー変換の基礎技術、
ネルギー量だけでなくエクセルギー量で
ネルギ
量だけでなく クセルギ 量で 熱力学的評価手法を取り入れた低温熱
の定量的評価が必要
源、冷熱源の資産価値の定量的試算
(対象物質):
新材料
(社会・経済的側面での対応)
・低温廃熱源・冷熱源の定量的な把握
・低温廃熱・冷熱の有効利用、熱エネルギーの
カスケード利用を前提としたエネルギー供給シ
ステムの構築
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
・熱エネルギーのその他蓄積可能なエネル
ギーへの転換技術開発
・熱エネルギーから化学エネルギーへ転換し、
蓄積することのできる材料の開発(有機物・金属
の各種相転移等の利用、大熱容量材料)
・冷熱源からの冷熱供給技術
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
対
応
策
熱電素子、超電導、蓄熱輸送システム
(産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
産業界:エネルギーバランスの検討、低温廃熱源・冷熱源の定量化、熱エネルギーの産業界内カス
ケード利用の検討
学界:低温廃熱・冷熱を用いたエネルギー転換技術の基礎研究、熱エネルギーのカスケード利用型
エネルギー供給システム・社会インフラの検討と提案
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
熱エネルギーのカスケード利用
-38-
期待度
3
エネルギー回収技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
廃熱回収
(30)間接加熱気流乾燥装置
(背景)
(現状)
➣直接加熱でしか使用できない気流乾燥機を
間接加熱のシステムとして構築することで省エ
ネ・省コスト・省スペースが可能となる。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
➣気流乾燥機はほとんどが直接加熱方式で、その分の燃料が必要となっ
ている。 また、利用されない放熱と排ガスが多く排出される。
(関連する技術の現状)
➣熱源は工場排熱、バイオマス燃料などの利用が可能。また、乾燥蒸気
はほぼ100%水蒸気であるため、約100℃での熱回収が可能。
(処理困難の理由)
➣熱効率の問題から乾燥機単体での設置が多い。
(今後波及すると思われる問題点等)
➣既存設備に適合したシステムの構築。
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
産業側
➣効率の良い部材アッセンブリー技術
(対象物質):
<学側>
学側
➣効率的な熱回収システムの開発
リ
ス
ク
懸
念
度
1
非特定
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応策、代替材料技術シーズ)
➣省エネ・省コスト・省スペースを検証できるデータ
の収集と整理
➣予備乾燥・原料予熱システム、乾燥脱臭処理システム、乾燥
廃水処理システム、乾燥脱水予熱システムなどの開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
➣燃焼炉の開発…炭化物・バイオマスなどの燃料の利用と乾
燥・炭化一括処理
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
➣熱回収装置に関る技術
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
➣
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
➣CO2の削減で環境負荷低減に寄与
100℃の熱回収率向上
-39-
期待度
3
5.世界が羨む材料デザイン
世界が羨む材料デザイン
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
スクラップ鉄のリサイクル材料設計
(31)再生高機能鋼
(背景)
(現状)
資源を海外に依存しているわが国にとっては、
リサイクルは世界政情や経済情勢に左右されな
い新たな資源確保法。鉄鋼の社会ストックは現
在12億トンを超えると推定されており、2050年に
は19億トンに及ぶという推定値もある。それから
のスクラップ材発生量は2030年頃に国内需要
を上回ると予測されている。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
電炉向けスクラップ需要は2600万トン程度(2012年)、全体鉄鋼需要の
22%。輸出939.8万トン、輸入19.4万トン(2009年)で相当量の出超状態。コ
スト面で高炉鋼より優位。環境面では特段のトータル効果(CO2削減には
なる)は見込めない。
(関連する技術の現状)
カスケード利用はなされているが、product-to-productは実現していない。
(処理困難の理由)
・Cu、Snが製造プロセス中に、脆化相を形成する
・現状の精製プロセスで除去できない合金元素が多い
(今後波及すると思われる問題点等)
・product-to-productに実現に向けて、高性能再生材への期待の高まりへの対応
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
電炉メーカーは一般的に技術開発能力が高炉 基礎研究での関心は高まっているが、応用への
メーカに比べて低い。一方、高炉メーカーには ギャップが大きい
合金添加鋼の大量生産技術が希薄。
(対象物質): リ
ス
ク
懸
念
度
4
Fe
(社会・経済的側面での対応策)
・高品位スクラップの国外移動を抑制するメカニズム
が早晩必要になる
(技術的側面での対応策、代替材料技術シーズ)
・有害不純物の許容度を高める技術対応策
・不可避混入元素をベースにした合金設計と開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・ガス成分(特に窒素)を削減する技術の導入
・合金を含む溶鋼の直接鋳造技術
・加工熱処理によるミクロ組織造りこみ技術
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
・リサイクル材の用途拡大
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
・従来、高炉鋼では対象となりにくかった、合金添加を前提とした薄板鋼づくりのメタラジーを再構築するのが早道。
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
リサイクル容易な高機能高強度鋼による製造コスト低下と日本ブランド向上
-41-
4
世界が羨む材料デザイン
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
伸銅品のリサイクル材料設計
(32)再生高機能伸銅品
(背景)
(現状)
1)伸銅業は従来から高いリサイクル原料の再
使用比率を維持しており、地球環境を守る活動
を実践している。こうした貢献は今後とも伸銅業
の成長を支える基盤になると考えられることか
ら、貢献を適切な数値として把握し実態を内外
に公表している。実態の把握に当たっては、
ICA(国際銅協会)等とも連携し、LCAやLCIの
手法にてデータを把握している。
2)銅リサイクル原料の安定確保は、地球環境
維持とコストの両面から重要な手段となる。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
加工くずは、電線や伸銅メーカーでほぼ100%再利用。廃電線もほぼ
100%がリサイクルされている。それ以外は、困難。
(関連する技術の現状)
市中くずは、やま送り(鉱山)に送れば元素レベルで回収できる。
(処理困難の理由)
合金化していても銅を回収する手段はあるが、合金を分離回収する技術が完全ではない。
(今後波及すると思われる問題点等)
銅比率の高い再精錬から、銅比率の低い再精錬となると製錬技術自体の見直しが必要になるだろう。
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
日本伸銅協会
http://www.copper-brass.gr.jp/
平成22年5月21日
新・伸銅品製造産業戦略アクションプラン
(対象物質): 対
応
策
<学側>
日本銅学会http://www.copperbrass.gr.jp/kenkyukai/index.html
日本銅センター 環境に優しい銅
http://www.jcda.or.jp/kankyou/kankyou.html
リ
ス
ク
懸
念
度
4
Cu
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
リサイクル原料の海外流出防止への対応
ⅰ)銅価の高騰、中国の資源囲い込み政策により
等、銅リサイクル原料需給の不安定さが顕在化した。
対応として、経済産業省にも都度の実情を説明し、
銅リサイクル原料の”バッファー機能の創設”を3R調
査研究の中でも提言したが、具体化には至らなかっ
た。
ⅱ)原料需給の安定化に向けた活動は、新プランで
もリサイクル原料の物流実態の把握を行い、今後の
行動計画を明確にすることによる取組みを課題として
いる。
・銅リサイクル原料の使用比率向上を目指し、銅リサイクル原料
から合金分離を技術開発の課題にしたが、(財)クリーン・ジャパ
ン・センター等の非鉄金属リサイクルに関する委員会で、高度分
離の調査研究を提起するに留まっている。
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・銅精錬を害しない合金の添加による高機能化
<特に機械分野における技術課題>
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
この分野での若手技術者の育成が重要
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
リサイクル伸銅品の安定供給による製品価格の安定化
-42-
4
世界が羨む材料デザイン
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
リサイクルを目指した組成開発
(33)再生高機能アルミニウム合金
(背景)
(現状)
アルミリサイクルは、特に資源を海外に依存して
いるわが国にとっては、世界政情や経済情勢に
左右されない新たな資源確保法。銅、亜鉛、マ
ンガン、マグネシウムなどの合金元素の高騰な
どによる入手困難度が高まるので、それらのリス
クの低減されたリサイクル可能高性能材の独自
開発が問題解決の王道。
総需要450万トンに対して、当面回収量を75
万トン向上させ、輸入量をそれだけ削減するこ
とが戦略目標。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
鉱石(ボーキサイト)から精錬で得るよりもリサイクルで再利用する場合は1
割のエネルギーで済むことになる。
(関連する技術の現状)
カスケード利用はなされているが、product-to-productは未達。
(処理困難の理由)
1)より高い回収率が必要
2)回収率を高めると、不純物が数・量ともに増え、アルミニウムの特性を損なう
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
・ドロスなどの処理
・合金でのproduct-to-productの達成
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
日本アルミニウム協会
アルミニウム技術戦略ロードマップ2011
http://www.aluminum.or.jp/topics/pdf/111213
.pdf
(対象物質): <学側>
軽金属協会
ロードマップ
http://www.jilm.or.jp/society/?mode=roadmap
リ
ス
ク
懸
念
度
4
Al
(技術的側面での対応策)
(社会・経済的側面での対応策)
・リサイクルシステムの確立
・リサイクル材の規格化
・不純物を正確かつ迅速に低減あるいは分別
・不純物が多くても本来のあるいはそれ以上の特性が出るように
する
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・不純物元素の無害化/有効利用技術
・不純物分離技術
・Fe,Siなどのユビキタス合金による成分設計
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
・アルミ合金部材の分離回収
・リサイクル材の用途拡大
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
・この業界は産学の間の壁が比較的薄い。むしろ、他の業界や異なった専門分野との連携を図るべきか。例)接合技術、成
形技術など
・Cu代替、SUS代替、Zn代替などAlの需要拡大の可否、妥当性の深い検討
・Al資源化の新技術を展望すべきか否か(純Alの海外依存を脱却するかどうか)
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
リサイクル容易な高機能アルミニウム合金による製造コスト低下と
日本ブランド向上
-43-
期待度
4
カテゴリー
世界が羨む材料デザイン
課題・テーマ チタン合金のリサイクル設計
アウトプット/製品等
(34)再生高機能チタン合金
(現状)
(背景)
チタンは鉄鋼より軽量で高強度、かつ高
温強度や耐食性など様々な面で長所を示
す。現在のチタン製造プロセスに利用可
能な資源は賦存量が多くないため、有効
利用が必須である。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
近年はチタン製造プロセスが確立され安定供給が可能と
なったことから、航空機分野、化学プラント、海水淡水化装
置向けなどの需要が大きく伸び続けている。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
チタンの社会蓄積量が多くないため、スクラップのリサイク
ルはなされていない。また加工の際に発生する加工くずは
リサイクルされていない。
(処理困難の理由)
チタン加工くず、スクラップは現状では製錬プロセスまで戻さなければリサイクルでき
ず、プロセスは確立されていない。一方、加工くずの溶解・再資源化にはチタンの高
反応性を加味した専用のプロセスが必要である。
リ
ス
課
ク
題
懸
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等) 念
<産業側>
<学側>
度
(今後波及すると思われる問題点等)
チタン製造の主原料が需要に対して十分でなく、チタン地金価格の高騰によって供
給が不安定になる可能性がある。金属チタンとともに工業的に極めて重要な酸化チタ
ンの供給不安定化
3
チタン材料のカスケード利用の可能性の 金属チタンリサイクルプロセス開発におけ
検討
検討、チタン加工くずを用いた新たな材料
チタン加工くずを用いた新たな材料 る問題点の抽出が必要、酸化チタンの用
る問題点の抽出が必要 酸化チタンの用
の製造技術開発と用途開拓
途別の製品グレードの理解
(対象物質): Ti
(社会・経済的側面での対応)
チタン加工くずのクローズド流通経路の確立が
必要である。不純物が混入せず、高純度の加
工くずが集められるシステムが必要である。
対
応
策
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
・チタンスクラップを経済的に溶解・リサイクルで
きる技術開発
・バージン原料から製造・販売される酸化チタン
を、リサイクル不可能な低級金属チタンから製
造する技術開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・鋼材の精錬プロセスで用いられるESR技術の
援用
(産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
産業界:金属チタンのリサイクルにおける課題の抽出、酸化チタンの用途別グレードの再検討(オー
バースペックの有無)
学界:金属チタンリサイクルプロセス開発の基礎研究実施
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
リサイクル容易な高機能チタン合金による製造コスト低下と
日本ブランド向上
-44-
期待度
4
カテゴリー
世界が羨む材料デザイン
課題・テーマ
炭素繊維強化複合材料(CFRP)のリサイクル設計
(35)再生炭素繊維強化複合材料(CFRP)
アウトプット/製品等
(背景)
(現状)
CFRPは、航空機分野をはじめとして多くの用
途で需要が拡大している。しかし、まだ本格的
なリサイクル技術が確立されていないため、使
用済みCFRP製品の多くが廃棄処理されてい
る。炭素繊維は製造時に多くのエネルギーを
消費するので、CFRP製品のリサイクルは省エ
ネの観点からも重要である。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
CFRPの需要量は、現在、全世界で3.7万t/年程度である(炭素繊維量
換算)。炭素繊維の生産は、我が国が70%程度を占めており、かなりの部
分が海外に輸出されている。CFRPのリサイクル技術は幾つか提案されて
いるが、まだ実用化には至っていない。
(関連する技術の現状)
繊維強化複合材料のリサイクルは技術的難度が高く、需要量が非常に多
いGFRP(ガラス繊維強化複合材料)についても、本格的なリサイクルはま
だ行われていない。
(処理困難の理由)
CFRPのマトリックス樹脂は多くの場合熱硬化性であるため、そのままでリサイクルすること(マテリア
ルリサイクル)は技術的に困難であり、炭素繊維とマトリックス樹脂の分離が前提になる。分離は可能
であるが(マトリックス樹脂を焼き飛ばす方法、薬剤で分解する方法など)、分離された炭素繊維の形
状がランダムになり易い。このため経済的価値が大きい長繊維としての再使用が困難でり、短繊維状
での再使用が現実的である。この場合、経済的価値が大きい用途を見つけ難い。
リ
ス
現在はマトリックス樹脂としてエポキシ樹脂がおもに用いられているが、今後マトリックス樹脂が多様化
課 した場合には、これに対応してマトリックス樹脂を分離する技術の多様化も必要になる。
ク
題
懸
念
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
度
<産業側>
<学側>
(今後波及すると思われる問題点等)
(対象物質): 対
応
策
3
C
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応策、代替材料技術シーズ)
使用済みCFRP製品のリサイクルを進めるために
は、分別回収の徹底が前提になる。CFRP製品は外
観や用途に特徴があるため、分別回収は比較的に
容易である。しかし、これを徹底するためには、CFR
P製品であることを一般市民が容易に判別できるラ
ベリングシステムを普及させることが望ましい。さらに
使用済みCFRP製品を有料で回収してもペイするよ
うな高付加価値用途へのリサイクル技術が開発でき
れば、分別回収に弾みが付く。
使用済みCFRP製品から炭素繊維とマトリックス樹脂を効率的
に分離する技術。CFRP製品のなかの炭素繊維の形状を保持
したままで回収できれば、回収された炭素繊維の用途が拡が
り、好ましい。
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・マトリックス樹脂を薬液で分解して炭素繊維を回収する技術
(日立化成のベンジルアルコール法など)
〈特に機械分野における技術課題〉
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
炭素繊維は製造時のエネルギー消費量が多いので、リサイクルできれば省エネにも繋がる。
CFRP原単位の低減
-45-
4
6.世界が羨む社会システムデザイン
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
世界が羨む社会システムデザイン
識別手段の革新「電子タグ」システムによる希少金属のリサイクル
(36)プリント基板を有する一般電子部品
(現状)
(背景)
希少金属の都市鉱山への埋蔵という着眼
点が出てから久しいが、現状の経済体系
においては、そこからの活用は実績として
は上がっていない。
今回は、設計段階から、「リサイクル」を
意識した仕組み作りを行うことで、希少金
属の体系的回収を図るものである。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
希少金属主体にニーズは大きいが、リサイクル使用を前提として製造していない
為、解体・分離性が劣悪であり、人手/ロボットいずれの手段をとっても経済性
が成立した事例は未だ無い。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
問題点は大きく分けて2点ある。まず対象の同定ができていない事。どこに何が
あるかの情報が欠落している為、仮に高精度の機械的分離装置があったとして
も、コマンドが出せない。次にその情報があっても、易解体の組み立て工程と
なっていない為、効率的な分離が困難。
(処理困難の理由)
①位置同定ができていない。
②効率的な分離が困難。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
希少資源が対策が無い為に、無益に葬り去られる。
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
設計段階からの見直しのニーズは理解で 本狙いに対する「学」としての技術課題が見えていない。
きるも、業界/国/世界規模での取り組み
の為 とうてい企業レベルでは取り組めな
の為、とうてい企業レベルでは取り組めな
い。
リ
ス
ク
懸
念
度
3
(対象物質): 元素選択性は無し
対
応
策
(社会・経済的側面での対応)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
設計段階からの基準化なので、段階的目標設
定が現実的。
①第1ステップ;実績配列情報のみを提供
②第2ステップ;効率的解体を目指した、「易解
体構造」のカテゴリー化。
① 位置同定手法は、既存技術の集大成で基本可能と判断する。
② 易解体構造として、三次元で見たときの、階層別積層(先入れ、
後出し)のルールで部品配列とする事が目標。そのルール前提で、位
置情報のみで高度機械化処理が可能。
⇒本構想を実現する際の技術課題として「ノイズ対策」等が存在す
る。(プリント基板にエキストラを載せる問題)
懸念点として、日本技術の差別化を阻害するの
ではというものがあるが、「実行できる生産シス
テム実力」のある国はあまり無い為、世界的に
標準化しても、実行段階で、充分日本は差別性
を発揮できるものである。
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・プリント基板にエキストラを載せるノイズ対策
・易解体構造の品質保証(階層別積層が担保されているかどうか)
(産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
国(政府): 国については、基本構想を「否定」せず、寧ろ日本が世界をリードする
ポテンシャルを有するものを育成する視点に立っていただく。
産業界: 一社だけでは絶対に着手できない「日本発の国際標準化」を生み出すことを
狙い、設計基準作りから、協力体制をとる。
大学や研究機関:「技術でまともに勝てない奴がこんなつまらん発想をするんだ」という様な
冷淡な目で見るのでは無く、「実績を出す為の必要な要素技術サポート」
がどれだけ出来るかの視点でご協力いただく。
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
レアメタル一次回収率>70%
-47-
期待度
5
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
世界が羨む社会システムデザイン
識別手段の革新「電子タグ」システムによる希少金属のリサイクル
(37)携帯電話/タブレットPC等
(現状)
(背景)
希少金属の都市鉱山への埋蔵という着眼
点が出てから久しいが、現状の経済体系
においては、そこからの活用は実績として
は上がっていない。
今回は、設計段階から、「リサイクル」を
意識した仕組み作りを行うことで、希少金
属の体系的回収を図るものである。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
希少金属主体にニーズは大きいが、リサイクル使用を前提として製造していない
為、解体・分離性が劣悪であり、人手/ロボットいずれの手段をとっても経済性
が成立した事例は未だ無い。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
問題点は大きく分けて2点ある。まず対象の同定ができていない事。どこに何が
あるかの情報が欠落している為、仮に高精度の機械的分離装置があったとして
も、コマンドが出せない。次にその情報があっても、易解体の組み立て工程と
なっていない為、効率的な分離が困難。
(処理困難の理由)
①位置同定ができていない。
②効率的な分離が困難。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
希少資源が対策が無い為に、無益に葬り去られる。
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
設計段階からの見直しのニーズは理解で 本狙いに対する「学」としての技術課題が見えていない。
きるも、業界/国/世界規模での取り組み
の為、とうてい企業レベルでは取り組めな
い。
リ
ス
ク
懸
念
度
3
(対象物質): 元素選択性は無し
対
応
策
(社会・経済的側面での対応)
(技術的側面での対応)
設計段階からの基準化なので、段階的目標設
定が現実的。
①第1ステップ;実績配列情報のみを提供
②第2ステップ;効率的解体を目指した、「易解
体構造」のカテゴリー化。
① 位置同定手法は、既存技術の集大成で基本可能と判断する。
② 易解体構造として、三次元で見たときの、階層別積層(先入れ、
後出し)のルールで部品配列とする事が目標。そのルール前提で、位
置情報のみで高度機械化処理が可能。
⇒本構想を実現する際の技術課題として「ノイズ対策」等が存在す
る。(携帯電話内にエキストラを載せる問題)
懸念点として、日本技術の差別化を阻害するの
ではというものがあるが、「実行できる生産シス
テム実力」のある国はあまり無い為、世界的に
標準化しても、実行段階で、充分日本は差別性
を発揮できるものである。
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・携帯電話内にエキストラを載せるノイズ対策
・易解体構造の品質保証(階層別積層が担保されているかどうか)
(産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
国(政府): 国については、基本構想を「否定」せず、寧ろ日本が世界をリードする
ポテンシャルを有するものを育成する視点に立っていただく。
産業界: 一社だけでは絶対に着手できない「日本発の国際標準化」を生み出すことを
狙い、設計基準作りから、協力体制をとる。
大学や研究機関:「技術でまともに勝てない奴がこんなつまらん発想をするんだ」という様な
冷淡な目で見るのでは無く、「実績を出す為の必要な要素技術サポート」
がどれだけ出来るかの視点でご協力いただく。
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
レアメタル一次回収率>70%
-48-
期待度
5
カテゴリー
世界が羨む社会システムデザイン
課題・テーマ 識別手段とリサイクル規格化
アウトプット/製品等
(38)Ni系ステンレス鋼
(現状)
(背景)
近年Ni系ステンレス鋼は、Ni地金価格の
高騰からリサイクルが重要になっている。
日本で使用されるNiの50%近くは特殊鋼、
主にステンレス鋼向けであり、Ni資源の有
効利用、リサイクルの観点からNi系ステン
レス鋼の高効率リサイクルは必須である。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
鉄鋼材料のリサイクルは早くから経済的、技術的に確立し
ている。特にステンレス鋼はCr、Ni等付加価値の高い原料
を含むため、リサイクルが進められている。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
電気炉でのステンレス鋼製造の主原料になっている。
(処理困難の理由)
従来、ステンレス鋼の分離過程でNi系ステンレス鋼は磁選により分離されてきたが、近
年はCr系ステンレス鋼と同様に磁性体のものが開発され、従来の磁選技術による分
離が不可能なケースがある。
(今後波及すると思われる問題点等)
リ
ス
課
ク
題
懸
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等) 念
<産業側>
<学側>
度
Niは生態系に有害な元素であり、EUではNi製品の使用に規制がある。今後、より厳し
い管理に移行した場合、製品中のNi含有量が問われる可能性がある。特に鉄鋼材料
に混入したNiは通常の製錬操作で除去不可能であるため、リサイクル時に徹底的な
分別を行わなければ問題になる可能性がある。
Ni系と非Ni系ステンレス鋼の区別、分別収
集に関する現状の把握 技術的困難点の
集に関する現状の把握、技術的困難点の
抽出。将来的にはNi非含有ステンレス鋼
の高機能化による脱Niの必要性。
(対象物質): 4
上記問題に対する現場の定量的な状況
(分別不可能なケースの割合など)、普通
(分別不可能なケ スの割合など) 普通
鋼、ステンレス鋼へのNi混入の材料学的
な問題点の抽出を要する
Ni
(社会・経済的側面での対応)
ステンレス鋼使用においては、その部材に鋼種
を明記すること、およびリサイクルプロセスの確
立が必要となる。特に今後は自動車等輸送機
器分野でのステンレス鋼の使用率上昇が見込
まれるため、自動車のリサイクルプロセスに関す
る対応が必要
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
鋼材リサイクル過程で、普通鋼、Cr系ステンレス
鋼、Ni系ステンレス鋼を分別する技術が必要と
なる。
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
対
応
策
・レーザーアブレーション・発光分光分析による
含有成分の定性分析
(産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
産業界:使用鋼材、特にステンレス鋼の規格コードを部材に表記、MSDSのような仕組みを機械製品に
も取り込み、使用元素、使用量、使用箇所を明記する。
学界:Niを使用しないステンレス鋼の開発、鋼材の高効率リサイクル技術の開発
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
Ni元素の拡散防止、高価なFe-Ni合金の使用量低減
-49-
期待度
4
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
世界が羨む社会システムデザイン
合金種統合化とリサイクル規格化
(39)アルミニウム合金
(背景)
(現状)
日本はアルミニウム地金を輸入に依存している
こともあり、なるべく国内で水平にリサイクルする
ことが望まれる。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
今後もアルミニウム素材の需要量は、現状と大きくは変わらず維持されると
考えられる。
(関連する技術の現状)
アルミスクラップとしての回収、リサイクルは実施されているが、そのカス
ケード利用が課題
(処理困難の理由)
アルミニウム合金(展伸材)は、多様な合金種により特性を提供しており、回収時に各種合金を区別す
るのは困難である。そのため、展伸材の原料としての成分を満たさず、ダイキャスト原料となりカスケー
ドリサイクルせざるを得ないのが現状である。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
現在は、アルミダイキャストの主要な用途である自動車が輸出されているため、スクラップ需給が合って
いるが、今後次世代自動車が導入されたり、輸出割合が減少したり、状況が変化するとアルミスクラッ
プの余剰が発生する可能性がある。
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
日本アルミニウム協会
アルミニウム技術戦略ロードマップ2011
http://www.aluminum.or.jp/topics/pdf/111213
.pdf
(対象物質): <学側>
軽金属協会
ロードマップ
http://www.jilm.or.jp/society/?mode=roadmap
リ
ス
ク
懸
念
度
4
Al
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応策、代替材料技術シーズ)
同じ製品の中に、多様な合金種のアルミ素材を組み
込まないよう努力する。
合金種を統合しても、組織制御等により、現状と変わりない機能
の発現を見込める様、技術開発する。
使用されているアルミ素材の合金種が、解体時点に
おいて特定できるよう、情報提供する。あるいは、そ
のようなデータベースの整備等。
使用済み製品からアルミスクラップを回収する際に、合金種別
にソーティングする技術を開発する(5000系と6000系に関しては
NEDOプロジェクトが実施中)
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・合金種別選別技術
・同一合金種による多様な機能発現
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
・アルミダイカストやアルミ鋳物の利用拡大
・アルミ展伸材を利用する際に、異なる合金系を用いない
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
・マテリアルフロー情報等、アルミニウム素材の合金系まで考慮した現状の使われ方について、詳細に把握すべき。
・今後のアルミニウムの使われ方について、例えばダイカストの主な用途である自動車の動向等、さまざまなシナリオを検討
し、その中での健全なリサイクルシステムの在り方について議論する。
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
日本発のアルミニウムの健全なリサイクルシステムの創生と、
安価なアルミニウム資源の確保
-50-
期待度
4
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
世界が羨む社会システムデザイン
都市鉱山からのリサイクルを促進する社会制度
(40)有効活用される都市鉱山
(背景)
(現状)
都市鉱山から有用金属リサイクルを促進するた
めには、分別回収の徹底がポイントになる。都
市鉱山を形成する電気・電子製品については、
家電リサイクル法による4品目のリサイクルが義
務付けられており、また、平成25年度から小型
家電リサイクル法が施行され、今後、電気・電子
製品の回収が促進されることが予想される。た
だ、具体的な金属回収方等は認定業者任せで
あり、今後、早急に、オールジャパンでの、中間
処理と金属製錬を組み合わせたシステムの構
築が不可欠である。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
特定の家電製品(テレビ、冷蔵庫、エアコン等)については、家電リサイク
ル法でリサイクルが義務づけられている。また、平成25年度から小型家電リ
サイクル法が施行され、今後、電気・電子製品の回収が促進されることが予
想される。
(関連する技術の現状)
現在、小型家電に関しては、プリント基板などの銅/金を高濃度に含むも
のが有価に取引され、銅製錬の原料となっている。しかし、希土類元素、タ
ングステン、タンタルなどの活性金属に関しては、回収出来ていない状況
である。
(処理困難の理由)
銅/金以外の、いわゆるレアメタルを廃電気・電子製品から回収するためには、まずは廃製品を効率
的かつ大量に集めるシステムが必要である。平成25年度から小型家電リサイクル法が施行され、今
後、電気・電子製品の回収が促進されることが予想されるが、現状の非鉄製錬所は、希土類元素、タ
ングステン、タンタルなどの活性金属を回収することが出来ない。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
中間処理と非鉄製錬をいかに効率的にオールジャンパンでシステム化することが必要である。中間処
理で、物理選別を行い、現状の非鉄製錬で回収できる元素と、出来ない元素を選別する必要がある。
非鉄製錬所で製錬できない金属元素に関しては、個別に技術開発ならびに設備導入が必要となる。
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
(対象物質):
<学側>
2
元素選択性は無し
(社会・経済的側面での対応策)
対
応
策
リ
ス
ク
懸
念
度
都市鉱山を構成する電気・電子製品のリサイクルを
促進するためには、分別回収へのインセンティブが
働くような社会制度を構築する必要がある。平成25年
度から小型家電リサイクル法が施行され、今後、電
気・電子製品の回収が促進されることが予想される
が、具体的な金属回収方等は認定業者任せであり、
今後、早急に、オールジャパンでの、中間処理と金
属製錬を組み合わせたシステムの構築が不可欠で
ある。
(技術的側面での対応策、代替材料技術シーズ)
電気・電子製品から有用金属を分離・回収し易い設計技術(易
分解性、材料のラベリング技術など)
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
<特に機械分野における技術課題>
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
都市鉱山からの金属資源(レアメタル、貴金属、ベースメタル等)回収の促進
-51-
5
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
世界が羨む社会システムデザイン
ナショプロでの鉱山・製錬関連技術開発
(41)金属資源の安定確保
(背景)
金属資源が特定の国(資源国)に偏在している
ことが多く、特にレアアースの場合は顕著であ
る。このところ資源国がこれを外交戦略の武器と
して利用し始めている。これにより価格の高騰
や安定確保が困難な事態が生じている。我が
国は金属資源のほとんどを海外に依存している
ので、資源確保の「安全保障」の観点から、国
ベースでの対策が必要である。
(現状)
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
(関連する技術の現状)
(処理困難の理由)
資源国が「国の政策」として資源の輸出をコントロールする傾向が強まっているので、資源の安定確保
について民間ベースのみでの対応には限界がある。我が国も「国の政策」として対応する必要がある。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
リ
ス
ク
懸
念
度
3
(問題となる元素;対策前): レアアースなど
対
応
策
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応策、代替材料技術シーズ)
我が国ではほとんどの鉱山が閉山しているので、鉱
山関連の技術開発力が低下しており、人材も不足し
ている。金属資源の安定確保について資源国と交渉
する上で武器となりうる鉱山関連技術を民間ベース
で開発することは期待し難い。このためこれら技術を
ナショプロとして開発する。具体的には(独)石油天
然ガス・金属鉱物資源機構のテーマとして推進する
ことが考えられる。開発された技術は国が管理し、国
の方針に基づいて資源国に提供し、資源の入手する
上での我が国の立場を強化する。
技術開発テーマは、資源国に対して強力な武器になるものでな
ければならない。具体的なテーマは専門家の検討に委ねられる
が、例えば、①鉱山関連の公害防止技術、②高効率製錬技術
(低品位鉱石からの製錬技術など)、などが挙げられる。
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・工場廃水等から酵母を用いて金属を回収する技術(京大 植田
教授ら)
・高圧硫酸浸出法によるNi精錬技術(住友金属鉱山)、など
<特に機械分野における技術課題>
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
資源国との交渉を行う上で、強力な武器となり得る鉱山・精錬関連の技術開発テーマ
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
資源国の外交交渉の武器になり得る金属資源(レアアースなど)の安定入手
-52-
4
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
世界が羨む社会システムデザイン
識別手段とリサイクル規格化
(42)ベースメタル全般合金種別の選別技術
(背景)
(現状)
製品を解体し、素材を分別し、スクラップを回収
する際に、シュレッダ処理の後、磁力選別、風
力選別、渦電流、人手によるピッキング等の選
別技術が主流であるため、素材中の合金成分
の違いによるソーティングができない。その結
果、回収されたスクラップを利用する際には、カ
スケードリサイクルをするか、天然資源を用いて
希釈するか、全体として品位の劣化を招いてい
る。今以上にリサイクルを促進した際には、この
品位の劣化が顕在化する可能性がある。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
モータやコンプレッサなどの素材別に分離するためにコストのかかるもの
は、海外へ輸出されてリサイクルされる等の状況である。
(関連する技術の現状)
現状では、特に問題が顕在化することなく、リサイクルが成立している。
(処理困難の理由)
使用済み製品の解体時に、使用されている素材の詳細な情報がない。また、それをコストに見合って
分別する技術もない。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
現在は、世界全体での素材消費量が、今までと同様に右肩上がりであるので、問題はないが、世界全
体での資源消費量が飽和した際、あるいは日本で入手できる資源に制約が生じた場合、問題が顕在
化する可能性が有る。
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
将来的な問題であり、現状の課題としては認識 マテリアルフロー分析等の研究により、基礎的な知見
されていない
が蓄えられつつある
(対象物質):
リ
ス
ク
懸
念
度
3
Fe, Al, Cu
(技術的側面での対応策)
(社会・経済的側面での対応策)
製品の製造業者の手元に使用済み製品が戻ってく
る仕組みがあれば、ある程度、使用素材の情報等は
把握できているので、適切なリサイクルは可能かも知
れない。一方で、実際にそうなっている家電において
も、ベースメタルはカスケードリサイクルされている。こ
れは、分別コストと分別により得られるメリットを比較し
て、分別コストの方が高いことに由来していると考えら
れる。
対
応
策
合金種別の自動選別システム
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・リサイクル性の高い設計
・機械的選別による精緻な素材選別
<特に機械分野における技術課題>
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
将来的には、等価リサイクルシステムに移行する必要があると認識すべき
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
将来的な天然資源の消費削減
-53-
3
カテゴリー
世界が羨む社会システムデザイン
課題・テーマ 識別手段とリサイクル規格化
アウトプット/製品等
(43)Al-Mn含有張高張力鋼
(現状)
(背景)
自動車用鋼板に求められる軽量性と力学
的特性を兼ね備えた高張力鋼の開発は
低燃費自動車開発の観点から極めて重
要である。近年は、次世代鋼板としてAlMnを高濃度に含有するTWIP鋼の研究開
発が盛んに進められてる。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
Mnを20%程度含有するTWIP鋼は現在自動車バンパー材
として試用が開始されているが、本格的な利用が始まれば
乗用車を中心に高強度部材への幅広い利用が期待され
る。日本のMn消費量は100万トン程度、大部分が鉄鋼用
合金として消費。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
Mn単体のリサイクルプロセスはなく、あくまでも鉄鋼スクラッ
プのリサイクルに随伴している。
(処理困難の理由)
Mnは鉄鋼用合金元素であり、冶金学的性質がFeと近いため、金属Mnを取り出してリ
サイクルすることは現状ではほぼ不可能である。Mnを高濃度に含有する鉄鋼材料を
分別して取り出し、ステンレス鋼と同じような高Mn鋼として再溶解、再利用することが
必要になる。
(今後波及すると思われる問題点等)
リ
ス
課
ク
題
懸
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等) 念
度
<産業側>
<学側>
世界のMn鉱石生産は中国、オーストラリア、南アフリカ、インドで70%を占めており
(2009JOGMECデータ)、遍在性が高い。高Mn合金鋼の製造が本格的になればMn
争奪が起こることは容易に想像される。また、鋼材中Mnのリサイクルプロセスは存在し
ない。
Al-Mn高張力鋼の将来的需要予測(自動
車、その他分野)、フェロマンガンの将来
的世界需要、価格予測と国内回収プロセ
スの稼働コストの比較
3
上記問題に対する現場の定量的な状況
(分別不可能なケースの割合など)の把
握、高Mn濃度領域でのFe-Mn系融体の
冶金学的性質の解明、高効率Mn除去・回
収プロセスの開発を要する。
(問題となる元素;対策前): Mn
(社会・経済的側面での対応)
(技術的側面での対応)
使用済み自動車の解体・リサイクル制度構築に
当たり、使用部材を明記したデータシート(組成
データのみでよい)をあらかじめ完備する必要
がある。
鋼材リサイクル過程で、普通鋼、Cr系ステンレス
鋼、Ni系ステンレス鋼と同様に高Mn合金鋼を分
別する技術が必要となる。
<課題解決に貢献すると思われる技術>
・レーザーアブレーション・発光分光分析による
含有成分の定性分析
対
応
策
(産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
産業界:使用鋼材の規格コードを部材に表記、MSDSのような仕組みを機械製品にも取り込み、使用
元素、使用量、使用箇所を明記する。自動車の場合は分離可能な溶接技術も必要。
学界:高Mn含有鋼材の高効率リサイクル技術の開発、Mnの効率的抽出技術開発
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
フェロマンガン使用量の削減
-54-
期待度
3
7.希少資源の活用・リサイクル技術
カテゴリー
希少資源の活用・リサイクル技術
課題・テーマ 触媒白金のリサイクル
アウトプット/製品等
(44)燃料電池車の普及
(現状)
(背景)
自動車の排ガス規制は、規制値も強化さ
れる方向で、実施される地域が世界的に
拡大している。自動車排ガス触媒に使う元
素は、白金(Pt)やパラジウム(Pd)などの
白金族である。燃料電池が普及した場
合、白金が不足すると言われている。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
30トン
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
あり
(処理困難の理由)
基材に対する含有量が少ない
リ
ス
課
ク
題
懸
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等) 念
<産業側>
<学側>
度
(今後波及すると思われる問題点等)
燃料電池が普及した場合、白金が不足すると考えられる
4
弊社の触媒としてのPt使用量は多く、コス
トの占める割合が多い。真剣に取り組む必
要がある
要がある。
(対象物質): Pt
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
(社会・経済的側面での対応)
白金コスト削減は喫緊の課題。
・低コストで再生化する技術の開発
・中間処理により白金の濃度を高める技術開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
(産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
産業界:パイロットプラント製造。固体、液体両方処理。回収コスト開示。
大学や研究機関:企業間の橋渡し役。元素の純度向上のための技術や省力化につながる技術開発。
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
新規Pt地金の消費量減少
-55-
期待度
5
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
希少資源の活用・リサイクル技術
白金、パラジウム触媒の回収
(45)高効率のKDPF(排ガス浄化装置)
(背景)
(現状)
ディーゼルエンジンのパーティクレートレベルの
大幅低減を義務付ける環境規制のため、排出
ガス浄化システムとして、建設機械ではKDPFと
呼ばれるシステムを使用しているが、セラミック
担体と貴金属触媒(白金、パラジウム触媒)を大
量に使用し、将来の供給不安がある。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
環境対応で今後、グローバルなリサイクルシステム構築が必要
建設機械での回収ルートなし
(関連する技術の現状)
メーカ毎に対応が異なる。
(処理困難の理由)
回収技術はあるが、リサイクル手段なし
(今後波及すると思われる問題点等)
希少元素の埋設処理による需給バランス悪化
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
リサイクルシステムの構築
排ガス浄化効率向上
(対象物質): <学側>
安価な触媒分離技術の開発
排ガス浄化の触媒の貴金属使用率低減
リ
ス
ク
懸
念
度
4
Pt、Pd
(社会・経済的側面での対応策)
法整備 メーカ回収が困難(古物商の免許必要)
リサイクルルートの開拓
排ガス浄化効率向上
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
安価な触媒分離技術の開発
排ガス浄化の触媒の貴金属使用率低減
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・希少元素分離技術開発
・触媒の回収技術
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
・排ガス処理用触媒の白金、パラジウム低減した際の信頼性確
保
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
パーティレート排出のメカニズム解明による高能率排ガス浄化による触媒使用量低減
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
白金、パラジウム触媒のリサイクルによる使用量低減
(新規Pt、地金の消費量減少)
-56-
期待度
5
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
希少資源の活用・リサイクル技術
下水道汚泥からのリン回収
(46)化学肥料など起因の下水道汚泥の資源化
(背景)
(現状)
➣生産国の輸出規制で国内ではリンが不足し
ており、価格が高騰している。 80%が化学肥
料、15%が界面活性剤や表面処理剤、数%が
飼料添加剤に使用されている。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
➣国内で使用されるリンは70万トン/年であるが、100%輸入している。 生
産国である米国は輸出禁止、中国は輸出規制でモロッコだけに頼ってい
る。 工業用品として輸出される1万トン/年以外は土壌に蓄積されたり、水
域に流出したり、汚泥として廃棄される。
(関連する技術の現状)
➣下水道汚泥や工業廃棄物から回収・再資源化への動きが活発化してい
る。 下水道汚泥の分野では国交省が補助金を出している。
(処理困難の理由)
➣下水道汚泥や工業廃棄物に含まれるリンは5万トン/年で再生するには経済性に問題がある。
(今後波及すると思われる問題点等)
➣富養化による水質悪化とリン酸肥料不足による食糧生産への影響(=収量の低下・価格高騰)
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
➣高温で熱処理(=450℃で炭化)した牛の骨 ➣リンを効率良く残す炭化技術の開発…植物の炭化
(=アパタイト)を肥料とすることによりリンを再利 事例は多いが動物の炭化事例は少ない
用
(対象物質): リ
ス
ク
懸
念
度
3
P
(技術的側面での対応策)
(社会・経済的側面での対応策)
➣現在はBSE問題で因子であるプリオンを消滅させ
るために、1000℃以上で30分加熱するような通達が
農水省から出ているが、国内のBSEも絶滅状態であ
り、この規制を撤廃するとともに、技術開発のための
助成処置が必要。
➣専用炭化炉の開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
➣高効率な熱循環炉
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
➣ガス化溶融炉、流動焼、炭化炉に関る技術
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
➣各個体による組成の違い(=品種・産地・育齢など)と肥育対象物への適正
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
➣リン(=P)の枯渇防止と輸入量の削減に寄与
-57-
5
カテゴリー
希少資源の活用・リサイクル技術
課題・テーマ 希土類ボンド磁石のリサイクル
アウトプット/製品等
(47)再生Nd-Fe-Bボンド磁石
(現状)
(背景)
Nd-Fe-Bボンド磁石は製品の小型化・軽
量化に有効なため、近年その適用分野が
増加している。一方、磁石に使われている
NdやDyは将来にわたる安定確保が困難
であり、使用量の低減とともに回収機器か
らの資源活用が不可欠である。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル経済性等)
Dy は、2016 年から2020 年の間には需給ギャップが拡大
するものと予測がある(COCN)。
(リサイクルプロセスの有無<リサイクル技術実用化の状況>)
廃家電モータ(エアコン圧縮機に限定)からのNd-Fe-B焼
結磁石のリサイクルはスタート。しかしながら、OA機器モー
タ等に使われているNd-Fe-Bボンド磁石のリサイクルは実
施されていない。
(処理困難の理由)
廃家電モータから分離・回収されたNd-Fe-B焼結磁石は磁石メーカの原料としての
再生が容易であるが、廃OA機器等に使われているNd-Fe-Bボンド磁石は樹脂とNdFe-B粉末の複合材料となっており、樹脂とNd-Fe-B粉末を分離することが難しいため
Nd-Fe-B粉末に含まれるNdやDyを再生利用することができず、現状はスクラップとし
て廃棄されている。
リ
ス
(今後波及すると思われる問題点等)
課 ・樹脂とNd-Fe-B粉末の複合材料のリサイクル困難性
ク
題
懸
念
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等) 度
<産業側>
社会的なリサイクル支援基盤の構築
(対象物質): 4
<学側>
樹脂とNd-Fe-B粉末の複合材料のリサイ
クル技術の開発
Nd、Dy
(社会・経済的側面での対応)
元素を使用済み機器から取り出し、再生化する
取り組みを産業の垂直連携のもとで実施する。
これらを社会システムとして根付かせ、運用して
いくとともに、将来的には世界的に最適な場所
で経済合理性が成り立つ規模のプラントを必要
数稼働させるため、推進組織として「資源循環
システム準備組合」の設置が有効と考えられ
る。
対
応
策
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
・使用済み機器からNd-Fe-Bボンド磁石を識別
して取り出す技術開発や、中間処理によりNdFe-Bボンド磁石を選別する技術開発
・Nd-Fe-Bボンド磁石(樹脂とNd-Fe-B粉末の
複合材料)からNd-Fe-B粉末を分離回収する
技術開発
・易分解を実現する組立技術(材料技術と機械
設計技術の融合)
・高効率で再生化する技術の開発(材料技術と
リサイクル技術の融合)
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・複合材料の樹脂熱分解による金属分離技術
・複合材料の粉砕・粉末化による再利用原料化
技術
(産学で共有すべき情報、連携すべき事項)
国(政府):リサイクル拠点の選定と自治体との交渉。
産業界:使用材料が判断できる識別コードを製品または対象部材に明記する。
さらに、対象部材が廃棄製品から取り出しやすくする組立方法や固定方法などのガイドラインを作成
する。
大学や研究機関:磁石から有効資源を低コストで抽出するための研究開発を民間企業と協力して開
発する。特に、回収される元素の純度向上のための技術や省力化につながる技術開発と早期に実用
化を目指す。
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
Nd-Fe-Bボンド磁石リサイクル化率:50%
期待度
4
※ 本事例は産業競争力懇談会「希少金属の安定確保に向けた資源循環システム(2012年3月6日)」を基に作成
-58-
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
希少資源の活用・リサイクル技術
超硬工具からのタングステン、コバルト回収
(48)再生超硬工具
(背景)
(現状)
環境対応のため、加工中の切削液を使用しな
いドライ切削加工技術が普及し、そのため、工
具の加工温度上昇による耐熱性が要求されて
いる。TINコーティングなどの表面処理の再コー
ティングなどは一般的に実施されているが、基
材のタングステン、コバルトといった工具そのも
のはリサイクルされていない。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
工具の表面改質の再コーティングは古くから実施されているが、工具材料
のリサイクルシステムはない。
コマツでは超硬工具を回収して、破さいして溶射肉盛に使用
(関連する技術の現状)
メーカ毎に対応が異なる。
(処理困難の理由)
超硬工具は耐熱性が高く、分離が難しい。
信頼性確保のため、折損、欠損した加工工具は廃棄するのが通常
(今後波及すると思われる問題点等)
希少元素[タングステン、コバルト他)供給不安
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
リサイクルシステムの構築
(対象物質): <学側>
超硬工具の希少元素分離技術開発
リ
ス
ク
懸
念
度
4
タングステン、コバルト
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
工具のリサイクルシステムの構築
超硬工具の希少元素分離技術開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・工具破さい材⇒溶射肉盛などの再利用推進
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
高速加工技術に信頼性確保
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
超硬工具の希少元素分離技術開発
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
タングステンやコバルトのリサイクルによる使用量低減
(新規W、Co地金の消費量減少)
-59-
期待度
4
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
希少資源の活用・リサイクル技術
耐酸化コーティングからの貴金属回収
(49)ジェットエンジン、ガスタービンの再生コーティング
(背景)
(現状)
ジェットエンジン、ガスタービンなどで高温の燃
焼ガスに晒されるタービンブレードには、表面
の高温酸化による劣化を抑制するために、Ptを
20~60wt%程度含むコーティングが施されてい
る。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
タービンブレードの基材はNi基合金であるため、Niおよび基材中に合金元
素として含まれる貴金属や重金属の回収を目的とした使用済みブレードのリ
サイクルが実施されているが、その場合でも表面のコーティングを対象とした
貴金属回収は実施されていない。
(関連する技術の現状)
自動車用排ガス触媒や化学工業用触媒に使用されているPt等は回収され
てPt地金へリサイクルされている。
(処理困難の理由)
コーティング中のPt含有量は15%以上とかなり高いが、膜厚が数十μm程度と薄いため、基材とともに溶
解してしまうと濃度が低下して回収に要するコストが増加する。
また耐酸化コーティングの上にはセラミックスの遮熱コーティングが重ねて施工されており、現状では耐
酸化コーティングの部分のみを回収することができない。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
熱効率向上のためにガスタービン等の燃焼温度は上昇しつつあり、耐酸化コーティングの適用範囲は
拡大し、またコーティング中の貴金属含有量が増加する可能性が高い。さらに電源におけるガスタービ
ンのシェアも増加傾向にある。
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
使用後に廃棄されるタービンブレードの量
使用されているコーティングの種類と組成
(対象物質): <学側>
リ
ス
ク
懸
念
度
4
Pt
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
リサイクルPt地金の流通価格の安定化
セラミックスの遮熱コーティング層および耐酸化コーティング層を
選択的に除去する技術の開発
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・ブラスト
・電解、エッチング技術
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
Pt族金属:リサイクル率向上による新規Pt地金の消費量減少、Pt資源の保護
耐酸化コーティングからの貴金属回収
-60-
期待度
2
希少資源の活用・リサイクル技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
微生物による金属回収
(50)低濃度水溶液(工場・鉱山廃水、海水など)を資源化
(背景)
(現状)
現在、我が国の鉱山は資源の枯渇・コスト高等
の理由で、ほとんどが閉山されている。このため
金属原料は海外からの輸入に依存している。し
かしながら、近年の資源ナショナリズムの高まり
から安定確保が困難になりつつある。価格の高
騰も招いており、資源確保の「安全保障」が脅
かされている。このような事態に対処するため
に、我が国近海の海底資源への関心も高まっ
ている。国内で大量に入手できる低濃度水溶
液からの金属回収についても可能性を探るべき
である。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
(関連する技術の現状)
(処理困難の理由)
海水や工場・鉱山廃水などの低濃度資源(水溶液)からの金属の回収は、従来の化学プロセスでは用
役費や固定費などが割高になり、コスト面でフィジブルでない。これら低濃度資源から効率よく金属を
回収できれば、自前の資源確保に資することになり、併せて環境浄化に繋がる可能性もあり、一石二
鳥の効果も期待できる。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
(対象物質): <学側>
微生物による金属吸着・濃縮に関する基礎的知見
(金属吸着・濃縮のメカニズム、微生物種と金属種の
関連、遺伝子組み換え技術の応用、など)
リ
ス
ク
懸
念
度
1
レアメタルなど
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
このところ微生物を用いて極低濃度の水溶液から金属を回収す
る技術が幾つか検討されている。京大の植田教授らが、極低濃
度の水溶液からモリブデン、ニッケルなどを遺伝子組み換え酵
母に吸着させて回収する技術を見出している。芝浦工大の山下
教授らも、鉱山廃水から微生物を用いてセレンを回収する技術
を見出している。
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・微生物による金属吸着・濃縮技術。微生物の遺伝子組み換え
技術
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
金属資源として利用できる可能性がある低濃度金属水溶液(例えば高価な金属を含む工場・鉱山廃水、火山性ガスが噴出
している周辺の海水、熱水鉱床周辺の海水など)の性状(金属種、金属濃度など)に関する情報
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
問題となる元素 : レアアース、貴金属など
改善によるメリット:金属資源の自前確保、バイオテクノロジーへの波及効果
-61-
期待度
4
希少資源の活用・リサイクル技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
高分子吸着による金属回収
(51)低濃度水溶液(工場・鉱山廃水、海水など)を資源化
(背景)
(現状)
現在、我が国の鉱山は資源の枯渇・コスト高等
の理由で、ほとんどが閉山されている。このため
金属原料は海外からの輸入に依存している。し
かしながら、近年の資源ナショナリズムの高まり
から安定確保が困難になりつつある。価格の高
騰も招いており、資源確保の「安全保障」が脅
かされている。このような事態に対処するため
に、我が国近海の海底資源への関心も高まっ
ている。国内で大量に入手できる低濃度水溶
液からの金属回収についても可能性を探るべき
である。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
(関連する技術の現状)
(処理困難の理由)
海水や工場・鉱山廃水などの低濃度資源(水溶液)からの金属の回収は、従来の化学プロセスでは用
役費や固定費などが割高になり、コスト面でフィジブルでない。これら低濃度資源から効率よく金属を
回収できれば、自前の資源確保に資することになり、併せて環境浄化に繋がる可能性もあり、一石二
鳥の効果も期待できる。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
(対象物質): <学側>
高分子吸着剤による金属吸着に関する基礎知見
リ
ス
ク
懸
念
度
1
レアメタルなど
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
日本原子力研究開発機構らは、繊維状の高分子吸着剤を用い
て海水からウランを回収できる技術を見出している。群馬大の永
井助教授らは、水溶性ポリアミンと含硫黄イソチオシアナートか
らなる高分子吸着剤を用いて水溶液から貴金属を回収できるこ
とを見出している。都市鉱山からの貴金属回収に利用できる可
能性がある。
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・高分子による金属吸着技術
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
金属資源として利用できる可能性がある低濃度金属水溶液(例えば高価な金属を含む工場・鉱山廃水、火山性ガスが噴出
している周辺の海水、熱水鉱床周辺の海水など)の性状(金属種、金属濃度など)に関する情報
(問題となる元素及び改善によるメリット)
問題となる元素 : 貴金属、ウラン、レアアースなど
改善によるメリット : 金属資源の自前確保
-62-
期待度
4
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
希少資源の活用・リサイクル技術
鋳造砂型からの砂回収
(52)再生鋳鋼鋳型用クロマイト砂
(背景)
(現状)
鋳鋼は凝固温度が高いため、鋳物への砂の焼
着きが発生しやすいことから、鋳型の表面部分
にはより耐熱性の高いクロマイト砂を使用してい
る。砂は鋳物工場内で再生利用されているが、
劣化して使用できなくなった部分は産業廃棄物
として処分されている。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
クロマイト砂は本質的にクロム鉱石と同一で、南ア,インド,カザフスタンな
どが主な産出国。世界的なクロム需要は増加中である反面、鋳物砂として
の供給は減少中。日本は全量を輸入。廃砂を、再度鋳型砂として使用でき
るようにするリサイクル技術は開発されていない。
(関連する技術の現状)
鋳型用砂としてセラミックスによる人工砂が開発されており、鋳鉄では適用
されている。
(処理困難の理由)
鋳物は製品としての単価が低いため、廃砂をリサイクルするにしても、その処理コストを製品価格に転
嫁することが困難。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
鋳型用に使用したクロマイト砂中には、微量ではあるが6価クロムが生成する可能性が指摘されてお
り、産業廃棄物としての処分も将来的には困難になる可能性が高い。
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
<学側>
鋳型用砂としての性能、環境対策も含めたコス
トが見合えば、必ずしもクロマイト砂である必要
はない。
(対象物質): リ
ス
ク
懸
念
度
1
Cr
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
・廃棄物における合理的なクロム量規制の設定
・耐焼着性に優れる塗型の実現(→クロマイト砂以外の廉価で毒
性の無い天然砂の利用)
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・高温融体物性評価/予測技術
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
・高度な砂再生設備(不純物除去、整粒化)廃砂削減
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
・鋳鋼鋳型における6価クロム発生条件の把握と実プロセスにおける生成量の評価
(問題となる元素及び改善によるメリット)
Cr:6価クロムによる環境汚染の可能性を低減できる
天然砂の資源枯渇回避
-63-
期待度
3
希少資源の活用・リサイクル技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
プリント基板からの銅回収
(53)再生銅を使ったプリント基板
(背景)
(現状)
IT機器等に不可欠である銅の需要は上が
る一方、供給側はすでに低品位の鉱石に
手をつけておりいわゆる枯渇の危機にあ
る。
銅は導線以外に基板に箔の状態で使用さ
れている場合が多い。現状は、銅/金の
原料として、銅製錬所で溶融製錬されてい
るが、ガラスや樹脂、アルミニウム等の不純
物が問題となる。したがって、銅製錬所に
原料として装入する前に、物理選別で、銅
/金、その他の有価金属、ガラス、樹脂分
に分離することが望ましい。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
(関連する技術の現状)
基板ごと粉砕した上で選別、銅箔として回収
(処理困難の理由)
処理コストが合わず不純物扱い、もしくは基板自体を廃棄物として処理
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
(対象物質): <学側>
リ
ス
ク
懸
念
度
2
Cu
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
物理選別を経済ベースで行うためには、大量処
理が必要だが、現在の国内状況では、大量に
一箇所に集めるのが困難。
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・物理選別の精緻化、低コスト化
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
1
Cu消費量減少
-64-
希少資源の活用・リサイクル技術
カテゴリー
課題・テーマ
アウトプット/製品等
樹脂めっき部品からの銅回収
(54)再生銅を使った樹脂めっき部品
(背景)
(現状)
IT機器等に不可欠である銅の需要は上が
る一方、供給側はすでに低品位の鉱石に
手をつけておりいわゆる枯渇の危機にあ
る。
一方樹脂めっき材として銅、ニッケル、クロ
ムめっきが用いられているがその廃材の有
効活用に対してニッケル、クロム等は鋼材
への添加成分として回収が進んでいるもの
の銅は有効活用されていない。
(需給量見通し、国内循環・海外流出実態、リサイクル
経済性、リサイクルブロセスの有無、実用化状況等)
(関連する技術の現状)
部品ごと粉砕した上で選別、銅箔として回収が可能?そのほか、例
えば、反射炉を使用してASRを大量処理しながら銅製錬を行ってい
る銅製錬所が国内に存在するので技術的に処理は問題ないと考え
られる。
(処理困難の理由)
銅としては回収コストが合わず樹脂側メインで樹脂ペレットとしてリサイクルされる。
(今後波及すると思われる問題点等)
課
題
(課題に対して産・学各々の認識、求めるもの、提供可能な情報等)
<産業側>
(対象物質): <学側>
リ
ス
ク
懸
念
度
2
Cu
(社会・経済的側面での対応策)
(技術的側面での対応、代替材料技術シーズ)
ボリュームが少ないので対応不要?
<課題解決に貢献すると思われる技術/シーズの芽>
・ASRからの回収、リサイクル技術
対
応
策
<特に機械分野における技術課題>
(産学で共有すべき情報、連携すべき課題)
期待度
(対策後の改善レベル(目標)、メリット)
1
Cu消費量減少
-65-
Ⅲ
むすび
平成20年~22年のⅠ期をベースに、いわばⅡ期となる平成23・24年
度では「資源制約に対応する材料再資源化等に関する調査研究~材料再資源化と
サプライチェーンにおける原材料供給の安定化と競争力強化~」を実施した。その結
果を「材料分野から見た”魅力”と難しさ”の事例集」としてまとめ、抽出され
た問題点を産学ができるかぎり共有できるように工夫した。
事例集と銘打ったのは、産業界および社会にはここで例示した課題に留まら
ず極めて広範な課題が数多くあるため、すべてを網羅することは調査専門部会
の力量を越えると思ったからである。このようにコンテンツには限界があるが、
この事例集が社会的意義を持ち、活用される中でコンテンツの修正や拡充がさ
れて、より有効に使われるようになることを期待して、いくつかの工夫をした。
その工夫は、①問題点をカテゴライズして整理したこと、②材料再資源化に
よる社会貢献の可能性の視点から戦略的にカテゴリーの順位付けをしたこと、
③カテゴリー内でさらに事例ごとにリスク度と期待度の評点付けをしたことな
どにある。
カテゴリーは、7つとなった。すなわち、
「除染を含むインフラ再生技術」、
「代
替技術」、「無害化」、「エネルギー回収技術」、「世界が羨む材料デザイン」、「世
界が羨む社会システムデザイン」、
「希少資源の活用・リサイクル技術」である。
3.11以降、重要性、緊急性が極めて増したのは、
「除染を含むインフラ再生
技術」である。
順位付けは、第一段階として、
「原理の難しさ」すなわちサイエンス面で解決
策が見えるかどうかと、
「工夫の難しさ」すなわちエンジニアリング面で解決策
が見えるかどうかという評価を行った。この足し算が「実行の難しさ」となる。
第二段階は、
「実行の難しさ」と「魅力」の横軸、縦軸で順位付けした。
「魅力」
とは言うまでもなく、問題解決した際の社会貢献度である。
「魅力」が高く、
「実
行の難しさ」が低いものが、「優先度」が高くなるはずである。
その上に、上述したように事例毎に、リスク度と期待度を評点付けした。技
術には地域性があるし、国際規則などの影響も受ける。リスク度・期待度は日
本国内を対象とする場合と海外を対象とする場合には自ら違いがでてくること
も冷静にご理解いただく必要がある。PM2.5 問題などのように国境を越える複雑
な問題もある。
我が国では、限られたリソース(人材、資金、資源、エネルギーなど)を如
何に有効に活用するかという点で、産学の認識を共通化していく努力が鋭く求
められている。「材料分野から見た“魅力”と“難しさ”の事例集」がそのよう
な場で広く活用されることを強く期待するものである。活用されることによっ
て、科学も技術も人材育成も進むことを祈念する。
―67―
◎講演資料
「材料再資源化における分離・回収の課題と今後の在り方」
東北大学 大学院工学研究科 准教授 松八重一代 氏
◎代替材料技術に関する調査専門部会の活動経過
材料再資源化における分離・回収の課題と今後の在り方
東北大学大学院工学研究科
松八重 一代
第20回代替材料技術に関する調査専門部会
日時: 2012年08月31日(金) 14:00~16:00
於:機械振興会館内会議室 (東京)
自己紹介
【氏名】
松八重
一代
(MATSUBAE
Kazuyo)
【所属】
東北大学大学院工学研究科
【専門分野】
廃棄物・資源経済学、産業エコロジー、ライフサイクル分析
金属フロンティア工学専攻
准教授
【学位】
博士(経済学) 早稲田大学
学位論文「廃棄物発生と処理の計量経済分析-廃棄物産業連関表を用いた動学的アプローチ」
【もとの?専門分野】
計量経済学
修士論文テーマは「雇用調整の実証分析」。
【現在行っている研究テーマ】
●廃棄物発生と処理・再資源化の産業連関分析
生産、消費に関わる廃棄物発生と処理、再資源化について分析を行うツールとして、産業連
関表を拡張した廃棄物産業連関表の作成と応用。
●鉄鋼合金元素の持続可能な循環システム構築
鉄鋼資源の随伴するマンガン・ニッケル・クロム・モリブデン等の希少金属を主な対象とし
て、マテリアルフロー・ストック量の把握と共に、その需給構造の分析を行っています。素材
技術やリサイクル技術、さらには社会構造の変化に伴う改善効果の定量化を行っています。
●リン資源の保全・管理 資源化技術の環境影響評価
農業に必須の栄養塩類であるリン資源のマテリアルフロー分析、回収・再資源化技術の環境
影響評価を通じて、枯渇性資源の保全・管理に関わる政策提言につながる基礎研究を行ってい
ます。
-69-
本日の話題
鉄鋼生産周辺における資源フローに着目して
材料再資源化における分離・回収の課題と今後の在り方
を考える
鉄鋼生産周辺における資源の行き先は?
鉄鋼生産プロセス
電気炉ダスト
Fe, Zn, Pb, Cd
・・・・・
Fe, Mn, Ni, Cr, Mo, W, Zn
・・・・・
Fe, P, Si, Ca, Mn, Cr
・・・・・
-70-
鉄鋼生産周辺の資源フローを考える上での問題意識

リサイクルプロセスに投入されたマテリアルはすべて
「循環した」と言えるのか?
スラグにむかうマテリアルは?ダストに向かうマテリアルは?

 ベースメタル中に残るけど、ただの不純物(コンタミ)の場合
も「有効利用している」と言えるのか?
プロセスによって回収(資源化)できるエレメントは異なる

希少資源の行き先は?
Alloying elements in steel scrap ~ Impurity ? / secondary resource? ~
14
Slag phase
La
12
10
log(Ls/m)
8
6
U
Zr
Distribution model for Fe BOF/EAF
xM = 0.01 (mol fraction)
pO2 = 1.9x10-5 Pa
pFe = 8.5 Pa
T = 1873 K
Ta
4
Nb
B
2
0
Mg
Al
Sr
Ti
Alloying elements
Recoverable elements
Deoxidation agents
Si
V
Cr
Mn
Removed by oxidation
W
Mo
-2
Metal phase
-4
-15
Ca
Ce
-10
Diluted in carbon
steel making process
-5
Co
Ni
log(Lg/m)
Fe
Pb
Cu
Ag
Zn
Sn
0
Gas phase
5
10
元素の分配傾向 (Fe BOF/EAF)
K.Nakajima, O.Takeda, T.Miki, K.Matsubae and T.Nagasaka, Environ. Sci. Technol. , 45(2010), 4929-4936
-71-
希少資源の行き先は?
Hg
Bi Sb Sn Pu
Ge
Ag
Na Zn Tl
Ni
Mg Sr Mn Cu Fe
Al
Si
Ca
LaCe
Gd
Zr
Y
Li
Yb
Pt
Au Pd
Ni
W
CuSn Fe
Bi
In
Cr
Pb
Ga
Mn
Al
Zn
Mg
Ag
Hg
Hg
Cd
Zn
Mg
Bi
Pb
In
Li
Sb
Sr
Ag
Yb
Ca
Ga
Al
MnSn As
Be
Cu Ge
Au
Dy Si Cr
Ho Ti Fe
Gd Co Pd
V B Ni
Ce U
Y
Zr La Mo
Nb W
Ir
Ta
Pt
Zn
Pb
(Blast furnace)
W
Al
Ni Fe Cr
Sn
Au
Cu
Al
Ag In Ga Mn
Mg
Bi
Pb
Pd
(ISP)
Cu
Fe
Ca Mg
Sr
(Converter) (BOF,EAF)
W
Hg
Re
Pt
(Remelting)
Zn&Pb
Zn
Rh
Pd
Au
B
Al
Cr Sr
Mg
Fe Ga
Mn
Ge
Ni
In
Sn
Zr
Ta
Sb
Cu Pb Zn
Bi
Ag
Cd
Hg
Se Te
U
Nb
W
to Slag phase
Elements that have distributed
among the slag phase as oxide
Mg
(Remelting)
Pb
Pt
to Metal phase
Elements that have distributed
among the metal phase as a
solid or liquid metal
La
Ce Al
Ti
Si
B V
Mo
Cr
Mn
Recoverable element
(as pure metal)
Alloying element
Deoxidation agents
K. Nakajima, O. Takeda, T. Miki,
K.Matsubae and T.Nagasaka ,
Environmental Science and
Technology,Vol.45(2011) pp.4929-4936
Ag
Fe
Cu
Co
to Gas phase
Elements that have
evaporated and distributed
among the gas phase .
Sn
Ni
Element radar chart:
“metal pizza”
鉄鋼資源循環
35,000
他産業
鉄鋼
600,000
30,000
500,000
25,000
需要量 (t)
需要量 (t)
700,000
400,000
300,000
他産業
鉄鋼
20,000
15,000
200,000
10,000
100,000
5,000
0
0
Ni
Cr
Mn
Zn*
Co
W
Mo
V
Nb
粗鋼生産比に占める特殊鋼の割合上昇
スクラップ消費量の増大
140,000
140,000
120,000
120,000
100,000
100,000
80,000
80,000
60,000
60,000
40,000
40,000
20,000
20,000
0
1950
>>スクラップを介した合金元素流入の可能性増大
0
1960
1970
1980
1990
2000
2010
年度
特殊鋼
普通鋼
総生産量
鉄スクラップ需要量
8
図 日本における鉄鋼生産量と鉄スクラップ消費量の推移
-72-
鉄スクラップ需要量 (1000t)
鉄鋼生産量(1000t)
国家備蓄七鉱種国内需要の約95%が
鉄鋼用
主にフェロアロイとして特殊鋼生産に
用いられる
リサイクルにおける不純物混入・合金元素散逸
鉄鋼生産プロセス
電気炉ダスト
Fe, Zn, Pb, Cd
・・・・・
Fe, Mn, Ni, Cr, Mo, W, Zn
・・・・・
スクラップソーティングテクノロジー
Fe, P, Si, Ca, Mn, Cr
・・・・・
ELV解体フロー
解体業社でのELV解体フロー
ELV
足回り部品
排気処理装置
リユースパーツ・
処理困難部品回収
非鉄部品
回収
・エンジン
・足回り部品
(ナックルアーム等)
・プロペラシャフト
・排気処理装置
・ドア
・シート
等
・モータ類
・内装品
・ハーネス
・ガラス
など
中古部品
リサイクル
マテリアル
リサイクル
-73-
解体ガラ
プレス・
シュレッダー
処理
電炉へ投入
10
エンジン部品のフロー
エンジンは取り外しの後、約50%が中古エンジンとして輸出、6%程
度が国内で中古部品として販売されている。
残りの44%のうち9割はアルミ製造業へ、1割は破砕処理の後、各素
材別に資源化
アルミ製造業では溶解プロセスでエンジンブロックに含まれるアルミ
分を回収。残った鉄分については故銑として売却。→電炉で資源化
Fig. アルミ除去後のエンジン由来故銑
ただしエンジン部品に使わ
れているこれらの特殊鋼
合金元素は散逸・拡散
非鉄金 非金属
特殊鋼
3%
属
鋼
炭素鋼
6%
10%
一台
177
kg
4%
結合金
鋳鉄
1%
40%
ブデン鋼
6%
2%
ステンレス
特殊鋼
45.5
kg
普通鋼
鉄系焼
3%
ばね鋼
25%
(AL)
27%
機械構造用 クロム鋼 クロム・モリ
高マンガン
鋼
8%
快削鋼
耐熱鋼
62%
3%
クランクシャフト
ELV部品に随伴する合金元素の種類・量の分析
分析装置:ハンドヘルド蛍光X線分析計
(メーカー ; オリンパス・イノベックス)
・エネルギー分散型分光法により、多元素を
同時測定可能
ビーム1 :(Ti , Cr , Mn , Fe , Ni , Cu , Mo , etc.)
ビーム2 : (Mg , Al , Si , P , S , etc.)
・軽金属の分析には不向き
Fig. 蛍光X線分析計
測定条件
・Cr , Mn , Ni , に着目
・1回の測定につき
ビーム1 ; 60s、ビーム2 ; 20sで測定
・表面をグラインダーにより研磨してから測定
・誤差を考慮し、同種鋼材を2~3回測定
・蛍光X線分析とICP分析との相関をとり、補正
をかけることで、最終的な鋼材の組成を決定
-74-
Fig. 切削面の様子
12
ELV部品に随伴する合金元素の種類・量の分析
ボディ ~組成分析
1.ルーフパネル
2.リアフェンダー
3.トランクリッド
9.ダッシュ
ボード付近
2 リアフェンダー 5,6 リアドア
4.フロアパネル
Fig. 組成分析サンプル
6.リアドア(内側)
1~6; パネル部品
7~9; 構造骨格部品
7.ルーフレール
8.フロントコナー
5.リアドア(外側)
Fig. ボディ部品の展開図
ボディ9ヶ所の組成を測定し、組成傾向を分析
13
ELV部品に随伴する合金元素の種類・量の分析
排気処理装置 ~随伴合金元素量の推計
ステンレス鋼
(Cr;11%)
排気パイプ(内側)
触媒ケース(内側)
ステンレス鋼
(Cr;18% , Ni;8%)
排気口
Table
排気処理装置随伴合金元素量の推計結果
合金元素量
部品名称
重量
[kg]
排気パイプ
(外側)
5.5
1.2
8.1
0
排気パイプ
(内側)
2.9
258.0
6.7
4.5
マニホールド
(排気口)
0.1
5.3
0.3
2.0
触媒ケース
(外側)
0.5
0.1
0.7
0
触媒ケース
(内側)
1.6
147.0
3.8
0.5
マフラー
1.6
0.1
0.8
0
12.1
411.7
20.4
7.1
合計
-75-
Cr量
[g]
Mn量
[g]
Ni量
[g]
14
合金元素含有量の年代別傾向
ルーフパネル
Cr
0.06
%
0.5
0.4
0.3
% 0.2
0.1
0
1995
0.04
0.02
0
1995
2000
リアドア
0.04
Cr
2005
2010
2000
Mn
2005
2010
2005
2010
2005
2010
0.6
0.02
%
0.01
0.4
0.2
0
0
1995
2000
構造骨格部品
0.03
%
Mn
0.8
0.03
%
赤;排気量1500cc以上
青;排気量1500cc未満
2005
2010
1995
Cr
2000
Mn
3
0.02
%
0.01
2
1
0
1995
2000
2005
0
1995
2010
2000
溶解実験(5トン炉)
シュレッダー処理フロー
1次破砕
シュレッダー
破砕
磁力選別
重液選別
ボディ
20台
破砕作業
廃自動車20台分のボディ
ならびに足回り部品を
シュレッダー処理
ボディ
シュレッダー
8.9 (t)
シュレッダー鉄 アルミ
回収
回収
非鉄金属
回収
16
-76-
溶解実験(5トン炉)
ICP発光分光分析でメタル・スラグ中の目
的物質の濃度測定
電気炉製鋼鋼材・造塊スラグ
CaO
FSi
メタル/スラグ間の元素分配挙動を実験的
に確認
投入
副資材(脱酸材など)
0.3 (t)
鋼塊(メタル)
5.4 (t)
投入
ボディ・下回り
シュレッダー
造塊スラグ
電気炉
5.5 (t)
0.3 (t)
メタル、スラグへの合金元素分配傾向を分析
17
溶解実験(5トン炉)
最終溶鋼組成(%)
C
Si
Mn
P
S
Cu
ボディ
0.66
0.46
0.31
0.02
0.01
0.11
足回り
1.40
0.59
0.48
0.02
0.02
0.10
Ni
Cr
Mo
Pb
W
V
ボディ
0.04
0.32
0.01
<0.00
<0.00
<0.00
足回り
0.04
0.31
0.02
<0.00
0.02
<0.00
比較的、懸念される不純物、合金元素の混入が低い鋼。
普通鋳物用銑鉄並
C
Si
Mn
P
S
Cr
Ti
普通
鋳物用銑鉄
≧3.40
1.0~3.0
0.3~0.9
≦0.10
≦0.04
≦0.03
≦0.06
ダクタイル
用銑鉄
≧3.40
0.5~2.8
≦0.25
≦0.09
≦0.04
≦0.03
≦0.06
高純度
ダクタイル
用銑鉄
≧3.60
0.15~1.3
≦0.10
≦0.01
≦0.01
≦0.02
≦0.01
-77-
溶解実験(5トン炉)
メタル・スラグへの分配傾向
組成分析方法
メタル;ハンドヘルド蛍光X線分析計
スラグ;SEM-EDX分析(主成分が軽金属の酸化物であるため
Table
ボディ
サンプル
総重量5.7t
メタル・スラグへの合金元素分配傾向
Cr
重量
[kg]
Mn
割合
[%]
重量
[kg]
Ni
割合
[%]
重量
[kg]
割合
[%]
メタル
13.7
89
13.2
73
1.1
100
スラグ
1.7
11
5.0
27
0
0
15.4
100
18.2
100
1.1
100
合計
足回り
サンプル
総重量5.4t
Cr
重量
[kg]
Mn
割合
[%]
重量
[kg]
Ni
割合
[%]
重量
[kg]
割合
[%]
メタル
12.7
85
12.2
55
1.0
100
スラグ
2.3
15
9.9
45
0
0
15.0
100
22.2
100
1.0
100
合計
Cr, Mn
↓
1~5割
スラグ
Ni
↓
全量
メタル
19
まとめ
 実測をもとに廃自動車中のボディ、排気処理装置、足回りに随伴する鉄鋼合
金元素量を明らかにした。
 エンジン周りパーツの処理フロー調査により、エンジン部品に用いられ
ている鋼材の合金元素の多くは拡散していることが判明した。
 電気炉におけるスクラップ溶解実験により合金元素のメタル・スラグへの分
配傾向を明らかにした。
 シュレッダー処理後のボディ、足回りともに溶鋼組成はCu 0.1%程度を
含むが、普通鋳物用銑鉄並の組成
• → 言い換えると個別部品に随伴する合金元素は希釈・拡散
• → 溶かす前に比較的多く合金を含む部品を外す必要あり
 経年変化で構造骨格部品のMnが増加傾向
• → 鋳物用銑鉄代替としては×
 排気処理装置周辺のステンレス・耐熱鋼、足回り部品のソーティングに
よりMn,Ni,Crの有効な循環が進む可能性
 熱力学解析の視点からスクラップ中の有用元素の酸化損失を抑えるためには
操業に問題がない範囲で、なるべく酸素分圧を低く、スラグ中のFeO濃度を
低く保つ必要あり
-78-
21
廃自動車スクラップの目指すべきリサイクルフロー
解体・分別をすることで合金元素を有効にリサイクル
各部品に使われている鋼材
ボディ:
成分ごとに分別して回収
解体
ドア:
色=鋼種
バンパー:
そのままプレス後溶解
種類別に
電気炉へ
排気系:
駆動系:
また同じ用途に
不純物の多い鋼に
(もしくはダウングレード)
カスケードリサイクル
スクラップソーティングのターゲット
ステンレス鋼
(Cr;11%)
足回りパーツ
ドラムブレーキ
ドライブシャフト
排気パイプ(内側)
触媒ケース(内側)
Mn: 1.28%
Ni:<LOD
Cr:0.02%
ステンレス鋼
(Cr;18% , Ni;8%)
排気口
Mn: 0.70%
Ni:<LOD
Cr:0.02%
ターゲット一例:
機械構造用鋼
Mn: 0.55%
Ni:<LOD
Cr:0.02%
耐熱鋼・ステンレス鋼
23
-79-
小括(スクラップソーティング)
 ELVリサイクルにおいて、手選別によりターゲット素材(排気処理装
置周辺のステンレス鋼、一部の足回り部品)を外し、ハーネスその他
除去の後にシュレッダー、プレス処理を行うことが望ましい。
 ただし手選別による人件費コスト増が懸念
 多くの自動車解体プロセスで外されるエンジン、排気処理装置周辺部
位についても鉄鋼合金元素の循環の視点から見るとほぼ拡散している
 大型シュレッダーによりエンジン周り、排気処理装置周辺の鉄鋼材に
ついても併せて処理後、合金元素ごとの機械選別処理により合金組成
別のソーティングを行うことが望まれる。
 合金元素毎の機械選別処理技術の開発が必要
24
スラグに拡散している未利用資源
鉄鋼生産プロセス
電気炉ダスト
Fe, Zn, Pb, Cd
・・・・・
Fe, Mn, Ni, Cr, Mo, W, Zn
・・・・・
Fe, P, Si, Ca, Mn, Cr
・・・・・
スラグメイキングテクノロジー
-80-
鉄鋼スラグ中のリン
原 料
・鉄鉱石
・コークス
・石灰
製鋼スラグの基本組成:
FetO-CaO-SiO2-P2O5
~1000℃
~1600℃
製鋼
スラグ
転炉:銑鉄から
鋼を作る
~700℃
高炉
スラグ
リン濃縮相
~1500℃
高炉:鉄鉱石から
銑鉄を作る
その他の相
(3CaO・P2O5 2CaO・SiO2)
1400~
1300℃
(FetO-CaO-SiO2 )
製鋼
スラグ
溶銑予備処理(脱リン、脱珪)
単位:P kt
製鋼スラグ
93.1 kt
電炉スラグ
転炉スラグ
溶銑予備処理スラグ
0.2%P
予備脱Pなし
予備脱Pあり
3.0%P
1.5%P
24.8 kt
2.90 kt
脱Pスラグ
脱Si/脱Sスラグ
5.0%P
0.2%P
29.0 kt
33.9 kt
2.5 kt
 リン濃縮相とその他相は
それぞれ異なる相に存在。
 磁気特性の違いから
磁気分離可能
リンをとりまく背景 (需要側)
10000
9000
8000
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
15
population (×106)
P
世界の人口
Phosphorus
30.973761
農業生産に必須の元素
欧州
Europe
北米 America
North
Latin
南米 America
Africa
アフリカ
Asia
& Oceania
アジア・太平洋
1950
50,000
45,000
バイオエタノールの生産
1975
2005
year
2025
2050
アジア・
アフリカで
増大


40,000
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
2001
Brazil
2002
USA
2003
China
EU
2004
India
2005
世界の90%のリン需要は肥料生産用途
世界の人口は2050年までにアジア・ア
フリカを中心に増加傾向
ブラジル、米国においてバイオエタノール
生産の増大
 バイオ燃料生産の増大が燃料植物生産増
を引き起こす
Others
Unit: 106L/Year
リンの需要は今後も増大傾向
ブラジル・米国で供給増大
-81-
リンをとりまく背景(供給側)
その他
15%
ブラジル
4%
ヨルダン
4%
中国
31%
チュニジア
5%
ロシア
6%
 2008年に1億6100万トンのリン鉱石を生産
(20,656 kt-P)
 中国、米国、モロッコが世界の鉱石生産の約6
割を占める。
 ヨーロッパ、アジアは世界貿易の約6割、アジ
アは約2割を消費
トータル
161,000
千トン
2008年
モロッコ
16%
米国
19%
世界におけるリン鉱石生産 (2008)
 Science, Nature 等で潜在的なリン資源枯渇に対し警鐘
 利用可能な鉱石が今世紀中に枯渇懸念
(Vaccari, Scientific American 2009)
 Peak Phosphorus が2030年前後と予測
(Codell et al, Global Environmental Change,
2009)
http://tabisite.com/gallery_os/nauru/nauru.shtml
我が国におけるリンのフロー
輸出入/漁業
163.1
日本国内のリンの
マテリアルフロー (2005年)
53.3
肥料原料
53.3
肥料
食料/飼料
11.7
141.1
101.4
リン化合物
リン鉱石
国内製品
126.6
20.9
その他
鉱物資源
57.3
41.3
家畜
193.5
280.3
排水
38.8
138.8
水域
31.5
下水汚泥
8.3
272.8
化学工業
101.4
100.5
51.3
廃棄物・埋立
141.1
45.4
18.5
14.6
10.2
197.8
黄リン
人間
17.4
101.3
農地/牧場
31.5
89.3
土壌蓄積
69.9
その他
産業
45.4
11.2
鉄鋼業
工業製品
単位 : kt-P
26.5
拡散
92.7
鋼材
18.2
111.9
-82-
鉄鋼
スラグ
化学工業部門におけるリンのフロー
53.3
53.3
肥料原料
肥料
単位 : kt-P
197.8
24.7
外国からの輸入
5.6
113.7
113.7
リン酸
アンモニウム
101.4
リン鉱石
肥料製造
83.3
84.6
湿式リン酸
27.4
13.5
1.8
リン酸
ナトリウム
0.2
塩化リン
0.3
リン酸
カリウム
0.5
リン酸
カルシウム
0.3
赤リン
2.3
9.7
1.0
1.0
0.4
化学工業部門から
リン酸(51%)
リン酸カルシウム
(17%)
塩化リン(14%)
リン酸ナトリウム
(10%)
の形態で各用途へ
供給
0.3
0.9
0.8
高い純度でリンを使用
その他
47.2 → 42.5
各製品(用途)製造
1.8
主な行き先は
金属表面処理
食品添加物
界面活性剤
界面活性剤、化粧品・歯磨き粉、農薬
、金属表面処理、難燃剤・消火剤、
工業薬品・清缶剤、塩ビ安定剤、
触媒、脱水剤、マッチ、リン銅など
0.3
11.6
リン酸
カルシウム
0.1
アンモニウム
5.0
しかし、化学工業分野のリンの需給は未解明
食品添加物、可塑剤、染料、医薬品、
0.2
リン酸カリウム
11.6
化合物
製造 1.1
13.5
リン酸
無水リン酸
化リン学1.1 工 塩化リン
業
リン酸
15.7
乾式リン酸
黄リン
31.5
各リン化合物
黄リン
リン酸
ナトリウム
2.5
10.6
乾式リン酸
16.8
31.5
22.2
リン酸
0.1
その他
未利用リンの再資源化(鉄鋼スラグ)
超伝導バルク磁石
スラグ
試料容器
スラグ中の未利用リンの
回収のみならず、残渣ス
ラグのリサイクルも可能
に。
冷凍機
振動
リサイクル
鉄鉱石
石灰石
焼結鉱
石炭
コークス
残渣スラグ
磁着
FeO
FeO
CaO
CaO
高炉
脱Si
脱P
高炉スラグ
脱Siスラグ
脱Pスラグ
磁気分離
非磁着
磁気分離を導入した場合の製鋼プロセス
・・・
リン資源
横山ら、鉄と鋼(2006)
-83-
○ 残渣スラグ中に含まれ
る鉄鋼合金元素も上工程
に再資源化
○ フラックスの投入量削
減効果
○ 合金鉄の投入量削減効
果も期待
○ スラグ発生減による最
終処分量の削減効果
× 処理に関わる粉砕、磁
気分離に伴う資源・エネ
ルギー投入
32
IPCIOモデルの開発
Integrated Phosphorus Cycle Input Output モデル
需要部門
(列)
供給部門(行)
リン関連財
(物量・t)
リン関連財
リン
関連財
(物量)
リン
関連財
(金額)
非リン
関連財
(金額)
xijPP
xijPM xijPN
最終
需要
輸
出
FijP
EijP
輸
入
国内
生産
MijP XijP
xijMP xijMM xijMN FijM
EijM MijM XijM
(金額・百万円)
xijNP
xijNM xijNN FijN
EijN
付加価値
V jP
V jM
V jN
X jP
X jM
X jN
(金額・百万円)
非リン関連財
国内生産
MijN XijN
どのような産業で、
どのような形態のリン資源を、
どれほど投入しているのか?
生産プロセスで歩留まり落ちす
るリンはどれほどあるのか?
産業活動によって生まれるリン
資源の需要はどれほどなのか?
産業連関表をベースとして、リンのマテリアルフローデータと接続。
WIO-MFAモデル(Nakamura et al, 2007)の手法
マテリアルとして乾式リン酸、湿式リン酸、黄リンを考慮。
リンを含む資源、リン関連財、リン含有廃棄物等を
基本分類から細分化、かつ物量化
~
IPCIOモデルの開発
製品化投入係数行列A ・・・各産業製品に質量として含まれるリンの量が計算可能
中村らによって提案されたWIO-MFAの手法による
物質フローフィルター
(非物質的な流れの排除)
投入係数行列(輸入除)
~=
Γ×
○ A’ = A
○ Φ×
歩留まり係数行列
(製品中に向かわない分の量の排除)
~ A~ A~
A
PP
PM
PR
~ A~ A~
A
MP
MP
MR
~
A
RP
~
A
RM
~
A
RR
(P : 製品、M : マテリアル、R : 資源)
湿式リン酸、乾式リン酸、黄リン
(a)
(b)
資源は地球環境から採取され、生産はされない
~
AiR = 0, i = P,M,R
マテリアルは資源から生産される
~
AiM = 0, i = P,M
(c)
製品はマテリアルと製品から生産される
~
ARP = 0
~
A=
~
A
PP
0
~
A
MP 0
0
~
A
RM
0
0
0
製品1単位(t or 百万円)あたりの
各マテリアル(M)の重量
製品マテリアル行列
-84-
日本の産業が必要とするリン資源
IPCIOを用いた各産業の100万円の需要を満たすために必要とされる
リン関連財需要の推計
 米
 飲食サービス
 石けん・洗剤
 乗用車
湿式リン酸
12
10
8
kg-P
乾式リン酸
黄リン
0.4
0.2
0.2
0.1
6
4
2
0
必要量
含有量
米
必要量
含有量
必要量
飲食サービス
含有量
石鹸・洗剤
必要量
含有量
乗用車
小括(スラグメイキングテクノロジー)
 日本国内のリンのマテリアルフローを明らかにした結果、製鋼スラグはリン
の二次資源としてのポテンシャルが大きいことが判明した。
 製鋼スラグからのリン回収技術として磁気分離法による回収を検討
 再資源化の行き先として、肥料以外の用途も考える必要がある。
 肥料以外用途として、化学工業分野で生産されるリン関連財のフローを明ら
かにした結果、主に金属表面処理(26%)、食品添加物(22%) に向かう。
 IPCIOモデルを用いて推計した結果、農業生産が引き起こすリン関連財需要は
主に湿式リン酸であるが、工業製品(乗用車、洗剤等)の需要が引き起こす
リン関連財需要は肥料と比較してその規模は小さいながらも黄リンや乾式リ
ン酸が主であることが判明。
 リン鉱石ならびに黄リンの全量を海外輸入に依存している我が国は二次資源
からのリン資源回収、ならびに黄リン生産プロセスの国内確保が求められ
る。
-85-
おわりに
 金属資源のほとんどすべてを海外に依存している我が国におい
て、持続可能な資源循環を考えることは重要。
 資源戦略、枯渇性資源の持続的な管理のためにも社会蓄積中の資源
を有効利用するために、「どこに」「何が」「どんな状態で」「どれ
だけ」あるかのマテリアルフロー情報を整備することが必要
 今日のストックは明日の資源
 金属資源リサイクルを考える際、プロセスによって回収可能性が異
なることを考慮する必要あり
 持続可能な資源循環、資源管理戦略を考える上で、素材産業の役
割は大きい。
 何が、どれだけ回収可能で、何が拡散するのかを考えた上でのリ
サイクル政策、制度設計が必要。
御清聴ありがとうございました。
東北大学大学院工学研究科
松八重 一代
E-mail: [email protected]
-86-
【代替材料技術に関する調査専門部会の活動経過】
会合(日程)
第1回専門部会
(2008.9.22)
第2回専門部会
(2008.11.14)
第3回専門部会
(2008.12.16)
第4回専門部会
(2009.5.28~29)
第5回専門部会
(2009.6.17)
第6回専門部会
(2009.7.24)
第7回専門部会
<拡大>
(2009.8.28)
第8回専門部会
(2009.11.13)
第9回専門部会
(2010.1.27)
第10回専門部会
(2010.7.8)
第11回専門部会
(2010.9.24)
第12回専門部会
(2010.10.19)
第13回専門部会
(2010.11.4~5)
活動内容
【講演】 「機械産業におけるレアメタル:資源、製錬、素材から見た最近の話題」
<講師> 東京大学 生産技術研究所 准教授 岡部 徹氏
【講演】 「鉱物資源の状況と課題克服のための素材の在り方」
<講師> 東北大学 多元物質科学研究所 教授 中村 崇氏
【講演】 「レアメタルと元素戦略」
<講師> 物質・材料研究機構 材料ラボ ラボ長 原田幸明氏
※テーマ:銅、ニッケルの製錬工程
【見学】
5/28 住友金属鉱山(株)(東予工場、ニッケル工場)
5/29 別子銅山記念館
※テーマ:「都市鉱山」の開発に不可欠な選別・粉砕技術と分離回収技術
【見学】 独立行政法人産業技術総合研究所
(環境管理技術研究部門金属リサイクル研究グループ、リサイクル基盤技術グループ)
①【講演】 「資源開発技術について」
<講師> 東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻システム俯瞰学
教授 山冨二郎氏
②【講演】 「鉄鉱石、ニオブ、バナジウム資源について」
<講師> 新日本製鐵(株)原料第二部、原料第一部(兼務)資源調査
審議役 長野研一氏
①【講演】 「ネオジム磁石の開発経緯と今後の磁石開発」
<講師> インターメタリックス(株) 代表取締役社長 佐川眞人氏
②【講演】 「レアメタル資源の確保と調達の実情」
<講師> アドバンスト マテリアル ジャパン(株) 代表取締役社長 中村繁夫氏
※テーマ:金属チタンの製造プロセス、チタン加工製品、高純度酸化チタン等
【見学】 東邦チタニウム (神奈川県茅ヶ崎市)
①【講演】 「ステンレス特殊鋼およびレアメタル系スクラップのリサイクルの実際」
<講師> 国際レアメタル&リサイクル研究会事務局長、(株)日刊市況通信社
非鉄・レアメタル・環境リサイクル担当部長 棚町裕次氏
②【講演】 「基礎材料のリサイクルと今後の課題」
<講師> 東京大学工学系研究科マテリアル工学専攻特任講師 醍醐市朗氏
【討議】「資源制約下とグローバル展開の中での新しい材料戦略の必要性」
問題提起: 長井寿部会長、杉田州男幹事
委員発表: 自社のグローバル化の現状と資源制約問題 等
①【講演】 「非鉄製錬業における廃棄物処理と金属資源リサイクル 」
<講師> 柴田悦郎委員(東北大学多元物質科学研究所 資源変換・再生研究
センター准教授)
②【討議】 資源制約下とグローバル展開の中での新しい材料戦略について
①【講演】 「世界経済と資源市場の動向」
<講師> 丸紅株式会社 丸紅経済研究所 代表 柴田明夫氏
②【討議】 資源制約下とグローバル展開の中での新しい材料戦略について
※資源のリサイクル、再資源化
【見学】
11/4 大平洋金属(株)
11/5 東京鐵鋼㈱
-87-
会合(日程)
第14回専門部会
(2011.2.25)
第15回専門部会
(2011.9.6)
第16回専門部会
(2011.11.10~11)
第17回専門部会
(2011.12.16)
第18回専門部会
(2012.2.16)
第19回専門部会
(2012.6.8)
第20回専門部会
(2012.8.31)
第21回専門部会
(2012.10.19)
第22回専門部会
(2012.12.5~6)
第23回専門部会
(2012.12.18)
第24回専門部会
(2013.2.4)
活動内容
①【講演】 「材料分野における産業界戦略と人材育成」
<講師> 松浦宏行委員 (東京大学 大学院新領域科学研究科物質系専攻講師)
②【討議】 提言内容の検討
①【講演】 「製品解体から見えるサプライチェーン」
<講師> 柴田悦郎委員(東北大学多元物質科学研究所資源変換・再生研究
センター准教授)
②【討議】 今後の活動について
※優秀な技術力で我が国のものづくりを支える基幹部品、製品を生産
【見学】
11/10 (株)降矢技研(山梨県笛吹市)
11/11 (株)小松精機工作所(長野県諏訪市)、
(株)サイベックコーポレーション(塩尻市)
①【講演】 「高専教育と産業界の期待」
<講師> ダイキン工業(株)シニアスキルスペシャリスト 中浜慶和氏
(機械工業高度化人材研究調査専門部会部会長)
②【講演】 「内外の理数系教育、企業の生産技術者育成」
<講師> (株)日鉄技術情報センター 参与 産業調査研究部長 山藤康夫氏
③【講演】 「産学人材パートナーシップ材料分科会における取り組み」
<講師> 殿村重彰幹事((株)日鉄技術情報センター取締役 調査研究事業部長)
④【講演】 「エンジニアリング教育とは何か?~今、一番求められるもの」
<講師> 長井 寿部会長((独)物質・材料研究機構 中核機能部門長
兼 ナノ材料科学環境拠点マネージャー)
⑤【討議】 今後の取り組み方針(議論の為の叩き台)の検討
【討議】 23 年度調査2項目
(1)金属と化学の融合など新たな材料資源化の在り方、
(2)サプライチェーンにおける基幹部品、原材料の供給実態、競争力強化
に関するアイデア提案の内容検討
①【講演】 「我が国の材料戦略プロジェクトの成果と今後の展開」
<講師> 京都大学 大学院 エネルギー科学研究科 教授 馬渕 守氏
②【討議】 平成24年度の活動について
①【講演】 「材料再資源化における分離・回収の課題と今後の在り方」
<講師> 東北大学 大学院 工学研究科 准教授 松八重 一代氏
②【討議】 処理困難物質のリーフレット作成について
【討議】 処理困難課題リーフレット内容検討及び今後の方針について
※我が国のものづくりをリードする企業、独自の取り組みで工学系人材を教育・育成する大学
【見学】
12/5 (株)小松製作所 粟津工場(石川県小松市)
12/6 金沢工業大学(石川県野々市市)
【討議】 処理困難課題リーフレット修正版の全体調整、今後のまとめ方について
【討議】 リーフレット修正案の最終確認及び全体構成について
-88-
会合(日程)
第25回専門部会
(2013.3.21)
活動内容
①【話題提供】 「社会のメタボを予防せよ!」
<講師> 醍醐市朗委員 (東京大学 工学系マテリアル工学専攻 特任准教授)
②【話題提供】 「非鉄製錬とリサイクル」
<講師> 柴田悦郎委員 (東北大学 多元物質科学研究所サステナブル理工学研究
センター 准教授)
③【討議】 専門部会の総括
(活動の総括)
代替材料技術を俯瞰するためには原料となる素材の供給体制・製精錬・加工・利用・回収・リ
サイクルといった材料が関連する様々な分野について横断的・総括的な理解が必要であるとの考
えに基づき、個別要素技術・工業化/生産技術、処理手法、コスト、国内外の現状を講演および
実地見学を通じて把握に努めた。平成24年度はその集大成のひとつとして、一般に分かりやす
い形として「材料分野から見た“魅力”と“難しさ”の事例集」を編纂した。
5年間という調査専門部会の活動期間中においてさえ、資源ナショナリズムによるレアメタル
の高騰、リーマンショックによる景気後退、東日本大震災発生とそれに伴う原子力発電所事故、
シェールガス開発によるエネルギー革命など急激な社会情勢の変化を経験した。機械工業分野の
みならず日本経済全体が今後も国際情勢の大きな変革の中に立たされ続けることは容易に想像
されるため、代替材料技術分野のような基盤科学技術分野の強化は一層重要になると思われる。
以上
-89-
日機連24環境
平成24年度 資源制約に対応する材料再資源化等
に関する調査研究
~材料分野から見た“魅力”と“難しさ”の事例集~
-代替材料技術に関する調査専門部会報告書(Ⅴ)-
平成25年3月
発
行
一般社団法人 日本機械工業連合会
東京都港区芝公園3-5-8
電話
印
刷
機械振興会館
03(3434)5383
三協印刷株式会社
東京都目黒区目黒本町5-20-7
電話
03(3793)5971
※禁無断転載
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