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博士(医学)の学位論文提出要項 乙∴類
授与機関名 順天堂大学 学位記番号 甲第 1463 号 Cancelling prism adaptation by a shift of background: a novel utility of allocentric coordinates for extracting motor errors. (背景移動によるプリズム順応の無効化:運動誤差の検出という外部座標系の新しい役割 ) 内村 元昭(うちむら もとあき) 博士(医学) 論文内容の要旨 我々の脳は、標的の位置を、自分の体を中心とした座標系だけでなく背景の中の目印との関 係性で記憶することができる。そのような背景座標系での標的の位置の記憶は、標的が消え てから 2 秒程度経過した後に到達運動をする際に、特に重要になることが知られている。し かし、標的に対してすぐに到達運動を行うことができる自然な条件でも背景座標系が有用で あるかどうかは不明であった。そこで我々は、すぐに到達運動を行う場合でも、背景座標系 が運動系由来の誤差と標的が動いたことによる誤差を区別するのに役立つという仮説を立て、 検証した。楔型プリズムにより視野を左(または右)に移動させることで到達運動の誤差を 作り出すとともに、背景として枠を提示して、枠を到達運動の間に視野の移動方向と同じ方 向、または反対方向に移動させた。標的の位置が背景座標系で記憶されるとすれば、同方向 移動条件では狙った目標に指が到達したと解釈され、誤差は運動由来とは解釈されず、運動 の修正(プリズム順応)が抑制されるはずである。一方、反対方向移動条件では促進される はずである。その結果、予想通り、同方向移動条件ではプリズム順応が抑制され、反対方向 移動条件では促進された。さらに我々は、プリズム順応の抑制に適した背景の枠の大きさと 複雑さを明らかにした。最後に、プリズム順応を抑制するには運動後だけでなく、運動前に も背景を提示する必要があることも示した。これらの結果は、 「どこを目指して到達運動を行 ったか」に関する情報を提供して、標的の動きと運動指令由来の誤差を区別するという、背 景座標系の果たす新しい役割を示すものである。