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魔法少女と聖闘士星矢の世界 ID:61897

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魔法少女と聖闘士星矢の世界 ID:61897
魔法少女と聖闘士星矢の世界
朔月レン
︻注意事項︼
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP
DF化したものです。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作
品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁
じます。
︻あらすじ︼
魔法少女まどか☆マギカ
聖闘士星矢THELOSTCANVAS冥王神話
以上の二つの作品が関連しています。
主人公は魔法少女ですが戦えないビビリ。
魔女の攻撃で聖闘士星矢の世界に飛ばされました。
聖戦を戦い抜き、元の世界に戻れるのでしょうか。
※基本主人公のノリツッコミで物語が進みます。シリアス少なめ。
※処女作。広い心でお願いします。
※まどマギメンバーははじめは全く出てきません。
一周年記念
目 次 一周年記念 蘭華とシオンのイチャラブデート │││││
キャラ紹介
キャラ紹介︵ネタバレ︶ ││││││││││││││││
プロローグ
魔法少女失格だよ │││││││││││││││││││
出会いと真実
││││││││││││││││││
││││││││││││││
出張料理人です ││││││││││││││││││││
1
11
16
18
20
魔女との戦い │││││││││││││││││││││
ここって⋮⋮⋮夢であって欲しい⋮⋮ ││││││││││
﹂ │││││││││
もうこれダメかも⋮⋮ │││││││││││││││││
いきなり喋った小動物。﹁なんだこれ
対策とこれからの事
普通の女の子⋮⋮⋮⋮⋮⋮
コレが小宇宙⋮ ││││││││││││││││││││
私の願い │││││││││││││││││││││││
一難去ってまた一難⋮かなぁ
│││││││││││││
魔法少女の成れの果て。魔女の正体 │││││││││││
私の過去 │││││││││││││││││││││││
動く死体ではないか⋮ │││││││││││││││││
なんのことですか
相変わらず寝こけていた ││││││││││││││││
ついでに報告です。 ││││││││││││││││││
!?
22
24
26
28
30
32
34
36
38
41
?
従者になります ││││││││││││││││││││
?
43
46
48
51
?
任務デスっ
│││││││││││││││││││││
再会 │││││││││││││││││││││││││
一方的すぎるだろ⋮ ││││││││││││││││││
主と家族。 │││││││││││││││││││││
魔法冥闘士 │││││││││││││││││││││
聖闘士候補生 │││││││││││││││││││││
聖戦前∼聖闘士候補生∼
とりあえず⋮暇人だね。 ││││││││││││││││
なんかデジャブ ││││││││││││││││││││
聖戦前∼薬師の島で∼
薬師の島とペフコ │││││││││││││││││││
ルコと鈴蘭 │││││││││││││││││││││
毒薔薇の聖闘士 ││││││││││││││││││││
││││││││││││││││││
魚座の道、人の道 │││││││││││││││││││
それパクリだよね
黒薔薇 ││││││││││││││││││││││││
果てなき夢を追う親 ││││││││││││││││││
感電。︵魔法少女が感電とか笑えない。︶ │││││││││
何者かの小宇宙 ││││││││││││││││││││
勝手に納得しないでください⋮ │││││││││││││
││││││││││││││
聖戦前∼ひと時の休息と特訓∼
アップルパイ作ってくれッ
完全とばっちり ││││││││││││││││││││
全力疾走 │││││││││││││││││││││││
53
56
58
62
66
69
72
75
77
80
83
86
88
91
95
!?
んなもん秘密。 ││││││││││││││││││││
!
103 101 98
116 113 109 106
!
現金ですね。 │││││││││││││││││││││
本当に退屈しないな⋮ │││││││││││││││││
絶対零度の視線 ││││││││││││││││││││
オーバーヒート ││││││││││││││││││││
どーしてこうなった⋮ │││││││││││││││││
無理ですから │││││││││││││││││││││
│││││││││││││││││
聖闘士としてこれはどうなのだ │││││││││││││
外野うるさいですよ
│││││││││││││││││││││
木欒子 ││││││││││││││││││││││││
魚座の誓い │││││││││││││││││││││
聖戦∼真実と道しるべ∼
己の存在意義 │││││││││││││││││││││
絶望とワルプルギスの夜 ││││││││││││││││
モテ期到来 │││││││││││││││││││││
セブンセンシズ ││││││││││││││││││││
聖戦開始の合図と魔法少女達 ││││││││││││││
聖戦開始 ∼フランスにて∼
3年後。 │││││││││││││││││││││││
聖戦開始
テンマ登場 │││││││││││││││││││││
イタイ子 │││││││││││││││││││││││
地獄絵図 │││││││││││││││││││││││
⋮ナニコレ
不死鳥︻フェニックス︼ ││││││││││││││││
!?
歯車 │││││││││││││││││││││││││
152 145 142 139 137 134 132 130 128 126 124 122 119
155
217 204 191 179 163
262 248 233
?
光と影 ││││││││││││││││││││││││
夢 ││││││││││││││││││││││││││
望み │││││││││││││││││││││││││
聖戦∼魔法少女と絆∼
聖闘士と魔法少女とイレギュラー ││││││││││││
サヨナラ │││││││││││││││││││││││
雪と華 ││││││││││││││││││││││││
私とワタシ │││││││││││││││││││││
charlotte ││││││││││││││││││
﹃さあ、終わりのないゲームを始めよう﹄ │││││││││
凛ちゃん暴走なう │││││││││││││││││││
決着と青銅 │││││││││││││││││││││
シリェーナとペルセポネとマミ │││││││││││││
310 293 277
399 392 382 371 364 356 346 333 322
一周年記念
一周年記念 蘭華とシオンのイチャラブデート
ある秋のある日。
巨蟹宮で11人の黄金聖闘士と教皇とアテナが集まってコソコソ
と話していた。
﹁⋮⋮アレだ。シオンと蘭華ってカレカノになったらしいぞ。﹂
巨蟹宮の主がコソッと爆弾発言すると、至るところから驚愕の声が
上がる。
なんで知らねぇん
﹁シオンがのぅ⋮⋮よくそんな度胸があったものじゃ。﹂
﹂
﹁お い コ ラ 童 虎。お 前 と シ オ ン は 親 友 な ん だ ろ
だ。﹂
﹁人の恋路に口を出すのは宜しくなかろう
﹁まぁ⋮⋮そりゃーな。﹂
がれぇぇぇ
﹂
﹄といきなり小宇宙テレパシーを送ってきたマニゴルド
デジェルの問いに黄金が同意を示す。なにしろ﹃巨蟹宮に集まりや
﹁それで私たちはなぜこの場に集まっているんだ
さぞ当然のように言われて反応に困ったカルディア。
?
?
﹁いやな、カレカノならデートってもんがいるだろ
せることがない。
﹂
﹂
の人間である。シオンは一番目の宮なので他の黄金聖闘士と鉢合わ
そう、この場にいる黄金聖闘士とは牡羊座のシオンを除いたすべて
﹁成程。通りでシオンが居ないのだな。﹂
悪そうな、だが面白がっているような笑顔を表に出す蟹。
?
と人差し指を立て、アルバフィカを指さす。指をさされた
﹁コレクトアンサー
びしっ
!
なんかアルバちゃんイライラしてるじゃねェか。なにがあっ
1
?
に従っただけなのだから。目的が知らされないまま。
!!
アルバフィカは眉間にシワを寄せ、
!
﹁マニゴルド⋮⋮ウザイぞお前。︵かに玉にしてやろうか︶ボソ﹂
﹁怖ァ
!?
たよ、なんでいきなり蘭華みてーなこと言ってんだよ
﹁黙れ。﹂
﹁おいおい、人の話を﹁黙れ。﹂⋮⋮ハイ。﹂
である。
﹂
﹁と、取り敢えず新しく出来たカップルを祝してデートを企画する
﹂
!
アテナ様のお考えは
ばコロッといく。﹂
!?
詳しいことに驚愕した。
シ
ド
﹂
﹁六道輪廻で天界へ誘うというのはどうかね
﹁アスミタ、二人を殺す気か
ル
﹁なら滝行。﹂
エ
﹂
?
﹁修行バカも黙れ。お前らにはそもそも聞いてねぇ
﹂
全員で突っ込んだ。一番興味無さそうな牡牛座のアルデバランが
﹁﹁﹁なんで詳しいんだよハスガード
﹂﹂﹂
﹁いや、山で夜景を見るという手もあるぞ。女性は綺麗なものを見れ
一気に脱力したシジフォス。
﹂
﹁は い、デ ー ト コ ー ス は 勿 論 ロ マ ン チ ッ ク な と こ ろ が い い と 思 い ま
リだったりする。さすがは女子。
目的を思い出したのか大声を上げる。実はサーシャが一番ノリノ
﹁おー
﹂
食べようとした瞬間呼び出されたからだ。つまり食いっぱぐれたの
ちなみにアルバフィカがここまでキレている理由は、蘭華の料理を
恐怖でドン引くほど恐ろしかった。
有無を言わせないアルバフィカの一刀両断は、この場にいた全員が
!?
?
す。﹂
﹂
﹁例えばどのような所でしょう
﹁⋮⋮⋮⋮湖⋮⋮とか
?
﹁なんで疑問形なんですか⋮⋮﹂
?
?
言い渡した。
﹁デートなぁ⋮⋮デートってなに
﹂
もちゃっかり便乗し、流石のマニゴルドも困ったようで即﹃退場
﹄と
真面目なアスプロスが声を荒げてアスミタに聞き返す。エルシド
!
!?
!
2
!
﹁今更だなレグルスよ⋮⋮﹂
﹂
﹁レグルスに同意だな。﹂
﹁お師匠もかよ
しばらくは話し合いが進まなかったことをここに書き記す。
ーー
ーーーー
さてさて次の日。
シオンが守護する白羊宮には、黄金聖闘士と教皇とアテナが全員集
合していた。つまり昨日のメンバーである。違うのは昨日いなかっ
﹂
たシオンがいる事ぐらいだろう。
﹁い、いきなりどうしたのだ
だろ
﹂
﹁ぅ⋮⋮な、何故それを
﹂
﹁お前さぁ、蘭華とカレカノになったのにデートの一つもしてないん
+アテナまで居るとなると混乱するに決まっている。
驚くシオン。黄金聖闘士が全員この場にいるのおかしいのに、教皇
?
﹂
と反論しかけたシオンだったが事実なので何も言えな
てねェっていう確信があったんだよ。﹂
失 礼 な
かった。
﹂
﹁って事で、デートしてこい
﹁⋮⋮へ
キ
を
つ
く
る
﹂
?
全力のライダーキックがクリティカルしたのは言うまでもない。
﹁一線を越えるなよ
ガ
真剣な顔つきでこちらをみるマニゴルド。嫌な予感しかしない。
﹁シオン。﹂
が動いてるんだこれは。
蘭華と予定を合わせてあったのか、勝手に日にちが決まっていた。誰
話の展開が早いが、実際に早かった。デートについてはあらかじめ
たらデート当日になっていた。
頭の整理ができていないのに話がトントン拍子ですすみ、気がつい
!
!
?
3
!?
﹁勘⋮⋮と言いたいところだが、お前案外ヘタレだから絶対デートし
?
?
﹂
︻双魚宮では⋮⋮︼
﹁へっくしゅん
﹁アルバフィカ様⋮⋮風邪ですか
はちみつレモン作ります
﹁いや、おそらく噂話だな。でも飲むから作ってくれ。﹂
﹂
?
デートの予定合わせを担当した人間がクシャミをしていた。
﹂
﹂
﹁そうだ蘭華、今日の予定は
﹁特にありませんけど⋮⋮
?
﹄
!
﹁⋮⋮あ⋮あの⋮⋮
﹂
まったくもって気づいていない。
い つ も な ら ば シ オ ン も 気 づ く の だ が 意 外 と テ ン パ っ て い る の か
と言ってこの場にいない。
ら見守っている黄金聖闘士+教皇。サーシャは﹃用事があります
そしてその様子を建物やゴミ箱、屋台の影などからハラハラしなが
に声をかけられているがぎこちない笑顔で断っている。
待ち合わせの大通りに立っているのはシオン。先程から他の女性
︻デート当日︼
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
﹁了解です。﹂
﹁なら一日あけておいてくれ。﹂
?
﹂
?
な黒色のヒール。腕にブレスレットをつけている事で可愛さが増し
は空色とマリンブルーを合わせたような斑な色合い。靴はシンプル
る。服は空色を基調とした物。上は紫陽花が薄らと描かれており、下
長い紅の髪をツインテールにして、黄色いガーベラの花を刺してい
蘭華はいつもと違って全力でお洒落をしていた。
達も同じだったのだから。
シオンがつい聞いたのも無理はない。目を疑ったのは黄金聖闘士
﹁⋮⋮蘭華⋮⋮か⋮⋮
まったかのように固まってしまっていた。
まった。シオンだけではない、物陰から覗いていたメンバーも時が止
またか、と断ろうと視線を向けるシオン。だがその瞬間固まってし
!
4
?
!
ている。
恥ずかしいのか顔を桜色に染めて、目尻には若干涙を浮かべてい
た。
﹄って⋮⋮⋮⋮に、似
﹁で、で⋮⋮デートなんて聞いてなくて⋮⋮⋮⋮サーシャちゃんが﹃こ
れ着てください、お化粧しますよ︵侍女が︶
合ってないですよね。﹂
﹄
・
着飾った蘭華は正直に言うと可愛かった。美しいとは少し違うが、
は﹃魚座=容姿端麗﹄というのが暗黙のルールとなっている。
い。勿論偶然なのだろうが、余りにも容姿端麗な魚座が多いため今で
と。魚座とは代々美青年や美少女など、顔が整った人間が継ぐらし
・
﹃ああ。そういえばこいつも元魚座候補生だったな。﹄
頭のどこかで納得していた。
周りでのぞき見をしていた人間達も大パニックを起こしながらも
と。
﹃アテナ様超グッジョブ
だがシオンはその話を完全にスルーして一つのことを考えていた。
いのだろう。
たどたどしく、だが早口でまくしたてるところをみると羞恥心が凄
!
サーシャなんだよな蘭華をあんな服
容姿が一般人より整っている為美少女の括りに入る。
﹁てかあれ絶対サーシャだよな
﹂
着せたのって。﹂
﹁勿論。﹂
﹁いつの間に
?
たアテナ。いつの間にか当然のように混ざっているサーシャに突っ
込むものは誰もいない。
というやり取りも、本人達は影で覗いている人間に全く気がついて
いない。
﹁⋮⋮似合って⋮⋮ないですよね⋮⋮﹂
5
!
カルディアが確認のようにサーシャに問いかけ、ドヤ顔で拳を握っ
!?
シオンの反応がなかったからか、ションボリと泣きそうな顔で俯く
可 愛 く て つ い 見 と れ て い た と い う か ⋮⋮ な ん と ⋮ い う か
蘭華。焦ったようにシオンは否定する。
﹁違 う
⋮⋮﹂
︶
口走った言葉は事実なのだが、事実なだけ恥ずかしさが増す。顔を
なんでそこで語尾が弱々しくなるんだよアイツは
紅色に染めてわたわたとしているシオンは正直面白い。
︵おい
だからシオンなんだよ
︵⋮⋮レグルスが怖い⋮︶
ないの
︶
︵もっと﹃可愛いよ﹄とか﹃似合いすぎて言葉が出なかった﹄とか言え
!
震えていた。
﹁ホント⋮⋮です
﹁ああ。﹂
﹁よかった。﹂
﹂
怖かった。マニゴルドはガクガクと生まれたばかりの子羊のように
い。そしてレグルスの言葉はなんだか怖かった。よく分からないが
みまくっていた。だがそれはシオンに伝わっていないので意味が無
屋台の影から覗いていたマニゴルドとレグルスは小宇宙で突っ込
!!
ーーー
ーー
﹁劇を見にだ。﹂
﹁行くって⋮⋮どこへですか
﹂
腕を差し出すシオン。蘭華はその手を取りながら首をかしげる。
﹁行くか。﹂
した。そしてその中にはシオンも混ざっていたのは余談である。
満開の花が咲いたような笑顔に周りの通行人︵男︶がノックアウト
?
って内容。
?
う話。どこかで見たことがある内容だった。
上級貴族の少年と平民の少女が偶然的に出会って恋に落ちるとい
トーリー。むしろカップル以外に見に来る人いるのか
劇 場 は カ ッ プ ル で い っ ぱ い だ っ た。劇 の 内 容 は バ リ バ リ ラ ブ ス
?
6
!
!
!?
﹃まて、何故⋮何故僕から逃げるんだ
ダ
﹄
オ
﹃お願いしますピーター、私はあなたといてはいけないのです。身分
違いの恋、お見捨て置き下さい。﹄
マ
﹃お願いだアンジェリカ。僕は⋮⋮﹄
﹁うわ⋮⋮なんだこのまったください男⋮⋮﹂
ぼそりと呟いてしまった。周りの人間はぎょっとしてこちらを見
るが、何も無かったかのように前を見る。
﹁﹃君のためならば身分など捨てよう、どこまでも自由の空へと飛び立
とう。﹄ぐらいは言えばいいのに。﹂
と内心毒気づいていた。役者は台本通りストーリーをすすめてい
るだけなので文句を言うのは筋違いなのだが、ついため息が出てしま
うのは仕方が無いだろう。役者はこの時謎の悪寒に震えていた。だ
が顔に出さず演技を続けるので流石は本職である。
なぜかこの劇の内容にライフゲージをガリガリと削られているシ
ジフォス。黄金聖闘士組は﹃しゃーねぇわな。というか自業自得とい
うか⋮⋮仕方が無いよな。﹄と思っていた。全く状況を理解出来てい
ないサーシャはオロオロしていた。ちなみに教皇セージは仕事があ
るのでこの場にはいない。むしろ黄金聖闘士が全員ココでサボって
ター
とつい突っ込みたくなる有様である。
いてもいいのか
ピー
がセットに伸び、アンジェリカとの距離が近くなる。いわゆる壁ド
ン。そしてそのままアツーいキス。
観客︵女性大半︶から恥ずかしそうな、だが羨ましそうな悲鳴が上
がる。この時代にも壁ドンという概念があったのを初めて知った。
そのまま男︵ピーター︶は身分を捨ててハッピーエンドかと思いき
や、まさかの女︵アンジェリカ︶は他国の王女でほんとに身分違いの
恋だっとか、魔王が出てきてピーターが攫われてアンジェリカが助け
王女が助けに行くとか⋮普通
に行くとか⋮⋮取り敢えずハチャメチャな内容だった。
ピーター
むしろ魔王に攫われるのお前かい
!
7
!
女役者 は 劇 の セ ッ ト と 男役者 の 間 に 板 挟 み に さ れ た。ピ ー タ ー の 腕
﹄
?
アンジェリカ
﹃アンジェリカ
!
逆だよね
ーー
ーーー
逆だよね普通
と観客は突っ込みまくっていた。
!?
﹂
?
ハイ
﹂
?
﹂
﹄と驚愕し、サーシャは目を輝かせる。
!?
﹁や、やはり無理だ
﹂
だがその続きはなかった。
にも逃げられないのだから。
どんどん顔が近づく。アタフタと混乱したのは蘭華。前にも後ろ
アルバフィカは﹃ハ
華だったがそれ以上に羞恥に耐えていたのはシオン。
くなる顔と突然上がる鼓動。ゆでダコのように顔を真っ赤にした蘭
蘭華の間抜けな声。そう、劇で見た壁ドンをしていたのだ。急に近
﹁⋮⋮ふぇ
方に分かれる。
後を追った黄金聖闘士組はフリーズした者と目を輝かせた者の二
が、それは2割正解で8割不正解だった。
で止めに入るつもりだった。
りと付いていく。ありえないとは思うが過ちを犯すようならば全力
人があまり通らない道に連れていかれた。黄金聖闘士組もこっそ
﹁
ろである。
何かを決意したような顔。ようやく喋ったと思ったらしどろもど
﹁蘭華⋮⋮あの⋮だな⋮⋮﹂
不審に思い声をかけるが反応がない。
劇 場 か ら 出 て 3 0 分 近 く た つ が ず っ と だ ま り っ ぱ な し の シ オ ン。
﹁⋮⋮シオン
疲れたとか言えなかった。
後半はツッコミどころ満載だったとか、突っ込みまくって精神的に
﹁面白かったですねー。﹂
?
?
!
8
?
︶︶
シオンが音を上げたのだから。ずるずるとしゃがみこんでしまい
体操座り。
﹁⋮⋮え⋮﹂
度胸無さすぎだろ
エルシドが唖然とした。
︵︵そこまでしといてかよ
先導していた。
﹃スミマセンコ│ヒ│クダサイ﹄
﹃ア、オレモ﹄
コレカフェオレジャネェノカ
﹃アイヨ﹄
﹃ブハッ
﹄
人が多く、はぐれそうだったがシオンはさり気なく蘭華の手を取り
た。
通行人は﹃よーし、リア充︵天敵︶が来たぞ。﹄と臨戦態勢を取ってい
そのまま商店街に出る。顔を真っ赤にしながら歩くふたりを見て
なっていたのか理解が追いついておらずカタコトで返事を返す。
蘭華はまだ立ち直れないでいた。何が起こったのか、何されそうに
﹁は、ハイ⋮⋮リョーカイデス。﹂
﹁⋮⋮すまない。帰ろうか。﹂
周りで見ていた黄金聖闘士たちは心の中で突っ込みまくっていた。
!!?
と一部では﹃コーヒーをカフェオレと勘違いする﹄事件が多発して
!?
﹂
いたが原因達は気づいていなかったりする。
﹁⋮⋮シオン
﹁ど、どうした
﹂
このままではいけないと考えた蘭華。
!
勢いで唇を重ねた。
!?
すると物陰から見知った人間の叫び声がした。ぎょっとして振り
﹁﹁ぅおぉぉああああ
﹂﹂
蘭華はシオンのマフラーをつかんで引っ張り寄せる。そのままの
ぐらいは身長差がある。
こいこいと手招きする。ちなみにシオンは身長が高い。頭一つ分
?
9
!?
﹃アマイ、アマスギルゥゥゥ﹄
!?
返ると、黄金聖闘士たちが体勢を崩して道にすっ転んでいた。
それでようやく見られていたことに気づいた2人は、顔を真っ赤に
﹂﹂
して小宇宙をもやした。
﹁﹁天誅ッ
涙目の蘭華と怒り顔のシオンの小宇宙をぶつけられ黄金聖闘士達
﹂
はあっけなく撃沈した。
﹁⋮⋮帰りましょう
﹁そうだな。﹂
﹁⋮⋮なんだ
﹂
﹁⋮⋮シオン、﹂
置する。
サーシャに何かあればシジフォスがすぐに気がつくだろうと考え放
サ ー シ ャ に 小 宇 宙 を ぶ つ け る 度 胸 は な か っ た の で 気 絶 し て い な い。
倒 れ て い る 黄 金 聖 闘 士 達 の こ と な ど 頭 の 片 隅 に も な い。流 石 に
!
﹁⋮⋮ああ。﹂
?
︻後日︼
﹁結局どうなったのだ
﹂
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
そう言うと2人は聖域に向かって歩みを進めるのであった。
我が家
﹁確かに約束しましたよ
﹂
﹁また⋮⋮誘ってくださいね。今度は2人きりで。﹂
ポツリとつぶやかれた言葉。
?
されました﹄と答えたのだった。
教皇セージの問いに黄金聖闘士達は﹃逆上した2人にコテンパンに
?
10
!!!
キャラ紹介
キャラ紹介︵ネタバレ︶
ユキミランカ
︻名前︼
雪美蘭華
︻性別︼
女
︻年齢︼
物語始まり当初は12歳。
現在17歳。
︻見た目︼
真紅の長髪、エメラルドグリーンの瞳をもつ。
タナトスとの戦いの後黒髪に変化する。
︻誕生日︼
マホウショウジョ
3月18日
元魔法少女。
キャンサー
魔女との戦闘中に攻撃を受け聖闘士星矢Lcの世界に飛ばされる。
セキシキメイカイハ
ヤガミリン
蟹 座のマニゴルドより魂のあり方について真実を聞かされる。その
ア リ エ ス
後魂を︻積尸気冥界波︼により体内に戻す。
セイントコウホセイ
ブロンズセイント
その後しばらく牡羊座シオンの従者をしていたが、八神凜と敵対し
たことにより聖闘士候補生となる。
三年間の修行の後、アンドロメダの青銅聖闘士となる。
タナトスとの戦いで神が漆黒に変化する。その後カイロスと出く
わし、過去を思い出す。
神代は冥王ハーデスの妻ペルセポネだったことを思い出した。
ゴールドセイント
シオン共に現代へ飛ばされる。
︻備考︼
・十二宮の黄金聖闘士の間で︻出張料理人︼扱いをされている。
・牡羊座シオンとカレカノ関係。
11
コ
ス
モ
・よく分からない意味不明な小宇宙が使える。自分の意思でコント
ロールできる。
マホウスペクター
メイオウ
・植物を操る能力を持つ。しかしそれは意味不明な小宇宙を燃やし
ている時限定。
・不特定多数から狙われている。
ヤガミリン
︻名前︼
八神凛
︻性別︼
女
︻年齢︼
物語始まり当初は12歳。
現在17歳。
︻見た目︼
スペクター
深海のような深い青のショートボム。マリンブルーの瞳。
︻誕生日︼
11月7日
魔法少女兼冥闘士。通称︻魔法冥闘士︼。
蘭華の親友。少々ヤンデレ気味。
固有魔法は︻雷︼。
冥闘士としての能力は今のところ不明。
魔女との先頭を境に行方不明になった蘭華を探していると、冥王
ハーデスの配下の2神、眠りの神ヒュプノスと死の神タナトスに﹃蘭
華に会いたければ配下に下れ﹄と言われ冥闘士となる。
ヒュプノスと仲違いしたため冥王軍から離れている。
︻備考︼
・蘭華にベタ惚れで、近づく者は容赦しない。
・蘭華とは同じ孤児院出身。
・最近蘭華とカレカノになったシオンを快く思っておらず、隙あら
12
ば殺してやろうと考えている。
・蘭華の正体を知っている。
・聖闘士と敵対しているが、今は利害の一致で休戦状態である。
︻名前︼
カテリーナ︵故人︶
︻性別︼
女
︻年齢︼
不明
︻見た目︼
銀髪ショートカット。アメジストの瞳。
︻誕生日︼
不明
Lc世界の魔法少女。幼なじみに︻アリア︼がいる。
アリアのソウルジェムを奪った︻リーシェ︼を恨んでおり、リーシェ
と戦闘中に蘭華達と出会う。
その後リーシェと和解し、共闘する。
︻ワルプルギスの夜︼との戦闘中に命を落とす。
︻名前︼
リーシェ
︻性別︼
女
︻年齢︼
14歳
︻見た目︼
桃色の髪。三つ編みにしている。紅の瞳。
︻誕生日︼
13
8月26日
蘭華と同じく元魔法少女。
カテリーナとの戦闘中に蘭華達と出会う。
アリアのソウルジェムを奪ったのは、アリアを冥闘士にしない為で
あり、己の中の正義に従い運命と戦っていた。
しかしアリアが冥闘士となり、絶望により魔女︵ワルプルギスの夜︶
となる。
蟹座マニゴルドに魂を救い出され、小宇宙に目覚めた。
その後世界平和の為、聖闘士候補生となる。
︻名前︼
アリア
︻性別︼
女
︻年齢︼
不明
︻見た目︼
金髪のロング。空色の瞳。
︻誕生日︼
5月7日
元魔法少女でカテリーナとは幼なじみ。
冥闘士となる︻凶星の星︼の元に生まれたが、インキュベーターと
契約し魔法少女となったことにより冥闘士として目覚めるのが遅れ
てんきょうせい
ていた。
︻天 響 星 カルテット︼の冥闘士。
自我がなく、操られているような状態。
14
︻名前︼
カルト
︻性別︼
男
︻年齢︼
14歳
︻見た目︼
蒼髪短髪。水色の瞳。
︻誕生日︼
12月15日
聖闘士候補生の少年。
蘭華がよく絡みに行くので、様々な面倒ごとに巻き込まれている。
本編ではなかなか出てこないある意味レアな少年。
★ご都合主義の勝手設定★
・魔法少女まどか☆マギカと聖闘士星矢の世界は同じ。
・蘭華達がいた時代は丁度原作の冥界編が終わった辺り&まどマギ
本編。つまりアニメでの最終週。
コ
ス
モ
・魔法少女が蟹座の︻積尸気冥界波︼により魂を体に戻した場合、副
作用で小宇宙に目覚める。
15
プロローグ
魔法少女失格だよ
ユキミランカ
まず最初に自己紹介しましょう。
私の名前は雪美蘭華。14歳。中学生です。
アニメオタクである事、長い赤い髪、緑の瞳以外はなんの取り柄も
特徴もありません。
マホウショウジョ
しかし私にはほかの人には言えない秘密があります。
それは私が﹃魔法少女﹄という事です。
魔法少女とはインキュベーターと取引し、どんな願いも叶えてくれ
る代わりに魔女と戦う義務をおった少女のことです。
私がどんな願いをしたのかはいつか話すこととしましょう。
ただ今魔女とのバト
懸命魔女から逃げています。この魔女が他の魔女よりも強いという
訳ではありません。たぶん。
なら何故逃げているのか。
その理由は至って単純かつシンプルです。
理由は﹃怖い﹄からです。
そう、怖いんです。魔女との戦いは平和で平凡な生活をしていた私
には刺激が強すぎました。逃げ切れるわけがないとわかっていても
﹂
君も魔法少女だから戦えるはずだよ
しつこい。いーかげんにしてよぉ
逃げるしかありません。
﹁あーもうっ
﹁だ っ た ら 戦 っ た ら ど う だ い
﹂
!!
それを言わないでキュゥべい。﹂
?
16
そして今私が何をしているかを話しますね
ルなうデス
?
⋮⋮⋮ ご め ん な さ い 嘘 つ き ま し た。魔 女 か ら 逃 げ て ま す。今 一 生
!
!
﹁うるさいですよ
!?
?
﹁君は本当に魔法少女の自覚があるのかい⋮⋮⋮
﹂
言われなくてもわかっています。でも怖いんです。どうしようも
ないくらいに。
分かってはいるのに体が動かなくなる。よって残された選択肢が
﹃戦略的撤退﹄。戦略的撤退というよりもガチで逃げているのですが
⋮⋮
︵ほんとに情けない⋮︶
﹁本当に私⋮⋮⋮魔法少女失格だよ⋮⋮﹂
﹂
なんて言っているあいだに追いつかれてしまいました。
﹁もう逃げられないね。いい加減戦ったらどうだい
﹁キュゥべいの馬鹿⋮意地悪⋮﹂
つだろう。
ナギナタ
ナギナタ
しかし現実はそう甘くはない。これがよくいう現実逃避というや
黄金の鎧をまとい助けに来てくれる女神の闘士⋮⋮
士だが。
そうやって思い浮かべるのは大好きな漫画の戦士達。正確には闘
︵アニメみたいにヒーローが助けに来てくれればいいのに⋮︶
﹁うぅ⋮⋮⋮やっぱり怖いよぉ⋮⋮﹂
よって私は自分の武器である薙刀を出した。
抗ぐらいはしたい。
逃げられないということはわかっている。死ぬにしても最後の抵
?
なにごとも
流 石 に 死 に た く な い。よ っ て 覚 悟 を 決 め る こ と に し た。薙刀 を 強
く握り魔女に視線を向けた。後は成せばなるッ
!!
17
?
!!
出会いと真実
魔女との戦い
ナギナタ
﹂
戦うってそう簡単に言うけれど、実際はそんな簡単ではない。魔女
﹂
と対峙するのだが薙刀を持つ手が震える。
﹁大丈夫かい
﹁大丈夫じゃないけどやるしかないでしょ
なかった。
からぶったぁ
!!
ドガァァアアン
はいいことなのだが⋮⋮
﹁や、やっぱ無理だよぉ
﹂
!!
﹂
すぐに治っても痛いものは痛いッ
握りしめた。
そこっ
ナギナタ
半分涙目になりながら薙刀を
!!
力はあまり高くない。固定魔法が治癒力なのですぐに怪我が治るの
もはや苦笑いだ。苦笑いしかできない。魔法少女ではあるのだが
﹁あ⋮⋮⋮あはは⋮﹂
び出す。するとさっきまでいた所に使い魔が押し寄せた。
早くここから離れないと魔女の追撃が来る。痛む体に鞭打ち横に飛
私は攻撃を受けて床に転がった。痛みで一瞬息が詰まる。しかし
!
冷や汗が流れ焦る。しかし魔女がその隙を見逃すはずもなく
︵やばぃ
︶
薙刀を振り上げ切りつける。つもりだったのだが切っ先は何も捉え
ナギナタ
距離を数秒でつめた。
キュゥべいを足元におろし駆け出す。魔法少女の脚力は魔女との
魔女の結界から出るには魔女を倒すしかない。覚悟を決めた。
?
?
!!
だがこのペースだといつ魔女を倒せるのかわからない。それどころ
18
!
薙刀 を 魔 女 に 突 き 刺 す。魔 女 に 少 し 怪 我 を お わ せ る こ と が 出 来 た。
ナギナタ
﹁っ
!
早く来てぇ
︶
か先にソウルジェムの魔力がつきるだろう。そうなれば終わりだ。
︵まだなの
!!
︶
!!
﹁
﹂
"!!
﹁凛ちゃん
見てたなら助けてよぉ
親友の八神凛。そのものだった。
﹂
﹁それじゃ蘭華の為にならないでしょ
ら助太刀するよ。﹂
﹂
?
!
だが。
﹁よし
﹂
﹂
!!
﹁とりゃぁぁぁぁ
とどめ
2人がかりだとすぐに決着がつく。というか私がダメなだけなの
﹁ありがと
でもまぁ見てられなかったか
﹁相変わらず危なっかしいね。見ててヒヤヒヤするよ。﹂
間違いなく私が待っていた存在。
フリルが沢山ついた服。
雷が魔女と使い魔を撃ち落とす。青いショートカットの髪、白色の
ライトニングスパーク
だがその瞬間、聞きなれた声が私の耳に届いた。
タに引き裂かれるだろう。
体が動かなくて私は咄嗟に目をつぶった。数秒後には体がズタズ
︵やばい、よけきれないっ
りだ。魔女と使い魔がいっせいに私に攻撃を仕掛けてくる。
しかし考え事をしていると反応が少し鈍くなる。その一瞬が命取
法少女の矢神凛だ。
ヤガミリン
半分涙目で待っているのは私の親友であり、雷を固定魔法とする魔
!?
!
!
﹁蘭華
っ⋮⋮
サンダートルネード
﹂
"!!
駆け寄ってくる姿を見ながら私は暗闇の中に放り出された。
凛 ち ゃ ん は す ぐ に 魔 女 に ト ド メ を さ し た。だ が 光 は 収 ま ら な い。
!"
その場から離れようとしたのだが体が動かなかった。
み込んだ。
魔女にトドメをさそうと近づいた瞬間。魔女が発した光が私を包
!!
!
!?
19
"
セ イ ン ト セ イ ヤ
ここって⋮⋮⋮夢であって欲しい⋮⋮
サンクチュアリ
world聖闘士星矢
聖 域
セ イ ン ト
ブロンズセイント
シルバーセイント
そこは女神アテナが降臨する場であり、女神アテナを守護する88
セ イ ン ト
の闘士聖闘士が修行し、守護する場所である。
ゴールドセイント
聖闘士 に は 階 級 が 存 在 し、 下 か ら 青銅聖闘士、 白銀聖闘士、
黄金聖闘士。
女神アテナの住むアテナ神殿は黄金聖闘士が守護する十二宮と教
皇の間が存在し、一般人は基本立ち入りが禁じられている。
サジタリアス
ア リ エ ス
その教皇の間には今3人の人間がいた。1人は教皇セージ。2人
目は射手座のシジフォス。3人目は牡羊座のシオンである。
シジフォスとシオンの2人は任務の報告に来ていた。報告があら
かた済んだ時である。
教皇の間の天井を突き破り落ちてくる一人の少女。赤い長い髪、緑
の瞳の少女である。その少女は天井を突き破り教皇の間の床に落ち
た。
一瞬あっけに取られたシジフォスとシオンであったが、侵入者であ
る少女から教皇を守るように少女と教皇の間に立った。
蘭華side
﹁痛たぁ⋮⋮⋮もう⋮⋮なんでこうなるのよ⋮⋮﹂
魔女の攻撃を受け暗闇に放り出されたと思ったらいきなり空に落
とされたのである。もちろん重力に従い地面に落ちる。どうやら石
造りの建物にぶち当たったようだ。
︵よく生きてたな⋮⋮⋮私⋮⋮︶
魔法少女である事に対して感謝した。心の底から。
地面にぶつかった時の衝撃で煙がたち、周りが見えない。ここは何
処なのだろうか。魔女にトドメはさされたはずなので結界の外では
あるのだろうが⋮⋮⋮
20
なんで一緒にいるの
﹂
どうやら凛と離れ離れになってしまったようだね。﹂
キュゥべい
﹁大丈夫かい
﹁え
?
﹂
︶をしている間に煙が晴れた。
緒に飛ばされてしまったようだね。﹂
どうこう言い争い︵
﹁⋮⋮⋮⋮冗談抜きにここどこ
︶
?
﹁ありえないものとはなんだい
﹂
﹂
ゴールドセイント
﹁⋮⋮⋮⋮⋮ も し か し て ⋮⋮⋮ 黄金聖闘士 ⋮⋮
射手座 と 牡羊座
サジタリアス
﹁じゃあそれは現実だね。僕にも同じものが見えているよ。﹂
﹁男3人⋮⋮2人はなんか金色の鎧まとってる⋮⋮﹂
?
我々のことを知っているようだが。﹂
⋮⋮んでもって教皇
ア リ エ ス
﹁キュゥべい⋮⋮私頭打ったみたい。ありえないものが見えてる。﹂
︵⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮ぇ
視線を感じてそっちに視線を向ける。すると男の人が3人。
見たことのない景色。昔のヨーロッパみたいな感じだ。
?
?
は⋮⋮⋮⋮
嫌な予感が胸をよぎる。
この先の私の命はどうなるのか、恐怖で目頭に涙が溜まる。
当たって欲しくない予想が当たってしまった⋮
﹁⋮⋮⋮⋮⋮うそ⋮⋮⋮﹂
﹁その通り。ここは十二宮の奥にある教皇の間だ。﹂
けれど現実はそんなにも甘くはない。
よってまだ状況が整理しきれていないのだ。
そ れ 以 前 に こ の 世 界 は ア ニ メ で あ り、漫 画 で あ る と 思 っ て い る。
私は侵入者であり、今すぐに殺されても文句は言えない。
当たって欲しくない予想。本当にここが教皇の間であるのならば
﹁⋮⋮⋮⋮⋮ここってまさか⋮⋮教皇の間⋮⋮
﹂
これが現実だというのか⋮⋮これが現実で教皇がいるということ
?
﹁そんなこと僕に言われても⋮⋮君が魔女の攻撃を受けた時に僕も一
!?
?
?
射手座の聖闘士が私に語りかける。
サジタリアス
﹁君は何者だ
?
?
?
21
!?
もうこれダメかも⋮⋮
夢だと思いたい。いまだ現実なのか自信が持てない。もしかした
ら魔女の攻撃を受けて気絶していて、これは夢なのかもしれない。い
や、そうと願いたい。
夢なのか⋮⋮試しに頬を引っ張ってみた。
︵痛いじゃん⋮⋮⋮︶
痛みを伴う夢なら別だが、もうこれは夢ではないようだ。
ゴールドセイント
という事は私は教皇の間まで忍び込んだ侵入者であり、すぐに殺さ
これさっきも説明したな⋮⋮︶
れても文句を言えない状況なのだ。
︵あれ
サジタリアス
ア リ エ ス
状況確認をしようと思う。目の前にたっている2人の黄金聖闘士。
射手座と、牡羊座のようだ。牡羊座の聖闘士を見ると黄色か黄緑色の
どっちとも付かずみたいな髪の色。チョンチョンと天パみたいには
︶
ア リ エ ス
ゴールドセイント
ねているロングの髪の毛。明らかにムウではない。
︵という事はシオン
シーで、
﹂
﹃こんな時に何を言っているんだい
?
しない方がおかしい。
ア リ エ ス
ゴールドセイント
ゴールドセイント
教皇が沈黙を破った。
﹄
ゴールドセイント
﹁そうだ。牡羊座の黄金聖闘士のシオン、射手座の黄金聖闘士のシジ
サジタリアス
なる。初めて見た、なおかつ侵入者に名前を呼ばれたのだ。びっくり
それまで黙っていた教皇と黄金聖闘士はびっくりしたような顔に
!
い質問だ。
﹃うるさいっ
気がついたら既に口が動いてたんだよぉ
キュゥべいに言われなくてもわかっている。明らかにどうでもい
とツッコミを入れてきた。
﹄
気 づ い た 時 に は も う 既 に 口 が 動 い て い た。キ ュ ゥ べ い が テ レ パ
さんです⋮⋮⋮か⋮
﹁えーっと⋮⋮⋮⋮もしかして、牡羊座の黄金聖闘士さんってシオン
?
?
半泣き状態でテレパシーを返す。
!
22
?
フォス、そして私が教皇のセージ。君は何者だ
アテナ様
ここにはアテナ様の
結界がはってある。やすやすと破れるはずが無い。﹂
﹁え、えっと⋮⋮なんて答えたらいいのか⋮﹂
﹂
﹁一度に聞きすぎたか⋮⋮ならば、まず何しにここへ来た
に危害を加えるつもりか
﹂
ここに今
?
!
?
全然そんなつもりじゃないです
﹂
﹂
いるのは一種の事故みたいなものです
信じてくださいっ
﹁その言葉⋮⋮信じて良いのだな
﹁はい
シジフォス、シオンよ。﹂
?
キュゥべいだまってっ
場なら信用出来ないからね。﹂
﹁ちょ
﹂
﹁けれどいきなり現れた僕達を簡単に信じられないだろうね。逆の立
﹁ほ、ほんとにそんなつもりないんです⋮⋮﹂
﹁なるほどな⋮⋮﹂
黄金聖闘士2人。対処できるかと。﹂
ゴールドセイント
るつもりは無いと思います。仮に危害を加えるつもりでもこちらは
﹁私もシジフォスと同じ意見です。少なくともアテナ様に危害を加え
だと思います。﹂
﹁あの慌てよう⋮⋮おそらくここに今いるのは事故ということは事実
﹁⋮⋮⋮どう思う
!!
!!
﹁め、滅相もありません
!! ?
死ぬかもしれない。どんどん気分が落ち込んでいく。
︵あぁ⋮⋮⋮⋮もうこれダメかも⋮⋮︶
喋る小動物とか洒落にならない。
うな顔。実際ありえないものを見ているのだろうけれど。
やばいと思って口を塞いだが3人はありえないものを見ているよ
!!
23
?
!!
!?
いきなり喋った小動物。﹁なんだこれ
セ イ ン ト
聖闘士side︵シジフォス︶
︵あれはなんだ
︶
﹂
今まで一度
︶を見ているとだんだん自分の中の常
小動物が喋った⋮
識が崩れていくように思える。
だが今目の前にいる2人︵
もそも聖闘士という存在自体が常識的ではない。
セ イ ン ト
長い間聖闘士をやってきて今更驚くことはないと思っていた。そ
!?
小動物は喋った。
!?
﹂
聖闘士side︵シオン︶
﹁しゃ⋮喋った⋮⋮
クロス
表情が変わっていない。表情というものが存在するのか疑問だが。
目の前の少女はなんだか絶望したような表情だ。喋った小動物は
だ。
をしていた。私やシオンはともかく教皇様も見たことがないご様子
教皇様やシオンを見ると同じように﹃なんだあれ
﹄みたいな表情
も見たことがない。喋る小動物などありえない。だが目の前であの
あの白い兎なのか猫なのかわからない生物はなんだ
?
?
とがない。
?
﹂
?
黙を破ったのは喋った小さな生物だった。
そうして時間がどんどん過ぎていく。すごく気まずい雰囲気。沈
る。
少女の方も説明に困っているようだ。視線をあちこちに移してい
﹁⋮⋮えっと⋮⋮なんて言うか⋮その⋮﹂
﹁あ、ああ。それはなんだ⋮⋮
すごい。明らかに絶望している。
そう問いかけてくるのは少女の方。明らかに﹃やっちまった﹄感が
﹁えっと⋮⋮⋮聞こえました⋮⋮
﹂
とができ、昔のことなどを知っているのだがあのような生物は見たこ
頭の中で今起きた事の整理がつかない。私は聖衣の記憶を読むこ
?
24
?
?
﹁僕 は キ ュ ゥ べ い だ よ。少 女 達 の 願 い を 叶 え る 代 わ り に 魔 法 少 女 に
地球外生命体⋮
﹂
なってもらうという契約を交わす地球外生命体さ。﹂
﹁⋮ま、魔法少女⋮
?
キュゥべいって地球外生命体
宇宙人なの
﹂
!?
外生命体﹄も聞いたことがない単語だ。
﹁え
!?
ゴールドセイント
﹂
ゴールドセイント
ピスケス
黄金聖闘士アルバフィカである。
無事か
﹁ジジイ
すしかなかった。
本物⋮⋮
ピスケス
﹂
暗くなっているようだ。私はどうしたらいいのかわからず立ち尽く
言われて気がついたのだが少女は黄金聖闘士2人が現れて余計に
ゴールドセイント
ようだ。逆にお前に恐れておるではないか。まったく⋮⋮。﹂
﹁その通りではあるが少なくともその少女は我々に敵対はしていない
に現れたって結構大事だぞ。たぶん。﹂
おおごと
﹁いや、ジジイが落ち着きすぎなだけだろ。十二宮を通らず教皇の間
そうだ。﹂
﹁マニゴルド、落ち着かんか。この子は侵入者ではあるが敵ではなさ
配ってこいつか
﹂
なんだこのガキ。もしかして教皇の間にいきなり現れた変な気
?
ん で き た の は 蟹 座 の 黄金聖闘士 で あ る マ ニ ゴ ル ド と、魚座 の
キャンサー
の時だった。急に教皇の間の扉が開いた。息を切らしながら飛び込
どうしたらいいのか答えが出ないまま時間だけが過ぎていく。そ
皇はまだ固まっていた。
ツッコミを入れながら単語の意味を一生懸命考える。ちなみに⋮教
少女もびっくりしている。いや、仲間じゃないのかっ
と心の中で
説明してくれたようだが全く理解出来ない。﹃魔法少女﹄も、
﹃地球
?
﹁蟹 座のマニゴルドと魚座のアルバフィカさん⋮⋮
﹂
﹁教皇様
!
キャンサー
!
﹁ん
?
!!
?
25
!!
!?
?
ついでに報告です。
蘭華side
これはもう⋮ダメなのかもしれない。シジフォスとシオンだけで
はなくマニゴルドとアルバフィカまで出てきてしまった。
︵終わったわー。私の人生終わっちゃったよ。︶
最後に駅前のチョコパフェお腹いっぱい食べたかったなぁと後悔
の世界に旅立っていた。
→現実逃避ともいう。
なんで
てかシオン。お前が呼びに行けばいいだろ。﹂
﹁ちょうど良かった。マニゴルド、デジェルを呼んできてくれないか
﹂
﹁デジェル
﹄
?
かな
﹄
﹃わからないね。けれどその時はその時。諦めるしかないんじゃない
﹃ねーねーキュゥべい。やっぱり私たち殺されるのかな
半分以上涙目になりながらそんなどうでもいい事を考えていた。
︵周りが金ピカ、目がチカチカするよぅ⋮⋮︶
囲まれていた。
戻った時には教皇の間黄金聖闘士全員と教皇、アテナことサーシャに
ゴールドセイント
現実逃避をしている間にも話は着々と進んでいるようで、正気に
﹁まぁ⋮⋮いいけどよ。﹂
﹁ちょっと彼女に用事があるからな。すまん。﹂
?
いた。
﹂
﹁あ、あのぅ⋮⋮⋮﹂
﹁なんだ
﹁わ、私って⋮やっぱり⋮殺されるんです⋮か
教皇とサーシャの考えしだいだからな。﹂
?
?
?
﹁いいじゃねぇかデジェル。そんぐれーさー。﹂
﹁カルディア⋮お前はまたアテナ様のお名前を⋮﹂
﹁さぁな
﹂
テレパシーでやり取りをしながらこれからの未来について語って
﹃相変わらず冷静ですねぇ⋮羨ましいよ⋮﹄
?
26
?
?
﹁よくはないだろう⋮⋮﹂
カルディアとデジェルのやり取りを聞いていて微笑ましく思った。
漫画の中でしかこのふたりの会話を知ることが出来なかったのだが、
ゴールドセイント
目の前で実際に二人を見ている。
二人だけではなく12人の黄金聖闘士を見ることが出来ているの
﹂
ここに来た
だ。聖闘士星矢好きの私からしたらもう天国のような光景だ。
⋮⋮こんな状況でなければだが。
﹁えっと⋮⋮まず、あなたの事を教えてもらえませんか
理由を含めて全部。﹂
どこかで会ったことある
﹁サーシャちゃん⋮やっぱり天使だ⋮﹂
﹁え
?
ル
﹂
﹁わ、私は雪美蘭華。魔法少女です。﹂
ユキミランカ
画そっくりだ。感激で心臓が止まりそうだよ。
にしても、黄金聖闘士や、教皇、アテナであるサーシャ。全てが漫
ゴールドセイント
︵や、やばい。独り言でも聞かれるのか⋮︶
﹁い、いえなんでもありません。﹂
?
﹁ひゃ、ひゃいっ
﹂
ゴ
﹁私の事は今は関係ない。答えたまえ。﹂
﹁アスミタさんだ⋮乙女座の⋮﹂
バ
﹁魔法少女とはなにかね
?
話し終わる頃にはカルディアは寝ていた。ついでに報告です。
話が長々としてしまったのだ。
いう事と話の途中途中で入る質問︵デジェルと教皇セージが中心︶で
状況をすべて話し終われたのが二時間後だった。もともと口下手と
⋮⋮⋮⋮とまぁこんな感じで質問︵というより尋問︶が進んでいく。
!
27
?
相変わらず寝こけていた
サーシャside
いきなり現れた女の子、蘭華ちゃんの話を聞いていたけれどにわか
には信じられなかった。私はアテナとして過去の記憶を持っている
のだが、魔法少女という存在は見たことがない。けれど実際に回復魔
法というものを見せてもらって事実ということが分かった。
蘭華ちゃんはなんだかよくわからない。会ったことがないはずな
のに私たちを知っている口ぶり。違和感はないけれどなんだか微妙
な感じだ。
け れ ど 怯 え て い る の が わ か る。捨 て ら れ た 子 猫 み た い に 見 え た。
昔の私と似ていて、もっと話をしたいと思った。
﹂
﹁セージ。彼女を、蘭華ちゃんを解放してあげましょう。﹂
﹁よろしいのですか
一応この世界の住人じゃねぇ蘭華って
28
﹁お、おいサーシャいいのか
やつをほかっておいて。﹂
︶
サーシャの言葉が頭の中でリピートしている。
︵望み
﹁って事は⋮私は死ななくてもいいってことですか⋮
﹁お主はコロコロと意見が変わるのぉ。助かりたいのか助かりたくな
?
?
けど⋮とてもじゃないけど信じられるような話じゃないですよね
﹂
一応身元を説明しました
﹁はい。初めから命を取る気はありませんでしたし。﹂
﹂
いと思うのです。できる範囲で力添えをしたいです。﹂
﹁すみません。言い方が悪かったですね⋮蘭華ちゃんの望みを聞きた
蘭華side
故でこの世界に飛ばされてしまっただけ⋮助けてあげたいと思った。
そう。もう既に私の中で心は決まっているのだ。蘭華ちゃんは事
いと思うのです。できる範囲で力添えをしたいです。﹂
﹁すみません。言い方が悪かったですね⋮蘭華ちゃんの望みを聞きた
?
?
﹁えっと⋮嬉しいんですけどいいんですか
?
?
いのかどっちじゃ
﹂
ラ イ ブ ラ
ゴールドセイント
どうこ
と突っ込んできたのは天秤座の黄金聖闘士である童虎である。
﹂
﹁それは⋮もちろん死にたくはないです。ぶっちゃけ今すぐにでも元
の世界に帰りたいです。﹂
﹁本当にぶっちゃけるのぉ。だが帰る手立てはあるのか
﹁⋮⋮⋮⋮⋮ないです⋮﹂
ことは言わない。︶
オ
ゴールドセイント
ジェ ミ ニ
﹁元の世界に変える方法かぁ⋮双子座のアナディメは
レ
﹂
てもうレグルスちゃんって黄金聖闘士になっていただろうか
ゴールドセイント
獅子座 の 黄金聖闘士 レ グ ル ス ち ゃ ん で あ る。っ て あ れ
?
変わっているのだろうか
馬鹿な私には全然わからないが。ちなみ
もしかしてこの世界って私が読んでいた漫画の世界とは少し話が
?
この時期っ
う。一番ゴタゴタしている時期な気がする。︵いろんな意味で。深い
というか、サーシャの顔立ちとかから見て、聖戦の5∼6年前だろ
たものではない。
︻アナザーディメンション︼が存在するが、どこに飛ばされるかわかっ
帰 り た い け れ ど 帰 る 方 法 が わ か ら な い の だ。異 次 元 に 飛 ば す 技、
?
?
だけ難しい話が嫌いなんだ⋮この男は。
にキュゥべいはだまりっぱなし。カルディアは寝こけていた。どれ
?
29
?
なんのことですか
らないぞ。﹂
ジェ ミ ニ
アスプロス兄さんかデフテロ
時間軸的にたぶんアスプロス兄さんで
?
ンションで元の世界に帰れるとは限らないので⋮﹂
レグルスちゃんが凹んでしまいましたっ
!
﹁そっかぁ⋮いい方法だと思ったんだけどなぁ⋮﹂
あぁ
可愛い⋮なでな
﹁ちょっとそれは⋮ゴメンですね。帰りたいですけどアナザーディメ
しょうが。
スかどっちなのでしょう
と 双子座 の 黄金聖闘士 さ ん。あ れ
ゴールドセイント
﹁アナザーディメンションは異世界に飛ばす技だがどこに飛ぶかわか
﹁どうしましょうか⋮﹂
すが、元の世界に戻る方法が思いつきません。
困りました。少なくとも今すぐに命を取られることは無いようで
?
べいが喋りだしました。
﹁けれどそんなにも時間は残されていないよ
?
﹂
そういえば魔力がなくなれば
がなくなればどうなるんですか
力がなくなるかわからないからね。﹂
ソウルジェムとやらの魔力
変身できなくなるのかな
?
﹁うぅ⋮その問題があった⋮﹂
﹁
どうなるの
﹁ゴメンナサイ。なんでもないです。
﹁えっと⋮﹂
﹁サーシャちゃん⋮やっぱ天使⋮﹂
?
いつソウルジェムの魔
なんてアホな事考えているとずっとだまりっぱなしだったキュゥ
でしたい⋮
!
ゴールドセイント
あったのでしょうか
﹁⋮⋮⋮は
⋮⋮⋮え
どうゆうこと
?
﹂
﹂
﹁魔力がなくなれば体が動かなくなるんだよ。﹂
?
教 皇 と 蟹 座 の 黄金聖闘士 さ ん は 難 し い 顔 を し て い ま す。な に か
キャンサー
キュゥべいに問いかけました。
冷 静 に 考 え る と 魔 力 が な く な れ ば ど う な る の か 知 ら な い の で す。
?
?
?
30
?
? ??
?
﹁ソウルジェムというのはね⋮﹂
たしかマニゴルドだっけ
﹂
﹂
このままほかっといていいのかよ
なんのことです
﹂
?
少なくともこいつは
﹁おい。そこの猫兎。ちょっと聞きてぇことがあるんだがよ
﹁なんだい
﹁
⋮﹂
﹁ジ ジ イ
﹁やめんかマニゴルド。﹂ ﹁ああ。んで、聞きてぇことっていうのが⋮﹂
?
動かなくなるってどういうことでしょう
﹁蘭華とかいったな。﹂
﹁は、はい。﹂
﹂
﹁ほぇ
なんのことですか
﹂
?
だぞ
﹂
なれません。
多分お前が思ってるよりも深刻な問題
︵もともとする気はないけどね⋮︶
そして⋮いいかげんカルディアは起きろっ
!!
でもすごく真面目な顔をしているマニゴルドをみると茶化す気には
言 っ て い る 意 味 が さ っ ぱ り で す。イ ミ フ で す。わ け わ か め で す。
﹁えっと⋮だからなんのことですか⋮﹂
?
﹁お 前 は 自 分 の 体 っ て い う か ⋮ 魂 が ど う な っ て る か わ か っ て る の か
?
いうか⋮さっさとさっきの言葉の意味を説明して欲しいです。体が
全く話が見えません。なんの話をしているのかさっぱりです。と
?
?
?
!?
﹁わかってねぇ⋮大丈夫かよ
?
?
31
??
?
動く死体ではないか⋮
セ イ ン ト
聖闘士side︵マニゴルド︶
こいつはなんにもわかっちゃいねぇ。
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮へ
﹁マニゴルド
﹂
俺は蟹 座として許せねぇ
キャンサー
﹁ジジイはいいのかよ
?
どういうことですか⋮
﹂
﹁ちょ⋮ちょっと待ってください⋮
るんだぞ
﹂
キャンサー
この猫兎に魂いじられてるやつが目の前にい
だがお前の魂はそのソウルジェムとやらの中にあるぞ。﹂
﹁お前な⋮俺が魂を使っている黄金聖闘士、蟹 座だからわかったこと
ゴールドセイント
うだからキュゥべいとかいう猫兎は何も話しちゃいねぇようだ。
いう猫兎。こいつが魂をいじってやがる。こいつは何も知らないよ
こいつの話を聞く限り魔法少女とやらにするのはキュゥべいとか
師匠である教皇だけ。
ジジイ
他 の 黄金聖闘士 は 気 づ い ち ゃ い ね ぇ よ う だ。気 づ い て る の は 俺 と
ゴールドセイント
ありえねぇ
!
!
どういうこと
キャンサー
ゴールドセイント
私の魂がソウルジェムの中にある
ジェムとやらの中にある。﹂
え
ら本当のことなのだろうか
?
いやでも、魂の専門家とも言える蟹 座の黄金聖闘士が言うのだか
?
﹁言 っ た ま ん ま の 意 味 だ。お 前 の 魂 は そ の 体 の 中 に は ね ぇ。ソ ウ ル
蘭華side
がな。
猫兎は表情一つ変えやがらねぇ。表情があるのかはだはだ疑問だ
絶句してやがる。仕方が無いだろうが。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
ジェムとやらの中にある。﹂
﹁言 っ た ま ん ま の 意 味 だ。お 前 の 魂 は そ の 体 の 中 に は ね ぇ。ソ ウ ル
?
!
!?
?
32
!?
そんな馬鹿な⋮
?
ゴールドセイント
嘘だって言っ
周 り を 見 る と 他 の 黄金聖闘士 も 絶 句 し て い る よ う だ。教 皇 の セ ー
﹂
﹂
どういうことなのか⋮説明してくれる
ジだけは怖い顔をしてキュゥべいを睨んでいる。
﹁キュゥべい
﹂
て欲しいんだけど⋮ね
﹁本当のことだよ
﹁そんな⋮⋮そんなの聞いてないよ
﹂
﹁聞かれなかったからね。﹂
﹁なっ
?
﹂
﹂
カプリコーン
﹁君は
んてする少女がいるとは思えない。﹂
﹁詳しいことを全部説明していないのだろう
たのは彼女達自身だ。﹂
いるんだ。勝手にやっているわけではないよ
契約することを決め
﹁意味がわからないよ。こちらとしてはその対価として願いを叶えて
だろう。﹂
﹁やっぱ気に入らねぇな。人間の魂をいじくりまわして言い訳がねぇ
それはもう動く死体ではないか⋮
私 は も う 人 間 じ ゃ な い っ て こ と な の か ⋮。魂 が な い の に 動 く 体。
そんな⋮こんなのってないよ⋮
たよ
﹁聞かれなかったから教えなかっただけさ。聞かれていたら答えてい
!!
?
?
?
説明していたら契約な
⋮⋮⋮すべてが嘘であると信じて。夢だと願いながら。
を手放した。
辛くて、苦しくて目の前が真っ暗になる。そうして私は簡単に意識
てこなかった。ショックだった。
⋮⋮⋮どんどん話が進んでいるようだが私の耳にはなんにも入っ
﹁山羊座のエルシド。﹂
?
?
33
!?
?
?
私の過去
﹁知らない天井だ⋮﹂
どこかのアニメキャラのセリフが炸裂っ
︵私はもう人間じゃないんだ⋮︶
!?
﹂
それはそうと⋮⋮ここはどこなのでしょう
﹂
﹁目が覚めたか
﹁ほぇぇぇ
?
てそれだけで済んだのはむしろ感謝すべきことです。⋮⋮たぶん。
あ、別に後悔しているわけではありませんよ
願いを叶えてもらっ
の事が夢だと都合のいいようには思えませんでした。
たのは夢ではないということ。それが夢ではないのにソウルジェム
元 気 が あ り ま せ ん。知 ら な い 天 井 と い う こ と は 黄金聖闘士 達 に 会 っ
ゴールドセイント
⋮⋮といつもなら自分で突っ込んでいるのですが、今は全然そんな
!!
﹂
!?
はくようきゅう
は⋮
な女の子なんだからな。﹂
はくようきゅう
﹁無理しなくていい。泣きたい時には泣けばいいんだ。まだ君は小さ
ん。
イの言葉を引きずってしまってそんなにもテンションが上がりませ
この言葉に嘘はありません。本当に嬉しいです。けれどキューベ
﹁現物を見れる日が来るなんて⋮感激⋮﹂
﹁よくわかったな⋮ここは私が守護する宮、 白 羊 宮だ。﹂
﹁白 羊 宮⋮⋮
﹂
シオンと話していて気づきました。シオンがいるってことはここ
﹁あ、うん。すまない。つい癖でな⋮﹂
い。心臓が止まるかと思いました。﹂
﹁びっくりしたのはこっちですよ⋮気配を消して声かけないでくださ
﹁あ、ああ。びっくりした⋮﹂
﹁し、シオンさん
いました。すごく間抜けな叫び声をあげてしまった気がします。
いきなり声をかけられてびっくりしました。心臓が止まるかと思
?
?
34
!?
﹁むぅ⋮女の子って区別しないでくださいっ
な事だからな。﹂
﹁えっと⋮勘違いしないでくださいね
﹂
﹂
恨んでい
確かにショックを受けたのは
﹁すまない。だが本当に泣きたい時は泣けばいい。それだけショック
!
事実です。でも別に後悔しているわけではありませんよ
普通は恨むものだろう
るわけでもないです。﹂
﹁なぜだ
?
?
﹂
理由をシオンはずっと聞いていてくれた。だが顔は浮かないまま
にいる。だからいいのだ。
と願った。キュゥべいは願いを叶えてくれた。だから私は今ここ
﹃毒で死なない体にして﹄
藁にもすがる思いだった。
なってよ
﹁どんな願いも奇跡も叶えてあげる。だから僕と契約して魔法少女に
の時キュゥべいにあったのだ。
けれど私に毒の耐性なんてあるわけがなく死を待つだけだった。そ
三年前のあの日。私は毒ガスの中で死にかけていた。事故だった。
いんですよ。﹂
ら。だからキュゥべいに感謝することはあっても恨むことなんてな
﹁い い ん で す。あ の 時 契 約 し て い な か っ た ら 私 は 死 ん で い ま し た か
?
だった。なぜなのだろうか。気になったが今は別に知りたいとは思
わなかった。
35
?
!
魔法少女の成れの果て。魔女の正体
セ イ ン ト
聖闘士side︵シオン︶
蘭 華 の 話 を 聞 き な が ら ソ ウ ル ジ ェ ム の 真 実 に つ い て 伝 え よ う か
迷っていた。蘭華が気絶してからもキュゥべいいや、インキュベー
ターとの口論は続いていた。
インキュベーターの話によるとソウルジェムは魔力がなくなった
時、もしくは魔法少女が絶望しきった時に濁りグリーフシードに変わ
る⋮
いずれ同じように魔女になると知っても安い代償だと微笑
蘭華は同じ魔法少女を倒していたと知っても笑っていられるのだ
ろうか
んでいられるのだろうか
それを考えるととてもじゃないが言い出せなかった。いずれわか
ることなのに⋮
︵ずいぶんと自分勝手なことをするものだな私も⋮︶
蘭華に伝えるという役回りは本当はマニゴルドがやる予定だった。
だがマニゴルドではストレートに言いそうで代わってもらったのだ。
だが実際には伝えることが出来ない。彼女の絶望しきった顔を見
たくはない。彼女に笑っていて欲しいと思うのは自分勝手な願いだ。
だが真実を言葉にする勇気が出なかった。
蘭華side
翌日⋮⋮
キャンサー
ピスケス
私はまた教皇の間に来ていた。教皇の間にいるのはアテナである
ア リ エ ス
サ ー シ ャ。教 皇 セ ー ジ。 蟹 座 の マ ニ ゴ ル ト。魚座 の ア ル バ フ ィ カ。
牡羊座のシオンである。
﹁昨日はとんでもないところを見せてしまってすみませんでした。﹂
﹂
!?
?
とりあえず謝るとシオンを除き全員がびっくりしたような顔をし
こいつに教えなかったのか
ていた。何かおかしなことを言っただろうか
﹁おいシオン
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
!
36
?
?
マニゴルドが何か言っているがなんのことかわからない。シオン
はマニゴルドから顔をそらした。もうこの時点で嫌な予感がしてい
た。そしてこの嫌な予感の内容の予想もあらかたついていた。
優しいシオンが言いづらい事で私に関係のあること⋮おそらくソ
ウルジェム関係のことであろう。おそらく内容としてはソウルジェ
ムが濁りきったら何かペナルティーがあるというような事なのだろ
う。
そして⋮⋮これだけは考えたくないのだが、魔女の正体にも予想が
﹂
ついていた。信じたくはなかったのだが。
﹁⋮⋮蘭華。﹂
﹁アルバフィカさん⋮﹂
﹁君は⋮魔女の正体を知っているのかい
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮いいえ。﹂
﹁魔女の正体は⋮⋮⋮⋮君たち魔法少女だ。魔女とは魔法少女のソウ
ルジェムが濁りきった時に魂が変化したもの。つまり⋮魔女は魔法
﹂
少女の成れの果てだ。﹂
﹁アルバフィカ
予想がついていた。だから実際はそんなにもびっくり事項ではな
なんで⋮﹂
いのだ。はずなのに⋮⋮
﹁あ⋮れ⋮
ゴールドセイント
黄金聖闘士の人たちに見せたくなかったのに⋮
魔女を殺していたことはつまり同じ人間を殺していたということ。
人殺しという重みが辛かった。
涙が止まらない。止めたいのに止まらない。こんな顔を見せたく
なくてうつむいた。すると温もりを感じた。シオンが私を抱きしめ
てくれていた。温もりがあるともう止まらない。私はシオンの胸の
中でみっともないくらいにしゃくりあげながら泣き続けた。
37
?
﹁いいんですシオン。予想はついていましたから。﹂
!!!!
な ん で 涙 が 止 ま ら な い の だ ろ う。こ ん な か っ こ 悪 い 姿 を
?
対策とこれからの事
一難去ってまた一難⋮かなぁ
サーシャside
蘭華ちゃん⋮⋮⋮
にはいられなかった。
積尸気冥界波
せきしきめいかいは
悩んでいることは簡単。蘭華をどうするかだ。
キャンサー
ソウルジェムの中に魂があるなら蟹 座の
"
めんどくせぇぇ
︵⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮
だぁっ
︶
ジジイ
鬼蒼炎
きそうえん
で跡形もな
今の蘭華の状態で﹃選べ﹄というのはあまりにも酷だろう。
も限らない。こちらの独断でやっていい事とは思えなかった。だが
だが無理やり体の中に戻すことになるから後遺症などが出ないと
て魂を戻してやればいい。
を使っ
俺は今悩んでいた。悩むということは俺らしくない。だが悩まず
聖闘士side︵マニゴルド︶
セ イ ン ト
キュゥべいを許せなかった。アテナとして、1人の人間として。
成れの果てなんて⋮⋮私だったら耐えられない。
誰だって泣きたくなるよね。今まで倒してきたものが自分たちの
?
恥心で死にそうだった。
シオンの胸の中で泣くこと数十分。頭が冴えて我に返った私は羞
蘭華side
手だ。
蘭華を慰めるのはシオンに任せておきゃいいだろう。女の涙は苦
にしても⋮⋮どうするかなぁ⋮⋮
ジジイを怒らせると厄介だ。
く 燃 や し た い 衝 動 に 駆 ら れ た。教皇 が 居 た か ら 思 い と ど ま っ た が。
"
38
"
"
!!
全部が全部あの猫兎が悪い。今すぐにでも
!!!
︵し、シオンの胸の中で泣いてたぁ
恥ずかしいよぉ
︶
!!
﹂
﹁えっ⋮⋮⋮⋮
﹂
﹂
だがソウルジェムが濁っていく
?
になる。決まっていることなのだ。
だ が 魔 女 に な ら ず に 済 む 方 法 が あ る
?
﹂
積尸気冥界波
せきしきめいかいは
﹁本当⋮⋮⋮ですか⋮
﹁本当だ。
を知っているか
﹂
?
よ も つ ひ ら さ か
﹁は、はい。えっと⋮魂を黄泉比良坂に送る技ですよね
﹄
黄泉比良坂とは簡単に言うとあの世の事だ。
﹃だてにあの世は見てないぜ
﹂
﹁正確には魔女にならずに済むかもしれない方法があるという事だ。﹂
じっと見つめる。
信じられなくてセージを
ろう。そうなればソウルジェムはグリーフシードに変わり私は魔女
グリーフシードは持っていないためすぐににごりきってしまうだ
のは止められない。どんな方法を使ってもだ。
魔女にならずに済む方法がある
セージさんそれどういう事ですか⋮⋮
﹁な ら ば 蘭 華。魔 女 に な ら ず に 済 む 方 法 が あ る と 言 っ た ら ど う す る
バクして顔が熱い。本当に死にそうだ。
なんだか⋮羞恥心とは別でシオンの顔を見られない。心臓がバク
の手を握ってくれた。
そう言うとシオンとの距離が少し離れた⋮と思ったらシオンは私
﹁いや、構わない。﹂
﹁は、はい。すみませんでした。﹂
﹁落ち着いたか
ずかしすぎる。穴があったら入りたい⋮
しかもサーシャやセージ、マニゴルド、アルバフィカの前でだ。恥
!
?
よ も つ ひ ら さ か
"
?
行っていたのだろうか
せきしきめいかいは
積尸気冥界波
で私をあの世に送るって事ですか⋮
"
とまぁ相変わらずどうでもいいことを考えてしまった。
﹁えっと⋮
﹂
?
?
と か 言 っ て い た ア ニ メ の 主 人 公 が い た が 本 当 に 黄 泉 比 良 坂 ま で
!
?
"
"
39
?
?
?
せきしきめいかいは
﹁いやいや、違うから。簡単に説明すると積尸気冥界波を応用してソ
ウルジェムから魂を抜き出し体に戻すって事をするんだよ。﹂
キャンサー
﹁マニゴルドさん。﹂
な る ほ ど。 蟹 座 な ら で は の 発 想 だ ろ う。だ が マ ニ ゴ ル ド さ ん と
セージさんが微妙な顔をしているのは何故だろうか。
一難去ってまた一難という事なのだろうか⋮⋮
40
私の願い
蘭華side
﹁なんで⋮そんな怖い顔してるんですか⋮
ら。
⋮なにか問題があるんですか
﹂
﹂
﹁それって私にとって凄くというかとっても嬉しいことなんですけど
﹁いやな
この方法を使えばたぶん魔女化ってやつは防げるんだわ。﹂
聞いてみることにした。聞かないといけないみたいな雰囲気だか
?
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
これは⋮聞いちゃいけないやつだったか
一難去ってまた一難どころじゃねぇ⋮
かった話なのだろうが、全力で聞かなかったことにしたいっ
?
時ぐらいなんだけど。
﹁⋮えっと⋮聞かなかったことにしていいですか
?
﹁どうする
せきしきめいかいは
と言ってもこれ以外に方法は多分ねえけどな。﹂
天地をひっくり返すような戦い︵聖戦︶が近々起こるけどね。
せいせん
ドが悩み事なんて天地がひっくり返ってもおかしくない。実際には
通りでマニゴルドが悩んでますって顔をしてるわけだ。マニゴル
アルバフィカさんのツッコミ炸裂。ですよねー⋮
﹁ダメだろう。﹂
﹂
というか⋮キュゥべいを今日は見てないなぁ⋮もうすぐお昼の2
!!
いや、聞かないといけな
だから後遺症みたいなのが発症しねぇとも限らねえ。﹂
﹁⋮無理やり魂をソウルジェムってやつから出して体の中に戻すわけ
?
﹁蘭華。﹂
﹁シオン
﹂
これはどうしたらいいのでしょうか⋮
どっちもヤダ⋮
を使えば魔女化を防げるが後遺症が残る可能性がある。
悩 み ま す。こ の ま ま で い た ら 必 ず 私 は 魔 女 に な る。積尸気冥界波
﹁⋮⋮⋮どうしよう⋮﹂
?
41
?
?
﹁私は⋮魂を体に戻した方がいいと思う。﹂
﹁でも⋮⋮﹂
私 も そ う し た い。け れ ど 後 遺 症 と い う 言 葉 を 聞 い て 怖 く な っ た。
そんな心情を見透かしたのかシオンが声をかけれくれた。
﹁後遺症が怖いのはわかる。私も同じ立場なら躊躇うだろう。可能性
とはいえ、後遺症をおって欲しくないというのが私の心情だ。だが⋮
セ イ ン ト
私は君に魔女になって欲しくない。地上の平和を脅かす存在になれ
ば⋮私達聖闘士は君を討たなければならなくなる。そんなことした
くない。﹂
﹁シオン⋮⋮⋮⋮⋮
﹂
そうですね。私も魔女になって皆さんと戦いたくありません。だ
﹂
から⋮マニゴルドさん。﹂
﹁お、おう
﹁私の魂を体に戻してください。お願いしますっ
﹂
?
せきしきめいかいは
積尸気冥界波
ぁぁ
﹂
!!
﹂
!!
そう言って頭を下げた。教皇のセージとサーシャ、アルバフィカは
﹂
ことの成り行きを見守っていた。
﹁本当にいいんだな
﹁はい。﹂
﹂
?
﹁俺が言い出しっぺだしな。なら蘭華、いくぜっ
﹁ああ。おぬしがやるか
﹁ならもう何も言わねぇ。ジジイ、いいよな
?
私は力強く頷いた。
﹁
"
れるような感覚に陥り意識を飛ばした。
42
!
?
マニゴルドが人差し指をたて、技名を叫んだ直後。何かに引っ張ら
"
コレが小宇宙⋮
セ イ ン ト
聖闘士side︵マニゴルド︶
積尸気冥界波
せきしきめいかいは
﹁これでよしっと⋮﹂
作 業 終 了。
で 魂 を 抜 い て 体 の 中 に 戻 す。言 葉 に
"
がる。イラッとくるわバカ野郎。
?
﹁落ち着けマニゴルド。﹂
どーしたんだよアルバちゃん
?
﹂
﹂
?
え
﹄って顔してやがる。どんだけ俺信用ねぇんだよ。悲しいじゃね
心配そうにシオンが聞いてきた。⋮明らかにコレ﹃失敗とかしてね
﹁これで大丈夫なのか
やべえやべえ。気をつけねえと⋮
﹁まじか
﹁⋮⋮⋮心の声がダダ漏れだ。全部聞こえているぞ。﹂
﹁落ち着いてるぜ
﹂
こっちはあんなにも苦労したのにすげー気持ちよさそうに寝てや
苦労して戻し、蘭華を見た。⋮⋮⋮おう。ちょっと殴ろうか⋮
は大変なので師匠の教皇に手伝ってもらった。
ジジイ
の魂重すぎ。こんなにも重てぇ魂は初めてだ。一人で持ち上げんの
するとすげー簡単だが実際にやるとすげームズイ。なおかつこいつ
"
﹁無理やり魂を出したことによって何か後遺症が出るかどうかだな。﹂
﹂
コ
ス
モ
コ
ス
モ
﹁それなんだよなぁー。でも今んとこは何ともなさそうなんだよなぁ
⋮⋮⋮⋮⋮ッ
ス
モ
表現のしようがない。
んだか変な表現な気がするのだが、国語の成績が壊滅的な私には他に
意識が戻ったので目をそっと開けた。意識が戻ったというのはな
蘭華side
小宇宙がした方に恐る恐る体を向ける。視線の先には⋮⋮
コ
なんか今変な気配っていうか小宇宙を感じた。知らねぇ小宇宙だ。
!?
43
!?
﹁ああ。心配ならジジイにも聞いてみろよ。ミスはねぇ。後は⋮﹂
えか⋮
?
﹂
﹁蘭華、目が覚めたか。﹂
﹁⋮⋮⋮シオン
⋮⋮ってええ
今どこにいるか。⋮シオンの腕の中でした。うん、すごいびっくり
多分大丈夫だろうけど。﹂
です。心臓がバクバクしてます。
﹁どこか違和感とかあるか
﹁えっと⋮何がですか⋮
﹂
﹁そうか、ならいいや。いや全然良くねぇけどな。﹂
﹁マニゴルドさん⋮えっと、別にいつもと変わらない気が⋮﹂
?
な顔をしていた。
﹂
?
ものっすごくいやーな予感が⋮⋮
﹁えっと⋮何か問題でも⋮起きちゃった系な感じですか
﹁ああ。すげー問題だ。﹂
﹁⋮⋮⋮﹂
﹂
どうしよう。すごく聞きたくない。
﹁おい蘭華。これが見えるか
﹁⋮⋮⋮⋮⋮ほぇ⋮⋮
﹂
シオンの腕の中からそっと出ると他の人たちを見た。みんな微妙
?
マニゴルドはそういうと人差し指を立てた。
?
﹁やっぱ見えるんだな
﹂
﹁⋮⋮⋮はぃ。青白い炎みたいなのが⋮﹂
﹁おいこれどーするよジジイ。﹂
﹁どうしようかのぅ⋮ ﹂
コ
ス
セー ジ
モ
マニゴルドが困っていることにもびっくりだが、教皇が腕を組んで
悩んでいる事にびっくりだ。
私 が 小宇宙 が 見 え る よ う に
なっちゃってるっていうパターンですよね
そ し て ⋮ サ ー シ ャ ち ゃ ん が 完 全 に 空 気 状 態 で す ね ⋮。サ ー シ ャ
漫画であるあるな展開。実際に体験するとは思わなかった。
?
⋮⋮⋮⋮ と い う か こ れ ア レ で す よ ね
?
44
!?!? ?
なんだろう、あれは。青白い炎みたいなのが指先から出てる。ええ
?
?
?
45
ちゃんかわいそうだ⋮
そんなことを考えて現実逃避しましょう。うん、それがいいっ
!
ス
モ
普通の女の子⋮⋮⋮⋮⋮⋮
コ
蘭華side
たぶん。
うなんでしょう
コ
ス
モ
では魔法少女としての能力は失われてしまったのでしょうか⋮ど
よね
というか、小宇宙が見えるって事は私も小宇宙が使えるって事です
?
毒の耐性については
デモンローズ
ゴールドセイント
アルバフィカにデモ
の園に行けば1発でわかる
のですが、ちょっと怖いので園には行きません
"
﹁⋮⋮⋮私か
﹂
何だ
﹂
﹂
﹁アルバフィカさん⋮ちょっとお願いがあるんですけど⋮﹂
るならば何かあっても大丈夫でしょう。
ン ロ ー ズ を 出 し て も ら う 事 に し ま し ょ う。こ れ だ け 黄金聖闘士 が 居
!
"
た願いもノーカンになっているのか気になるので試すことにします。
⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮ ま ぁ ⋮ も の は 試 し っ て や つ で す ね。叶 え て も ら っ
?
?
﹁ちょっとデモンローズを出してもらっていいですか
﹁
?
?
いますが、他の人たちは﹃何言ってるんだこの子
﹁理由を聞かせてもらおうか。﹂
﹄って顔してます。
﹂
?
﹁私はキューベイに﹃毒で死なないな体にして欲しい﹄と願ったんで
﹁まぁ⋮そうだな。﹂
魔法少女としての能力が無くなったのか気になるじゃないですか
﹁えっと⋮簡単なことなんですけど、ソウルジェムが無くなったから
!?
もし何かあっても
﹂⋮マニゴルド⋮﹂
す。デモンローズだったら毒の耐性を調べるのには丁度いいと思う
んです。﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮だが⋮﹁いいんじゃねえの
ゴールドセイント
﹁デ モ ン ロ ー ズ は 短 時 間 な ら 大 丈 夫 だ ろ
?
?
黄金聖闘士が居るから対処ぐれーできるだろ。﹂
ジジイ、アテナサマ。﹂
﹁⋮それもそうだが⋮﹂
﹁いいよな
?
46
?
あ、はい。当然の反応ですよね。シオンは﹃なるほど﹄って顔して
!?!?
﹁⋮⋮⋮いいだろう。﹂
﹁えっと⋮大丈夫なら⋮いいと思います。﹂
﹁決まりだな。﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮わかった⋮体調に異変を感じたらすぐにデモンローズを
手放しなさい。﹂
﹁はい。﹂
結果から言います。ふつーに大丈夫でした。どうやら願いで叶っ
コ
ス
モ
たものについては魂が体の中に戻っても通用するようです。けれど
固定魔法の治癒能力についてはなくなっていました。
結 論。﹃毒 の 耐 性 が 無 駄 に 高 い 普 通 の 女 の 子﹄。ま ぁ 小宇宙 に 目 覚
めちゃってたり異世界から来たことを考えると全然普通ではありま
せんが。
せいせん
コ
ス
モ
⋮⋮⋮⋮ こ れ か ら ど う し た ら い い ん で し ょ う ⋮。も う す ぐ 女 神 ア
テナと、冥王ハーデスとの戦い、聖戦が始まります。いくら小宇宙が
せいせん
使えても戦いたくはありません。何よりこの世界で私は存在しない
はずの人間。聖戦の結果が変わってしまう可能性があります。
よくわからないけれど歴史を変えてはいけない気がします。それ
にこの世界で死ぬかもしれない⋮そうしたら2度と元の世界には戻
れません。そんなのは嫌だ。
どうしたらいいのかわからず私はずっと悩み続けるのでした。
47
従者になります
サーシャside
うーん⋮これはどうしたらいいんだろう⋮
何かいい案でも
﹂
えっと⋮提案なんですけど⋮﹂
蘭華ちゃんを元の世界に帰してあげたいけれど方法がない⋮
﹁あのね
﹁アテナ様
?
?
か
﹂
ん放り出すなんてことしないよ
コ
ス
モ
﹂
いや、もちろ
?
ス
モ
コ
ス
モ
力がありすぎて。だから小宇宙を自由に扱えるようにす
コ
ス
モ
力がありすぎて。だから小宇宙を自由に扱えるようにす
﹂
﹁ずいぶんと歯切れが悪いな。何か問題でもあるのか
﹂
どうするって言われましても⋮えっと⋮その⋮﹂
?
﹂
﹁なるほど﹂
﹁は
﹁⋮怖いから⋮﹂
﹁ならなんで歯切れがわりぃんだよ
﹂
﹁アルバフィカさん⋮別に問題があるわけじゃないんでけど⋮﹂
?
﹁え
﹁なるほど、一理ありますね。蘭華、どうする
るために候補生になるのがいいんじゃないかなぁと。﹂
るでしょ
﹁小宇宙に目覚めてしまっている状態は普通の生活を送るのに苦労す
コ
蘭華side
るために候補生になるのがいいんじゃないかなぁと。﹂
るでしょ
﹁小宇宙に目覚めてしまっている状態は普通の生活を送るのに苦労す
?
!?
﹁お、おう。んで、なんで候補生なんだ
﹂
で聖 域から放り出すことも出来ないじゃないですか
サンクチュアリ
﹁いつ帰る方法がみつかるかわからないじゃないですか。そんな状態
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮ほぇ
﹂
方法が見つかるまで聖闘士候補生になればいいんじゃないでしょう
セイントコウホセイ
﹁えっと⋮いい案かどうかはわからないですけど、元の世界に変える
?
?
?
?
48
?
?
!?
?
﹁そういうことか⋮﹂
セー ジ
上からマニゴルド、アルバフィカ、シオン。教皇は表情を変えませ
ん。無表情って怖い⋮
﹂
﹁えっと⋮候補生って訓練が辛すぎて死ぬ可能性もあるって聞いたか
ら⋮えっと⋮その⋮﹂
﹁あー⋮そういうことか⋮﹂
﹁どうしよう⋮﹂
﹂﹂﹂﹂﹂
﹁なら従者になるのはどうだ
﹁﹁﹁﹁﹁従者
﹂
?
﹂
?
﹂
?
ろうけどな。﹂
﹁蘭華、誰がいい
﹂
﹁決まりだな。なら誰の従者になるかだな。ぶっちゃけ誰でもいいだ
﹁遠慮はいらない。﹂
﹁それなら⋮でも⋮いいんですか
候補生の訓練様子を見てどうするか自分で判断するのはどうだ
﹁黄金聖闘士の従者になりしばらくここで過ごしたらよろしいかと。
ゴールドセイント
﹁セージ、それはどうゆう事ですか
教皇の言葉に皆ハテナです。クエスチョンマークが出てます。
?
てか⋮私が選ぶの
これって⋮
別に構わないが何故だ
﹂
?
?
﹁めんどいなぁ⋮シオンでよくねぇか
﹁私か
?
﹂
ゴメンナサイ。どの方でも恐れ多すぎて⋮
﹁え⋮ええっと⋮﹂
?
﹂
﹂
﹂
ばない扱いだったのに今日は呼び捨てで呼び合うほど気があったん
だろ
﹁⋮⋮⋮なるほど。﹂
﹁蘭華、それでいいか
﹁え⋮⋮あ、はい。﹂
﹁ってことだー。ジジイ、サーシャこれでいいか
﹁構わない。﹂
?
?
49
?
﹁んなもん1番蘭華と仲いいからだろ。昨日まではさんずけ&名前呼
?
?
﹁いいですよ。﹂
え⋮まじですか
ンの従者⋮
ア リ エ ス
ゴールドセイント
牡羊座の黄金聖闘士であり、将来教皇になるシオ
やばい⋮恐れ多いです⋮
これからどうなるのでしょうか⋮
50
?
出張料理人です
蘭華side
ラ イ ブ ラ
シオンの従者になってはや2ヶ月が経ちました。初めは失敗ばっ
﹂
かりでもう大変。シオンは笑って許してくれますが天秤座の童虎が
﹂
からかってくるものですからヤになっちゃいます。
ほうべいきゅう
﹁今日はどこに行くんだ
﹁今日は宝 瓶 宮です。﹂
﹁デジェルの所か。頑張れ。﹂
サンクチュアリ
﹁はーい。ご飯は作っておいたので温めて食べてくださいね
私はこの2ヶ月間 聖 域︵十二宮︶の皆さんに料理をふるまってい
アクエリアス
ゴールドセイント
ました。もともと一人暮らしだったので料理には自信があります。
ほうべいきゅう
ほうべいきゅう
ス
モ
コ
ス
モ
今 日 は 水瓶座 の 黄金聖闘士 の デ ジ ェ ル さ ん の 守 護 す る 1 1 番 目 の
はくようきゅう
宮、 宝 瓶 宮です。
コ
白 羊 宮から宝 瓶 宮まではすごく遠いんですけどね⋮
ま ぁ ⋮ 小宇宙 を 使 っ て 毎 回 何 と か し て ま す。こ れ だ け で 小宇宙 を
操れるようになる気がします⋮
︻道中何も無かったので省略です☆︼
﹁デジェル様ー。来ましたよー﹂
﹂
﹂
﹁お疲れ様。ここまで来てもらってすまないな。﹂
﹁いいえ。大丈夫ですっ
﹁そうか。ならよろしく頼む。﹂
﹁はい。えーっと⋮何がいいですか
と本を貸してもらってこっちがお礼言うべきなんですから。﹂
﹁だから大丈夫ですよー。気にしないでください。どっちかっていう
﹁すまなかったな。ここまで来てもらって。﹂
☆★☆★☆★☆★
いる。漫画と同じく読書家なんだなぁ⋮
希望を聞きながらご飯を作る。その間はデジェル様は本を読んで
?
51
?
?
!
サジタリアス
ゴールドセイント
ほうべいきゅう
そ ん な 話 を し な が ら 宝 瓶 宮 か ら 出 よ う と し た。す る と 下 か ら
﹂
射手座の黄金聖闘士のシジフォスが来た。
﹁あ、シジフォスさん。任務帰りですか
﹁はい
﹁え
﹂
別に私は構いませんけど⋮﹂
﹁明日は私も一緒にご飯を頂いていいかな
﹁は、はぁ⋮わかりました﹂
﹂
というか、今まで料理⋮どうしてたんだろう⋮
んが偶然いなかったらどうなっていたことでしょうか⋮
初 め て 食 べ た 時 は 黄泉比良坂 が 見 え て 大 変 で し た。マ ニ ゴ ル ド さ
よ も つ ひ ら さ か
見た目は綺麗なのに⋮なんであんな味になるのか⋮
アルバフィカ様の料理は凄いです。悪い意味で。
﹁⋮⋮⋮⋮⋮そうなんですよね⋮﹂ ﹁アルバフィカか⋮アルバフィカは料理が壊滅的だからな⋮﹂
﹁明日は双 魚 宮です。﹂
そうぎょきゅう
すごいスマイルです。爽やかですね⋮
﹁明日は何処に
﹂︵ニコッ︶
﹁そういえば、今日はデジェルだったんだな⋮蘭華。﹂
﹁構わない。﹂
﹁ああ。教皇に報告へ行く。デジェル、通らせてもらうぞ。﹂
?
聖戦開始まで後5年⋮⋮
せいせん
そんな調子のいいことを願わずにはいられなかった。
こんな感じで一日が過ぎていく。これがずっと続けばいいのに⋮
?
52
?
?
﹁そうか。ならよろしく頼む。﹂
?
任務デスっ
world魔法少女まどか☆マギカ
どこいったのよあのバカはっ
凛side
﹁⋮⋮っ
いうことは⋮
﹁も う 諦 め た 方 が い い ん じ ゃ な い の か い
よ。﹂
﹂
?
?
気配でもない。
﹁⋮⋮⋮⋮なに⋮⋮
﹂
魔女の気配でも使い魔の気配でもない。もちろん他の魔法少女の
その時だった。いつもとは違う気配を感じたのは。
だから蘭華をずっと探し続ける。見つけるまで。
もう一人になるのは嫌なんだよ⋮。お願い、出てきてよ⋮
互いだけだった。
私の里親もとっくの昔に他界しており、心の底から家族と言えるのは
仲が良かったので一緒の学校に行き、親友でいられた。蘭華の里親も
私と蘭華は同じ孤児院出身なのだ。別々の里親に引き取られたが
したらいいの⋮
私には蘭華しかいないんだよ⋮。蘭華がいなくなったら私はどう
くなかった。
逃げ足だけはどの魔法少女にも負けない蘭華が死ぬなんて信じた
︵いや。絶対信じない。蘭華は必ず生きてる。︶
後の攻撃で蘭華は⋮
キューベイの言うとおりもう絶望的なのかもしれない。魔女の最
﹁五月蝿いな。ちょっと黙って。﹂
生きているとは思えない
が消えても蘭華は行方不明のまま。結界が消えても姿が見えないと
蘭華が魔女の攻撃を受けて2ヶ月がたっていた。魔女を倒し結界
!
!
?
﹂
﹄
いつでも魔法が放てるように心構えをする。
誰なの
!?
?
53
!
﹃お主⋮⋮友に会いたいか
﹁
!?!?
﹄
﹃我々は冥王ハーデス様に忠誠を誓う死の神タナトスと眠りの神ヒュ
プノス。友に会いたいか
﹁会いたい。﹂
そんなの信じられるわけがない。けれど蘭華に会えるならど
ここどこ
いま何処にいるか。わからないですねぇ⋮
world聖闘士星矢
world魔法少女まどか☆マギカ end
﹁いいわ。矢神凛。あなた達に忠誠を誓う。﹂
んな方法だってとってやる。
神
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
﹃ならば我らに忠誠を誓え。さすれば会わせてやろう。﹄
?
はくようきゅう
☆ 白 羊 宮 ☆
﹁⋮⋮⋮⋮ほぇ
﹂
?
って言われても⋮来いよオーラが⋮
﹁任務だ。ついてきてくれるよな
﹂
﹁蘭華、今日から聖 域を出るぞ。﹂
サンクチュアリ
︻回想シーンstart♪︼
!?
?
すけど⋮
?
﹂
⋮⋮⋮⋮⋮たぶん﹂
﹁たぶん
﹂
﹁童虎も一緒だから大丈夫だ。たぶん
﹁たぶん連発されると怖いですよ
なのか聞いてないデスケドネ。
そんなこんなでシオンの任務についてきています。目的地がどこ
︻回想シーンend♪︼
﹂
﹁秘 密 だ。ま ぁ そ ん な に も 危 な い 任 務 で は な い か ら 大 丈 夫 だ。
﹁ついていきますけど⋮どこへ行くんですか
﹂
だいたい私はシオンの従者なのでついていくのは当たり前なんで
⋮⋮⋮くれるよな
?
!?
!
!?
54
?
疲れたよぅ
﹂
!
﹁ついたぞ。﹂
﹁やーっとついたぁ
﹁お疲れ様。﹂
セ イ ン ト
?
2、3日ずっと歩きっぱなしです。疲れない方がおかしい。いや、
聖闘士なら疲れないのかな
55
!
再会
蘭華side
どうやらなんか⋮中国⋮
なのかな
査ということじゃ。﹂
ス
モ
ごろうほう
肉まん的なの売ってるしチャイナドレ
﹂
﹁道理で童虎も一緒なんですね。﹂
モ
⋮アレですか
﹁我々はただの付き添いだな。﹂
ス
スペクターですかね
?
﹁なるほどー。﹂
コ
⋮⋮⋮⋮ん、不穏な小宇宙
?
うがな。﹂
セ イ ン ト
?
豪快に笑ってますね⋮
てか、フツーに戦闘になるかもしれないっていうことですよね
は戦えないんですけど⋮ダイジョウブナンデスヨネ
ちょっと心配になりながらも調査を始めた。
︻三日後︼
﹁見つかりませんね⋮﹂
﹁そうだな⋮﹂
﹁流石にちょっとこれは想定外じゃのう⋮﹂
私
黄金聖闘士が二人おるのじゃからそんなことはそうそうないじゃろ
ゴールドセイント
そ う に な か っ た ら い っ た ん 退 却 し て か ら 作 戦 を ね る の じ ゃ。ま ぁ
﹁それを調査するのじゃよ。スペクターならそのまま討伐。手に負え
聖 域で言う聖闘士みたいなものですね。
サンクチュアリ
スペクターとは|冥王ハーデスのひきいる兵士みたいなものです。
?
﹁このあたりで不穏小宇宙の気配がしたという報告があってのう。調
コ
﹁えっと⋮任務の内容は⋮
まぁ正確にはちょっと違うけれど、
中 国 な ら 童 虎 は 適 任 で す ね ー。童 虎 は 中 国 の 五老峰 出 身 で す し。
やっぱ中国⋮
スっぽいの着てる女性もいるし⋮
?
?
?
上から私、シオン、童虎です。
?
56
?
コ
ス
モ
三日も調査して不穏な小宇宙どころかおかしなところひとつ見つ
けられません。街はいたって平和。この時代にこんなにも平和な街
﹂
が存在するんだー⋮ってびっくりするほど平和です。
﹁どうします
た。
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮凛ちゃん⋮⋮⋮⋮
﹂
?
﹂
もうこのバカっ
なんでここに凛ちゃんが⋮
神凛でした。
﹁え
﹁蘭華を探してたんだよっ
⋮どれだけ⋮私が⋮﹂
!
?
普通にハグですから。決して私はレズではありません。
私たちは涙を流して抱き合いました。勘違いしないでくださいね
﹁ごめん⋮ごめんね凛ちゃん。﹂
いきなりいなくなって
そう、彼女は私と同じ魔法少女であり、家族のような存在の親友、矢
﹁蘭華⋮⋮⋮
﹂
とっさに腕をつかんだ。そのひょうしに彼女の帽子が頭から落ち
パシッ
﹂
今の声ってまさか⋮
?
﹁ちょ、ちょっと待ってっ
⋮⋮⋮ってあれ⋮
女の子にぶつかりました。シオンが。
﹁いや、こちらこそすまない。﹂
﹁あ、すみません。﹂
ドンッ
﹁どうするかのぅ⋮﹂
?
?
ことはたくさんあります。けれど今は再会できたことを素直に、心の
底から喜んだのでした。
57
!
!
!!!
!
?
どうやってこの世界に来たのか、今まで何していたのか⋮聞きたい
?
どうこ
一方的すぎるだろ⋮
セ イ ン ト
聖闘士side︵童虎︶
じゃがこ
な ん じ ゃ な ん じ ゃ。い き な り 感 動 の 再 会 と や ら を は じ め お っ た。
彼女が蘭華の言っておった親友の凛という娘なのかのー
こにいるはずのない存在ではなかったのか
﹂
﹂﹂﹂
全くわからないことばかりじゃ⋮
﹁﹁﹁ッ
﹁ほぇ
﹁これは⋮﹂
﹁シオン、お主も気づきおたか。﹂
?
コ
ス
モ
﹁この小宇宙は⋮﹂
スペクター
冥闘士じゃの。﹂
﹁そのようだな。そして⋮﹂
ス
モ
﹁これって近づいてきてませんか⋮
コ
﹁よくわかったのう。﹂
﹂
ス
モ
ち 主 は 闇 に 落 ち て い る よ う じ ゃ。光 を 欠 片 も 感 じ ん。お そ ら く
﹁今まで感じたことのないものじゃのう⋮ずいぶんとこの小宇宙の持
コ
まぁ上から蘭華、シオン、わしじゃ。今はどうでも良いがの。
?
﹁構えろ童虎。来るぞ。﹂
﹁そうじゃな。ならば行くかのっ
蘭華side
﹂
﹁ずいぶんと成長したもんじゃ。関心関心。﹂
﹁これだけで強力な小宇宙ですよ。イヤでも気づきます。﹂
?
﹂
箱に手をおいた。その瞬間、
パンドラボックス
そう童虎が言うとシオンと童虎は衣
﹁そうじゃな。ならば行くかのっ
!
!
クロス
﹂
﹂
﹂
衣箱の蓋があき、眩いばかりの光が二人を包み込んだ。
ア リ エ ス
﹁牡羊座の聖衣装着っ
クロス
!
!
気をつけてっ
!
ラ イ ブ ラ
童虎
!
﹁天秤座の聖衣装着じゃっ
﹁シオン
!
58
? !?!?
ちょ
私は従者ですよ
蘭華、お主も構えよ。﹂
聞いてないよ
ゴールドセイント
ス
モ
なんというイジメでしょう。
というか絶対に戦力として期待しないでクダサイ
﹁黄金聖闘士⋮⋮⋮﹂
﹂
お出ましのようじゃの。﹂
﹁油断するなよ
﹁お
☆★☆★☆★☆★
とは知らずに。
ませんでした。それが凛ちゃんとの決定的な決別のきっかけになる
童虎に突っ込むのに必死で凛ちゃんのつぶやきを聞くことができ
!
だいたい戦えないよっ
びっくりしました。小宇宙を使うことはできますが、操れないっ
コ
﹂
あくまで従者だ
!?
﹁何を言っておるんじゃ
﹂
﹁ほぇぇぇ
よ
﹂
!?
﹁全然冗談に聞こえない⋮戦力として期待しないでクダサイネ
﹁ははは。冗談じゃっ
!?
セ イ ン ト
アテナの聖闘士
てんかくせい
﹂
我が名は天角星、ゴーレムのアルバ
﹂
﹂
ジェ ミ ニ
確か原作で双子座のカノン、龍座の紫龍、
ドラゴン
どっかで見たことあるよう
!
﹁見つけたぞ
スペクター
さぁ我が拳の前にひれ伏すがいいっ
てんかくせい
⋮⋮⋮⋮⋮天角星、ゴーレムの冥闘士
あいつだ
思い出したぁぁぁぁ
ローリングボンバーストーン
な気がします。うーん⋮
﹁ゆくぞ
﹂
﹁ああぁぁぁぁあぁ
﹁な、なんだぁ
の
ろざんしょうりゅうは
廬山昇龍覇
にやられたヤツ
"
いいのかなぁ
すケド。
セ イ ン ト
ゴールドセイント
目 の 前 に い る の 聖闘士 最 強 の 黄金聖闘士 2 人 な ん で
?
て か 私 の 声 に び っ く り し て ア ル バ ル ト さ ん 止 ま っ ち ゃ い ま し た。
!
白鳥座の氷河に襲いかかったけどガン無視されて挙句の果てに紫龍
キ グ ナ ス
思い出した
!
!!
!"
?
"!!
ルト
!
は笑っていません。完全な戦闘モードです。
童虎は軽口を叩いているようですが隙がない。笑っていますが目
﹁わかっておるわい。﹂
?
!
!! !?
!!
!
59
!?!?
?
!!
!
?
!
!?
?
"
﹁蘭華⋮大丈夫かの
﹂
﹁は、はい。大丈夫です。﹂
﹁ならよかった。下がっておれ。﹂
﹁はい。﹂
ゴールドセイント
﹂
サイコキネシス
あ ー ⋮ そ っ か。そ う い え ば 念 能 力 使 え る ん
アテナの聖闘士っ
セ イ ン ト
私 は 凛 ち ゃ ん を 連 れ て 下 が る。凛 ち ゃ ん は 黄金聖闘士 2 人 を 見 た
まま動かない。どうしちゃったの
﹁と、とりあえず死んどけやっ
ブォォオオン
!
?
るから。
サンクチュアリ
ならば受けろっ
︶
!?
ア リ エ ス
ゴールドセイント
ローリングボンバーストーン
﹂
﹂
"!!
念 能 力については聖 域で最高と言われる牡羊座の黄金聖闘士がい
サイコキネシス
﹁どうやら念能力を使えるようだが⋮私の方が上のようだ。﹂
⋮けれど相手が悪いね。だってこっちは⋮
だっけ。紫龍に瞬殺されてたからわかんなかった。
岩 を 持 ち 上 げ た ぁ
!
人差し指をあげただけで飛んできた岩をキャッチして⋮
﹁君に返すよ。﹂
ドゴォォォオオン
﹁くそっ
ゴールドセイント
!"
︵ハイスペックにもほどがあるよね
⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮投げ返した。
!!
ど童虎とシオンは光速で動くため全く当たらない。
﹂
⋮⋮⋮もうあれだね。アルバルトさんが可哀想に思えてきてしま
﹂
戦闘終わりました。
﹁ぐわぁぁぁぁああ
⋮⋮⋮⋮あれ
っ
いました。だって一方的なんだもん⋮
﹂
スペクター
﹂
!
﹁ちくしょう
っ
﹁ならば冥闘士よ。冥界に帰れっ
ろざんひゃくりゅうは
"
?
!!
!
!!
"
!!!
60
?
!?
!
光速で動く黄金聖闘士に通用すると思うてか
?
!
あーそれな。いくら技を放っても当てなければ意味がない。けれ
﹁ふっ
!
廬山百龍覇
"
スターダストレボリューション
﹁
"
というか⋮一方的すぎるだろ⋮
凛ちゃんはずっと怖い顔をしている。が⋮童虎とシオンの戦闘を
見るのに夢中になっていた私は気づくことができなかった。
61
主と家族。
蘭華side
﹁なんじゃ⋮⋮ずいぶんとあっけないのぅ...﹂
﹁いや、別にそれならそれでいいと思うんですけど...﹂
﹁安全なのが一番だからな。﹂
本当にずいぶんとあっけなかったと思います。でも原作でもあっ
すけど...
﹂ ﹂
?
すっごく凛ちゃん怖い顔をしてるんで
けなかったのでこれでいいのかな
﹁凛ちゃん。大丈夫だった
﹂
﹁...............﹂
﹁凛ちゃん
どうしたの
﹁蘭華。こっち来て。﹂
﹁ほぇ
﹁いいから﹂
?
......どうしたのかなぁ
?
ゴールドセイント
黄金聖闘士2人を派遣する任務なのにこんなにも敵があっけないの
は違和感があります。
なんて考えていると凛ちゃんは私の腕をつかんで引っ張って連れ
ていかれました。連行されたました。
セ イ ン ト
聖闘士side︵シオン︶
スペクター
ゆく
流石にこの姿を一般人
おかしい。何か違和感がある。童虎も同じように思っているのか
考え込んでる。
﹁童虎、とりあえず考えるのは後にしないか
多勢に見られるのはまずい。﹂
﹂
﹂
﹁あ、そ う じ ゃ の。な ら ば 一 旦 こ こ か ら 離 れ る か。蘭 華
なっ
?
!
?
ぞ.........って...蘭華はどこに行きおった
﹁え
!?
62
?
童 虎 と シ オ ン は 話 し 合 っ て い て こ ち ら を 見 て い ま せ ん。教 皇 が
?
?
い つ の 間 に...全 く 気 づ か な か っ た。他 に 冥闘士 が 残 っ て い な い
?
かという可能性を考慮して周りに意識を向けていた。そのため蘭華
ス
モ
﹂
たちが移動してもすぐに気づけたはずなのだ。だが実際はいつの間
モ
﹂
にか2人がいなくなっている。なにかあったのか...
﹂
ス
モ
シオンよ。﹂
嫌な予感が胸をよぎる。
﹁...
﹁なんだ
コ
﹁蘭華に小宇宙の絶ち方を教えたのか
ス
﹁いや...全く教えていないが...﹂
コ
コ
﹁だが蘭華の小宇宙を欠片も感じられん。どうなっておる
﹁わからん...だが嫌な予感がする。﹂
油断するなよ。﹂
︶
﹁ふ た 手 に 別 れ て 探 す と す る か の。見 つ け た ら 小宇宙 を 飛 ば し て く
れ。﹂
﹁わかった。なら後でなっ
﹁わかっておるわい。シオンも気をつけよ。﹂
﹁ああ。﹂
そう言うと私と童虎はふた手に別れて蘭華を探す。
﹂
︵............どこにいったんだ...無事でいてくれっ
蘭華side
﹁ちょ、凛ちゃんどうしたの
凛ちゃん
どういうこと
﹂
﹁蘭華。これから私の主のところまで行くから。ちょっと揺れるから
ているうちに凛ちゃんが立ち止まった。 急にいなくなって心配しているだろうと考えている。なんて考え
︵シオンと童虎...心配してるだろうなぁ...︶
い。
私は凛ちゃんに連行されている。声をかけても返事をしてくれな
?
!
!
?
しっかりつかまっててね。﹂
﹁え
?
いない。だから私が守ってあげる。私の主は争いのない世界を作っ
てくれる。だから蘭華。
63
?
?
?
?
﹁さっきの戦闘を見ててやっぱり思ったんだよ。蘭華は戦いに向いて
?
一緒に行こう
﹂ ﹂
﹁凛......ちゃん......
﹁いいから。ね
﹂
あいつらなんてどうでもいいでしょ
﹁で、でも...シオンと童虎たちが心配するよ。﹂
﹁.........っ
﹂
どうしちゃったの
﹂
蘭華には私だ
けがいればいい。私にも蘭華だけがいればいいの。だって私たち...
家族でしょ
﹁凛ちゃん...
﹂
なかった。
﹁蘭華っ
﹂
こっち来てっ
﹂
蘭華をどこに連れていく気だ。﹂
蘭華っ
﹁シオンっ
﹁チッ
﹂
蘭華は渡さな
凛ちゃん、落ち着いて。どうしちゃったの
﹁関係あるよっ
いっ
﹂
﹂
話が噛み合わない。凛ちゃんが何を言っているのか全然理解出来
?
............貴 様 が 蘭 華 を た ぶ ら か し て い の か
﹁蘭華......
﹁あんたには関係ない。﹂
﹁まてっ
!
﹁蘭華っ
﹂
﹂
貴様が気安く蘭華の名を呼ぶなっ
その子から離れろっ
﹁だまれぇ
﹂
れるだけの種族とは違うっ
﹁滅ぼされるだと...
﹂
蘭華は貴様ら滅ぼさ
?
!!
!!
滅ぶがいいっ
﹂
﹂
冥王ハーデスが主
﹁凛ちゃん...
? !!
人の身に神格を落とした愚かな女神とともに
そんな馬鹿な...
!
?
はすべて滅ぶのだっ
﹁もうすぐ主の冥王ハーデス様が復活なされる。そうすれば貴様たち
?
!
!!
放ってあげる。そしたらもうずっと一緒だよね
﹁大 丈 夫 だ よ 蘭 華。す ぐ に あ い つ を 殺 し て あ い つ の の 呪 縛 か ら 解 き
!
!
﹁凛ちゃん
?
!!
?
!?!?
!!
64
?
?
?
?
!!
?
?
!!
!!
!
!
!
こんな凛ちゃんを見たことがない。戸惑いその場から私は動けな
くなった。
65
魔法冥闘士
蘭華side
いい加減死んでよね
なんで⋮こんな事に⋮
﹁しつこいなっ
﹁くっ⋮⋮﹂
ッ
﹂
﹂
!!! !!!
﹁凛ちゃんっ
﹂
﹂
すぐにこいつを殺すからっ
もうやめて
﹁蘭華⋮⋮まってて
﹁凛ちゃん⋮⋮﹂
﹂
!!
!!
﹂
スターダストレボリューション
い。
﹁
﹂
っ
﹂
蘭華は渡さないっ
﹁きゃぁぁぁぁぁぁああああ
﹁凛ちゃぁーん
﹁﹁
!!
﹂﹂
﹂
﹂
!!
私の主は冥王ハーデスだって
今の攻撃をくらって動けるはずが⋮⋮⋮
﹁くっ⋮⋮⋮負けないっ
!!
﹁⋮⋮⋮うふふ。言ったでしょ
﹁な
!
﹂
!!
がっている。
!
﹂
サープリス
マホウスペクター
魔法少女と冥闘士の力を合わせもつ戦士、魔法冥闘士よっ
スペクター
﹁私は冥王ハーデスに永遠の命を頂いたっ
じゃない
﹁そんなことが⋮⋮
!
﹂
!
今の私はただの魔法少女
そして耳には凛ちゃんのソウルジェムがイヤリングの形でつりさ
のプロテクター。まさしく冥王ハーデスの兵士、冥闘士の冥 衣だ。
スペクター
凛ちゃんが上着を脱ぎ捨てる。その下には|漆黒の闇のような色
?
!
!!!
"
止める手立てはないのか⋮このままだと二人とも無事では済まな
!
!!
攻撃がクリスタルの壁にぶつかり、砂埃と爆音が響く。
ドッゴオオォォォォォォォオオオン
サンダートルネード
﹁
クリスタルウォール
"
ッ
﹁
"
目の前で繰り広げられている死闘。それは私の親友と憧れの人。
!!
!!
"
!?!?!?!? !?
66
!
"
"
!!
﹁死ねっ
セ イ ン ト
アテナの聖闘士っ
ライトニングスパーク
!!"
﹂
ドゴオオォォォォォォオオオン
﹂
﹁ぐわぁぁぁぁぁあああ
﹁シオオォォォン
!!
ッ
"
﹂
!!
だった。
﹁蘭華。そこをどいて
ずっと一緒だよ。﹂
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮やだ。﹂
﹁蘭華⋮⋮⋮
?
いったいどうしたの
﹂ ?
﹂
﹂
!
私は凛だよ
﹂
!
蘭華のたった1人の家族だよ
﹂
?
すなんて絶対に言わないっ
﹁な、何言ってるの
?
お願い、目を覚ましてっ
﹁シオンっ
蘭華っ
無事かぁ
!!
﹁蘭華⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
い
﹂
﹁人を殺してまで一緒にいようなんていう人は私の知り合いにはいな
?
﹁あなたは凛ちゃんじゃない。凛ちゃんはどんな事があっても人を殺
﹁蘭華
て絶対にしない。シオンは私が守るっ
﹁私はあなたとは一緒に行かない。シオンにトドメをささせたりなん
凛ちゃんと視線を合わせてもう一度言った。
凛ちゃんは戸惑うように視線を私に向けてくる。私は正面からの
﹁蘭華
﹁絶対にどかない。シオンにとどめをささせたりなんてしない。﹂
?
そいつにトドメをさすからね。そしたらもう
私はシオンに駆け寄る。シオンのダメージは大きく戦闘は不可能
!!
!!!!
!
﹂
私はずっと蘭華の家族だから。﹂
﹁凛ちゃ⋮⋮⋮﹂
ゴオオォォォォオオ
強風が吹いて思わず私は目をつぶった。目を開けるとそこにもう
!
蘭華っ
﹂
凛ちゃんの姿はなかった。
﹁シオンっ
!!
!!
67
?
!?!?
﹁チ ッ ⋮⋮⋮ 蘭 華、ま た ね。今 度 会 う 時 は 違 う 返 事 を 期 待 し て る よ。
!!
!!
!!
!
﹂
﹁童虎⋮⋮﹂
﹁っ⋮⋮⋮
﹂
﹁そうじゃの
﹁はいっ
ならば急ぐぞっ
﹂
!
﹃凛ちゃんを救う﹄
けれど私の心は一つに決まっている。
らいいのかわからない。
親友に対する疑問と悲しみがごちゃごちゃになった心。どうした
⋮⋮⋮⋮⋮⋮凛ちゃん⋮どうして⋮
!
﹁童虎。ここから離れてシオンの手当てをしましょう。﹂
い。すぐにこの場を離れ治療する必要があった。
童虎はシオンの怪我をみて息を飲んだ。早く手当をしないと危な
!
待ってて凛ちゃん。必ず元の優しい凛ちゃんに戻してあげるから
ね。
68
!!
セ イ ン ト セ イ ヤ
聖闘士候補生
word聖闘士星矢︻ハーデス城︼
凛side
次は必ず聖闘士共から救い出してみせるっ
セ イ ン ト
﹁友を救い出すのに失敗したようだな。﹂
﹁タナトス⋮⋮っ
﹁そのいきだ。﹂
﹁ヒュプノス。﹂
﹁だが何度も機会があると思うな。﹂
﹁⋮⋮わかっているわ⋮﹂
ずっと一緒だよ。
﹂
絶対救ってみせる。そしたらもう私は1人じゃない。蘭華もそれ
!
サンクチュアリ
﹂
?
﹁はい。﹂
﹂
それに
?
?
こと。
﹁なるほどな⋮して結末を教えてくれるのか
﹁それは⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
﹂
う文化の一つにこの世界が存在すること。そして結末も知っている
私はセージとサーシャにすべてを話した。私の世界では漫画とい
﹁どういうことだ
﹂
﹁結末を知っているだと
﹁それは⋮⋮⋮⋮この聖戦の結末を知っているからです。﹂
せいせん
﹁⋮⋮なぜそう断言できる
⋮まだ冥王ハーデスは復活していないはずです。﹂
黄金聖闘士を一撃で倒せるほどの力を得るものでしょうか
ゴールドセイント
﹁し か し ⋮ い く ら 冥 王 ハ ー デ ス に 忠 誠 を 誓 っ た か ら と い っ て
﹁そうか⋮友が冥闘士になっておるとはな⋮﹂
スペクター
た。シオンは怪我が重症で動けないため代理としてきたのだ。
私は今教皇の間でアテナことサーシャと教皇セージと対話してい
﹁以上が今回の任務の報告すべてになります。﹂
蘭華side
word聖闘士星矢︻聖 域︼
セ イ ン ト セ イ ヤ
を望んでいるんだよね
?
?
69
!
?
セ イ ン ト
﹂
﹂
﹁言いづらいだろうな⋮聖戦で聖闘士全員が無事とは言えないだろう
からな。犠牲者が出るのだろう
﹁それはその⋮⋮⋮はい⋮⋮﹂
﹂
﹂
﹁そうか⋮⋮だがこれだけは聞かせてくれないか
﹁は、はい
﹂
﹁我々はハーデスに勝利するのだろうか
﹁は、はい
﹁ならばよい。﹂
教皇は頷いた。
私は疑問に思っていたことを聞くことにした。
ることは可能なのでしょうか
﹂
誓ったからといって黄金聖闘士を一撃で戦闘不能にするほど力を得
﹁えっと⋮さっきも言ったんですけど、いくら冥王ハーデスに忠誠を
?
?
戦っていなかったのではないか
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮そういえば⋮⋮﹂
﹂
?
か
﹂
てんもうせい
﹁それじゃ⋮⋮どうやって童虎は私たちの元までたどり着いたんです
イバーンのラダマンティス相手に苦戦した原因である。
原作で牡羊座のムウ、獅子座のアイオリア、蠍座のミロが天猛星、ワ
すことが出来ない。
それはその結界の中では聖闘士は本来の実力の十分の一も力を出
冥王ハーデスの結界。
て、シオンはそれに引きずられたのだろう。﹂
﹁その場所は冥王ハーデスの結界の中だ。凛という少女が瞬間移動し
テ レ ポー ト
﹁⋮⋮⋮ そ の こ と だ が ⋮ シ オ ン は 全 力 ど こ ろ か 半 分 以 下 の 力 で し か
?
﹁サーシャちゃん⋮⋮﹂
可愛い天使のサーシャちゃんがアテナらしいことをしてい
﹁私 は 幼 い で す が 女 神 ア テ ナ で す。こ れ ぐ ら い の こ と な ら で き ま す
よ。﹂
おお
た。ちょっと感動。
!
70
?
?
!
﹁それは私が力を使って瞬間移動させたのです。﹂
?
﹁そうなんですか⋮⋮﹂
﹂
﹁して蘭華。お主はどうするのじゃ
﹁どうするとは
﹂
?
⋮⋮⋮⋮教皇様、アテナ様。お願いがあります。﹂
﹂
﹁それはっ
ねばならん。﹂
﹁凛という少女は我々の敵になった。地上の平和を脅かす存在は倒さ
?
﹂
!
している。
?
﹂
﹂⋮⋮﹂
少しでも皆さんの力になりたいんですっ
お願いしますっ
﹁⋮⋮⋮⋮よかろう。﹂
﹁ありがと﹁ただしっ
﹁⋮⋮⋮は、はいっ
﹂
﹃絶対に世界を変えるっ
﹄
私は毒の耐性があるということで魚座の聖闘士候補生になった。
その言葉を聞くと教皇は満足そうな笑みを浮かべた。
!
死ぬなんて⋮そんなの嫌なんです。だから私は微々たる力ですけど
は必要なんです。そして⋮⋮私はこの聖戦の結末を変えたい。皆が
けれど私には力がない。実力行使をするつもりはありませんが力
目です。
まった⋮⋮その道を正すのは親友である⋮いいえ、家族である私の役
﹁私 は ⋮ 凛 ち ゃ ん を 助 け た い ん で す。凛 ち ゃ ん は 道 を 踏 み 外 し て し
﹁理由を聞かせてもらえるか
﹂
サーシャはビックリしたような顔。セージは﹃やはり﹄という顔を
﹁⋮⋮⋮⋮⋮
﹁私を聖闘士候補生にしてくだい。﹂
私はセージとサーシャの顔をじっと見つめて言った。
﹁なんだ
!
﹁一つだけ約束してくれ。﹃死ぬな﹄﹂
!
!!
!!
!
71
?
聖戦前∼聖闘士候補生∼
﹂
﹂
とりあえず⋮暇人だね。
︻2年後︼
﹁このおっ
﹂
にゃぁ
﹁あまいっ
﹁ほぇ
!! !!
水瓶座のデジェル様。林檎を食べてる蠍座のカルディア。
⋮⋮⋮⋮うん。なんで黄金聖闘士って暇人ばっかなのかな
と心の中で突っ込んだ。凍結拳使えないってのぉ
﹄
!!
ダイヤモントダスト
という、凍結拳の基本技なら使えるように
間違えると氷付けにされて⋮ある意味1番スパルタだった。今は
!!
デジェル様ってこんなキャラだったのか⋮というか﹃カミュかっ
デジェル様から﹃絶対零度とは⋮⋮﹄とか言われた時は眩暈がした。
金聖闘士が暇すぎるのかいつも私に組手やら技の伝授やら⋮⋮
私はアルバフィカ様か教える魚座の聖闘士候補生なのだが、他の黄
?
蟹座のマニゴルド。読書をしながらもチラチラとこちらを見ている
なんかいわれればいいんだ⋮と少々呆れ気味の視線を向けてくる
﹁は、はい⋮﹂
﹁脇が開きすぎだ。後上半身の動きに下半身がついてきてないぞ。﹂
﹁いったぁ⋮⋮⋮﹂
て受身が取れない⋮
当たらない⋮。突っ込んだら腕を取られて投げられました。速すぎ
今射手座シジフォスと組手をしていた。が⋮全然こちらの攻撃が
!!!
積尸気冥界波
で黄泉比良坂に飛ばされています。もう強制。つ
マニゴルドにいたっては⋮技の伝授とか言ってたけど、ぶっちゃけ
"
いでに蟹座の技は使えません。使えるようになったらびっくりだよ
"
カルディアは結構ノリノリでした。
72
!?
なった。
"
"
!!
うん
いきなり
スカーレットニードル
を放ってきた時は死ぬ
"
ニカンガエテイルンデショウネ
﹁少し休憩しよう。﹂
﹁は、はい⋮⋮﹂
つとか⋮小宇宙すげぇ⋮
﹂
﹁そういえば⋮聞きたいことが二つあるんですけど⋮﹂
﹁なんだ
?
るわけが⋮
﹁ああ。イタリアだ。﹂
ガ
サ
ス
まーじーかぁ
ってことは⋮天馬星座の聖闘士になるテンマ
ペ
返ってきました。はい、秘密にしなくていいんですかね
イタリア
﹂
がもうすぐ来るってことですか
﹁で、二つ目の質問とは
﹁えっと⋮⋮⋮その⋮⋮
﹁気になるか
﹁はい⋮⋮﹂
﹁
﹂
﹂
!!
ってえ
?
﹁インキュベーターは殺してしまったよ。﹂
?
?
基本任務は秘密なものが多い。聞いてみたけれど答えが返ってく
﹁童虎って最近見てないんですけど、どこいったんですか
﹂
気がついたら1時間以上組手をしていました。体力がここまで持
?
やっぱり黄金聖闘士がおかしいんですよね。初心者に技放つとかナ
とそんな話を教皇セージにさりげなーく言うと頭を抱えてました。
言っていましたが普通に拷問ですね。
か と 思 い ま し た。ス カ ー レ ッ ト ニ ー ド ル は 慈 悲 深 い 技 と か ミ ロ が
"
キュゥべいがどうなったのかな⋮⋮って⋮﹂
?
!?
?
カルディアさらっととんでもないカミングアウトしま
魔法少女になってよ﹄とかサーシャに言うんだもんなぁ⋮﹂
⋮⋮はぃ
したよね
!?
というかキュゥべい⋮アテナに勧誘とか⋮バカなのかな
?
!?
73
!
?
﹁しゃーねーだろ。あの猫兎、すべて話し終わった後に﹃僕と契約して
!!
﹁そうなんですか⋮⋮﹂
﹁すまない。﹂
﹁いや、なんで謝るんですか⋮。別になんとも思ってませんけど。﹂
﹂
だいたい見た目はあんな可愛い生物を簡
﹁普通は﹃私がトドメをさしたかった﹄とか言うところだろ。﹂
﹁それはないっ
即答です。絶対無いっ
単に攻撃できるわけないでしょうが。
とりあえず⋮訓練ガンバロ。
74
!
!
なんかデジャブ
休憩終了。なら組手をやりましょうかね⋮
﹂
と思いましたが魚座のアルバフィカ
どうしました
様が呼びに来ました。
﹁蘭華﹂
﹁アルバフィカ様
?
わかりました⋮﹂
﹁オネガイシマス。
﹂
えっと⋮それで一体なんの御用でしょうか
﹂
たまに︵いつも︶死にかけますけど⋮﹂
?
﹁その点は⋮私から皆に言っておく。﹂
?
﹂
﹁ほぇ
﹁わかりました⋮⋮えっと⋮それで二つ目の用事というのは
﹂
﹁アルバフィカと共にロドリオ村に向かって欲しい。﹂
﹁ロドリオ村
﹁そう、薬師の島と言われこの聖域も利用している場所だ。﹂
﹂
あー⋮外伝のアレですか。冥闘士がロドリオ村に住み着いて︵
いるやつですね。
︶
いいですけど⋮アテナが料理って⋮必要あるんですかですね
しいのだ。﹂
﹁用事は二つあってな。一つはアテナ様に料理を教えてさしあげて欲
?
﹁えっと⋮⋮楽しいデスヨ
﹁蘭華。ここでの生活はどうだ
﹁魚座の聖闘士候補生、蘭華。ただ今参上しました。﹂
︻道中とく何も無かったので省略☆︼
﹁は、はい
﹁今から教皇の間に行ってくるように。教皇様から伝達だ。﹂
?
思いませんが⋮﹂
﹁⋮アルバフィカの料理の腕を知っているだろう
﹁あー⋮⋮⋮⋮ハイ。﹂
﹂
?
75
?
﹁アテナ様の望みだからな。ならば頼む。﹂
?
﹁わかりました。しかし⋮私はまだ聖闘士候補生。お役に立てるとは
?
?
?
?
﹁それに⋮なんだか嫌な予感がしてな。だがアルバフィカは自らの血
のせいで仲間と共闘ができん。よって毒の耐性のある蘭華について
いってもらいたいのだ。﹂
﹁了 解 し ま し た。け れ ど ⋮ 私 を 戦 力 と し て 期 待 し な い で ク ダ サ イ ネ
﹂
なんだろう、このデジャブは。なんかこんなこと前にもあったなぁ
⋮
﹁わかっておる。できる範囲のことで良い。アルバフィカの力となっ
てやってくれ。﹂
﹁はい。﹂
︻双魚宮にて︼
﹁今 回 の 任 務 に は 蘭 華 も つ い て き て も ら う。も う 聞 い て い る と 思 う
が。﹂
﹁はい。ロドリオ村ですね。﹂
﹂
顔が赤いのですが
?
﹁ああ。だがまだ蘭華は聖闘士ではない。無理はするな。﹂
﹁わかってます。守ってくださいね
﹁な⋮⋮ああ。わかっている。﹂
アルバフィカ様どうしたのでしょうか
⋮ごはん熱すぎましたかね
⋮⋮
?
﹂
?
か歴史などが変わらないといいですけど
大変なので。けれど今回は私というイレギュラーな存在がいる。何
そうと決まればさっさと寝ましょう。どうせロドリオ村では結構
﹁ああ頼む。﹂
﹁わかりました。ご飯はお弁当にしましょう。﹂
﹁明日の明朝だ。﹂
﹁いつ出発するんですか
とは自分で守れるようにしましょう。
まぁ守ってくださいっていうのは意外と恥ずかしいので自分のこ
?
?
76
?
聖戦前∼薬師の島で∼
薬師の島とペフコ
︻次の日︼
﹂
﹁アルバフィカ様。ちょっと待ってくださいっ
﹁なんだ
﹁あの⋮歩くの早すぎです。﹂
﹁そんなことないと思うが⋮﹂
着てるんですか
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮任務だからだろう
﹁⋮⋮⋮⋮そうなんですか⋮﹂
﹂
﹂
ゴールドクロス
﹁ありますから。まず歩幅が違いますから。というか⋮黄金聖衣何で
!
すし。
タッタッタッタッ
な顔してます。
アルバフィカ様だーーッ
!
ズベシャァァアーー
ようとして⋮⋮⋮
少年のようです。少年はアルバフィカ様に近づいてマントに触れ
﹁あーー
﹂
誰かが後ろから走ってくるようです。アルバフィカ様すごい微妙
!
衣装着しっぱとか⋮まぁいいんですけどね。周りは皆聖域関係者で
任務だからといって真昼間、なおかつ人通りの多いところで黄金聖
?
?
﹂
!
ロドリオ村の薬師の弟子ちゃんです。
﹁まさかとは思うが⋮教皇様の言う案内人とはお前か
﹂
オイラが教皇様に頼まれた案内人ですっ
﹁案内人なんていたんですか
﹁ああ。﹂
﹁はいっ
よろしくお願い
?
!
?
﹂
呆れた様子のアルバフィカ様。あー。ペフコでしたか。薬師の島、
﹁私に触れるなと言ったはずだぞペフコ
すっ転びました。それはもう豪快に。痛いだろうなぁ⋮
!
77
?
!!
!
いたしますっ
﹂
オイラの名前覚えていてくれたんですね
カ様が苦手とするタイプだ。
﹂
﹁あ、アルバフィカ様っ
感激ですっ
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
︻薬師の島︼
アルバフィカ様⋮なんか反応してあげましょうよ⋮⋮
!
で完全粉砕しましたけど。久しぶり
"
ピラニアンローズ
黒薔薇
"
のんびりしたい気分です。﹂
?
ん
﹂
﹁わかっていますよ。でも任務が終わったらちょっとぐらい遊びませ
﹁蘭華。私たちは任務で来ているのだぞ
﹂
﹁ここが薬師の島⋮⋮⋮広いんですねー⋮⋮自然もいっぱいですし、
にアルバフィカ様のドヤ顔を見ました。
アルバフィカ様が
船酔いだけでも大変なのに、船が大岩にぶつかりそうになりました。
船 の 中 で は 大 変 で し た。そ う い え ば 私 ⋮ 船 酔 す る ん で す よ ね ⋮。
!
⋮⋮⋮ す ご い 元 気 な 子 だ な ぁ。ハ イ テ ン シ ョ ン だ ね。ア ル バ フ ィ
!
﹁あ、もうすぐ着きますよ。ルコ先生はこの辺でいつも薬草をくばっ
ているんですよ。﹂
﹁へー⋮⋮﹂
そろそろルコ先生と対面かー。私はどうなるか知ってるけど⋮ア
ホラ
あれが先生です。﹂
ルバフィカ様がどんな反応をすることか⋮
﹁あ
﹁なっ
﹂
お世話になったようですな。﹂
﹁ああ貴方が聖域からの遣いの方か。ルコと申します。不肖の弟子が
!
代魚座の黄金聖闘士ルゴニスにそっくりなんですから。
ています。仕方ないですよね。ルコ先生はアルバフィカ様の師匠、先
アルバフィカ様は立ち止まりありえないものを見たような顔をし
!?!?
78
!
﹁むー⋮⋮いじわる。﹂
﹁だめだ。﹂
?
!
ペフコは﹃え
なに
﹄みたいな顔をしている。事情を知らない人
!?
﹂
ど こ か ら か 視 線 を 感 じ ま し た。悪 意 が ま じ っ て い な い の で
﹁⋮⋮ふぇ
はそうですよね。私も漫画で知ってただけなんですけどね。
!?
試しに
?
こんなの漫画の展開にはなかったはずなのですが⋮
もしかして私がここに来たことによって変わってしまったのかも
でしょう
視線をそちらに向けてみるとすぐに消えてしまいました。なんなの
悪意はないようなのですが⋮まっすぐこちらを見ている
ショックで固まっているアルバフィカ様は気づかなかったようです。
?
?
知れません。視線の持ち主が敵ではないことを願いましょう。
79
?
ルコと鈴蘭
﹂
なんだろう⋮いや予感がする。思考の沼に沈みかけた時ルコが問
﹂
いかがなされましたか
いかけた。
﹁客人よ
﹁アルバフィカ様
?
﹂
?
ていた。
どうした蘭華。﹂
﹁して、ペフコが聖域で何かしでかしましたかな
﹁いいえ。ペフコは関係無いですよ。﹂
﹂
敬もしたであろう。だが全てを知っている私は何も言えずうつむい
ルコは薬で治す。この後の展開を知らなければ感動しただろうし尊
漫画と同じ展開だった。疫病にかかった女性がルコに助けを求め
︻3時間後︼
そういうので精一杯だった。
﹁⋮⋮⋮⋮⋮いいえ。なんでもありません。﹂
そう思っているのに胸が痛くなった。
踏み入れていい話ではない。アルバフィカ様の大切な思い出だから。
私は声をかけてどうするつもりだったのだろう⋮私が簡単に足を
﹁なんだ⋮
﹁アルバフィカ様⋮⋮⋮﹂
ゆえ⋮しばしそこでお待ちください。﹂
﹁そうですか⋮申しわけない。私の大事な患者たちが待っております
﹁ええ。私の⋮⋮師であり⋮大切な方です。﹂
﹁知人ですか
﹁し、失礼した。あまりに知人と似ていたもので⋮﹂
ペフコも心配そうな顔をしている。
?
?
座の黄金聖闘士、アルバフィカ様です。﹂
?
﹁今この島には凶星が輝き災厄を予兆しています。その調査にまいり
﹁そうですか⋮この島には何をしにいらっしゃったのですか
﹂
﹁あ⋮そうですね。私は聖闘士候補生の蘭華と申します。こちらが魚
﹁そういえばお2人のお名前を伺っていませんでしたね。﹂
?
80
?
ました。
で す が ⋮ 貴 方 を 見 て 分 か ら な く な っ た。少 し 整 理 が 必 要 の よ う
だ。﹂
私 た ち は 話 し な が ら 移 動 し ⋮ 鈴 蘭 の 園 に 着 い た。真 っ 白 な 鈴 蘭。
綺麗なのに⋮今は死へといざなう毒花にしか見えなかった。
聖闘士side︵アルバフィカ︶
﹃私にとって貴女がたを癒すのは生きがいです。全ての人の心からも
体からも病たる毒は消えればいい。こうして人々が手をとり合える
ように﹄
ルコ殿の言葉が頭からはなれない。外見は瓜二つなルコ殿。しか
﹂
なんだ⋮視界がぼやける。この鈴蘭のせいか⋮
し内面は似ても似つかない。
⋮
﹁似ていらっしゃるという知人とは
らぬ孤独な人間。
それが魚座の宿命⋮⋮
﹁アルバフィカ様⋮⋮﹂ ﹂ ﹁それは魚座の毒の血の事をおっしゃっているのですか
﹁
なぜ⋮それを知っている
﹂
﹁先代魚座⋮ルゴニスは私の兄です。﹂
﹁なっ
﹂
そう、私と同じように他人と触れ合えない存在。人のぬくもりを知
れられない孤独な方でしたから。貴方とは違う。﹂
﹁いえ、それも勘違いでした。あの方は⋮病を癒すどころか他人に触
?
?
と思うのです。﹂
?
に。﹂
﹁はい。私なら貴方様の毒の血を癒すことができます。その孤独と共
﹁救う⋮⋮だと⋮
﹂
﹁兄は救えなかった。だからこそ貴方様だけでも救って差し上げたい
!?!?
81
?
?
そう口にしたいのに言葉にならない。
?
!?
そんなことが可能なわけがない。わかっているのに⋮⋮孤独から
開放されたいと思っている自分がいた。
﹁私の薬草で貴方をその孤独から解放してさしあげましょう。﹂
ルゴニス先生⋮⋮
鈴蘭とルコ殿の言葉によって私は意識を保てない。
ダメだとわかっていても私は意識を手放した。
82
毒薔薇の聖闘士
蘭華side
﹁アルバフィカ様ぁ
﹂
ヤバいじゃんっ
と手を伸ばす。 てダメじゃん
い。
パシッ
﹂
ペフコはずっとうつむいて黙っていた。沈黙が流れる。
﹁わかりました⋮⋮﹂
﹁私は薬草を取りに行きます。しばらくここをお願いします。﹂
﹁ルコさん⋮﹂
﹁いいえ。礼を言われるようなことは何もしてはおりませんよ。﹂
﹁すみません⋮あ、あの⋮ありがとうございます。﹂
﹁これでいいでしょう。﹂
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
己の無力さが嫌になる。悔しいがルコの言葉に従った。
私ではアルバフィカ様を運ぶことができない。
本当は迂闊に他人にアルバフィカ様を触れさせたくはないのだが
﹁⋮⋮⋮⋮お願いします。﹂
﹁聖闘士様を運びましょう。﹂
﹁ルコ先生
﹁蘭華さん、ペフコ。そこをどきなさい。﹂
チ前に出せば触れられる距離。けれどそれはなかわない。
思い出したのかペフコはギリギリのところで腕をとめた。数セン
﹁あ⋮⋮⋮⋮⋮﹂
﹁ペフコダメッ
アルバフィカ様に触れたら危ないよ。﹂
アルバフィカ様怪我はしていないはずですが迂闊に触れると危な
!
ペフコはいきなり倒れたアルバフィカ様に駆け寄り体をゆすろう
!!
﹁あ、あの⋮蘭華さん。﹂
83
!!
!
!
?
﹁ん
﹂
﹂
﹂
ことですか⋮﹂
﹁うん。﹂
﹁なら、蘭華さんも
﹂
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮蘭華さん。﹂
﹁なに
﹁お願いがあるんです。﹂
お願い⋮⋮⋮⋮
予想がついていた。おそらくこう言うのだろう。
﹁アルバフィカ様と共にここから逃げてくださいっ
⋮⋮やっぱりね。
﹂
もしれない。だから私にもあまり近づかない方がいいよ。﹂
﹁私は違う。けど⋮毒薔薇と一緒にいるから普通の人間には危ないか
?
﹁周りの人間を毒で殺さないために⋮わざと他人から距離をとるって
薇の毒に耐えるために魚座の聖闘士は自らの血を毒に染める。﹂
﹁そう。毒薔薇だから毒に耐性がないと大変な事になる。だから毒薔
﹁でもそれじゃぁ⋮⋮﹂
う毒薔薇を武器に戦うの。﹂
﹁アルバフィカ様⋮⋮ううん、魚座の黄金聖闘士はデモンローズとい
てっきりってるのかと思った。別に秘密にしておく理由もない。
﹁知らないの
⋮⋮⋮そっか。﹂
﹁あ、アルバフィカ様に触っちゃいけない理由⋮聞いてもいいですか
﹁どうしたの
﹁えっと⋮その⋮﹂
?
﹂
?
﹁なんで⋮⋮﹂
も⋮全て。﹂
﹁理由は知ってる。ここで何が起きてるのかも⋮誰が行っているのか
てるよ。﹂え
﹁理由も話さないのになんでって思うかもしれないですけど⋮﹁知っ
!
?
84
?
?
?
﹂
﹁アルバフィカ様は何も知らない。私が知ってるだけ⋮
﹂
ねえペフコ。﹂
﹁なんですか⋮
﹂
﹁貴方はそれでいいの
﹁それで⋮
﹁止めようと思ったら
は無事ではすまない。それでも
﹂
家族のような存在⋮ルコさんと戦うことになる。恐らくルコさん
?
?
﹂
﹂
と歩き出す。親友の元へと1歩ずつ前に進む。
私はペフコとアルバフィカ様を置いて小屋から出た。そして森へ
この島に来てからずっと感じていた視線。この気配。間違いない
﹁私は他にやることがあるから。﹂
﹁蘭華さんはどうするんですか⋮
は貴方の自由。やりたいことをしなさい。﹂
﹁ペフコ。アルバフィカ様が起きたらすべてを説明して。そして⋮後
﹁蘭華さん
﹁そっか⋮⋮ペフコは強いね。﹂
も。﹂
⋮⋮ルコ先生を止めたいんです。それがルコ先生との別れとなって
⋮ こ れ は ル コ 先 生 が オ イ ラ に 教 え て く れ た こ と じ ゃ な い。だ か ら
﹁⋮⋮ルコ先生がなんでこんなことをしているのかわからない。でも
?
?
85
?
?
魚座の道、人の道
聖闘士side︵アルバフィカ︶ ー私が⋮私の血が先生を殺したー
ハッ
﹁聖闘士様でも悪夢にうなされるのですね。﹂
﹁先生⋮⋮⋮⋮いや、ルコ殿か。﹂
私の血の毒を癒せるというのは。﹂
﹁兄の夢を見ておいでだったのですね。ずっと名前を呼んでらっしゃ
いました。﹂
﹁⋮⋮本当なのだな
殿の言葉をずっと考えていた。
コンコンコンっ
今までどこに⋮蘭華はどこへ
窓を叩く音。
﹁ペフコ⋮
﹂
んです。早くここから逃げてください
﹁⋮
︻聖域・教皇の間︼
﹂
アルバフィカ様
﹂
!!
薬師の島の凶星の正体が先代魚座の黄金聖闘士
聖闘士side︵シオン︶
﹁な⋮何ですって⋮
!?
﹁落ち着かんかシオン。﹂
の弟⋮﹂
!!
﹁聞いてください。アルバフィカ様はこれ以上ここに居てはいけない
﹂
﹁蘭華さんは他にやることがあると言って⋮いやその前にっ
?
﹁ど、どうしたんだ⋮そんなにも焦るような事があったのか
﹂
そういうとルコ殿は家から出ていった。部屋に私1人残されルコ
い。﹂
﹁答えはいそがなくても結構です。今日は遅い⋮ここでお休みくださ
﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂
でしたが。﹂
﹁はい。私が薬師になったのは毒の血を癒すため⋮⋮兄は救えません
?
!
!
?
86
!
?
!?
﹁ですが教皇っ
﹂
それでは貴方はそれを知りながらわざとアルバフィ
カを薬師の島へ⋮
﹂
﹁はっ
ルゴニス
アルバフィカは毒薔薇に愛されている希有な存在。私の命を
﹁本当に良いのかルゴニス。﹂
︻七年前⋮︼
継者を決めたということは今生の別れをしに来たも同然。﹂
﹁あの日 彼は後継者を定めたと報告に来た。魚座の黄金聖闘士が後
﹁
﹁左様。⋮⋮だが、それは先代魚座の意志でもあるのだ。﹂
?
!
﹂
?
倒せるのか⋮
薬師の島に行ったアルバフィカと蘭華。師によく似た凶星の者を
アルバフィカとよく似ているのだろうな⋮
とが無いのだがとても優しく強い聖闘士だったそうだ。
そう話す教皇は悲しげな顔をしていた。先代魚座⋮私は会ったこ
︻回想シーンFinn︼
﹁ルゴニス⋮﹂
魚座の道︽孤独︾か⋮人の道︽絆︾か。﹂
方法にたどり着いていた時⋮もう一度選ばせてやって欲しいのです。
⋮⋮あの子がいつの日か魚座の宿命に打ちひしがれ弟が毒を消す
す研究をしております。
﹁教皇、お願いがございます。薬師の島に私の弟が魚座の血の毒を消
﹁⋮⋮﹂
ですが⋮あの子に孤独への道を1歩踏み出させたかと思うと⋮﹂
アルバフィカ
﹁⋮⋮私はとうにアテナ様に命を捧げました。後悔はありません。⋮
るとは思っておるまい
﹁そうではない。心の中の迷いを話せと申しておる。よもや隠し通せ
ナ様に貢献するでしょう。﹂
かけるのに十分です。必ずや私以上の魚座の黄金聖闘士としてアテ
!
心の中でそう疑問に思わずにはいられなかった。
87
!?
それパクリだよね
︻薬師の島︼
蘭華side
カサッ
﹁蘭華。﹂
﹁凛ちゃん⋮﹂
﹁心は決まった
問題なのだが⋮
﹁なら答えを聞かせてもらえるかな
ることは無い。﹂
﹂
?
﹂
?
ね。﹂
﹁ならっ
﹂
﹁だから何なの
﹂
﹂
﹂
!?
この世界に首を突っ込む必要が
﹁え⋮何なのって⋮たくさんの人が死んじゃうんだよ
ちが犠牲になるんだよ
﹁私たちに何の関係があるの
﹁何のって⋮﹂
﹁だって私たちは異世界の人間だよ
?
?
罪もない人た
﹁ハーデスが復活したら聖戦が始まる。たくさんの人間が死ぬだろう
か分かってるんでしょう
﹁分かってないのは凛ちゃんだよ。ハーデスが復活したらどうなるの
﹁⋮⋮⋮⋮なんで分かってくれないの
﹂
﹁私は聖闘士候補生。凛ちゃんがハーデスについている限り一緒にい
?
心は決まっている。方法が思いつかないだけで。それはそれで大
﹁⋮⋮⋮うん。﹂
﹂
は無力で何も出来ない。
そう心に誓ったはずなのにどうすれば救えるのか⋮あまりにも私
ー凛ちゃんを救うー
ついていなかった。
風で足元の落ち葉が空を舞う。ここまできて私はまだ踏ん切りが
!?
!?
88
?
?
!
どこにあるの
﹁それは⋮﹂
﹂
も私たちを知らない。誰も感謝なんてしてくれないっ
なんで命懸けで人間を助けなきゃいけないの
﹁凛ちゃん⋮﹂
﹁ねぇ
﹂
?
パリッパリッ
﹁そっか⋮なら仕方ないね。﹂
﹁勝利の女神は諦めない方に微笑むんだよ。﹂
終了ですよ﹄。なにより
﹂
私はね
誰
けれど⋮ここで諦めたらおしまい。冗談抜きに﹃諦めたらそこで試合
正直実力行使に出ると私が凛ちゃんに勝てる可能性は皆無に近い。
﹁私に勝てると思ってるの
﹁凛ちゃん⋮⋮私は行かないよ凛ちゃんと戦うことになっても。﹂
力づくでも連れてくから。﹂
﹁ほんとに蘭華は優しいね。どうやっても人の味方をするんだ⋮なら
﹁でもだからって殺していい理由にはならないよ。﹂
凛ちゃんが話すことはすべて正論で私は何も返せない。
凛ちゃんは人間に絶望している⋮
何だってできる。﹂
がいればそれでいいんだよ。蘭華がいるならどこにだっていられる。
?
!
?
!
蘭華
元の世界でもそうだった、私たちが命懸けで助けても戦ってもっ
﹁私はハーデスに忠誠を誓った。人間なんて守る価値ないじゃない。
?
﹁燃えろっ
私の小宇宙っ
﹂
私はもう魔法は使えない。闘志を全開にして小宇宙を高める。
凛ちゃんの体から雷がほとばしる。完全に戦闘モードだ。
!
!
ライトニングスパーク
﹁
﹂
﹂
っ
ッ
!
ようで私にダメージはない。
耳が痛くなるような爆音。土煙で周りが見えない。技が相殺した
!
"
もう既に癖になっている言葉を無意識のうちに叫んでいた。
!
89
?
ダイヤモンドダスト
﹁
"
ドオオオォォォオオン
"
!
"
アルバフィカ様⋮どうかご無事で⋮っ
!
ッ
﹂
﹁よそ見なんてずいぶんと余裕なんだね。﹂
カリツォー
﹁まさかっ
!!
束する。
﹁あまいよっ
﹂
それは反則じゃない
!? !
!
ちょっ
!?
バリバリッ
﹁えぇ
﹂
私が小宇宙で作り出した氷がリングのようになって凛ちゃんを拘
"
!
﹁
ライトニングボルト
﹂
ッ
///﹂
﹁それパクリだよね
﹁うるさーいっ
﹂
!
紙一重で攻撃を避けながら必死に隙を探していた。
!? !
なんとかしなきゃ⋮
おいおいおい
!?
"
体から出した電気で氷を無理やり溶かすとか⋮⋮ええー⋮
!?
どうしよぅ
90
"
"
!
黒薔薇
﹂
聖闘士side︵アルバフィカ︶
﹁なっ⋮⋮
﹂
﹂
!?
﹁白い鈴蘭⋮﹂
﹂
救 え な い 命 が 沢 山 あ る。だ が 私 は あ き ら め な
かった。そしてたどり着いたのだ。この冥界の花になっ
?
てくれないか
⋮⋮⋮私も死人にしようとしていたのか
﹂
﹁蘭華が⋮そうだな⋮私は聖闘士失格なのかもしれない。だが聞かせ
なかったようですね。﹂
蘭華さんは私の正体に気がついていたようですが貴方は気づいて
い。
﹁全ての人を救う⋮それを実現させるのは簡単だ。皆死人になればい
治療のために使用してた白い鈴蘭。それが冥界の花だったのか⋮
!
だが現実はどうだ
﹁私は全ての人を救うことを目指していた。いや、今も変わらない。
﹁ルコ先生⋮なんで⋮﹂
たのだがな。﹂
﹁残念だよペフコ。お前だけはバカ正直に私に従い続けると思ってい
﹁ルコ殿
﹁だから他の薬草を混ぜ続けていたわけか。﹂え
﹁う ん ⋮ ル コ 先 生 だ よ。オ イ ラ は ル コ 先 生 を 止 め た か っ た ⋮ だ か ら
﹁まさか⋮この島の凶星とは⋮﹂
で見てしまった。信じないわけには行かない。
なると冥闘士に変わるなど信じられるわけが無い。けれど自らの目
目の前でおこっている事がしんじられない。ルコ殿の患者が夜に
めた理由だよ。﹂
﹁これがこの島でおきていること。オイラが聖域まで行って助けを求
!?
雑談はこれぐらいにしましょう。さあ、死んでください。﹂
ですよ。
﹁ええ。そうすれば本当に毒の血から解放されますから。これは事実
?
?
91
!?
﹁え
﹂
木が⋮
﹁ペフコ
﹂
バキバキィィ
んかーッ
﹂
﹁先生⋮⋮お前はもう優しい先生じゃないっ
言うことなんて聞くも
に大木が押し寄せる。一瞬でも遅れていたら潰されていただろう。
とっさにペフコを抱えてその場を離れる。さっきまでいたところ
!
?
!
送ってやろう。
てんりつせい
この天立星ドリュアスのルコがなっ
!!
やっぱり先生じゃないんだ⋮﹂
?
少しでも先生に似ていると思った私が愚かだった⋮⋮死して兄
ピラニアンローズ
ッ
﹂
であるルゴニス先生に詫びろっ
!!
黒薔薇が⋮私の意思に反して⋮﹂
﹂
カース オブ リリー
れは変わらん。
﹁ぐわああぁぁぁああ
"!!
おのれ⋮
﹂
!
﹁よせ
﹂
﹂
あまり動けばその綺麗な顔と体から血が飛び散ろう⋮
ろうとする。
このままでは戦えない。多少無理やりだが薔薇の拘束を引きちぎ
﹁ッ
茨が聖衣の隙間をぬって喰い込む。
!!!
﹂
﹁全ての木、草、花は木の妖精たる私の眷属。貴方の薔薇であろうとそ
ド リュ ア ス
黒薔薇の茨で拘束される。
﹁なに⋮
投げた黒薔薇かルコの前でピタリと止まり私に攻撃してきた。
﹁岩をも裂く黒薔薇⋮⋮当たればただではすみませんね。だが⋮﹂
"
!!
﹁っ
許せない。ペフコと、ルゴニス先生を裏切ったルコが。
ペフコの瞳から涙があふれる。
﹁ドリュアス⋮
﹂
﹁育 て て や っ た 恩 を 忘 れ よ く 言 え る も の だ。な ら ば 二 人 共 々 冥 界 へ
!!
!?
貴方の毒の血がペフコの元までね
﹁くッ
!
!
!!
92
!!!
?
!
"
"
!
確かにルコの言う通りここで無理やり拘束を解こうと動けば私の
血がペフコにかかってしまう⋮
動くことが出来ない。
﹂
﹂
﹁毒の血が邪魔して誰も守れない。誰も救えない。さあ哀れな魚座よ
これで終わりだ
このままでは⋮
﹁⋮⋮いいえ。オイラが守ります
まずいっ
!
ペフコ下がれっ
そいつも⋮私の血も危険だっ
﹂
!
が流れている。
﹁なッ
!!
﹂
ルコ先生、貴方が僕に教え続けたことですから
﹁だが⋮﹂
﹁それは
﹂
!!
めてくださいっ
なっ
﹂
﹂
﹂
?
もうこんなことや
!
あるのだろう。蘭華が何も言わなかった事もそれを物語っている。
二人のやり取りを見ていてわかった。ルコにはルコなりの事情が
撃を避けながら自分を盾にすることで防いだ。
私はとっさにルコとペフコの間に滑り込みペフコに向けられた攻
﹁血はかかっていないな。よかった⋮﹂
﹁アルバフィカ⋮⋮様⋮
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮これでいいのだ⋮これで⋮
ドドドドドドド
﹁先生ーッ
ルコがペフコに向かって腕を振り下ろした。
!
!!
﹁⋮⋮⋮⋮⋮ッもはや戯言は無用ッ
﹂
番よく知ってます。先生は本当は優しい人だっ
一人一人大事に触れて接してきた⋮。ずっとそばにいたオイラが一
﹁先生は捨て子のオイラを拾って育ててくれた⋮どんな患者にだって
!!
!!
﹁⋮
﹂
﹁でもアルバフィカ様すごい怪我してる⋮放ってなんかおけません⋮
!
ペフコが私とルコの間に立ちはだかる。体は震えており瞳から涙
!
!
!!
!!
93
!!
!?
⋮⋮だが弟子をも手をかけようとしたルコを許せない。
﹁ペフコ⋮下がっていろ。これからルコと決着をつける。今度は⋮私
﹂
94
が守る番だ。﹂
貴様が言うこの忌まわしい毒の血でなっ
!!
ルコに向き直り1歩ずつ踏み出す。
﹁ルコ
!
果てなき夢を追う親
聖闘士side︵アルバフィカ︶
﹁これからルコと決着をつける⋮下がっていろ。﹂
﹂
﹁うん⋮アルバフィカ様。﹂
﹁⋮スマン⋮ペフコ
心が痛まないと言ったら嘘になる。だが地上の平和を脅かす存在
は倒さなければならない。
弟子の思いを踏み
﹁い い 弟 子 を 育 て た の だ な ⋮ ペ フ コ は ま だ お 前 を 信 じ よ う と し て い
る。
﹂
そんなペフコを何故お前は手にかけられる⋮
にじってまで行う大義など⋮私は認めない
その怪我では自慢の薔薇を投げることはできん。
ない。
﹁それでも進むのをやめんというのか⋮つくづく戦士とは救いようが
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
術は残っていない。﹂
それにこの鈴蘭の園は毒の血を無効化させる。つまり貴方に戦う
?
?
﹁⋮⋮⋮弟子の思いか⋮人の心配よりも自分の心配をしたらどうだ
!!!
﹂
今森の中で戦っている少女もまた同じ。勝ち目がないとわかって
蘭華が⋮戦っているだと⋮
いても進むのをやめん。﹂
﹁っ
?
ないかもしれないがな。冥闘士である私にはわかる。
﹂
まったく凛という少女の力は厄介だな。﹂
﹁凛⋮
てやりたいと、蘭華が聖闘士になった一つの理由。
﹂
﹁まあよい。どうせ蘭華という少女は消える。﹂
﹁どういう事だ
﹁凛という少女は蘭華を連れ去るつもりなのだろうがそれを快く思わ
?
95
!
﹁結界によって小宇宙が漏れないようになっているから貴方は気づか
!?
たしか⋮冥王ハーデスについた親友と聞いている。目を覚まさせ
?
﹂
ない者達がいる。その者達が刺客を放っているのだよ。﹂
﹁なっ
﹁そんな事は無いッ
ルゴニス
﹂
﹂
﹁どうせ兄も戦うことしか教えていまい
﹂
﹂
す道具でしない
﹁
﹁⋮⋮貴様ッ
!!!
﹂
?
所詮弟子など師の大義を成
いか。弟子の事など何とも思っておらんのであろう
﹁少し喋りすぎたか⋮まあいい。そろそろこちらも再開しようではな
!?!?
戦いの道を往くのが掟。
﹁そんな⋮そんな事は無いっ
バキバキバキバキィィ
木が押し寄せる。そして⋮
そ
﹁アルバフィカ様ぁぁぁぁぁ
﹂
だ。次はお前の⋮⋮ッ
﹁
﹂
﹂
赤い霧⋮まさかッ
﹂
!!!
﹂
!!
﹂
言ったな。それは違う。少なくとも私の中に⋮私の血の中に先生の
ルコよ。貴様はさっき﹃弟子など師の大義を成す道具でしない﹄と
だが⋮先生から託されたものだ。
ルゴニス
﹁まったく⋮つくづく恐ろしい血だ。
染めるというのか⋮
﹁白い鈴蘭の園が赤く染まっている⋮まさか⋮その血は冥界の花まで
!?
﹁そ し て ⋮ 道具 の 末 路 は 悲 し き も の よ な。さ あ ペ フ コ。魚 座 は 死 ん
!!!
!
な。絆などない。全ては子供の幼稚な夢物語に過ぎんッ
﹁い や 違 わ ん よ。貴 様 は ル ゴ ニ ス に 利 用 さ れ た の だ。そ の 生 涯 を も
!
血の循環の過程でより強い毒性と対毒の肉体を得た者が生き残り
どちらかが片方を殺すまで。
魚座の聖闘士が後継者を決めた時に自らの血を弟子の体に入れる。
ー赤い絆ー
手段に過ぎん。﹂
﹁そうでなければ幼い子供に猛毒の血など入れん。所詮﹃赤い絆﹄とて
!!
?
!
!?
96
!!!
!!!
﹂
思いを感じるのだからッ
﹁⋮⋮ッ
﹂
!!!
クリムゾンソーン
﹂
!
ッ
﹂
ルゴニス先生ー
?
﹂
もうこの世にはいない自らの師に問いかけた。真紅の鈴蘭が風に
ーこれでいいんですよね
だが⋮こうするより他なかった。
のかと後悔がないわけではない。
ペフコが、泣きながらルコに駆け寄っていく。他に方法がなかった
﹁せ、先生っ
﹁師とは常に追い続ける親⋮そうペフコが教えてくれた。﹂
﹁血が針のようになって⋮ぐわああぁぁぁああ
!!!!
私は自分の血を誇りに思っているのだから
えもない。
﹁私は道具にされたとは思っておらん。蘭華を道具にしようという考
!!!
乗って宙を舞う。
97
"
!
!!!
"
感電。︵魔法少女が感電とか笑えない。︶
蘭華side
一進一退の攻防が続いている。正直ここまでもったことが奇跡と
言わざるえない。
﹂
﹁⋮⋮ルコがやられたようね⋮最後まで人の情を捨てきれなかったあ
われな男⋮﹂
﹁⋮⋮⋮⋮っ
﹁弟子のために冥闘士に身を落とし挙句の果てには死を選ぶとは⋮相
変わらず変な男ね。﹂
﹁ルコさんが⋮﹂
おそらく漫画通り完結したに違いない。
安心してしまい、動きが少し鈍る。
サンダーストリング
ッ
﹂
﹁それやっぱり蘭華の悪い癖だよね。今は助かるけど。
きゃあああぁぁぁぁぁ
"
﹂
!!! !!
しまって動けない。
﹁つぅ⋮⋮⋮﹂
﹂
﹂
﹁さぁ聖闘士が来る前に早く行こう
﹁っ⋮⋮﹂
﹂
﹂ どうしようどうしたらいい
﹁蘭華っ
﹁蘭華さんっ
﹁アル⋮バフィカ様、ペフコ⋮
﹂
﹂
ぶっちゃけ無理矢理
キューブっ
でも連れてけるんだよね。というか連れてくけど。﹂
﹁うーん⋮蘭華は動けないってことわかってる
﹁いか⋮ないって言った⋮でしょ
?
﹁この二人の始末を⋮って言いたいところだけどあんたじゃ役不足だ
!!
?
?
何で毎回こうなるのかな。お約束
ちいんせい
?
!!
?
?
!!!!
﹁は、地陰星デュラハンのキューブ。ここに。﹂
﹁チッ
!!
98
!
雷が縄のように⋮いや紐状になって私を拘束する。雷に感電して
﹁っ
!? "
﹂
ね⋮。仕方ない、蘭華を連れてハーデス城へ。怪我を負わせたら⋮殺
すわよ
⋮⋮⋮っ
﹂
﹁⋮⋮かしこまりました。﹂
﹁まてっ
バリバリッ
!!
﹂
?
﹂
﹁蘭 華 は 魚 座 の 聖 闘 士 候 補 生。一 緒 に い て 何 の 不 思 議 も な い だ ろ う
にずっといるとか何様のつもりなの
﹁さてと⋮⋮⋮あんた達さー。いい加減ウザイんだよね。蘭華のそば
凛side
た。
アルバフィカ様に対峙する凛ちゃんを見ながら私は意識を手放し
度私は繰り返せばいいのだろう。
思っているのに体が動かない。そんな自分が悔しい。同じ事を何
ー止めないと⋮ー
とも強い。戦えばどうなるかわからない。
アルバフィカ様と凛ちゃん⋮どちらとも大切な人だ。そして二人
ずなので意識を瞬時に失わなかった事が凄いだろうが。
したいが未だ体が痺れて動かない。スタンガン並みの威力があるは
デュラハンのキューブが私に近づいてきて私を担ぎあげた。抵抗
﹁行かせないよ。﹂
!
﹂
の家族になんかしたら許さいないから。最も何もさせないけど。﹂
﹁凛。お前は⋮何故ハーデス側についた
﹁あんたに呼び捨てされる覚えなんてないけど。その問いかけに答え
?
﹂
る理由もない。まぁ蘭華のためだけど。﹂
﹂
﹁⋮⋮ハーデスを信用していいのか
﹁は
?
﹂
?
﹁⋮⋮⋮何が言いたいのよ。﹂
用していいのか
﹁仮にハーデスが信じられる神だとしよう。だがその配下の者まで信
?
99
?
!
﹁ムカつくね⋮蘭華をたぶらかして何がしたいのか知らないけど。私
?
﹂
﹁先ほどの冥闘士⋮おそらく三巨頭のうちの誰かの配下の者ではない
のか
﹁⋮⋮⋮⋮それで
﹂
﹁蘭華のそばにいなくていいのか
﹂
?
?
﹁⋮⋮その言葉を簡単に信じるとでも思ってたの
﹂
く思わない者達がいる。その者達が刺客を放っている﹄とな。﹂
﹁やはり否定はしないのだな⋮先ほどルコが言っていた。﹃蘭華を快
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
?
サンダートルネード
ッ
﹂
る。ってことで、さっさと死んで
﹁くっ⋮⋮﹂
!!!
速に近い速度がでる。いつまで避け切れるかな
﹂
﹁光速で避けるとか一種のチートな気がするんだけどね。でも雷は光
"
?
﹁別にあんたをさっさと殺して蘭華の様子を見に行くことだってでき
た。
るから。けれど敵の言葉である。簡単に信じるわけにはいかなかっ
確かに事実なのかもしれない。私は一部の冥闘士達に疎まれてい
?
?
100
"
何者かの小宇宙
キューブside
俺は森の中を走っていた。脇に蘭華という少女を抱えながら。凛
てんもうせい
は﹃ハーデス城へ連れていけ﹄と言ったがそのつもりは毛頭ない。
俺は冥界三巨頭の1人、天猛星ワイバーンのラダマンティス様に仕
える冥闘士の1人である。何があってもラダマンティス様の命令を
遂行する。
そして⋮ラダマンティス様に﹃雪美蘭華の抹殺﹄を命令された。形
式上は凛に仕えてはいるがラダマンティス様の命令が最優先である。
﹁命令だからな⋮許せとは言わん。苦しまずに逝けるようにしてやろ
う。﹂
ここまでくればすぐには誰も来ないだろう。何より黄金聖闘士は
凛が相手をしているはず。時間を稼げるだろう。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
アルバフィカside
まずい。凛の電撃は全力で避ければ当たることは無い。だがそれ
は守りに徹した場合だ。すべてを避けようとしたら攻撃に転じられ
ない。
凛を無力化しようと思えば多少の怪我を覚悟してでも懐に飛び込
むしかない。
多少の怪我ならいいのだが⋮電撃は電圧が高く触れたら感電する
こ と は 目 に 見 え て い た。か つ て シ オ ン が 電 撃 の 餌 食 に な っ て い る。
﹂
黄金聖闘士って何でこんなにもちょこまかと動くの
無力化するはずが、自分が無力化されたら意味がない。
もうっ
!
101
立ち止まり腕を振り上げる。狙うは首。どんな生物であろうと首
﹂
を絶たれて生きていける者などいない。
﹁さらばだッ
ビュッ
!
そして俺は腕を勢いよく振り下ろした。
!!
いい加減殺られなさいよッ
!!
﹁ッ
よっ
! !!
﹁それはゴメンだ。蘭華を助けなければならないのだからな。﹂
そう。蘭華を助けなければならないのだ。
ルコが言っていたことは全てが本当の事と断言することは出来な
い。だが⋮恐らく事実なのだろうと思う。
あれぐらいの冥闘士、蘭華なら少しは苦戦するだろうが十分に倒せ
る相手だ。しかしそれは万全の状態だったときである。今の蘭華は
話を聞け、蘭華が危ない
﹂
というかあんたの言葉を信じるわけないでしょッ
﹂
気絶している。仮に意識があったとしても体が自由に動かないだろ
う。
﹁凛っ
﹁問答無用っ
﹁ッ⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
まぁ⋮信じられないだろうな⋮。
ズザァァァァ
が締め付けられる。
こうしている間にも時間は刻一刻と過ぎていく。不安と心配で旨
!
!
ドゴォォォォオオンッ
﹁え⋮
﹂﹂
何この小宇宙⋮﹂
?
追った。
﹂
凛 は 爆 音 が し た 方 角 に 向 か っ て 走 り 出 す。私 も 数 秒 遅 れ て 後 を
﹁⋮⋮⋮蘭華⋮ッ
初めて感じる小宇宙。一体誰の小宇宙なのかわからない。
蘭華の小宇宙ですらもない。
キューブの小宇宙ではない。私や凛の小宇宙でもない。ましてや
﹁一体⋮誰の小宇宙なんだ⋮
﹂
遅かったのか⋮嫌な予感が胸をよぎる。
﹁﹁なッ
島の端あたりでした爆音だった。
!!!
も思われる時間を破ったのは⋮
私と凛は同時に距離をとった。そして睨み合う。そうして永遠と
!
!!
102
!
!
!?
?
勝手に納得しないでください⋮
アルバフィカside
森の中を凛と共に走っていた。凛は私の事など頭から抜けている
のか、こちらをみむきもしない。ペフコは私が抱えている。危険な可
能性があるため本当は連れて行きたくなかったのだが、ペフコが断固
拒否。言い争いをしている時間がもったいなかった。
﹁オイラには小宇宙というものがよく分かんないですけど⋮何かあっ
﹂
たというのは分かります。﹂
﹁なぜ
﹁なんか⋮森の気配がいつもと違うっていう感じがします。⋮気のせ
いもしれませんけど。﹂
﹁いや⋮おそらくその通りだ。﹂
走りながらペフコと話す。そんな場合ではないとわかってはいた
ー
が、こうでもしないと不安で胸が押しつぶされそうだった。
ー頼む⋮無事でいてくれ⋮ッ
﹁ちょっとッ
さっきからそこ五月蝿い
﹂
我ながらなぜこんなにも焦っているのかわからない。
!!
!!
﹁見えた
蘭華ッ
﹂
違いだったようだ。
凛が突っ込んできた。周りが見れていないと思っていたのだが勘
!
!!
★
★
★
★
★
?
﹂﹂﹂
★
﹂
?
﹁﹁﹁
﹁蘭華⋮
?
﹂
?
そう問いかけたのだが返事がない。こちらに視線を向けたままピ
﹁蘭華⋮なのか
た持ち主のわからない小宇宙。
蘭華は無表情で立っていた。そして⋮体からは先程から感じてい
だが何かが違う。
そこに居たのは蘭華だった。少なくとも外見は。
?
広く開けた場所。そこに居たのは⋮
!!
?
103
?
? !?
?
クリとも動かないのだ。現状が理解できない。凛も同じだったよう
で動かない。
﹁⋮あれは⋮﹂
蘭 華 の 足 元 に 冥 闘 士。さ っ き 蘭 華 を 連 れ 去 っ た キ ュ ー ブ だ っ た。
蘭華がやったのか
ドサッ
蘭華に⋮﹂
よってかき消された。
﹂
﹃凛。一度戻って来い。﹄
﹁タナトス
戻って来いといったのだ。﹄
蘭華が⋮﹂
くそっ
次こそは蘭華を返してもらうから。覚悟しておき
﹃聞こえなかったのか
﹁ッ⋮⋮
だったのではないか
﹁⋮⋮⋮ぅうん⋮﹂
が。
﹁目が覚めたか
﹂
凛もびっくりしていたようなので初めての現象
﹂
い。明らかに別人のようだったので回答が返ってくるとは限らない
蘭華が目を覚ましたようだ。さっきのことを聞かなければならな
?
一体何があった
眠っているだけのようだ。
ペフコの声で現状を思い出した。急いで蘭華を見る。怪我はない。
﹁蘭華さん⋮⋮⋮﹂
ろう。気配が突然消えた。
そう言うと凛は闇の中に消えた。おそらくテレポートしたのであ
なさい。﹂
?
﹁で、でも
羊座のエルシドと射手座のシジフォスが行方を捜しているはずだ。
タナトス⋮死の神だと
冥王ハーデスに使える双子神の一人。山
触るなとでも言おうとしたのだろう。だがその言葉はある人物に
﹁ちょ、ちょっと
蘭華が倒れた。急いで駆け寄る。
?
!
!
?
﹁は⋮い⋮⋮。ってほえええええ
!?
?
104
!?
!?
!!
!!
・
・
・
いきなり叫びだした。そして勢いよく私から距離を取る。
⋮⋮⋮⋮一体何なのだ⋮
蘭華side
目を覚ますとアルバフィカ様の超綺麗な顔がドアップ。本人には
言えないが。言ったら機嫌を損ねるのは常識みたいなものだ。驚い
て咄嗟に距離を取る。
というか⋮なんで黄金聖闘士はみんな美形なのだ⋮いや、黄金聖闘
﹂
﹁なんでもない。怪我はないか
﹁はい⋮大丈夫ですけど。﹂
﹁ならいい。﹂
﹂
突っ込みたかったがとてもじゃない
がそれができる雰囲気ではなかった。
何がならいいんでしょうか
助けてくれた
士だけではない。すれ違う人みんなが美形なのだ。何なんだこの世
界は。
ひゃい
﹁蘭華﹂
﹁ひゃ
﹁蘭華さん落ち着いて⋮﹂
ペフコはびっくり&呆れ顔。
大きく深呼吸をしよう。
スーハー、スーハー
﹂
﹂
﹁はい、なんでしょうか。アルバフィカ様。ってああ
のってアルバフィカ様ですか
﹂
﹁違う。というか⋮覚えていないのか
﹁なんの事ですか
﹁そうか⋮﹂
?
!?
?
!?
105
!!
えっと⋮勝手に納得されると怖いじゃないですか⋮
??
!!
!?
聖戦前∼ひと時の休息と特訓∼
アップルパイ作ってくれッ
蘭華side
﹁もうすぐ聖域ですねー﹂
﹂
お前が行かなくてどうする。﹂
本来なら任務関係ないんですよ
そんなぁ⋮報告はアルバフィカ様だけで十分ですよー。﹂
﹁だめだ。﹂
﹁私は聖闘士候補生ですよ
﹁教皇様からの勅命の任務だぞ
教皇の勅命は受けたけどさ
ることなんかない場所なんだよ
そりゃ黄金聖闘士なら何回でも入
一般人は一生入
私また教皇の間に
?
教皇の間は人生で数回しか行けないとこでしょ
行くの
⋮⋮⋮確かにさ
た。⋮いや、正直言うと船酔いがヤバヤバダケドネ。
聖域に帰る船の中、私とアルバフィカ様はのんびりと過ごしてい
﹁ええええぇ⋮﹂
!?
﹁ええー
﹁ああ。随分と長居してしまったからな。少し急ぐぞ。﹂
!
正直あの空間にずっといるのは精神的にきついんです
るでしょうけど。
?
?
ない
⋮ハズ。
⋮とはとても言えず諦めていた。半分くらい。残り半分は諦めて
!!
?
もはやため息しか出ない。
アルバフィカ様は私と話している時以外はずっと考え込んでいる
ようだ。何を考えているのかわからないが。
そんな事考えていると船が港に着いたようだ。気分がすごく落ち
込むのは仕方ないといえるであろう。
︻教皇の間︼
﹁以上が任務の報告です。﹂
﹁わ か り ま し た。蘭 華 ち ゃ ん、ア ル バ フ ィ カ。お 疲 れ さ ま で し た ね。
106
?
!?
!?
?
﹁はぁ⋮﹂
!
ゆっくりと休んでください。﹂
﹁ありがとうございます。﹂
私はアテナことサーシャと教皇セージの前で任務の報告をしてい
普通任
た。アルバフィカ様はずっと黙りっぱなし。時々あいづちをうつだ
けだ。
⋮⋮というかなんで私が任務報告をしているのでしょう
務を受けた黄金聖闘士であるアルバフィカ様が報告すべきなのでは
?
サーシャもセージも突っ込んでくれません。ナンナンデショウネ
﹁ならば下がってよい。アルバフィカはそのまま残るように。﹂
﹁はい。﹂
﹁わかりましたぁ⋮﹂
私はアルバフィカ様を残して教皇の間から退出する。なんなんだ
ろう一体⋮
アルバフィカside
﹁まずは任務ご苦労だった。﹂
蘭華が退出してから私は報告する。任務の内容はあらかた蘭華が
報告してくれたので任務のことではない。
蘭華から発せられた小宇宙の事だ。
﹁ふむ⋮蘭華から知らぬ小宇宙とはな⋮﹂
﹁教皇様。あれは一体何なのでしょうか。少なくとも蘭華は自覚して
﹂
いない様子。聞いてみましたが覚えていないとの事でした。﹂
﹁すまぬ。私にもわからん⋮ アテナ様。何か心当たりなどはございませんか
いとは⋮
二百数十年生きている教皇様と女神であるアテナ様でも分からな
﹁そうですか⋮⋮﹂
んが⋮﹂
﹁今の話だけではとても。実際に見てみれば何かわかるかもしれませ
?
107
?
?
﹁現時点では何の判断もできません。しばらく様子を見ましょう。﹂
﹁そうするしかないようですな⋮
アルバフィカ。﹂
﹁はい。﹂
﹂
﹂
﹁1度ジャーミールにいる兄ハクレイにこの事を報告し、心当たりが
﹂
ないか訪ねてきてほしい。今から飛んでもらえるか
﹁はッ
とりあえずジャーミール行きが決定した。
戻ってきたのか
蘭華のご飯が食べられないとは⋮少し残念だ。
蘭華じゃねえか
蘭華side
﹁おぉ
!
?
﹂
ドマークとも言える林檎を手に持っている。
今から暇か
カルディアの目が⋮キラキラに⋮
﹂
言いたいことの予想がついた。
﹁アップルパイ作ってくれッ
やっぱり。暇だから構わないが。
!
﹂
﹁いいですよ。でも他の黄金聖闘士の皆さんも呼んでくださいね
﹁わかった
﹂
﹂
嬉しそうに私に声をかける蠍座の黄金聖闘士カルディア。トレー
!
なんてことを考えながら私は天蠍宮に向かって足を進めた。
かったな⋮
ガ ッ ツ ポ ー ズ を す る カ ル デ ィ ア。⋮ あ ぁ ⋮ 写 メ に 撮 っ て お き た
﹁やたッ
﹁なら厨房借りますね。﹂
!!
?
﹁はい。ついさっき。﹂
﹁そーか
!?
﹁はい。特に用事はありませんけど⋮﹂
!
!
108
!
!?
んなもん秘密。
蘭華side
﹂
﹁皆さーん。できましたよー。﹂
﹁おお
1番リアクションが高いのはカルディア。デスヨネ。2番目がマ
ニゴルド。このへんは予想通りでした。
3番目がまさかのデジェル様。意外すぎです。
天蠍宮にはたくさんの黄金聖闘士が集まっていました。呼んだの
は私ですけど⋮皆暇人すぎでしょう。
モグモグ。
﹁蘭華ー。もう1個よこせー。﹂
﹁そこは﹃ください。﹄ですよ。﹂
﹁深いことは気にすんな。﹂
﹁ソーデスカ﹂ハァ
呆れてため息が出ます。こんなキャラだったなぁと今更ながら痛
﹂
﹂
結構気になるぜ
?
感。
シオンの言う通りっ
﹁そう言えば蘭華。薬師の島ではどうだった
﹁おお
!
﹂
﹁ふーん⋮というか蘭華。﹂
﹁なんですか
﹁今の話を聞く限りお前⋮凍結拳しか使ってなくね
﹁⋮そうですね。﹂
﹂
﹂
で積尸気︵あの世︶に送ったり、
俺らも技教えたよな
積尸気冥界波
﹁なんで
﹁⋮
スカーレット
別に隠すようなことなどではないので素直に報告しました。
ています。
軽くマニゴルドがシオンに便乗。他の黄金聖闘士達もこっちを見
!
で地獄みたいな目に遭わせたりする事が技の伝授という
"
!?
?
?
ならばそうなんですね。﹂
﹁﹁うっ⋮﹂﹂
109
!!
!
ニードル
"
!?
"
"
二人共言葉に詰まりました。ザマァw
流石にそう言うと恐ろしいので声には出しませんでしたケドネ。
﹁蘭華。それぐらいにしておいてあげてくれ。二人共多分反省してい
るからな。﹂
とデジェル様。⋮⋮というか⋮
﹁デジェル様にもよく氷付けにされましたね。﹂
要約﹃貴方も人の事言えないよ﹄
﹂
ニュアンスが伝わったのか微妙な顔をしました。
﹁聖闘士候補生にこれぐらいの特訓はするだろう
︶を
﹂
皆悪気が無いんだからよりタチが悪い。もうこれ私シニマスヨ
特訓︵地獄︶の為に特訓︵地獄
アルバちゃん。お前も食べに
コツッコツッ。
﹁お
﹂
﹁いやいや。意味わかりませんから。﹂
なんで見なければいけないのでしょうか
言っている意味がわからんっ
﹁な、なら俺らの特訓にも耐えられるように特訓すればいいんだっ
はシオンとアルバフィカ様ぐらいです。
私が聖闘士候補生になって命の危険を感じなかった特訓を行った人
シオンはずっと黙っていました。と言うか顔を青くしていました。
ちがおかしいんですからね
子。言っときますけど、シベリアとかでタンストップでいられる人た
訂正。開き直られました。というかそれが普通と思っているご様
?
?
﹂
ずりぃ
スルー。
﹃あっ
﹂
?
﹄といか言ってる外野︵カルディア&マニゴルド︶は
﹁別に双魚宮で作りますよ
⋮⋮⋮どうやら食べたかったようです。
﹁アップルパイ⋮入れ物に包んでくれ。﹂
﹁はい
﹁⋮⋮蘭華。﹂
で食べることをひどく嫌っているのでここに来る意図がわからない。
アルバフィカ様が天蠍宮に入場︵苦笑い︶。アルバフィカ様は人前
?
!?
!
?
?
!!
110
?
!
?
!
﹂
﹁今からジャーミールに飛ぶ。しばらく双魚宮を開けるからな。﹂
﹁そーなんですか⋮﹂
﹁何しにジャーミールへ
シオンが初めて喋った。ジャーミール絡みだとやっぱ気になるん
﹂
だよね。ジャーミール出身だから。
﹁⋮任務の報告だ。﹂
ジジイ
﹁教皇に報告したんだろ
﹁ああ⋮報告した結果ジャーミールの長、ハクレイ様にも話を聞こう
と思ってな。﹂
﹁ふーん⋮まぁいいけどよ。﹂
﹁という事で蘭華。アップルパイ包んでくれ。﹂
﹁わかりましたー。﹂
私は行かなくていいのか気になりましたが話を聞く限り私は行か
なくてもいいようです。
アップルパイを包みに厨房へと戻る。
カルディアside
﹂
﹁なあアルバフィカ。﹂
﹁なんだ
ると絶対猛反対するからな。
﹂
﹁お前が留守の間蘭華の訓練︵特訓︶を俺がやってもいいか
﹂
﹂
というか今更だろう
﹂
﹁わかりましたー。﹂
﹁ああ。ありがとう。留守を頼むな。﹂
﹁アルバフィカ様。出来ましたー。﹂
︵デジェルより。︶
後 日 談。そ の 時 の 俺 は と ん で も な く ゲ ス イ 顔 を し て い た そ う だ。
﹁あ、ああ
とりあえず許可はもらったからな
﹁まぁそれもそうだけどな。
﹁別に蘭華がいいといえば構わないが
?
?
?
111
?
?
蘭華が厨房へと戻っている間に話を進めようと思った。蘭華がい
?
?
?
なんだかニコニコしている蘭華。後で起こる︵起こす︶ことを知ら
ずに。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
アップルパイを食べ終わり雑談をしていた。雑談にまぎれて
﹂
﹁よし蘭華。これから特訓するぞ。聖域を出るから準備しろよー。﹂
なんかサラリととんでもないこと言いましたよね
とサラッと言ってやった。
﹁はぃ
予想通りの反応。
﹁大丈夫だ。アルバフィカの許可はとってある。﹂
﹁アルバフィカ様⋮⋮⋮﹂
えー。﹂
﹂
﹁いいぞ。﹂﹁かまわない。﹂
﹁シオンはどうする
話を勝手に進めないでください
﹂
﹁っ て 事 で さ っ さ と 準 備 し ろ よ ー。デ ジ ェ ル と マ ニ ゴ ル ド も 付 き 合
!?
﹁⋮⋮どこに行くんですか⋮
諦めた様子。いい子だ。
﹁そりゃ秘密。﹂
﹁ええ⋮﹂
﹂
んなもん決まってるだろ。だがそれを言うと蘭華
?
は絶対に拒否するので秘密とする。
どこに行くか
?
!
﹁⋮私も行こう。﹂
﹁ちょ
﹂
﹁﹁気にするな﹂﹂
﹁無理ですッ
!?
?
蘭華がなんと言おうと既にこれは決定事項。って事で行くぞー
!!!
112
!?
!?
完全とばっちり
一方その頃⋮⋮
︻アテナ神殿︼
﹂
サーシャside
﹁できたぁ
教えてもらった﹃玉子焼き﹄という料理です。
焼くの難しかった⋮
食べてみてくださいっ
﹂
玉子焼き出来ましたッ
﹁アテナ様。およびでしょうか
﹁セージ
セージside
﹁食べてみてくださいっ
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
﹂
﹂
!
?
そういうと私はセージに見せる。
!
目の前の玉子焼き︵
︶は真っ黒である。なんだかパサパサ︵
いうよりガリガリしてそうである。
もはや⋮玉子焼きというよりかわいそうな玉子⋮
とマズイッ
いやいやっ
見た目が少し悪いだけだ
というかここで食べない
前蘭華に作ってもらった時はこんな見た目はしていなかった⋮
?
絶句してしまった。目の前の光景に思わず意識が飛びかけた。
!
?
!
﹂
?
﹂
?
教皇という立場⋮アテナ様を泣かせるわけには⋮
反応に困って黙っているとアテナ様は泣きそうな顔で聞いてきた。
﹁まずい⋮ですか⋮
決して﹃焼きすぎたからこんな味がする﹄というレベルではない⋮
⋮⋮表現できない味である⋮
﹁どうですか⋮⋮
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
意を決して恐る恐る口にかわいそうな玉子を入れる⋮
!
︶と
アテナ神殿の厨房で料理をしていました。蘭華ちゃんに作り方を
!
!
113
!
﹂
﹁か⋮噛みごたえがあり⋮とても独創的な味がします⋮。﹂
皆の分も作ってきますねっ
無理。これ以上のコメントはできん。
﹁ありがとうセージ
心の底から嬉しそうな笑顔を見せるアテナ様⋮
心が痛いがそれどころではない。
﹁よし。じゃあ行くかー
﹂
いやーな予感しかしません。
あー⋮何が起こるんでしょうねぇ⋮
﹁準備できました⋮﹂
蘭華side
︻天蠍宮︼
アテナ様が部屋を出ていったのを最後に意識が飛んだ⋮
!
なってもいいのでしょうか⋮
と い う か ⋮ こ ん な に も 黄 金 聖 闘 士 が い っ ぺ ん に 聖 域 か ら い な く
のシオンが準備万端で待っていました⋮
蠍座のカルディア、蟹座のマニゴルド、水瓶座のデジェル、牡羊座
?
﹂﹁え
﹂
るのが目に見えているので言いませんが。そういうのがわかる程度
﹂﹁さーしゃ
には付き合いが長いですから⋮
﹄
﹂﹁アテナ様
?
⋮マニゴルド
﹂﹁ほえ
?
!!
サーシャのテレパシー︵
﹁なにがあった
﹂
ジジイが倒れただと
︶です。小宇宙を使ってテレパシーは出
﹄
﹂
﹃せ、セージが倒れましたっ
﹁な
﹄
あのジジイが死ぬとか何があったんだオイ
とりあえず黄泉比良坂に行ってセージを助けてき
!?
!
!?
﹃そ、それも息してないんですッ
﹁なにぃ
﹂
来るのですが燃費が悪いので緊急時以外は使いません。
?
!
?
﹃わかりませんっ
!
!?
114
!
言ったところでどうせ﹃関係ねぇよ、大丈夫。︵たぶん︶﹄と言われ
?
?
﹃⋮ド
﹁ん
?
!
左からマニゴルド、私、デジェル様、カルディア、シオン。
?
!?
﹄
積尸気冥界波
てくださいっ
﹁
﹂﹁おい
ぁぁ
﹂
﹂﹁﹁⋮⋮﹂﹂
!!!
!
なんて考えながら私たちはマニゴルドが放った積尸気冥界波のと
とりあえず落ち着こうよ⋮
います。
左から私、カルディア。デジェル様とシオンは諦めたように黙って
﹁ちょ
!? "
ばっちりを受けて黄泉比良坂まで飛ばされました⋮
115
!?
"
全力疾走
︻黄泉比良坂︼
蘭華side
﹁いててて⋮⋮⋮﹂
腰をうった⋮
冥界だし何より霊体なので痛みはないのかと思っていたのだがそ
﹂
ういう訳ではないようです⋮
﹁大丈夫か
悪気が全くないマニゴルド。
私だけが思っている訳
﹁そう思うなら周りにまで影響が及ぶ技放たないでください⋮﹂
﹁﹁﹁全くもってその通り。﹂﹂﹂
そらね。みんな同意してくれましたよっ
!
⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮アレ
﹁なら⋮帰りましょうか。﹂
﹁そうだな⋮﹂
︻天蠍宮︼
﹁まったく⋮人騒がせな⋮﹂
﹁﹁﹁﹁お前︵貴方︶が言うか
﹁ハモるなよ⋮﹂
﹂﹂﹂﹂
デスヨネ。皆心が一つになりました。
﹁﹁﹁全くもって同意。﹂﹂﹂
﹁あ、ホントだ⋮あのジジイ何やってんだ⋮﹂
おーい⋮蟹座なのに亡者に混ざってどうするんですか⋮
亡者の中に混ざって歩いてました⋮
﹁⋮⋮⋮セージ⋮じゃなくて⋮教皇様発見しましたけど⋮﹂
?
という心情を問題児に言ってやろうと思いましたが⋮
マニゴルド
ではないのですっ
!
たいしな。﹂
﹁とりあえず⋮教皇様のところへ行こう。何があったのか事情が知り
それは無理な相談ですね。
!?
116
?
流石デジェル様。言うことが違う。
﹁そうですね⋮何があったんでしょうね⋮﹂
﹁教皇の間に侵入者でも入ってきてたら一大事だしな。﹂
﹂
﹁いや⋮カルディア。聖域には結界が張ってあるんですから⋮十二宮
﹂﹂﹂﹂
を通らず教皇の間には行けませんからね
﹁﹁﹁﹁お前が言うのか
デスヨネ。十二宮を通らず教皇の間に侵入した私が言うことでは
ないですよね。
にしても⋮
﹁ハモらないでくださいよ⋮﹂
4人にハモられると結構グサッとくるものです。
﹁それは無理な相談だ。﹂
﹁ソーデスカ﹂
﹁とりあえず教皇の間に行こうか⋮﹂
シオンが頭を抱えながら話を元に戻してくれた。結構脱線してた
からね⋮
誰もいませんね⋮﹂
無理ですからね
私たち5人は天蠍宮を出て教皇の間に急いだ。
︻教皇の間︼
﹁⋮⋮⋮ってアレ
﹁蘭華遅せーぞ。﹂
黄金聖闘士のスピードについていけと
﹁とりあえず⋮教皇の間ではないようですね⋮。﹂
﹁おーおー。無視かよ。﹂
﹂
ちゃんと反応しますがカルディアなので無視でいいです。
﹂
﹁という事は⋮もしかしてアテナ神殿⋮
﹁おいおい⋮それはまずくねぇか
﹁まずいな。﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮急ぐか。﹂
急いで
もちろんスルーに決まってます。デジェル様とかシオンだったら
!?
!?
?
?
ま、また走るんですか というか﹁急ぐか。﹂って何ですか
なかったんですか
!?
117
?
?
!?
?
!?
なんて突っ込めるわけもなく⋮アテナ神殿まで全力疾走するので
した⋮
118
現金ですね。
︻アテナ神殿︼
蘭華side
は、速い⋮みんな速すぎですから。全然ついていけない⋮
﹁や、やっと着いた⋮﹂
何やらサーシャが黄金聖闘士4人に事情説明している模様。
﹂
教皇セージはまだ意識が戻ってません。
セー ジ
﹁うぅ⋮⋮⋮﹂
あ、教皇が起きた。
﹁おいジジイ。何があったんだよ
ジジイ
マニゴルドが一番最初に聞いた。私はもちろん皆声をどうかけよ
セー ジ
うか困っていたので良かったです。
師弟関係だからね⋮教皇と呼ぶのはいいのだが教皇と呼べるのは
マニゴルドぐらいだろう。
﹁う⋮⋮﹂
珍しくセージが言葉に詰まっている⋮
ているのかというと⋮
﹂
取り敢
デジェル様やシオンは反応に困ってい様子。カルディアは何をし
?
でいいだろう。
﹁教皇。何があったんですか
﹁それは⋮その⋮⋮⋮⋮﹂
﹂
シオンも痺れを切らしたのかセージに問いかける。が⋮
?
セージの視線はシオン達を見ていません。何を見ているかと
ムッさ歯切れ悪っ
⋮
!
119
?
教皇は無事だったんだからさっ
!
﹁うぇぇぇぇええん
﹂
﹁お、落ち着けよサーシャ
えず泣きやめ
!
!
泣きじゃくるサーシャを必死に慰めていた。うん。そのまま放置
!
泣きじゃくってるサーシャ⋮
言うと⋮
?
あー⋮これあれかな
サーシャが関係してるのかな
しづらくて困ってるのかな
でも言い出
?
﹂
れる
﹁カルディア。サーシャちゃん連れてとりあえずここから一回出てく
?
?
﹁さてと⋮何があったんですか
﹁う⋮⋮⋮﹂
﹂
﹂
﹁サーシャ⋮いえ、アテナ様が関係しているんですよね
即答ですね。
﹁女の勘です。﹂キッパリ
﹁なぜアテナ様を外に出したのだ
サーシャがこの場にはいないので喋りやすいだろう。
?
﹂﹂﹂﹂
﹁えっと⋮
何があったんですか
﹂
皆ハモりました。どーゆーこっちゃい。
﹁﹁﹁﹁は
﹁蘭華⋮頼むから⋮アテナ様に料理を作らせないでくれ⋮﹂
?
?
図星という顔をしています。やっぱり⋮
﹂
うん。言い出しといてあれですけどなんて現金なんでしょう。
﹁行くぞサーシャ。﹂
﹁アップルパイ作るから。﹂
なんで⋮﹂
﹁はぁ
?
?
﹁そういう事だ⋮⋮﹂
?
﹂
またハモった。うん、今日はよくハモるなぁ⋮
﹁﹁﹁﹁そりゃあかんわ。﹂﹂﹂﹂
﹁⋮⋮⋮アルバフィカと張り合える料理⋮と言えばわかるか
﹂
黄金聖闘士の皆さんも﹃信じられない﹄という顔をしています。
﹁そんなことが⋮﹂﹁本当ですか⋮
?
﹂﹁マジかよ⋮﹂
の世まで飛んでいけるって事ですか
﹁⋮⋮⋮えっと⋮まとめると、サーシャは料理が壊滅的で、食べたらあ
☆★☆★☆★☆★☆★☆
﹁じ、実は⋮⋮⋮﹂
本日三、四回目になる問いかけ。
?
?
120
?
?
というか⋮デジェル様⋮シオン⋮キャラが⋮
121
本当に退屈しないな⋮
︻アテナ神殿の外︼
カルディアside
﹂
俺は今物凄く困っている。サーシャが泣き止まねぇ⋮
﹁うえええぇぇぇぇええん
﹁さ、サーシャ⋮頼むから落ち着け⋮﹂
蘭華に従ってサーシャを連れて外に出たのはいいのだが⋮
これパッと見俺がサーシャを泣かしたみてぇじゃねぇか⋮
事情を知らない聖闘士に見られたらヤバイ。
コツコツ⋮⋮⋮
﹂
あ⋮⋮なんか⋮フラグだったのだろうか⋮
﹁アテナ様
﹁ジジフォスかよ⋮⋮﹂
﹂あー⋮ハイ。﹂
﹂
ケイロンズライトインパルス
用っ
﹁
﹁理不尽だァァァァァ
ッ
﹂
﹁も、もしかして玉子焼き教えたことがいけなかったのでしょうか⋮﹂
蘭華side
︻アテナ神殿︼
サーシャには当たらないように攻撃を調整してやがるな⋮
シ ジ フ ォ ス の 放 っ た 技 は 寸 分 違 わ ず 俺 に あ た っ た。ち ゃ っ か り
!!
122
あー⋮これマズイだろ⋮
﹁カルディア⋮⋮アテナ様を⋮﹂
﹁やっぱりこーなんのかよ⋮⋮﹂
ロリフォスに。
﹂
シジフォスから怒りの小宇宙がヤベェ。こりゃ⋮殺されるかな
?
!
﹁覚悟は出来ているんだろうな⋮
?
!?
﹁ダ メ も と で 一 応 言 っ と く が 俺 が 泣 か せ た わ け じ ゃ ね ぇ か﹁問 答 無
?
"
!
ドゴォォォォオオン⋮⋮⋮
!!!
"
﹁否定はせん⋮⋮﹂
﹁そ、そうですか⋮﹂
5人の間に暗く重い沈黙が⋮
﹂
ドゴォォォォオオン⋮⋮⋮
﹁な、なんだぁ
﹂
不意打ちの大きな音にみんなビックリしました。
﹁この小宇宙⋮⋮シジフォス⋮か⋮
な場所で小宇宙を燃やすなんてシジフォスがやるわけ⋮
あ⋮⋮やりかねない⋮ロリフォスなら。
?
に正義の鉄槌の名の元に技をぶっぱなした⋮という事だな
﹂
﹁つまり⋮カルディアがアテナ様を泣かせたと勘違いしてカルディア
☆★☆★☆★☆★☆
﹁きょ、教皇様⋮実は⋮⋮⋮﹂
﹁シジフォスよ⋮何があったか説明せよ。﹂
⋮⋮⋮⋮⋮⋮何があった⋮
しているシジシォス。
泣いているサーシャと気絶してるカルディア。浅い呼吸を繰り返
みんな目の前の光景に理解が追いつかない。
﹁﹁﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂﹂﹂
☆★☆★☆★☆★☆★
という事で音がした方に向かって歩いていきました⋮
みんな同意。はい、決定。
﹁そうだな⋮﹂﹁それがいいだろう⋮﹂﹁そーだな⋮﹂﹁そうしよう⋮﹂
﹁嫌な予感しかしません⋮とりあえず行ってみませんか
﹂
流石にデジェル様も半信半疑。シジフォスの小宇宙ですが⋮こん
?
あーあ⋮本当に退屈しないなぁ⋮⋮
シジフォスは蛇に睨まれたカエルのようになっていた⋮
﹁は、はい⋮﹂
セージ⋮⋮未だショックが抜けないのか口調がおかしい。
?
123
!?
絶対零度の視線
シジフォスside
⋮⋮今の自分の置かれた状況を理解しようと努力している。
泣き続けるアテナ様とさっき気絶させたカルディア、教皇とシオ
ン、マニゴルド、蘭華が居る。
そして⋮教皇の前で正座する私。
どうしてこうなった⋮⋮⋮
そもそも私は任務の報告に来たはずなのである。
主 人 が い な い 宮 が 多 く 不 審 に 思 い な が ら も 教 皇 の 間 ま で 歩 い て
いった。そこまではいいのだが⋮教皇の間には誰もいなかった。な
んとなくアテナ神殿に向かって歩いていくと、泣いているアテナ様と
そばでオロオロしているカルディアを見つけたのだ。
﹁それで我を忘れて技をぶっぱなしたのか⋮﹂
﹂
⋮⋮⋮⋮だからロリフォスなんだよ⋮
とは言えず黙っている。
﹁とりあえず⋮カルディアを起こしませんか
﹁は
別にいいですけど⋮何に使うんですか
﹂
﹂
﹁それもそうだな。なら蘭華、デモンローズ寄越せ。﹂
無理やり話題を変える。これ以上は沈黙が痛い。
?
?
一 応 魚 座 の 聖 闘 士 候 補 生 な の で デ モ ン ロ ー ズ は 持 っ て い ま す。
まぁごく少量︵数輪︶ですけど。
それ逆に眠りますよね
永遠の眠りですよ
!?
﹂
﹁とりあえずカルディアに握らせる。んでそのまま放置。﹂
﹁いやいや
!?
!?
124
﹁そうそう⋮⋮⋮ってえ
なんで考えていることが⋮テレパシー
﹂
﹁いや、声に出てますよ⋮⋮﹂
﹁え
!?
!?
うーん⋮﹃やっぱり﹄。シジシォスの話を聞いて思った事である。
蘭華side
!?
?
﹁﹁﹁﹁蘭華に同意﹂﹂﹂﹂
﹂
だよな
起こそうとしているのに真逆の事をしてどうするんですか⋮
てかそれも永遠の眠りですよ
﹁チッ⋮⋮じゃあデジェル、氷漬けにしよう。﹂
﹁舌打ち
フリージングコフィン
スターダストレボリューション
氷漬けってあれじゃん
﹁ならシオン、
﹂
で⋮⋮﹂
!?
ですか
﹂
﹁てかなんでちゃっかりカルディアを永遠の眠りに誘おうとしてるん
皆ポカーンとしています。
これを言ったのは私ではありません。シオンです。
﹁それも却下ッ
"
"
!!
﹂﹂﹂﹂﹂﹂
﹁さ っ き 食 べ た ア ッ プ ル パ イ が カ ル デ ィ ア の 方 が 大 き か っ た か ら。﹂
キッパリ
﹂
﹁﹁﹁﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮は
﹁しょーもなッ
?
それな。デジェル様に完全同意しました。心の奥心底どうでもい
﹁えっと⋮ちょっとの間黙っててくれ。﹂
マニゴルドを見る目が冷たいものに変わっていく。
対零度の視線。鳥肌が立つ。
師匠である教皇ですらも無表情になった。デジェル様に至っては絶
セー ジ
アホらしい。呆れてものも言えない。いや突っ込みましたけどね。
!?
いとこで黄金聖闘士同士でアホなことしないで欲しい。
125
!!!! "
!"
!?
!?
起きてくださーい
オーバーヒート
蘭華side
﹁カルディアー
﹂
セー ジ
フォス。言わなくも分かったですかね
というか起きません。眠り姫ですかっ
ガバッ
﹁おはようっ
﹂
﹁起きないとご飯作ってあげない。﹂
必殺技を使うことにします。
サー
シャ
⋮⋮⋮⋮⋮ 仕 方 が あ り ま せ ん。あ ま り や り た く な か っ た の で す が
!?
?
左から私、デジェル様、シオン、教皇、アテナ、マニゴルド、シジ
まん⋮⋮﹂
ルディア起きてー﹂﹁どんだけ本気で技ぶっぱなしたんだよ⋮﹂﹁す、す
﹁起きませんね。﹂
﹁⋮⋮⋮起きないな﹂
﹁そうだな⋮﹂
﹁起きんな⋮﹂
﹁カ
にしたせいでもあるので。
とにしました。元はといえば私がサーシャとカルディアを2人きり
マニゴルドに任せると危険という事を学習したので、私が起こすこ
?
どれだけご飯食べたいんですか⋮⋮
結局なんで黄泉比良坂まで行くことになったん
正直呆れて反応に困るレベルです。
﹂
﹁そ、そうだ教皇っ
だ
!
した。⋮⋮が⋮しかしその話題は禁句と言っても過言ではありませ
ん。
﹂
⋮⋮﹃アテナの料理を食べて死にかけた。﹄なんて本人に言えるわけ
がありません。
﹁た⋮多分年のせいだなっ
流石に無理があるかと⋮
マニゴルド⋮⋮何とかしようとしているのは伝わりますがそれは
!
126
?
起きました。⋮⋮⋮本当に気絶してたのか怪しいですね。
!!
!!
さすがにバツが悪いのか無理矢理にカルディアは話題転換をしま
?
﹁な、なにせ200歳越してるからなっ
﹂
物理的に。
ラというか⋮正直泣きたいです。泣いていいですかね
避したいです。
サーシャ
?
ナの聖闘士としてアテナを騙すのはどうなのでしょうか⋮
とりあえず原因を騙せたので良かったのでしょうか
いや⋮アテ
様は遠い目をしています。現実逃避中なのでしょうか。私も現実逃
フォスはイマイチ事情が読み込めていない様子。シオンとデジェル
カ ル デ ィ ア は﹃絶 対 嘘 だ ろ。後 で 説 明 し ろ﹄と い う 視 線 が。シ ジ
流石に信じたのはサーシャだけらしい。まぁ⋮デショウネ。
る。見ているこちらの良心が痛む⋮⋮
こんな話を信じてしまったサーシャは、優しい言葉をかけてくれ
﹁そ、そうなんですか⋮⋮セージ、無理はいけませんよ。﹂
?
しかし⋮真横にいる私にはビシビシと怒りの小宇宙というか⋮オー
セージもサーシャが見ているから何とか我慢しているのでしょう。
それ以上はコロサレマスヨ
に理解できます。⋮ですがそれ以上はマズイ。教皇の額に青筋が⋮
セー ジ
マニゴルド⋮⋮頑張っているのは分かります。十分過ぎるぐらい
!
そのうちオーバーヒートするね。きっと。
どちらが正しいのか判断がつかず頭の中でぐるぐる回ってました。
?
127
?
どーしてこうなった⋮
蘭華side
まぁ、そんなこんなで今どこにいるか。⋮⋮うん。何処なのでしょ
う。と り あ え ず 目 の 前 に 見 え る の は 赤 く て 熱 い ド ロ ッ ド ロ の 液 体。
俗に言う﹃マグマ﹄というやつですね。
これだけの説明では何が起こったのか誰もわからないでしょうか
︼
ら、私の頭の整理も兼ねて回想シーンどうぞ。
︻回想シーンstart
がなく、すごい笑顔で退室︵というか退宮
マ
ニ
ゴ
ル
カ
ル
ディ
︶しました。
ド
双魚宮まで行った時、元気が戻ったというか
?
に揃って
!!
けれどその心情を見破ったのか、カルディアが
︶ました。とりあえず⋮⋮
えっと⋮⋮私は荷物ですか
﹁あーもう。めんどくせぇな。﹂
ヒョイ。
⋮⋮⋮⋮はい
みぞおちが痛いです。
?
たよ
とか言い始めました。いやー⋮⋮もちろん拒否ろうかと思いまし
﹁﹁いろいろあったけどとりあえず行くぞッ
﹂﹂
⋮⋮ 思 い 出 し た と い う か ⋮⋮ 問題児その1 と 問題児その2 が 揃 い
ア
と言っても一応任務の報告なので私たちが立ち会ってもいいわけ
けないやつですよね
ワイ。人間慣れが肝心とか言いますけど、これは慣れてしまったらい
⋮⋮なんだか教皇の間に行くのが当たり前になっている自分がコ
ました。
わったので、シジフォスの用事︵任務報告︶のために教皇の間に行き
とりあえずカルディアを起こしてシジフォスは平謝り。それが終
!
これはあんまりですよぅ
!!
空気みたいになってますよっ
諦めたよう
!
!!
デジェル様
!
かに言いましたがッ
シオン
!
128
?
まるで荷物のように方に乗っけられ︵
?
聖闘士になる時に﹃女扱いしないでください。﹄と言いましたが⋮確
?
?
な目︵というか顔︶をしないでくださいっ
︻回想シーンend︼
案の定﹁暴れんなバカ﹂とか言われて気絶させられました。
みました。今考えるとすごいアホなことしたなぁ思いますが。
流石に荷物運びはあんまりですし、みぞおちが痛いので少し暴れて
!!
﹂
暑いなぁ⋮とか思って目が覚めました。気がついたら目の前マグ
マ。
そりゃ暑いですよねっ
﹁えっと⋮⋮ここ何処ですか⋮
!!
﹁ここか
ここはデスクィーン島だ。﹂
デスクィーン島
﹂
周りに岩とマグマしか無い
﹁へー⋮ここがデスクイン島⋮⋮ってええ
いや熱いよねっ
!!
まさに地獄ってやつです。
そりゃ暑いよねっ
わけですよっ
!
今すぐ土下座します。
一 輝 ⋮⋮ 絶 対 大 し た こ と な い 場 所 だ ろ と か 思 っ て ご め ん な さ い。
アニメで見るよりも壮絶な場所でした。
ちゃんの修行地ですよね⋮⋮
いう絶対的な壁まで飛び越えて冥界の王︵神︶に往復ビンタするお兄
冥 王 ハー デ ス
愛する瞬︵弟︶のためならば、海界や冥界、挙句の果てには時間と
確か⋮デスクィーン島って⋮
!?!?
修行がどうこう言ってたのでここが修行地︵地獄︶何でしょうけど。
?
?
129
!!
!?
?
無理ですから
蘭華side
ここがどこかはわかりました。⋮しかしなぜここに来たのかわか
りません。いえ、修行︵地獄︶のためなんですけど、なんでこの場所
︵デスクィーン島︶なのかってことです。
﹁火山があるところが良かったから。﹂
﹂
フェニックス
何でここなんですか
うん。シンプルな回答です。シンプル・イズ・ベスト。
﹂
﹁ああ。教皇命令でな。﹂
﹁って不死鳥の聖衣
嫌な予感。今更ですかね
﹁好き勝手できるって⋮一体何するつもりなんですか⋮⋮﹂ 勝手できるから。二つ目の理由のほうが大きいな。﹂
探すこと。二つ目はこの島には一般人というか人がいないから好き
﹁理由は2つ。一つ目はこの島のどこかにあるという不死鳥の聖衣を
﹁でもほかにも火山ってありますよ
?
ブロンズセイント
﹂
﹂
りこの島にあるということは何かしらの意味があるということ。簡
単に動かしていい物なのか
﹂
﹁いや、誰も持って帰るとは言ってねぇからな
﹁そーなんですか
?
?
能性があるのなら持って帰るつもりだ。﹂
﹁へー⋮﹂
﹁というかなんで教皇は、こんな面倒臭い任務をマニゴルドではなく
俺に回すんだよ。普通弟子にやらせるだろ。﹂
﹁それだけ教皇様はカルディア、お前に期待しているということなの
だろう。﹂
﹁デジェルに同意だ。セージ様のお心を考えろ。﹂
﹁そーだぞ。ついでにちゃっかり俺に回すなよ。﹂
130
?
確 か こ の 時 代 に 不 死 鳥 の 青銅聖闘士 は い な か っ た は ず で す。何 よ
﹁⋮⋮なんで探すんですか
?
?
?
﹁ああ。場所を確認して決めることだけどな。冥闘士の手にわたる可
?
あーだこーだと私を放置して話し込んでしまう4人。放置プレイ
とかやめて欲しいんですけど⋮悲しいじゃないですか。というかこ
んな熱いところでなんでそんなにも元気なんでしょうか。無理です
よ、脱水症状起こしてます。熱中症で倒れます。まだ何もしてないで
すけど。
クリスタルローブ
みていにな。﹂
﹁そりゃ暑いだろうな。小宇宙を燃やして体の周りにとどめて壁を作
んだよ。シオンの
すから。
無理ですから。何より
クリスタルローブ
とか見たことないで
とマニゴルド。いや⋮そんな簡単に言われても⋮
"
"
てません。そのへんわかってます
﹂
﹂
、この島を出る時にはマグマで泳げるぐらいにはなって欲しい
と思っているけど
﹁カルディア、とんでもないこと言わないでくださいっ
!?
﹁ん
?
というか無理です。そんな簡単に出来たら今頃こんなにもへばっ
けどね。
︵クリスタルウォール︶の﹃ローブ﹄バージョンという事なのでしょう
まぁ技名からして﹃ほとんどの物を跳ね返す牡羊座鉄壁の防御壁﹄
"
つい心ではなくリアルで突っ込んでしまいました。絶対に無理で
すからっ
!!
131
"
?
?
聖闘士としてこれはどうなのだ
﹁⋮⋮⋮それで、どっちが先なんですか
るものだった。
今なんて言った
﹂
﹂
アレェ
﹂
絶対ムリデスヨ
?
﹁もちろん両方同時進行に決まってるだろ
⋮⋮⋮パーデゥン
﹁もちろん両方同時進行に決まってるだろ
ムリデスヨ
無理難題ニモ
聞き間違いかなぁ
が、すごいダメモトで聞いてみた。しかしその答えは私の想像を超え
おそらく修行︵地獄︶の方が先なんだろうなぁと予想ができていた
?
?
⋮⋮ハイ。聞き間違いではなかったようです。
﹂
﹁⋮イヤイヤイヤイヤ
程ガアリマスヨ
!?
カ
ル
ディ
ア
んだこの問題児その2はっ
ニ
ゴ
ル
ド
カ
ル
ディ
ア
目をキラキラさせな
い﹄とか言ってます。現実逃避しないで助けてくださいよ
マ
問題児その1 と 問題児その2 っ
!!
﹁ならやるか。﹂﹁そうだな。﹂
オ イ コ ラ
がら恐ろしいことを言うなぁ
敬 語
ナニソレオイシイノ
尊敬語
さすがにそれは無理だろう。﹂
だァァァァァァ
﹁いや待て
前言撤回だよバカヤロウっ
お前もかァァ
と視線で助けを求めます。⋮が
ここにま
そんなのくそくらえ
?
ありがとう。心の底から感謝します。
⋮⋮アレ
ともな人はいないのかっ
﹁諦めろ。﹂
デジェル様助けてぇ
泣きたくなってきました。
!!
!!!
﹁せめてどんな訓練をするのか決めてからだ。﹂
シオン
?
もう敬うなんて気持ちはサラサラありません。
!!
!
?
!?
シ オ ン や デ ジ ェ ル 様 は 空 を 見 上 げ て い ま し た。﹃私 は 星 に な り た
!!
ムリです。びっくりしすぎてカタコトになりました。何言ってる
!?
!!
!!
!!
?
!! ?
132
!?
!!
?
?
?
?
はい、見捨てられたァ
﹁ん
この小宇宙⋮﹂
なんて考えていると⋮
遠い目をしてるよ⋮
あーあ⋮私ここで死ぬなー⋮
!!
めには今は冥闘士でも何でもどんとこいですッ
﹂
冥闘士を退治しに行きましょう。ほかっといたらのちのち大
﹂
訳ではありません。たぶんっ
﹂
黄金聖闘士4人とか多すぎな気がします。
﹁というか皆さん全員ついてくることなかったんじゃないですか
﹁そうだな⋮﹂
﹁このへんですよね
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
!
これ私が戦うんですか⋮
?
?
﹁蘭華の戦いっぷりを見ておきたかったからな。﹂
⋮⋮⋮へ
?
﹂
決して修行しなくてすむからという理由でテンションアゲアゲな
﹁気のせいです。﹂
﹁⋮蘭華おまえ⋮なんか嬉しそうじゃねえか
変ですよっ
﹁さぁ
と思いますけどね。
いや、アテナの聖闘士として冥闘士の登場を心から喜ぶのはどうか
!
何はともあれ今はとても嬉しい事件です。修行︵地獄︶をしないた
うん。分けて言わず誰か代表して言おうよ
上からマニゴルド、シオン、デジェル様、カルディア。
﹁だな。﹂
﹁冥闘士⋮﹂
﹁これは⋮﹂
?
いつの間に決まったんだ⋮⋮
?
133
?
?
!
!
外野うるさいですよ
﹂
聞いてるのかっ
のですが完全スルーです。
﹁オイコラ
﹂
お前だっ
﹂
すみません。聞いてませんでした。
﹂
﹁そこの赤毛の女っ
﹁私ですか
﹂
﹂
さっさと構えろっ
意味不明ですッ
﹂
﹁そこの男どもが言ってたからだっ
﹁なんで私がトップバッターって知ってるんですか
﹁お前がトップバッターなんだろう
なぜ私が呼ばれた
!
いっ
﹂
マニゴルドとカルディアは何も
﹂
というかどっかで見た人ですねっ
?
﹁さっさと構えろっ
﹂
﹁いや、なんで真面目に待ってるんですか。普通攻撃してきますよ
﹂
﹁女に不意打ちなんてできるかっ
敵
﹁貴方ほんとに冥闘士ですか
敵ながら天晴れ精神ですよっ
﹂
違和感が半端ないです。
原作で聖域にサガ達と乗り込
ピンクの冥衣纏っ
原作道理にゴツいのに⋮⋮⋮ゴツいのに﹃ジョニー ﹄⋮⋮
てる方ですよね
んで挙句の果てにシャカに殺られたゴツイ人っ
サイクロプスってあの人ですよね
﹁名前なんかかっこいい
﹁俺は地暴星サイクロプスのジョニー
ちぼうせい
!!
!!
!?
﹂
考えていないに違いない。絶対﹃面白いから﹄みたいな理由に違いな
!!
﹁何教えてるんですか
﹂
びっくりしすぎて外野の声が聞こえません。いや、聞こえてはいる
﹁アテナの聖闘士
いつの間にか私が戦うと決まっていた。その事に驚愕ですよ。
!?
!!
何考えてるんだこの人たちはっ
!
!!
!?
!?
!?
!?
!
!
!?
!!
!
!
134
!
!?
!!
!?
!!
!?
!!
﹁オイコラ
﹂
﹂
!!
もしかしたら今年一番のビックリ事項かも
こっちは名乗ったんだからそっちも名乗れっ
﹁すごい礼儀正しい
ガチビックリですよ
知れません。
﹂
構えろっ
﹂
﹁えっと⋮魚座の聖闘士候補生の蘭華です。﹂
﹁なら蘭華さんっ
なんだこの人はっ
﹁まさかのさんづけ
!
﹁﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂﹂
!! !?
!!
︶はっ
戦いたくないっ
!!
流石に黄金聖闘士達みんな絶句してます。なんだこの素晴らしい
人︵
?
﹂
﹂
﹁は、はぁ⋮⋮⋮
!
ジャイアント・ホールド
﹂
ッ
﹂
どれだけ短時間で決着つけたいんです
!!
すけど。
﹁
﹁イキナリ
﹂
イキナリ必殺技来ました
か
﹁こ、このっ
ドゴォォォォオオン
!!
フリージングシールド
パリーンッ
です。
私の防御が通じないって事で
流石に絶対零度を極めているわけではないので
横に飛んで技の余波を避ける。
強度があまり強くないのです。
氷が割れたァァ
"
というかこれ⋮まずくないですか
?
!!!
とっさに小宇宙で氷の壁を作り防ぎました。
!!
"
イマイチやる気が出ません。流石に真面目にやらないと殺されま
?
﹁なら殺るぞっ
ずっと待たせるのは悪いので構えました。
りやすいです。顔に出てます。
ですがジョニー︵笑︶さんもイライラしてきた様です。すごくわか
!!
!!
!
135
!?
!?
!
!?
"
!?
"
すよね
シオンの
は使えません。
どうしようっ
必死に考えます。
﹁がんばれー。﹂
クリスタルウォール
﹂
集中出来ないじゃん
が使えれば別ですけど私
136
"
﹁外野うるさいですよ
気が散るっ
!!
!?
!
?
!
"
不死鳥︻フェニックス︼
蘭華side
焦れば焦るほど考えは浮かばない。けれどこの状況で焦るなとい
うのは無理なことだ。
﹂
というかよくシャカは一撃で倒したな⋮流石最も神に近い男。
﹂
﹁よそ見している余裕があるとは以外だなッ
﹁よそ見なんてしてないし余裕も無いッ
!!
か言うところだろ。﹂
﹂
﹁そだそだ。カルディアの言う通り。﹂
﹁だから黙ってくださいなっ
﹁おーおー。やっぱりまだまだだなぁ。﹂
シオンside
黄金聖闘士に比べたらどうせまだまだですよっ
!!
シルバーセイント
聖闘士の力って言うのはどーなんだよ
私
た
ち
黄金聖闘士を基準に考える
地
獄
ちゃんと
積尸気冥界波
"
﹁それはそーなんだけどな。だが俺達が訓練をしてやってるのに白銀
できるほど。
そう、蘭華の力は青銅聖闘士を超える。それこそ今すぐ聖衣を継承
な。﹂
闘士⋮いや、白銀聖闘士並の力があるぞ
﹁一応言っておくが⋮蘭華は確かに黄金聖闘士には及ばないが青銅聖
﹃そうそう﹄と同意しかけた所で気がついた。
上からカルディア、マニゴルド、デジェル。
きるようにならなくては。﹂
﹁だがそれでは聖闘士としては未熟。いかなる時でもクールに対応で
からな。﹂
﹁そうだなぁ⋮あいつは危機的状態にならねぇと実力が発揮してねぇ
!
﹁おいおい蘭華。そこは無理にでも﹃これぐらいどうってことない﹄と
補生なんだよッ
うん、即答。黄金聖闘士⋮いや、聖闘士ならともかく私は聖闘士候
!!
?
?
"
137
!!
を教えてやったのによ。﹂
⋮あれは教えたというのだろうか
﹁どういう事だ
﹂
﹁おいおいわかんねぇのか
?
﹂
?
だ。その事に驚愕だ。
﹁オイ。結構失礼な事考えてねぇか
﹂
スカーレットニードル
﹁気のせいだろう
バレたら
うなので秘密。
を駆使して襲いかかってきそ
考え事をして見ていなかったことをのちのち後悔する事になる。
さぁ蘭華はどうしている
﹂
カルディアは何も考えていないように思えて意外と考えていたの
﹁ま、まぁ⋮そういう事だ。﹂
﹁だから⋮だからこの島だったのか。﹂
不死鳥の青銅聖闘士にするつもりだったのだろう。
フェニックス
蘭 華 が 聖 衣 に 認 め ら れ る か は わ か ら な い が 認 め ら れ た ら 蘭 華 を
このデスクィーン島には継承者のいない青銅聖衣、不死鳥がある。
そういう事か⋮
﹁だからデジェル⋮人のセリフとるなよ⋮﹂
うと思った。⋮⋮⋮⋮という事だろう
いうこと。少しでも多く戦力が欲しい。よって蘭華に聖衣を与えよ
活するということだ。復活するという事はすなわち聖戦が始まると
﹁冥闘士が活動を活発化しているということは近々冥王ハーデスが復
と﹂⋮⋮⋮オイ⋮﹂
わっかりやすく﹁わかりやすく説明する
⋮⋮⋮オイ。デジェル⋮人のセリフとんなよな⋮﹂
﹁と い っ て も 冥 闘 士 が 活 発 に 活 動 し て る。﹁だ か ら こ こ に 来 た。﹂
を止めることは私には不可能なようだ⋮
⋮⋮⋮スマン蘭華。デジェルはともかくカルディアとマニゴルド
?
?
"
?
138
?
?
"
⋮ナニコレ
シオンside
ジョ
ニー
カルディアに関心した。黄金聖闘士同士で語り合っていたことで
蘭華を誰も見ていなかった。
それに気づいて皆いっせいに蘭華と冥闘士を見る。
そして⋮⋮⋮⋮いっせいに固まった。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮オイ。デジェルワリィ。﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮どうした
だよな⋮
﹂
﹁カルディア⋮もう一度確認させてくれ。ここはデスクィーン島なん
⋮﹂
﹁マ ニ ゴ ル ド も か ⋮⋮ 皆 見 て い る と い う こ と は 夢 で は な い よ う だ な
﹁おう、俺もだな﹂
﹁奇遇だな。私もだ。﹂
﹁いっぺん俺を殴れ。どうやら立ったまま夢見てるみてぇだ。﹂
?
う。
﹁ああ。﹂
﹁なぜデスクィーン島にこんなにも植物があるんだ⋮
﹂
そ の は ず な の に ⋮⋮ 蘭 華 と 冥 闘 士 の 周 り に は 植 物 が 生 え て い た。
である。
そう、ここはデスクィーン島。植物など生息しないマグマが滾る島
?
﹂
それもたくさん。花や草、挙句の果てには木に近いものもある。
﹁どーなってんだ
﹁くらえっ
ビッグ・ナックル
ッ
"
﹂
冥闘士と戦い始めて数十分。いまだ突破口を見いだせずにいた。
蘭華side
マニゴルドの疑問に答えられる者はいなかった。
?
!
139
?
そう聞いた私を誰も責めなかった。おそらく全員思ったことだろ
?
!"
﹁きゃぁぁぁ
﹂
も来るのだろう
というやつだ。実際に体験するとは思わなかったが⋮
ジョニー︵笑︶の攻撃を受けて吹っ飛んだ。それはもう豪快に。
車田飛び
車田落ち
"
﹁⋮⋮⋮⋮ほぇ
﹂
⋮⋮⋮⋮そのはずだった。だが痛みはない。
に激突するだろう。
けにはいかず地面がどうなっているかはわからないがもうすぐ地面
に引かれて地面に向かって落ちていく。流石に敵から視線を外すわ
だが現実は甘くはない。吹っ飛ばされて宙に浮いたので勿論重力
落ち方をしたら普通は死ぬ。首折って死ぬ。
か。流石に顔面から落ちるアレは遠慮したいのだが⋮だいたいあの
車田飛びをしたという事はお約束の
"
!?
﹂
?
いうかみんな唖然としてる。
?
たのだが精神的にはダメージがある。なんだこれ
﹁⋮⋮⋮幻覚だな。﹂
﹄と突っ込みたい。なんて
!
﹂
﹂
﹁⋮今何があった
﹂
風はない。だいたい風が吹いていても今の枝の動きは不自然だ。
﹁⋮⋮は
華麗にずっこけた。カルディアが。
﹁ブヘッ
ベシャァァッ
アを﹃ベシッ﹄と叩いた。
考えたらカルディアのすぐ真横にあった木が枝をゆらしてカルディ
とカルディア。﹃そんなわけあるかっ
!!
ジョニーですらもポカーンとしている。肉体にダメージはなかっ
﹁⋮⋮ここはデスクィーン島だよな⋮
﹂
随分と間抜けな声が出てしまったが突っ込む者は誰もいない。と
﹁⋮⋮⋮は
⋮⋮⋮﹃植物﹄だった。
置いといて、目を開けた瞬間視界に飛び込んできたのは
恐る恐る目を開ける。いつの間にか目を閉じていた。まぁそれは
?
!!
?
140
"
"
!
?
﹂
カルディアも流石に変な顔している。いやずっと変な顔はしてい
るのだが。
﹁とりあえず⋮⋮ナニコレ
呟いた私の疑問は誰も答えてくれなかった。
141
?
地獄絵図
﹂
蘭華side
﹁えーっと⋮
皆固まっている。ポカーンと。
え
なにこれ、私が植物操った⋮
よな
いやいやそんなわけが⋮偶然だ
?
?
突っ込みがきただけ。偶然っ
⋮⋮⋮そんな偶然あるか
﹂
でペシンと叩くように念じた。なんてバカバカしい。
ペシン
﹁アデッ
﹁⋮⋮⋮⋮ほぇ
どうしました
﹂
﹂
⋮マジすか
﹂
﹂
?
いやいや、
これはもう私が植物を操っていると考えた方がいいのだろうか
﹁蘭華⋮⋮﹂
﹁⋮デジェル様
﹁気づいていないのか
﹂
私が調子に乗ってマニゴルド殴ったのバレた
まだ私自身が確信もててないんですよ
﹂
﹁小宇宙が変わっている。﹂
﹁⋮⋮ほぇ
﹁⋮⋮⋮誰のですか
﹁あ、ああ。蘭華⋮小宇宙が違うものに変化しているぞ
﹂
言っている意味がわかりません。ドーユーコッチャイ。
!?
バレた
﹁︵ギクリッ︶⋮⋮な、何がですか
?
﹁蘭華のに決まっているじゃないか。﹂
?
!?
?
?
?
?
?
モノは試しだね。って事で私は少し調子に乗ってマニゴルドに枝
とあるアニメのキャラクターが言ってたなぁ⋮
﹃世の中に偶然なんてない。あるのは必然だけよ。﹄
?
!
カルディアに心の中で突っ込みを入れた直後にカルディアに枝の
?
⋮⋮⋮マジか⋮
!?
!?
?
?
142
!
﹁﹁ああ。﹂﹂
﹂﹂﹂﹂
⋮⋮⋮ってアレ
﹁﹁﹁﹁オウッ
皆の者
﹂
﹂
計5人ですっ
﹁なんかいっぱい来たぁぁぁ
4人増えましたよ
れませんっ
⋮⋮⋮
流石に私には5人は相手しき
シオンまで⋮二人がいうならその通りなのでしょう。
﹂
﹁な、なんだこの小宇宙は⋮ッ
﹂
皆の者っ
ジョニーもびっくり。
﹁こ、このっ
﹁どこの時代の人間
!?
つい突っ込んでしまいました。
!!
幽遊白書
。その中の植物を
ニメモドキのことも出来るということではないでしょうか
聖闘士星矢の次に大好きなアニメ、
悪巧み
﹁カルディアには言われたくないです。﹂
﹁⋮⋮オイ蘭華。なんかお前ゲスい顔してるぞ。﹂
操るキャラクター、蔵馬のマネだって出来るってことですよね
"
この技はたくさん敵がいたほうがいいんですよね。って事でデモ
けど。
これでできなかったらすごい恥ずかしいですよね。やってみます
﹁⋮⋮わかった。﹂
﹁いいえ、1回試してみたいことがあるんです。やらせてください。﹂
﹁蘭華、流石に5人はキツイだろう。﹂
れたくありません。
即答。多分聖域1番戦闘中にゲスい顔をするカルディアには言わ
!?
"
!?
どうやら今の私は植物を自由自在に操れるようなのです。ならア
⋮⋮そうだ。いいこと考えた。
!!
?
!?!?
?
風華円舞陣
ッ
︵笑︶﹂
!!
フウカエンブジン
ンローズをもって叫びました。
﹁
"
143
!
!?
!
!
!
ー風華円舞陣ー
"
幽遊白書のキャラクター、蔵馬︵南野秀一︶が使う技の一つ。
の花弁バージョ
空中に散らばる花びらが刃のようになって敵に攻撃する。
クリムゾンソーン
※詳しくはWikipediaへ☆
まぁわかりやすく例えると
ン。
☆★☆★☆★
﹂﹂﹂﹂﹂
もプラスされて結構すごいことになってると思う。
﹁﹁﹁﹁﹁ぐわああぁぁぁああッ
冥闘士を完全に殲滅。⋮⋮ちょっとやりすぎたかな⋮
﹄とか言って攻撃したのを見た瞬間凍りつ
どうやら力を使い過ぎたらしく意識が飛んだ。
マニゴルドside
﹁﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂﹂
蘭華が﹃風華円舞陣ッ
いた。
?
それだけでも強いのだが花びらが︻デモンローズ︼なので毒の香気
す。花びらを小宇宙で包んで強化する。
植物は私の意思で動くようなので宙に浮かせて敵に向かって飛ば
"
﹂
蘭華が一瞬ドヤ顔をしたかと思ったらぶっ倒れた。
﹁蘭華
144
"
!!
つい俺は突っ込んでしまった。広範囲殲滅技だろアレ。
﹁なんだあの地獄絵図は。﹂
!!
シオンが駆け寄る。焦りすぎだろオイ。
!?
イタイ子
デジェルside
⋮⋮理解が追いつかない。意味がわからないことが短時間にたく
さん起き過ぎた。
蘭華の小宇宙の変化。アレはなんだ
﹁蘭華ッ
しっかりしろッ
﹂
蘭華と共に過ごしてきたが初めての光景である。
そして⋮蘭華は植物を操っていたように思える。少なくない時間
る小宇宙のプレッシャーの方が強い。
をも凌ぐ。だが神の小宇宙ではない。少なくともアテナ様から感じ
とても大きくて強大な小宇宙。小宇宙の大きさは私達黄金聖闘士
?
アが担いだ。
方針が決まり聖域への帰路を急ぐ。気絶している蘭華はカルディ
﹁ああ。戻ろう。﹂
﹁そーだな⋮ちょっと残念だがしゃーねーか。﹂
方がいい。
聖域にいた方がいい。それに出来事を教皇様とアテナ様に報告した
だけのようにも思えるが、もしもの事を考えるとすぐに対応ができる
流石にこの状態で聖衣捜索も訓練も出来ない。ただ気絶している
﹁1度聖域に戻ろう。﹂
マニゴルドのいう通りだ。
﹁にしてもこれからどーするか⋮﹂
﹁⋮⋮わかった。﹂
﹁蘭華が心配なのはわかるがちょっと落ち着け。﹂
﹁だがマニゴルド⋮⋮﹂
﹁落ち着けシオン。どっからどー見ても気絶してるだけだから。﹂
取り乱しているシオンは初めて見た。
だ。どう見ても力を使いすぎて気絶しただけに見える。あんなにも
シオンの声で我に返った。にしても⋮少し落ち着いたらどうなの
!
︻道中何もなかったので省略︼
145
!
︻教皇の間︼
そして私達は教皇様とアテナ様と対面している。
蘭華は途中にある双魚宮に寝かせてきた。アルデバランとレグル
スが驚愕していたが。レグルスに至っては血相を変えて﹃大丈夫かっ
﹄と心配していた。
﹁⋮⋮⋮小宇宙⋮か⋮﹂
﹁また⋮⋮です⋮か⋮﹂
デスクィーン島での出来事をすべて報告した後、アテナ様と教皇様
﹂
は予想と違って﹃またかー﹄みたいな反応をした。
﹂
﹁また⋮⋮とはどういう事だ
﹁カルディアッ
?
﹂
って事はなんだ
じゃねぇって事か
﹁⋮ ん
蘭 華 の ヘ ン テ コ 小 宇 宙 は、今 回 が 初 め て
よくわからない小宇宙を兄、ハクレイに聞くためである。﹂
﹁⋮⋮今アルバフィカがジャミールに飛んでいる理由なのだが⋮その
るという事だ。
いつもなら多少たしなめる教皇様が無言。それだけ考え込んでい
話しかけていいものではない。
いくらアテナ様と親しい仲だとはいえここは教皇の間。親しげに
!?
?
い。マニゴルドのいう通りだ初めてではないという事なのか
⋮⋮⋮確かに。
なんかサーシャ心当たりが
?
﹁植物を操る能力⋮⋮﹂
﹁ん
﹂
うにプレッシャーを感じない不思議な小宇宙だったと。﹂
たとアルバフィカが報告した。神のように強大な小宇宙だが、神のよ
﹁うむ。薬師の島⋮その任務で蘭華からよくわからない小宇宙を感じ
?
マニゴルドまで言葉使いが悪いが今はそれを突っ込む場合ではな
?
?
﹁どーしたもんか⋮﹂
﹁それもそーだなぁ⋮⋮﹂
ら﹄という理由の可能性も否定しきれません。﹂
﹁⋮⋮⋮いえ⋮手がかりが少なすぎますし、何より﹃異世界の人間だか
?
146
!?
﹁様子見という方法しかありませんね⋮﹂
アテナ様の意見に異議を唱える者はいなかった。恐れ多すぎて無
理だが。
︻双魚宮︼
蘭華side
パチッ
﹂
﹁⋮⋮ココドコ
﹁宙に浮けー⋮﹂
﹂
レ
あ、つい声が⋮というか変化なし。⋮あれ
蘭華目が覚めた
⋮⋮ウエフッ
﹂
⋮⋮これ普通にイタイ人ですよね
﹁あっ
﹁⋮レグちゃん
オ
?
﹂
?
全く記憶にありません。
?
﹁まじか⋮﹂
﹂
?
私3日も寝てたんですか
﹁うん。3日も寝っぱなしだったんだよ
﹂
ナニソレ
!?
﹁⋮⋮3日
はい
!?
﹁うーん⋮記憶になくっても当然かなぁ⋮蘭華気絶してたからね。﹂
いつの間に帰ってきたのでしょう
﹁⋮⋮ってレグちゃんがいるってことは⋮ここは聖域⋮
ではない気がします。心臓に悪いから驚かせないで欲しいです。
というかつい声が出ちゃいました。明らかに女の子の発する言葉
喜んでいいのか悲しんでいいのか⋮全くわからない。
てきたのが見えるってことは随分と人離れしてきたみたいです⋮
光速で入口から走ってきたのは獅子座のレグルス。⋮光速で走っ
!?
!?
?
花びんに生けてある花を見てもう一度試そうかと思います。
じられないんですけどね⋮
そう、確か植物を操ったんです。⋮私にそんな力があるとは到底信
⋮⋮そうだッ
では覚えてるのですが⋮⋮
現状が理解出来てません。冥闘士を倒したところま
えーっと⋮
?
!?!?
147
?
!
?
!!
!?
3日って事は⋮⋮
﹁アルバフィカ様帰ってきてる⋮
﹂
アルバフィカなら明日帰ってくるってー。﹂
﹂
﹂
﹂
ア ル バ フ ィ カ 様 に 料 理 を 作 ら せ て は い け ま せ ん。サ ー
﹁⋮⋮で蘭華。何してたの
シャにも。
とですね
とりあえず一安心です。あの壊滅的な料理を回避できるというこ
﹁な、なら良かった⋮﹂
﹁ううん
?
﹁︵ギクリッ︶⋮⋮ナ、ナンノコトカナー
﹁浮けーとか叫んでなかった
﹂
まじですか
忘れなさい
恥ずかしいよぅ
﹂
!!! !
﹁うわああぁぁぁぁああッ
見られてたっ
忘れろ
!!
?
?
?
!!
忘れるのー
﹂
も恥ずかしいですケドネ。
﹁え
それは義務ですよッ
!!
﹁え⋮⋮⋮
﹂
⋮⋮⋮皆⋮⋮
﹁そーなんだ⋮だってさー。皆﹂
﹁勿論っ
﹂
外だったら恥ずかし過ぎて顔をあわせられませんッ
﹁か、カルディア⋮﹂
﹂
﹁普通にイタイ奴だったけどな。﹂
﹂
﹁ま、マニゴルド⋮
﹁大丈夫か⋮
﹁デジェル様⋮﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
?
なぜ私だけそんな呼び方なんだ
﹂
!?
?
レグちゃんで
ディアやマニゴルドだったら恐ろしいです。というかレグちゃん以
ま だ 聞 か れ た の が レ グ ち ゃ ん で 良 か っ た か も し れ ま せ ん。カ ル
﹁忘れて
!! !
?
?
﹁まじかー随分お面白かったんだけどなー。﹂
?
﹁ロリフォス⋮⋮﹂
﹁おいっ
!
148
?
!!
!
!
?
!
あ、あんまりだ⋮こんなのってない⋮こんなのってないよッ
﹂
﹁見ていて恥ずかしかったな。﹂
﹂
﹂
⋮⋮うえーん
なにがあった
﹂
﹂
びっくりし過ぎて足が動かなかった。
!? !!
﹁蘭華
﹁し、シオン⋮
に、逃げた
﹂
?
﹁⋮⋮気づいたか
﹂
めただ違和感があるだけなのだが。
流石に皆反省したようだ。ショボンとしている。20代が多いた
﹁そうだな⋮﹂
﹁⋮⋮⋮後で謝っとくか⋮﹂
流石に少し反省。まさかあんな反応するとは思わなかった。
﹁⋮⋮やりすぎたか
マニゴルドside
!!
いつも処女宮にこもって出てこないのになんでこんな時
﹁あ、アスミタ
なんで
に限っているんですかぁ
﹁み、みんなのバカぁぁぁ
結果。ダッシュで逃げました。
シオンside
﹁なぜ私は隠れなければならなかったのだ⋮
﹂
!!
蘭華が泣きながら走ってきた。
﹁うわああぁぁぁぁああーんッ
皆に止められたため双魚宮の外で待機している。すると⋮
?
!! !?
!?
﹁ん
何かおかしかったっけ
﹂
﹁⋮⋮ああ。蘭華の小宇宙⋮﹂
?
?
だろう。
﹁元に⋮戻っていたな。﹂
﹁ああ。﹂
149
!?
!? ?
!?
状況理解出来ていないレグルスは放置。のちのち説明すればいい
?
﹁そして⋮植物も操れていないようだった。﹂
﹂
どういうことなんだろうなぁ⋮意味がわからん。
デジェル分かったのか
﹁仮説だが⋮﹂
﹁お
﹁おいっ
﹂
バタバタバタバタ⋮⋮
確かに⋮多分そのとおりだな。
最もその事は蘭華自身自覚していないようだがな。﹂
かもしれん。そうすれば辻褄はあう。
﹁あの小宇宙を発している時だけ、植物を操れるようになっているの
?
﹂﹂
ディアとハモった。
!?
オンは。
﹂
﹁それを答える前にシオン。﹂
﹁なんだ
﹁お前は蘭華をどう思っている
﹂
デジェル⋮ズバリと切り込んだな。
﹁どうって⋮⋮仲間だと思っているが
ズゴォォッ
﹁⋮⋮⋮は
﹂
﹁⋮⋮お前⋮蘭華の事好いてるだろ
﹂
﹂
大半の人間がずっこけたわ。コイツ自覚してねぇのか
!!
?
?
?
周りが気づくレベルだぞ
気づいてねぇのは蘭華ぐらいだろう。
あんなにもわかりやすいのにな⋮
おいおい⋮なんなんだその今更反応。
?
!?
無言。話すとシオンがキレるだろう。わかりやすいからなぁ⋮シ
﹁﹁﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂﹂﹂
﹁蘭華に何があった
﹂
シ オ ン が 血 相 を 変 え て 飛 び 込 ん で き た。び っ く り し 過 ぎ て カ ル
﹁﹁シオン
? !!
?
?
150
?
鈍感なジジイですらも気づいたんだぞ⋮
﹁いやいや。そんなわけが無いだろう。﹂
なおかつ否定しやがった。
ていなかったことに驚愕だな。﹂
皆して同じ反応。だろうな。
⋮コイツ馬鹿なのか
﹁あのな⋮私は蘭華からみたらおじさんだぞ
と思ってるんだ。﹂
わかりやすいよなー。
﹁⋮⋮私が蘭華を好いている
﹁疑問で返すとか⋮﹂
﹂
?
正直恋愛というのはシオンには無縁だと思っていた。だがまぁ⋮
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
﹁お前の気持ちだろうが。﹂
くる
全くもってカルディアの言う通りだ。どうしてそこで蘭華が出て
﹁いやなんでそこで蘭華が出てくんだよ。﹂
どれだけ年の差がある
﹁あるだろ。﹂
﹁あるな。﹂
﹁あるある。﹂
﹁自覚なかったんだー﹂
﹁気づい
?
?
?
黄金聖闘士最年少のレグルスですら呆れている。
151
?
テンマ登場
シオンside
⋮⋮私が蘭華を
そんなわけが⋮
確かに蘭華のことを思うと⋮様々な感情が押し寄せる。会話すれ
本当に蘭華を
ば胸が暖かいし、ほかの人と話しているのを見るとイライラする。
⋮⋮まてまて。⋮本当か
?
ただ今猛烈に後悔中。自己嫌悪やばい。
﹂
なんでこんなにもシオンのことが気になるんだろ
シオンは何も悪くないのに⋮
って
﹂
﹁⋮⋮蘭華⋮大丈夫かの
﹁ほえ
﹂
なんかすごく久しぶりに聞いた声ですね。ってあれ
﹁童虎
後ろに少年。多分テンマかな
﹁見られた⋮⋮﹂
⋮⋮って⋮
!?
⋮⋮私サイテーだ。なんでシオンにあんな態度とったんだろう⋮
蘭華side
いし、黄金聖闘士ぶっちぎりの最年少に言われると微妙な気分だ。
マニゴルドとレグルス。女ったらしのマニゴルドに言われたくな
﹁本当に気づいてなかったんだ⋮﹂
﹁ようやく気づいたのかよ⋮遅すぎだろ。﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
今更気づく。ものすごく恥ずかしい。
?
イタリアから帰ってきたんですねー。お疲れ様デスっ
?
ルバフィカ様やシオンに注意されます。
とりあえずバッチリと目撃されたようです。
なんか最近の私みんなに恥ずかしいところばっかり見られてる気
152
?
なんか悩んでいると私は動き回る癖があるようなのです。よくア
?
!
?
!
?
?
がします。こんなのばっかりだな⋮
﹁お、おかえりなさいデスヨ。﹂
﹁お う。し て、何 が あ っ た の じ ゃ
ぞ。﹂
見て見ぬふりしてく
腹を空かしたクマのようだった
なんでそこわざわざ突っ込むんでしょうか
ださいよ⋮
﹁聞かないでください。﹂
﹁しかし⋮﹁聞かないでください。﹂⋮⋮おう⋮﹂
私ってすごい強気。やればできる子。YDK。
そんなことを思う自分にびっくりですよ。
﹁と、とりあえず何でもないならよいが⋮教皇の間に行くため通らせ
てもらうぞ。ゆくぞテンマ。﹂
ペ ガ サ ス
﹁あ、ああ。﹂
やっぱり天馬座の青銅聖闘士のテンマでした。
そろそろ聖戦が始まるのか⋮約3年後かな
﹁行ってらっしゃいです。﹂
﹂
﹁そうじゃ蘭華。﹂
﹁なんです
私は料理人ではないのですけど⋮
☆★☆★☆★☆★☆
その後⋮
良くなったけど。
テンマが来ても特に私の生活に変化はない。テンマと耶人とは仲
ないからアレだけど。
⋮⋮誰も小宇宙について触れなかったなぁ⋮自分ではよくわかん
のは余談。
カルディアたちが謝りに来た。シオンがすごく怖い顔をしていた
?
植物を操れたのもデスクィーン島が最初で最後だったのですっか
153
?
?
久しぶりですしね。別にイイデスケド⋮
﹁⋮⋮⋮⋮ハイ。﹂
﹁夕食を作ってくれ。﹂
?
り忘れていた。
︻なんだかんだで三年が経過しました。︼
154
聖戦開始
3年後。
テンマ
︻3年後︼
﹁勝者
蘭華side
★☆★☆★☆
﹁テンマ⋮﹂
﹃オオオォォォォ
﹂
!!!
を取得するいわいるバトルロイヤル。
この方法って昔からだったんだ⋮
た。
輩
アンドロメダ星座の蘭華。﹂
ここに
﹂
﹂
"
みんな疑問に思っているようなので説明しようと思います。
外伝︵薬師の島︶で説明しましたが、魚座になるには 赤い絆
結ばなくてはなりません。でも私は毒では死にません。
"
ていたので辞退しました。
そんな事をしたくありませんし、歴史が変わるのが100%わかっ
という事は必ずアルバフィカ様が死ぬという事。
を
今の所武器がある聖衣で空きがあったのはアンドロメダだけだっ
で武器がある聖衣を引き継ぐ事になったのだ。
拳で戦うよりも武器があった方がいい︵魚座候補生だったため︶の
私は2ヶ月前にアンドロメダの聖衣を取得し青銅聖闘士になった。
﹁2ヶ月しか変わらないのに⋮﹂
﹁ならよろしくな
先
テンマは今日天馬星座の聖闘士になった。戦い抜いたものが聖衣
﹁あは⋮でもそれは修行していた期間が違うから仕方ないよ
﹁ありがとな。でもやっぱりお前に先越されちまった。﹂
そして聖衣取得&聖闘士おめでと
﹄
新たな天馬星座の聖闘士誕生
今こそテンマを一人前の聖闘士と認め聖衣を授ける
!!
﹁テンマおつかれー
!!
?
155
?
!
!
!
!
な ん だ か す ご く 自 分 勝 手 な 自 覚 は あ る け ど 教 皇 様 に 直 談 判 し た。
アルバフィカ様は凄い怖い顔してたけど⋮普通に会話が成り立つの
で多分大丈夫⋮⋮なのかな
?
赤い絆
は結びました。毒の血を後世に残していか
アルバフィカ様ガチギレすると口聞いてくれないからなぁ⋮
といっても
"
﹂
﹁当たり前だ。﹂キッパリ
﹁頼むから聖衣は脱ぎ捨てないでね
﹁ん
﹁はいはい。テンマ、一つだけいい
﹂
﹁徹底的にしごいてやったからのぅ。﹂
童虎のおかげだな。﹂
﹁ああ。もう守りたいものを自分で守れないのはゴメンだから。後は
で成長したものじゃ。﹂
﹁テンマ、見事な戦いっぷりだったのう。よくこんな短時間でここま
﹁童虎。﹂
﹁おう、テンマと蘭華。﹂
﹁あれ⋮
あそこにいるのって⋮﹂
なので私とアルバフィカ様は多分体の毒素が同じぐらいです。
たけど。
最中アルバフィカ様が血を吐き出したのを見て結構ハラハラしまし
もちろんアルバフィカ様は無事です。体の血液を循環させている
らやめましたけど。
なければならないのでアルバフィカ様と毒素が同じぐらいになった
"
確か。
﹂
﹂
なんでか童虎の弟子︵紫龍︶は基本聖衣を脱ぐんだよねー⋮玄武は
脱いでなかったかな
﹁蘭華⋮どうしてそこを念押ししたのじゃ
﹂
﹃童虎=露出狂﹄という方程式があるので。﹂
﹁⋮⋮⋮そんなにも脱いでいないように思うが
﹁自覚してください。普通は聖衣脱ぎません。﹂
?
﹁いや、当たり前だし
?
?
?
156
?
いい返事。なおかつ即答。
?
?
?
﹁そーだそーだ。﹂
﹁テンマまで⋮﹂
地味に童虎、ダメージ受けたようです。
﹃童虎 は 10 の ダメージ を うけた ってところでしょうか。昔のドラクエみたい。
道を歩いていると⋮⋮前方に変な者が⋮
倒れてました。
﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂
三人同時に無言&無表情になりました。
倒れていたのはカルディア。
﹂
何してるんだあの人⋮⋮
﹁⋮⋮カルディアー
一応声をかけてみます。ですが返事がない。
﹃返事がない。ただのしかばねのようだ。﹄
状態です。
﹄
!!
﹂
﹂
﹂
空腹で倒れたっ
カルディアは黄金聖衣を纏っています。戦った様子もありません。
﹁⋮⋮⋮なにがあった⋮
﹁わからん⋮なにがあった⋮
﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂
またまた無言。え
て事ですか
黄金聖闘士形無し。
なんで放置するんだよ
﹂
何この人。要はアレですか
﹁は、腹が減って⋮食い倒れた⋮﹂
﹁どうしたんじゃ
あ、カルディア起きた。
﹁うう⋮⋮﹂
さすがの童虎も反応に困ってます。
?
?
157
?
?
私達は視線で会話します。そして⋮
﹁まてまてまて
?
!?
急いで回れ右。そして立ち去ります。
!?
正しく﹃見なかったことにしよう﹄です。
!?
?
﹂
?
﹁なんだ。動けるじゃないですか。﹂
事情とか聞くだろ
普通に小走りで追ってきました。さっき倒れてたんすよね
﹁普通アレだろ
!?
﹁な、なんでわかったんだよ
﹁マジなんですか⋮⋮﹂
﹂
﹂
?
きな音をたてて。廬山の大滝の水の音並です。
﹁それは食い倒れとは言わん。﹂
童 虎。う ん ⋮ そ う だ け ど ⋮ そ う な ん だ け ど
じゃないっ
﹁ただ空腹で力尽きた﹂
﹂
!
﹂
べ物なんて何も無いですよー。
﹁お腹すいた。﹂
﹁知りません。﹂キッパリ
﹂
お腹すいた
﹂
そんな事言われても困ります。私にどうしろと
﹁お腹すいたっ
﹁駄々っ子ですか⋮
!!!
んねぇよ。
あー⋮ほんとに何なんだこの人。何考えているのかさっぱりわか
?
?
じーっとこっち見ないでください。何も持ってないですよー。食
﹁⋮⋮⋮⋮⋮なんですか。﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
いので。
怖いので爪伸ばしてニッコリ笑顔やめてください。冗談抜きに怖
﹁いいえ。何も言ってないデスヨ。﹂
﹁何か言ったか
﹁⋮⋮⋮やっぱ馬鹿でしょ⋮﹂
テンマの的確な表現にカルディアはちゃっかり乗っかりました。
﹁そうそれだッ
突っ込むとこそこ
皆のカルディアに対しての高感度ダダ下がりです。それはもう大
!?!?
ジェル様あたりに怒られて林檎取り上げられたとかでしょ
﹁聞かなくってもわかってますよ。林檎ばっか食べすぎて教皇様かデ
!?
!!
?
!
158
!!
﹂
﹂
テンマもドン引きしてるし。もう知らない。
﹁そして結論は
﹁食べのもくれっ
﹁⋮⋮⋮﹂
すかね
入っていたクッキーをプレゼント。
んなもん知るか。
明るくなったことないですか
た気がします。
ヤ
ト
﹁テンマ。これからどうするの
少なくともこんなキャラではなかっ
﹂
?
?
﹁うーん⋮⋮耶人と話してこようかなぁ⋮﹂
﹁私も付き合う。﹂
本当に私って結構
なんか悲しい。
アレですね。捨て犬に餌を与える気分
うね
⋮⋮⋮なんで自分にノリツッコミ
なんで疑問形なんでしょ
⋮⋮なにかに負けた気がします。仕方が無いのでポケットの中に
﹁⋮⋮⋮⋮⋮ハイ。﹂
いや、じーっとこっち見つめないで欲しいです。
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
愛い自称シスター︵イン〇ックス︶だけです。
かわいくいってもだめです。そんな可愛いセリフが似合うのは可
﹁お腹空いたって言ったんだぞ
﹂
もう反応するのも億劫なんですケド。もう⋮どうしたらいいんで
!!
?
それ以前に私ってこんなキャラだったかな⋮
?
?
全力でカルディアから離
これ以上カルディアといるとカルディアに何言うかわからないの
でさっさと逃げるに限る
テンマも多分同じだったのでしょうっ
れます。
︻とりあえず走る。︼
﹁あ、耶人発見。﹂
﹁ほんとだ⋮﹂
!
!!
159
?
?
﹁そっか。﹂
?
?
目
標
な、なんだなんだ
﹂
耶人を見つけました。全力疾走で近づきました。
﹁うわっ
!?
﹁お、おう⋮﹂
﹁おっす耶人。﹂
﹁お、おう⋮んで、何の用だよ
﹂
﹂
﹁誰が300円で動くかっ
﹁お前確信犯じゃえねか⋮﹂
﹂
というか通貨がちげぇだろ
﹁とりあえず機嫌直してよ。300円あげるから。﹂
うわー⋮むっさおこ状態ですやん⋮
﹁べつにッ
﹁何故そんなにもひねくれてんだよ⋮﹂
うわー⋮結構ひねくれてるわー。
?
﹂
何の用なんだよ
﹂
そんなにも暇人なのか
それは言わぬがなんとかですよー。
﹁ったく⋮んで
﹂
﹁⋮⋮テンマ。何の用なの
﹁蘭華。何の用なんだ
﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂﹂
用事なんてないの
?
﹂
アンドロメダ正座さんと天馬星座さん
﹁やっほー耶人。さっきぶりだね。﹂
!?
﹁ありゃ⋮気づいちゃった
? !!
﹁お前らただの暇人じゃねぇかよ
﹁ああ。﹂
理由
?
﹁お前らほんとに暇人だな
イ。﹂
﹂
こっち来んなっ
﹂
﹁だから落ち着いてよー。300円﹁300円はいらねぇよ
ひどいなぁ⋮結構大事な問題なんだけど。
!!!
﹁﹁カルディアから逃げるため。﹂﹂キッパリ
﹁あ
﹂
﹁違う違う。ちゃんと理由あるから。﹂
!!!!
﹂⋮⋮ハ
ぶっちゃけ私はカルディアから逃げるための口実なのデスヨ。
ナニナニ
?
!!
!!
?
160
!?
時間が止まりました。え
?
?
?
?
?
?
!!
?
﹂
﹂﹂
﹁⋮⋮⋮何をやってるんだ
元気だな。﹂
ス
ガー
ド
ホントにね。アルデバランには負ける。
ハ
﹁﹁﹁いや、貴方には負ける。﹂﹂﹂
﹁ハハ
﹂
げんなりといった表情の耶人。ちょっとやりすぎた⋮カナ
﹁⋮⋮お前らいい加減にしろよ⋮﹂
﹁そうそう。﹂
﹁まあな。耶人弄りすげー楽しい。﹂
﹁なにやら楽しそうな話をしているなと思ってな。﹂
﹁あらほんと。ハスガードどうしたんですか
﹁﹁アルデバラン︵様︶
?
おけよ
﹂
ガンスルーですね。それとも自覚しているのかな
﹂
☆★☆★☆★☆★☆★
﹄って言ってたんだが
﹂
?
﹄みたいな反応だなぁ⋮ぶっちゃけ誰でもわかる
﹁んでさー、蘭華⋮﹁アテナの別邸忍び込むつもりなんでしょ
おぅ⋮﹂
﹃なんでわかった
でしょ。
﹁いいんじゃない
﹂
見つかると厄介だけど。﹂
!?
?
﹁お、恐ろしいこと言うなよ⋮﹂
﹁流石に問答無用で殺されることはないとは思うけどね。﹂
﹁やっぱりか
﹂⋮⋮
華麗なステップ。テンション高いなぁテンマ。仕方ないか。
?
﹁まぁそれもそうだな。そろそろ解散するかー。﹂
﹁そうだね。﹂
﹁さっきから﹃こっち来んなっ
﹁んじゃなー
納得出来ないって顔です。でもそこはあえてスルー。
!!
?
﹁3人とも。元気なのは構わないがそろそろ日が暮れる。程々にして
?
?
!?
﹁お前らホントになんなんだよ⋮﹂
﹁耶人ばいばーい。﹂
!
?
161
!
?
恐ろしいも何も⋮忍び込むとか凄い大事なんだよ
﹂
当に見つかったら多分問答無用で殺されると思う。
⋮⋮気をつけてね
﹂
サーシャちゃんによろしくって言っといてね
﹁ああ。ありがとう蘭華。﹂
﹁別に
﹁頼まれた
そう言うとテンマは走っていってしまった。
︻双魚宮︼
これから本格的に聖戦が始まるんだよ
かつヘルシー。
候補生とか雑
シンプルとヘルシーって一緒にしていいのだろうか⋮
?
よって今日は昼の余り物と簡単に作ったサラダ。うん。シンプル
?
スヨ。したかないじゃないですか。今日ハーデスが目覚めるんだよ
⋮まぁ⋮言い訳をする訳ではありませんが、集中出来なかったのデ
﹁今日はずいぶんと手抜きだな⋮﹂
﹁アルバフィカ様ー
ご飯できましたよー﹂
今日の晩ご飯は何にしようかと悩みながら双魚宮へ向かう。
﹁⋮⋮じゃあ⋮帰りますかね⋮﹂
合で乗り切るタイプだ。
テ ン マ の こ と で あ る。何 と か す る だ ろ う。多 分。大 抵 の こ と は 気
﹁⋮⋮⋮双魚宮までどうやって行くつもりなんだろ⋮⋮﹂
そしてテンマが見えなくなった時に気づいた。
﹂
でも教皇以外立ち入り禁止の﹃スターヒル﹄の側を通る。これは本
殿につながってる。
﹁⋮⋮⋮双魚宮の近くの脇道通っていきなよ。遠回りだけどアテナ神
不可能か。
兵だったら問答無用で殺されそう。それ以前に忍び込むこと自体が
?
?
?
!
162
!
?
⋮十分言い訳か。
?
聖戦開始 ∼フランスにて∼
聖戦開始の合図と魔法少女達
蘭華side
勿論目の前にあるご飯ですよ。
あーもうやばい。はてっしなくやばい。
なにがやばいかって
夜ご飯にサラダとかヘルシーすぎるから。凄いキツイです。別に
私はたくさん食べるとか、ガッツリ食べるとかじゃないですけどこれ
は無理です。
⋮⋮自分で作ったんですけどね。
﹂
﹂
﹂
アルバフィカ様⋮よく黙々と食べれるものです。それならいっそ
作れよって話ですけど。
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂ハァ
﹁﹁
﹂﹂
その時である。
すのを待っている。
回答に困って数分経過。アルバフィカ様は何も言わず私が言い出
まさかバカ正直に話すわけにはいかない。恥ずかしすぎる。
?
ついため息が。
﹁どうした
何があった
﹁あははは⋮⋮⋮はは⋮﹂
﹁それで
?
﹁⋮⋮⋮えっと⋮その⋮﹂
?
蘭華⋮これは⋮﹂
の小宇宙が光だとするとこの小宇宙は暗黒と表現するだろう。
この小宇宙⋮⋮まさしく⋮
﹁冥王⋮ハーデス⋮⋮﹂
﹁これがハーデスの小宇宙だというのか⋮
!?
163
?
えっと⋮⋮な、何でもないデスヨ
?
﹁相変わらず嘘が下手だな。﹂
﹁⋮え
!?
突如不穏というか不吉というか⋮とりあえず暗い小宇宙。聖闘士
!?!?
﹂
﹁ハーデスが目覚めた⋮⋮聖戦が始まる⋮
﹁な
原作知識で知ってたとはいえ驚く。
﹂
そして驚いたのはそれだけでは無い。
﹂
﹁なぜ⋮⋮なぜここにいるの⋮
﹁蘭華⋮⋮
?
﹂
ない。
?
﹂
何故いるの
﹂
﹂みたいな
インキュベーターはシジフォスが処理したはずだ。﹂
﹁そう。それに⋮此処は異世界でしょう
﹂
こちらには君たちに敵対する気もないし
﹁よくそんな事をしゃあしゃあと⋮
?
必死に自分を押さえつける。
こにインキュベーターが出てくるともう怒りをぶつけたくなります。
今の私は聖戦が始まるということで結構ピリピリしています。そ
!
﹁落ち着いてくれないかい
?
﹁なぜ⋮
し﹃だから仲良くしましょう﹄という思いは今の私にはない。
インキュベーターには命を救ってもらったという恩がある。しか
思ってるの
﹁逆になんで気づかないと思ったのか知りたいよ。何年一緒にいたと
た。
物。まさしく私を⋮私たちを魔法少女にしたインキュベーターだっ
木の影からそう言って姿を現したのは真っ白な耳の長い喋る小生
﹁⋮どうして気づいたんだい
﹂
アルバフィカ様が焦っているが完全スルーした。それどころでは
かって投げた。勿論全力投球。
私 は 懐 か ら デ モ ン ロ ー ズ を 取 り 出 す と 近 く に 生 え て い る 木 に 向
しかし今の私にはアルバフィカ様に詳しく説明する余裕はない。
反応をしている。
アルバフィカ様は状況についていけていないのか﹁え
﹁な
﹂
﹂
!
﹁キュゥべい⋮⋮いや、インキュベーターッ
?
?
理由もない。﹂
?
?
164
?
!!
!?!?
!?!?
﹂
﹁全てを説明しようかと思ってね。﹂
﹁説明なんて⋮⋮ッ
﹂
言っている意味がわからない。
﹁ワルプルギスの夜を知っているだろう
﹂
﹂
?
﹂
?
﹂
﹁⋮⋮⋮ええ⋮﹂
を正すと魔法少女だという事はわかるかい
﹂
﹁最悪の魔女とも言えるワルプルギスの夜だけど、魔女である以上元
﹁それが
何をキューベイが言いたいのかわからなかった。
﹁てっきり伝説だと思っていたんですけど⋮﹂
﹁そんなものが⋮﹂
強大な力を持っているということ。
魔女だが身を守る結界を所持していない。それは必要が無いほど
いる。
最悪で最凶の魔女とも言える存在。災害を引き起こすと呼ばれて
ーワルプルギスの夜ー
﹁ワルプルギスの夜は⋮﹂
﹁蘭華、ワルプルギスの夜とは
﹁ワルプルギスの夜⋮ですって⋮
私は本日何度目になるかわからないショックを受けていた。
アルバフィカ様はわからないのか怪訝そうな顔をしていましたが
﹁ワルプルギスの夜⋮
﹂
﹁イ ン キ ュ ベ ー タ ー。最 初 に 聞 か せ て も ら お う。何 し に こ こ へ 来 た
める。
怒りに任せて拳を振り下ろそうとした私をアルバフィカ様がなだ
﹁アルバフィカ様⋮⋮﹂
﹁落ち着け蘭華。感情的になるのは得策ではない。﹂
!
﹁頼みごとをしに来たのさ。﹂
﹂
﹁頼みごとだと
?
﹂
﹁どういうこと
?
?
?
165
?
?
?
﹁彼女から得られるエネルギーは莫大だ。けれど彼女が世界を滅ぼす
とこちらとしても困るからね。よって彼女⋮いや、ワルプルギスの夜
﹂﹂
を倒してもらいたい。﹂
﹁﹁な
無理難題にも程がある。ワルプルギスの夜なんて倒せるわけがな
い。
何故いるの
﹂
﹁まだ疑問に答えてもらってないわ。此処は異世界のはず。そして貴
方はシジフォスに殺されたはずでしょう
?
﹂
?
﹂
対面なんだよ
﹂
﹁そして僕がここにいる理由だね。正直に言うとこの体では君とは初
﹁え
たわけではない。時間を飛び越えてしまったのさ。﹂
﹁ここは蘭華、君からいう過去の世界だよ。異世界という時空を超え
﹁言っている意味がわからない。何が言いたいの
﹁異世界⋮その捉え方は正解だが同時に間違いでもある。﹂
?
﹂
?
この時代にワルプルギ
そんな事が有り得るのだろうか。
スの夜が出現するという事
そしてワルプルギスの夜を倒して欲しい
ここが過去の世界
が追いつかないのだ。
なにを言っているのか理解出来ない。いや、理解はできるのだが心
ちゃんと記憶は引き継がれているから心配しなくてもいいんだよ
の肉体は無限にあるんだ。ひとつ潰されたところで何の支障もない。
﹁確かに君と共に時間を超えた﹁僕﹂はシジフォスに消された。けど僕
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
?
りきるだろう。﹂
﹂
女﹄と言うけれどこの時代の魔法少女。もうすぐソウルジェムはにご
﹁そうだよ。ワルプルギスの夜⋮いや、この時代の彼女は﹃演劇の魔
ていないということ
﹁生まれたばかり⋮⋮その口ぶりだとまだワルプルギスの夜は誕生し
ぎて歯が立たなくなるだろう。けれど生まれたばかりなら別だ。﹂
﹁さっきも言ったけどワルプルギスの夜は最凶の魔女。未来では強す
?
?
?
?
166
!?
!?
﹁そんなバカな
﹂
﹂
?
僕の体を一つ潰したところで何も変わらないよ
﹂
﹂
﹂
?
﹁⋮逃がしてよかったのか
﹂
?
﹂
﹁アレを一匹潰したところで無駄でしょう。﹂
何がです
﹂
﹁⋮どうしたんだ
﹁⋮
?
﹂
﹁そんなにもインキュベーターが憎かったのか
﹂
﹁⋮⋮⋮へ
﹁え
﹂
インキュベーター
そう言うとインキュベーターは闇の中に姿を消した。
﹁わかったよ。僕は消えよう。﹂ 出来ることなら助けてあげたい。
それに⋮魔法少女が絶望しきって魔女になるのを見たくなかった。
もう1秒もインキュベーターの顔を見たくなかった。
﹁ワルプルギスの夜の事は引き受けた。だから消えて。﹂
かも。
やはり根本的に私たちとインキュベーターは違う。考え方も何も
﹁またそれか⋮﹂
んだしね。﹂
﹁こちらは願いを叶えてるんだ。それに少女達が契約すると決断した
﹁最低ね。﹂
くないからね。願いを叶えたのに簡単に死なれると元が取れない。﹂
﹁コストを抑えることができるからさ。できるだけ魔法少女を失いた
﹁⋮⋮⋮なぜ私にこの事を教えたの
﹁ッ⋮
い
﹁君は⋮アルバフィカだったね。さっきの話を聞いていなかったのか
﹁逃がすと思うのか
ことだね。それじゃあ僕はそろそろ失礼するよ。﹂
﹁信じられないかもしれないけど事実さ。1度フランスへ行ってみる
信じられない。全部が全部。
!!
?
アルバフィカ様は何を言っているのだろうか
?
?
?
167
?
!
?
?
?
を憎んでいる
別に憎んでなんていませんよ
﹁いえ
﹂
?
﹁⋮ほぇ
﹂
殺気飛んでました
﹁自覚なかったのか⋮
﹂
?
よ
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂
﹁あ、信じてませんね
?
嫌いだが憎い訳では無い。
﹂
﹁ならば⋮何故そんなにもきつい口調で話していたんだ
﹁⋮⋮⋮何ででしょうね
﹁⋮⋮⋮﹂
どこへ行くんだ
それはご最も。
﹁⋮
﹁教皇の間です。﹂
﹂
?
﹂
?
脱走は死罪。死にたくはない。
すから。何より脱走と思われたら嫌ですし。﹂
﹂
手に行きますけどハーデスが目覚めた今、勝手に行くのは無理そうで
﹁教皇にフランスへ行く許可を貰いに行くんです。いつもだったら勝
本当は教皇の間なんて行きたくないんですけど仕方ありません。
﹁教皇の間⋮
﹂
﹁それはこちらが聞きたいのだが⋮⋮﹂
思ったんですよ。何故なんでしょう⋮
﹁憎んではいないんですけど⋮あの時は心の底から﹃許せない﹄って
?
?
ですよねー⋮命を救ってもらったという恩もありますし。﹂
﹁インキュベーターは嫌いですけどそんなにも憎んでなんていないん
﹁まぁな⋮⋮﹂
﹂
﹁そーなんですか⋮いや、でもでも本当に憎んでなんていないんです
?
?
﹁だが⋮あれだけ殺気を飛ばしまくってたじゃないか。﹂
んな反応したいです。
言っている意味がわからないと言った表情。いえ、こっちの方がそ
﹂
﹁⋮ん
?
?
?
168
?
?
?
﹁ハーデスが目覚めたというのは⋮本当なのか
﹁⋮⋮はい。﹂
﹁そうか⋮﹂
うか
普通疑いません
﹂
案外簡単に信じてくれました。嬉しいんですけど⋮大丈夫でしょ
?
﹁いや、私も行くが。﹂
?
﹂﹁セー⋮じゃなかった
﹂
教皇
﹂
!
︻教皇の間︼
﹁教皇様
﹁な、なんだ
!
私とアルバフィカ様は教皇の間まで急いだ。
そうと決まれば行動あるのみ。
﹁あ、ありがとうございます。﹂
詳細説明は私が受け持とう。﹂
﹁時間があまりないのなら急いだほうがいい。アテナ様や教皇様への
﹁それ私でも⋮﹂
﹁教皇様にインキュベーターの事を話さなくてはならないからな。﹂
﹁アルバフィカ様もですか
﹂
﹁ってことで。行ってきます。﹂
アルバフィカ様絶対﹃オレオレ詐欺﹄とかに引っかかる人ですね。
?
きっと。
﹂
﹁お願いがあります
﹁な、なんだ
﹂
﹂
﹁えっと⋮かくかくしかじかです
﹂
﹂
﹁蘭華。それでは教皇様に伝わらないぞ⋮﹂
﹁⋮⋮は
﹁フランスへ行く許可をください
!
!
伝わったんですか
﹂
﹁だから蘭華⋮それでは﹁なるほどな⋮﹂伝わったんですか
﹁え、嘘
!?
!
?
私もびっくりですよ。
?
﹂
教 皇 様 び っ く り。反 応 が 面 白 い が 今 は そ れ ど こ ろ じ ゃ な い よ ね。
!?
!
?
?
169
?
﹁いや、伝わっていないが⋮﹂
﹁忙しい時にめんどくさい反応しないで下さいッ
﹂
つい突っ込んでしまいました。
﹁セージッ
﹂﹂
﹂
!
全力で走ってきたのか息が切れている。
アテナ様。﹂
私達はいっせいに膝をつく。お人形みたいですね。
﹁どうなさりましたか
﹂
﹁冥王ハーデスが目を覚ましました。聖戦の始まりですッ
﹁なっ
ら出ることができたのだろうか
⋮それ以前に入り込めたのか⋮
?
といっても私は戦力としてカウントされてるのか疑問ですけど。
力を減らすとか普通やらないよね。
まぁ⋮ですよね。いつハーデスが攻めてくるか分からないのに戦
﹁⋮そうですか⋮﹂
﹁ハーデスが復活した今⋮簡単に許可は出せん。﹂
て基本敬語キャラなんですけど。
もう最近皆さんに敬語使うのめんどくさくなってきました⋮私っ
﹁まじすか⋮﹂
﹁わかりやすいぐらい顔に出ているぞ⋮﹂
呆れた顔のアルバフィカ様。なんでバレたのでしょう⋮
﹁物騒な考えはやめろ。﹂
最悪死罪覚悟で無理やり出ていくか⋮
このタイミングだと⋮もうくれないだろうなぁ⋮
⋮﹂
﹁⋮⋮⋮ え っ と ⋮ そ れ で ⋮ フ ラ ン ス へ 行 く 許 可 が 欲 し い ん で す け ど
?
そういえばテンマはどうしたのだろうか⋮無事にアテナの別邸か
!
?
なんか今日の教皇驚いてばっかだな⋮
﹂
なんてやってるとサーシャがアテナ神殿から降りてきたようです。
﹁﹁アテナ様
!? !!
﹁しょんぼりとするな。何も許可を出さんとは言っておらん。﹂
170
!!
﹁え
﹂
﹂
﹁理由を話せ。このタイミングで許可を願い出たという事は余程のこ
とであろう
﹂
?
﹂
?
す。﹂
﹁あ、アルバフィカ様
﹂
いきなり何言い出すんだこの人はッ
ですかッ
!!
!?
う と し て い ま す。恐 ら く
積尸気冥界波
が 必 要 と な る で し ょ う。
"
居なくなるのはマズイですよ
﹁しかし⋮⋮﹂
﹂﹂﹁サーシャちゃん
﹁いいでしょう。﹂
﹁﹁アテナ様
﹂
教皇じゃなくてアテナ様が許可くれました。これいいんですか
﹁ですがアテナ様⋮﹂
たいと思います。それは貴方も同じでしょう
せん。﹂
⋮そして⋮その為に必要な力は出し惜しみをするつもりはありま
?
﹁セージ、貴方が迷う理由も分かります。ですが私は救える命は救い
?
!?
!?
青銅聖闘士1人が一時期居なくなるのならともかく、黄金聖闘士が
アルバフィカ様⋮事実ですけど、全部事実ですけど⋮
﹁⋮⋮ふむ⋮﹂
積尸気使いのマニゴルドの力が必須なのです。﹂
"
﹁詳しい説明は後で致しますが、蘭華はこの時代の﹃魔法少女﹄を救お
!!
無理に決まってるじゃない
﹁蟹 座、キ ャ ン サ ー の マ ニ ゴ ル ド を 蘭 華 に 付 け て い た だ き た い の で
﹁なんだ
ルバフィカ様
﹁あ、ありがとう﹁そしてもう一つお願いごとがございます。﹂⋮⋮ア
よかろう。﹂
﹁アルバフィカ⋮⋮お前も言うのなら余程深刻な問題なのだろうな⋮
可を頂きたいのです。﹂
﹁教皇様。それについては私が話します。今は時間が惜しい。先に許
?
!?
171
?
﹁⋮⋮アテナ様⋮
﹂
よかろう。蘭華、蟹座キャンサーの黄金聖闘士マニゴルドと共にフ
ランスへ飛べ。
﹂
そしてその魔法少女を救うのだ
﹁はいっ
その殲滅もしてこい。﹂
﹁⋮⋮⋮ハイ⋮﹂
それってついでで言うことなのでしょうか
力ダッシュ
︻巨蟹宮︼
﹁マニゴルドッ
﹂
﹂
﹁な、なんだ何だ
﹂
﹁これからフランスへ行きます
﹁⋮⋮は
え
﹂
ついてきて
だから早く行きますよ
混乱乙
﹁説明は後でします
﹁え
混乱してるね
﹂
﹂
道中のどうでもいい会話なんて知りたい人いな
いでしょうから省略デスヨ。
話の展開が早い
なんだかんだでフランスです。
︻なんだかんだでフランス︼
長差ヤバイ。
マニゴルドに蟹座の聖衣を背負わせると手を引いて走り出す。身
これ多いな⋮
!!
詳細説明はアルバフィカ様がやってくれるだろう。巨蟹宮まで全
とりあえず時間が惜しい。私は一礼して教皇の間から出た。
?
﹁ついでにフランスに現れた不穏な小宇宙⋮恐らく冥闘士だと思うが
!
状況が読み込めていないと言った顔。
!
!
というかそれどころではない。
!
!
?
172
!!!
?
!?
!!
!?
!!
!
?
してませんでしたっけ
﹁さてと⋮蘭華説明しろ。﹂
﹁あれ
﹂
?
﹂
が逆転したからと言って不機嫌になるのは理不尽なのデスヨ
﹂
﹁えっと⋮魔法少女探しをしに来たんですよ。﹂
﹂
﹁魔法少女探し
﹁はい。﹂
﹁なんで
?
﹂
?
﹂
﹂
日本の何倍あると思ってるのですか
﹁どうやって探すんだ
﹁⋮⋮どうすればいいんですか
﹁なんで俺に聞くんだよ⋮﹂
何も考えてませんでした。どーしよっかなぁ
に⋮﹂
そりゃちょっと非効率的だぞ。﹂
﹁⋮⋮あのな⋮人口何万人いると思ってやがる
いるんじゃねぇのか
?
その通りですけど他に方法ないんですもん
!
﹁ぅ⋮﹂
少女だけでも万単位
﹁とりあえず魔法少女は魂が体の中には無いはずですからそれを目印
?
!
広 す ぎ で す よ。も う 少 し ピ ン ポ イ ン ト で 教 え て 欲 し か っ た で す。
﹁フランスって広くないですか⋮
というか⋮バカ正直にここまで来ましたけど⋮
五年近く一緒にいたのですからそろそろ学習します。
りすぐにマニゴルドが理解するとは思えません。
別に素直に話してもいいんですが時間がもったいないですし、何よ
嘘は言っていない。
﹁その人に用事があるからですよ。﹂
?
?
大体それっていつも私に対して皆がする事じゃないですか。立場
やめてくださいよ。すごい酷い人みたいじゃないですか。
﹁⋮嫌味ですか
何も説明してくれなかったからな。﹂
﹁寝ようって時に飛び込んできて引っ張ってここまで連れ込んだ人は
?
?
?
?
173
?
﹁なんとななるよ
絶対大丈夫だよ
ならなんとかしろ。﹂
﹂
!
﹁食べる。﹂即答
食べ物で釣ろう。
?
﹂
﹂的な発言していましたが完全同意デスヨ。
だってあれ重たいんですもん。星矢が1話か2話あたりで﹁重たい
着てません。必要な時だけです。
聖域では聖闘士は聖衣着用が義務みたいなものなんですけど私は
大体クロスボックス置きたいです。これ重たいんですよ。
フィカ様が着ていたアレです。︵外伝1巻参照︶
で す。ア ル バ フ ィ カ 様 の お 下 が り で す。え っ と、小 さ い 頃 の ア ル バ
マニゴルドはコート着ているのでまだいいんですけど私は訓練服
﹁その前に宿取りません
?
この格好って結構目立ちますよ。﹂
﹁ブルーベリータルト食べますか
今日はどうやら腹の居所が悪いご様子。こういう時は⋮
﹁意地悪ですね⋮﹂
﹁へー⋮
カードキャプターさ〇らより。
!
比べて丈夫ではないので小宇宙燃やし続けるのは体力的にキツイ。
よって普段は結構ラフな格好してます。
﹁せめて上着羽織ってこいよ⋮﹂
﹁急いでいたのでそれどころでは無かったんですよ⋮﹂
というのは嘘。完全に忘れてました。
いつもこの格好なのでなんとも思わなかったのですよ。慣れって
怖い。
と言っても私の服は今着ているコレ︵アルバフィカ様のお下がり︶
とこの世界に飛ばされた時着ていた服︵制服︶だけですから着てこい
と言われても困りますけど。
制服で思い出しましたが私五年前の制服着れるんです。それはも
バカぁぁぁ
!!
うピッタリですよ。
⋮⋮⋮⋮成長してないってことだよッ
!
174
?
﹃なら小宇宙燃やせよ﹄という話なのですがそれ無理。私は他の人と
!
ガチで泣きたいです。
﹂
なんでいきなり泣きそうな顔になってんだ
最後に身長伸びたのいつだったのか⋮全く覚えてない。
﹁お、おいどうした
﹁い、いえ⋮ナンデモアリマセン⋮﹂
身長気にして泣けてきたとか言えない⋮
﹁わっかりやすい嘘だなオイ。﹂
﹂
﹁イエ⋮あえて突っ込まないでください。スルー希望です
﹁な、なんだこの気配
﹂
突如小宇宙とは違う気配が出現。
﹁ま、魔法少女の魔力
うわー⋮厨二病っぽいセリフだぁ⋮
自分で言っといてアレですけど結構痛くないですか
探す手間が省けました。意外と早く用事終われそうです。
﹁といあえず⋮行ってみるか。﹂
﹁そうですね。﹂
私達は全力で魔力がする方に向かって走る。
﹂
☆★☆★☆★☆★☆
﹁あれか
﹂
!?
戦ってました。
⋮⋮二人の魔法少女
﹁な、なんで⋮
﹂
ません。魔法少女と魔法少女が戦っています。
魔法少女達は戦ってました。けれど魔女と戦っている訳ではあり
?
凄いことになってます。
!
﹁はぁ
﹂
﹁わかりません。﹂
﹁止めるのは構わねぇが⋮どっちに用事があるんだよ。﹂
﹁と、止めないと結構まずいですよ
﹂
魔法少女達は周りを気にせずに戦っています。正直周りの被害が
?
175
?
!
!
!?!?
!?
マニゴルドが指さす方。そこには二人の魔法少女が武器を片手に
?
﹁名前とか何も知らないんですよねー⋮﹂
?
﹂
マニゴルド声大きい⋮
﹁お前マジかよ
﹁ちょ
﹁な、なんで
﹂
結界を張っておいたはずなのに
﹂
案の定二人の魔法少女はびっくりした顔でこっちを見ていました。
!
!?
!
﹂
?
結界なんて張ってあったか
︶
︶
!? !
消費凄いですけど。
﹂
︶
﹁ただの一般市民が結界の中に入れる分けないじゃない
﹁何者なんですかぁ
︶
︵そんな事言われましても
︵おいどうすんだ
?
﹂
!
マニゴルドと小宇宙で話す。こういう時便利ですよね。小宇宙の
︵それ私のせいですか
みてぇな顔してるぞ
︵やっぱな。というかこれどうすんだよ。明らかにあっち﹃胡散臭い﹄
?
﹁えっと⋮ただの一般市民ですよ。﹂
︵おい蘭華
︶
そしてどちらも混乱しているみたいです。デスヨネ。
ピンク色の髪で三つ編みしている女の子。
﹁ど、どちら様ですかぁ
そういうのは銀の髪のショートカットの女の子。
!?
︵気づきませんでした。︶
!
﹁ッ
﹂
﹁もしかして⋮⋮魔法少女ですかぁ
﹂
パってるのか言い訳が出てこないようです。
い つ も の ら り く ら り と 言 い 訳 言 い ま く る マ ニ ゴ ル ド で す が テ ン
!!
!!
?
飲まれてしまった。
﹁オイオイ。人に聞く前にまず名乗るのがマナーってもんじゃねのか
﹂
それでそっちの子はですねぇー﹂
﹁カテリーナ。同じく魔法少女よ。﹂
176
!?
急に雰囲気が変わった。無防備で立っていたので雰囲気に一瞬で
!?
﹁⋮⋮それもそうですねぇ。私はリーシェですぅ。魔法少女ですよぉ
?
?
﹁さ ぁ こ っ ち は 名 乗 り ま し た よ ぉ
よぅ。﹂
そちらも名乗ってくださいです
なんか⋮いちいち喋り方がイラッと来る子ですね⋮
?
なにそれ
﹂
﹁俺はマニゴルド。キャンサーの黄金聖闘士だ。﹂
﹁黄金聖闘士
?
﹄ですよね。
﹁きゃんさーってなんですかぁ
﹂
﹁それでそこの方は
﹂
マニゴルドに助けを求めようとする。
︵別にありのまま話せばいいんじゃねえ
︶
?
﹂
今は魔法少女じゃないってことですかぁ
?
﹁元魔法少女
﹁えー
﹂
﹁えっと⋮元魔法少女で今はアンドロメダの青銅聖闘士の蘭華です。﹂
︵そーなんですか⋮
︶
私に話が振られる。⋮どう答えたらいいのでしょうか
?
?
?
マニゴルドが真面目にレクチャーしてる。ちょっと意外。
﹁蟹座って事だ。黄道十二星座の。﹂
つい突っ込んだ。最近こんなの多いなぁ⋮
﹁え⋮そこ
﹂
あ、至極真っ当な疑問です。何も知らない人からすると﹃なにそれ
?
?
かわからない。
・
?
この時リーシェを見ていればこれから起きることが防げたかもし
なかった。
た。そのためリーシェがどんな顔をしているのかを知ることが出来
カテリーナの顔の変化が凄くてリーシェを放置状態にしてしまっ
話を聞いているカテリーナの表情がみるみる険しくなっていく。
が。
私はすべてを話した。勿論時空を超えてきという事は伏せてある
﹁えっとその⋮かくかくしかじかでして⋮﹂
﹁元と言うのはどういう事なのかしら
﹂
﹁つまらない﹂とでも言いたそうなリーシェ。なぜ残念そうにするの
?
177
?
?
?
れなかったのに。
178
セブンセンシズ
蘭華side
﹁それで結論はなんですかぁ
何の為にここに来たんですかぁ
﹂
﹂
?
それで結論をきいてるんですぅ。貴方達は何を
﹁いや、お前聞いてなかったのかよ
﹁聞いてましたよぉ
?
?
﹂
殺しますよ
﹁
﹂
﹂
﹂
﹁邪魔をする気なんてさらさらねぇんだがな
よ
つーか邪魔ってなんだ
ありません。けれど私の邪魔をするなら別です。邪魔するなら⋮⋮
﹁別に聖闘士だろうとヒーローだろうと何でもいいですし私には関係
一瞬リーシェの雰囲気が変わった。カテリーナも含め皆身構えた。
しに来たんですか
?
?
ごく困るんですよねぇ。﹂
﹁魔法少女が少なくなるのが困る
﹂
・
どういう事なのだろう
?
﹂
?
﹂﹂
﹂
?
ねぇ。﹂
﹂
﹂﹂
﹁そうですぅ。私が集めているのって⋮﹃ソウルジェム﹄なんですよ
﹁コレクター
いきなり話が変わった。何が言いたいのかさっぱりである。
﹁﹁
レクターなんですよねぇ。﹂
﹁世の中にはコレクターって言うのが居るじゃないですかぁ。私もコ
﹁だから⋮どういう事
に魔法少女が居なくなると困るんですよねぇ⋮﹂
﹁はい。少なくとも私はインキュベーターの事好きですからぁ。それ
か。
いや、魔法少女を救うのが困ると言った
・
?
﹁魔法少女を救うって事ですよぉ。魔法少女が少なくなるのってすっ
?
?
!!
﹁﹁なッ
﹁下がれッ
!?!?
179
!?!?
?
??
カテリーナの声。気づくと私はマニゴルドに襟首を捕まれ共に宙
﹂
を舞っていた。
﹁ぐへっ
﹂
落ち着け私
⋮⋮はい
どーゆーこと
!?
﹂
﹂
絶対殺ったと思ったんですけどぉ
どうすんだ
ですねぇ。﹂
﹁おい蘭華
﹁ど、どうするって言われても
﹂
意外とすばしっこいん
﹂
逆にこっちが聞きたいわッ
どうしろと言うのだ
﹂
﹂
多少手荒いけどなッ
﹁無力化していいのか
﹁無力化ってどっちをですか
﹂
!!
?
!!
アイツら皆死んでんぞッ
普通襲ってきた方なのでは
﹁ピンク頭の方に決まってんだろ
﹁そっち
なんでそっち
﹂
流石にそれは想定外でした。
﹁なッ
﹁バカお前気づいてねぇのか
!?
というか状況理解できてないんですけど。
!!
!!
!!
!?
!?
!
!!
!!
﹁あれぇ
訂正。答えは出てません。というかより混乱しました。
!?!?
リーシェを取り囲むかのようにたくさんの人がいるのだ。
出た。
ない。ならば何故こんな状態になっているのか。その答えはすぐに
よく見るとカテリーナも空中浮遊している。リーシェは動いてい
ですね
﹁蘭華落ち着け。﹂
﹁な、なぁ
ぞっとした。
光景になっていた。
私達がさっきまでいた所は地面がえぐれており、聖域ではよく見る
そんな事を気にしている場合ではないと気づいたが。
お、乙女として凄い声が⋮
!
!?
180
!!
!?
!
?
!!
?
!?
積尸気冥界波
﹂
で魂抜いていいか
まだ聞きたい事ありますからッ
﹁もういっそピンク頭
﹁ダメです
"
﹂
!?
アンデッド・エランド
か
﹂
ゆっくりじゃなくて止まって見えました。
﹁お前⋮
!?
﹁大抵の人は疑ってかかるんですよぉ ﹃何のトリックだ
て。﹂
?
﹁何が﹃よくわかりました﹄だ。見りゃわかんだろうが。﹂
﹁よくわかりましたねぇ⋮初めてですよぉ
"
﹂
﹁死体が動くなんて信じたかねぇだろ。﹂
﹁貴方は信じるんですねぇ
!
?
"
﹂
ようやく漢字
?
︶
︶
?
﹁って事は⋮貴方も襲われたんですか
﹂
まれないように下がっている事ぐらいなので素直に下がりました。
今更止めたところで止まらないですよね⋮私ができるのは巻き込
︵頼んだぞ
︵それって半殺し⋮︶
︵殺しゃしねぇ。半分だけだ。︶
︵や、やりすぎないでクダサイネ
︵死体を使うなんてちょっとアタマにきたからな。1回シメるわ。︶
︵下がってろって⋮︶
︵オイ蘭華。そっちの銀髪連れて下がってろ。︶
変換出来ました。
アンデッド・エランドって⋮死 体 使 いの事ですか
アンデッド・エランド
最早マニゴルドとリーシェの会話にはついていけません⋮
﹁そーなんですかぁ。﹂
さん見てきたからなっ
﹁動く死体を見たのは初めてだが他の現実離れしたような光景はたく
?
﹄とか言っ
見破られたのって。﹂
せんケド。光速の動きを目で追える私にはゆっくりに見えてました。
物凄いスピードと言っても光速どころかマッハにも到達していま
その直後死体が物凄いスピードで迫ってきた。
でぇ⋮死んでください。﹂
﹁あは、魂抜くとか簡単に言ってくれますねぇ。流石にそれは困るの
!!
"
!!
?
181
!!
!
ただ待っているのも暇なので事情聴取する事にします。マニゴル
ドが負けることは万一つもありえないので。
﹂
﹁⋮⋮⋮違うわ、逆よ。﹂
﹁逆
﹂
﹁私がアイツを襲ったの。返り討ちにされかけたけどね。﹂
﹁どうして襲ったんですか⋮
ど。﹂
﹁分かっちゃいました
表情には出していないつもりだったんですけ
﹁あなたも訳アリなのね。﹂
今は道を違えてしまった凛ちゃんを思い浮かべる。
﹃親友﹄
﹁親友のソウルジェムを取り戻す為よ。﹂
?
﹂
﹂
﹂
﹁⋮ も し 良 か っ た ら ⋮ ど う し て 契 約 し た の か 教 え て も ら え ま せ ん か
ら
願いを命と引換に叶えた者に対しての罰とでも言うべきなのかし
ね。
﹁⋮⋮⋮魔女を倒し人を守る魔法少女が魔女になる⋮か。皮肉なもの
﹁はい。﹂
﹁さっきの話⋮本当なの
安心していいのかどうなのか。判断が難しい。
﹁そうですか⋮⋮﹂
う。﹂
﹁私だから分かったようなものよ。他の人だったら気づかないでしょ
?
?
部外者が簡単に足を踏み入れていいわけが無い。
﹂
だがカテリーナは笑い出した。
﹁⋮⋮笑う要素ありました
﹁不思議
﹂
﹁いや、ごめん。でも⋮不思議でね。﹂
?
﹁そう。貴女⋮蘭華って言ったよね。﹂
?
182
?
?
言ってから﹃しまった﹄と思った。人には人の事情がある。そこに
?
﹁は、はい。﹂
﹁蘭華ってほんとに不思議。秘密にしていること⋮誰にも話さないと
誓った事⋮全てを話させてしまう不思議な力。﹂
﹁それって⋮私の力じゃない気がするんですけど⋮﹂
﹁いいえ、貴女の力だわ。じゃなければ貴女の心はこんなにも綺麗な
﹂
わけがないじゃない。﹂
﹁心⋮
い、いきなり何を言い出すんだこの電波ちゃんッ
﹁私は人の心がわかる。と言っても何を考えているとかが分かるわけ
﹂
じゃないんだけどね。心の変化がわかるっていうヤツ。﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
えーっと⋮な、なんだろう⋮
どう反応したらいいんだろう⋮
﹁心が読めるって聞いて不気味とは思わないの
﹂
﹁思いませんよ。﹂
﹁⋮⋮どうして
?
?
いう人がいたら不気味に思いますか
﹂
﹁⋮えっと、カテリーナは﹃幽霊が見える﹄とか﹃物の心がわかる﹄と
大体私普通の人じゃないし普通じゃない環境で過ごしてきたし。
んが私はそうは思いません。
驚いたという顔。普通の人なら驚くし不気味に思うかもしれませ
?
思わないだろう。
﹁魔女になるのを止められる⋮と言ったらどうしますか
?
の。﹂
﹁⋮⋮ そ れ は 今 は 遠 慮 す る わ。ま だ 親 友 を 救 わ な く て は い け な い も
はなくなりますが。﹂
魔法少女で
安心しました。カテリーナならマニゴルドの能力とかも不気味に
﹁なら良かった。﹂
何の不思議もないと思うわ。﹂
ど魔法少女という非現実的な存在だもの。幽霊とかがいたところで
﹁思わないわ。私が一般市民だったら不気味に思ったかもしれないけ
?
183
!
?
﹁それは私達が救うと言ってもですか
んですね
﹂
﹁⋮あの中に割って入れると思う
﹁アリア⋮さん
﹂
﹂
﹁早く⋮アリアのソウルジェムを取り戻さなきゃ⋮﹂
ると結構﹃元魔法少女﹄としては悲しいんですケドネ。
て﹃魔法少女﹄と﹃黄金聖闘士﹄では格が違います。ここまで言い切
加減してるじゃないですか。リーシェを過小評価してる訳ではなく
ぶっちゃけリーシェがまだ倒れてないって事は凄いマニゴルド手
なるほどね。確かにどうしようもないよね。
﹁⋮思いません。﹂
﹂
﹁⋮⋮わかりました。でも⋮そういう割にはマニゴルド達を止めない
﹁ええ。これは私が決めたこと。だから他の人の力を借りない。﹂
?
﹁⋮⋮﹂
﹁挙句の果てに
グリーフシード
通り越してただのバカよ。﹂
他人の為に動こうとしてた。
まで他人に譲るんだから⋮いい子
﹁⋮ソウルジェムは濁りもう動けない状態だったのに⋮あの子はまだ
というかグリーフシードまで譲るとか⋮いい子以前ですよ。
でしょう。
⋮親友に容赦がないんですね⋮いや、親友だからこそ容赦が無いん
"
そんないい子よ。私には出来過ぎた馴染み。﹂
﹁親友の名前。優しくてお人好しで⋮自分の事は全部後回しにする⋮
?
"
﹃綺麗だから﹄という理由でよ
﹂
⋮ そ れ な の に ⋮ ア イ ツ は そ ん な あ の 子 か ら ソ ウ ル ジ ェ ム を 奪 い
去った
!
ことが無いですが。
ドオオオオオオン⋮⋮
破壊音で我に返った私はマニゴルドとリーシェの方を向き直りま
した。
おされていたのは⋮マニゴルドでした。
184
?
?
ソウルジェムを奪う者⋮確か私の時代にもいたはずです。会った
!
﹁⋮何やってるんですか⋮﹂
﹂
で真っ二つにしていいか
﹂
﹂
﹂
﹂
﹁やっぱ物理攻撃しか効かねぇとかズリぃだろ。物理攻撃は得意じゃ
ねぇ
アクベンス
﹁⋮さっきは﹃俺がやる﹄的な発言してませんでしたか
﹁
﹂
﹁ダメに決まってるじゃないですかッ
﹁しゃーねぇ。蘭華、加勢しろ
﹂
﹁だからなんで上から目線なんですか
﹁目上だからな
歳も階級も全部私が下ですね
!?
☆★☆★☆★☆★☆
私にどうしろと
!?
はいますよ
普通にいますしね。
と言っても命令︵
でください。
?
﹂
!!
﹂
︶拘束するのは不可能なので、
︵
フリージング・コフィン
﹁
︶の老人﹄とか﹃露出狂﹄とか
氷 の 棺
フリージング・コフィン
" "!
絶対零度を体得している訳では無いので強度は弱いですけど。黄
拘束した人を片っ端から
の中に入れます。
拘束技ならこれが一番な気がします。しかし私の小宇宙では全員
﹁カリツォー
方法に悩んだ末私は小宇宙を燃やします。
﹁仕方ないですね⋮﹂
?
︶なので頑張りますけどね。あんま期待しない
まぁ﹃200すぎた現役バリバリ︵
聖 闘 士 に な っ て か ら 大 抵 の こ と で は 驚 か な い よ う に な り ま し た。
?
いったい何体いると思ってるんですか。数えるのが億劫なくらい
﹁んな無茶苦茶な⋮﹂
﹁とりあえずあの死体たちを足止めしといてくれ。﹂
﹁それで
﹂
そうカテリーナにいうと私はマニゴルドに加勢をしに走った。
﹁ここから動かないでください。﹂
!
?
!
そりゃそーですね
!?
"
?
185
!!
!
!!
"
!!
!?
"
"
﹂
金聖闘士の手に掛れば一時間もしないで砕かれると思います。
﹁えーその足止めの仕方はずるくないですかぁ
﹁戦闘にズルイも何もあるか。﹂
﹂
﹁出してなかったのかよ⋮だが死体はもう無いぞ。どう戦うつもりだ
かぁ。﹂
﹁それもそうですけどぉ⋮仕方ないですねぇ⋮ちょっと本気出します
?
ちょっ
まじですか
﹂
逆に聞きますけどぉ、それで足止めできてると思ってるんで
﹂
﹁えー
﹂
すかぁ
﹁え
その瞬間氷が砕けた。
﹁えええええええ
!?!?
﹂
1時間ぐらいは止められるぐらいの強度はあるんですよ
﹁蘭華、避けろ
固まって足が動かない。
景を他人事のように見つめていた。
ドゴッ
倒れたのは私⋮ではなく死体。
な、なんでここに
オ
の
レ
グ
ル
ス
﹂
﹁全くー、相手をよく見なきゃダメだろ
﹁⋮⋮⋮へ
そこにいたのは⋮
レ
﹁獅子座、レオのレグルス見参
﹂
もーう、何人いるんですかぁ。﹂
黄金聖闘士最年少だった。
﹂
死体が腕を振り上げ私に振り下ろす。動く事も出来ず私はその光
ムリですッ
!! !
!?
確かにデジェル様には劣りますけどそれでも黄金聖闘士の攻撃を
!!?
?
!?
?
冷静に突っ込み返すマニゴルド。いやー⋮でもあれじゃないです
﹁いや、ちょっとって何だよ。88しか居ねえよ。﹂
私今死にかけたのに全然危機感ないなぁ⋮
リ ー シ ェ が 呆 れ た よ う に 突 っ 込 む の で つ い 突 っ 込 ん で し ま っ た。
﹁何人って⋮88とちょっとだけど⋮﹂
﹁あ、新手ですかぁ
!?
!
?
!
?
186
!?
?
?
クリスタルセイント
スチールセイント
か。一 応 水晶聖闘士 と か 鋼鉄聖闘士 と か 居 る じ ゃ な い で す か。ど っ
ちも星座関係無いですけど。
﹂
疲れるんですよぅ。魔力の無駄遣い
敵は少ない方がいいですからぁ。って事でそろそろ
﹁えっと⋮君が蘭華を襲わせたの
﹁そうですよぅ
本当に死んでくれませんかぁ
ですしぃ。﹂
?
﹂
ライトニング・プラズマ
すよ。前に出ようとした瞬間
﹁
﹁ちょぉぉ
ッ
﹂
!!!
お願いだから周り見てぇぇ
﹃君なら避けられるよ
﹂
﹄っていう信頼要らないです
クーリング・オフ期間内ですよね
﹁え
﹂ ち、違いますからぁ
脱しないでください
カテリーナ、頼みますからそーっと戦線離
返品しますよ
体さんたちと一緒に車田落ちしてましたよ⋮アブナイ。
﹁周り見てッ
﹂
蘭華ならなんとか出来るって信じてるからッ
﹁そんな信用要らないぃぃ
﹁大丈夫
レグちゃんに詰め寄ります。命に関わりますよ。
!!
﹁⋮⋮なんか⋮やる気が失せましたぁ。﹂
私のせいなんですかぁ
﹁それはゴメンですよぉ。って事でぇ⋮えーい
﹁やる気失せたんならさっさと降参しろ。﹂
!?
﹂
テンパりすぎて自分でも何言ってるかサッパリです。
!!
﹁ちっ
﹂⋮⋮ととと⋮﹂
まだ残ってやがったのか。レグルス
﹁うん﹁待って
やれ
!
﹂
の女の子。焦点があっていないので生きていないのでしょう。
ほのぼのとした掛け声。そして現れたのは⋮少女とも言える年頃
!
リーシェまで
!!
!! !!
!!
味方の攻撃に気にしなければならないって嫌ですよ
!!
!
﹁⋮蘭華ってこんなキャラだったのね⋮﹂
!?
!
!!
!?
﹂
危うく巻き添えを食うところでした⋮もう一歩前に出ていたら死
"
そう言うとリーシェの後ろからまた死体。もう恐怖も何も無いで
?
?
!?
!!!
!
!
187
!?!?
"
!
﹂
ソウルジェムを奪
出鼻くじかれたみたいな表情をしているレグちゃん。
﹂
﹁アリア
﹁え
﹂うおおッ
?
ね。
﹁マニゴルド
﹂
!?
﹁なら彼女の相手をお願いしますねぇ
﹁ま、待て
!!
それでは失礼しますぅ。﹂
われたって⋮確かに魂がないので死体と勘違いしても仕方ないです
彼女がカテリーナの親友のアリアさんですか
!!
﹂
の間でリーシェは姿を消した。
﹁逃げられた
﹂
禁止
﹁無茶苦茶だな
﹂
あ、レグちゃん
殺すな以前にコイツ死んでるっての
無茶な頼みをしているのは重々承知の上です。
ブオォン
鎌すれすれで避ける。紙一重ってやつです。
やっぱリーチ長いのはずるいですよ
﹂
﹂
ライトニング・
﹂
彼女の魂はリーシェが持ってますけどね
!!
﹂
﹂
ライトニング・ボルト
⋮魔法少女って事か
そ、そういう事です。レグちゃん
って事は⋮ウォッ
﹁死んでませんよ
﹁何ぃ
﹁わっきゃ
﹂
よ、避けながら会話って結構難しいです。
もダメ
!
アリアさんの弱点って無いんですか
﹁カテリーナ
﹂
無いわ
"
!
!
だと危険です。別の意味で
!
マニゴルドやレグちゃんなら近づけるかもしれないですけど2人
かなるかもですけどまず近づけないです。
即答ありがとうございます。リーチの中に入れればあるいは何と
﹁ッ
!
!
!!
﹁殺さないでください。できるだけ無傷で無力化したいです
﹁ええ
プラズマ
﹁それ以前にこれどうするんですか
!
!!
!
!
!
!
アリアさんが大鎌を振るう。皆がアリアさんに視線をやった一瞬
!
"
!! !
!?
188
!?
!?
!
!!
!?
"
!!?
"
﹁おい
フリージング・コフィン
⋮⋮おっと
﹂
で何とかならねぇか
﹂
﹂
?
﹁っ
﹂
イタタタタ⋮⋮﹂
﹂
近寄らないで
﹁蘭華
﹁ッ
い、アリアの鎌で腕を斬られた。
﹂
目の前に大きな黒い影が現れた。反射的に走る速度を緩めてしま
きゃぁぁぁ
一つに集中させれば何とかなら
?
﹁集中させれば⋮なるとかなると思いますけど⋮
ねぇか
﹁さっきは小宇宙を分散させてたろ
﹁さっき簡単に破られたの見てなかったんですか
"
たアレです。これぐらい聖闘士には朝飯前なのです。
﹂
大丈夫か
﹂
﹂
私 頑 張 っ て 小 宇 宙 を 燃 や し ま す。
を作ります
レグちゃん
けど傷が意外と深く直せません。よって止血。
﹁マ ニ ゴ ル ド
リージング・コフィン
﹁頑張ります
﹁お前、体弱いだろ
でもちょっとだけ時間をかせいでください
!
!
鎌を避けながらは無理です
集中できません
!
﹂﹁うん
﹂
せん。⋮⋮もしかして結構私って弟子失格
﹁わかった
!
?
フ
黄金聖闘士の弟子だからといっても、セブンセンシズに目覚めてま
!
小 宇 宙 を セ ブ ン セ ン シ ズ に な る べ く 近 づ け な く て は な り ま せ ん。
!?
"
傷口に小宇宙を集中させて出血を止めます。ムウが紫龍にやって
ます。
んは近寄りませんが何も知らないカテリーナが私に駆け寄ろうとし
私の血は危険なのです。事情を知っているマニゴルドとレグちゃ
!
!?
!
"
!
!
は無理でも信じてあげましょう。あ、結構私って上から目線
私は立ち止まり小宇宙を高めます。
星矢達は﹃簡単﹄ですよ感出してますけど全然簡単じゃないですか
体の中の宇宙と繋がる、一つに同化するというイメージです。
?
あの2人に任せるのは⋮怖いですけどどう使用もないので信頼⋮
!
189
!
!
!?
!?
!"
?
!?
!
!?
らね
本当に簡単だと思ってるなら天才かバカのどちらかです。天
才とバカは紙一重。
黄金聖闘士とかはこれを戦いながらやるんですよ。天才通り越し
て化物に見えます。
というかそんなアホな事考えてちゃダメです。集中集中
私と宇宙は一つ。
体の中の小さな宇宙。小さいけれど大きな可能性を秘めている力。
!
﹂
﹂
そ し て 気 づ き ま し た。い つ も と は 違 う 感 覚。暖 か い、力 が 湧 き 上
がってくる。
﹁2人共さがって
フリージング・コフィン
!"
2人は同時に離れる。それを確認して
﹁燃えろ⋮私の小宇宙
"!!
!
今の全力をぶつけました。そして⋮力尽きて倒れました⋮⋮
190
?
モテ期到来
﹂
マニゴルドside
﹁お、おい
﹂
また気絶しやがった
だ
﹁蘭華ッ
﹂
!!
コイツはどんだけ気絶すりゃあ気が済むん
﹂﹂
!!
﹁セブンセンシズ⋮﹂
﹂
最初の一文字しか
蘭華のケガ治せ
私はカテリーナよ
蘭華に近づくんじゃねぇ。﹂
ここにきてやっと体得したようだ。アレか
来るタイプの人間か
カンバッチ
?
!
﹁というか
﹂
﹁カ ン バ ッ チ っ て 誰 の 事 よ
あってないわ
﹂
!
!?
!
?
﹁深いことは気にすんな。レグルス
﹁うん
!
!
追い詰められると出
しかも一瞬の蘭華から立ち上ったあの小宇宙は正しく
漬け﹄にした。
蘭華は宣言通りに﹃アリア﹄を﹃フリージング・コフィン﹄で﹃氷
﹁ハモるんじゃねぇよ⋮﹂
﹁﹁全然落ち着けるかぁ
﹁落ち着け。氷漬けになってるだけだ。﹂
そう言えばコイツもいたっけな。
﹁アリア
﹁落ち着け。気絶してるだけだ。﹂
るなぁ。
レグルスが蘭華に駆け寄る。コイツはほんとに蘭華に懐いてやが
!
!?
!
気がするが覚えてねぇ。
の中で1番大怪我を治せる。理由はわからん。説明してもらってた
レグルスは蘭華以上にケガを治すのが得意のようだ。黄金聖闘士
い。ケガを治すのは得意な蘭華ですら止血だけしかしなかった。
簡単な怪我なら誰でも小宇宙で治せる。だが蘭華のケガは相当深
!
191
!
!
レグルスは怪我を治すエキスパート。それさえ覚えてりゃ十分だ。
レグルスの小宇宙がここら一帯に広がる。
☆★☆★☆★☆★
蘭華side
﹁うーん⋮⋮﹂ハッ
おはようございます。私また気絶してたんですね⋮⋮
おきたぁ
﹂
﹂
慣れつつあるのがコワイ。
﹁蘭華ッ
状況説明。
﹁レグちゃ⋮うわぁぁ
!
﹁な
んん
なんで
﹂
!?
﹂
怪我が治ってる⋮レグちゃんが
﹁わかってるよ
﹂
?
というか冷静に突っ込まれると俺が馬鹿みたいじゃ
﹁⋮⋮それは朝飯前だよ。﹂
﹁うん。これぐらい昼メシ前だ
﹁あれ
レグちゃんに諭されるとは⋮ショックの極みですよ。
﹁そーだね⋮﹂
﹁とりあえず落ち着こうか。﹂
というか何でここレグちゃんが居るんでしょうか
!?
起きたらそばにレグちゃんがいて抱きついてきた。以上。
!?
!
レグちゃんどうしてここに
!?
残念にも程がある。
﹁ってあ
﹂
レ グ ち ゃ ん は 知 識 は 凄 い。⋮ 凄 い の だ が ⋮ 常 識 が 少 々 足 り な い。
いたみたいだ。
⋮⋮⋮やばい。どうやらレグちゃんは自分の事を頭いいと思って
!
ナンデイルノ
?
そう、それが一番気になってるのです。だって聖戦始まったんだよ
!
スもフランスへ飛んで二人の手助けをしてやってくれ。そしてすぐ
引 っ 張 り 帰 っ て こ い。あ の 2 人 は サ ボ リ 癖 が あ る よ う だ か ら な。﹄
192
!?
!?
ないか。﹂
!
?
﹁あー⋮そのね⋮教皇が﹃マニゴルトと蘭華だけだと心配だ。レグル
?
⋮⋮だってさ。﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂
え ー ⋮ マ ニ ゴ ル ド は と も か く 私 も で す か
ボった事無いじゃないですか。⋮たぶん。
私もなんですか
サ
?
﹁⋮マニゴルドとカテリーナは
﹂
使い行ってこい。﹄みたいな感じで。
今では﹃ちょっと冥闘士退治してこい﹄って言われますよ。さも﹃お
しかったのに⋮
最近皆私に対して容赦がありません。会った当初はあんなにも優
?
蛇神様とバトルってるの
何やってんだあの人達ッ
﹁2人なら﹃ちょっくら世界の果てを見てくるわ﹄とか言って出てっ
た。﹂
問題児様か
﹂
!?
﹂
﹁⋮後半声に出てた。﹂
﹁嘘ぉ
しょ、初歩的ミス⋮
同じ黄金聖闘士様ですよね
私ってやっぱり馬鹿なのか⋮
﹁大丈夫だよ。⋮たぶん。﹂
⋮おーい。同僚の方ですよね
で語尾に﹃たぶん﹄が付くんですかー
私の視線に気づいたレグちゃん。
⋮⋮⋮ムッサ苦笑してるやん
その年で苦笑とか面白くもなんとも無いの
違和感ヤバイの
体あってるのか不安。
あ、全然わかんないです。ここまでしか言えない。というかコレ自
﹁3.14197583⋮⋮﹂
?
どっちかって言うと
ジト目になってしまった。いけないイケナイ。
?
あー⋮落ち着け私。落ち着いて円周率でも唱えよう。
!
!
なん
失礼な。心の中では突っ込みまくってたけど顔には出してない
﹁落ち着いてるよ。﹂
﹁蘭華⋮落ち着いてよ。﹂
!?
!
193
?
?
!
!?
!
!!
﹁⋮落ち着いた
﹁⋮たぶん。﹂
﹂
としか言いようがないですよ。コレばっかりは。
﹁⋮ねー⋮﹂
これ以上この話題は精神的にくるものがあるので話題転換。
﹁誰がワルプルギスの夜の産みの親なんだろう。﹂
﹂
言い方がちょっと悪いですかね。好きでなった訳では無いでしょ
うし。
﹁⋮わかんないけどこの流れだと﹃アリア﹄なんじゃないの
o﹂
﹁ん
﹂
S o l o i l D i o s a i l r i s u l t a t
﹁Va bene
﹁うーん⋮どうしたらいいのかなぁ⋮﹂
⋮うん、わけわかんない。
この違和感の正体がわからない。違和感がわかない違和感。
⋮のはずなのだが⋮何故か違和感がある。
綺麗だったし。濁っているって言うのならアリアが1番。﹂
﹁⋮そうだよね。少なくともリーシェとカテリーナのソウルジェムは
?
語がわからないです。一体何語
﹁
﹂
﹁大丈夫。絶対なんとかなるよ。少なくとも神は結果を知ってる。﹂
?
るって事だよ。﹂
﹁いや、神様うんぬんはどこいったのよ
突っ込みその1。
﹂
私は日本語しか話せないしわからない。英語の成績は1です。
てた。
そこにびっくりだ。てっきりギリシャ語しか話せないのだと思っ
﹁というかレグちゃんイタリア語話せたんだね⋮﹂
?
194
?
いきなり意味がわからないことを言い出したレグちゃん。いや、言
?
﹁そ う い う 意 味 の イ タ リ ア 語。わ か り や す く 言 う と、な る よ う に な
??
⋮⋮アレ
﹂
ギリシャ語だけど
﹂
﹁レグちゃん⋮今何語で喋ってる
﹁
﹁⋮⋮え
﹁⋮フランス語だろ
﹂
﹁なら⋮私は何語を喋ってる
﹂
?
?
?
﹂
﹂
?
今更な話だが気になる。どういう事なのだろうか
意思疎通に困らないので別にいいのだが。
⋮⋮うーん⋮わけわからない⋮
﹂
﹂
﹁体は大丈夫か
?
まあ、心配してくれるのは嬉しいんですけどね。
﹁ならいいけどよ⋮というかなんでお前攻撃食らったんだよ
アレぐ
常生活を送るのは大丈夫なんですよ。みんな心配しすぎです。
⋮確かに私はあまり体が丈夫なほうじゃありません。ですけど、日
﹁は、はい。ふつーに元気デス。﹂
?
﹁マニゴルド
﹁お、起きたか。﹂
誰に聞いてるんだ私は。
たいなものですよね。たぶん。
もういいや。意思疎通困らないんだから。時空飛び越えた特権み
?
本語しか話せないし分からない﹄。重要なので2回言った。
言っている意味がわからないという顔。言っておきますが私は﹃日
﹁⋮ギリシャ語じゃないの
﹂
﹁⋮レグちゃん。カテリーナって何語話してた
だが聖域はギリシャの中にある。よってギリシャ語なのである。
うが。
それ以前に皆の言葉は全て﹃日本語﹄に聞こえる。文字は流石に違
わけがない。
がないのだ。つまりギリシャ語を話している人と意思疎通ができる
私はギリシャ語を理解するとかの前にギリシャ語自体聞いたこと
待ってくれ。冷静に考えたらおかしい。
?
?
?
!
195
?
?
らい避けれるだろ
﹁え
﹂
﹂
﹁レグルスは気づいたか
﹂
﹁いや
﹂
﹁ええ
﹁⋮気のせいじゃねぇのか
﹂
それはそれでカナシイ。
?
﹂
﹂
?
願いたい。
﹁カテリーナは
﹁そうですか。﹂
﹁もうすぐ帰ってくるんじゃねぇか
一緒じゃないんですか
というかすごく間抜けな感じになるので気のせいではないことを
まったってことですか
な ら 私 は あ り も し な い も の を 見 た よ う に 思 っ て 攻 撃 を 受 け て し
いや、気のせいって⋮
?
﹂
﹂
﹁⋮そんな影なんてあったか
私はいきなり目の前に黒い影が現れて進路を塞いだ事を話す。
﹁あー⋮えっとそれなんですけど⋮﹂
?
識をくれても良くないですか
気のせいですよね。きっとそうだ
﹁おや、本当に来たんだね。﹂
﹂
噂をすればなんとか。
﹁インキュベーター⋮
!
!
言ってることが矛盾している気がしないでもないけどそれは私の
た。ちょっと後悔。
さっさと追い払ったのは私ですけどね。塩も撒いておけば良かっ
?
大体インキュベーターも協力しろと言うのならば必要最低限の知
んでしょう。
⋮というか⋮どうしたらいいんでしょうか。この先何すればいい
?
?
﹂
﹁怖いなぁ、睨まなくてもいいじゃないか。まだこちらは何もしてい
ないよ
﹁﹁⋮⋮﹂﹂
?
196
?
?
?
?
?
﹁誰が信じるってのよ。﹂
殴ってやろうかとも思ったがマニゴルド⋮ではなくレグルスに先
まさかそこでレグちゃんが暴挙に出るとは思わ
を越された。どうやら全力で殴ったご様子。
﹁﹁⋮⋮⋮﹂﹂
れ、レグちゃん⋮
なかったので固まってしまいました。
﹁五月蝿い。ちょっと黙って。﹂
⋮レグちゃんマジギレしてますよ。激怒プンプン丸どころじゃな
いです。今にも八つ裂きにしそうな勢いです。いや、実際に八つ裂き
みたいな感じになってますけど。見るに耐えない無残な姿です。
⋮⋮落ち着けよ。
﹁全く⋮だから悪戯に体を潰さないで欲しいんだけどなぁ。
代わりはいくらでもあるからと言ってもエネルギーの無駄使いで
しかないからね。﹂
背後からインキュベーターが登場。やはり一匹潰しても次々と別
の、けれど同じモノが出てくる。
何か言ったかい
﹂
﹁一種の化け物じゃない⋮どんなRPGよ⋮﹂
﹁ん
チャーゲームなのだろうか。ある意味冥闘士よりタチが悪い。
何の用なんだよ猫兎。﹂
冥闘士は倒したらハーデスの小宇宙の加護がないと復活しないの
で。
﹁それで
んだよ。﹂
﹁即答するに決まってんだろ。なんでお前の手を借りなきゃなんねぇ
情はないので気のせいだと思うが。
呆れたように呟くインキュベーター。いや、インキュベーターに感
﹁即答しないで欲しいな⋮﹂
﹁﹁﹁要らない。﹂﹂﹂キッパリ
﹁手助けをしようかと思ってね。﹂
?
197
?
?
同 じ の が 何 度 も 出 て き て 終 わ り が な い と か ⋮ ど こ の ア ド ベ ン
﹁別に。﹂
?
﹁困ってるんじゃないのかい
﹁⋮⋮﹂
﹂
﹂
れば嫌でも気付くだろうしね。﹂
﹂
﹁⋮ひとつ教えてくれない
﹁なんだい
﹂
﹁別に手助けが要らないというのなら僕は消えるよ。彼女が魔女にな
事実なのだが認めたくない。
?
﹁あとどれだけ時間が残されているの
?
どう言うこと
﹂
?
カ
テ
リー
﹁カテリーナ⋮
ナ
﹂
のだ。槍の持ち主は⋮
いや、生えているのではない。槍がインキュベーターを貫いている
ベーターの頭から槍が生えていたからだ。
インキュベーターが言い切ることは無かった。何故ならインキュ
が恐らく間に合わ﹂
﹁君達は彼女が魔女化する前になんとかしようと考えているんだろう
イラつくのは変わらないが。
インキュベーターには慣れた。
理解できるわけがない。いい加減意味が分からない言い方をする
﹁そのままの意味さ。﹂
﹁⋮
いなかった人物だろうね。﹂
﹁そうだね⋮一つだけ言っておくと、恐らく彼女は君達が予想もして
もって2日⋮時間が無い。
﹁⋮⋮そうだね⋮もって2日というところだろうね。﹂
?
?
﹂
?
にも無表情で行うので私たちは何も出来なかった。
そう言うとまた現れたインキュベーターを槍で突き刺す。あまり
﹁黙りなさい。﹂
﹁せめて最後まで言わせてくれないかい
見ているこちらですら鳥肌が立つレベルの視線。
だがカテリーナは酷く冷たい視線でインキュベーターを見ていた。
銀髪の魔法少女だった。
?
198
?
まるで道端のゴミでも見るような目をしている。先程とはまるで
正反対なカテリーナに恐れすら抱いてしまった。
﹁これ以上潰されるのは避けたいから消えるよ。﹂
﹂
そう言うとインキュベーターは闇の中に消えていった。
﹁カテリーナ⋮
皆固まって。﹂
はわからないが。
﹁えっと⋮これからどうする
﹁私の家へ。﹂
﹂
﹁⋮カテリーナ。この辺りに宿はある
﹂
これで問題は一つ消えた。だがまだ問題は山積みなのである。
﹁わかった。﹂
﹁私の親友だもの。私が様子を見るわ。﹂
﹁カテリーナ
﹂
は持ち運べる。
訳にはいかない。聖闘士の腕力をもってすればこのぐらいの氷の棺
⋮その問題があった。氷漬けにしたアリアをこのまま放っておく
﹁とりあえずアリアをどうするかだな。﹂
に帰りたいし。
今後の予定について話し合う。聖戦が始まっているので早く聖域
?
この一瞬カテリーナが何故か凛ちゃんと重なって見えた。何故か
﹁⋮そうなんだ。﹂
﹁当たり前じゃない。﹂
﹁いや、インキュベーターに対して容赦がねぇなと思っただけだ。﹂
﹁どうしたの
まったかのようにマニゴルドもレグルスも動かない。
立ち尽くす事しかできなかった。まるで自分の周りだけ時間が止
て歩いてくる。
また先ほどとは態度が一変。ニコッと笑いながらこちらに向かっ
﹁あ、目が覚めたんだ。良かった。﹂
?
避けたい。野宿嫌いだし。
そう、宿の問題なのだ。野宿をすることは可能なのだが出来るだけ
?
199
?
?
﹁⋮ないけど
ガーン⋮
﹁ほんと
﹂
﹂
女神とはこの事です
天使です。
﹁⋮そんなにも野宿嫌だったのかよ。﹂
・ ・
﹂
・
・
・
﹄と思いました。皆に
?
﹂
ですね⋮
﹁仮面
﹄みたいな反応してます。
聖闘士失格な気がします⋮ほかの女聖闘士さんたちに怒られそう
由ですね。
既に顔見られてますしね。それに﹃めんどくさい﹄。これが一番の理
・
いは仮面着用してたんですけど﹃今更じゃね
私は聖闘士ですけど仮面してません。候補生になって1週間ぐら
﹁うっ⋮﹂
﹁女っていう自覚あるなら仮面しろよ。﹂
ですよ
聞き捨てなりません。自分で言うのはアレですけど、少女のつもり
﹁ドウイウコトデスカ。﹂
﹁いやいやレグルス、蘭華って女って自覚ねぇだろ。﹂
﹁女の子だもんね⋮﹂
?
アテナも神ですけど。ちなみにサーシャは
﹁⋮私と一緒でいいなら泊めてあげるわよ
仕方がありません。諦める他ないようです。
せっかくフランスへ来たのに⋮街中にいるのに野宿⋮
﹁ソウデスネ⋮﹂
いう回答が帰ってきた。要は慣れってことデスカネ。
して野宿が平気なのか﹄を聞いたら﹃こんなこと日常茶飯事だから﹄と
マニゴルドとレグルスはあまり気にしていないみたい。前に﹃どう
﹁仕方ねぇな。﹂
﹁野宿かー。﹂
絶望に打ちひしがれる。
?
カテリーナは﹃ナニソレ
?
200
!
!?
?
?
﹁えっと、聖闘士は基本男しかなれないんですけど、女でも聖闘士を目
仮面
殺す
か
愛する
しか
を着けて素顔を他人⋮特に男には晒さ
指す人がいるんですよ。だからその人は﹃女を捨てる﹄事をしなきゃ
いけないんですよ。﹂
﹁だ か ら 女 聖 闘 士 は
ねぇ。素顔を見られた女聖闘士は相手を
﹁なのに蘭華は仮面をしていないのね。﹂
﹁アハハ⋮﹂
それを言われると困るんですけど⋮
"
"
ねぇんだ。それが女聖闘士の掟ってやつだ。﹂
"
"
﹁﹁﹁︵
д
︶ふぁ
﹂﹂﹂
なんでそうなるんですか
﹂
﹂
いや、確かに他の人から見たらそうなる
天地がひっくり返っても有り得ません
んでしょうけど
﹁違うの
﹁違いますよ
﹂
の
世
﹂
﹁別に全力否定しなくてもいいだろ⋮デートしたしな。﹂
﹁蘭華⋮俺の事嫌い
あ
﹁誤解を招くような言い方やめてもらえませんか
ッ
カテリーナさん
﹁⋮⋮⋮﹂
ちょ
くださいよ
この人達とはほんとに何でもないんですよ
﹁あー。蘭華には既にBFいるから。﹂
﹂
愛玩動物として
先輩ってだけです
暖かい目で見守ってますよ感出さないで
レ グ ち ゃ ん の 事 は 愛 玩 動 物 と し て 好 き で す よ
デートって⋮黄泉比良坂へ一緒に行ったって事ですし
!!?
!"
マニゴルドの爆弾発言ですよ
!
!?
?
どういう事ですか
﹂
!?
﹁⋮⋮ハァ
待って
﹁三股⋮
? !?
!?
!
!?
!!
!
°
﹁と言う事は蘭華はこの2人を愛すると決めたのね⋮﹂
掟とか。言い訳ですね。自覚ありますよ。
現代日本から来た人間にとってはあんまり理解出来ないんですよ。
"
!!
!
!?
°
?
!?
201
"
!
!
!
"
﹁だ、だから違いますよ
﹁だーかーらー
﹂
誰のことですか
﹂
﹂
﹁知ってるから。隠さなくても大丈夫だぞ。﹂
全く心当たりがないんですけど
﹁だからBFって誰の事ですかぁ
﹁BF泣かすようなことはコイツしねぇから大丈夫。﹂
!!
違うの
﹂
﹂
﹂
だから心当たりがないんですけど
﹂
﹂
?
﹂
!!
﹂
﹂
﹁⋮ な ん で 私 と シ オ ン が 付 き 合 っ て る な ん て 事 に な っ て る ん で す か
⋮⋮待ってくれ。ちょっと待ってくれ。
﹁⋮へー﹂
﹁牡羊座、アリエスの聖闘士。﹂
﹁シオンって誰よ
﹂
﹂
﹂
?
﹁⋮⋮⋮⋮⋮ゑ
﹁え
﹁⋮⋮⋮⋮⋮ハ
﹁お前⋮シオンと付き合ってんじゃねぇのか
本当にわからない。誰のことを言っているのか。
﹁冗談じゃないしマジですけど何か
﹁冗談だよね
﹁⋮⋮マジで言ってんのか
﹁レグちゃんまで
﹁はいはい。わかってるから。秘密にしなくても大丈夫だよ
!!
何を今更。有名だぞ
﹂
全然そんな関係じゃないんですけど
﹁はぁ
﹁ハィィィィィイイ
初耳なんですけど
?
﹂
有名になってたんですか
!
いたことがない噂なんですけど
﹂
﹁落ち着きなさいよ。﹂
﹁ムリです
﹂
その割には私は聞
!?
!?!?
﹁何お前シオンのこと嫌いなのか
!!
?
!
202
! !?
?
?
?
!!
?
?
!
?
?
?
﹁﹃牡羊座と魚座候補生もといアンドロメダはカレカノ関係だ﹄って。﹂
?
!?
!?
﹁嫌いじゃないです。﹂
⋮え
嫌いじゃない。いやむしろ⋮
⋮⋮むしろ
?
﹂﹂
﹁﹁ハ
⋮⋮え
ええ
﹂
?
﹁えっと
﹂
蘭華、好きです
﹁ほぇぇぇえ
﹂
レグちゃんストレート過ぎませんか
!
告白されたのは初めてなのですよ。どうしたらいいんでしょうか
?
も、もしかして私⋮モテ期到来なんですか
!?
まさかの三角関係
﹁あら
?
﹁俺は蘭華のこと好きだ。だからシオンのことは認めない。﹂
は気づいてるのに本人が気づいてねぇとか笑えるんだが。﹂
﹁なんでシオンといいお前といい、自分の気持ちに鈍感なんだ。周り
?
!?
3人から集中視線。恥ずかしくて此処に居るのが辛くなって⋮
﹂﹂﹂
三人に背を向けて全力ダッシュしました。
﹁﹁﹁逃げた
これ以上私に何を求めてるんですか
恥ずかしすぎ
﹂レグルス落ち着けよ。﹂
﹁あ、この辺りは結構治安が悪いから⋮﹂
﹁あー⋮多分蘭華なら大丈﹁蘭華
るんですよ
なんですか
レグちゃんが追っかけてきます。
!
約3時間の逃亡の末、マニゴルドに確保された。
私は必死に追っ手から逃亡していた。
レグちゃん
ちょっとぐらいほかっといてくれてもいいじゃないですか
!?
その後カテリーナに慰められた。以上。
!
!
!?
!?
203
?
!
?
?
?
絶望とワルプルギスの夜
︻次の日︼
﹁なるほどなぁ⋮だから俺が引っ張ってこられたのか。﹂
﹁そういうコトです。﹂
と思われてたのかよ
私 は マ ニ ゴ ル ド に フ ラ ン ス へ 来 た 理 由 を す べ て 話 し ま し た。と
サボる
言っても予想がついてたみたいですけど。
﹁にしても⋮俺らはそんなにも師匠に
⋮﹂
﹁そういうコトです。﹂
﹁けど
﹂
﹂
﹁聖戦が始まっているのも一つの理由ではあるんですけど⋮﹂
﹁⋮それはいい事だが珍しいな。何かあるのか
﹁にしても⋮早く終わらせて帰りたいんですよね⋮﹂
も無いですね。
この事については真面目にショックです。ショックに真面目も何
"
?
すると言うよりは嫌な予感しかしない。
・
・
ついで
・
にやらせるんでしょう
﹁⋮嫌な予感か。だが帰ろうにも冥闘士退治もしなきゃなんねぇから
な⋮﹂
﹁ソウナンデスヨネ⋮﹂
全く教皇はなんで冥闘士退治も
か
の内容じゃないですよ
﹂
"
﹂
比較的簡単なものから片付けるべきです。それに⋮﹂
﹁アレは簡単には見つからないですよ⋮諦めるわけじゃないですけど
﹁魔法少女探しをしなくていいのか
﹁冥闘士探しをしましょうか⋮﹂
"
シェ
﹁魔法少女探しはカテリーナに任せた方が早いと思います。いろんな
リー
﹁それに
?
204
"
そう、フランスへ来てからずっと思っていた事だった。嫌な予感が
﹁⋮なんか⋮嫌な予感がするんです。﹂
?
ついで
!
"
!
?
"
意味で。﹂
﹂
﹁⋮そりゃそうだが⋮聖闘士が他人任せってどうなんだよ⋮﹂
﹁⋮じゃあ探します
﹂
おかえり、レグルス。﹂
﹁ただいまー
ついため息が。というかマニゴルドとハモりましたね。
﹁﹁⋮⋮ハァ⋮﹂﹂
﹁るせぇ。﹂
﹁結局そうなるんじゃないですか。﹂
﹁カテリーナに任せとこう。﹂
?
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
﹁ダメだなこりゃ。レグルス、どうだった
﹁えっと⋮﹂
﹁オチャイレテキマスネ。﹂
?
どういう返事をするんですかぁ
?
れると言って部屋を出る。
﹁それでぇ
﹂
昨日の返事を聞かせろとか言われると本当に困るので⋮お茶を入
思いますよ。
マトモに顔を見れないですし話せないです。自分でもおかしいと
﹁﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮うん。﹂﹂
﹂
﹁オイ蘭華。﹃お帰り﹄ぐらい言ったらどーなんだ。﹂
というか⋮昨日のことがフラッシュバックして⋮
レグルス帰宅。レグルスは情報収集頼んでたんですよね。
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
﹁お
!
﹂
﹁あはは。反応鈍いですねぇ。﹂
﹁リーシェ
という事は⋮私に声をかけたのは⋮
は氷漬けになっている。
私は今ここにいるし、マニゴルドとレグルスは部屋にいる。アリア
⋮待て。家には私とマニゴルド、レグルス、アリアしか居ない。
﹁それが簡単に決められたらこんなにも困ってな⋮⋮⋮﹂
?
!?
205
?
﹁何しに来たの
﹂
一瞬でも目を離してはいけないと本能が告げている。
﹁怖いですねぇ。今日は戦いに来たわけじゃないんですよぉ
﹁⋮⋮⋮⋮⋮﹂
・
・
聖域に帰ってください。﹂
﹁忠告⋮いえ、お願いをしに来たんですよぉ。﹂
﹂
・
何もせず
・
﹁⋮⋮お願い
﹁はい。
﹂
?
﹂
?
うに何度も口を開けては閉じてしまう。
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮世界が滅ぶ。﹂
﹁⋮え
﹁世界が滅ぶからです。﹂
﹂
"
﹁どういう事⋮
ワルプルギスの夜
のことではないのか
今度はリーシェが黙る番だった。まるで言葉を探しているかのよ
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
﹁⋮⋮理由は
子がまるで正反対⋮
何かおかしい。リーシェの顔は真剣そのものなのだ。機能とは様
﹁⋮⋮﹂
い。﹂
﹁お 願 い し ま す。私 達 に は こ れ 以 上 関 わ ら ず に 聖 域 に 帰 っ て く だ さ
﹃帰れ﹄と言われて簡単に帰るわけが無い。
﹁わかってるじゃない。﹂
追い出そうとも思いましたが無理そうですし。﹂
﹁﹃帰れ﹄と言って素直に帰る人達なら頼みに来ていません。力づくで
﹁そんな頼みが聞けると思っているの
"
?
﹂
ニゴルドとレグルスの2人も呼びたかったがそんな暇はなさそうだ。
とっさに距離を取り、いつでも攻撃できるように構える。本当はマ
!?
?
行くべきか⋮罠という可能性もある。私は一番弱いから、私なら殺
206
?
"
世界が滅ぶというのは
"
?
﹁⋮⋮ここでは話せないですね。ついてきてください。﹂
?
すことも可能だし。
だが⋮どうしても嘘をついているようには思えず私はリーシェの
後ろを歩き出した。
☆★☆★☆★☆★☆
一体どこまで歩けばいいのか。かれこれ1時間ぐらいは歩いてい
る。人がいない荒野。
﹁私に結界を張る能力はありません。張れたとしても貴方達みたいな
人だと関係なく入ってくるみたいですし⋮﹂
﹁⋮⋮⋮⋮まぁ⋮ね⋮﹂
事実なのだが⋮どんどん人間離れしていく事に少々ビビる。元々
﹂
ただの人間ではなかったけど。
﹁それで
﹂
﹁⋮⋮⋮貴方は私の事を何と聞いていますか
﹂
と言うのも
という理由だけ
綺麗
綺麗
﹁ソウルジェムを無理やり奪っていく⋮と。
で魔法少女を襲っていると聞いています。﹂
﹁⋮⋮事実だけど⋮理由がありますよ。もちろん
一つの理由ではありますが。﹂
﹁⋮⋮⋮︵事実なのかよ⋮︶﹂
一体この人何が言いたいん
﹁つーか今までのシリアスの雰囲気が台無しだよ
なんなん
すけど。﹂
﹁⋮なんなんですか
﹂
⋮⋮ごめんリーシェ。結論だけ教えてくれても理解出来
いソウルジェムを奪うことがどうして救う事になるの
滅ぼします。それだけは分かっているんです。世界を滅ぼさないた
﹁⋮⋮信じてもらえるかはわかりません。でも⋮アリアの力は世界を
?
いきなり﹃世界を救うため﹄と言われてもわけがわからん。だいた
ない。出来れば過程も教えてください。﹂
﹁⋮⋮⋮は
﹁私がアリアのソウルジェムを奪ったのは世界を救うためです。﹂
?
207
"
真面目に聞いてた私が馬鹿だったのかもしれない⋮
"
!!
﹁いえ、理由はありますよ⋮別に。というかこちらの方が本命なんで
!?
"
?
?
"
?
?
﹂
めに私はアリアを無力化したかった。けれどアリアの力は強大で⋮﹂
﹁だから手っ取り早くソウルジェムを奪った⋮ということ
﹁はい。﹂
﹂
﹂
﹂
﹂
﹂
﹂
お
﹁アリアの魂を体の中に戻しましょう。そうすれば⋮ソウルジェムは
という事はどれだけ辛かったことだろう。
は他人を傷つけたくない優しい人だ。アリアのソウルジェムを奪う
そしてリーシェは自分の中の心と戦っていたのだろう。リーシェ
か。
シェはリーシェなりに世界を救うため行動していたということなの
なんだろう⋮方法はアレだけど⋮許されることではないけど、リー
﹁はい。﹂
﹁⋮ソウルジェムを奪ったのはアリアだけ
は誰も傷つけたくなんてなかった。ただ﹃世界を救いたかった﹄。﹂
う非道をしました⋮今すぐ殺されても文句は言いません。でも⋮私
﹁信じてもらえるかはわかりません。それに私は他人の魂を奪うとい
凄い酷い人だと思ってたのに⋮ゴメンナサイ⋮
う⋮
⋮⋮な、なんだろう⋮信じられない訳では無い。けれど⋮なんだろ
?
﹁お茶入れてくるって言って一体何時間たってると思ってるんだ
当に焦ったんだぞ
﹂
﹁もし蘭華に何かあったかと思うと⋮俺⋮﹂
﹁あ⋮はい。スミマセン⋮﹂
!
208
?
消えてなくなる。魔女になることはない。﹂
﹁⋮魔女
﹁はい。﹂
レグルス
﹁ちょ、ちょっと待っ﹁蘭華ッ
﹁マニゴルド
﹂
!?
ちょっと2人ともなんでここに
﹁蘭華から離れろ
﹁ちょ
!?
荒野を高速で駆けつけてくれたのは黄金聖闘士の2人。
!?
!!
!?
!!
?
かしいと思ってお前の気配を探ってみたが見つからなかった時は本
!
!?
﹁⋮ゴメンナサイ。﹂
﹂
﹂
﹂
﹂
心配してくれたということなのですね。すみません。
﹂
﹂
﹁リーシェッ
なッ
﹂
﹂
﹂
﹂
﹂
⋮居ねぇな⋮どこいった
レグルスは
居ねぇのか
﹁⋮アレ
﹁
﹁あ⋮あそこですね⋮﹂
ちゃっかり戦闘に参加してます。
⋮ってやばくね
﹂
﹂﹂
﹄みたいな感じだな。﹂
﹁ちょっと⋮三人ともやめてください
﹁なんか⋮﹃私のために争わないで
?
?
!
ちょっとぉ
!
いない様子。うん、これどうしようか。
なんてやってると次の日になっちゃったよ
!!
ダメですね。3人とも頭に血が上っているのか私の声が聞こえて
﹁茶化さないでください。﹂
!!
!?
﹂
誤解を解かないと取り返しのつかなくなってしまう⋮
﹁そ、そうなのか⋮﹂
﹂
積尸気冥﹁何でそうなるんですか
違うのか
﹁⋮ハ
﹁カテリーナを止めてください
﹁え
﹁ああ
﹁マニゴルド
まずい⋮2人を止めないと⋮
﹁ッ
﹁覚悟
﹁カテリーナ、ちょっと待って⋮﹂
というか⋮一体どこから来たんだ⋮
カテリーナも来ちゃった⋮
﹁アリアのソウルジェムを返してもらうッ
﹁か、カテリーナ
﹁え
!!
!
﹁リーシェとは和解しました
?
!!
!!
ピンク頭じゃなくて
?
?
?
209
!!
!"
!
!
!!
!?
!?
!
?
?
?
﹁日付が変わったな⋮﹂
﹂
﹁ソーデスネ⋮﹂
﹁どーする
﹂
!
﹂
ね。なんと便利。まるで猫型ロボットの
﹁行ってらっしゃい♪﹂
?
﹂
﹂
悲しいです。
3人ともストーップ
気のせいですかね
﹁とにかく
はい。スルーですよ
﹂
!! !
﹁⋮⋮⋮仕方ない⋮
リストリクション
"
どこ〇もドア
ッ
"
﹂
♪
理だな。断言できるよ。一歩でも踏み込むと軽く死ねるわ。
無理やり割り込んで止めようかな⋮いや、あの中に割り込むのは無
⋮⋮辛くなってきた。何このシカト状態。
﹁人の話を聞けぇぇぇ
!!
?
"
というかさっさと行ってきてください
﹁⋮なんか⋮ニコニコしてんな
﹁そ ん な こ と 無 い で す よ ー
積尸気冥界波
?
"!
﹂
﹁お、おう⋮
﹂
﹁パシリかよ⋮まぁいいけどよ⋮﹂
﹁ならお願いします。できれば大特急で。﹂
"
積尸気使いって、積尸気を通ると任意のところに出られるんですよ
﹁そりゃ⋮できるけどよ⋮﹂
すよね
﹁マニゴルド。積尸気を通ってアリアを連れてきてください。できま
それは流石に想定外でしたね。
﹁⋮⋮⋮﹂
﹁⋮アリアの体がねぇぞ。﹂
﹁そういうことです
﹁そうすればあいつらが争う理由もなくなる。﹂
事です⋮ならアリアの魂を早く体に戻しましょう。﹂
﹁インキュベーターの話だとワルプルギスの夜は今日出現するという
?
!
!!
210
?
なんか⋮めんどくさいって顔してました。
"
!
スカーレットニードル
とは違い、相手を痺れさせるだけなので
無印蠍座のミロさんの技を少々拝借。
﹂﹁ッ
カリツォー
凍結拳
だ と 避 け ら れ る し。確 実 に。こ の 技 は 誰 に も 見 せ
"
は秘密。
カリツォー
じゃないんだ⋮﹂
"
だと避けるじゃん。﹂
﹂﹂﹂
カリツォー
﹁蘭華⋮ずるい⋮なんで
﹁だって
﹁﹁﹁当たり前だよ
"
びっくり。
﹁ただいま⋮って何だこのカオスは
﹂
﹂
とかそういう意味の筈です
確か
!!
!?
﹁なんでカオスなんて言葉知ってるの
ヤバイ状態
!
!?
カオスって結構現代的な言葉ですよね
たしか
"
﹃カオス=神﹄なのでは
﹂
普通はそう考えるよね
どうやって無力化したんだよ。﹂
﹁へーへー、分かりましたよー。って事で
﹁なッ
積尸気冥界波
ッ
"
﹂
!!
﹂
!!
﹁落ち着けよ⋮もう大丈夫だ。今は眠っているだけだ。﹂
﹁アリアッ
﹁あ、そろそろ痺れが取れるはず。﹂
なぁ⋮こんな器用な真似私にはできない。
もしマニゴルドが居なかったら私どうするつもりだったんだろう
ら取り出して体の中に戻す。
ソウルジェムから出す訳では無いが。アリアの魂をソウルジェムか
マニゴルドはリーシェに人差し指を向けた。勿論リーシェの魂を
"
﹁それこそ気にするなです。それよりもさっさと終わらせましょう。﹂
?
?
﹁深いことは気にすんな。んで
?
というか、なんでマニゴルドが知ってるんだ⋮この時代の人って
"
!?
まあ好き好んで無力化される人はいないでしょうからね。いたら
!
"
"
ていないので避けられる心配が無い。一人で密かに特訓していたの
で も
何このカオス。後が恐いよ⋮
体が⋮﹂﹁う⋮痺れて⋮動かない⋮﹂
!?
うわー⋮やりすぎたかな
﹁きゃぁ
比較的安全な拘束技といえる⋮はず。
"
?
!
"
!?
211
"
﹁⋮そう⋮よかった⋮﹂
体が自由になった瞬間アリアに駆け寄っていったカテリーナ。涙
まで流して喜んでいる。
﹂
何もせずに聖域に帰って
これにて一件落着⋮のはずなのだが、リーシェがおかしい。顔を
真っ青にしている。
﹁リーシェ⋮どうしたの
﹂
と言ったのに⋮﹂
﹁そんな⋮こうなるだろうって思ったから
ください
﹁⋮どういう事
"
?
だ。
﹂
﹂
魔女ってどういう事ですか
﹂
﹁もうアリアが魔女になることはないけど⋮﹂
﹁⋮
﹁⋮⋮⋮え
もしかして私は⋮勘違いをしていたのか⋮
﹁私は﹃アリアが魔女になる﹄とは一言も言っていませんよ
ちょっと待ってくれ。明らかに話が噛み合わない。
?
考えていた。
だが根本的に違っていたら
ないとすれば
﹁⋮⋮私は⋮一体何をした⋮
が滅ぶ⋮﹂
﹂
﹂
﹁もう⋮取り返しがつかない⋮私に出来ることはもう何も無い。世界
感じていた嫌な予感。これの事だったのか。
もしや取り返しのつかない事をしたのではないだろうか。ずっと
?
?
リーシェの言う﹃世界を滅ぼす存在﹄が﹃ワルプルギスの夜﹄では
?
ムが濁っていたアリアが3人の中で1番魔女になる可能性が高いと
ワルプルギスの夜が誕生すると世界が滅びる。そしてソウルジェ
?
?
魔女になることはない。ワルプルギスの夜を防ぐことは出来たはず
どういう事なのだろうか。アリアの魂を肉体に戻した今アリアが
﹁⋮
﹁言ったじゃないですか⋮﹃世界が滅ぶ﹄と。﹂
?
"
?
212
?
?
﹁⋮
リーシェ
く濁っていく。
﹂
そんな事無いよ
リーシェ
﹂
界を救う﹄なんて大義⋮私には不可能だったんだ⋮﹂
﹁落ち着いて
!
﹂
﹁他人を傷つけてまでやってきた事は⋮一体何だった⋮
!
い⋮こんな私なんていっそ消えてしまえば⋮ッ
?
!
一体何が⋮﹂
爆 風 が 1 番 近 く に い た 私 に 襲 い か か る。と っ さ に
を張る。
だった。
なんとか爆風をやり過ごした私が見たのは⋮
演劇の魔女
リーシェだった者
﹁⋮⋮魔女⋮﹂
﹁そんな⋮﹂
た。
﹁蘭華ッ
﹂
フリージングシールド
氷 の 盾
魔女の使い魔が私に襲いかかる。だが私は動くことが出来なかっ
私のミスである。
はあったのに思いつかなかった⋮いや、考えなかったのだ。明らかに
インキュベーターの言葉通りになってしまった。こうなる可能性
﹃恐らく彼女は君達が予想もしていなかった人物だろうね﹄
"
膨れ上がったリーシェの力が爆発した。
異変に気づいたマニゴルドがこちらに駆けてくる。だが
﹁おい
﹁グリーフシード⋮﹂
だった物を取り囲む。
膨大な力が渦となってリーシェを、いやリーシェのソウルジェム
ジェムにヒビが入り⋮そして砕け散った。
リ ー シ ェ の 流 し た 涙 が ソ ウ ル ジ ェ ム を 完 全 に 濁 ら せ た。ソ ウ ル
!
何も出来な
﹁私は⋮また⋮何も出来ない、何も変わってないんていなかった。﹃世
﹁リーシェだめ
絶望してしまったら⋮﹂
焦点があっていない。そして⋮リーシェのソウルジェムはドス黒
!
!!
"
"
!?
レグルスの声が遠くから聞こえる。押し寄せる使い魔を見て私は
!!
213
!?
"
死を覚悟した。
レグちゃん⋮⋮
﹂
だが痛みはいつまでたっても無かった。恐る恐る目を開けると
﹁え⋮⋮
﹂
?
⋮レグちゃん
!?
なっているかのようだった。
﹁レグ⋮ちゃん⋮
﹂
その動きはとてもゆっくりで、まるで周りが全てスローモーションに
レ グ ル ス が 一 瞬 微 笑 む と 人 形 の よ う に 私 に も た れ 掛 か っ て き た。
が熱いということしかわからなかった。
今起きたことが信じられなかった。レグルスの傷口から流れる血
﹁あ⋮レグ⋮ちゃん⋮﹂
﹁⋮よか⋮た⋮怪我はないね⋮
私に覆いかぶさるように私の盾になったレグルスがいた。
?
ようだった。
!
落ち着け
﹂
なんで⋮なんで私なんか庇ったの
﹂
!?
﹁蘭華
﹁嫌だよ
﹁落ち着け
﹂
頭をよぎったのは血の海。沢山の人が血の海に沈んでいる。
﹁いや⋮だ⋮いやだ
﹂
る。なのに傷口から流れる血は熱く、レグルスの命を奪っていくかの
先程はあれだけ温かかった体。だが今はだんだん冷たくなってい
?
!!
﹁落ち着け蘭華。﹂
﹁でも⋮レグちゃんが⋮﹂
﹁落ち着けっつってんだよ
理由は簡単だった。
落ち着いて応急処置すりゃ大丈夫だ。﹂
!
﹁マニゴルド、レグちゃんの応急処置お願いします。処置が終わり次
る。
カテリーナが必死に魔女を抑えてくれていたのだ。状況分析をす
﹁正気に戻ったならさっさと手伝いなさい
﹂
そして思った。﹃何故魔女が襲ってこないか﹄と。
その言葉を聞きやっと冷静になれた。
!!
214
?
!
次の瞬間、頬に痛みがあった。叩かれたのだと気づいた。
!!
!
﹂
﹂
第カテリーナと交代してください。﹂
﹁お前は
﹁カテリーナの加勢に周ります
﹁わかった。思う存分ぶん殴ってこい
私は全力で走った。
﹂
出来なかった、レグルスに怪我をさせた
自分自身
に。
"
魔女を無力化します
﹂
でも倒しちゃダメです
﹂
リーシェを助けたい
意外と無理難題を言うのね
﹁カテリーナ
﹁ちょ
﹂
﹁無理難題でもやるんです
﹁⋮わかったわよ
!? !
﹂
よってマニゴルドが来るまで時間稼ぎをしなくてはならない。
だから。
だが﹃今魔女を倒す﹄訳にはいかない。私はリーシェを救いたいの
"
そして私は全力で怒っていた。可能性に気づかなかった、動く事が
!
!
?
!
に感謝した。
アンドロメダ
!!
ネビュラチェーン
星雲鎖
﹂
"!!
﹂
頼みますよ
﹂
魔女相手に1人じゃ⋮﹂
!!
分かったわよ
﹁いいからッ
﹁あーもう
﹂
!! !
﹁え
﹁カテリーナは使い魔を
きる。一気に魔女との距離を詰めた。
私の放った鎖が使い魔達を薙ぎ払った。魔女と私との間に道がで
﹁行きますよ
﹁な⋮なんてすごい力⋮﹂
を纏った。
アンドロメダは力を貸してくれるようで私はアンドロメダの聖衣
る。実際には聖衣にも意思があるので手伝ってくれるかは別だが。
聖衣はどれだけ離れていても﹃纏う﹄という気さえあれば装着でき
﹁来い
﹂
大切な人間の魂を奪っていたのだから。それでも協力してくれる事
多分カテリーナはリーシェを救うという事はやりたくないだろう。
!!
!
!"
215
!
!
!?
!
どうにでもなれとでも言うようにカテリーナは使い魔達を攻撃す
!!
!!
!?
る。魔女に比べ使い魔は力が弱いので1人でも数体を一度に相手で
きる。
周りの使い魔をすべてカテリーナに任せ、私は魔女と戦う。勝つの
ではなく、時間を稼ぐだけなので何とかなるだろう。
だが、魔法少女時代の魔女に対する恐怖心が蘇ってきた。戦いへの
恐怖心は聖闘士になった事で少しは克服することが出来たのだが、魔
女と戦うことは無かったのでまだ魔女に対する恐怖心を捨てること
が出来なかったのだ。
あの時は凛ちゃんがいた。逃げることだって出来た。
けれど今は違う。凛ちゃんとは敵対しているし、逃げることも出来
ない。逃げるには守りたいものができすぎた。
﹁恐れるな、前だけを見ろ。﹂
もう誰も失わなくてもいいように。その為に私は力を求めたのだ
から。
﹂
216
﹁進め、望むものは己で手に入れろ。己を見失うな。全ては時の中に
有りッ
私の希望の為に。
のぞみ
私は力を振るう。
ワルプルギスの夜を倒し、望みを叶える為に。
祝詞を唱え私は走る。
!!
テ
リー
ナ
己の存在意義
カ
多分。
演劇の魔女 は と て も 大 き い。大 き す ぎ て ビ ッ ク リ す る。ア レ っ て ア
テナ像より大きいよね
サンダーウェーブ
﹂
ローリングディフェンス
"!
使い魔をこちらに放つ。
﹁ッ
﹂
しかし鬱陶しいと思ったのか、攻撃されたと気づいたのか⋮魔女が
全く効いていないと思う。魔女の大きさがアレだし。
﹁⋮⋮⋮﹂
する。追尾とかまず敵見えてるから必要性ない。今気づいた。
鎖がイナズマのような動きをして魔女を追尾する。というか攻撃
﹁
"!! ?
﹂
!!
ァァァァ
にぶん数が多い
﹂
積尸気冥界波
﹁
﹁マニゴルド
│
﹂
﹂
︶ウィッス﹂
﹁そういう事は早めに言え
﹁⋮⋮あ、そういえば使い魔だから魂無いかも。﹂
カテリーナと交代したようです。だが⋮状況変わってないです
!!
も。
あ、もうシリアスが⋮やっぱりシリアス苦手なのかも。私も作者
す。さっきの私と同じじゃないですか。
光速でマニゴルドが私の前に出る。んでもって使い魔を殴り飛ば
﹁︵ !!
!
!
とくに使い魔は人じゃないので思いっきりやれます。ですが⋮な
振った時の衝撃波です。青銅聖闘士並には威力があると思います。
拳を握り片っ端から使い魔を殴り落とす。殴り飛ばす。勿論拳を
﹁はああぁぁぁああッ
よって全方向の防御ができるローリングディフェンスです。
らたまったものではありません。
時って少々面倒なんです。正面を守っても左右背後から攻撃された
フリージング・シールドという手もありましたが相手の数が多い
!"
"
!!
217
"
"
﹂
わーったよ
死ぬんじゃねぇぞ
﹂
やらなきゃ殺
その間にリーシェ
﹂
というかやらなきゃならないんです
流石にそれは無理があるだろ
﹂
使い魔と魔女は私が引き受けます
︵ ︵ ・∇・︶アハ ※作者︶
﹁マニゴルド
の魂を体に
﹁オイオイ
﹂
﹁成せばなるッ
﹁はいっ
相手するって自分で言ったんですけどキツイです。でもやります
﹁あんまりコレはやりたくないんですけど⋮仕方ないですね⋮﹂
﹁
ネビュラストリーム
﹂
ですが今はそんなことを言っていられないようです。
なってます。ですが確かにアレは強力。私も使いたくありません。
無印アンドロメダ瞬くんが使うのを封じた技。私も使えるように
!
使い魔が攻撃してきたので鎖で防御する。魔女と使い魔を同時に
!!
!
!!
られます
﹂
﹁⋮⋮あーもう
﹁勿論です
!
﹁あ、カテリーナの魂は体に戻しといたからな。﹂
!
!
"!
込む。必死に力の加減を覚えました。⋮地獄だったけどね♪
﹂
その甲斐あって魔女&使い魔の動きを封じることが出来た。
﹂
積尸気冥界波
﹁マニゴルド
﹁
﹁ぬぁ
くっそ重てぇ
﹂
﹂
!!
こっちもキツイんです
ま、はぁ
﹁頑張って
!
!?
今度は魔女に対して積尸気冥界波を放つ。
"!!
!!
﹂
!!
事を確認する。これで心置き無くこの魔女をぶっ潰⋮倒すことが出
あ、結構力づくで引っ張り出した。リーシェの魂が体の中に戻った
﹁どぉりゃぁぁ
力加減はもちろんですけど、この体制とか。神経すり減りますよ。
す。
軽く応援しているように見えるかもしれませんが結構大変なんで
!!
!?
218
!
!
!
!? !
!
!
この技は力加減を間違えると大惨事です。下手したら周りも巻き
"
"
を
ストーム
嵐
に変化させようと小宇宙を込める。⋮は
"
来る。
ネビュラストリーム
、 星 雲 気 流
ずだった。
"
﹂
﹁冥闘士
﹂
小宇宙を感じた瞬間に私はその場から飛んで離れた。
﹁ッ
意のある小宇宙⋮しかも闇の小宇宙。間違いなく冥闘士だった。
真横からいきなり小宇宙を感じたのだ。マニゴルドではない。敵
"
﹂
?
ダマンティスでも無さそう。
﹂
だがどこかで見た事がある。絶対に見たことある。
かがほ
ではなく
ア
"
てんぼうせい
﹂
ハーデス
"
﹁俺は天暴星ベヌウの輝火ッ
﹂
﹁ああぁぁぁぁああ
﹁な、なんだ
﹂
!!!
冥闘士なのに
に忠誠を誓った男。
すい
!
そうだ、輝火だ
!!!
後 々 凄 い 活 躍 す る 人
ローン
!!
﹁輝火だぁぁ
!! !?
﹂
﹂
える忠義に繋がっていたはず。
﹁俺を知っているのか
﹁おい蘭華⋮知ってんのか
﹁ええ⋮まあ一応⋮。﹂
︵オイ蘭華。︶
るんだ⋮
を発動させ続けていることを褒めて欲しい。
てぶっちゃけメインキャラじゃないですか。何でこんなところにい
というか私、冥闘士って三下の事だと思ってたんですけど。輝火っ
ネビュラストリーム
2人からの視線を受けて少々怯んでいる。なのにまだちゃんと
?
?
"
"
弟、翠君を失い世界に対して怒りとか憎しみが冥王への過剰とも言
"
ス っ て ロ ン 毛 だ し。こ っ ち は 短 髪 だ。ア イ ア コ ス ⋮ っ ぽ く な い。ラ
どこかで見たことがある人だ。冥界三巨頭⋮ではないな。ミーノ
﹁⋮⋮あれ
﹁こんな所で会うとは思わなかったぞ。アテナの聖闘士。﹂
!!
"
219
!!?!
︵何ですか
︶
︵魔女とかもう少し抑えてられるか
︵頑張れば⋮なんとか。︶
ちょ
の人は
︶
︶
蟹座が相手か。﹂
︶
今輝火を倒すのは問題がある。未来が変わる。
﹁ほう
﹂
わぬほど愚かではない
﹁上等だ
コロナブラスト
﹂
﹂
﹂
闘う気が無いのなら何故ここ
戦闘始めないでくださいよっ
というか⋮﹃闘う気はなかったが﹄
にいる
﹁蘭華ッ
﹁うそぉ
な、なんて無理矢理
﹂
我に返った。見ると魔女が攻撃を仕掛けてきていた。
思考の海に沈み込んだ時、カテリーナの声がした。
?
!
待ってくださいってば
﹁
﹂
"!
倒れていた。赤い液体は﹃血﹄だとようやくわかった。体から血が流
一面赤い液体で地面が濡れていた。そしてその中にカテリーナが
だがカテリーナを見た瞬間⋮私は凍りついた。
番いいだろう。
やはり私ではどうしようもない。カテリーナの力を借りるのが一
ところどころ体が崩れているが致命傷にはなっていないようだ。
流 石 は 魔 女。人 な ら 動 け な い は ず な の に 無 理 矢 理 拘 束 を と い た。
!?
!
﹁やれるものならやってみろ。闘う気はなかったがかかる火の粉を払
﹁すぐにその余裕そうなツラ引っぺがしてやるさ
﹂
一方的にテレパシーを切られた。なんで人の話を聞かないんだこ
︵頼んだぞ
︵え
︵わかった、頑張れ。その間にあの冥闘士を殺る。︶
?
?
!
!
!?
あっちぃ
!
!!
!!
!
!! ?
!?
220
!
!
?
なんで熱いで済むんだ
﹁
!? "
れており、危険な状態だ。
﹁ど⋮して⋮﹂
アリア
に向けられていた。
力を振り絞ったように呟くカテリーナ。その言葉は私に向けられ
たものではない。
その言葉は親友である
"
﹂
ガキャァァン
体よりも先にチェーンが防御体制をとった。
かった。アリアが不意にこちらに体を向ける。
異様な光景で⋮カテリーナの止血をしようと思っても体が動かな
﹁冥闘士⋮
冷えするような小宇宙。その小宇宙はまるで⋮
も光を感じることが出来なかった。深い暗い深海の様に冷たい⋮底
アリアの体からは小宇宙が立ち上っていた。しかしその小宇宙に
﹁⋮小宇宙⋮﹂
アリアは無言で佇んでいた。その瞳には光を感じられなかった。
"
﹂
それは間違いなく冥闘士の証である
﹁ど⋮ういうこと⋮
冥衣
"
であった。
光りする聖衣とも言えるものが飛んできてアリアの体を包んだ。
アリアは無言のまま空を仰いだかと思うと周囲から黒い⋮いや、黒
を素手で攻撃できるのか﹄が疑問であった。
鎖と拳がぶつかり嫌な音をたてる。だが私は﹃何故聖衣のチェーン
!
"
ア。違和感を感じるほどナイスタイミングだったのだ。
輝火が登場した瞬間、まるで計ったかのように冥闘士となったアリ
何故冥闘士が⋮
ドは輝火と戦っているため 助力は期待出来ない。
アリアだけでも大変なのに魔女も攻撃を仕掛けてくる。マニゴル
てまだ致命傷を負っていないが時間の問題だろう。 容赦なく拳を振り上げるアリア。アンドロメダの防御本能によっ
る。攻撃されているのは明らかなのに私はまだ拳を握れないでいた。
現状がまるで理解出来ない。心の迷い⋮考えが体の動きを鈍らせ
?
221
?
︵教皇の話だと冥闘士は私たちが動き始める前からフランスに居たは
ず。よって私たちを倒すために輝火がここに来たという線は消える。
と言う事はここで何かしら用があると考えた方が自然。ではその
用とは一体何なのか。︶
情報が少なすぎる。それよりもカテリーナの手当をしなければ。
私は隙を突いてカテリーナに駆け寄った。だが私はカテリーナを
見た時ショックで固まってしまった。出血量が多く⋮明らかに致死
量だったからだ。
﹂
﹁蘭⋮⋮華⋮﹂
﹁カテリーナ
﹂
もう手の施しようが無い。私は自分の無力さと不甲斐なさを恨み、
無理矢理に笑顔を作った。
﹂
彼女を救えなかった私は最後の言葉に従う義務がある。
﹁アリ⋮アを⋮救って⋮
﹁うん。﹂
﹁わかった。後はすべて私に任せて⋮ゆっくり休んで。ね
﹁う⋮ん。﹂
﹂
カテリーナは安心して逝けるだろう
﹁⋮カテリーナ。最後に言い残した事は
上手く笑えているだろうか
か
?
カテリーナが瞳を閉じた。カテリーナの体から力が抜ける。
?
?
﹁そ⋮して⋮﹃ごめん﹄って⋮﹂
!
憎しみ
いや、この感情は何なのか。私にはわからない。
私はカテリーナの体を横たえると立ち上がった。
悲しみ
?
何故か涙は出てこなかった。心に大きな穴があいたような感じだ。
貴女の最後の願いだから。﹂
﹁カテリーナ⋮私は貴女の死を背負う。貴女の願いを叶える⋮それが
レグルスが大怪我を負ったことだけだ。
分かるのは私が無力だったせいでカテリーナが死んだということ。
?
222
!
残酷なことを言っているとわかっている。
?
・
・
痛みを感じている訳では無い。
﹁また私は救えなかったのか⋮﹂
私がアリアの魂を戻さなければ⋮いや、ここに来なければ。それと
﹂
それともワタシ
も﹃魔法少女を救おう﹄と考えなければカテリーナは死ななかったの
だろうか
カテリーナを殺したのはダレ
ワタシハナゼココニイルノ
﹂
マニゴルドside
﹁いい加減倒れろ
コロナブラスト
あと聖闘士に同じ技は二度も通じねぇよ。﹂
﹁誰に対して言っているのだ
﹁お前に対してだよ
?
﹂
界三巨頭にも匹敵するんじゃねぇのか
﹁カテリーナ
﹂
﹁冥闘士⋮だと⋮
﹂
﹁ようやく目を覚ましたか。﹂
﹁オイ。どういう事だ。﹂
﹁説明をしてやる義理はないな。﹂
﹁いいから答えろ。﹂
﹁だから説明する気は﹂
﹁いいから答えろっつってんだよ
﹂
!!
?
﹁⋮なんだと
﹂
﹁⋮俺がここに来たのはアレの回収の為だ。﹂
・
・
・
小宇宙を高め威圧する。不意打ちだった為か輝火は呑まれた。
・
そしてその傍らに立ち尽くす蘭華。
蘭華の声がした方に視線を向ける。
﹁な
カテリーナが死んでる
!?
?
コイツ⋮強いな。少なくとも並の冥闘士じゃねぇ。ぶっちゃけ冥
ドゴォォオオォン⋮
!
蘭華の叫び声。尋常じゃねえ。一体何があった
!
?
223
!!
?
?
!
?
?
冥衣を身に纏い無表情のまま蘭華を眺めているアリア。
?
!?
﹁アレは冥闘士の中でも上位に位置する存在だ。だが器の少女はイン
キュベーターとやらと契約し魔法少女となった。そのせいで覚醒す
るのが遅れていた。よってハーデス様の命令によりアレを冥闘士に
覚醒さた後回収するためにここにいる。﹂
もしかして俺らが最終的に今の状況の原因を
知らなかったとはいえ冥闘士に加担しちまった
?
﹁な⋮﹂
と言う事はアレか
作ったってことか
のか
?
害となるのなら今すぐ潰す。﹂
﹁ほざくな。貴様に俺は倒せん。﹂
?
﹂﹂
﹂
この小宇宙は⋮
﹁またかよ
﹁なっ
!
﹂
輝火が﹃ありえない﹄という表情をしていた。
﹃別のナニカ﹄に驚いているようだ。
マニゴルドside,endo
ーー私は誰も救えないーー
私は何を甘い幻想を抱いていたのだろうか
﹂
?
かもしれない。私がいる意味など無いのかもしれない。
答えの出ない問題。私の存在意義。いや、そんなもの存在しないの
﹁私は⋮一体ナニ
たたず﹄なのだと。
わかっていたはずではないか。﹃私は何も出来ない﹄と。﹃ただの役
?
それは﹃小宇宙が変わった﹄ということに驚愕しているのではなく、
⋮
﹁そ、そんな⋮馬鹿な⋮﹂
蘭華は植物を操っていた。今までとは違う、何か覚悟を決めた顔。
?
蘭華の小宇宙が変わった。
﹁﹁
また2人の間で緊張感が走る。一歩でも動くと戦闘が再開される。
﹁そんなもんやってみなきゃ分かんねぇだろ
﹂
﹁そーかよ。なら逃がすわけにはいかねぇな。聖戦で勝利する事の障
?
!?
?
224
!?!?
﹁蘭華
﹂
天 響 星 カルテット
てんきょうせい
﹂
マニゴルドの声が聞こえた。
﹁よせ
﹁何をぼさっとしてんだ
反撃しろ
﹂
だが周りの植物が攻撃を阻む。まるで私を守るかのように。
輝火の声も聞こえる。顔を上げるとアリアが腕を振り上げていた。
!
!
がわからない。
﹂
だから私は振り上げた腕を⋮振り下ろせなかった。
﹁何やってんだバカ
﹁マニ⋮ゴルド⋮﹂
光速で走ってきたマニゴルドが側にいた。
どうして貴方様が⋮このようなところに⋮
﹂
アリアを救うのが私の役目。だがどうしたらいいのだろう。方法
!
反対側にはアリアと輝火。
﹁なぜ⋮
!
!!
である。
輝火は何かに迷うようにしばらく考え込んだ後
﹂
テ
ナ
の
闘
士
正義のヒーローよ。﹂
ア
﹁ここは一度引く。確認する事が出来たからな。﹂
﹁逃がすとでも思ってんのか
﹁あの魔女を何とかしなくていいのか
﹂
?
?
いためこれでいいのかもしれない。
﹁蘭華。﹂
﹂
自分の存在意義とかそんなめんどくさい事はまた
?
明日考えればいい。そうだろう
?
んじゃねえのか
﹁笑って、泣いて⋮どこにでもいる一人の人間だ。今は⋮それでいい
"
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
﹁俺はな、お前が何を悩んでんのかわからねぇ。だがな、
だ。他の者じゃない。﹃蘭華﹄という1人の人間だ。﹂
お前はお前
輝火とアリアが消えた。今の私にはアリアを救う方法がわからな
﹁⋮チッ
聖
輝火が呟いているが言っている意味がわからない。理解不能状態
?
!
225
!
!
﹁私という1人の人間⋮﹂
"
﹁⋮⋮やっぱり、マニゴルドにはかなわないですね。悩んでるのが馬
鹿らしくなりました。﹂
そうだ。﹃ワタシは私﹄。﹃私は蘭華﹄。
それでいいのだ。私はそれで十分だ。
か、からかわないでください
﹂
///﹂
﹁お前は悩んでるより笑ってた方が可愛いからな。﹂
﹁かわっ
拘束しなさい
"!
!
束をとく。
・
・
・
・
。私 が 欲 し て い た の は 拘 束 を 解 く 為 に 出 来 る
"
だったのだから。
それでいい
一瞬の隙
だ が
・
私の命令でツタが魔女と使い魔に絡みつく。だが魔女はすぐに拘
﹁
私は植物を小宇宙で操った。
﹁そうですね。﹂
﹁おうおう。ならさっさと片付けるぞ。﹂
!?
"
ピラニアンローズ
﹂
"!!
﹂
黒薔薇
ピラニアンローズ
﹁無駄です
"
﹄
!?
私はその考えを昨日のうちにマニゴルドに話しておいた。そして
から。
魔女とはソウルジェムが砕け、魔法少女の魂が変化したものなのだ
私は前から﹃魔女は魂の一部﹄なのではないかと考えていた。
﹁そのようですね。﹂
﹁おー⋮どうやらお前が考えたとおりだったみたいだな。﹂
魔女が叫んだ。何故なら魔女が﹃燃えていた﹄からだ。
﹃キエェェェ
﹁⋮流石ですね。仕留められませんでしたか。ですが⋮﹂
いかかった。
は す べ て を 噛 み 砕 く。使 い 魔 を 噛 み 砕 き 魔 女 に も 襲
魔女は身の危険を感じたのか使い魔を生み出し盾にしたが⋮
全力で投げた。
﹁
そして私は魔女との間を詰めた。黒薔薇を手に持ち
マニゴルドとアイコンタクトをとる。
"
!
226
"
"
"
"
私が魔女の気を引いている間にマニゴルドに
らったのだ。
きそうえん
鬼蒼炎
を放っても
"
ダイヤモン
積尸気魂葬破
せきしきこんそうは
!
るはず。
なら大きめの花火を上げることにしようや
﹁これで仮説は正しいと証明されました。反撃開始です
﹁うっし
﹂
ドコオッ⋮
﹄
爆音と蒼い炎が合わさってけっこうカオス。
﹃キュァアアア
﹂
﹂
﹁マニゴルドにばかり注意していると痛い目を見ますよ
使い魔も燃やしちゃってください
﹂
ネビュラチェーン
!
ドダスト
マニゴルド
﹁トドメです
"!!
ドが残った。
からだ。
!?
﹁よかった⋮﹂
﹁蘭華。どうするつもりだ
?
﹂とは聞かなかった。聞かれなくてもわかる。
?
としても。﹂
﹁⋮レグちゃんには謝ります。怪我をさせたこともだけど告白の答え
あえて﹁なにを
﹂
﹁気絶してるだけだな。大丈夫だ。﹂
﹁レグちゃんとリーシェは
﹂
した。知り合いに魔法少女はいないし、また魔女が孵化すると厄介だ
私はグリーフシードを拾った。どうしようか迷ったが砕くことに
﹁はい。終わりました。﹂
﹁終わった⋮か
﹂
魔女は力尽きたように倒れた。そして体が砕け散り、グリーフシー
!"
﹂
鬼蒼炎とは魂を火種にして燃やす技。私の仮説が正しければ燃え
"
魂葬破とは魂を火薬替わりとし爆発させる技。
!
"!
鬼蒼炎
!"
これでもはや敵は満身創痍の魔女のみ。
﹁おう
"! !
?
227
!
!"
?"
"!
﹁⋮そうか、やっぱりシオンをとるか。﹂
﹁⋮はい。レグちゃんのことは好きですが、あくまでも
ですから。﹂
﹁やっぱりな。﹂
友達として
"
﹂
悪いとは思うけど自分の心に嘘をつきたくない。親友だと思って
いるから。
レグルス起きたか。﹂
﹁うぅ⋮﹂
﹁お
﹁おはよう、レグちゃん。﹂
どうなった
﹁蘭華⋮マニゴルド⋮
⋮⋮魔女は
?
?
ちゃって。﹂
どうってことないよ
?
レって魔法少女だった頃の私よりも治癒力高くない
﹁それでもだよ。ごめんね。﹂
﹁いいよ、蘭華が無事ならそれで。﹂
﹂
﹁⋮あのさ⋮その⋮えっと⋮﹂
﹁どうしたの
﹂
レグちゃんの気持ちは嬉
しいんだけど私には他に﹁わかってたよ。﹂⋮⋮え
!
﹁レグちゃん⋮﹂
?
﹁俺が行く。お前はリーシェに着いてやってくれ。女同士の方がいい
に止められてしまった。
険だという事に気づいた私は追いかけようとしたのだがマニゴルド
そう言うと一人で歩いていってしまった。あの怪我で散歩って危
﹁幸せになってね
ちょっと散歩してくるよ。﹂
りがとう、素直に話してくれて。﹂ ﹁わかってた。蘭華がシオンのことを思ってるっていうことは。⋮あ
?
﹁あの⋮告白のことなんだけどさ⋮ゴメン
?
強 が り で も 何 で も な く 本 当 に も う 元 気 そ う な の が 恐 ろ し い。コ
﹁これ
﹂
﹁う ん、終 わ っ た ん だ よ。あ と ⋮ そ の ⋮ ご め ん な さ い。怪 我 さ せ
!!?
?
﹁終わったよ。全部な。﹂
!?
?
228
"
だろうしな。﹂
そう言うとマニゴルドはレグちゃんを追って行ってしまった。
☆★☆★☆★☆★
﹂
レグルスは一人で星を見ていた。その時マニゴルドが声をかけた。
﹁レグルス﹂
﹁マニゴルド⋮どうして来たの
﹁お前が凹んでるだろうと思ってな。﹂
﹁凹んでなんかないよ。わかってたことなんだから。﹂
﹁嘘つけ。そんな泣きそうな顔で言っても説得力ねぇぞ。﹂
マニゴルドの言う通りレグルスは泣きそうな顔をしていた。その
言葉を聞いたレグルスは急いで回れ右。マニゴルドに背を向けた。
話を聞いてくれ
と言っているの
﹁⋮あのさ⋮これは独り言だから。聞かなくてもいいから。﹂
﹁⋮そうか。﹂
そういう時のレグルスは大抵
だ。
さ。でも気づいたら告ってた。見事に振られたんだけどな。
⋮⋮⋮初恋⋮⋮だったんだけどなぁ⋮﹂
その声が震えていたことは指摘しなかった。
﹁ちゃんと笑ってたじゃねぇか。それはお前の優しさだろう
﹂
﹁思いを伝える気なんてなかった。だって蘭華にはシオンがいるから
わかっていたから。
マニゴルドは何も言わずただ聞いている。反応を求めていないと
レグルスが語り出したのは今まで皆と過ごしてきた過去。
最初は憧れだったんだけどいつの間にか恋愛感情に変わってた。﹂
﹁蘭華って⋮優しくって、明るくって⋮俺の太陽みたいな人なんだ。
"
﹁⋮そうか。﹂
﹁だって⋮蘭華には笑ってて欲しいから。﹂
ぱいになっていた事だろう。
あの場でレグルスが泣いていれば蘭華はずっと罪悪感で胸がいっ
?
229
?
"
俺は独り言を言ってただけだが
﹂
﹁ありがとうマニゴルド。吹っ切れたよ。﹂
﹁別に
﹂
﹂と言っていた。だが私は知ってるけど
!
﹁ええ⋮私、なんで生きてるんですか⋮
﹁助けたからだよ。﹂
?
出来ない。
﹁⋮カテリーナとアリアは
﹂
これは私の本心だった。魔女になることは本人では止めることが
だから。そんなにも重く考えなくてもいいんだよ。﹂
﹁リーシェが魔女になるという可能性を考慮しなかったこちらのミス
﹁でも⋮﹂
私たちは間に合った。誇っていいんだよ。﹂
﹁そんなことないよ。リーシェがずっと行動してくれていたおかげで
﹁私は⋮結局何も出来ませんでした。それどころか魔女になって⋮﹂
一瞬驚いた顔をしたリーシェ。だかすぐに顔が曇った。
﹂
私の小宇宙もなんだか妙だし⋮本当にわからないことだらけであ
﹁どういう事なんだろうなぁ⋮﹂
から。
知り合いじゃない。ややこしいけど。会ったことすら無かったのだ
確か輝火は﹁貴方様は⋮
﹁⋮そういえば輝火が何か言ってたっけ⋮﹂
リーシェは未だ起きず。
﹁うーん⋮どうしようかなぁ⋮﹂
☆★☆★☆★☆★☆★
はあっても未練や後悔などの思いはなかった。
レグルスとマニゴルドは笑った。レグルスの心には少々の悲しみ
﹁そっか。でもありがとう。これも独り言だから
?
?
る。
﹁⋮う⋮﹂
﹁リーシェ。﹂
﹂
﹁蘭華⋮
?
﹂
﹁大丈夫
?
230
!
?
﹁⋮ッ⋮⋮﹂
流石に即答できなかった。
﹁アリアは冥闘士になり⋮姿を消した。カテリーナは⋮⋮⋮⋮﹂
﹂
これ以上は言葉が続かなかった。その先を察したリーシェは悔し
そうに顔を歪めた。
﹂
﹁⋮⋮蘭華、頼みがあります。﹂
﹁⋮なに
﹂
﹁私に⋮小宇宙の使い方を教えていただけませんか
﹁⋮⋮
﹂
!
﹂
!
﹁はい。﹂
﹁いいのか
﹂
☆★☆★☆★☆
私はリーシェの手をとった。日が登り、長かった一日が終わった。
﹁⋮⋮わかった。一緒に行こう
だがリーシェの瞳は真剣で、本気で⋮
なったのにまた戦いの中に引きずり込んでしまうから。
私 は 迷 っ て い た。せ っ か く 戦 い か ら 離 れ た 生 活 を 送 れ る よ う に
通せる力が欲しい。どうか⋮お願いします
﹁もう誰も救えないなんて嫌なんです。守りたいと思ったものを護り
?
?
た。
!
私たちは荷物を持ち聖域に向かって歩き出した。
﹁帰りましょう、聖域へ
﹂
どれだけ時間がかかってもやり遂げる。私の戦う理由が一つ増え
救う﹄と誓った。
そして⋮カテリーナの墓を作った。墓石の前でもう一度﹃アリアを
びっくりしていたが必死に説得して今に至る。
リーシェを聖域に連れていくと言った時マニゴルドとレグルスは
﹃レグルス﹄、﹃リーシェ﹄だ。
私たちは出発の用意をしていた。メンバーは﹃私﹄、
﹃マニゴルド﹄、
?
231
!
︻聖域︼
その頃聖域ではアテナ神殿前で童虎とシオンが報告をしていた。
ユ
ニ
コー
ン
ペ
ガ
サ
ス
﹁この度の戦いは恐れながら敗北を喫しました。青銅2名は死亡した
と思われます。死亡した青銅の名は﹃一角獣星座の耶人﹄と﹃天馬星座
のテンマ﹄。街は壊滅し⋮ハーデスの結界が敷かれました。
それと⋮ハーデスの依代となった少年の名はアローン。
⋮⋮⋮以上でございます。﹂
﹁⋮そう⋮ですか⋮﹂
アテナは悲しみを抑えた声で呟いた。その悲しみを押さえつけ指
示を出した。
﹁わかりました。教皇の指示を仰いで聖域の防御を固め迎撃の準備を
するのです。
ン
マ
﹂﹂
232
⋮それと童虎、シオン。﹂
テ
﹁﹁は⋮はっ
己の無力を憎みながら童虎とシオンはアテナ神殿をあとにした。
アテナの悲しみと思いやりの心。
﹁ありがたきお言葉⋮⋮﹂
アテナの言葉は優しく、慈悲に満ちていた。
休んでください。﹂
﹁ご苦労でしたね。他の白銀や青銅も次の戦いに備えて今はゆっくり
息を飲んでアテナの言葉を待つ。
悟でここに来た。
幼馴染みを死なせてしまった童虎とシオンはどんな罰でも受ける覚
!
聖戦∼真実と道しるべ∼
魚座の誓い
彼女は幸せだった。彼と共に居られたのだから。
彼は幸せだった。静かに笑顔で日々を過ごせて居たのだから。
だけど世界は残酷で⋮
彼女からすべてを奪っていった。
彼からすべてを奪っていった。
彼女は絶望した。彼を変えてしまった己と世界に。
彼は絶望した。彼女を奪ったすべてに。
そして彼女と彼は⋮⋮⋮
ただいま第2の故郷
﹂
﹁暗いって⋮そうだな。まるでお通夜だな。﹂
﹂
﹁それ的確な表現か⋮も⋮⋮⋮
⋮⋮⋮⋮まさかッ
﹂
!!
ろです。
﹁⋮⋮蘭華⋮
帰ったのか
﹂
私は3人を置いて走り出しました。場所は白羊宮。シオンのとこ
!?
﹁シオン⋮教えてください。
めていた緊張を解いた。
疲れた様子のシオン。私達の顔を見るとホットしたように張り詰
!!
233
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ただいま聖域
﹁はーい⋮﹂
普通じゃね
何かおかしいですね。﹂
レグちゃんに突っ込まれてしまった⋮
﹁⋮⋮
﹁⋮⋮そうか
?
!!
︻聖域︼
﹁到着です
!
﹁⋮⋮蘭華、一回落ち着こうか。﹂
!!
﹁いえ、何か⋮雰囲気が暗いです。何かあったのでしょうか⋮﹂
?
?
﹂
⋮⋮テンマと耶人は⋮
﹁⋮⋮⋮⋮⋮
﹁忘れたんですか
﹂
私はこの聖戦の結末を知ってます。﹂
﹁⋮なぜそれを⋮﹂
﹁⋮そう⋮ですか。アローンがハーデスになったんですね
シオンは何も言わない。沈黙が答えだった。
?
⋮⋮ッ
ヤバイっ
︶
!!
だ。﹂
その言葉を聞いた私は血の気が引いた。
﹂
アルバフィカがそんな簡単に倒されるわけがない
おそらく凄い顔をしていると思う。
﹁大丈夫だ
﹁⋮違います
アルバフィカ様は⋮﹂
シオンはちょっと斜めの励ましをしてくれた。
!
︶
!
﹂
いします。﹂
﹂
﹂
﹁⋮マニゴルド、リーシェを連れて教皇の間へ行って任務報告をお願
ではないのだ。だったら行動した方がいい。
リーシェの言う通りだ。時間は刻一刻と過ぎていく。時間は無限
思います⋮よ
﹁私にはよくわからないけど、悩んでいるよりは行動した方がいいと
﹁⋮⋮え
﹁思った通りに行動したらいいと思います。﹂
﹁リーシェ⋮﹂
﹁⋮蘭華⋮﹂
に介入することはできない⋮ッ
︵どうしよう。このままだとアルバフィカ様が死ぬ。だけどあの戦い
!
﹁⋮⋮ 彼 な ら 聖 域 攻 め て き て い る ハ ー デ ス 軍 を 迎 え 撃 っ て い る は ず
﹁⋮アルバフィカ様は
﹂
そ う だ ⋮ 聖 域 に ミ ー ノ ス が 攻 め 込 ん で き て ア ル バ フ ィ カ 様 が
マと耶人は生きているからいいとして⋮この後何があるんだっけ⋮
︵想定外だ⋮こんなにも早く話が進んでいるとは思わなかった。テン
﹁⋮そうだったな⋮﹂
?
?
!
!
?
234
!?
!?
?
﹁わかった。﹂
アルバフィカ様の
ただ事ではないと感じ取ったのかマニゴルドは理由も聞かず私の
☆★☆★☆★☆★☆
﹂
︻二年前︼
﹁ちょっと⋮早いですって
アルバフィカ様
﹂
歩幅の問題なんですってば
﹁だから蘭華が遅いだけだろう
﹁だーかーらー
﹂
﹂
!!
!!
?
!
﹁アルバフィカ様が前言ってたんです。二年前の任務で。﹂
﹁え
﹁もう誰も死なせたくない⋮﹂
てくれる。
私たちは走っていた。シオンとレグちゃんは何も言わずついてき
!
指示に従ってくれた。
﹂
﹁シオンとレグちゃんは私についてきてください
﹂﹂
加勢に向かいます
﹁﹁ああ
!!
来た道を逆走し、私たちは走り出した。
!
に拒絶されすさんだ性格になっていた。
比較的簡単に目的の少年は見つかった。しかし⋮その少年は周囲
に。
よって早急な保護が求められていた。取り返しのつかなくなる前
人間は自分と違うモノを拒絶する。
が周りからどう思われるのかは想像するまでもなかった。
小宇宙を普通の一般市民は知らない。よって小宇宙に目覚めた者
める事は稀なケースだ。
人々に怪我をおわせる。訓練をしていない少年少女が小宇宙に目覚
小宇宙は果てしない力を生み出すため、力を制御できないと周りの
小宇宙に目覚めた少年の保護のため私たちは任務を遂行していた。
!
235
?
﹂
少年は私たちが話しかけるとすぐに拳を向けてきた。
﹁アルバフィカ様
アルバフィカ様は避けること無く少年の拳をその身に受けた。
﹂
知ったこっちゃないね
他人を守るなんてお人好しなこと
﹁その力は他人を傷つけるためのものではない。他人を守るためのも
のだ。﹂
﹁ふんだ
誰がするもんか
﹁力を振るったところで何になる
他人を傷つけてそれでお前の心は
﹂
!
﹂
満たされるのか
!
?
てめぇに説教させるいわれはねぇよ
黙れ
!
なんで反撃しねぇんだよ
なかった。
﹁⋮ッ
﹂
!!
その判断が他人を傷つける
﹁怪我を負わせたくないからな。﹂
﹁つくずく甘ちゃんだ
﹂
!!
・
・
他人を殺すんだ
そんなにも世界は優しくねぇんだよ
﹂
誰も死なせたくないと。それはお前も入っている。﹂
﹁ざけんじゃねぇ
﹁⋮この力のせいでアイツは死んだ
﹂
誰も死なせないなんて不可能な
!!
﹂
?
﹁⋮何と言われようと俺は世界を憎んでいる。世界も人間も⋮俺自身
アルバフィカ様は少年の拳を受け止めた。
⋮⋮お前はどうだ
めるつもりは無い。私は願いのために力を振るう。
﹁確かにそうなのかもしれないな。だが⋮それでも私はこの考えを改
んだよ
!!
?
少年は泣いていた。泣きながら拳を振るっていた。
!
﹁言っただろう
﹁言ってることやってることが矛盾してるぞ。﹂
﹁いや、私はもう誰も死なせたくない。そう心に誓った。﹂
少年の叫び。一体何があったのか私にはわからない。
!
だが⋮アルバフィカ様は拳を握ることも、小宇宙を燃やすこともし
石に生身の体で受けるのは危険だった。
もう一度少年は拳を振り上げる。今度は小宇宙がこもっており、流
﹁⋮⋮⋮ッ
?
!
!!
236
!!
!!
!
!
!!
も全て
﹂
﹁⋮⋮そうか。﹂
だから首を洗って待ってろ
悲しそうな顔。私は一歩も動くことが出来なかった。
﹁テメエには絶対落とし前をつける
﹁ああ。﹂
﹁⋮追わなくていいんですか
﹂ そういうと少年は身を翻し人ごみの中に消えていった。
!
﹂
⋮⋮わかりました
あ、え
﹁帰るぞ。﹂
﹁⋮ぇ
﹁行くぞ。﹂
﹁あ、あの⋮
﹂
そういうとアルバフィカ様も少年とは反対方向に歩き出す。
?
﹁アルバフィカ様らしいですよね。﹂
﹁誰も死なせたくない⋮⋮か。﹂
☆★☆★☆★☆★☆
結局それ以来少年と会うことは無かった。
!
!?
う事を何も知らず活気と不安で溢れていた。
﹂﹂
﹂
﹁シオン、レグちゃん。ここに冥界三巨頭の1人、ミーノスが来ます。﹂
﹁﹁なっ
﹁アルバフィカ様は満身創痍。対してミーノスは無傷に近い⋮
﹂
ミーノスはこの村を襲います。だから⋮この村にとどまり村を守
ります。﹂
﹁⋮アルバフィカの元に行かなくていいのか
た。
その時、私たちは村に物凄い勢いで近づいてくる小宇宙に気がつい
⋮﹂
﹁⋮⋮ あ の 戦 い に は 私 た ち が 割 っ て 入 る こ と は で き ま せ ん。そ れ に
?
237
?
ロドリオ村についた。村はまだ無事であり、これから起きるであろ
!
!
?
!?
﹁⋮ッ
来ます
﹂
!
﹁﹁﹁
﹂﹂﹂
﹁⋮村が⋮﹂
いいえッ
あなたたち
﹁アルバフィカ様は負けたりなんかしないわ⋮
☆★☆★☆★☆★☆★
は光速で走り出した。
村人がこれ以上犠牲になる前に敵を止めなければならない。私たち
私たちがいる場所はミーノスが襲撃した場所とは離れすぎている。
﹁行きますよ
﹂
その瞬間街の半分が崩れ落ちた。
ドカァァン⋮
!
﹂
!!!
う。
だ。
︵黄金聖衣⋮
︶
ル
バ
フィ
カ
様
コ
イ
これ以上は村を破壊させやしないぞ
!
ツ
天貴星
アルバフィカ様と勘違いしたアガシャ。黄金聖衣は牡羊座。
﹁私は牡羊座のシオン
てんきせい
その瞬間アガシャとミーノスの間に黄金聖衣を着た者が割り込ん
﹁させるかッ
﹂
私は死を覚悟した。すぐに私の体は引き裂かれ道端に転がるだろ
て入られませんから。﹂
だが先を急ぐので失礼しますよ。力のない者の戯言には付き合っ
﹁そうですか、それは結構。
まで時間を稼ぐ。たとえそれで私が死んだとしても、私は本望だ。
フィカ様は約束を守って下さる。ならばアルバフィカ様が到着する
アルバフィカ様は﹃必ず守る﹄と約束してくださった。絶対アルバ
けれど許せなかった。アテナの聖闘士を馬鹿にした冥闘士を。
ア
ことをしたものだと思う。
私は敵と対峙していた。私は何の力もないのに敵を煽るなど馬鹿な
アガシャ ミーノス
バカァ
アテナの聖闘士は冥王軍には負けないって言ったのよ
!
!!!
!?
!
238
!!
!!!
グリフォンのミーノス
この場は私がおさめる
﹂
!
﹁⋮な⋮
﹂
骸になっている魚座の敵討ちといったところですか。﹂
﹁ほう、牡羊座のシオンまで出てくるとは。さしずめ村の外で転がり
!!
でした。仕方が無いので体の骨を砕きましたよ。
私の技に逆らわなければ美しく散れたものを。﹂
彼
これ以上アルバフィカを愚弄することは許さん
!!
﹂
技
!
﹂
?
?
るという訳ですか。
そして薔薇使い⋮君はアルバフィカの弟子か何かですね
﹁ええ。﹂
﹁そうですか。﹂
アルバフィカの弟子よ。﹂
心の底から面白そうに笑うミーノス。
﹁ならば私の相手は君ですか
﹄
﹁すまなかったなシオン、蘭華。迷惑をかけて。
私はまだ⋮戦えるよ。﹂
﹂
﹁成程⋮すべてを噛み砕く黒薔薇。その薔薇にかかればこの技を破れ
切った。
私はシオンの前に立つ。そして私はシオンを操る糸を黒薔薇で断ち
蘭華
﹁させるとでも思っているのですか
﹁最早いたぶるのも面倒です。首をもいで終わらせましょう。﹂
手を操る。マリオネットのように。
ミーノスが放ったコズミックマリオネーションは、見えない糸で相
︻コズミックマリオネーション︼
ようにとっとと退場していただきます。
﹁二の舞を演じるとはこの事ですね。申し訳ありませんが魚座と同じ
宇宙は存在しない。
シオンが小宇宙を燃やす。この場にはシオンとミーノス以外の小
﹁黙れ
﹂
﹁彼はなかなか楽しめる傀儡でしたよ。最後まで私の技に屈しません
!?
﹁その必要は無い。﹂
﹃
?
239
!
この声は私たちのよく知る者。そして私の師。
!!!
アルバフィカ
ミーノス
その者は立っていた。全身の骨が砕け、全身から血を流していようと
も。彼の瞳は敵を見つめていた。口に薔薇を咥え、戦闘意欲は失われ
ていない。
私はアルバフィカ様が来たら﹁すぐに終わらせるので待っていてく
ださい﹂と言うつもりだった。冥界三巨頭と殺り合うのは私にはキツ
イだろうが、満身創痍のアルバフィカ様を戦わせたくなかったから。
そんな怪我で戦えるわけがない
﹂
だがアルバフィカ様を見て考えを改めた。いや、改めざるをえな
かった。
﹁な、何言ってんだよ
﹂
!!
誰にも譲らない
とアルバフィカ様の小宇宙が語っている。姿
﹁アルバフィカ様の戦いなの。悔しいけど手出しをしちゃいけない。﹂
﹁蘭華
﹁レグちゃん。この戦いに手出しは無用だよ。﹂
﹁だけど⋮﹂
﹁黙れレグルス。これは⋮私の戦いだ。﹂
!
見逃してさしあげます
﹂
"
!?
美 し い と い う 言 葉 は 貴 様 が し た よ う に 常 に 私 の 誇 り を 傷 つ け る。
がどうであれ私はそうして生きてきただろう⋮
﹁⋮私はなミーノス。今まで己の血を疎み人を避け生きてきた。美醜
のをとことん嫌う。
えるほど美形である。だがアルバフィカ様は﹁美しい﹂と評価される
アルバフィカ様は容姿端麗。十人に聴けば十人とも﹁美しい﹂と答
⋮だがこれ以上美しい君が血と泥にまみれるのは見るに忍びない。
何度やっても同じ、力の無いものは屈服させられ弄ばれるのみ。
れば君は相応に美しく散れたものを。
それにしてもまだ生きていたとは驚きでした。あのまま死んでい
﹁仲間に任せて下がっていれば良いものを⋮
"
貴様いったい何をもって私をそう評した
私は力も
!!
240
!?
が語っている。
"
"
小宇宙も
生きざまも
まだ貴様の前で出し切ったつもりはないッ
だった。
﹁これが⋮私の生きざまだ
ではない。
﹁全身の血を捨てる気か⋮
﹂
クリムゾンソーンッ
アルバフィカ
﹂
!!
﹁次の相手は牡羊座、君か
﹂
?
﹂
それともアルバフィカの弟子か
﹂
?
ですよ。﹂
﹁
これは⋮これは奴が咥えていたデモンローズ
﹂
!!
白薔薇だと⋮
﹂
?
﹂
!
﹂
﹂
!
そう、初めから︻クリムゾンソーン︼は囮。全身の血を捨てた命懸
﹁
まった白薔薇
⋮⋮⋮⋮⋮それは、アルバフィカ様自身の毒の血を吸って真紅に染
﹁はい。⋮おそらくそれは⋮
﹁ば⋮かな
﹃白薔薇﹄。人の血を吸い真紅に染まる﹃ブラッティーローズ﹄です
﹁⋮⋮いいえ。その薔薇はデモンローズではありません。その薔薇は
ながら私はミーノスに告げた。
ミーノスの胸は真紅の薔薇に射抜かれていた。その薔薇を見つめ
いつの間に
﹁既に決着のついている者を相手にする必要は無い⋮と言っているの
﹁⋮なに
﹁いいや、その必要は無い。己の胸を見てみろ。﹂
?
気力だけで立っていたアルバフィカ様はその衝撃で膝をつく。
ミーノスが周りを吹き飛ばす。
もう終わりにしましょう。﹂
﹁大層な口を聞いた割には大したことありませんね。
威力は凄い。だが⋮ミーノスには届かない。
!?
毒の血が霧状になってミーノスを襲う。だがこの量と威力は尋常
!!
ア ル バ フ ィ カ 様 が 小 宇 宙 を 燃 や す。出 し 惜 し み な ど な い。全 力
!!
!!
!!
?
241
!!
!?
!!
!!!!
けの
目くらまし
。
とえそれで命を落としたとしても⋮ここで
たのです。
敵を倒す
つもりだっ
"
﹂
!
たのです。﹂
﹁お⋮のれ⋮
アテナの聖闘士⋮
⋮⋮ミーノス、貴方はアルバフィカ様の信念を⋮覚悟を甘く見すぎ
"
﹁アルバフィカ様は初めから相打ち覚悟で戦いに望んでいました。た
本命は初めから︻毒の血を吸った薔薇︼だったのだ。
"
しっかりしろ
☆★☆★☆★☆★☆★
﹁アルバフィカ
!!
﹂
﹂
!!
﹂
!!
﹄﹃皆、後は頼んだ⋮﹄
!
﹁蘭華⋮⋮
﹂
﹁ざ⋮⋮なよ⋮﹂
アルバフィカ様の言葉が頭の中でリピートしている。
﹃これが私の生きざまだ
けれど私はそれ以上に別の感情が頭の中を支配していた。
私はその様子を眺めていた。ショックじゃないと言えば嘘になる。
アガシャちゃんとシオン、レグルスがアルバフィカ様に駆け寄る。
﹁アルバフィカ様ッ
☆★☆★☆★☆★☆★
そう言うとアルバフィカ様は倒れた。
﹁皆⋮後は頼んだ⋮﹂
﹁何を馬鹿な事言っている
﹁ああ⋮流石に疲れたよ。すまないな⋮﹂
﹁だが
﹁いい⋮私に近寄るな⋮⋮﹂
シオンとレグちゃんが駆け寄る。
﹂
﹂
ミーノスが倒れ、この戦いが終わった。
!
﹁アルバフィカ
!! !
﹁ふざけんなよッ
﹂
私の発した言葉だと気づくには時間が掛かった。
!!!!
シオンが泣きそうな⋮苦しそうな顔で見ている。
?
242
"
!!
﹄だよ
なにが﹃後は頼んだ﹄だよ
!
ふざ
自分でも意外だった。私はこんなにも怒ることができたのだと。
﹂
﹁なにが﹃私の生きざまだ
けんな
!
﹁シオン
﹂
アルバフィカ様の傷塞いで
﹁な、何を
﹁早くしろ
﹂
﹂
早くッ
アルバフィカを殺す気かッ
!!
﹂
!!
!!
﹁な、なにを
﹂
!?
﹂
﹂
アルバフィカの体中を小宇宙で固定して
私が輸血すればいい。
﹁シオン
バフィカの体を直して
レグルス
アル
!
こっちはまだ⋮まだ何もあん
生きざま語るより未来を語れ
含めアルバフィカ様を包み込む。
﹁ふざけんなよ
緒にサーシャの元で戦え
何勝手に終わらせようとしてんだ
何も伝えてないッ
!!
﹂
﹁もう⋮もう誰も死なせたくないんだッ
それは⋮あんたが私に言っ
それなのに私は叫んでいた。喉が痛くなるほど全力で叫んでた。
ずっと隠してきた私の本音。伝えるつもりなんてなかったコトバ。
たに返してない
!! !!
!!
!
!!
後頼むぐらいなら一
2人はすぐに動いてくれた。シオンの暖かく優しい小宇宙が私も
!
!
私はアルバフィカ様と体内の毒素が同じ。血液型も同じ。ならば
いい。
死﹄。要は体の血液が足りないのだ。なら簡単。他の血を輸血すれば
この時点でまだ脈があるという事はアルバフィカ様の死因は﹃失血
﹁⋮⋮
首をアルバフィカ様の手首に重ね血を送る。
シオンを黙らせながら私も自分の手首を切った。そして自分の手
!!
!?
﹁いいから黙ってろ
﹂
たのを確認し私はアルバフィカ様の手首を切った。
シオンは急いでアルバフィカ様に小宇宙を送り込む。傷が塞がっ
﹁
!! ?
!!
私はアルバフィカ様に駆け寄り脈を取る。微かだがまだ脈がある。
!!
!
!
!!
243
!!!
たことだろうッ
と血を流した
﹂
だ。アルバフィカ様の方がもっと辛かった。他の聖闘士の方がもっ
血を流しすぎて頭が朦朧としてくる。だがそれがなんだと言うの
!!
られないのはもう嫌だ。
生きることから逃げてんじゃねぇッ
私は⋮もっとみんなと一緒にいたいッ
﹁だから生きろッ
﹂
!
は分からない。だが私の言葉は少しでも貴方に届いたのでしょうか
その瞬間アルバフィカ様の瞳から一筋の涙。それが何の涙なのか
!!
!!
もう誰も死なせたくない。目の前で消えようとしている命を助け
!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
シオンside
﹁気絶したのか⋮﹂
言いたい事全て言ったら眠るように気を失ってしまった。
蘭華が言ったこと⋮それは全て私達の気持ちでもあった。
﹁流石だね⋮蘭華は。﹂
アルバフィカの呼吸は安定を取り戻した。しばらく安静にしてい
れば大丈夫だろう。
﹁レグルス、2人の傷を塞いでくれ。﹂
﹁うん。﹂
﹂
頷くとレグルスは2人の手首の切り傷を塞いだ。2人に出血して
いる所がないと確認すると持ち上げて運ぶ。
体格的に私がアルバフィカを運んだ方が効率がいいだろう
﹁いや、シオンは蘭華を。﹂
﹁
﹁いいんだよ。﹂
そう言うとレグルスはアルバフィカを抱える。
?
何をモタモタしてるん
代わろうかと思ったが無言のプレッシャーのようなものを感じて
たじろいだ。
﹁早く。2人を運ばなくちゃいけないだろう
だよ。﹂
?
244
?
?
﹁⋮⋮すまない。﹂
﹂
そう言うと私は蘭華を腕に抱き歩き出した。
レグルス様
☆★☆★☆★☆★☆★
﹁シオン様
﹂と叫んだ勇気ある少女、アガシャ
聖域へ繋がる階段を登っていると声をかけられた。
先程ミーノスに対して﹁バカァ
だ。
﹁聖戦がこの先も続いたら⋮⋮
アルバフィカ様
?
そう言うと泣き出してしまった。
死んで欲しくなんてありません⋮⋮
﹂
私は⋮聖闘士達がボロボロになるのを見たくありません⋮
のように⋮⋮
たくさんの聖闘士様たちが傷つくのでしょうか
聖闘士様たちはこれからも死んでいくのでしょうか
!
は闘い続けるだろう。命が燃え尽きるその瞬間までな。﹂
その先にあるものがたまたま﹃死﹄や﹃他の何か﹄だとしても⋮我々
死ぬ為なのでは決してない。まっとうするために闘うのだ⋮
きるだけだ。
ただ己の生涯で成すべきことを⋮地上の愛と正義を守るために生
﹁⋮我々は、死ぬために戦うのではない。
思ったことを話そうと思った。
私 と レ グ ル ス は な ん と 声 を 掛 け れ ば い い の か 困 っ て し ま っ た が
!!
!
!!
誰だ
﹂
私はアトラ。﹄
キイイィィィイイン⋮⋮
﹂
金属同士が擦れ合うような独特な音。そしてこの光。
テレポーテーション
﹁これは⋮瞬 間 移 動か
至急教皇の元へお連れ下さい
光の中からまだ幼い少年が姿を現した。
﹁私はジャミールよりの使者
!
!?
!
245
?
!
﹃ですが、このままでは死んだ聖闘士達は無駄死にとなるでしょう。﹄
﹁
!!
﹃お初にお目にかかります。牡羊座のシオン、獅子座のレグルス。
!?
﹂﹂
このままでは聖域はハーデスに敗北いたします
﹁﹁なッ
︻ハーデス城︼
﹁今再び目覚めよ、冥闘士達よ。
ハー
デ
ス
﹂
そういいながらアローンは壁の絵に向かって息を吹きかけた。
ておくれ。﹂
死という静寂から⋮永遠の安らぎから戻って再び余のために闘っ
!!
﹄
ア
テ
ナ
すると壁の絵から冥闘士が現れた。その冥闘士は確かに聖闘士が
ハーデス様
倒したはずだった。
﹃仰せのままに
!!!
だって冥闘士は⋮
不死身
なのだから。
教
﹂
!?
︻聖域︼
冥闘士は死なないだと
"
うのだ⋮
﹂
皇
の
間
犠牲になった人びとは⋮
﹂
それでは今までの同士たちの死は一体何だったとい
いや、同士たちだけではない
﹁落ち着けシオンよ。﹂
闘士では⋮正直闘いにならない。
落ち着いていられる状況ではない。﹃死なない﹄冥闘士と﹃死ぬ﹄聖
!?
﹁⋮それでは⋮
⋮⋮彼ら冥闘士に﹃死﹄という概念は存在しないのです。﹂
者を復活させることはたやすい事。
﹁はい。死者の国の王であるハーデスにとって己の国の住人である死
忘れた。
ど、普段では考えられないが伝えられた事実が衝撃的すぎてつい我を
教 皇 の 間 に 響 く は シ オ ン の 驚 愕 の 声。神聖な場所 で 大 声 を 出 す な
﹁バ⋮馬鹿な⋮
"
﹁初めから聖域に勝ち目などないのだよ。サーシャ。﹂
!!
!!
!
﹁落ち着いていられる状況ですか
!
!?
!
246
!?
にしかならないからだ。
たとえ相打ちで倒したとしても⋮復活するという事は
間稼ぎ
ただの時
"
ハーデスの小宇
を遮っておられる。皆の死を無駄にしないために⋮な⋮﹂
"
ン
マ
きるでしょう﹄と。
テ
﹂﹂
﹃天馬星座の聖闘士の生還と共に﹄
﹁﹁
る⋮
﹂
我
師
ハーデス
ハ
ク
レ
イ
天馬星座のテンマは前の任務で死んだはず。そのテンマが生還す
!
﹃あと1日⋮あと1日持ち堪えて下さればアテナ様に吉報をお届けで
﹁それに関して長より重要な伝言がございます。
﹁⋮そんな⋮﹂
ることだけだ。﹂
⋮結局我々に出来ることは一刻も早く敵将を倒し、聖戦を終わらせ
になるのは我々なのだ。
﹁左様。アテナ様に多大な負担をかける。つまり戦いが長引けば不利
﹁しかし⋮結界を敷き続けることは⋮﹂
宙
アルバフィカに敗れた冥闘士に復活を呼びかける
神殿に入られたアテナ様は今、この聖域一帯に強力な結界を敷いて
たれている。
﹁我々とてただ手を拱いているわけではない。既にアテナ様は手を打
"
﹃信じられる師﹄と﹃信じられない現実﹄との狭間で私は揺れていた。
うとは思えない。
とても信じられる話ではないが、ジャミールの長がそんな冗談を言
?
247
"
!!!!
木欒子
彼女は願った。﹃彼の幸せ﹄を。
彼は願った。﹃世界の終焉﹄を。
たった一つの出来事が二人の道を分けた。
だから彼女は誓った。
だから彼は誓った。
初めは同じ。だが⋮今では交わる事は決して無い。
プリズン
プリズン
もくれんじ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
︻冥界・第六地獄三の谷と第七地獄一の壕の間、冥界の木欒子︼
サー
シャ
花の腕輪
死
人
の加護と一角獣星座の耶人、ジャミールの戦士
ハ ー デ ス の 攻 撃 に よ っ て 現 世 で 死 亡 し、冥 界 に 落 ち た テ ン マ。
アテナの
ミ
タ
ル
ゴ
辿るべき心理は冥王に
愚かなりアテナ、永きにわたる聖戦で目が曇ったか。
ス
そう喋るのは黄金聖闘士。
ア
あるやもしれん。﹂
やはりこの聖戦幼きアテナに理はあらず
﹁全くの失望だ
テンマside
がる。
だがその前に突如、聖域にいるはずの乙女座のアスミタが立ちふさ
バ
の深部である木欒子の木の麓まで来ていた。
2人と合流したテンマは﹃聖戦を左右する任務﹄を果たすため冥界
ユズリハの助けもあり冥界の住人とならずに済んでいた。
"
たのだ。
!?
﹁だとしたらどうする
﹂
だがその願いは儚く崩れ去った。
である。
否定して欲しい。アテナを裏切ると言う事は﹃敵となる﹄という事
﹁お前黄金聖闘士のくせにアテナを裏切るって言うのか
﹂
アテナに批判的な言葉。それだけではなく﹃冥王が正しい﹄と言っ
だがテンマはアスミタの言葉を理解出来なかった。
!
!!
?
248
"
目を閉じたまま眉一つ動かさず問い返すアスミタ。
﹂
﹁そんなもん決まってるだろ。敵なら戦うだけだ
︻ペガサス流星拳︼ッ
!!
﹂
!?
まった。
﹁そんな
流星拳が通じない⋮
だがその拳はアスミタの周囲の円状の防御壁によって弾かれてし
小宇宙を高めたテンマは拳を放った。
!!!
ているのかね
二度死んで時空の塵となるがいい
﹂
﹁そのような感情に任せた薄っぺらな拳がこの私に通じるとでも思っ
!?
﹂
全然見えなかった⋮
飛ばされていた。
﹁ぐわああ
嘘だろ
車
!
!!
﹂
﹂
田
落
ち
﹁何わけわかんねぇこと言ってんだよ。神殺しって俺は知らねぇぞ⋮
﹁ほう。さすがは神殺しの男。この程度では死なないか⋮﹂
﹁っ⋮くそ⋮ッ
の衝撃で地面が割れ、のめり込むのも忘れない。
そのままテンマは地面に向かって﹃顔面から落ちた﹄。もちろんそ
︵なっ
︶
アスミタの小宇宙が高まったとおもうと既にテンマは上空に殴り
!!
!?
!
!
即答され一瞬﹃ぶん殴ってやろうか﹄と思った。いや、マジで。
アスミタは語りだした。俺が﹃神殺し﹄とか﹃天界の大罪人﹄とか
を全て。
⋮話が長すぎる。要約すると
1、昔からペガサスはアテナのもとで戦っていた。
2、冥王ハーデスに唯一傷を負わせた
3、どうやら冥王と因縁があり、聖戦を左右する⋮かも。
﹁だが君は見たところ心拙く乱暴で感情的。お前のような者を側に置
き続けるアテナの気が知れん。﹂
249
!?
﹁そうであろうな。﹂
!
﹁そんなの知るか⋮
俺は地上とサーシャを守るために⋮﹂
﹁まだそのような世迷言を。アンドロメダと同じく甘い考えの持ち主
蘭華を知ってるのか
﹂
のようだな。全ての人間を救うなどと不可能なのに諦めようとしな
い。﹂
﹁⋮アンドロメダ
?
﹂
?
反応に困る。
﹁⋮出張料理人⋮⋮
TPO考えろ
﹂
突っ込みどころが満載な
﹁そうだ。各宮に周り料理を作ってくれる人間だな。﹂
﹁⋮⋮⋮そ、そうなのか⋮﹂
﹂
これはどう反応したらいいのだろうか
のだが。
﹂
﹁最初に一言いいか
﹁なんだね
T⋮時
P⋮場所
O⋮場合
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
最早絶句だ。
カ
ル
ディ
ア
何 故 黄 金 聖 闘 士 は 問 題 児 が 多 い ん だ
より諦めていたのか。常識が当てはまらない。
﹂
蘭華が凹んでいたのはこの為だったのか⋮いや、凹んでいるという
黄金聖闘士とか。
?
腹減って倒れている
の料理の腕を語るのは状況など関係ないだろう
い。敵陣ではあるが冥闘士が来たら倒せばいいだけのことだ。蘭華
﹁それがなんだね
聖戦については死人である君が気にする必要は無
﹁今は聖戦真っ只中だし、敵陣真っ只中だしそれどころじゃねぇだろ
!!
﹂
真顔でわけのわからないことを言い出す。意味がわからなすぎて
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮は⋮⋮⋮
﹁無論。驚異的な料理の腕の持ち主だ。出張料理人だな。﹂
?
!!
?
!?
250
!!
?
﹁シリアスな雰囲気が台無しなんだよッ
?
?
?
!!
そしてこの後いきなり戦闘が再開され︻天舞宝輪︼などの技をかけ
られ⋮
﹂
死線を潜った。元々半分死んでるようなもんだったが。
﹁うおぉぉぉおおお
小宇宙を極大まで高めアスミタに向かって放つ。アスミタではな
﹂
く木欒子に攻撃が当たり、俺の小宇宙の高まりに呼応して木欒子の実
が実を結んだ。
﹁⋮な⋮お前との戦闘は全部幻覚だったのてのか
﹁え
な
﹂
つ持っていくがいい。﹂
れ
さて、ジャミールの長が望んだものは木欒子の実であろう。108
こ
少なくとも死人である君には全て現実であったと言えよう。
﹁さて⋮どこからがそうでどこまでがそうだったのやら。
!?
﹁はぁ
ちょっと
﹂
待て待て待て待て
︶
﹂
絶対そうだろ
意識がはっきりして覚醒した私は部屋から飛び出した。向かう先
様が⋮⋮
︵私なんで寝てるんだろ。確か聖域に帰ってきてその後アルバフィカ
!!!
﹁ならばサラダバー。﹂
﹁それ蘭華の影響だろ
﹁⋮⋮⋮ぅ⋮﹂
蘭華side
︻聖域・双魚宮︼
☆★☆★☆★☆★☆★
最後までよく分からない奴だった。
!!
!!
目を覚ました私。知っている天井。
﹁私の部屋⋮
﹂
マイペース過ぎるって
﹁さらばだ天馬星座。次は現世で会おう。﹂
!?
体を起こす。頭が朦朧としている。
?
!!
!?
!?
251
!!
!!!
!?
﹂ドテ
はアルバフィカ様の部屋。
﹂ツル
ドタバタ
﹁きゃ
﹁にゃぁぁぁぁぁああ
﹂
ドンガラガッシャン
﹁いてて⋮﹂
ドタバタ
ガチャッ
バタンッ
﹁アルバフィカ様
!!
!?
﹂
違いしてもおかしくない。
﹁⋮⋮アルバフィカ様⋮
﹂
アルバフィカの魂が足りない
﹁そ、そんな⋮
こんぱく
魂魄
とも言う。魂魄は﹃魂﹄と﹃魄﹄の二つが合わさっ
こん
事に。
そして気づいた。気がついてしまった。
私はそっとアルバフィカ様の手を握った。
?
コ
ラ
ロ
ダ
焦ったところで仕方が無い。今は落ち着いてどうしたらいいのか
︵落ち着け。落ち着け私。︶
このままではアルバフィカ様が目覚めることは無い。
アルバフィカ様には﹃魂﹄はあるのに﹃魄﹄がない。
﹃魄﹄は﹃人間の肉体﹄をつかさどるモノ。
カ
﹃魂﹄は﹃人間の精神﹄をつかさどるモノ。
コ
たものであり、片方が欠けていてはその者が目覚めることはない。
魂は別名
は く
から﹃生きている﹄と分かるが、それが見えなければ死んでいると勘
なのに⋮アルバフィカ様は起きないのだ。胸が上下していること
をした。病人ですら飛び起きるぐらい騒々しいことを。
上を見ればわかるように部屋にたどり着くまで色々と騒がしい事
だが⋮同時に不審に思った。
は夢ではない。
アルバフィカ様はベットの上にいた。安堵した。少なくともアレ
!!!
"
"
!!
252
!!!
"
"
を考える方が先決である。
先
こ
代
蟹
こ
座
と
現
蟹
座
﹂
そして私は魂のエキスパートの教皇とマニゴルド、デジェル様に小
宇宙でテレパシーを送った。
﹂
3人を待っていると他の人間が双魚宮を訪ねてきた。
﹁乙女座のアスミタ
﹁アテナに用事があるため通らせて⋮⋮⋮どうしたのだね
﹁あ、アルバフィカ様が⋮﹂
﹂
事情を説明すると難しい顔になる。
﹁マニゴルド達は呼んだのか
﹁はい。﹂
﹁そうか⋮ならいい。悪いが私の用も重大なのでな。ここを通しても
らおう。﹂
その言葉で﹃アスミタがアテナに会いに行く理由﹄を思い出した。
いや、思い出したと言った方が正確なのかもしれない。
﹁⋮アスミタ⋮﹂
﹃死なないで﹄とは言えない。
命
アスミタはアテナ神殿に行った後ジャミールへ行き冥闘士の不死
を封じる数珠を作る。⋮⋮⋮アスミタの全小宇宙と引き換えに。
アスミタの未来は決まってしまっている。アルバフィカ様の時は
まだ割り込んで助け出す隙があった。だがアスミタの場合は﹃無い﹄
のだ。何故なら割り込んでアスミタの邪魔をした場合﹃アテナの敗
北﹄が確定してしまうから。
己の無力さ。憎くて仕方が無い。
﹁そのような顔をするな⋮私は満足なのだからな。唯一の心残りはシ
オンと両思いになった蘭華を見られなかった事か。﹂
こ
分かってますよ
こ
頑張って
そう言うと笑った。それはいつも私に⋮私たちに向けていたモノ
こんな時にふざけないで下さい
﹂
!
で、これから戦場に行くということを嘘と感じてしまう。
﹁⋮⋮
告りますから
!
事。﹃この世界から存在が消える﹄という事に。もう二度と﹃皆で笑い
253
?
?
!
アスミタは分かっている。﹃もう二度と聖域に戻ってこられない﹄
!!
!
笑っている
合えない﹄事に。
それでも
す様に。
のだ。私が責任を感じないように。励ま
ツッコミを入れた。
﹁はい、頼まれました。
蘭華⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹃後は頼んだぞ﹄。﹂
﹁フフフ⋮⋮ならいい。
いつもと同じ
私はその覚悟、心構え。すべてに答えようと思った。だから私は
"
ます。﹂
そして私たちは別れた。
どういう事か説明しろ
☆★☆★☆★☆★☆★
﹁オイ
﹂
!!
254
"
﹃ご武運を﹄。無事に任務が達せられる事を願って⋮いえ、
﹃信じて﹄い
"
"
一番最初についたのはマニゴルドだった。
!
﹁説明も何もありません。私よりもマニゴルドの方が魂については詳
しいですし。言える事は﹃私が目覚めた時には既にこの状況だった﹄
という事です。﹂
﹂
﹁そうだ。一度落ち着くのだマニゴルド。﹂
﹁ジジイ
﹂
﹁⋮そうだな。﹂
?
﹁⋮まずな、
魂が欠ける
なんて事は普通じゃありえねぇんだ。俺
いので専門家に頼るしかない。
アルバフィカ様を助けるにはどうしたらいいのか。私は詳しくな
﹁どうしたらいいんですか
﹂
﹁⋮⋮本当に魂が欠けてやがるな⋮﹂
呼んだ3人が集結。
﹁デジェル様⋮⋮﹂
﹁蘭華
﹁よい。気にするでない。﹂
﹁すみません。ここまで足を運んでいただいて。﹂
教皇も来てくれました。
!
"
﹂
﹂
!
﹂
冥王ハーデスに連なる者
﹂
﹁冥王ハーデスに連なる者...
い、意味がわからない。
﹁それでどうなったのです
の仕業と分かった。﹂
"
﹁魂が欠けた者は眠り続け目覚める事は無かった。﹂
?
?
れはどうやら
﹁...昔話になる。前聖戦の時﹃魂が欠ける﹄聖闘士が続出してな。そ
教皇に皆の視線が集まる。
﹁本当ですか
﹁マジかよジジイ
﹁...このような状態を過去に一度だけ見たことがある。﹂
しょんぼりとした顔のデジェル様。
﹁すまないな⋮私にもどうしたらいいのか⋮﹂
バンザーイと両手をあげるマニゴルド。
はこんな状態初めて見たな。﹂
"
!?
"
255
!
﹁ダメじゃねぇか
﹂
結論↓目覚めなかった
﹂
ってことですか
マニゴルドのツッコミ炸裂。
﹁何とか目覚めさせる方法は無いんですか
"
んでない
﹁...その
冥王ハーデスに連なる者
﹂
略して
冥連
の情報は
"
あるいは目覚めるかもしれん。﹂
﹁オイ...デジェルなんで略した
﹁長いだろう。﹂真顔
"
"
い神﹄という事だけだ。﹂
﹁うわー...アバウト過ぎるだろ。探しようがねぇ...﹂
﹁冥王ハーデスに親しい神......双子神のことではないのですか
というか私には双子神ぐらいしか思いつかない。
﹂
これからどうするか
﹁これからどうするか
?
﹁問題は
だ。﹂
さすがマニゴルド。切り替えが早い。
﹁そんなこと言い合ってててもしゃあねぇだろ。﹂
暗い。完全お通夜モード。
﹁いえ...私がもっと早く気がついていればあるいは...﹂
﹁大した力になれなくてすまんな...﹂
﹁そう...だな...﹂
﹁うーん...わからねぇ...﹂
かなと思いましたが...﹃魂が欠けている﹄となると...
﹂
一見﹃ただ眠っているだけ﹄に見えるので眠りの神ヒュプノスなの
ますます調べようがなくなってしまった。
﹁前聖戦の調べでは﹃双子神の可能性は皆無﹄という結果が出ておる。﹂
?
﹁詳しい情報は何も無い。分かっていることは﹃冥王ハーデスに親し
"
を探し出し、技を解かせれば
目覚めなければ死んでいるのと変わらない。私はそんな未来を望
!?
!
冥王ハーデスに連なる者
﹁......その
"
﹂
あるのですか
?
.........ど、どう反応したら
?
?
"
!
"
"
256
!!?
"
ジジ
﹁ああ。アルバフィカをこのままにしとくわけにはいかねぇ。だが聖
戦が始まった今、そうそう人員を割けねぇのも事実。だろう
イ﹂
﹁そうだな。少人数で事に当たるしか無くなる。﹂
﹁教皇。お願いがあります。﹂
私はどうやら思った事はやらないと気が済まないようだ。
教皇も私が何を言い出すか予想がついたようで呆れとも安堵とも
とれる顔をしていた。
﹁これから私の行動を﹃見逃して﹄頂きたいのです。﹂
﹁理由を聞かせよ。﹂
言わなくても分かっているはずなのに⋮意外と意地悪です。
﹁アルバフィカ様を助けたい。長い時間がかかるでしょう。しかし聖
・
・
﹂
戦が始まった今、おいそれと簡単に許可を出すことが出来ない...そ
れにイロイロ問題を起こす可能性がありますし。
なら私が勝手に行動した...とすれば手っ取り早いです。
﹂
それに...﹂
﹁それに
・
る﹄と見えるだろうが。先に折れたのは教皇だった。
﹂
﹁......よ か ろ う。余 程 目 に 余 る 行 動 を し な け れ ば 勝 手 に 行 動 す る
ことを許可しよう。﹂
﹁ありがとうございます
﹁ならば私も...﹂
うとやぶ蛇なので黙っておく。
それを言うならばまず聖闘士がやってはいけない事だけれど。言
はやっちゃいけないんですよ。﹂
手本となる存在なんです。﹁教皇の許可をとらず勝手に行動する﹂事
﹁バカ言わないでください。デジェル様は黄金聖闘士。全聖闘士のお
!
257
?
?
しばらく教皇から視線を外さずに見ていた。周りは﹃睨み合ってい
マニゴルドとデジェル様はオロオロしているが完全放置。
挑発するような言葉をわざわざ選んだ。だが顔は真剣だ。
・
﹁.........自由に動き回れる﹃駒﹄がいた方が便利でしょう
?
﹁だが...蘭華1人では...﹂
まだ食い下がるデジェル様。
伝わらなかったのかな
﹂
です。ってことで、聖域で情報収集をして頂きたいんです。﹂
﹁......なるほど。﹂
﹁理解していただけたなら嬉しいです。
お前馬鹿だろ
﹂
別に狙われてる
なんでこのタイミングで出てくんだよ
......それでは私はこれから聖域を出ます。﹂
﹁なっ
﹂
﹂
狙われてるなんて言い方やめてくださいよ
いろんな所から狙われてるじゃねぇか
﹁ちょ
わけじゃないですよ。﹂
まさかのマニゴルドが酷いことを...
凛に狙われてるのわかってんのか
狙われてなんかないし
﹁お前なぁ
!
﹄みたいな目で見てくるのやめてく
狙われてたんですか
!?
お前
﹁デジェル様は黄金聖闘士。そして﹃知の聖闘士﹄と呼ばれるほど博識
﹁...どういう事だ
﹁だから、デジェル様はデジェル様なりに手伝って欲しいんです。﹂
?
!
3人とも﹃こいつバカ
?
﹁﹁﹁...............﹂﹂﹂
ちょ
?
!
﹁﹁﹁ヤンデレだと...
﹂﹂﹂
﹁それ否定出来ないので言わないでください
!?
反論できなくなっちゃうじゃないですか
﹂
! !!
微妙な顔をする3人。何なんですか一体。
?
いつもあんな感じだから狙われてるなんて分かりませんよ。とい
﹂
うか皆の勘違いじゃないですかね
﹁いつも...
﹂
﹁あんな感じ...
?
﹂
﹁そうなのか...
?
?
258
?
﹁わかってま......せんけど。え
!!
﹁だって...凛ちゃんっていつもあんな感じですし。﹂
ださい
?
!
!
!?
!?
! !!
﹃は
﹁お前器用だな
﹂
﹂
﹄って顔している前蟹座と現蟹座。何でそんな顔してるんです
セー ジ と マ ニ ゴ ル ド
きますけど...他人を送るなんて出来ないんですよ。﹂
﹁だって...私得意じゃないんですもん。自分を積尸気送りにならで
半分以上呆れているマニゴルド。
﹁...いや、なら何でフランスの時俺を連れてったんだよ...﹂
いですから。﹂
﹁あのですね...アレだけ積尸気送りにされて使えないとか...悲し
!
﹁お前な......﹂
いざとなったら積尸気冥界波で逃げます
﹂
﹁だ、大丈夫デス
﹁使えたのか
!
教皇もびっくりらしいです。というか...顔が...
!?
かね
﹂
﹂
?
いましたよ...
﹁まぁ使えるならいいけど。﹂
これからどこへ行くつもりだ
﹁そうだな。﹂
﹁で
﹂
﹁......そうですねー...イタリアへ行きます。﹂
ハーデス
!?
?
イタリアって敵陣真っ只中だよな
!
﹁そうですけどハーデスに連なる神なら、ハーデスのところに乗り込
ずなので...敵陣ですね。思いっきり。
イタリアにはハーデス城があります。ハーデス城に敵将が居るは
﹁﹁﹁待て待て待て待て
﹂﹂﹂
完全置いてきぼりのデジェル様。暇すぎてお部屋の掃除始めちゃ
﹁.........マジスカ﹂
﹁ああ。﹂
﹁.........ほえ
﹁そうだよな、ジジイ﹂
﹁.........へ
﹁積尸気冥界波は自分を送る方が難易度が高い。﹂
?
というか私はいつまで心の中で突っ込まなければいけないんです
か
!?
?
259
! !?!?
?
むのが一番手っ取り早いですよね
まぁ危険ですけど。
﹂
﹁居るとは限らないぞ。後行ったところで殺されるのがオチだ。﹂
﹁まぁそれもそうですね...﹂
ならどうしましょうか...行きたいところは他にもあるのでまぁ
いいか。
﹁なら...ギリシャ中をウロチョロとしてます。﹂
ハーデスとかアテナとかギリシャ神話の中の神様だから、ギリシャ
を調べればなにか出てくるかもしれないです。
﹁なぜこの国なのだ...﹂
聖域はギリシャにあります。
灯台もと暗しってやつです。
﹁...もうしーらね。好きにしとけや。﹂
﹁そうだな。﹂
お願いします
クロストーン
﹂
Ωの聖衣石はいいなぁ...軽いし持ち運び便利。
出ていこうとしたら教皇に呼び止めりました。
﹁路銀を持たなくてどうする。﹂
﹁......あ...﹂
あは♪忘れてた...というより頭の片隅にもなかったですね。
﹁...気をつけよ。﹂
﹁...はい。﹂
そして私は聖域を出ました。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
side
︻ハーデス城︼
﹁だがまだオレっちが動くわけにはいかねぇからな...﹂
﹁もうしばらく様子見って事かねぇ...﹂
260
?
﹁アルバフィカの事は我々に任せるといい。﹂
﹁はい
!!
私は自分の部屋に戻り旅の準備をした。聖衣重い。
!
﹁うーん...やっぱりあの娘っ子邪魔だな...﹂
???
・
蘭華よ...﹂
・
﹁出来れば動きたくないんだけどねぇ...﹂
﹁さあ...どちらにつく
運命の歯車は少しずつ壊れていく...
261
?
歯車
彼女は嘆いた。﹃どうすれば彼を救えるのか﹄と。
彼は嘆いた。﹃彼女を救うにはどうしたらいいか﹄と。
嘆き悲しんだ彼は壊れてしまった。
彼女を忘れてしまうほどに。﹃世界の終焉﹄を望むあまり本当の望
みを忘れてしまった。
彼女は苦しんだ。
﹃世界の終わり﹄を望み、周りが見えなくなってしまった彼を。彼を変
えてしまった己の無力さに。
彼女はあまりの苦しさに全てを捨ててしまった。
﹃彼との思い出﹄を。﹃幸せだった日々﹄を。
全てを失い絶望した彼女は⋮記憶を失った。
そして彼女は光を望んだ。
﹂
262
そして彼は闇を望んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
聖域を出て1週間。
風の噂で﹃乙女座の黄金聖闘士が亡くなった﹄と聞いた。
私は⋮誰も死なせたくなかったのに⋮
どこから間違ってしまったのだろう
もしれない⋮﹂
﹁﹃もし﹄というのは意味が無いだろう
悔しないように今を精一杯生きるのが大切だと私は思う。﹂
﹁⋮⋮そう⋮ですね。今出来ることを精一杯やる事にします
私はギリシャ中を歩く⋮もとい散策していた。
⋮⋮シオンと。
!
と表向きにはなってい
?
過去が変わる訳では無い。後
﹁⋮⋮シオン。でも⋮私にもっと力があれば、アスミタは助かったか
﹁何も間違ってなんてない。蘭華は精一杯やってると思うぞ。﹂
?
?
﹁⋮シオン。もう十回目ぐらいになりますけどもう一度聞きますね
﹂
?
教皇の許可なしで行動している
"
⋮⋮何でいるんですか
私は今、
"
るはずである。全くもって聖闘士の風上にもおけない。
反対にシオンは聖闘士の鏡とも言える存在。私よりも階級が高い
黄金聖闘士である。
ナンデイルノ
﹁ソーデスカ⋮﹂
﹁蘭華の護衛だな。﹂
﹁わかりやすく言うと
﹂
﹁教皇の勅命だ。﹃聖戦を左右する、鍵とも言える存在を守れ﹄と。﹂
?
﹂
?
﹁⋮
だ、大丈夫か
﹁⋮⋮ほえ
ほ、ほぇぇぇぇええええ
シオンのおでこが私のおでこに
こ、恋人同士でやるアレです
どうした蘭華。﹂
か、顔が近すぎる
﹁ん
﹁か、顔が⋮近いです⋮﹂
﹁え⋮⋮あ⋮///
///﹂
顔が赤いぞ、熱でもあるのか
﹂
考えたら恥ずかしくなってきました。顔が熱くなってきました。
うわー⋮恥ずかしい
しいし⋮
だって⋮横顔カッコいいですし、声もかっこいいですし、強いし、優
ヤバイのです。
最近シオンのことが好きと気づいてしまった私は恥ずかしすぎて
⋮⋮二人旅なんですよ。シオンと。
というか皆さん気づきました
なんて暇人。
﹁まじですか⋮数えてたんですか⋮﹂
﹁十二回目だな。このやり取りは。﹂
﹁それ⋮大して変わらないですよね
﹁信用がない訳では無いさ。皆心配で堪らないだけだろう。﹂
護衛って⋮どれだけ信用がないんでしょう⋮
?
!!
?
263
?
!
!?!?
?
シオンが近づいてきたかと思うと
!
!!
!!
!?
?
す、すまない
﹂
聖戦中だし不謹慎だ
!
︶
⋮
シオンはシオンで考え込んでいるようだし⋮呆れられたのかなぁ
いい加減考え込むと動き回る癖をどうにかしたい。
﹁す、スミマセン⋮﹂
﹁⋮蘭華、どうした
また熊みたいに⋮﹂
よね⋮けどこのタイミングを逃したら今後告白できるかわからない
︵だけどこんな状況じゃ告白なんてできない⋮
アスミタとの最後の約束である。絶対に果たしたい。
︵アスミタに告白するって宣言したしなぁ⋮どうしよう⋮︶
改めて実感させられてしまう。
︵ああ⋮私やっぱりシオンが好きなんだなぁ⋮︶
遠いと悲しくなるというか⋮寂しくなるというか⋮
そんな中私は微妙な気分になっていた。近いと恥ずかしいけれど、
一瞬で顔を真っ赤にしたシオン。光速で私から距離をとる。
!
シオンside
﹂
マニゴルドがあんな事言うから
﹂
︶
教皇の指示で蘭華の護衛にあたったはいいのだが⋮
︵ッ
︻回想シーン︼
どうしたんだ
﹁おいシオン。﹂
﹁ん
﹁ああ。﹂
﹁お前これから蘭華の護衛に行くんだろ
!
どういう事だ
﹂
?
﹁どういう事だ
﹂
な。他の勢力が動いてる予感というか⋮﹂
﹁凛 の 事 も あ る が ⋮ な ん だ か 分 か ん ね ぇ け ど 嫌 な 予 感 が す る ん だ よ
﹁⋮
﹁気をつけろ。いろんな意味でな。﹂
白羊宮を出ようとした時にマニゴルドが声をかけてきた。
?
?
!
?
?
!?
264
?
!
☆★☆★☆★☆★☆★
?
﹁だ ー
﹂
﹁逆ギレ
分かんねぇよ
﹂
分かんねぇから気をつけろって言ってんだ
まさか逆ギレされるとは思わなかった。
﹁ってことで気をつけろ。何があるかわかんねぇからな。﹂
﹁わかった。﹂
﹁あ、そうだ。ジジイから伝言だ。
﹂
三年もたったのにまだ告って無い
?
⋮⋮ええ
!?!?
運
え
を
祈
はぁぁぁ
る
﹂
そう言うと目の前から消えた。
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮な、なにが﹃Good Luck♪﹄だ
あのバカ蟹ぃぃぃいい
︻回想シーン終了︼
いいのか分からない。
︵さっきは顔を近づけ過ぎてしまった⋮嫌われたか
?
265
!
﹃蘭華を落としてこい﹄だとさ。﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮え
?
﹁お前まだ蘭華に伝えてないだろ
ことに驚愕だわ。
幸
!?!?
せっかくの二人旅なんだから押し倒してこい。﹂
﹁は
!?
﹁Good Luck♪﹂
!?
マニゴルドがあんなことを言うものだから⋮蘭華とどう接すれば
!!!
!!
!
!?
!
だいたい⋮こんな状況で告白なんて出来るわけがないだろう⋮
不謹慎だ。︶
side,end
2人とも同じ事を考えている。
﹂と殺気立っていた者が半分だ。
﹂
﹁どこか他に心当たりは
﹂
何も無かったのだ。よってただ観光をしていただけ。
﹁何も収穫無しはキツイですよね⋮﹂
正直心当たりはすべて調べました。
﹁⋮どうしましょう。﹂
﹁これからどうする
蘭華side
ア充爆発しろ
ちなみに周りにいた人々はブラックコーヒーを飲む者が半分、﹁リ
?
ぐらい。なのに1週間あちこちを歩き回っているのに遭遇しないと
最早冥闘士って何処にでもいるんですよ。探さなくても遭遇する
﹁そういえば⋮﹂
思議といえば不思議だ。﹂
﹁⋮違和感といえばこの1週間冥闘士に遭遇しなかったな。それも不
何なのだろう。何か忘れているような気がする。
うちょっとで出てきそうなんですけど⋮﹂
﹁心当たりは調べたんですけど⋮まだ何か引っかかるんですよね。も
話って。
とか⋮専門用語がおおすぎてよく分かんないんですよ。ギリシャ神
嫌いという訳では無いのだが﹃ティターン十二神﹄とか﹃オリンポス﹄
ギリシャ神話よりも日本神話や北欧神話の方が好きだったりする。
けじゃないですし⋮﹂
﹁それがないんですよねー。元々そんなにもギリシャ神話に詳しいわ
?
266
?
!!
いうのはおかしい。
﹁何でしょうね⋮私って本当に役立たずです。﹂
というイレギュラーな存在。それが世界を変えてしまってい
もうこの世界は私の知っている原作とは違ってきてしまっている。
私
蘭華はアルバフィカを救った。何も出来な
?
﹁⋮⋮⋮⋮⋮え
﹂
今なんて言った
?
﹂
一瞬頭が真っ白になった。
一瞬勘違いしそうになった。恥ずかしい。
﹁じょ、冗談キツイですよ。﹂
﹁⋮冗談じゃないと言ったら迷惑か
いつもに増して真剣な顔。
﹂
﹂
﹁わ、私は⋮私は蘭華の事が⋮す、好きだ。﹂
?
?
照れ隠しに私は軽くシオンを叩く。
﹁勘違いしちゃうじゃないですか。気をつけてくださいよ
﹂
てすぐ勘違いしちゃうんですから。﹂
﹂
﹁勘違いじゃなければどうする
﹁⋮⋮⋮⋮⋮え
?
足を止め私を振り返るシオン。シオンと視線が合う。
?
女の子っ
﹁あ⋮ああ。そ、そうですね。笑顔ですね、笑顔が取り柄ですもんね
?
﹁自信を持て。後笑顔がいいぞ。私は蘭華の笑顔が好きだからな。﹂
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
﹁だがあの時蘭華がいなければアルバフィカは今生きてはいない。﹂
﹁救ったとは言えませんよ。今の状態で助かったとは⋮﹂
い訳では無いさ。﹂
﹁そんなことないだろう
﹁けど⋮私は何もできません。﹂
まい。﹂
﹁そんなことを言うな。蘭華はアテナの聖闘士。役立たずな訳がある
最早原作と違ってきている今、私は役立たずでしか無かった。
るのだろう。
"
﹁え⋮⋮⋮
?
267
"
!
﹂
顔を真っ赤にしている。それなのに真剣な表情。
﹁ほ、ほんと⋮ですか
﹁ああ。﹂
迷惑なんかじゃありません
﹁そうか⋮﹂
﹁は、はい⋮﹂
﹁ほ、本当⋮か⋮
﹂
い、言ってしまった。
﹁あ⋮﹂
﹁え⋮﹂
﹁い、いえ
嬉しいです。﹂
﹁す、すまない⋮迷惑だったな。忘れてくれ。﹂
返事に困り黙り込んでしまった私を見たシオンは焦ったように
私はどんな反応をすればいいのだろう。
?
!
なって欲しい。﹂
﹁⋮⋮私なんかでいいんですか
﹂
﹁そ、その⋮私は蘭華の事を愛している。だから⋮その⋮私と恋仲に
うと口を開いた時
そのまま数分が経過し、シビレを切らした私はシオンに話しかけよ
流れる。
告白したのに⋮両思いになったのに気まずい雰囲気が二人の間に
?
別の時間軸から来た私なんかと付き合ってもいいのか
い。﹂
﹁嫌 な わ け な い じ ゃ な い で す か
﹂
﹁ならば⋮﹂
﹂
﹁はい。⋮⋮その⋮私と付き合ってください
﹁ああ
﹂
私はシオンのことが好きなんです
﹁私 は 蘭 華 が い い ん だ。勿 論 蘭 華 が 嫌 な ら 諦 め る。無 理 強 い は し な
?
聖域にも、他にもシオンにふさわしい人はいるだろう。それなのに
?
!
かと思うと⋮⋮
268
!
私とシオンは互いに歩み寄り抱き合った。シオンの顔が近づいた
!
!
!
視線を感じて視線のする方に目を向けた。
﹂
﹂
そこにいたのは男性。いや、その人だけではない。私たちを取り囲
おふたりさん
むかのように周りに人々がいるのだ。
﹁お熱いねぇ
イケメンのにぃちゃん
﹂
そのにぃちゃんに浮気されないよう
﹁街中で堂々と口説くとは度胸があるね
﹂
﹁幸せ者だねぇ、ねぇちゃんよ
﹂
末永く爆発しろ
に見張ってるんだぞ
﹁幸せに
﹂
﹁リア充羨ましい
!
俺らのことは気にせずやっちまえ
﹁つーかキスしろ
!
!
﹁えっと⋮﹂
﹁あ⋮ああ⋮﹂
﹁取り敢えず任務︵
﹁す、すまない⋮﹂
﹁いいから話を進めろ。﹂
私は誰と話しているのでしょうか
﹁そうだね⋮⋮﹂
アレ
﹁﹁輝火
﹂﹂
?
﹁というか⋮シオンがあんな人が沢山いるところで⋮﹂
﹁見せつけたつもりは無いのだが⋮﹂
﹁リア充見せつけていたからな。俺がいても気が付かないとは⋮﹂
さっきの出来事で考えていた事が全部吹っ飛んでしまいました⋮
﹁⋮そうだな。﹂
︶に集中しましょう。﹂
けど。それは置いときましょう。
聖闘士として走り疲れるのはどうかなと思わないでもないんです
﹁ハア⋮走り⋮疲れた⋮﹂
﹁ハアハア⋮﹂
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
ンの腕を引っ張り走り出した。
皆口々に言いたいことを言ってくる。恥ずかしくなった私はシオ
!
!
!
?
269
!
!
!
!
!
!? ?
天暴星ベヌウの輝火
何でこんなところに
!
﹁⋮なんだと
﹂
﹁今日は戦う為に会いに来た訳では無い。﹂
私たちは輝火から距離を取り聖衣を纏った。
!?
何で私
⋮⋮私
?
そう言うと輝火は私を見る。
﹁貴女様に会いに参りました。﹂
?
﹁蘭華
敵の声に耳を貸すな
﹂
!
言っただろう。﹃戦う気は無い﹄と。﹂
﹁シオン
蘭華
待ってください
﹂
﹂
!
﹂
?
﹂
いことがありますし。﹂
﹁聞きたいこと
﹁はい。
﹂﹂
?
と容赦しない人。
﹁ハスガードが⋮死んだ⋮
﹂
ハーデスの下で冥闘士を統率する女性。逆らう者は三巨頭だろう
☆パンドラ☆
﹁﹁な
アルデバランが死にました。﹂
﹁⋮パンドラが生還した天馬星座を狙い、天馬星座を庇った牡牛座の
タ ウ ラ ス
?
?
⋮輝火、教えてください。今聖戦はどうなっていますか
﹂
﹁⋮えっと⋮体が動いちゃった的な感じですね。それに輝火に聞きた
﹁蘭華、何故冥闘士を庇う
私はついシオンと輝火の間に割って入った。
﹁
!? !
輝火は防御しない。それどころか小宇宙を燃やしてすらないのだ。
﹁ッ
に銀河が見える⋮気がする。何言ってるかわからない。
シオンは闘志全開。金寄りの黄色の小宇宙が辺りに満ちる。周り
!
﹁いや、ますます意味が分からないんですけど。﹂
﹁貴女様は我々にとって大切な方。﹂
﹂
﹁何で私
?
!
!?!?
270
?
!?
そんな⋮そんなことって⋮ 私はまた救えなかったのか⋮
﹁落ち着け蘭華。﹂
﹁は、はい⋮﹂
そう返すものの、私はショックから立ち直れない。アスミタだけで
はなくハスガードも救えなかった。
いや、どうして私はその事を忘れていたのだろう。今まで全く思い
出せなかったのだ。何故⋮
﹂
﹁シオン⋮﹂
﹁
﹂
﹁カノン島へ行きましょう。﹂
﹁カノン島⋮
﹁蘭華
﹂
いですけどついてきても仕方ないですよ。﹂
﹁⋮輝火はハーデス城に戻ったらどうですか
私達についてきてもい
たいことは多いけれど大切な人たちの﹃命﹄と秤にかけるまでもない。
輝火に聞きたいことはまだ沢山あるけれど優先順位が違う。知り
﹁⋮わかった。﹂
⋮⋮これ以上、誰も死なせたくない。﹂
の力を借りたい。
﹁はい。カノン島には異次元への通路をひらく人間がいます。その人
?
?
﹁⋮ついていきましょう。﹂
﹁⋮そうですか。なら行きましょう。﹂
ロー
元々敵である冥闘士を信じろというのが無理な相談だ。
ン
シオンはまだ警戒を解いていないし、疑っている。別に構わない。
﹁⋮⋮⋮﹂
れどころでは無いから。
か従わない。そしてアローンは私の邪魔をしないだろう。恐らくそ
輝 火 は 冥 闘 士 だ が ハ ー デ ス の 手 下 で は な い。ハーデス の 指 示 に し
ア
私は輝火と戦う気は無い。敵であろうと無駄に命を奪いたくない。
﹁いいんです。輝火は敵ですけど敵じゃない。今戦う相手ではない。﹂
!?
271
?
私たち3人は微妙な距離を取りながらカノン島へ向かった。
☆★☆★☆★☆★☆★
︻カノン島︼
ーカノン島ー
傷ついた聖闘士が傷を癒す場所。
だが今では﹃カノン島の鬼﹄と呼ばれる存在が河口付近を陣取って
いる。
デ フ テ ロ ス
﹁カノン島の鬼とは⋮いつの間にかカッコイイ二つ名がついています
﹂
ね、双子の弟。﹂
﹁蘭華か
今私たちは河口付近にいる。マグマ熱い。
ジェ ミ ニ
目の前にいるのは﹃カノン島の鬼﹄と恐れられる存在であり、大切
な仲間のデフテロス。双子座の弟である。
﹂
﹁好きで名乗っている訳では無い。﹂
﹁あれ、そうなんですか
﹁⋮⋮⋮用件はなんだ。﹂
﹁それ酷いですね
﹂
﹁お前に言われたくはない。﹂
﹁相変わらずのマイペースですね。﹂
?
﹂
ですかね。﹂
﹁⋮別に危害を加えぬなら構わん。﹂
﹂
﹁それはよかった。﹂
﹁して、何用だ
﹂
らに寝返った訳でも無いです。一緒に居るのは⋮カクカクシカジカ
﹁別に私達がハーデス側に寝返った訳では無いですよ。冥闘士がこち
情を顔に出さないのだが。
デフテロスの顔が厳しいものになる。元々あまりデフテロスは感
に来た
﹁後ろにいるのは牡羊座のシオンか。それと冥闘士ではないか。何し
ア リ エ ス
まるで私がマイペース人間みたいじゃないですか。
!?
﹁うわー相変わらずせっかちさんだー
!
?
272
?
?
﹁⋮帰れ。﹂
﹁しかも短気。﹂
﹁⋮︻アナザーディメンション︼で異次元に飛ばして欲しいのか
﹁それはゴメンデスヨ。﹂
丶
丶
丶
丶
丶 丶
丶
本当に技を放とうとしたデフテロス。恐ろしす。
﹂
です。﹂
﹁
驚いた顔のシオン。
﹁本当に異次元送りにして欲しいのか
﹂
﹁そうですね。そういう事です。﹂
ますか
﹂
﹁⋮聖域を出てハーデス城に向かっていると聞いていますが
﹂
﹂
﹁輝火、テンマが⋮天馬星座の青銅聖闘士がどうして居るか知ってい
私はこれから起きるであろう事を話す。
﹁⋮どういう事だ
﹂
﹁ならば単刀直入に言います。異次元へ続く道を開いてもらいたいん
?
﹂
誰の心に響くというのだ。
?
教皇が強気に出れない二人の人物
﹁出したって⋮教皇様が黙っている訳が無いだろう
﹂
折 れ る。心 が 折 れ た 人 間 の 言 葉 に 誰 が 耳 を 貸 す と い う の だ ろ う か。
重要人物であるけれど籠に入れておいてはいつかはテンマの心が
ですけど、テンマを聖域外に出しました。﹂
﹁ええ。それでは意味が無いのです。そう考えた人は密か⋮では無い
﹁だが聖域に縛るだけではいつかは翼が折れる。﹂
た事からテンマは重要人物と言えるでしょう。﹂
﹁シオンの言うことは最もです。確かにパンドラがテンマを狙ってき
が
教皇様ではない。そんなむざむざ死地に切り札を放すとは思えない
﹁そんな馬鹿な。この聖戦におけるテンマの存在の重要性が分からぬ
ハーデス城に乗り込もうとしています。﹂
﹁や っ ぱ り ⋮⋮ テ ン マ は ハ ー デ ス を 止 め る つ も り で す。そ の た め に
?
?
﹁ア レ、シ オ ン 忘 れ た ん で す か
?
273
?
?
!?
?
を。﹂
﹁アテナ様と⋮⋮まさか
﹂
﹂
﹂
﹁何やってるんだあの人は⋮⋮
﹁恐らく想像通りの方ですよ
﹁⋮蘭華、まさかとは思うが⋮﹂
く。
閃いた様子。だがその顔はどんどん微妙そうなものに変わってい
!?
﹂
﹂
︶にテンマに護衛をつけました。﹂
﹂
?
﹂
?
る。
﹁それで
2人がどうかしたのか
皆さんご存知ですけど、マニゴルドは教皇の弟子。一番信用されて
﹁はい。デフテロス正解ですよ。﹂
﹁蟹 座のマニゴルドか。﹂
キャンサー
聖闘士。そんなの1人しかいない。
他の聖闘士に知られずなおかつ教皇が信用し、自由気ままに動ける
闘士は言わなくても分かりますよね
﹁はい。ですがテンマが何処に居るか公に出来ないので護衛につく聖
﹁護衛⋮だと
ない。よって教皇は密か︵
しかし冥王との唯一の繋がりとも言えるテンマを失う訳にはいか
﹁いえ、まだ話終わってないです。
﹁それが何だ
とうまく話せないでいる。
出してきてしまったのだ。そのまま聖闘士になった為未だハクレイ
シオンは聖衣継承の時に、師であるセージと喧嘩になり故郷を飛び
ハクレイは教皇セージの実の兄である。
匠でありジャミールの長、﹃ハクレイ﹄である。
そう、シオンが﹃あの人﹄と言うのは1人しかいない。シオンの師
!
?
?
うために話しただけですよ。﹂
完全空気な輝火。いっそここまで空気だと清々しいね
﹁話は変わりますけど二人は﹃教皇とジャミールの長﹄の願い⋮と言う
!
274
?
?
﹁いえ、ぶっちゃけテンマ云々は関係ないです。状況を理解してもら
?
か誓を知ってますか
わけにはいかん。﹂
﹂
デフテロスが輝火を睨みつける。﹃始末するか
よね
﹂
デ
ス
ハー
デ
ス
ハーデス
ら。アローン の 指 示 に は 従 っ て も 冥王 の 指 示 に は 従 い ま せ ん。で す
ハー
﹁安心してください、デフテロス。輝火は敵だけど敵ではないですか
くる。
﹄と視線で訴えて
こちら側についたのでなければ敵。敵にこちらの狙いを知られる
﹁まて。その話をするのならそこの冥闘士が居るのは問題ではないか
﹁ああ。﹃双子神を倒す、もしくは封じ込める﹄だったな。﹂
?
気にしたら終了です。きにしない
間がもったいないのでスルーします。
困惑気味のシオン。仕方が無いと言えるでしょう。ですが今は時
﹁言っている意味がわからないのだが⋮﹂
!
私に敬語を使ったりと言ってることが矛盾している気がしますが
﹁はい。俺が従うのはアローン様のみ。﹂
?
1神
﹁成程。助ける為に異次元への道を開けという事か。﹂
﹂
﹁話が早くて助かります。﹂
﹁だが断る。﹂
な、何故
!
︻ハーデス城︼
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
して諦めるわけには行かない。
丶
丶
丶
丶
丶
丶
だが二人を助けるためには異次元にわたらなければならない。決
てしまった。
まさか断られるとは思わなかった。予想外だったので声を荒らげ
﹁
丶
を 封 じ 込 め る 時 に 教 皇 と マ ニ ゴ ル ド は 異次元に向かいま
丶
﹁えっと、その﹃双子神﹄を封じ込める事に成功します。ですがその1
丶
人
?
275
?
?
す。そしてその後2人は⋮⋮﹂
?
!?
﹁全くこりないねぇなぁあの娘っ子。﹂
﹁まぁそれが長所だからなぁ⋮﹂
﹁だがそれは同時に短所でもあるんだぜ
﹂
﹁何時まで己を保っていられるか見物だな。﹂
絶
望
壊れた歯車が直ることは決してない
結末に向って進み始めた
276
?
光と影
﹁何故ですか
﹂
断られた事に驚愕していた。
﹁何故聖域の連中を助けるために協力しなければならない
﹁何故って⋮⋮﹂
﹁聖域の人間を助ける義理は無い。﹂
言い切られると何も言えなくなってしまう。
﹂
かった。
・
・
﹂
セー ジ
﹁どうしても力を貸していただけないのですか
﹁そうだ。俺は力を貸さない。﹂
﹁ッ⋮⋮﹂
どうしたらいいのだ⋮⋮
︵次元を渡るには双子の力を借りなければならないのにッ
﹂
でもどう
!
!
人を救えない。救える確信は無いが可能性を捨てたくない。
私に異次元への道を作る力はない。だが異次元へ渡らなければ二
?
?
どうしたらマニゴルドと教皇を救える
︶
たが世間への露見を恐れた人々のせいで教皇の元まで報告が届かな
本来はその双子をどちらとも保護するのが聖域の役割のはずだっ
くに耐えない人生を送ってきたのだ。
冥闘士となる﹄。その予言のせいでデフテロスは見るに耐えない、聞
だが事実だった。﹃双子のうち片割れは聖闘士になり、もう片方は
信じられないという顔をしている。
﹁そんなものが⋮⋮﹂
星の元に生まれる﹄という⋮な⋮⋮﹂
﹁知らなかったのか。なに、くだらないものだ。﹃双子のうち1人は凶
シオンが首を傾げる。
﹁予言
してこの状況を作り上げたのは聖域だ。﹂
﹁くだらない﹃予言﹄とやらのせいで俺は今ここにいるのだからな。そ
?
!!?
︵どうしたらいい
?
277
?
・
﹂
したら⋮⋮⋮⋮アレ
・
﹁俺は⋮⋮
・
う
一
人
ちょっと待って。︶
﹂
?
は
一神
によって負わされたもの。ならばその傷を治せば刃を向
アスプロスの心には闇が潜んでいた。﹃昔に負った傷﹄が。その傷
というか、この世界でも実際に教皇に刃を向けたけど。
るはずだった。教皇に刃を向けて。
原作ではデフテロスの兄であるアスプロスはとうの昔に死んでい
スプロスだ。
デフテロスが﹃片割れ﹄という存在。それは双子座の黄金聖闘士、ア
ジェ ミ ニ
﹁といっても片割れが会うとは限らないがな。﹂
中心、マグマの河口だった。
そう言うとデフテロスはある方向を指さした。そこはカノン島の
﹁ああ。双子の片割れに話をしてこい。まずはそれからだ。﹂
も
﹁それでは⋮⋮﹂
一に俺ではなくもう一人に頼むべきだろう
﹁そうだ。俺は力を貸さない。俺よりも適任がいるからな。いや、第
・
今﹃俺は﹄と言ったのか
?
その結論に至っていたので、アスプロスが刃を向けた瞬間﹃黄金聖
ア ス ミ タ
闘 士 3 人 が か り﹄で 無 力 化 し た。︵3 人 で な ん と か 無 力 化 で き た。
やっぱり双子座は別格。︶
弟
へ
の
疑
心
そ し て 結 構 荒 治 療 だ が 乙女座 に 幻 覚 を 放 っ て も ら っ て
﹃昔負った傷﹄を取り除いた。
失敗すると精神が壊れかねないケド。もう二度とやりたくない。
正気に戻ったアスプロスはその場で自殺を図ろうとした。︵無印の
サガみたいに︶
カ
ノ
ン
島
し か し サ ー シ ャ ち ゃ ん が 説 得。心 か ら 悔 い 改 め た ア ス プ ロ ス は
﹃罰﹄という意味合いを込めて過酷な環境の守護についた。
ちなみにデフテロスは自らの意思でここにいる。表向きには﹃存在
しない存在﹄だから。
ア ス プ ロ ス は 聖 域 の 人 間 に 対 し て 罪 悪 感 が あ る よ う だ。過 去 に
278
?
?
"
ける理由が無くなるという事。
"
アクエリアス
水瓶座のデジェル様を殺しかけたし。
しかし、だからといって無償で力を貸す訳では無い。双子座の力は
強大かつ強力であるため、﹃本当に力を貸すか﹄を見極める。
勿論実力行使。
﹁分かりました。アス兄の所へ行ってきます。﹂
﹂
﹁気をつけろよ。後⋮⋮いい加減﹃アス兄﹄と呼ぶのはやめたらどうだ
⋮⋮
私はアスプロスの事を﹃アス兄﹄と呼んでいる。面倒見がいいし、本
当の兄みたいだから。
それがデフテロスには面白くないらしく、ジト目で見てくる。こち
らとしては苦笑するしかない。
﹂
﹁そうだ。そこの冥闘士はここに残れ。﹂
﹁何
﹁聞きたいことがあるからな。まぁ死にたければ別だが。﹂
﹁アス兄は強いし、容赦がないので多分問答無用で殺されますよ。後
私たちも寝返ったと思われたくないのでここで待機でお願いしま
す。﹂
﹁⋮⋮⋮⋮貴女様がそういうのでしたら⋮⋮﹂
しぶしぶといった表情だが従ってくれた。うん、やっぱり何かおか
しいね。
﹁ならシオン、行きましょう。﹂
﹁ああ。﹂
私たちはデフテロス達と別れ河口に向かって歩き出した。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
聞きたい事とは何だ。﹂
デフテロスside
﹁それで
﹂
?
仕方が無いので立てた仮説の答え合わせとする。
答える気は無いと雰囲気でわかる。
﹁知ってどうする
﹁お前が蘭華に従う理由だ。﹂
?
279
?
?
・
・
・
・
・
・
いや、一部の者には⋮⋮だろうが。﹂
・
・
・
・
・
・
﹁ならばこれは仮説だ。蘭華は冥王軍にとって大切な存在という事だ
ろう
輝火が一瞬固まった。それでこの仮説が正しいと証明された。
﹂
﹁流石に﹃何故か﹄までは分からなかったがな。﹂
﹁⋮⋮⋮⋮その仮説を誰かに話したのか
?
﹁いや、あくまで仮説だからな。他人に話すほど確証があったわけで
もなかった。﹂
﹁そうか。﹂
蘭華は一体何者だ
﹂
ほっとしたように息を吐く輝火。
﹁それで
?
﹂
?
﹂
?
・
しばらく口を閉ざし悩んだようだったが
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
﹁よく分からんが伝えなければいいのだろう
それで、何者なのだ。﹂
﹁知られなくないというか⋮⋮なんと言うか⋮﹂
﹁蘭華に知られたくないのか
﹁⋮⋮あの方に言わないと誓えるか
た。そこまで悩むとは、一体蘭華は何者なのか。
・
質問に答えない。いや、答えるべきか自問自答しているようだっ
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
?
⋮⋮⋮⋮⋮⋮
⋮⋮⋮⋮
⋮⋮
﹁あの方は⋮⋮いや、アンドロメダの蘭華は⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮
?
280
?
﹁な⋮⋮なんだと
﹂
輝
火
聞かされたことが信じられない。いや、正確には信じたくない。
だが心の中で納得してしまっていた。この冥闘士の言うことが本
当ならば﹃変化する小宇宙﹄の説明がつくからだ。
﹂
だが非現実的ではある。聖闘士が非現実的なのは横に置いておく。
﹁これがあの方の真の姿だ。﹂
﹁⋮⋮⋮⋮納得できんな。ならば何故蘭華にその事を伝えない
﹁それは⋮⋮﹂
兄
だからあれだけ蘭華と距離を
輝火はまた言葉に詰まったのか口を閉ざしてしまった。
︶
︵兄 さ ん ⋮⋮ 兄 さ ん は 知 っ て た の か
とっていたのか
?
兄
﹁そろそろ島の中心のはずなのですが⋮⋮﹂
蘭華side
︻カノン島・河口︼
答えの無い問を己の胸に投げかけることしか出来なかった。
テナ。︶
︵俺は⋮⋮どうしたらいいのだ。アスプロスよ、教皇よ⋮⋮そしてア
たことが悔やまれる。
きだ﹄と。その時は人格が変わっていたためまともに取り合わなかっ
だからあの時アスプロスは教皇に進言したのだ。﹃蘭華を始末すべ
言ではない事に。
華がどちらに付くかで世界の行く末が決まってしまうと言っても過
すら知らない秘密に。そしてその秘密は聖戦を左右するであろう、蘭
恐らくアスプロスは知っていたのだ。蘭華の正体に。蘭華自身で
たが今ならわかる。
蘭 華 に 決 し て 心 を 開 か な か っ た アスプロス。何 故 か 分 か ら な か っ
?
﹄
体中から水分が抜ける。水分と共に何か大切なものまで抜けてし
まう気がする。
結論。﹃熱いッ
281
?
?
!!
2倍⋮⋮いや、5倍ぐらい
﹂
﹂
さっきデフテロスと別れた場所も熱かったです。ですが⋮⋮ここ
の方が熱いです
﹁河口なのだから仕方が無いだろう。﹂
﹁それはそうなのですが⋮⋮﹂
シオンの言いたいことは分かる。だが⋮
﹁わ、わかってますよ
なんて会話している場合じゃありません
﹁⋮アス兄居ませんね⋮﹂
﹂
﹂
﹄みたいなフラグは
そのフラグやめてください
﹁⋮そうだな⋮⋮いや、蘭華上だ
﹁ちょ
何その﹃エリ○ク上だ
ませんよ
居たら冥王居なくも世界が滅んでますからね
!?
大体この世界には犬と狼を掛けて割ったみたいな人喰い生物は居
いですよ
まだ私は死にたくな
﹁聖闘士がマグマの熱さにやられたとなれば恥だぞ
!!
!!
!!
!
!
!
?
!
﹁⋮⋮⋮⋮へ
﹂
先程まで私がいた場所には⋮⋮⋮⋮
て後ろに跳んだ。
と、突っ込みたいのを何とか心の中に封じて私は全力で地面を蹴っ
!!
﹁蘭華⋮⋮口調。﹂
﹁あ⋮⋮﹂
鉄砕牙や神機ってアウトやろ
つい我を忘れて方言に⋮⋮
訴えられるやん
﹁⋮⋮物騒な挨拶ですね。流石に当たったら無事では済みませんし、
!
いや、﹃鉄砕牙﹄や﹃神機﹄はアウトやんけ
﹂
﹁な、なんでやねん
け
!!
!!
剣 や ら 槍 や ら 鉄 砕 牙 や ら 神 機 や ら ⋮ ま る で 武 器 の 博 物 館 で あ る。
で武器の山が出来ている。
・
その数数え切れないほど。大量の武器が1箇所に集中しているの
﹃大量の武器﹄が﹃地面に突き刺さっていた﹄。
?
282
!
!
!?
す、すんませーん。By.作者
!
傷つきますよ
ていった。
アス兄。﹂
﹂
アスプロスからの返答はない。
﹁黙りですか
シオンが微笑んでいる。やめぇ
!
は出てないはず
﹁というか一人って寂しい⋮⋮﹂
床は足元か。しょうもないノリツッコミだな私。
なのか、床がどこなのかすらわからない。いや、立っているのだから
試しに周囲を散策してみるが何も無い。真っ白すぎて天井がどこ
シオンもいない。1人きり。
﹁ここ⋮⋮何処だろ。﹂
たようで、目が覚めると何も無い真っ白な空間にいた。
正直に言うとそこから私は記憶がない。どうやら気絶してしまっ
⋮⋮⋮⋮⋮⋮
⋮⋮⋮⋮
⋮⋮
アス兄は姿を見せてくれないし⋮⋮うーん⋮
ルーされると悲しいんですけど⋮﹂
﹁と い う か ⋮ あ ん ま り 仲 良 か っ た と は い え ま せ ん け ど、こ こ ま で ス
!
心の中で突っ込みまくっているがあくまでも﹃心の中で﹄。表情に
んだよ
それが一番傷つくし恥ずかしい
まるで何も無かったかのように無理やりシリアスなムードに持っ
?
?
今思い返してみれば私は一人きりということは一度もなかった気
がする。
283
!!
とりあえず状況整理。
問1、ここは何処か。
答え、分かんない。
t know
問2、何故ここにいるか。
答え、I don
問3、何でこうなった
答え、知らん。
結論。
﹃何も分からない﹄以上。
だ・め・じゃ・んッ
とりあえず考えられる可能性は⋮
1、死んだ。
いきなりヘビーだなオイ
﹁⋮⋮ん
﹂
が、その時
早くも考えることを放棄した。
﹁全然わかんない⋮⋮誰かへるぷみーデスヨ⋮﹂
もしくはなぜ幻覚を見ているのか。
一 番 現 実 的 で 有 り 得 そ う。だ が そ の 場 合 な ぜ 気 絶 し て い る の か。
3、気絶している。もしくは幻覚を見ている。
それもないな、きっと。流石にそれは非現実的。
2、神様に呼び出された。
!
﹁行ってみるか⋮⋮﹂
私は小宇宙を燃やすとマッハのスピードで声のした方へ走った。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
︻カノン島・河口︼
284
!!
?
'
声が聞こえた。微かだが話し声のような⋮
?
﹂
シオンside
﹁蘭華
一瞬目を離したら次の瞬間蘭華の体が崩れ落ちた。蘭華の元へ駆
け寄り抱き寄せる。
﹂
﹁落ち着け。気を失っているだけだからな。﹂
﹁アスプロス
﹂
!?
人に何故このような事をしたのか納得のいく説明を求めた。
﹂
﹁見極めるためだ。﹂
﹁⋮⋮見極める
﹂
﹁そうだ。牡羊座のシオン、貴様は蘭華の正体を知っているか
﹁どういう事だ
﹁知らんのか。ならば教えてやろう。その娘は⋮⋮⋮⋮
⋮⋮
⋮⋮⋮⋮
⋮⋮⋮⋮⋮⋮
﹂
﹁なん⋮だと⋮
﹂
﹂
﹁信じられんか
﹁当たり前だ
?
﹂
?
場合によってはアスプロスと戦うことも視野に入れる。大切な恋
﹁⋮⋮どういう事か説明してもらおう。﹂
﹁そうだ。⋮⋮闘気を抑えろ。事を構えるつもりは無いのでな。﹂
﹁お前がやったのか
子座の黄金聖闘士アスプロスだった。
岩陰から姿を現したのはデフテロスと瓜二つの顔。間違いなく双
!?
ア リ エ ス
?
?
?
!
285
!?
まるで道端に落ちている石を見るかのような視線を蘭華に向ける
アスプロス。
﹁だが事実だ。信じるかどうかは俺の知ったことではない。﹂
﹁⋮⋮⋮⋮そんな⋮⋮﹂
衝撃的すぎる蘭華の正体。私は気を失っている蘭華を見つめるこ
としか出来なかった。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
side
︻ハーデス城︼
﹁あーあ。本当に邪魔だなあの娘。﹂
﹁自覚してねぇんだからなおタチがわりぃ。﹂
﹁直接手を下すのは好きじゃねぇんだがなぁ。俺っち暴力反対∼♪﹂
・
・
・
﹂
﹁だがいつまでも傍観しているわけに行かねぇからな。﹂
・
﹁厄介な存在になる前に始末させてもらうぜ
﹁さぁ、グルグル回れ。分岐点達♪﹂
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
蘭華side
声のする方へひたすら走った。いつの間にか真っ白な何も無い空
走りすぎて息が切れる。
﹁こ、この辺のはず⋮⋮なんです⋮⋮けど⋮﹂
?
エルシオンって死んだ人が逝く所じゃん
間から、緑豊かで綺麗な場所へ変わっていた。まるでそう、エルシオ
あれは⋮﹂
!?
ンのように⋮⋮
⋮⋮いやいや待とうよ
私本当に死んだの
﹁⋮⋮あれ
!?
いやいや、戻ってこい私ッ
!!
いちゃついてるな⋮⋮ちょ、一回半殺しに⋮
前方に人影。どうやら男女のようである。
?
286
???
︵※死んでません。︶
!!
その2人はまるで神話に出てくるような布を体中に巻いたみたい
な格好をしている。昔のギリシャ人みたいな感じ。
﹂
男性は⋮待ってアレは⋮
﹁冥王ハーデス
そう、ハーデスだった。外見は﹃聖闘士星矢 エルシオン編﹄で
出てきたハーデスそっくりなのだ。
・
・
といってももう五年以上見てないから結構うろ覚えではあるのだ
が。
・
・
・
・
・
・
・
とりあえずこの時点で﹃死んだ﹄という可能性は無くなった。この
肉体のハーデスは現時点で復活していないはずだから。
﹃神様に呼び出された﹄という可能性も消えた。ハーデスがいる時点
で聖闘士星矢の世界だし。
ハーデスがイチャコラする
という事はやはり私は気絶でもして夢を見ているのだろうか
いや、ならばなぜ私は今この夢を見た
のは知らんし興味ないよオラ♪
?
も見ているのでしょうか
・
・
・
だが⋮なんだか﹃懐かしい﹄。
・
・
・
・
・
というか私の姿が見えてないんですね2人とも。本当に私は夢で
なんてことは取り敢えず横に置いときましょう。
?
﹂
?
ワ
タ
シ
ハーデスの横で微笑んでいたのは雪美蘭華だったのだから。
﹁⋮⋮⋮⋮わた⋮し⋮⋮⋮⋮
まったのだ。その光景は私から体の自由を奪った。
視界に飛び込んできたものが﹃信じられなくて﹄思考停止をしてし
生易しいものではない。
気を取り直して、私は2人を見た。そして固まった。いや、そんな
見てるだけじゃん。なんでそう思うんだよ私。
いやいやいやいや、なんでそう思うんだ私。ハーデスのイチャコラ
る。
・
何故かはわからないけれど、懐かしくて⋮そして悲しくて苦しくな
?
﹂
癖のある真紅の長髪、翡翠の瞳。それは間違いない。間違えようも
ない。
﹁⋮⋮ど⋮いうこと
?
287
!?
焦点が定まらない。頭が痛い。
ハーデスは口を開く。
﹁やめ⋮て⋮⋮やめて⋮⋮﹂
知りたくない。何故かはわからないけど絶対に聞きたくない。
だが体がいうことを聞かない。体が動かない。
﹂
耳を塞ぐことが出来なかった私はハーデスの言葉を聞いてしまっ
た。
﹃ーーーーネ。﹄
﹁嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
何かわからない衝動に駆られ私は絶叫した。
今の私に余裕なんてなかった。どうしてここまで﹃知りたくないの
か﹄がわからない。だが何も知りたくないのだ。
・
・
・
・
・
・
封じ込めた記憶が呼び起こされる。名前を呼ばれたような気がし
・
た。だがその声に応えてはいけない。
ワタシハドコカラマチガッテシマッタノ
だってそれは﹃私が﹄捨ててきたモノだから。
ナゼ
?
・
・
・
・
・
涙が頬を伝う。ツライ、クルシイ。負の感情に支配される。
・
ワカラナイ。私はナニモシラナイ。
一体何のこと
でも私が悪いんだ。私が見捨てたから。
見捨てたって何
?
其の時だった。私は大切な人に呼ばれた気がした。
呼ぶのは最愛の人。私の手は宙をさ迷う。ナニモナイのに。
﹁た⋮けて⋮助けてシオン⋮⋮﹂
視界が歪む。立っていられない。
﹃だって私には過去なんてないんだもの。﹄
知らない、何も知らない。何もわからない。
はない感覚。
まるでワタシの中に二人の人格がいるようだった。私がワタシで
?
288
!!!
私はただアナタと一緒にいられればそれでシアワセだったのに。
?
⋮⋮
⋮⋮⋮⋮
⋮⋮⋮⋮⋮⋮
﹁⋮⋮か⋮んか
⋮⋮⋮⋮蘭華ッ
﹂
私がワタシじゃ
!
したらいいか⋮わ、わかんないのッ
﹂
なくなる。辛くて、苦しくて逃げたくて⋮でも逃げられなくて、どう
﹁わ⋮かんない。わかんない。だけ⋮ど、だけどッ
静かに問うシオン。その優しげな声にすら涙がこみ上げてくる。
﹁どうしたんだ蘭華。﹂
体ではなく﹃ココロ﹄が痛い。
何故かは分からない。どうしてこんなにも苦しいのかわからない。
喚いた。
私はすがり付くようにシオンの背中に手をまわした。そして泣き
体を揺すぶられ私は目を覚ました。心配そうにのぞき込むシオン。
!!
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
シオンside
・
・
﹁泣きつかれて眠ってしまったか⋮﹂
指で涙をぬぐってやる。
・
﹂
"
﹁アスプロス、蘭華に何を見せたんだ
﹁俺は﹃記憶の一部﹄を呼び起こしただけだ。ソイツの
封じられた記
いぐらいにしゃくりあげて私はシオンの胸のかなで泣いた。
シオンの言葉は魔法のようだった。涙が止まらない。みっともな
は悪いことではないのだから。﹂
﹁そうか、辛かったな。今は泣いていい。思う存分泣けばいい。それ
背中を摩ってくれる。
何が言いたいのか私もわからない。だがシオンは頷きながら私の
!
?
289
!
憶
のな。
蘭華が見たのはその欠片でしかない。だが﹃欠片﹄でそのざまだ。
﹂
・
・
・
やはりこの娘は始末しておいた方が良かったのかもしれん。﹂
﹁アスプロス⋮貴様ッ⋮
ことが出来るのか
﹁あたりまえ⋮﹂
﹂
ソイツ
﹁お前はどうなのだシオンよ。蘭華の正体を知ってなお普通に接する
!
﹁何だ
﹂
﹁⋮⋮そうか。⋮⋮⋮⋮シオンよ。﹂
﹁⋮⋮それでも⋮それでも私は、蘭華を信じている。﹂
いつかは必ず思うだろう。
何も言い返せなかった。否定出来なかった。﹃知らなければ⋮﹄と
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
を抱くこと自体間違いなのだ。﹂
いつの日にか﹃知らなければよかった﹄と思う時が来る。夢や幻想
プルな物だ。
うなものではない。いずれ溝ができる。人の心とはそんなにもシン
﹁いいや、不可能だろうさ。蘭華は﹃大したこと無い﹄と割り切れるよ
?
﹂
﹂
ク レ イ ン
また牢屋にぶち込まれたいのか
マニゴルド
波︼によってな
﹁あ、お前
ユ ニ コー ン
?
!
!
向かっていた。そしてテンマの護衛についたマニゴルド。
テ ン マ は 一角獣座 の 耶 人 と 鶴星座 の ユ ズ リ ハ と 共 に ハ ー デ ス 城 へ
!
!
﹁さんずけしろ青銅が
﹂
﹁お前の可愛いお人形さんはまた冥界へ逆戻りだ。この︻積尸気冥界
︻その頃・ハーデス城付近︼
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
そう言うとアスプロスは姿を消した。
ならば⋮⋮だがな。﹂
戦うと答えた時には俺は力を貸そう。そこまでの﹃覚悟﹄があるの
﹁ソイツが目を覚ましたら問いてやれ。﹃それでもまだ戦うか﹄と。
?
290
"
テンマは進む。己の命をかけて。
ン
マ
サー
シャ
ア
ロー
ン
蘭
華
ウンメイ
そしてマニゴルドの歯車は加速する。誰も止められない歯車。
テ
神殺し、アテナ、ハーデス、そして異世界の少女。
それぞれが己の願い、信念をかけて戦う。その願いがどのようなも
291
のであろうと己の道を歩む。
292
夢
﹃何故だ
﹄
私はただ静かに暮らしていただけなのに。それだけで十分
だったのにッ
﹄
泣き嘆く少年。私は声をかけようと走る。だが一向に距離は縮ま
らない。
﹃ーーーーッ
ン
カ
蘭華の正体を知ってどう接していいのか分からなくなった。
そして恋愛とは何なのだろう。
夢とは何だろう。
希望とは何だろう。
シオンside
⋮⋮⋮⋮⋮⋮ ⋮⋮⋮⋮
⋮⋮
それは一体誰の声だったのか。知っているのに思い出せない。
﹁それが罪なんだよ□□□□□。﹂
ラ
視界が霞む。体の感覚がなくなっていく。
する人と共に暮らしていただけなのに。
何故なのか。私達は誰にも迷惑をかけていた訳では無いのに。愛
壁を殴る。拳から血が出ているが気にならない。
れて届かない。
叫びたいのに声が出ない。手を伸ばしたいのに見えない壁に阻ま
!
蘭華は私なんかが本当ならば恋人同士どころか喋ることすらかな
293
!
!
わない存在なのだから。
奇跡とは何
正体を知らなければこんな事考えなかった。
?
らない。
﹁ペンダント⋮
﹂
蘭華の物だろうか
星をモチーフにした金色のペンダント。
地面の上に光るものを見つけた。気になって見てみると
﹁⋮⋮ん
﹂
答えの出ない問。答えなど存在するのだろうか。それすらも分か
﹁私は⋮どうしたら⋮⋮﹂
私はどうしたらいい
関係は続かないだろう。
愛おしく思っても華。何時かは枯れる時が来る。何時までもこの
越え目の前に現れた一輪の華。
今蘭華と共にいられることが奇跡というのだろうか。時空を飛び
?
?
うか
ふと懐かしい感じがした。どこかでこれを見た事があったのだろ
?
蘭華が目覚めるまでは預かっておこうと懐に入れた。
蘭華side
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
﹁目が覚めたか
﹁気分は
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮シオン⋮⋮﹂
?
けた。
﹁何を見た
﹂
﹂
目を覚ました私は夢で見たものを整理しようと思考の海に沈みか
﹁⋮⋮⋮⋮だろうな。﹂
﹁最悪です。トラウマものです。﹂
?
﹁⋮⋮何を⋮⋮ですか
?
?
294
?
しばらく考えたが思い出せず気のせいだったと割り切る。
?
頷くシオン。
﹁よく分からないんです。ハーデス⋮冥王と私が一緒にいた。そして
笑ってた。﹂
﹂
﹂
だがそ
実 際 に 見 た の は コ レ だ け。そ れ だ け な の に 何 故 か 懐 か し く て 辛
かった。
﹁⋮思い出したのか
﹁思い出したって⋮何の事ですか
﹁⋮⋮いや、何でもない。﹂
思い出したなどと⋮⋮私は何かを忘れているのだろうか
﹂
?
﹂
﹂
?
﹁あー⋮うーん。だろうな。﹂
困ったかのように空を仰ぐシオン。
⋮何考えてるんだろ。
シオンside
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
アスプロスに言われた通り﹃戦う気はあるか
・
・
・
・
・
・
知っても﹃戦うか﹄を知りたかったのではないだろうか。
いにすべての記憶が戻ると考えたのだろう。記憶が戻り己の正体を
恐らくアスプロスは少しでも記憶を戻してやればドミノ倒しみた
から。
問題とすべきは﹃蘭華が自分の正体を思い出せなかった﹄事なのだ
・
﹄と聞いた。
﹁どういう意味なのかよく分かんないんですが⋮﹂
れたのかわからない。
言っている意味がわからない。いや、意味はわかるのだがなぜ聞か
﹁⋮⋮⋮は
﹁まだ戦う気はあるか
今まででも散々質問された気がしますが⋮⋮
﹁聞きたいこと⋮⋮ですか
﹁⋮⋮蘭華、聞きたいことがある。﹂
れっきりシオンは黙り込んでしまった。聞くに聞けない雰囲気だ。
?
?
?
それはいいのだ。問題は別なのだ。
?
295
?
だが蘭華の封印は想像以上に強固なものであった。記憶は戻らず
︶
思惑から外れたと見るべきである。
︵これはどうすべきなのか⋮
話すべきなのか迷っていた。だが私が話していい事なのだろうか
?
かった。
﹁⋮⋮⋮最低だな私は。﹂
﹁いいえ、お前の判断は正解よ。﹂
﹁﹁
﹂﹂
第三者の声。この声を私は知っていた。
蘭華side
﹂
?
﹁⋮⋮何だ
﹂
⋮⋮⋮そこのアンタ⋮いえ、牡羊座のシオン。頼みがあるの。﹂
﹁今日は戦いに来たわけじゃない。
らない。
られない。前回は敵意丸出しだった為、どう反応したらいいのかわか
ニッコリと微笑んで歩いてくる。冥衣を纏っているが敵意を感じ
﹁久しぶりだね蘭華。﹂
﹁何故ここに⋮⋮﹂
青い短髪。深い海の底のような瞳。
﹁⋮⋮凛ちゃん
この声は⋮私は知っている。何故なら私の大切な親友の声だから。
カゾク
記憶が戻ったら蘭華は私の前から去るだろう。蘭華を失いたくな
いていた。
そう考える一方で記憶が戻らず安堵している己がいる事にも気づ
?
﹂
﹁⋮⋮どういう事だ
﹂
どういう事なのだろうか。
﹁凛ちゃん
﹁今すぐ蘭華を連れて戦場から離れて。﹂
?
!?
?
296
!?!?!?
﹂
﹁貴方は蘭華の正体を知っているのでしょう
蘭華は⋮⋮
私は蘭華を失いたくない。﹂
何の話をしているの
﹁⋮⋮⋮﹂
﹁ちょ⋮
?
これ以上戦場に居たら
?
﹂
﹂﹂
!
﹂
?
んでしょうか。さっき﹃戦うか﹄と聞いたのはシオンですよね
﹂
私は⋮⋮大切な家族を失いたくな
﹁蘭華はこれ以上戦場にいちゃいけないの
﹁だから⋮⋮﹂
﹂
﹁蘭華が蘭華じゃなくなっちゃう
いッ
!
?
﹁えっと⋮⋮﹂
﹂
﹁だから蘭華は今すぐ戦いから手を引いて。ね
2人が私を見つめる。
いや、それ以前に⋮⋮
﹂﹂
﹁人の話を聞けぇぇぇぇぇ
﹁﹁はい
﹂
﹁蘭華。凛の言う通りだ。戦場から離れた方がいい。﹂
!
﹁まず何で人の話を聞かねぇの
私は聖戦から手を引かないって言っ
流石に怒りますよ。いくら何でもこれは怒りますよ。
!!!
?
本人の意思を尊重してください。というか何故シオンも否定する
﹁何で
﹁﹁ダメ︵だ︶
まずここだろ。本人の意思を聞こうよ。
﹁いや、言っとくけど私戦いから逃げないよ
えっと⋮⋮私を放置しないで欲しいのですが。
﹁⋮⋮凛⋮﹂
状況がさっぱりつかめないのだが⋮⋮
⋮⋮⋮でも⋮⋮今は貴方しか頼れる人がいないの。﹂
うなんて許せないもの。今すぐに殺したいぐらいよ。
﹁勘違いしないでよね。貴方を信用したわけじゃない。蘭華と付き合
?
﹁あのー⋮⋮﹂
!
!?
297
!?
!!?
てるだろ
﹂
﹁いや⋮だから⋮﹂
﹁大体何だよ正体って
こっちは訳が分からないっての
﹂
!
シオンも凛ちゃんも教えてくれてもいいじゃんか
﹂
説明して
!
﹁そ、それは⋮﹂
﹁大体
よまず最初に
﹁﹁えっと⋮﹂﹂
の
舐めてるの
怒るよ流石に
﹂
!
いた。
﹁⋮⋮私が知ってることはごく僅かなの。それでも聞く
﹁うん。﹂
﹂
﹂
﹁蘭華は今不特定多数の奴らから狙われてる。﹂
﹁⋮⋮うん
﹁⋮カイロスって知ってる
﹂﹂
﹂
んでもって原作
!
﹁﹁カイロス
知ってるも何も神様じゃないですか
時の神様
主人公テンマの父さんじゃないですか
!
れていたので。現在進行形で。
﹂﹂
﹁あのダメ親父がどうかしたの
﹁﹁ダメ親父
?
﹁そのカイロスが蘭華の命を狙ってる。﹂
そっか。2人ともテンマの父さんとは知らないのか。
﹁あ、何でもない。﹂
﹂
シオンもビックリしている。シオンは昔からカイロスに命を狙わ
!
?
?
凛ちゃんは視線をあちこちにそらせた後諦めたようにため息をつ
﹁うーんと⋮⋮﹂
﹁説明して。じゃないとどう仕様もないじゃん。﹂
﹁えっとその⋮⋮﹂
何なの一体。わけがわからないよ
﹁﹁⋮⋮えっとその⋮スミマセン。﹂﹂
?
﹁説明してもらってないのに私のことを勝手に決めるとかふざけてる
!
!
!
!?
?
!?
?
298
!
?
﹁え
狙われてるのはシオンでしょう
﹂
?
﹁何故に
﹂
﹁それは知らないけど。今は蘭華も狙われてるのよ。﹂
?
華は戦場から離れた方がいいの。相手は
が出来ない。﹂
神
、私たちでは太刀打ち
"
﹂
﹂﹂
!?
﹂
大して興味が無いのか凛ちゃんは適当に相づちを打った。
﹁へー。﹂
﹁双子座の黄金聖闘士だ。﹂
﹁⋮⋮誰
岩陰から姿を現したアスプロス。
﹁﹁アスプロス
﹁答えは決まったようだな。﹂
﹁勿論だ。﹂
牡羊座のシオン。蘭華を命懸けで守りなさい。﹂
﹁⋮⋮蘭華は言い出したら聞かないもの⋮仕方ないわね⋮⋮
﹁ごめんね。﹂
﹁⋮⋮蘭華⋮﹂
これだけは譲れない。
は逃げない。﹂
私も引けないの。たとえ凛ちゃんやシオンに言われたとしても⋮私
﹁凛ちゃんが心配してくれているって言うのはよく分かった。でも、
﹁蘭華
狙われたとしても私は戦う。そう決めた。
﹁⋮⋮でも私は戦うよ。﹂
⋮⋮黒い⋮黒いよ凛ちゃん⋮⋮
てもらうために。﹂
﹁だから牡羊座の聖闘士に頼みに来たのよ。いざと言う時は盾になっ
してもあのダメ親父が見逃してくれるとは限らないんじゃ⋮﹂
﹁⋮⋮えっとさ⋮狙われてるのが本当だとしてもね、戦場から姿を消
"
﹁⋮⋮ゴメン。何故かは言えないわ。でも、狙われている現時点で蘭
急展開過ぎてもう付いていけていない。
!?
?
299
!
﹁答えってなんですか
﹂
﹁﹃戦うかどうか﹄を私はシオンを通して問うた。多少思惑とは外れた
﹂
が﹃戦う﹄と決めたのならば力を貸そう。﹂
﹁本当ですか
ビックリである。
﹁⋮⋮シオンどうしたの
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮ならいいんだけど⋮﹂
﹁いや、何でもない。﹂
シオンの表情が暗い。何故に
?
がいい。
﹁それで
﹂
いつ異次元への穴を開けばいいのだ
﹁いつなんでしょうか
﹁知らん。﹂
﹁ですよね。﹂
﹂
しまった。どのタイミングなのかわからない⋮ッ
?
﹁辿る
﹂
﹁小宇宙を辿れ。﹂
私の表情を見て察したのかアス兄は助け舟を出してくれた。
!
か、私ではどうにかならないかのどちらかだろう。ならば聞かない方
明らかに嘘とわかるが、話さないということは聞かれたくないの
?
弟のデフテロスには断られたため、簡単にオーケーしてくれた事に
!?
﹂
ゴルドの小宇宙を辿ればどこにいるか分かるはずだ。﹂
﹁なるほど
﹂
?
さい。
﹁⋮⋮⋮⋮どうやってやるんですか
﹁⋮⋮そこからなのか⋮﹂
頭を抑えるアス兄。
﹂
すみませんね、常識知らずで。頼みますからジト目で見ないでくだ
﹁成程
﹁⋮⋮⋮⋮常識だぞ。﹂
!
300
?
?
?
﹁小宇宙は言わば人の生命力だ。人によって違う。よって教皇かマニ
?
!
・
・
・
・
・
﹂
﹁己の小宇宙を燃やす時のような感覚で神経を研ぎ澄ませ。己の小宇
勿論聞いてますよ。﹂
宙を辺りに拡散させて⋮⋮⋮聞いているのか
﹁え
?
﹁いったぁぁぁぁぁ
凛ちゃんまで
﹂
酷いよー⋮
﹁蘭華が悪いわね。﹂
これは酷い。痛いデスヨ。
!
?
いんですね。
﹁ならイキマス
﹁⋮⋮⋮⋮あれ
﹂
私本当に出来てます
﹂
?
!
⋮⋮⋮⋮本当だな⋮﹂
こにいない
⋮⋮⋮⋮ここに居ない
つまり⋮
﹁まさか戦闘もう始まってる
﹁そういう事だな。﹂
!
﹁︻アナザーディメンション︼
﹂
﹂
アスプロスはため息をついた後小宇宙を燃やしました。
﹁ヤバイヤバイ⋮アス兄
﹂
こういう結論になりますよね。
!?
!?
シオンも同じ事言ってます。という事はセージとマニゴルドはこ
﹁何
二人の小宇宙が見当たらないんですけど。
?
えっと小宇宙を燃やす感覚で以下省略ッ
!
した。凛ちゃんは呆れてシオンとポーカーしてました。貴方達仲い
私が小宇宙をたどれるようになったのはそれから三十分後の事で
!?
﹂
失礼な。聞いてますよ。聞いているだけですけど。
﹂ドヤッ
﹁ならば質問をかえよう。﹃理解しているか﹄
﹁してません
﹁アホか。﹂
!
頭叩かれました。拳骨です。グーです。
!
?
!
301
?
?
﹂
﹂
異次元への通路が開きました。私とシオンはその中に飛び込みま
す。
﹂
﹁どうやって二人を探す
﹁⋮⋮⋮⋮根性
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
﹁冗談ですよ
﹂
は良いですけど、どうやって行けばいいんだ
﹁ッあっちです
そう言うと私は二人の小宇宙を探った。
さっき教えてもらった方法使いましょう
やっべー、何も考えてなかったわ。
!?
﹂
﹁どうしたんですか
﹂
﹁な⋮⋮異次元では思う様に移動できないということか⋮﹂
瞬間移動したようだ。
テ レ ポー ト
そ の 瞬 間 景 色 が ブ レ た か と 思 う と 別 の 場 所 に い た。ど う や ら
シオンが手を伸ばす。私も手を伸ばしシオンを掴んだ。
﹁蘭華、手を
かのごとく私達は行きたい方向とは逆の方に流されているのだ。
﹃行きたいところに行ける技﹄ではない。よってまるで風に流される
アナザーディメンションは﹃異次元への通路を開く技﹄であって、
見つけた
!
!!
!
り込みやがった。
だがタナトスは大人気ないことにブチギレて俺を異次元へ引きず
死の神タナトスに喧嘩を売った。そこまでは良かった。
俺は今大ピンチである。
マニゴルドside
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
シオンは頷くとまたテレポートをした。
﹁何もしないよりましです。シオン、お願いします。﹂
苦い顔をするシオン。
いない。まだ数度テレポートしなければいけないらしい。﹂
﹁私は教皇様の所を到着点にテレポートしたのだが半分も移動出来て
?
302
!
!
!
!
・
・
・
・
・
・
しかもその空間はただの異次元ではなく﹃神々の通り道﹄らしい。
塵となり時空の果て
人間が一歩でも踏み込めば体が粉々になる特典付き。
前も後ろも異次元。打つ手なしの万事休す。
こりゃ死ぬか
﹂
﹄
﹁お前ごとき俺が死を与える価値もない。さぁ
﹂
に消えよ
﹁ッ
﹃そうはさせませんぞタナトスよ
!!
?
死を覚悟した瞬間
!!
﹂
﹂
?
の血で書いた護符によって
﹂
﹁それは私の身がアテナ様の力で守られているからです。先代アテナ
だ。
忍び込まなければならない。侵入者を見逃す程愚かではないつもり
つまりこの場に居合わせる為には敵陣であるハーデス城上空まで
ある。
繋がっている現世は﹃双子神の離宮﹄。ハーデス城上空にある場所で
確かにまだ現世との繋がりは切れていないが、それでもこの空間に
の空間に引きずり込んだ者は﹃蟹座マニゴルド﹄だけなのだから 。
理解できないといった顔をするタナトス。何故ならタナトスがこ
﹁何者だ。人間が何故この空間で無事でいられる
教皇セージ。白い教皇の衣装を身に纏う先代蟹座。
﹁教皇
ジジイ
何故なら⋮それは俺の上司であり﹃俺の師匠﹄だからだ。
﹁やっとお目にかかれましたな、タナトス。﹂
﹁バカな、この空間に人間など⋮﹂
脳内に直接響く声。俺はこの声の持ち主を知っている。
!!
!!!
﹁教皇セージ。前聖戦では蟹座の黄金聖闘士でした。
戻っていた。
先程までいた次元の間とは違い初めに居た場所、双子神の離宮に
﹁⋮⋮バカな。俺の開けた空間まで閉じるとは⋮﹂
そう言うとセージは札を持っていた腕を振り下ろした。
!
303
!!
最も神であるあなたには人間ひとりの名などどうでも良いでしょ
うな。﹂
自傷を含めた笑み。それでもセージは喋り続けた。
﹁前聖戦⋮我々は双子神の脅威にさらされ、生き残ったのは私と兄の
マニゴルト
み。残 り の 同 士 は 皆 死 に 絶 え た ⋮ 同 胞 を 救 え な か っ た 後 悔 が 今 も
残っております。
﹂
こうして貴方と対峙する為冥王と因縁のある天馬星座に弟 子を護
衛につけた。いずれ干渉するであろう貴方の小宇宙を辿るために
﹂
﹁成程。全て貴様の予想道理というわけか。﹂
﹁神の一手先を読んでこその教皇
ン
﹁⋮⋮﹂
マ
イ
俺
ツ
﹁最も⋮お前だからそれだけの怪我で済んだのかもしれんがな。﹂
﹁ぅ⋮⋮﹂
よ。﹂
﹁い や ⋮ こ こ は 結 界 の 外 の よ う だ。お 前 が や ら れ た の は お 前 の 実 力
敵のテリトリー、しかも全力を出せない足枷とはエゲツねェ。
ハ ー デ ス の 結 界 は 本 当 に 厄 介 だ。聖 闘 士 の 力 を 半 分 以 下 に す る。
ツ楽勝なのによ。﹂
﹁あーしっかし体が重てぇなぁ。ハーデスの結界がなければあんなヤ
良しとする。
ぶっちゃけるとジジイが来なかったら死んでたが、今生きてるので
﹁ヘッ、こんくらい舐めときゃ治りますよ。﹂
﹁大丈夫かマニゴルド。﹂
が出来なかっただろうからイイんだけどな。
どっちにしてもこれぐらいしないとタナトスを引っ張り出すこと
コ
天馬星座を囮に使うとか度胸があるんだか護衛を信用してんだか。
テ
全く⋮重要人物、しかも100パーセント聖戦の行方を左右する
やがる。
おーおー、うちんとこの師匠ドヤ顔。してやったりみてぇな顔して
!
本当にうちのジジイはいきなり意表をつく事を言いやがる。照れ
るじゃねぇか⋮
304
!
・
﹂
思い上がるにも程が
﹂
﹁愚かな。今更老いぼれ1人加わったところで何になる
﹂
・
﹁さぁな。勝率が上がったことぐれぇじゃねぇ
ミ
あるぞ塵芥。﹂
﹁言ってくれるじゃねぇか。上等だ
?
な。
?
﹂
!
﹂
﹂
﹂
︵マジかよ、走馬灯って⋮︶
体感時間が長く感じられる。映像のように脳裏に蘇る過去。
激痛と苦痛が体と魂を苛む。そして体の感覚が消えてゆく。妙に
そして小宇宙の塊に呑まれた。
﹁マニゴルドッ
全力で走りセージの前に立つ。そしてセージを突き飛ばした。
﹁間に⋮合えッ
叫ぶと同時に走り出した。
師匠だった。
セー ジ
﹁ジジイ
しかもタナトスが狙ったのは俺ではなく
﹁︻テリブルプロビデンス︼
る。つまり当たったらアウト。
小宇宙の塊が触れたところは勿論、その周辺も大きく崩れ果ててい
た。ただの小宇宙の塊ではないことが周りの様子から伝わってくる。
そしてその巨大に膨れ上がった小宇宙の塊を俺達に向かって投げ
﹁⋮⋮まさか⋮﹂
あんな奴でも1神、小宇宙の大きさも質も量も桁違いである。
そ う 言 う と タ ナ ト ス は 右 腕 を 掲 げ た。頭 上 に 小 宇 宙 が 集 中 す る。
﹁かかってこんのか
ならばこちらから攻めてやろう。﹂
コントロールすることが出来るため教皇という役職なんだろうけど
俺よりもタナトスを憎んでいるはずなのに。時には己の感情をも
たことがあり、冷静さを保っている。
待ったをかけたのはセージ。流石数々の修羅場をくくり抜けてき
﹁止めよマニゴルド。感情的になってしまったら終わりだ。﹂
!
ゴ
﹁つくづく愚かだな。神である俺に﹃勝つ﹄だと
?
!!
!!!
305
?
!!!
苦笑いしながら過去を振り返る。死ぬ直前だというのに意外と人
間は冷静になれるものである。
︵散々な褒められたような人生ではなかったが⋮ジジイを、師匠を救
えただけ良しとするか。︶
﹂
目を閉じて意識を手放そうとした時である。
﹁させるかァァァ
﹁︻テリブルプロビデンス︼
﹂
所まで一気にテレポートした。
顔を見合わせ同時に頷くと恐ろしいぐらい強大な小宇宙の発生場
﹁奇遇だな。私もだ。﹂
ど。﹂
﹁嫌な予感がするんですけど。というか嫌な予感しかしないんですけ
﹁⋮これは⋮⋮﹂
鳥肌が立つ。
がった小宇宙を感じた。直接自分たちに向けられた訳では無いのに
どうしようかと思っていたところに、とてつもなく巨大に膨れ上
けない。というか二人の姿が見当たらない。
何度かテレポートを繰り返したが、なかなか目的場所までたどり着
蘭華side
する。
腹部を蹴り飛ばされた。その衝撃で自分自身も飛ばされ壁に激突
ドガァアン
誰かの叫ぶ声。そしてその直後
!!!
﹂
いくら黄金聖衣でももた
セージに向かって放たれた小宇宙をマニゴルドが身を呈して庇っ
﹁え⋮まずっ
を放っている。
着いたのは双子神の離宮だった。そして死の神タナトスが必殺技
!
!
306
!
!
た。だがあれは⋮いくら何でも強すぎる
ないッ
!
﹂
案の定マニゴルドは意識を手放そうとした。そんな事させるもの
か
﹁させるかァァァ
私 は 叫 び な が ら 走 っ た。そ し て マ ニ ゴ ル ド の 横 腹 を 蹴 り 飛 ば す。
意識を失いかけていた事もあり、簡単に吹っ飛んだマニゴルドは勢い
を殺しきれずに壁に激突。
⋮⋮うおぅ⋮ちょっちやり過ぎた⋮カナ
﹁マニゴルド⋮大丈夫ですか
﹂
シオンですら﹃えぇー⋮⋮﹄って顔してる。
﹁蘭華⋮⋮﹂
タナトスやセージも突然の乱入者にポカンとしている。
自分でもちょっと引くレベルだ。それ程勢い良く壁に衝突した。
?
2人をよくもボコボコにしてくれましたね。許し
!
﹁⋮⋮助かった⋮が⋮別の意味で死にかけたぞ⋮﹂
?
うん、喋れりゃ大丈夫だね。ノープロブレム
﹂
﹁えっと⋮アレだ
ませんッ
!
﹂
?
俺に殺されに来るとはな。﹂
﹁そ、そうだぜ。お前はいっぺんぶん殴るって決めたからな。﹂
なんかこんな会話前もした気がする。
﹁いえ、死ぬ気は全くありませんけどね。﹂
あ、なんとかタナトス戻ってきてくれました。なんとか。
﹁ほ、ほう
ましたから。﹂
﹁⋮⋮取り敢えず、二人が無事なら大丈夫です。目的の半分は達成し
というか皆戻ってきて下さい。シリアスにもっていけないので。
シオンも引いてる。うん、やめて欲しいですよ。悲しいですから。
﹁⋮うわぁ⋮⋮アバウト⋮﹂
﹁生きてるので問題ありませんよ。⋮⋮たぶん。﹂
タナトスさんびっくりしすぎたのかキャラ崩壊してます。
た人間蹴り飛ばすとか⋮本当に人間か
﹁いや⋮⋮俺が言えたことでもないがお前えげつないな。死にかけて
無理やりにでもシリアスにもっていこう。
!
?
307
!!!
!
﹁いや、マニゴルドは下がってて欲しいんですけど。﹂
そのケガで何を言っているのやら。
﹂
﹂
﹁調子に乗るな人間ごときが。貴様らなどゴミにも劣る存在だ。それ
なのに神を殴るだと
﹁ならばそれが嘘八百かどうか試してみるか
シオンが不敵に笑う。なんかマニゴルドやカルディアに毒されて
る気がします。シオンってこんなキャラじゃなかったはずなのだけ
どなぁ⋮
︶
その間に私は教皇に小宇宙でテレパシー。
︵タナトスを封じる方法はあるのですよね
本当は知ってますけど一応確認する。
side
に入った。
私達は圧倒的な神だろうと倒す。全員が小宇宙を燃やし戦闘態勢
しかしやるしかない。やらなければ殺られるし。
⋮
それが一番難しい気がするんですけど。あっち一応神様ですから
︵もう少しダメージを負わせなければ⋮︶
神だし。︶
︵今の状態のタナトスが簡単に肉体から魂を出すとは思えませんね。
︵うむ。しかし魂を肉体から引き離さなければこの方法は使えぬ。︶
?
点
の
要
バレたら面倒だからな。︻カ
黒いタキシード、シルクハットをかぶった男はそう呟いた。
岐
?
︻知る者がいない存在︼。﹂
分
﹁だが双子神にバレないようにしろよ
イロス︼よ。﹂
﹁ならお前も来るかい
?
308
?
?
﹁おーおー、はじまっちまったか。なら俺っちも動くとするかねー﹂
???
カイロスと呼ばれた︻時の神︼は不敵に笑う。
﹁⋮⋮いや、今回はやめておこう。﹂
sideout
分
岐
点
達
﹁そーかい。ならせいぜい回ってもらうとするかね。蘭華とシオン。﹂
そして時空の歪みは広がってゆく。
309
???
望み
﹃さあ、終わりのないゲームを始めよう﹄
蘭華side
ただいま神様と戦ってます。いや正確には戯れ程度に力を出す神
ク
ズ
様と死にものぐるいで攻撃する人間。
﹂
﹂
﹁何人人間が集まろうと結果は変わらん。
これは霊体
︻タルタロズフォビア︼
﹁な
!!
﹂
!
﹂
﹂
タルタロスに通じる我が内で永遠に苦しみさ迷う。貴様達も同じ道
﹁そう、彼らは亡者にも劣る霊。俺の摘んだ魂の成れの果てだ。冥府
たちの魂を傷つける。
そう、この技は霊で動きを制限するだけではなく生きている者⋮私
﹁違う、これはただの霊じゃありません
私たちに群がる霊。その霊たちは涙を流し悲痛を訴えかけている。
?
引き込まれる
を辿るがいい
﹁ッ
!
身創痍。とてもじゃないけれど戦える状態ではない。
!
原理しか知ら
﹁落ち着け蘭華。お前なら使えるはずだ、蟹座のあの技をな
﹂
分かりましたよ
なる様になれ
無理ですよ、私見た事しかないですから
セージの叱咤。
﹁いやいや
ないって
﹁できねば死ぬぞ。﹂
﹁そりゃそうですけど
⋮⋮⋮⋮あーもう
﹂
!!
!!
発させる技。
小宇宙を燃やす。イメージするのは蟹座のあの技、魂を火種とし爆
!
﹂
原作ではマニゴルドがこの技を封じたけれど今のマニゴルドは満
!
!! !!
!!?
!
310
!?
!
マニゴルド
﹁︻積尸気魂葬破︼
﹂
同じ技使えるよね
私の
何で私が
マニゴルドは動けないから仕方が無いけ
威力は本 職に劣るが何とかなった。
というかおかしくない
どセージも先代とはいえ蟹座だよね
やったの⋮セージが技を放てば済む話だよね
後怖いし
﹁タルタロズフォビアは封じましたぞタナトス。﹂
ドヤ顔やめようよ教皇
から何となくだけど場の雰囲気がおかしいのかな
?
ミ
﹁クズもゴミも大して変わらないよね
ゴ
﹂
つまり何も評価変わって
一緒だよ
そもそも最初に塵芥って言ってたよね
ないよ
!!
﹂
﹁クズでもゴミでも構わん。だがタナトス、貴様は封じさせてもらう
なんてどうでもいい事を突っ込んでしまう私。
!
!?
﹁成程⋮クズからゴミに格上げしてやろう。少し侮っていたようだ。﹂
!?
私が心の中で突っ込みまくってる
シリアスなのに⋮シリアスにならないのは私のせいなのか
!
?
?
!
せいだったりするのでしょうか
?
?
?
!!
﹁無駄だ。﹂
タナトスが少し小宇宙を燃やす。ただそれだけなのに私達の体の
動きを封じられた。
元々怪我で動けなかったマニゴルドを除き私、シオン、セージはそ
﹂
の場に膝をつく。
﹁ッ
・
・
・
・
・
それこそ馬鹿じゃないの
実力差がありすぎて比べるのも馬鹿馬鹿しい。
でも﹃だから何だ﹄
こんなのに屈服して、心が折れる
﹂
腹から声を出す。そして小宇宙を燃やす。するとさっきまで動か
﹁き⋮あいだァァァァ
こんなのかわせなくて何が﹃打倒ハーデス﹄だよ。
?
?
!!!
?
体が動かない。ヘビに睨まれたカエル⋮例えるならこうだろう。
!
311
!
シオンが技を放とうと構える。だが技を放つことは出来なかった。
!
なかったのが嘘のように体が自由に動く。
﹂
どこの熱血少年漫画だよとか思うけど。
﹁ほう
意外といった顔で悪そうな笑顔のタナトス。
私はタナトスに向かって駆け出し、拳を振り上げた。だが
﹁面白いな人間。だがこれで終わりだ。﹂
先程より強いプレッシャーを感じた。まるで体が上から強い力で
﹂
押し付けられるようになる。
﹁ガハッ
﹁﹁﹁蘭華ッ
﹂﹂﹂
強い圧力に私は立っていられなくなり地面に倒れ伏した。
体どころか指一本動かせない。息ができない。
!
ーー
ーーー
ーーーー
﹂
﹃そこで諦めるのですか
﹄
気がつくと草原に立っていた。
目の前で私に問いかける少女。艶のある漆黒の髪、藤色の瞳⋮顔は
?
?
﹃貴女はそこで諦めてしまうのですか
﹄
を刺されるだろう。意識が暗闇に沈んだ。
シオンの声が聞こえる。だが私は何も出来ない。もうすぐトドメ
﹁蘭華ーッ
避けることが出来ない。
タナトスの小宇宙が膨れ上がったのを感じる。だが感じるだけで
後の災いの芽とならぬうちに摘み取らせてもらおう。﹂
﹁貴様はそこの三匹とは違い多少は使える様だな。その力⋮惜しいが
三人の声が聞こえるが、上手く聞き取れない。
!!
!
312
?
私にそっくりだった。雰囲気が違う、小宇宙が違う。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
それなのに私は一目見ただけで分かった。
私と彼女は同じだと。
﹁此処は⋮⋮﹂
﹂
﹃貴方の心の中の世界です。﹄
﹁私は⋮⋮死んだの
﹂
︻願いは何ですか︼。﹄
﹁願い⋮
そう問われても何と答えればいいのだろうか。生きたい
私は⋮私は⋮
﹄
﹁皆を救えるだけの力が欲しい⋮
﹃⋮その覚悟は本物ですか
﹂
ません。ですから考えて。貴女はどうしたいのですか
﹄
﹃自分の願いがわからないのならば私は貴方に力を渡すわけには参り
変えたい
未来を
長 な 事 を 言 っ て い ら れ な い 状 況 で す。よ っ て 貴 方 に 問 い ま し ょ う。
﹃時間がありません。本当はもう少し待つつもりでしたがその様な悠
﹁そん⋮な⋮﹂
﹃いいえ、貴女はまだ生きています。ですが時間の問題⋮﹄
その問いに首をふる私。
?
?
かってる。私は無力で無知、お荷物でしかないと。それでも私は
﹂
﹁そ れ で も ⋮ そ れ で も 私 は 皆 を 救 う 為 に 戦 い た い。夢 物 語 だ っ て 分
と。現実は甘くない。
ー私は絶対に死なないし皆を助けられる勇者なのだー
ヒーロー
だがそれは違った。心のどこかで思っていたのだ。
た。
中で分かっているつもりだった。誰よりも理解しているつもりだっ
私はいつから勘違いしていたのか。この世界は残酷なのだと、頭の
間を救う﹄事は不可能。自惚れというものです。﹄
﹃勘違いしてはいけません。貴女は勇者ではないのです。﹃全ての人
私の指摘に言葉が詰まる。
?
!
!
!
313
?
?
?
﹃力を欲する⋮と
﹁ええ。﹂
﹄
﹃⋮⋮後悔しませんね
を。﹄
﹂
︵自責の念⋮⋮
︶
﹄
の念で己を見失った時、その時は貴女は貴女ではなくなるという事
﹃わかりました、力を貸しましょう。ですが忘れないで⋮貴女が自責
己で決めた事だ。後悔などするわけない。
﹁ええ
念押しする私。私を見て覚悟を決める。
?
?
﹁蘭華ーッ
﹂
シオンside
ーー
ーーー
ーーーー
かった。
誰 も い な い 空 間 で つ ぶ や い た 私 の 言 葉 を 聞 き 取 る 者 は 誰 も い な
・
﹃貴女は⋮私を恨むでしょうね。御免なさい⋮蘭華⋮﹄
私の意識が遠のいた。
何のことかわからない。だが今はそれどころではない。
?
﹂
んなのは嫌だ
﹁⋮え
!
私はこんなにも弱かったのか。守りたいものを守れないのは⋮そ
体が動かない。大切な人が目の前で殺されようとしているのに。
!
314
!
?
﹁何⋮
・
・
・
﹂
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
目を疑った。そして驚愕した。なぜなら
蘭華の髪が真紅から漆黒に変化したから。
あの現象を見たことがある。アレは⋮
﹁まさ⋮か⋮﹂
タナトスも信じられないようだ。その時だった。気絶していたは
﹂
ずの蘭華が立ち上がったのは。
﹁⋮蘭華⋮なのか⋮
﹁なん⋮で
﹂
体にかかっていた圧力が弱まった。
平常心を保っていられなくなったのかタナトスの小宇宙が弱まり、
タナトスはありえないと呟き続ける。
﹁いや、何故⋮何故貴女様が⋮﹂
蘭華は小さく呟くとタナトスを見据える。
﹁そういう事か⋮なる程ね⋮﹂
﹁まさか⋮いや、そんなはずは⋮﹂
たような顔になった。
蘭華は漆黒に変わった髪をまじまじと見た。そしてどこか納得し
?
艶のある漆黒になった髪、今まで以上に神々しさを
?
ていた。これが皆が言っていた﹃よくわからない小宇宙﹄なのだろう。
私は自分の体に起きた現象に驚愕しながらも心のどこかで納得し
﹁信じられないけれど⋮まさか⋮﹂
蘭華side
シオンside,end
なった。
別 の 意 味 で 動 け な く な っ た 体。た だ 見 つ め る こ と し か 出 来 な く
感じる小宇宙。覚醒と言わずなんだと言うのか。
の状況はどうだ
信じられない。過去を見せても蘭華は﹃覚醒しなかった﹄。だが今
?
315
?
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
自分でもよくわからないが、この小宇宙が一番しっくりくる。まるで
本来はこの姿であったかのように。
・
神
真 紅 だ っ た 髪 の 毛 も 艶 の あ る 漆 黒 に 変 わ っ た。私 は こ の 現 象 を
知っている。知識としてだが⋮
・
・
・
・
・
・
だが今はそれどころではない。私が何者であろうと今は﹃タナトス
を封じる﹄。
ら
﹂
私は右手を掲げ念じた。この地にある全ての植物に。
彼
﹁[拘束なさい]
植物は私の望むように動いた。だが簡単には拘束させてくれないよ
・
・
・
・
・
・
・
・
・
﹂
うでタナトスは拘束を振り切り悠々と佇んでいる。
・
﹁何故⋮何故貴女様がそちらにいるのですか
︻スターダストレボリューション︼
﹂
もしれない。
﹁シオン
﹁あ、ああ
・
・
・
・
・
・
・
・
﹂
・
そんな攻撃がこの俺に通用するとでも⋮﹂
﹂
・
自分でもびっくりするぐらい凛とした声。何となく気品があるか
﹁これは私が望んだことだからです。死の神タナトス。﹂
まるで既に答えがわかっていたかのように。
タナトスが私に問いかける。意味が分からない。だが私は答えた。
!
﹁な⋮グわァ
﹂
R を避けることに集中していたタナトスは私の放った電
マニゴルドッ
﹂
!!!
﹁﹁﹁︻積尸気冥界波︼ッ
﹂﹂﹂
私とセージ、マニゴルドは一斉に構えこう叫んだ。
ならば次の行動は一つ。
タ ナ ト ス に ダ メ ー ジ を 与 え る こ と が 出 来 た。布 石 は 揃 っ た の だ。
﹁セージッ
げでシオンの攻撃が当たる。
撃を避けることが出来ない。一瞬だが動きが鈍った。だがそのおか
S
スターダストレボリューション
!
!!!
316
!
﹁[雷よ落ちなさい]ッ
いかずち
!!
!
!
何故かはわからない。だが﹃できると確信していた﹄。
!
﹁馬鹿め
!
!!!
﹂
だが無駄だ、この肉体は仮初に過ぎん。肉体が無かろうと
三人の積尸気冥界波。ダメージを受けたタナトスに抗う術はない。
﹃小癪な
何の支障も⋮﹄
﹁果たしてそうですかな
﹃何⋮﹄
そう言うとセージは懐から聖櫃を取り出した。
﹁これは今生のアテナ様から授かった物。これに封じられればいくら
ちっぽけな人間ごときが
﹄
貴方であろうとも数百年は出ることは叶いません。﹂
﹃思い上がるな
!
時代の子らがいるのです⋮
人が神を制することなどできぬ
﹄
そのために私は⋮この生涯を捧げたのだから⋮⋮
﹃俺は神だ
タナトスの叫び。私はこう答えた。
﹂
﹄
!!!
﹂
どんな奇跡だろうと起
!
﹂
?
だが⋮
﹂
逃げますよ
﹂
私はこれが何の音か知っていた。原作知識で
﹁この離宮が崩れます
!!
皆忘れているかもしれないが、此処は﹃双子神の離宮﹄である。何
!!
!
音がする。﹃ガラガラ﹄と、まるで何かが崩れるような音。
﹁ま、待って
﹂
マニゴルドとシオンが笑う。
﹁やった⋮
マニゴルドの問い。その問いに静かにセージは頷いた。
﹁封じた⋮のか⋮
トスの小宇宙が掻き消える。双子の離宮に静寂が訪れる。
聖櫃の中にタナトスは吸い込まれた。そして聖櫃を閉じる。タナ
﹃うおぉおおおお
セージが聖櫃を開ける。
こす可能性が
すが⋮ですが人間は可能性を秘めています
﹁ええ。人間が神を制するなどできません。それは認めましょう。で
!
!!
!
﹁この場の我々だけではありません⋮我々の背には常に先の同胞が、
!
!
!
317
?
!
!
!
﹂
!!
さっきとは別の意味で
!!
処にあるか、それは﹃上空﹄ですとも
セージ
つまり⋮このままだと死ぬ
﹁シオン
!
だがその時、
﹁やーっと見つけたぜ、分岐点たちよ
!
﹂
!?
﹂
!!
!
入れる。
大地の愛娘ペルセポネ
﹂﹂﹂﹂
﹂
そんなの決まってるじゃねぇか。お前を消すためだ
私達にかなう相手ではない。最悪テレポートで逃げることも視野に
私達は臨戦態勢をとった。だがタナトスとの戦いで疲弊しきった
﹁何をしに来たんですか
﹁正解∼。俺っちを知ってるなんて光栄だね。﹂
﹁まさか時の神カイロス
タキシードを着てシルクハットをかぶった男。
私達は一斉に声の持ち主の方に体を向ける。そこにいたのは黒い
聞き覚えの無い声。
﹂
三人が私を見つめる。私は覚悟を決め口を開いた。
﹁では蘭華、説明してもらおうか。﹂
いれば良かったのだが無いものねだりをしても仕方が無い。
私はマニゴルドに近づき小宇宙で応急手当をした。レグちゃんが
﹁説明は後です。今はマニゴルドの治療をしましょう。﹂
﹁ああ。⋮蘭華、その小宇宙と姿は⋮﹂
﹁⋮終わり⋮ましたね。﹂
私達がテレポートして着いた場所は何処かの広野。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
ポートした。
私達は動けないマニゴルドに駆け寄ると手をとった。そしてテレ
!!
?
318
!
﹁何しに来たか
よ
﹁﹁﹁﹁
!!!!!
!
カイロスの言葉に全員が耳を疑った。だがそんなことお構い無し
でカイロスは話し続ける。
﹁正史ではいない存在。イレギュラーな娘。どの神の差し金かは知ら
・
﹂
・
・
・
ねぇがお前は俺の作るストーリーに不要だ。いや、それどころかス
・
トーリーを壊しかねない存在。よって消させてもらおうか
カイロスの背に時計のようなものが出現する。その時計が周り出
﹂
したと思うと視界がぶれた。
﹁
﹂
﹂
﹁シオン様も同じく飛んでもらおう。どこへ着くかわからない時空の
旅へと2名様ご案内∼ってな。﹂
その言葉を最後に私とシオンはこの世界から完全に消失した。
﹂
残されたセージとマニゴルド。
﹁二人を何処へやりやがった
な。﹂
﹂﹂
﹁ま、まて
﹂
﹁安心しろよ、キョウコウサマとカニは生かしといてやらぁ。んじゃ
﹁﹁なっ
とと、もう二度とここには戻ってこれねぇってことだな。﹂
ねぇし過去かもしれねぇ。わかるのはこの時代にはいねぇというこ
﹁さあなー、それは俺っちにもわからねぇ。果てしない未来かもしれ
!
も形もなく姿を消した神。広野には2人の人間が残された。
マニゴルドが止めるがけが人2人ではどうしようもなかった。影
!!
?
!
カイロスはなんと言った ﹃大地の愛娘 ペルセポネ﹄
?
﹁だがお前を殺すと後々面倒になるのも事実。よって飛んでもらおう
時空の果へ
﹁蘭華
体の自由が効かない。
!
﹁シオ⋮ン⋮﹂
!!
!?
319
!?
﹂
﹂
え
﹂
に二人の人間が倒れていたからだ。
﹁え⋮え
ろう。だがこのまま放っておく訳にもいかないので2人を家まで連
れ帰った。
320
﹁これでとどめよ
﹁さあ、帰りましょう⋮っ
!?
少女が驚きの声をあげる。何故なら先程まで誰もいなかった場所
!
は弾けて消えた。その場に残ったのは黒い小さな装飾品。
大きな銃を構えた少女が叫ぶ。すると大きな異形の姿をしたモノ
!
2人は見たことも無い格好をしていた。ただの一般人ではないだ
!?
side
﹁さあ、これからどうするのかなペルセポネ♪﹂
双子神にバレるわけにはいかないため
誰もいない部屋で楽しそうに呟く少年。それはカイロスと少し前
まで一緒にいた存在だった。
﹁これで終わりじゃないよね
動けないけれど⋮楽しくなるといいな。﹂
?
カイロスと話していた時より無邪気な声。それ以降少年は言葉を
発しなかった。
321
??
聖戦∼魔法少女と絆∼
﹂
聖闘士と魔法少女とイレギュラー
﹁⋮⋮ここは⋮
目が覚めた。だが知らない天井だった。
﹁⋮知らない天井だ。﹂
なんだかむなしい。誰も突っ込んでくれない。というか私なんで
ここにいるんだろ。
体を起こし周りを見渡す。そこは可愛らしくおしゃれな部屋だっ
た。そして懐かしかった。何故なら聖域⋮いや、その時代ではありえ
﹂
ないものが存在しているのだから。
﹁私⋮どうして
確かマニゴルドとセージを救うためにタナトスをぶっ潰した筈で
﹂
ある。そしてその後カイロスと遭遇してカイロスの攻撃を受けた。
﹁⋮⋮つまり私⋮死んだの
﹂
!?
ら出ようとした時誰かとぶつかった。
﹁あ⋮⋮目が覚めたのね。よかったわ。﹂
・
﹂
?
目の前にいるのは金髪縦ロールの同い年ぐらいの少女。
この口ぶりからするとこの部屋の持ち主なのだろうか
トモエマミ
いる私を見て少女は微笑むと自己紹介を始めた。
・
﹁私はマミ。巴マミよ。貴方は
警戒して
私はベッドから飛び降りシオンを探す。部屋のドアを開け部屋か
もここにいる可能性があるということ。
シオンはあの時私と共にカイロスの攻撃を受けた。つまりシオン
﹁⋮そうだ⋮⋮シオン⋮シオンは
はずがないもの。私がもといた時代の産物。
認めたく無い。だがテレビや窓ガラス、電球など聖域では存在する
?
それがまた時代を渡った私が出会った初めての人間だった。
?
322
?
?
world魔法少女まどか☆マギカ
﹂
﹁⋮⋮私は蘭華。雪美蘭華です。﹂
﹁蘭華ちゃんか⋮怪我は大丈夫
はもうほとんど痛まなくなっていた。
﹂
﹁は、はい。あの⋮シオン⋮男性を知りませんか
ですけど。﹂
﹂
﹁ああ、黄緑の髪をした男性のことかしら
﹁はい
?
﹁シオン
﹂
中をうろうろと歩き回っているシオン。
案内されたのはリビング。綺麗に整頓された部屋。そして部屋の
しい気配を感じながら。
私は縦ロール少女⋮もとい巴マミの背中をおった。なんだか懐か
﹁彼なら先に目が覚めているわ。ついていらっしゃい。﹂
?
私の知り合いなん
いつの間にかタナトスとの戦いで負った怪我は手当されており今
?
引き止める。
﹁す、ストップだよマミさん
﹂
﹁そ、そうだ。頼むから出ていかないでくれ
﹂
出てかないでください
!!
?
!
!
﹁ふふ、お邪魔虫は消えるわよ
お願いします
!
﹂
慈愛に満ちた顔をしながら部屋を出ていこうとするマミを全力で
﹁ごめんなさいね、お邪魔だったかしら。﹂
マミの声。我に返った私たちは顔を真っ赤にしながら離れた。
﹁⋮⋮あらあらまぁまぁ﹂
塞がれる。
シオンも私の背中に腕を回す。そして顔が近づいた。そっと唇が
﹁⋮蘭華が無事で良かった。﹂
﹁よかった⋮⋮良かったよぉ⋮⋮﹂
気がついたら私はシオンに抱きついていた。
!!
323
!
私たちの決死の引き止めにマミは
﹁仕方ないわね﹂
と言ってテーブルの前に座った。
﹂
そして咳払いをして私たちに聞いた。
﹁貴方達何者なの
と。
﹂
﹁その質問に答える前に聞きたいことがあります。ここは何処ですか
?
﹂﹂
﹁ここは見滝原。私の家よ。﹂
﹁﹁見滝原
﹂
?
をして。﹂
﹁格好⋮⋮
﹂
!
訓練着である。
﹁聖衣はこっちだ。﹂
つ置いてあった。
﹁⋮シオン、聖衣の記憶を読んでもらっていいですか
情を説明しますから。﹂
﹁⋮わかった。﹂
?
箱が二
﹁⋮これから話すことは真実です。信じてもらえるかはわかりません
私とシオンは別々の行動を始めた。
私はマミに事
シオンが指さす方を見ると牡羊座とアンドロメダ座の衣
パンドラボックス
カイロスに飛ばされるまでは纏っていた聖衣。今は纏っておらず
⋮⋮そうだ、聖衣⋮
﹁あなた達はありえない場所から姿を現したの。見たことのない格好
だが確証はない。だから言葉が濁るのは仕方が無いであろう。
に。
なる。シオンにとっては果てしない未来に、私にとっては元いた時代
ここが見滝原というのが本当ならば私たちは時空を渡ったことに
﹁⋮私は蘭華、こちらはシオン。どこから来たかは⋮その⋮﹂
﹁それで、あなた達は
聞いたことのある地名に対して。
私とシオンは驚愕した。シオンは聞いたことのない地名に。私は
!?
?
324
?
が嘘ではありません。﹂
﹁⋮ええ。﹂
まって、過去から来たというのは⋮﹂
﹁私たちは約二百年ほど前から過去から来ました。﹂
﹁え
信じられないのは無理もないと思う。誰だって﹃過去から来たよ
♪﹄とか言われたら疑うだろう。だが私たちは過去から来たという証
拠は何も無い。証明しろと言われても無理なのだ。
﹁本当です。信じられないのはわかりますが⋮﹂
続けてくれる
﹂
﹁⋮確かに信じ難い話だわ。でも信じなければ何も話が進まないので
しょう
?
﹂
?
た時代が﹂
﹁この時代⋮ということ
?
現れるなんて︶ボソ﹂
何か言いました
﹁いいえ、何でもないわ。﹂
﹁ん
﹂
︵だってありえないもの。魔女の結界の中に魔法少女でもない人間が
理解できるわね。
﹁その話が本当だとするとありえない場所からあなた達が現れたのも
う。
確信がないため恐らくとしか言えない。だが、間違っていないと思
﹁恐らくは。﹂
﹂
﹁それで私たちは敵の攻撃を受けて時空を飛ばされました。飛ばされ
聖闘士の方が酷いよね。
したことしてたんだろ聖闘士って。魔法少女も現実離れしてたけど
先程からこれしか言ってないな私。というかどれだけの現実離れ
﹁⋮し、信じられないのはわかりますが⋮﹂
﹁⋮女神アテナと冥王ハーデス⋮﹂
上の覇権をかけた戦いです。あ、シオンは牡羊座の聖闘士です。﹂
﹁女神アテナが率いる聖闘士と、冥王ハーデスが率いる冥闘士との地
﹁聖戦
﹁はい。私たちは﹃聖戦﹄という戦いの真っ最中でした。﹂
?
?
325
?
?
﹂
明らかに何かを呟いていたが声が小さすぎて聞き取ることが出来
なかった。
﹁さてと⋮⋮シオンは何か分かったかな
﹁魔女と魔法少女だと
﹂
﹂
シオンを見る。その時だった、シオンが叫んだのは。
?
ちらかだ。
﹁え
﹂
﹂
?
﹁⋮元
﹂
﹂
﹁⋮それは⋮わたしが元魔法少女だからです。﹂
・
否定しない。否定しないということは事実なのか
﹁⋮なぜあなた達は魔法少女を知っているの
信じられないという顔でみるシオン。
﹁マミ⋮君は魔法少女⋮なのか
私だけ蚊帳の外。説明欲しいんですけど。
何故それを
という反応。どういうこと
だが私以上に驚愕していたのはマミだった。
﹁な、何故それを
﹂
で発する単語じゃない。痛いヤツと思われるか不審がられるかのど
魔女も魔法少女もよく知ってるけど少なくとも一般人がいる場所
﹁え⋮いきなり何言ってるんですかシオン
!?
﹁⋮そう、納得したわ。﹂
したのか⋮マミさん凄い。
﹁もしかして貴女⋮桜橋町の
﹂
﹁私は五年ほど前まで魔法少女でした。今は違いますが⋮﹂
?
!?
会えて嬉しい、と笑いながら私を見るマミ。
の事だったのね。﹂
﹁そう⋮キュゥべいが言っていた桜橋町のベテラン魔法少女って貴女
﹁はい。﹂
所である。
桜橋町とは私が住んでいた場所。魔法少女として活動していた場
?
326
!
?
?
!?
?
頷く私。
?
﹁⋮⋮⋮⋮あ⋮あはは⋮それは⋮私じゃないんですよね。﹂
どちらかと言うと落ちこぼれですハイ。ルーキー魔法少女より役
に立ちません。自分で言うと悲しいけどね。
マ ミ の い う ベ テ ラ ン 魔 法 少 女 っ て 明 ら か に 凛 ち ゃ ん の こ と だ し。
ちょ、何で泣いているの
﹂
⋮わ、私足手纏い過ぎて⋮泣けてきた⋮グス⋮
﹁え
実を突きつけられただけです。﹂
オロオロとしてしまったマミ。
﹁それでマミさん、貴女は魔法少女なんですか
﹁⋮ええ。そうよ。﹂
?
﹁秘密
﹂
﹁マミさんは魔法少女の秘密を知っていますか
﹂
私の反応に首をひねるマミ。事情を知らないと当たり前の反応か。
﹁そう⋮ですか。﹂
﹂
﹁いえ⋮気にしないでください。自分がどれだけ役に立たないのか現
!?
﹂
﹂
キュゥべいと契約して一度の奇跡と引き換えに魔女と
魔女の結界ッ
﹂
!
わかるの
﹂
!?
﹁話はあとにしましょう。今は魔女を片付けるのが先だわ。﹂
信じられないと呟くマミ。頷くと立ち上がった。
﹁え
独特の気配を感じられるようになっていたのだ。
魔法少女の時には感じなかった感覚。聖闘士となってから魔女の
﹁⋮
話そうとした時である。魔女の結界の気配を感じた。
﹁魔法少女の秘密は⋮﹂
間違いでも正解でもない、と言われて余計混乱するマミ。
﹁え
﹁その解釈は間違いではありません。ですが正解でもありません。﹂
戦うことを義務つけられた存在⋮ではないの
らないのよ
﹁魔法少女の秘密と言われても⋮まず魔法少女が何なのか私たちも知
うで不思議そうな顔をする。
この時代のキュゥべいも秘密主義なのだろう。思い当たらないよ
?
?
?
?
327
!?
?
!?
!?
﹁わかりました。魔女の大体の場所はわかるので行きましょう。﹂
私たちはマミの家を出て大きなビルに向かった。
そこはまだ改装中なのか工事中なのかわからないが立入禁止の場
所。一見何も変わった所がないように見えるが違う。この場所の雰
囲気というか気配というか⋮言葉では言い表せない違和感。
﹁⋮本当ね⋮魔女の結界があるわ。﹂
ソウルジェムを取り出したマミはそう言うと結界の中に足を踏み
入れた。数秒遅れて私たちもマミの後を追う。
﹁これが⋮魔女の結界⋮﹂
シオンは魔女も使い魔も見たことが無い。よって初めて見る光景
に驚いていた。
﹁驚かないのね。﹂
328
﹁ええ。元魔法少女ですから結界は慣れっこです。それに⋮最近魔女
と対峙しましたから。﹂
ワルプルギスの夜。リーシェの魂の成れの果てである演劇の魔女。
今リーシェはどうしているのだろうか。彼女を聖域に連れていっ
たのは私だが直ぐにアルバフィカ様とミーノスとの戦いがあったり
木欒子事件があったりマニゴルドがタナトスに喧嘩売ったり⋮そし
てカイロスに別次元に飛ばされたり⋮⋮
ならば魔女が出てき
2ヶ月あまりの時間なのに出来事満載である。
﹁そう⋮でも今は魔法少女ではないのでしょう
たとはいえまた魔女と戦えと言われても戦える自信が無い。やはり
魔女と戦えるかは別だが、と心の中でつぶやく。演劇の魔女と戦っ
﹁安心してください。魔法少女では無いですが戦えますから。﹂
﹁⋮⋮でも⋮﹂
逃すわけにはいかないですから。﹂
﹁知っていますけど戦いますよ。魔女の危険さを知っているからこそ
ら。﹂
た ら 私 に 任 せ て 下 が っ て。魔 女 の 危 険 さ は 知 っ て い る で し ょ う か
?
まだ魔女と対峙するのは⋮怖い。
だがそんなことマミに言えるわけない。作り笑顔をしながら話し
ていた。マミは気づかなかったようだがシオンは気づいたようで手
あれは⋮﹂
を握ってくれた。大丈夫だ、と言われている気がした。
﹁ん⋮
使い魔に囲まれて戸惑っ
前方に人影。どうやら少女が二人いるらしい。マミと同じ格好を
していることから同じ学校の生徒なのか
いた。
マミが使い魔たちを蹴散らす。⋮あれ
﹁危なかったわね。でも、もう大丈夫。﹂
﹁﹁
﹂﹂
大切な友達なの。﹂
変身してなくね
﹁あら、キュゥべいを助けてくれたのね。ありがとう。その子は私の
かのような顔でこちらを見ている。
知っている服装の人間がいれば安心できるだろう。現にホッとした
突 然 現 れ た 私 た ち を 見 て 驚 愕 す る 二 人。非 現 実 的 な こ の 空 間 で
?
使い魔が二人に攻撃を仕掛ける。私やシオンが動く前にマミが動
が分かった。
ている二人。その反応から魔法少女ではないただの一般人である事
?
?
・
・
・
・
・
か っ た。二 人 と も イ ン キ ュ ベ ー タ ー を 見 て い る こ と か ら 見えている
のだろう。見えているということは魔法少女になる資格があるとい
うこと。そんな人材をインキュベーターが⋮ヤツらが放っておく訳
がない。
私たちの顔が険しくなったが三人とも気付かなかった。
なおタチが悪い。インキュベーターは魔法少女として契約さ
﹁私、呼ばれたんです。頭の中に直接この子の声が。﹂
っ
ベーター。つまり誰かがインキュベーターをこのような様子にした
﹃エ ネ ル ギ ー の 無 駄﹄と 言 っ て 自 ら 体 を 潰 す こ と を し な い イ ン キ ュ
だが妙である。今のインキュベーターはボロボロで無残な姿。
せるためならば何だってする。
!
329
?
今の今まで少女がインキュベーターを抱いていたことに気づかな
!!!!
という事だろう。誰なのか。
その人は魔法少女の事を知っているのか
﹂
ね。2年生
﹁ふぅん。なるほどね。その制服、あなたたちも見滝原の生徒みたい
?
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮え⋮
﹂
黒髪さらさらロングヘアの少女。格好からして魔法少女だろう。
現す。
を向ける。さっきからずっとこちらの様子を覗いていた存在が姿を
二人が無事なのを知って安堵した。そう言うとマミは物陰に視線
なたに譲ってあげる。﹂
﹁魔女は逃げたわ。仕留めたいならすぐに追いかけなさい。今回はあ
なのにすぐに立ち直れるところを見るとなかなかの大物らしい。
よりガッツポーズをとる。先程まで訳の分からない空間にいたはず
水色の髪のボーイッシュな少女は知っている場所に戻ったことに
﹁も、もどった。﹂
する。
結界の持ち主である魔女が消えたことにより結界自体が自然消滅
ことにより怖気付いたのか逃げ出した。
だがこれぐらいで魔女は倒せない。魔女は魔法少女に攻撃された
桃色のツインテールをしている少女が感極まった声を出す。
﹁す、すごい。﹂
ながら。
魔女を攻撃する。攻撃の余波で二人が怪我をしないように加減し
﹁っは
とする二人。
そう言うとマミはソウルジェムを掲げ変身した。その様子に呆然
ちょっと一仕事、片付けちゃって良いかしら♪﹂
﹁そうそう、自己紹介しないとね。でも、その前に⋮
もう一人の少女がマミに問う。
﹂
﹁あなたは
?
その少女は私たちを見て、いや﹃私とシオンを見て﹄目を丸くした。
?
330
?
!
まるでありえないものを見たような顔。
だがそんな顔をしていたのも一瞬の事。立ち直ったのか、何も無
かったのかのように無表情に戻る。
﹁私が用があるのは⋮﹂
チ ラ ッ と 桃 色 の 髪 の 少 女 が 抱 え て い る イ ン キ ュ ベ ー タ ー を 見 る。
いや、見るなどという生易しいものではない。まるで仇を見るかのよ
うに瞳の中に憎悪の心が見え隠れしていた。
﹂
﹁飲み込みが悪いのね。見逃してあげるって言ってるの。お互い、余
計なトラブルとは無縁でいたいと思わない
気付いていないマミは検討ハズレなことを言う。むしろ気づけと
いう方が無茶かもしれないが。
だがその少女は明らかに魔女を狙ってきていたとは思えない。も
・
・
しかしたらインキュベーターをアレだけボロボロにしたものこの少
女なのか⋮
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
︶
少女は少し悩んだようだが諦めたかのように去っていった。私と
シオンを睨みつけながら。
︵⋮シオン、私たち睨まれらようなことしましたっけ
︵まさか。初対面だ。︶
そう言うとマミの返事を聞かず走り出した。光速で。
して契約させないで。﹂
﹁マミ、私とシオンは彼女を追います。二人をお願いします。⋮⋮決
ボソッとつぶやいた私の声は誰の耳にも届かず消え去った。
﹁魔女の結界に入った人間は皆死んでしまうのよ⋮﹂
込んだ場合死ぬことが多い。⋮⋮そう、死ぬのだ。
怪我はないようで胸をなでおろした。一般人が魔女の結界に入り
少女が去った事により気が抜けたのか座り込んでしまう二人。
やはり何故なのかわからない。
ですし。︶
︵ですよね、この時代に来たのは私はともかくシオンは初めてのはず
?
態度が変わった私にシオンは気づいているだろう。だが何も言わ
ない優しさ。今はそれに救われる。
331
?
過去に背を向けながら私は逃げるように走り去った。
332
サヨナラ
真っ赤。
コレハナニ
﹁⋮なぜ追いかけているのか聞いていいか
﹂
ていった魔法少女を追いかけているのだが。
私とシオンは逃げた魔女を追っていた。正確には魔女を追いかけ
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
過去はついてまわるもの。⋮決して消えることはない。
﹁逃げるなんて許さない。﹂
コレイジョウハオモイダシタクナイ。
白くて赤くて。
イヤダ。
冷たくて硬いもの。
ナゼ
赤くてあたたかいもの。
?
・
・
・
・
・
﹂
す。それなのに﹃私たちだけ﹄を睨みつけた。﹂
﹁あの少女も私たちと同じ可能性がある⋮と
﹁あくまで推論でしかありませんが。﹂
話しながらも走り続ける。
﹁そして二つ目の疑問点です。﹂
﹁⋮それは気づいた。﹂
?
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
女に追いついていない。い く ら 身 体 能 力 が 強 化 さ れ て い る 魔 法 少 女
・
﹁私たちは﹃光速に近いスピード﹄で走っています。それなのにまだ彼
・
の少女とは初対面。つまり私達がいても何の問題もなかったはずで
り合いならばあんな反応はしないでしょう。マミの様子からしてあ
るで私たちが有り得ない存在だと知っていたかのように。マミの知
﹁⋮違和感です。彼女は﹃ありえないものを見た﹄ような顔をした。ま
?
333
?
でもおかしいのですよ。それこそ﹃瞬間移動﹄か﹃時間操作﹄でもで
きない限りは。﹂
瞬間移動ならばあの場で瞬時に消えれば納得できた。だが会えて
﹃立 ち 去 っ た﹄の だ。能 力 を 知 ら れ た く な か っ た の な ら ば わ か る が
会ったばかり、これから会う機会があるのか分からない人間に手の内
がバレても問題ないはず。
﹁あくまで予想でしかありませんが。﹂
﹂
結局少女に会う事なく魔女の結界までついてしまったのだ。
﹁⋮どうやったら結界に入れる
﹂
︵どうします
︶
だろうがシオンのように五感が鋭い聖闘士にはバレバレだ。
後ろをぴったりとついてくる存在。気配は隠しているつもりなの
︵ああ、⋮ついてきているな。︶
︵⋮シオン。︶
む。
長い通路。所々で襲ってくる使い魔を殴って、蹴って潰しながら進
入れた。
シオンがハッキリと頷くのを確認した後私たちは結界に足を踏み
﹁⋮これですね。⋮いいですかシオン。﹂
シオンに呼ばれたため行ってみると空間のゆがみが生じていた。
﹁これか
私たちは結界の入口を探し始めた。
﹁何処かに入口があります。探しましょう。﹂
?
?
してきたのだろうなと予想できた。
﹁いきなり物騒ですね。私たち何か怒らせるような事しましたか
﹂
法少女としての固定武器ではないようで、ヤのつく家業の所から拝借
カチャリ、と金属音。振り向くと拳銃を構えた少女。その拳銃は魔
迷っている間に少女の方が行動を起こしてくれた。
を倒した後でも倒す前でもどちらでも問題ないのだ。
どちらでもいい。彼女と話したいのでいつかは声をかけるが魔女
︵このまま様子見をしてもいいが⋮︶
?
334
?
﹁貴方達何者なの。﹂
﹁無視ですか⋮﹂
スルーは悲しいな。
﹁答えてもいいですけど⋮その銃を下ろしてもらえませんか
に銃は効きません。意味無いですよ。﹂
警戒しているので意味無いかなぁと思っているが。
私たち
﹁まさか。怪しい人間がいるのに武器を下ろすわけないでしょう。﹂
﹂
﹁ですよね。銃効かないのは事実ですけどそれでもいいのならば持っ
﹂
ていてくださって構いませんよ。﹂
﹁銃が効かない⋮ですって
﹂
﹁はい、避けれますし。弾丸をキャッチすることも可能ですよ
パァァン⋮⋮⋮
発砲音が響き渡った。
﹁これでおわかりになりました
場数を踏んでいるはずである。
﹁私たちの話を聞いてもらえないだろうか
?
﹁聖闘士
﹂
﹁私の名前は雪美蘭華。こちらはシオン、聖闘士です。﹂
なったらしい。距離を取りながらもこちらの話に耳を傾けてくれた。
警戒を解いていないようだが話を聞いてやる、という気持ちには
﹁⋮⋮⋮﹂
﹂
が高すぎる。そして人間相手でも躊躇いなく引き金を引いた。相当
めながら少女を値踏みしていた。いくら魔法少女とはいえ射撃能力
攻撃されたことによりシオンは警戒した。私はそんなシオンを宥
結構な言われようだが否定出来ないので苦笑いする。
﹁⋮化け物ね。﹂
私の右手の中には少女が撃った弾丸。
?
﹂
アテナを守護する存在だ。﹂
﹁女神⋮⋮アテナ⋮
﹁信じられないのも無理ありません。聖闘士が表舞台に顔を出すこと
?
335
?
?
?
﹁そうだ。ギリシャの隔離された場所にある聖域にいらっしゃる女神
?
はそうそうありませんから。
﹂
⋮⋮私は五年ほど前まで魔法少女でした。﹂
﹁なんですって
﹂
このカミングアウトには驚愕したのか手に持っていた銃を落とし
かけた。
﹁その口ぶりだと今は魔法少女ではない⋮と言うこと
あ け み ほ む ら
﹁あなたのことを教えていただけませんか
﹂
﹁その単語を知っているということは事実なのね⋮信じられないわ。﹂
もありません。﹂
﹁はい。ソウルジェムはありませんし、インキュベーターとの繋がり
?
﹂
?
す。﹂
﹁なら⋮魔法少女の事をどこまで知っているのかしら
?
﹂
﹂
ターを始末しようとしている理由は⋮あの子を契約させないため
﹁違 う わ。憎 ん で は い る け れ ど 恨 ん で は い な い。私 が イ ン キ ュ ベ ー
﹁インキュベーターを狙うのは復讐ですか
﹁ええ、そうよ。﹂
確認するように尋ねるシオン。
﹁暁美ほむら⋮君は全て知っているんだな
グリーフシードと変化し魔女になる。これぐらいでしょうか。﹂
体は生ける屍となる。ソウルジェムが濁りきると⋮ソウルジェムは
方とする人間。そして契約により魂はソウルジェムに封じ込まれ、肉
魔法少女とはインキュベーターと契約して魔女を倒すことを生き
﹁シオン⋮そうですね。
﹁蘭華、全て話そう。﹂
女になってしまうのだから。
分からなかったからだ。迂闊に真実を話し、絶望させてしまったら魔
一瞬言葉に詰まってしまった。ほむらがどこまで知っているのか
﹁それは⋮﹂
﹂
﹁はい、可能です。特殊な方法を使うことになりますが確実に戻せま
に戻すことが出来るの
﹁⋮私は暁美ほむら。教えてくれるかしら、あなた達は魔法少女を元
?
?
?
336
!?
よ。﹂
﹁先ほどの二人の少女の事ですか
﹁ええ。﹂
﹂
そ れ 以 上 は 今 は 語 る 気 は 無 い の だ ろ う。苦 い 顔 を し て 俯 い て し
まった。
﹁二人共気をつけろ。⋮⋮来たようだ。﹂
周りを警戒していたシオンの声で意識を切り替える。目の前には
この結界の主である魔女がいた。
﹁二人共下がっていてくれるかしら。これは魔法少女である私の仕事
よ。﹂
﹁私たちも戦えます。﹂
﹁力を貸そう。﹂
﹁⋮⋮⋮﹂
しばらく私達を見つめた後たちを見つめた後、
﹁⋮好きにしなさい﹂
﹂
と背を向けてしまった。
﹁⋮ツンデレ
︻クリスタルウォール︼
すから。
﹁⋮っ
﹂
!
﹂
いたように目を見開いたほむらだったがすぐに立ち直ると腕の盾か
ミリガン
ら銃を取り出した。
﹁⋮はぁ
!?
持って撃ちまくる。
危ないって
!!
ミリガンとは回転しながら弾が出る機関銃の事である。つまり⋮
﹁ちょ
﹂
ど こ で 手 に 入 れ た ん だ そ ん な お っ か な い 武 器。中 学 生 が 軽 々 と
!?
337
?
﹂
?
頼みますので殺気全開でこちらを見るのやめてください。怖いで
﹁すいませんでした。﹂
﹁魔女より先に貴女を殺すわよ
?
魔女が攻撃を仕掛けてきたためシオンが盾をはる。その光景に驚
!
!
﹂
流れ弾がこちらにも飛んでくるのである。
﹁避けられるのでしょう
﹂
﹁避けられるけどもし当たったらどうするんですか
よっては死ぬじゃないですか
﹁⋮⋮蘭華。﹂
﹁なんですか
﹂
﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂
﹂﹂
に取り出したのは﹃バズーカ﹄。
あたりどころに
なんて言っていると弾が切れたらしくミニガンを放り投げる。次
﹁﹁どこをどう安心しろと
﹁安心しなさい。結界内で死んだら死体は残らないわ。﹂
!
!
?
!?
いか
﹂
して魔女は煙に包まれる。
﹁⋮これ私たちいらないんじゃ⋮
チックの物体。
s
﹂
﹂
﹂
﹁⋮それは何なのか教えて貰っても⋮
﹁爆弾よ。﹂
﹁⋮What
﹁プラスチック爆弾。﹂
﹁⋮⋮それはどこで入手を
?
﹂
?
﹂
!?
﹃ユナ・ボナーほむら﹄。彼女のあだ名である。︵後日談︶
爆弾自作とかどこの爆弾魔ですか。
﹁そういう問題じゃないですよね
﹁魔女以外には使わないから問題ないわ。﹂
﹁犯罪ですよ⋮⋮
いや⋮決まってるじゃないのといわれましても⋮
﹁手作りに決まってるじゃないの。﹂
?
?
﹂
そ の 間 に も ほ む ら は 攻 撃 を 続 け る。手 に 持 っ て い る の は プ ラ ス
?
全力で離れると魔女にバズーカ砲が当たった。ドゴォンと爆音が
﹁いいえ。多分正解です。⋮⋮距離を取りますよ
﹂
﹁あれが何なのか私には見当もつかないが嫌な予感がするのは気のせ
?
'
338
!!
?
﹁えっと⋮﹂
手馴れていて、マイペースで攻撃を仕掛けているほむらがいるため
手 を 貸 す こ と が 出 来 な い。下 手 に 手 を 出 す と こ ち ら に 被 害 が く る。
シオンも同じ考えなのかいつの間にか私たちは後ろから見るに耐え
ない姿になっていく魔女と微笑みながら爆弾を投げつけるほむらを
観察するのだった。
ギリシャ
魔女が砕け散るとその場にはグリーフシードが残される。
﹁⋮私たち要らなかったですね⋮﹂
手を出すことがかなわなかった。魔女の結界が消える。
﹁⋮先程の話の続きをしましょう。2人はどこから来たの
なのかしら。﹂
である。
﹂
﹂
﹁⋮そう、聖戦か⋮﹂
﹁はい。﹂
﹁共同線を張らない
﹁どういう事でしょうか
﹂
れないと言っていたほむらだが話し終わる頃には信じてくれたよう
私たちはマミにしたようにここへ来た経緯を話した。驚き信じら
﹁⋮⋮は
前から来ました。﹂
﹁⋮いいえ。信じてもらえないかも知れませんが私たちは二百年ほど
?
﹁どうやって
﹂
﹁⋮だが私たちは元いた時代に戻らなければならない。﹂
の魔法少女達も助けたい。⋮だから手を貸して欲しいの。﹂
女になったのだから。でももしかしたらのことがあるし、できれば他
﹁私はまどかを魔法少女にしたくない。彼女を救うために私は魔法少
?
?
・
・
・
・
﹂
﹁今の人間に過去へ行くすべはない。そう、人間にはね。﹂
﹁それは⋮⋮﹂
の答えがわからない事を再自覚させられた。
ほむらの問いは純粋で、心の底からの疑問で。それゆえにこの問い
?
339
?
﹁人間には
?
﹁ええ。私は人間というくくりには属さないでしょう
・
・
いくらいバラバラに壊れてしまう。
・
﹂
・
・
・
・
・
また私という存在がいるせいで歴史が狂う。もはや救いようのな
またか。
・
﹁イレギュラー⋮﹂
きなり現れたイレギュラー。﹂
ら こ そ 分 か ら な い の。貴 方 達 は ど の 時 間 軸 に も 存在しなかった。い
・
﹁私は⋮まどかを救うために何度も同じ時間を繰り返している。だか
刀両断に心が沈む。
先手を打つように時間の壁は越えられないと言い放った。その一
﹁そう⋮ですか。﹂
私の魔法は時間を操作することだから。﹂
﹁ええ。と言っても200年なんて時間の壁は超えられないけれど。
﹁その口ぶりだとまるで過去へ行く術を知っているようですね。﹂
?
ギリシャ神話通りの存在だとすると
私は⋮私は⋮⋮
ペルセポネとは
﹂
私は何者
﹁蘭華
?
?
?
﹁⋮⋮﹂
﹁あぶねぇな
気をつけやがれ
﹂
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
私の心情を表すように空は曇り雨が降っていた。
に。
私は二人に背を向けてがむしゃらに走った。行くあてなどないの
わからない。だがこの場にいたくない。
?
!
!
340
﹁⋮私のせい⋮なんですね。﹂
﹂
私が居るせいで⋮
﹁蘭華
?
﹃正史には存在しない者、イレギュラーな娘。大地の愛娘ペルセポネ﹄
カイロスはあの時何といった
﹁私が⋮歴史を変える⋮﹂
?
!?
さ迷うように走って疲れ果てた私は歩いていた。雨のせいか人通
りは少ない。
心が痛かった。辛かった。
﹁⋮⋮私⋮何してるんだろ。﹂
逃げたってどうしようもないのに。何も変わらないのに。
﹄
逃げる場所などあるの
でも逃げたい。こんな辛い現実。私のせいで全てがおかしくなる。
﹃でも何処に
何処に逃げればいい
﹁⋮誰か教えてよ⋮﹂
﹁人間というのはつくづくわからないね。﹂
﹁⋮⋮何の用なの。⋮⋮インキュベーター⋮﹂
上げていた。
・
﹂
﹁知りたいことがあってね。﹂
・
﹁知りたいこと⋮
・
・
・
そしてこれからどうするつ
わたしの進む道に立ちふさがるかのように白い生物がこちらを見
?
私は﹃これから﹄なんてあるの
﹁君たちはどうやってここに来たんだい
﹂
もりなんだい
﹂
﹁⋮⋮これから
これからと言うのはどういうこと
?
?
しんなぎきょうや
よ、﹃神凪鏡夜﹄。﹂
﹁⋮神凪⋮鏡⋮夜⋮⋮
﹂
﹁や れ や れ。ず い ぶ ん と ひ ど い 顔 を し て い る ね。あ の 時 と 同 じ 顔 だ
?
?
を。﹂
・
・
・
・
・
﹂
・
・
・
・
﹁覚えているわけない⋮⋮私は雪美蘭華だもの。﹂
・
﹁君が雪美蘭華と名乗ったのは何故だい
﹁何故って⋮﹂
?
﹁その親は本当の肉親ではないのに
﹂
そんなの決まっている。親にもらった名前だからだ。
・
﹁君 は 神 凪 鏡 夜 だ よ。覚 え て い る は ず だ、そ の 名 を 捨 て た 時 の こ と
インキュベーターは何を言っているのか。
?
?
341
?
?
?
?
﹁⋮ッ⋮﹂
・
・
・
・
・
・
・
・
﹁孤児院にいた時もそうだったね。君は﹃己を知らなかった﹄。いや、
知ろうとしなかった。﹂
﹂
﹂
﹂
苦い思い出。幸せであり同時に苦痛だった。
﹁⋮何が言いたいの
﹂
﹁君はいつまで現実に背を向けるつもりだい
うるさい。
﹁いつまで逃げるんだい
うるさい。
﹂
﹁私がどんな思いで
いたいのよ
﹂
逃げることしか出来なかった私に
今更何を言
アンタなんかに何が分かるってい
?
うるさい。
あんたに
﹁本 当 は わ か っ て い る ん じ ゃ な い の か い
﹂﹂
うるさい
!
わかるって言うのよ
!!
﹁うるさい
私の何が
己 の 存 在 意 義﹁う る さ い
﹁自分自身を否定してどうするつもりなんだい
?
?
!
雷が鳴った。雨は強くなり私の体を打ちつける。
うの
?
?
!
もろ
受け止めるには心が脆すぎて。
イレギュラー
誰も私を必要としないのに、誰も
どうして私なのよ
﹂
それなのに私はこんな重た
何でなのよ
!!
﹁どの場にも居場所がない存 在で
なんで
!!
!!
!
私のことなんて気にも止めないくせに
いものを背負わされて
!?
でバラバラだったピースが一つになった。私が何者であるか、過去の
全てを思い出したのはこの世界に飛ばされた時。カイロスの言葉
シオンに問われた時﹃何も覚えていない﹄と答えたのは本当。
戦の最初の一欠片。﹂
﹁私は神凪鏡夜じゃない。ペルセポネよ⋮地上に仇なす冥王の妃。聖
﹁やはり覚えているんだね、神凪鏡夜。﹂
い。
ああ、コトバにするつもりなんてなかったのに。でももう止まらな
!
342
!!
必死に顔を背けた過去。世界はあまりにも残酷で私はその事実を
!!
!
!?
!
!!
全てを。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
﹁もう私は⋮聖闘士じゃないのだもの。﹂
そう、聖闘士の名乗る資格はない。
何となら名乗っていいの
魔法少女でも人間でも聖闘士でも冥闘士でもない。
ならば何と名乗ればいい
﹁彼女も報われないね、命をかけて願った願いなのに全てが無駄に終
﹁黙りなさい﹂
ね。﹂
思い出したということは雪那の願いは無駄になったということだ
ゆきな
したのに君自身は何者か名乗らなかった。
士﹄とは名乗らなかったのだね。シオンは﹃牡羊座の聖闘士﹄と紹介
﹁成程、だからマミや暁美ほむらに何者か問われた時自分の事を﹃聖闘
?
わったのだから。彼女は守りたかったものに裏切られて魔女になっ
た。
黙りなさいと言っている
﹂
まぁこちらとしては好都合だしいいんだけどね。﹂
﹁ッ
!!
君は最凶だ。所詮は違うんだよ。
だったが直ぐに新しい個体が出てくる。
﹁いい加減認めたらどうなんだい
魔法少女と人間が違うようにね。﹂
﹁⋮やめて⋮﹂
﹁やめて
﹂
そんな偽りにほだされてるだけに過ぎない。﹂
﹁君は他人を偽るだけでなく己すらも偽っている。シオンという男も
?
い。﹂
﹂
﹁ナ イ ト 様 の 登 場 だ。で も 君 は ど う 足 掻 い て も ヒ ロ イ ン に は な れ な
遠くからシオンが呼ぶ声が聞こえる。
﹁蘭華ー
そして私はまた現実から目をそらす。
﹁もう⋮⋮やめて⋮⋮﹂
もうこれ以上は聞きたくない。辛い。
!
!
343
?
力 任 せ に 殴 り つ け た。ト マ ト の よ う に 潰 れ た イ ン キ ュ ベ ー タ ー
!
そう言うとインキュベーターは姿を消した。
﹁⋮そんなの⋮私が一番よくわかってるわ⋮。﹂
王子も騎士も待つ資格などないのだから。
﹁ごめんね雪那⋮全部無駄にしちゃった。でも⋮私に救いなんて要ら
ないの。﹂
⋮救いを求める資格などないのだから。
344
﹁サヨナラ⋮かな。今までありがとうシオン。サヨナラ聖域。ごめん
ね皆。﹂
そして私は姿を消した。
345
雪と華
ーー
・
・
質素で何も無い部屋、飾り気の無い服、必要最低限の食事。そんな
﹂
環境の中に私達はいた。
﹁鏡夜ちゃん
そう呼ぶ彼女の名は雪那。同室の少女。
此処は日本を陰で陣取るマフィアの館。世界には光と陰がありそ
の陰の部分。表沙汰にされることは無いが、人は強欲な生き物だ。奴
しんなぎきょうや
隷とでもいうべき下僕がいた。私達もその下僕という名の、実験動物
の1人であった。
みさくゆきな
雪美蘭華⋮本名、神凪鏡夜。
・
・
雪那こと三桜雪那。
蘭華がまだ﹃鏡夜であった頃﹄の話。
﹁鏡夜ちゃん⋮今日は元気だね。﹂
﹁まさか、そんなこと無いよ。﹂
この頃の鏡夜はまだ小さな子供だった。小さな子供、何をされるか
は簡単に想像がつく。幸いにも幼女趣味のヤツらは居なかったので
女としての屈辱を味わうことは無かった。
いや、むしろそのほうがよかったのかもしれないが。
マフィアと言うことは真っ当な家業でも職種でもない。法を犯す
・
・
・
・
・
・
・
﹂
など常識である人間達の集まりだ。その人間達の中で私達は実験台
として生かされていた。
電流流されるか新薬試されるかのどっちかだと思うよ
﹁今日は何されるのかなぁ⋮﹂
﹁⋮さぁ
﹁新薬で一瞬で逝くよりマシだと思うけど⋮﹂
なら﹃モルモット﹄。死んだとしても何の問題もない。
ヤツらは私達のことを同じ人間だとは思っていない。強いて言う
?
346
!
﹁⋮⋮電流嫌いなんだけどなぁ⋮﹂
?
﹁苦しまずに逝ける方がいいよ。﹂
﹁そうとは限らないじゃん。血を吐いて凄く苦しみながら死ぬかもよ
﹂
私が悪いの
﹂
﹁むぅ⋮⋮鏡夜ちゃんのバカ⋮﹂
﹁え
!?
﹁⋮え
日
常
何⋮⋮
﹂
今日の地獄が始まる。そんな時だった。
この時10歳。黄金聖闘士と会う二年前の話。
い。
たわいのない会話。それは異質な内容だったが本人達は気づかな
!?
?
﹂
目の前の光景に目を疑った。真っ赤な液体。妙な匂いとは
その声はどちらものだったのか。
﹁⋮⋮え
けることになる。
霧が晴れ、周りが良く見えるようになった。そしてその後衝撃を受
ない。しかしこの場から動く必要性がないと判断した。
何もせずじっとその場にとどまる。何が起きているのか理解出来
だと受け止める。それ程もう壊れていた。
現実逃避をするのではなく、また取り乱すこともない。冷静に現実
﹁さぁ⋮⋮﹂
﹁⋮⋮ここ何処だろ。﹂
後にその空間を﹃魔女の結界﹄と知る事となる。
おり周りが見えない。なのに肌寒さは感じなかった。
れた壁、目がチカチカする蛍光色の空間。妙な匂い。霧が立ち込めて
いきなり景色が変わった。読み取れない記号のようなものがかか
?
る。
・
・
・
・
れ出た血は足元にまで及び、まるで真っ赤な海の中にいる錯覚に陥
にはたくさんの人間﹃だったもの﹄が転がっていた。その肉片から流
・
それが血溜まりだと気づくのには時間がかかった。血溜まりの中
?
?
347
?
﹂
死んだ人。たくさんの⋮⋮死んだ人。
﹁い⋮⋮やぁぁぁぁあああ
ト リ ガー
どうしたの
前の現実が引き金となる。
﹁鏡夜ちゃん
﹂
カ
﹂
コ
プリズン
﹁ああああああああああああああああああああ
ゲンジツ
しっかりしてよぉ
そして愛する人を見捨てた事を。
﹁鏡夜ちゃん
!
﹂
!!
!?
!!
﹂
﹂
手遅れさ。﹂
?
続ける。
﹁⋮ねぇ、助ける方法は⋮
﹂
?
!
合うならば。﹂
﹁鏡夜ちゃんが助かるならそれでいい⋮⋮
キュゥべい、鏡夜ちゃん
﹁簡単さ、願えばいい。その願いが自分の命をかけるものとして釣り
鏡夜ちゃんを助ける方法は
1人と1匹の会話など鏡夜の耳には入らない。壊れたように叫び
﹁⋮⋮﹂
幸せだろう。﹂
いでもう夢から戻ってこられない。今魔女に殺される方が彼女には
﹁恐らくだけれど何か悪い過去を思い出したんじゃないかな。そのせ
﹁鏡夜ちゃんが⋮⋮手遅れ
い﹄なんて考えられると思うかい
もう現実と幻想の区別すらついていないだろう。そんな人間に﹃願
﹁もう彼女は壊れてしまっているんだよ、何故かはわからないけどね。
﹁⋮無理って⋮⋮﹂
けれど⋮⋮そっちの子はもう無理そうだね。﹂
うに契約する存在さ。二人に契約をしてもらおうと思ってきたのだ
﹁僕はキュゥべい。願いを叶える代わりに魔法少女になってもらうよ
﹁⋮⋮だれ
﹁大変なところに出くわしてしまったみたいだね。﹂
雪那の声が聞こえない。鏡夜とペルセポネとの間で揺れる精神。
ココロ
私は冥界の女王としてたくさんの人間を地獄に送った事を。目の
の妻として生きた時を。
その瞬間鏡夜は全てを思い出した。神として生きた神代を。冥王
!!
!?
?
?
348
?
を助けて
﹂
・
・
・
・
・
・
・
そ う 雪 那 は 願 っ た。願ってしまった。そ れ が 悲 劇 の 連 鎖 を 呼 ぶ と
も知らず。
﹁いいだろう、契約成立だ。﹂
その瞬間、鏡夜の意識が途絶えた。
﹁今日から三桜雪那、君は魔法少女だ。﹂
体の中から小さな宝石が生まれた。琥珀色に輝くソウルジェムは
姿を変え、雪那を魔法少女へと仕立てあげた。
++++++++++++++++
﹁ぅ⋮⋮﹂
﹂
目を覚まして一番最初に目にしたもの。それは真っ白な天井だっ
た。
﹁ここは⋮⋮
さ。
﹁⋮⋮鏡夜ちゃん
﹂
し込み、窓際に置かれた花瓶にいけられた花は色とりどりの鮮やか
真っ白なシーツのベッド。すぐそばにある窓からは暖かな光が差
真紅の髪を持つ少女は体を起こしあたりを見渡す。
?
﹂
?
﹂
?
⋮⋮鏡夜って誰
?
﹁⋮鏡夜⋮⋮ちゃん
﹁鏡夜
﹂
﹂
その瞬間少女が凍りついた。恐る恐るといった様子で顔を上げる。
﹁えっと⋮⋮貴女⋮⋮⋮⋮誰
号泣しながらしがみついてくる少女に、呆然とするしかなかった。
﹁うぇぇーん⋮⋮よかったよぉ⋮⋮﹂
その少女は鳶色の瞳をうるませながら抱きついてきた。
いたような顔でこちらを見ている。
少女の声。何の毛無しに顔を向けると、色素の薄い茶髪の少女が驚
!
鏡夜ちゃんのカゾクだよ
﹂
?
ら
﹁⋮私は雪那だよ
?
349
!
酷くショックを受けたようで、焦点が合わない瞳をさまよわせなが
﹁⋮⋮
!? ?
﹂
﹁えっと⋮⋮話の流れ的に私が鏡夜さんなの⋮かな
﹁まさか記憶⋮⋮ないの
﹂
?
﹁キュゥべい
﹂
どうして
﹂
!?
物﹄。
・
﹂
・
・
・
・
・
﹁それが君の願いだからだよ、雪那。﹂
﹁私が願ったのは﹃鏡夜ちゃんを助けて﹄って事だよ
!
ーーーー
﹁⋮⋮うん。﹂
教えてもらえませんか
﹂
﹁雪那さん、あの⋮私、自分のことがわからなくて。だから⋮⋮その、
﹁きょうやちゃん⋮⋮﹂
﹁⋮⋮あ、あの。﹂
怒るべきなのだろうが、なにぶん記憶がないため怒る気になれない。
の願いとやらによって私は記憶を失ったようだ。本来ならばここで
これはどうしたらいいのだろうか。話の流れからして、恐らく雪那
﹁そん⋮⋮な⋮⋮﹂
かなかったんだよ。﹂
﹁その願いがこの結果を生んだのさ。彼女を助けるには記憶を消すし
話についていけない。
﹂
人ではない。窓辺に座っていたのは﹃真っ白な見たこともない生
先程までは確実に何もいなかった。が、そこには何かがいた。
・
誰もいないことが分かったから。
第三者の声がした。だがそれはありえない。なぜなら、そこは先程
﹁
﹁だからどうして
﹁どうやらすべて記憶が消えてしまったようだね。﹂
雪那は取り乱して、誰かの名前を呼んだ。
!
の名前すら覚えていないことに。
雪那に言われて気がついた。自分が何者なのか、それどころか自分
?
!?
?
350
!?!?
ーーーーーー
ーーーーーーーーー
timeout,
world聖闘士星矢
︻聖域︼
マニゴルドsaid
﹁もう怪我はよいのか、マニゴルドよ。﹂
﹁童虎か⋮﹂
カイロスに遭遇して蘭華とシオンが消えてそろそろ1ヶ月が経つ。
聖域は総力を挙げて二人を捜索したが、見つけることが叶わなかっ
であろうとしぶとく生き残っておると思っておるよ。むしろそうで
信じられない
という事なのだろう。
"
ないとシオンではあるまい。﹂
信じている
堂々と胸を張って答える童虎。それは死んだ事を
のではなく、生きている事を
"
﹁それにじゃ、カイロスが言っておったのだろう ﹃殺すと面倒になる
"
のも事実﹄だと。ならば死んだと考えるより、生きておって帰る手段
?
351
た。聖戦の最中ということもあり、あまり人員が割けなかったのも理
由の一つだが、どれだけ小宇宙を広げても二人の小宇宙を欠片も感じ
なかったのだ。
今ではもう聖域の人間でも諦めている者も多い。
﹁⋮⋮随分としょぼくれておるようだのぉ。﹂
﹁逆に明るいな、シオンが消えたってのに。お前はシオンと親友だろ
﹂
?
られんのだ。﹂
どういう事だ
?
﹁どうしてもシオンと蘭華が簡単に殺られるとは思えん。どんな状況
﹁⋮⋮
﹂
﹁そうじゃの。儂とシオンは親友じゃ。だからなのかもしれんが信じ
?
"
を探しておると考える方が自然じゃ。違うかの
﹁ポジティブ
﹂
だから今の儂等に出来るのはいつ帰ってきてもいいよう
﹂
﹁そうだな。童虎ってポジティブだなァ⋮﹂
に聖域を守る事だと儂は思うぞ。﹂
この場
﹁そうじゃ
﹁そう⋮⋮だな。アイツらが簡単にくたばるわきゃねェ。﹂
?
ノスの部屋へと続く道である。
扉の前に立つと、何の遠慮もなく扉を開けた。
﹂
?
ですって
ふざけないで。蘭華をどこへやったの
?
﹁ヒュプノス、話がある。﹂
どうした
?
﹁凛か。どうした
﹁
﹂
暗く長い通路を一人で歩いていた。双子神の一神、眠りの神ヒュプ
凛side
︻ハーデス城︼
のであった。
頷き合うと、それぞれの立場からできることを考え聖戦に尽力する
れる事はやるさ。﹂
﹁俺はタナトスとの戦いでこのザマだ。出来る事は限られてるが、や
そう、へこんでいる場合ではない。
﹁そりゃそーだ。﹂
﹁前向きにならんとやっておれんよ。﹂
﹁ああ、蘭華の時代の言葉で﹃前向き﹄という意味らしいぜ。﹂
?
"
﹂
どそよ風にも満たないのだろう。紅茶を飲みながらこちらを向く。
﹂
﹁言っている意味がわからん。﹂
﹁しらばっくれるつもりなの
﹁蘭華に手を出す利点がないだろう。﹂
﹁⋮⋮そう、利点がなくなった。だから手を出さなかった。違う
?
!?
352
!
殺気をヒュプノスに向ける。だが神からすれば人間程度の殺気な
"
﹁⋮⋮ほう
﹂
異世界の人間
・
・
・
・
を置いておくことでアテナ陣営をメ
"
・
﹂
・
﹁だから﹃蘭華を消そうとしたカイロスを放置した﹄。そうでしょう
しまった。
だが今は違う。﹃蘭華はヒュプノスにとって邪魔な存在﹄になって
てきた﹄。
・
チャクチャにするのが目的だったのだろう。その為だけに﹃私も連れ
だ。む し ろ
ヒュプノスにとって、蘭華ははじめからどうでも良い存在だったの
?
"
﹁そうだ。﹂
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
﹁けれどカイロスは失敗した。なぜならば﹃邪魔が入ったから﹄。カイ
ロ ス は 確 実 に 蘭華とシオンを消せる時間軸 に 飛 ば そ う と し た。だ が
それは、ヒュプノス。貴方によって邪魔された。﹂
証拠はない。だが正解だと思っていた。
﹁⋮お前は案外頭の回転が早いようだな。だが⋮⋮知らなくとも良い
ことがあることを知っておくがいい。﹂
﹂
﹁ふざけないで。私は蘭華のためならば何だってする。そう、それが
あんた達神を敵に回すことでもね
﹁ここから出てどこへ行くつもりだ
﹂
ると﹃私は殺される﹄。しかも自分でも気づかないうちに。
これはカケだった。私は人間、対する相手は神。一瞬でも気が変わ
ど。﹂
もっとも、神からしたら私ごときどうってことないのでしょうけれ
いけない。だから今限りで眠りの神、ヒュプノスとは手をきる。⋮⋮
﹁のってないわ。けれど﹃蘭華をいいように使う﹄あなた達にはついて
ず言葉を発する。
土気を含んだ声は重く、冷や汗が背筋を流れる。必死に顔には出さ
﹁⋮⋮調子になるなよ人間が。﹂
それだけの覚悟があった。
う。
そう、その為ならば私は喜んで神を敵に回そう。神をも欺き誑かそ
!
?
353
?
﹁行くところなんてないわ。だけどやることはある。それをやるだけ
よ。﹂
背を向ける。面白そうに笑うヒュプノスをみて、カケに勝ったこと
が分かった。
﹁さよなら、感謝はしてるわ。﹂
最後に伝えた。だがこれっきり。
次あった時は敵同士だろう。聖闘士側につくことは不可能だ。聖
闘士側につくには遅すぎる。だったら一人で第三勢力になればいい
だけ。ただそれだけだ。
﹂
まっすぐと外に向かって歩いていると声をかけられた。
﹁リン。﹂
﹁⋮⋮ハーデス
黒髪ロングの少年。青年と言うには幼さが残る顔立ち。清い心を
もち、その為に冥王ハーデスの器となった少年。名をアローン。
﹁お前がヒュプノスの手をきろうと、余の臣下に変わりはない。よっ
﹂
てその冥衣は返さずとも良い。﹂
﹁⋮⋮
私は蘭華と違って聖闘士星矢はそんなにも知らない。だから原作
・
・
・
・
・
・
・
・
・
知識など皆無に等しい。だが、無印と呼ばれるサガたちが出てくる聖
闘士星矢はアニメ版で見ていた。
だからこそ感じた違和感。
・
本当のハーデスならばそんな事言うだろうか
てをきったことを知っているのに、裏切り者を見逃すのか
頼む。﹂
﹁まさか貴方は
﹂
﹁余が言いたいのはそれだけだ。リンよ、ランカを⋮⋮ペルセポネを
?
?
私が言えたのはこれだけだった。満足そうに頷くとそのままハー
﹁⋮⋮はい。お任せ下さい。﹂
に微笑んでいたから。
続けようとした言葉は途切れた。なぜならば、ハーデスは寂しそう
!!?
354
?
この言葉には不覚にも驚いた。同時に違和感を感じた。
!
デス⋮いや、アローンは去っていった。
・
・
﹁あの人は⋮⋮いいや、言っても仕方の無いことか。﹂
アレがハーデスではなく、アローンであったとしても私には関係がな
い。手をきっぱりと切るつもりだったが、考えが変わった。
﹁もう少し、あなたの為に踊ってあげる。﹂
誰の耳にも聞こえない言葉はそのまま暗闇に消えた。
355
私とワタシ
﹁⋮⋮雀⋮﹂
ぽつり、と呟く声。覇気がなく元気もない。
艶のある黒髪にエメラルドグリーンの瞳を持つ少女は、ビルの上か
ら街を眺めていた。
νου
γ
25階の高層ビルから雀を見つけられるわけがないのだが、これま
και σκι
τητα του χρ
ω
π ρ
α;
での驚異的な訓練からこれぐらいは造作もないようになった。
﹁Φω
Αιωνι
λετε ;
δεκτο
ακ
ν α μ ι κ ρ
μη αμαρτ
ποιον
θελα να πιστε
ξερα απαρ
Τι θ
μου κ
Αλλ
Πε
ναι αυτ
ν α ι δ α ε
δα
μ η κ α ι α υ
出来なかったのだが、すべてを思い出した今言語は大した問題でもな
かった。
﹁言語など所詮人間が作った壁に過ぎない。神である私にはなんの意
味もない。﹂
自称気味に笑う。
356
Ε
Η ε λ π
ταν η ελπ
μα θ η , α κ
λτη
ν ν ο ι α τ ο υ
τον εφι
, τ ι η πω
, τ α λ
, ρ χ ε ι σμο
ση
να θα
μα
;
Ε π
τ
Ο κ
Θ α υ π
;
στε
ναι μου﹂
?
?
?
?
?
απαντ
τομο ε
?
?
?
?
?
?
?
?
?
?
?
?
?
?
Παρακαλ
Τι ?
?
?
?
?
?
?
唇から紡がれた言語は日本語でない。以前までは日本語しか理解
?
?
?
?
?
?
?
?
?
?
?
ペ
周りに人影はなく、独り言にしか見えない。だがその言葉はある者
に向けられていた。
﹁思い出してしまったわ。それで、私はどうしたらいいのかしら
ルセポネ、そして雪那。﹂
横向きに吹く風が髪を遊ぶ。
・
・
﹁⋮⋮ッ
・
・
﹂
・
﹂
﹄
それとも魔法少女になって
﹃それともこの世に生をうけてしまったことかな
しまったこと
それとも過去にとんでしまったこと
﹁どこから間違ったのかなぁ⋮⋮こちらにもう一度来てしまったこと
華としての死﹄を意味する。
・
いでおけるほど罪は軽くない。だが死ぬと雪那を裏切ると同時に﹃蘭
・
死んだとしても根本的な解決にはならない。だがこの世に命を繋
﹁私は⋮⋮死んでしまった方がいいのにね。﹂
がペルセポネとしてのココロと雪那がそれを阻む。
だが同時に死ぬ理由もない。蘭華としてのココロは死を望んでいる
今の蘭華には行動するチカラがなかった。生きる理由がなくなり、
?
じ。そして雪那でもある。
﹃ワタシと雪那は同じ。でもチガウ。﹄
﹁私はワタシ。ワタシは雪那。そして私はペルセポネ。﹂
ナゾナゾみたいな言葉。だが全部事実でシンジツ。
シオンと別れてから数日。ひとりで何もすることもなくただ息を
するだけの人形のように生きてきた。数度、シオンが私を探すために
﹂
小宇宙を広げているのがわかったが、見つかりたくなかったので全力
このまま過ごすわけじゃないんだろう
で隠れた。小宇宙を消す事ぐらいなんでもない。
﹁どうするんだい
﹁インキュベーター⋮⋮なぜ居場所がわかったのかしら
牡羊座です
人一人探す事ぐらい
?
ら私を見つけられないのに。﹂
﹁僕がこの星にどれほどの数いると思うんだい
?
?
?
357
?
この声もこのコエも、全てが私でスベテがワタシ。私とワタシは同
頭の中に響くコエ。この声はワタシ。
!
?
?
?
わけないさ。﹂
﹁あら暇人ね。私を探してどうするつもり
﹂
﹂
何をおかしなことを。いまさら話すことなど何も
﹁話をしたいのさ。﹂
﹁⋮⋮話ですって
﹂
問われた問いに目を見開く。だが同時に怒りが湧いてくる。
﹁⋮⋮
﹁そんな事はないと思うけれどね。雪那を救いたくはないかい
無いわ。﹂
?
でしょう
﹂
救えない。そんなシステムを作ったのはあなた達インキュベーター
﹁ふざけないで。あの子は魔女となり消えた。⋮⋮魔女となった者は
?
?
を拒絶した。鏡夜の為に
魔法少女
という業を背負わされたのに、
"
話が見えないわ。﹂
?
﹄ときくインキュベーター。
間に戻せない、それが絶対のルール。なのに﹃雪那を救いたくないか
その事実だけでは何が言いたいのかがわからない。魔女はもう人
﹁けれどそれが何
そう、事実なのだ。鏡夜が雪那を魔女にした。
﹁否定なんてしないわ。事実だもの。﹂
﹁否定したいという顔だね。﹂
﹁⋮⋮﹂
その鏡夜に否定され絶望した彼女は簡単に堕ちた。﹂
"
うモノを拒絶する﹄と言うけれど、君は雪那と魔女の戦いをみて雪那
﹁そう、その通りだよ。だが彼女を魔女にしたのは君だ。﹃人は人と違
!
が存在することを。﹂
﹁抜け道ですって⋮⋮
﹂
決められた規則を破る方法があるというのか
技だ。
どうしようもない﹄のだから。
まるでゲームの裏
を戻せる。だがそれは例外中の例外だ。何故ならば﹃肉体がなければ
確かに聖闘士としての、蟹座としての力を使えば魔女から人間へ魂
?
?
?
358
!?
﹁忘れたのかい ﹃魔女は倒すべき敵﹄というルール、それには抜け道
?
もう既に雪那の肉体は存在しない。魔女の結界内で魔女となった
雪那の身体は結界とともに消滅したのだから。
ならば他に方法は無いのか。
恐らくは真実を知った魔法少女が一度は試みたことであろう。だ
それも否である。そもそも
がその方法は伝わっていない。ならば誰も成功したものがいないと
考えるのが妥当だ。
ならば神としての力を行使するのか
神とは傲慢で自分勝手、人間のことなど気にもとめないだろう。仮に
も気にとめた神がいたとしても、死者の魂を扱えるのは冥界に属する
神のみ。しかも上位神に限られる。よって実質冥王であるハーデス
と妻であるペルセポネ、つまり私だけである。
だが死んだ人間を生き返らせる事は不可能だ。
冥闘士はどうなのか、という問いの答えはシンプルだ。アリアの時
からわかるように、冥闘士とは﹃死んだ人間が生き返る﹄事ではなく、
﹃生きている人間﹄が冥闘士としてハーデスに忠誠を誓った者達であ
る。永遠の命、というものと引き換えに。
神であったとしても、死んだ人間を生き返らせる事はほぼ不可能。
肉体が残っていた場合に限っては器に魂を入れることが出来る。
肉体を作ることも出来るが、それでは﹃人間﹄という括りから外れ
てしまう。
よってこの方法も取れない。
そう、方法などないのではないだろうか。だがそう結論づけるべき
﹂
なのに頭のどこかで否定している。
﹁⋮⋮ありえないわ。﹂
﹁本当にそう思うのかい
・
・
・
・
・
・
・
すぐに否定した。なぜなら、インキュベーターに利点がないから。
﹁そんなこと、奇跡でも起こらない限り不可能とも言えるでしょう。
⋮⋮え⋮⋮﹂
いま、何かが引っかかった。
何の言葉に引っかかったのだろうか。
359
?
妙に含みのある言い方。法螺を吹いているということも考えたが
?
﹁奇跡⋮⋮
﹂
奇跡、という言葉。
そうそれはインキュベーターが最も得意とすること。
﹂
﹁どんな願いも、奇跡ですらも叶えれる。それが己の命と釣り合うな
らば⋮⋮だけどね。﹂
﹁⋮願うならば神をも超えることが出来る⋮⋮と
﹁そうさ。最もこの世界に
神
﹂
が存在するかはわからないけどね。﹂
とが可能だとはどうしても思えなかったから。
信じられなかった。いくら異星人であったとしても、神を超えるこ
?
﹁⋮⋮それはもう一度契約しろ、という事でいいの
"
﹁なぜ私にこの話を
あなた達になんの利益があるの
﹂
もう一度魔法少女という鎖で縛られても構わない。けれど⋮⋮
つい頷きそうになった。雪那を助けることが出来るのならば、私は
きるかは僕にも予想ができない。﹂
﹁君が望むのならばね。だがその願いの代償は計り知れない。何が起
?
"
?
工をしようと思ってね。﹂
﹁⋮⋮私に実験台になれというの
﹂
だったらその方法が取れないように魂を入れるソウルジェムに細
取られるとこちらとしては願いを叶えたのに元が取れない。
一度人間として生きる。この方法は過去には例がない。この手段を
一度願いを叶えて魔法少女にした人間が、魂を肉体の中に戻しもう
いたいと考えているんだ。
﹁そうだね、本題に入ろうか。実は僕達は君にもう一度契約してもら
インキュベーターには感情というものは存在しない。
取引はなんの意図があるのか。
しかしインキュベーターは利益がないと何もしない。ならばこの
ころか完全に不利益だろう。
を体の中に入れたらインキュベーターの行動は無駄になる。それど
願いを叶えて魔法少女にしたとしても、積尸気冥界波でもう一度魂
?
こんなにも輪廻の輪や世界の理の道筋が集まっているのかわからな
﹁君が断らないと踏んでいるからね。それに君の魂は不思議だ。なぜ
?
360
?
いよ。力の収束点とも言えるね。
鹿目まどかも規格外だが君はさらにそれを上回る。エネルギーを
採取するならば君が一番さ。﹂
﹁⋮⋮﹂
輪廻の輪が集中している理由は簡単だ。私が何度も記憶を持ちな
がら転生を繰り返しているから。
世界の理というものはわからないが、力が集まっている理由はわか
る。母である大地神デメテルが私に力をくれること、そして神凪鏡夜
の潜在能力、何より私は神だから。
﹁⋮⋮少し⋮時間を頂戴。﹂
ーー
361
ーーー
ーーーーー
シオンはずっと蘭華を探していた。
こちらの世界に飛ばされてから様子がおかしいとは思っていたが、
いきなり姿を消すという暴挙に出るとは思わなかった。それだけ思
いつめていたのか⋮⋮と思うと同時に、その事情に気づけなかった己
に嫌気がさす。
﹁蘭華⋮⋮﹂
そしてそれは私には言えないことだったのか。
一体何があった、姿を消さなければならないほど思いつめていたの
か
無事でいるのかとか今何しているのかとか、様々な事柄が頭をよぎ
すらも見つからない。
何度も何度も問いかける。だが答えはもちろん返ってこないし、姿
と。
?
﹂
り、その度に隣にいられないことに胸がひどく痛む。
﹁シオンさん、どうでしたか
金髪の魔法少女の巴マミ。学校という場所からの帰りらしい。制
服を着て魔女を探している様子だ。彼女は蘭華がいなくなってから
というもの、魔女だけではなく蘭華も探してくれているらしく、作業
か な め ま ど か
み
き
さ
や
か
効率が明らかに悪くなっている。マミと共に魔法少女の体験をして
い る 鹿目まどか と 美樹さやか も 探 し て く れ て い る の だ が 全 く 見 つ か
らない。
暁美ほむらも探してくれているようだ。意外だったが助かるのは
事実なので引き続き探してもらっている。
﹁見つからん。⋮⋮どこへ行ったのだろうな⋮﹂
﹁必ず見つかります。だから元気だしてください。﹂
聖闘士
﹂
後味が悪いとい
そういうと、彼女は魔女を探しに行ってしまった。その次に声をか
けてきたのは暁美ほむら。
﹁意外だったな。なぜ探してくれるんだ
うのもあるけれど、
の力を貸してもらいたいのも事実だも
﹁明らかに私のせいで彼女は姿を消したのでしょう
?
らいたいから。﹂
その言葉でこの時代の聖域は何をしているのだろうとふと思った。
こちらに来てからゴタゴタしていた為聖域に行けていないが、魔法少
女がこれだけ集まっていて、魔女も活発的に活動をしているこの場所
に気づいていないわけがない。何をしているのだろうか。
右手が首かかっているペンダントに触れた。そう、カノン島の河口
で見つけたあのペンダントである。蘭華のものだとは思うのだが、本
人に確認のしようがないため預かっている。
﹂
﹁⋮⋮不味いわね。﹂
﹁何がだ
﹂
﹁⋮⋮⋮⋮近々巴マミは死ぬわ、魔女に食われて。﹂
﹁なっ
と疑う
362
?
"
の。もしもの時は魔法少女になってしまったあの子を元に戻しても
"
?
事実なのか
"
?
さらっとされた告白に言葉が出なかった。
"
!?
心と
なぜ知っているのか
かっているのか全てを。
まれてしまったのか
と疑問に思う心がせめぎあっていた。
現に現れているらしい。ならば200年という時で新しい魔女が生
からこの時代にワルプルギスが現れる事は無いはずなのだ。しかし
の夜は二百年前、蘭華とマニゴルドとレグルスで倒したのだから。だ
話の中で引っかかったのはそれである。何故ならばワルプルギス
﹁⋮⋮ワルプルギスの夜だと
﹂
なぜほむら自身が魔法少女になったのか、これから起きることが分
ほむらはそんな心情を見透かしたかのように淡々と語り出した。
"
?
﹁行くのか
﹂
考え込んでいるとほむらが立ち上がった。
?
そういうとほむらとシオンはお菓子の魔女を倒す為、また巴マミを
Charlotte
らない、ならば気づかなかったと思う方が心情的にはいいだろう。
ら悪い予感というものはあたるのだから。だが断るつもりはさらさ
予感がしていたが、あえてその予感に気づかないふりをした。なぜな
人々の安全を守るのは聖闘士の使命。断る理由はなかった。嫌な
﹁わかった。﹂
場には美樹さやかがいる⋮⋮彼女を保護してあげて欲しい。﹂
らく顔を合わせた瞬間戦闘になるでしょう。けれど魔女が生まれる
﹁シオン、頼みがあるわ。恐らく巴マミは私を快く思っていない。恐
ら。
最優先といいつつもほかの魔法少女のことも気にかけているのだか
結局この少女は非情になりきれない。﹃鹿目まどか﹄を救うことを
﹁ええ。巴マミではこの魔女は倒せない⋮⋮。﹂
?
救う為に歩き出した。
363
"
charlotte
ほむらとシオンは魔女の結界内を歩いていた。先導するのは勿論
﹂
ほむら。見知った家のように迷いなく歩き続ける様子はとてもでは
無いがこれから戦闘をしようという人間には見えない。
﹁暁美ほむら、聞きたいことがある。﹂
﹁ほむらでいいわ。﹂
﹁ならほむら。ワルプルギスが来るというのは事実なのか
﹁ええ。覆らない未来よ。﹂
﹁そうか⋮⋮﹂
ではない﹄。
ないの。大人しくしていてもらいましょうか。﹂
﹁ッ⋮⋮暁美ほむらさん。悪いけれど今はあなたにかまっている暇は
どかがいた。
必要最低限しか口にしないほむら。視線の先には巴マミと鹿目ま
﹁いたわ。﹂
︵1度聖域に行ってみるべきかもしれんな⋮︶
つ存在を聖域が黙認するとは思えない。
倒せるであろう相手なのに。なにより街がひとつ滅ぶだけの力を持
だが実際に聖域は動いていない。黄金聖闘士が数人がかりならば
くるだろう。リーシェの時がいい証拠だ。
力な魔女だとしたら、インキュベーターは聖域にアプローチをかけて
聖闘士﹄という存在を﹃知っている﹄。ワルプルギスの夜がそれだけ強
その言葉でまた困惑する。少なくともインキュベーターは﹃聖域と
﹁ないわ。聞いたこともないわね。﹂
﹁これまでに聖闘士を見た事は
﹂
るリーシェは聖域に保護されている。なによりもう彼女は﹃魔法少女
やはりおかしい。200年まえに倒したのだ。現に生みの親であ
?
ほむらの姿を見るやいなや、敵対心丸出しで睨みつけるマミ。
何故ここに。﹂
364
?
﹁落ち着けマミ。彼女は敵ではない。﹂
﹁シオンさん
?
﹁説明はあとにしよう。今は美樹さやかを保護するのが先だ。﹂
魔法少女でも魔法少女候補でもないのに結果以内にいるシオンに
﹂
動揺したマミだったが、シオンの提案に首を横にふる。
﹁マミ
﹁す み ま せ ん が 一 般 人 を 魔 女 と の 戦 い に 巻 き 込 む わ け に は い き ま せ
ん。﹂
そういった瞬間、足元から突如出現した黄色いリボンに足が絡みつ
﹂
き身動きが取れなくなった。
﹁マミ
﹁すみません。﹂
どうやらほむらも同じようで、拘束から脱出しようともがいてい
た。その姿を確認するとマミは背中をむけて足を踏み出す。
﹁ここの魔女はほかの魔女と違うわ。倒したと思っても油断しないこ
とね。﹂
マミは振り向きもせずまどかを連れて行ってしまった。
必死に忠告したが、あの様子ではおそらくきかないだろう。
﹁⋮⋮聖闘士も案外アテにならないのね。﹂
﹁まさか問答無用で拘束技をかけて来るとは思わなかったんだ。﹂
以前のシオンならば引っかからなかったのだが、相当疲れているの
か簡単に動きを封じられた。数日まともに眠っていないし気を張り
詰めていたため集中力がきれかけていたのだ。
﹁聖闘士失格だな。﹂
﹁反省するのは後にしてもらえないかしら。このままでは巴マミは死
ぬわよ。﹂
﹁わかっている。﹂
パリンと何かを砕くような音。何の音かとほむらがシオンを見る
﹄という疑問は横
と、目を疑った。シオンの拘束をしていたリボンが粉々に破壊されて
いたのだから。この際﹃リボンなのになんで粉々
に置いておく。
﹁今すぐ巴マミを追って。﹂
﹁だが⋮⋮﹂
?
365
?
!?
ほむらは拘束を解こうとしていたシオンを止めて、マミが行った方
角を見据える。
﹁時間が無いわ。私は自力で解ける。﹂
﹁⋮⋮そうか。﹂
迷ったがほむらの言葉を信じることにした。ほむらに背を向ける
と全力で走り出す。黄金聖闘士は光速で走ることが可能だ。すぐに
マミに追いつけるだろう。
使い魔を光速拳で殴り倒しながら狭い通路を進む。道に迷わない
か心配だったのだがその心配は不要だった。なぜなら一本道なのだ
から。迷いようがない。
大きな扉の前にたどり着いた。恐らくこれが中心部、つまり魔女が
﹂
いる場所なのだろう。シオンは何のためらいもなく重い扉を難なく
開けた。
﹁黙りなさい。﹂
私の中のワタシは実にいいところをついてくる。本当はワタシの
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
言う通り心配でたまらない。シオンが魔女の結界の中にいる事が不
安でまた失うことが怖くて、また大切なものを傷つけなくなくて。
﹃せっかく教えてあげようと思ったのになー。﹄
366
ーー
ーーー
蘭華side
﹁⋮⋮魔女の気配
実は心配でたまらなくて今すぐにでも飛び
?
出して行きたいくせに♪﹄
﹃ホントにそれでいいの
だが、そんなことどうでも良かった。
くないことが起きるヨカン。それを一般的には虫の知らせと言うの
しかし嫌な予感がした。何故かはわからない、だが確実になにか良
分から動くつもりは無いし動く必要も無いのだが。
かしい。いくら何でも魔女が多すぎるのだから。だからといって自
ビルの屋上で感じたものは慣れ親しんだものだった。この街はお
?
﹁教える
﹁⋮⋮
何を。﹂
﹂
子このままだと死ぬよ
﹄
﹃巴マミって言ったっけあの寂しがり屋の意地っ張りな魔女は。あの
は私は知らない。反対に私が知っている事はワタシも知っている。
だけ。同じはずなのに同じではない。だからワタシが知っている事
私とワタシは同じ。だが私がワタシについて知っている事はそれ
?
・
ーー
・
・
・
・
・
らも走り出した。
・
・
・
﹂
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
でもね、﹃願いは一つ﹄だよ♪﹄
方角、シオンとこの街の魔法少女たちがいるであろう場所へ躓きなが
はわからないが私は走り出した。ビルから飛び降りて魔女の結界の
心臓の鼓動がうるさい。なにかに恐怖していた。それが何なのか
キャハ、と笑うとそのまま声は聞こえなくなった。
﹃どういう事だと思う
﹁⋮⋮どういうこと
なものを失うことになる。﹄
﹃だからといってハッピーエンドになるとは限らない ♪ 私 は ま た 大 切
・
くべきではないとわかっているのに言葉を待っている自分がいる。
声の口調が変わった。楽しむような声に、耳をすませてしまう。聞
﹃まあそれは牡羊座が助けるからいいけどさー。でも⋮⋮﹄
タダのあやつり人形でしかないことに。
にする。わかっている、私は誰のためにも生きていないことを。私は
自分はずるいし最低だ。自分が生き残るためにほかの人間を犠牲
ああ、わかっている。わかっているとも。
﹁⋮⋮﹂
でも犠牲にする。私ってホントにずるい。﹄
﹃あ、また切り捨てるんだ。自分が傷つかないように、その為ならば誰
﹁⋮⋮⋮⋮魔法少女となったならばそれは分かっているはずよ。﹂
れるとかあの子もカワイソーに。﹄
﹃魔女に食べられてね。頭からがぶり。同族、いや同じ穴の狢に殺さ
?
?
?
367
!?
ーーー
﹁﹁マミさん
﹂
﹂﹂
をかけることが困難だった。
!
﹁いや⋮⋮﹂
﹁マミ⋮さん⋮⋮
﹂
が今は違う、シオンが助けなければ﹃巴マミは死んでいた﹄。
た、だがそのときは﹃魔法少女となる﹄という助かる手段があった。だ
て﹃死﹄を実感した。インキュベーターと契約した時も死にかけてい
顔は以前のマミではなかった。魔法少女となって、いや生まれて初め
さやかが焦ったように叫ぶ。その声で我に返ったマミ。だがその
﹁シオンさん⋮⋮魔法少女じゃないのに
﹂
そのまま魔女に向かっていってしまったシオン。その顔は怖く、声
マミは体に力が入らないのかへたりこんでしまっていた。
いつの間にか現れたシオンに驚愕しながらも頷くまどかとさやか。
﹁彼女を頼む。﹂
ーーー
ーー
それだけいうとcharlotteに向き直った。
﹁彼女を頼む。﹂
シオンはマミをまどかとさやかの元まで運ぶ。
ていた。
る。されるがままにマミは呆然と焦点が合わない瞳で体を弛緩させ
拳を握り魔女に向かって放った。そして光速で巴マミを掴み離れ
﹁させん
れば十分だ。
どんな過程があったのかはわからないが、現状を理解さえ出来てい
のままでは食べられて死ぬだろう。
鳴。魔女が大きく口を開け、巴マミはショックのあまり動けない。あ
扉を開けて一番最初に聞こえた声は鹿目まどかと美樹さやかの悲
!!!
まどかが心配そうにマミの顔をのぞき込む。
?
368
!
だがマミの顔は恐怖で引き攣っていた。
﹁しに⋮⋮たくな⋮⋮い。死にたくない⋮⋮
﹂
カタカタと震え、俯き恐怖に負けた。当たり前だ、マミは魔法少女
とはいえどこまでいっても少女でしかないのだから。聖闘士とは違
う。
自覚していなかった、
﹃自分は他の人間とは違うから﹄と自身で境界
線を引き周りを寄せ付けなかった。命を失うことの恐怖、﹃自分とい
う存在が消えることの恐怖﹄が思考を、心を侵食する。
﹁いやぁ⋮⋮まだ⋮死にたくないよぉ⋮⋮﹂
寂しがり屋の一人ぼっちと思い込んでいた少女は闇の中に沈んだ。
ーー
ーーー
﹁︻クリスタルウォール︼﹂
クリスタルウォール
ピシ、と透明な水晶の壁が魔女とシオンの間に立ちふさがる。シオ
ンの十八番である防御術の水 晶 の 盾。盾で防ぎながらも光速拳を繰
り出し、地道に魔女の防御力を、体力を削っていった。
対する魔女も一方的に攻撃されてはいなかった。まるで大蛇のよ
うな黒く長い体と鋭い牙を使って、また使い魔を繰り出してくる。攻
撃の種類としてはシオンよりも多様である。
﹁っ⋮⋮﹂
決定打に欠け、先頭に想像以上に時間を取られている。蟹座の技な
いけるか
﹂
いつからか、呼べばすぐに駆けつけてくれる距離に共にいるという
のが当たり前になっていた。その当たり前は、当たり前ではないの
に。蘭華は神だ、本来ならば会うことすら叶わない高貴なる存在。そ
の蘭華と共にいることが当たり前だと﹃勘違いしていた﹄己が浅まし
い。
そのようなことを考える間にも魔女は待ってくれない。次々に攻
撃を仕掛けてくる。
369
!
らばすぐに決着がつくだろうが、牡羊座のシオンでは使えない。
﹁蘭華
?
咄嗟に名を呼んだ。だが反応があるはずがない。
!
charlotteは随分と奇妙な魔女だ。ほかの魔女を見たこ
とがないのでなんとも言えないのだが、明らかに異質だと思う。力は
強い。だが攻撃が幼稚だ。まるで小さな子供のように、傷つけば痛が
もともとは魔法少女であった
るし癇癪を起こしたように攻撃が雑になったりもする。魔女とはこ
んなにも人間らしい面を持つものか
のだから当たり前なのだろうが、それでもなんとも言えない後味が悪
いものがあった。
﹁⋮⋮すまない。助けてあげられなくて。せめて安らかに眠れ。﹂
小さな子供に言い聞かせるように、慈悲に満ちた表情で言葉を紡
ぐ。そのまま小宇宙をもやした。小宇宙が銀河となり、銀河が力とな
る。そしてそのまま自分が持つ最大の技を全力で放った。
これ以上時間をかけることは出来ない。まどかやさやかなど何の
力もない一般人が居るし、ほむらの事もある。自力で拘束を解けると
﹂
言っていたが、使い魔に襲われていないとも限らないのだから。
﹁︻スターダストレボリューション︼
シャルロッテ
小宇宙が光の玉と変わり、その光球が触れたものをすべて無に帰
す。そしてその光が消えるとそこには魔 女は居らず、変わりに小さ
なグリーフシードが残されていた。
グリーフシードを手に取り、マミに渡そうと振り向く。蘭華は魔法
少女ではないためグリーフシードを必要としないが、マミは別だ。ソ
ウルジェムの中に魂がある限り、グリーフシードとの関係は切って離
せない。
だがその時違和感に気がついた。魔女について詳しくないシオン
でも気づくおかしな点。その違和感の正体はすぐにわかった。そし
て魔女と戦う前の嫌な予感が当たっていたことを身をもって知るこ
ととなる。
お か し な 点 と は こ の 場 所 で あ る。c h a r l o t t e が 結 界 を
charlotte
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
作った場所は病院だ。だがここは病院であり、同時に病院ではない場
所。
そ う、 結 界 の 主 を 倒したのにまだ結界の中にいた。そ れ が 違 和 感
の正体であり、そして歴史が変わる決定的な出来事だった。
370
?
!!
﹃さあ、終わりのないゲームを始めよう﹄
∼world聖域∼
凛side
八神凛は完全にヒュプノスの支配下から離れてひと月が経つ。冥
衣を纏ってこそいるが冥王軍からは除籍扱いになっているであろう。
ハーデスが許したとはいえ今や冥王軍の実権を握っているのは双子
神とパンドラ、目障りな存在が消えてさぞ微笑んでいることだろうと
予想できた。
﹁さてどうしたものか⋮﹂
冥王軍には戻れない、だが聖域とは敵対している。何をすべきか思
い悩んでいた。﹃蘭華を頼む﹄と言われて引き受けたはいいのだが蘭
華は行方不明。まぁ頼まれなくても蘭華と一緒にいるつもりなんだ
けど。
﹁むしろあの牡羊座消え去れ、箪笥の角に小指ぶつけて悶えたところ
に脳天にたらいが落ちてきて悶絶すればいい。蘭華にラッキースケ
ベとかしてたらコロス。
いや、牡羊座を暗殺してから泣いてる蘭華を慰めて既成事実を作る
のもアリか。﹂
他の人間が聞いたら全力で引いているであろうことを何のためら
いもなく呟く。勿論そんな事は不可能なので妄想の域を出ない。本
当にやったら蘭華は凛を絶対に許さないし敵にするのは目に見えて
いる。
﹁⋮⋮慈悲深いところはホントにいつまでたっても変わらないんだか
ら。﹂
そんなことを考えていると近づいてくる気配に気がついた。光り
輝く小宇宙は間違いなく聖闘士のもの。こちらには気づいていない
のかのんびりと歩いている。
このままでは鉢合わせする、と瞬時に察した凛は冥衣を脱いで私服
姿になった。質素なワンピースを着るとただの一般人に見える。
﹁あれは⋮﹂
371
何でこんなところに
﹂
近寄ってくる聖闘士に見覚えがあり目を見開く。
﹁え、一般人
事実なのだろう。
じくうのはざま
?
﹁おい待てテンマ
ちょっと待てってば
﹂
それなのにケロリとしているテンマは相当タフなのか運がいいのか。
送られた刺客の中には、そこそこの力を持った者もいたであろう。
︵未だ生き残っているということは案外悪運強い
︶
で信憑性はわからないが、火のないところに煙は立たないというので
を殺そうと次々に刺客を送り続けていると聞く。あくまで噂話なの
ハーデスが無力化されたことによりパンドラはペガサスのテンマ
トリエが何処にあるのか探し当てることは不可能。
完全に閉じ込めた。少なくとも凛の力では助け出すどころかそのア
業を煮やしたパンドラはハーデスを︻時空の間︼にあるアトリエに
おかしいわね。︶
︵天馬星座はパンドラが消そうと動き始めているはずなのだけれど⋮
そう、ペガサスの聖闘士のテンマだった。
東洋の血を引く少年。薄い蒼の青銅聖衣は間違いなく天馬星座。
ブロンズクロス
癖のある黒髪、日に透けると紅く見える赤茶の瞳。聖域では珍しい
!
!
ユズリハも
﹂
まった場合その場で戦闘になりかねない。
﹁耶人遅いぜ
!
﹁一般人
何でこんなところに。﹂
士。どうやらこちらがユズリハらしい。
ている女聖闘士。聖衣が何座なのか判断出来ないが恐らく白銀聖闘
士、耶人。もう1人は見たことがない。長い金髪をポニーテールにし
どうやら二人いるらしい。1人は薄紫色に輝く一角獣の青銅聖闘
ユニコーン
人﹄で済むのだが、過去に面識がある聖闘士とうっかり出くわしてし
の だ ろ う。凛 は 内 心 焦 っ て い た。テ ン マ と は 面 識 が な い た め﹃一 般
後方から走ってくる人影。テンマの知り合いという事は聖闘士な
!
ユズリハは冷静で、当たり前の事を突っ込んだ。何しろここは戦場
だ。冥闘士が闊歩するこの場でただの一般市民が生き残れるはずが
372
!?
!
﹁落ち着け耶人、ただの一般人がこの場にいるはずがない。﹂
!?
ない。
﹁あ、あの。私はシリェーナといいます。黒い鎧みたいなものに身を
包んだ怖い人たちにここまで連れてこられて⋮⋮必死に逃げ出して
きたんです。﹂
咄嗟に出た言い訳がこれだったが苦しい。﹃凛﹄と名乗らなかった
⋮⋮シリェーナ⋮⋮⋮⋮⋮
人違いかな。﹂
のはその名前が聖闘士に知られていると不味いから。
﹁シリェーナ
﹂
ロー
ン
正直どうでもいい疑問だった。仮面付けようが付けまいが関係な
︵というか女聖闘士って仮面付けるんじゃなかったっけ⋮⋮︶
けてきていた。
にユズリハは疑っているようである。眉を潜め探るような視線を向
耶人は疑うということを知らないのか笑顔で挨拶してきた。反対
ユズリハ。﹂
俺は天馬星座の青銅聖闘士テンマ。こっちは一角獣の耶人と鶴座の
クレイン
﹁いや、なんか聞いたことがあると思ったんだけど⋮⋮気のせいかな。
﹁⋮⋮なにか
ろうが正直興味はないが、蘭華が戻ってくる場所を守りたいと思う。
らかであり、ハーデスを止める唯一の存在だろう。私は世界がどうな
ア
ンマを狙っていることからテンマの今回の聖戦における重要性は明
の聖戦の為にテンマを今始末するわけにはいかない。パンドラがテ
不思議そうに何度も名を連呼するテンマ。冷や汗が流れるが、今後
?
聖闘士って
﹂
いし、こちらに害はない。ただ気になっただけだ。
﹁ここは⋮どこなんですか
?
!
ように聞いた。
﹂
ここは戦場だ。﹂
する。どちらの答えも自身でわかっているのだが不審に思われない
巻き込まれただけの一般人なら真っ先に聞くであろうことを質問
?
﹁聖闘士ってのは正義の味方
﹂
﹁なるほど。⋮⋮で
﹁以上だぜ
﹂
?
373
?
?
﹁⋮⋮それだけ
﹁ああ。﹂
?
?
﹂
自
蘭華の方がよっぽど詳しいじゃな
なんなの⋮⋮想像以上に天馬星座って馬鹿じゃない
えっへん、と胸をはるテンマ。呆れて体から力が抜けた。
︵それだけ
︶
分が何者なのかすら言えないの
いの
﹁⋮⋮
!
活していたからこそ気がついたのだ。
?
べきなのか
?
﹂
いやこれならば隠れる必要は無いわね。ならば監
︶
そんな事するなら目の届く範囲、つまり聖域に閉じ込めておけば
︵天馬星座の保護
コーンのエルシド。
力強くも鋭さをあわせ持つ小宇宙は間違いない。山羊座、カプリ
れる様に抑え込まれていたが、互換が鋭い凛は気づいた。
微かに感じた暖かい小宇宙。それはテンマや耶人、ユズリハなら隠
﹁⋮⋮
トは大きい。
それすらも判断がつかない。どちらを選んでもメリットとデメリッ
時間だけが過ぎ去る。このままでいるべきなのか姿を消すべきか、
どちらにしろあちらに私がいる事はバレてる。ならどうする
︶
神が出てきたから今天馬星座と仲が険悪にならない為にも姿を消す
︵ここは気づかないふりをして付いていくべき
いや、冥王に連なる
聖闘士は気づいていないようだ。これは凛が冥闘士として長年生
ない。神々しさと禍々さが混ざり合わさった気味の悪い気配。
双子神の気配でも冥王の気配でもない。だがこの気配は人間では
︵神⋮⋮か。︶
士ではない。この気配は⋮⋮
ふと冥闘士に囲まれていることに気がついた。いや正確には冥闘
?
!?
?
いいはず。だったら何のために⋮⋮
視
?
B〇とか〇モとか
?
え⋮⋮一部の女子し
?
だ。
︶
︵⋮⋮え、まってアレなの
か反応しないヤツ
?
374
! !!
?
一定の距離を置きつつも追いかけてくる気配。まるでストーカー
?
?
凛 の 予 想 は ま る っ き り ハ ズ レ で あ る。エ ル シ ド は 射 手 座 の シ ジ
フォスの救出とテンマの護衛のために追ってきたのだ。だが少ない
﹂
情報の中ではそれを察しろという方が無理な相談である。
﹁シリェーナはどこから来たんだ
人懐っこい笑顔を浮かべ聞いてくる耶人。黙っていればまぁまぁ
﹂
美形なのに喋るとチャラそうな雰囲気が出る。これは女にモテない
タイプだと思う。
﹁分かりません⋮⋮ここはどこなんですか
﹁ハッ
冥闘士だ。﹂
バレているかもしれない。
ずっと不審そうに見てくるユズリハ。彼女にはもしかしたら嘘が
る。ボロは出ないはずだ。
偽れるので助かる。ちなみにフランス語を以前習っていたため喋れ
また嘘が増える。青い髪と瞳は日本離れしているため、適当に国を
﹁イタリア⋮⋮私はフランスに住んでいました。﹂
﹁ここはイタリアだぜ。戦場だけどな。﹂
まさか素直にハーデス城と言うわけにもいかない。
?
人。
﹁シリェーナとユズリハはここに居てくれ。行くぞ耶人
﹁はいはい。﹂
﹂
﹂
一気に2人は茂みから飛び出し、
﹁︻ペガサス流星拳︼
﹁︻ユニコーンギャロップ︼
﹂
!
やったぜ
とニコニコと笑いながら戻ってくる2人。だがその瞬
分を持つが冥闘士はどうでも良いのだ。
た。冥闘士が死んでもなんとも思わない凛。凛自身、冥闘士という身
名も知らない冥闘士は、青銅聖闘士2人の技を一度に受けて倒れ
か短時間で決めるようだ。
遠慮なくいきなり必殺技を放つ。長時間戦闘をする余裕はないの
!
!!
間、周囲の景色が歪んだ。流石に凛も目を見開く。
!
375
?
先頭を走っていたテンマが身をかがめる。流れで茂みに隠れた四
!?
気持ちが悪いほど平衡感覚がおかしくなる。強烈な耳鳴りで頭が
痛い。
凛はこの現象を知っていた。何故ならばずっと昔から戦ってきた
相手だから。
耳鳴りが止むと見覚えのある空間に出る。正確には見覚えがある
﹂
訳では無いが、同質のものなので問題ないだろう。
﹁な、なんだココ
どこだ
﹂
突然起こった現象に付いていけていないテンマが叫ぶ。
﹁冥闘士の攻撃か
出来ない。
から。
︵どうする
逃げることは出来ない。すでに結界の中に入っている私
結界を放置して逃げるまでダメージを追わせなければならないのだ
ならば足を踏み入れたら最後、結界の主である魔女を倒すか、魔女が
追跡者から逃げることは出来そうだが、魔女の結界は不味い。何故
﹁こんなタイミングで⋮⋮
﹂
⋮⋮と本能で悟った。少なくとも私でも力を出し惜しみすることは
そ し て 同 じ 空 間 に は 魔 女。こ れ ま で の 経 験 か ら こ の 魔 女 は 強 い
姿。
そう、この空間は魔女の結界。魔法少女が倒すべき未来の己たちの
﹁⋮⋮魔女の結界。﹂
無いと言えるだろう。
小宇宙のせい、小宇宙が使えるのは味方と敵だけと考えるため仕方が
す。冥闘士の仕業では無いのだが、聖闘士からすれば妙な現象は全て
耶人は現状を理解することを諦めたのか、いもしない冥闘士を探
!
!
1人なら何とかなる⋮でも天馬星座を死なせるわけにはいかない。︶
つまり此処で魔女に殺されるのを待つか、自ら魔女を殺すかの二
択。凛は魔法冥闘士である。魔法少女と冥闘士の力を併せ持つ戦士。
凛 は ハ ー デ ス の 加 護 で ソ ウ ル ジ ェ ム が 濁 る と い う 現 象 は 起 き な い。
つまり魔女と対峙したのは六年前のあの日以来。
376
!?
!?
たちは魔女に見つかっていると考えた方がいい。いざとなったら私
?
6#haif2
﹄
六年のブランクと足でまといが三人。とてもではないが、かばいき
れない。
﹃H#a∼oe∼
!!
︶
!?
ない叫び声。
︵どうしたら
どうしたら皆助けられる
日本語にもフランス語にも英語にも聞こえない、おそらく意味など
立ち体が固まる。
音と音の不協和音。これは魔女の叫び声だ。気味の悪さに鳥肌が
?
何を馬鹿な。﹂
と頭をフル回転させる。
﹁皆を⋮⋮
皆を助ける
"
﹁ッ
﹂
グ
出来ない感情。
バ
無視する﹄という方法もあるのに取れない矛盾。自覚しながらも理解
昔と今の相反する思いが胸を締め付ける。﹃天馬星座を残して後は
思った。
し ま え ば い い と 思 っ た。消 え て し ま っ た 方 が い い の で は な い か と
冥闘士となって蘭華を求めてさ迷い歩いて⋮⋮人間なんて死んで
真実を知る前まで第一に考えていたモノ。
心の中で思った事、
というお人好しな考え。全ての
焦る心と空回りする思考。凛は過去の経験から最善をみつけよう
!?
﹁シリェーナ逃げろ
立っていた。
﹁どうして⋮⋮
わからない。
﹂
﹂
ついさっき会ったばかりの人間を何故助けられる
で何故救おうとする
何故そんなことを考える自分がいるのか。ソウルジェムを握りし
わからない。
命を懸けてま
女 と 対 峙 す る。耶 人 や ユ ズ リ ハ も 同 じ よ う に 凛 を 庇 う か の よ う に
テンマが凛の前に立つ。立ちふさがるかのように凛に背を向け魔
!!
?
?
?
377
"
?
凛は唇を無意識のうちに噛んでいた。
!!
めいつでも変身できる体制をとっているのか。
と考えているのか。
少なくとも震えている少女を見捨
全員を生きてかえそう、守ろう
わからない。
どうして
﹁人を助けるのは当たり前だろう
この震えは恐怖か武者震いか、それとも己の無力さに悔しさが表れ
うのか。何故私は震えているのか。
当然のように言い捨てるユズリハ。同じ女なのになぜここまで違
てるほど聖闘士は非道ではない。﹂
"
勝てない相手に噛み付いて無駄に命
こんな足でまといほっといて逃げればいい
ているのかわからない。
﹁ば ⋮ 馬 鹿 じ ゃ な い の
じゃない。アレには勝てない
﹂
なんで私は心配してるの
を散らす気
なんで
?
!
?
を心配してくれるアンタの顔は好きだぜ
﹂
?
なんで言いきれない
﹁心配なんてしてない⋮⋮わ⋮﹂
どうして語尾が弱くなる
?
﹂
?
⋮⋮気づいていたの
?
モットのリンさん
﹁
﹂
ちちょうせい
﹁シオンから聞いた話よりよっぽど可愛いよ、アンタ。いや、地潮星サ
る。
そんな心の葛藤に気づいているのかいないのか、テンマは喋り続け
?
﹁初めてあった時は石像みたいなヤツだなって思ってたけどさ、俺ら
テンマはそう言うと微笑んだ。
﹁⋮⋮なんだシリェーナって人間っぽい顔できるじゃん。﹂
持ちになる
敵なのに。蘭華を誑かしてる敵なのに。なのに何で私はこんな気
?
かった。私は聖闘士に自分の星である地潮星とは名乗っていないは
耶人、ユズリハ。﹂
ずだ。と言うことは一度見せた冥衣だけで星座を当てられたという
のか
﹁最初っから分かってたさ。なぁ
?
?
378
?
"
!?
?
自分の名前だけではなく、冥衣の称号まで知られているとは思わな
!?
﹁⋮⋮マジかよ。俺気づかなかったんだけど。﹂
﹂
なのに何で背を向
なんで教えてくれないんだ。﹂
﹁⋮⋮耶人⋮私ですら気づいたのにか
﹁ユズリハも気づいてたのかよ
頬を膨らませ面白くないと言う耶人。
﹂
﹁だったら馬鹿でしょアンタたち。私は敵なのよ
けてるのよ。殺されたいの
?
!?
のが私の仕事。
いや、何が違うの
⋮⋮助けたい
ナンデ
私は蘭華がいればそれでい
私は事実しか言っていない。私は敵で敵を殺す
違う、そうじゃない。私が言いたいのはそうじゃない。
?
でも私は⋮⋮私は人を助けたい。
?
﹁違うだろ
本当に蘭華だけを助けようとしてるならなんでアンタは
ら絶対に失いたくない蘭華を護ろうとしたんだ。
ヒカリ
世界は残酷だから。私は弱い、全員を救えるだけの力はない。だか
い。それでいいんだ。ずっとそう言い聞かせて己に暗示をかけた。
なんで私は人を助けようとしてるの
?
向かおうとしてるんだ
﹂
すとん、と心の中に落ちた言葉。
私の願いは⋮⋮私がインキュベーターに願った願いは
換にする悪魔の取引に望んだものは何だった
た本当の願いは何だった
生命と引
まだ蘭華と会う前、まだ私が1人だった十年前。私の願いは、願っ
?
?
?
あちら
こ
ち
ら
魔女と冥闘士の境界線。
?
・
・
それにこれは聖闘士とか冥闘士とか抜きにして私の獲物なの。邪
丸まってなさい。
伝ってもらう理由もないわ。寧ろ邪魔だから後ろでそいつら2人と
﹁黙 り な さ い 天 馬 星 座。ア ン タ に 呼 び 捨 て さ れ る 義 理 は な い し、手
﹁オイ、リン。俺たちも手伝うぜ
﹂
これは強がりであり同時にケジメ。私の線引き。
﹁⋮⋮アレは私の獲物よ。聖闘士は引っ込んでなさい。﹂
!?
379
?
?
?
戦おうとしてるんだよ。俺たちじゃなくてあの化け物になんで立ち
?
魔は許さない。﹂
﹂
﹁意味わかんねぇんだけど。でもアレに一人で戦おうとか無茶もいい
ところだろう
わかってるわよそんな事
!
切ったとしても勝てるかどうかわからない。でもね ﹃魔女を倒すの
私じゃあの魔女には勝てない。冥闘士の力と魔法少女の力を出し
﹁五月蝿いわ
! !?
でちょうだい。﹂
なんでこんな暖かい気持ちになる
う
なんで守りたいって思っちゃ
女を、倒さなきゃならないのよ。だから下がって。私に後悔させない
は魔法少女の使命﹄なの。聖闘士がアテナを守るように魔法少女は魔
!
ン
マ
耶人、ユズリハ、テンマ
皆に死んで欲しくないの
来ない。これは私の、凛としての心だ。だからテンマを守る。耶人と
﹃天馬星座を、人を護りたい﹄という思いをバグだと否定することが出
テ
から。﹂
たわ。だから私の気が変わる前に逃げなさい。コイツは私が止める
﹁天馬星座、アンタのせいよ。アンタのせいで私、おかしくなっちゃっ
私はすべてを切り捨てたはずなのに。
?
!!
ユズリハを、この場にいる人間を守る。
﹂
﹁だから逃げてよ
よ私は
!
打って今を創ろう。
?
蒼いワンピースのような服、白いフリルがふんだんにあしらわれて
藍色に輝くソウルジェムを掲げると変身した。
﹁六年ぶりだけど⋮⋮何とかなるよね
﹂
もう二度と失いたくないから。だから私は今までのすべてを投げ
うことが怖かったんだ。
怖かったんだ。魔女に対してじゃない、守りたいと思った存在を失
震える身体。今ならわかる、何故震えているのかが。
でも私は、それでも私は今の心に嘘をつきたくないから。
しい。巫山戯てる。
冥闘士として失格だ。今更人を守るなんて厚かましい。馬鹿馬鹿
!
380
?
お り、服 の 所 々 に あ る イ ナ ズ マ マ ー ク が ワ ン ポ イ ン ト。黄 色 の カ
チューシャとイヤリングの形になったソウルジェム。
﹁⋮⋮17歳で魔法少女はキツいわね。でもいいわ。﹂
・
・
・
・
・
・
まだ私の一番最初の願いは思い出せない。
﹂
け ど どうでもいい。今 の 人 を 守 り た い と い う 気 持 ち さ え あ れ ば 十
分だ。
﹁恐れるな、前だけを見ろ。
進め、望むものは己で手に入れろ。
己を見失うな。全ては時の中に有りッ
魔女と戦う時に必ず叫ぶ祝詞。これを言い出したのは蘭華だった
のか私だったのか。それすらとうの昔のこと過ぎて覚えていない。
固有武器であるクナイを具現化し告げる。
ー鏡の魔女ー
ーー性質は﹃銷魂と歪み﹄ーー
﹃さあ、終わりのないゲームを始めよう﹄
と。
381
!!
凛ちゃん暴走なう
怒声と血臭
早くッ
ーー
むせ返るような鉄の匂いと身がくすむような大声。
ーー逃げてください
!!
で兎。獲物を狩る猟師と狩られる獲物の関係。
私たちが一体何をしたというのです
!?
刃、そして殺気。
頬から、腕から流れる血は真紅。
ーー
ーー何故⋮⋮何故なのですかゼウス
になるというのです
!
の
敵
去
ーー
﹂
!
地 を 踏 み し め 勢 い よ く 足 の バ ネ を 使 い 蹴 る。鏡 の 魔 女 は 大 き い。
﹁⋮⋮考えても仕方が無いか⋮なら行動するまでよ
た時すらも感じなかった、本能から来る恐怖。そして畏怖である。
華がこちらの時代に来る原因となった砂時計の魔女と対峙した時し
過
は4年。だがこれほどの脅威には八合わせたことがない。それは蘭
鏡の魔女を見て瞬時に悟った事だ。魔法少女として活動していたの
こ
﹃コイツは強い。﹄
凛side
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
頬を流れる涙と嘆きの言葉は闇夜に消えた。
ーーどうしてぇぇえ
かった。誰も助けてくれない。
救いの手を差し伸べる者はいない。それは愛しい者も例外ではな
ーー誰か⋮誰か助けて⋮⋮ーー
嘆きの声は誰の耳にも響かない。
!
このような事をして一体何
その叫び声すらかき消されて届かない。向けられるのは恐怖心と
ーーどうして
ーー
真っ赤な炎と真っ暗な通路。追手に怯え暗闇へと逃げる姿はまる
!
!!
382
!
20メートル程あるのではないか
⋮⋮﹂
﹂
﹁効 率 が 悪 い わ ね
1度に攻撃できる術があるといいのだけれど
コアを見つけ出すのは、砂漠の中で一粒の砂を探すのと同義だ。
しかしそれは弱点が見つかればの話。巨体である魔女から小さな
える方法は決まりがない。弱点をつくのは当然だ。
魔女は一定のダメージを与えれば死ぬ。そしてそのダメージを与
て凛が選んだのは前者のコアをピンポイントで攻撃するもの。
手とは相性が悪い。そしてゴリ押しできる程の力はなかった。よっ
凛の武器はクナイ。投棄系の武器なので接近戦どころか巨大な相
しに力の威力、つまり火力で押し切るもの。
をピンポイントで攻撃し撃破するもの。もう一つはコアなど関係無
二つ。一つは弱点と言える場所、凛自身はコアと呼んでいるが、そこ
クナイを魔女の本体に向かって投げる。魔女を倒す方法は大きく
﹁ハアッ
限られているだろう。細かい魔力制御と度胸が必要だ。
すれば良い。言葉にすると簡単だが実際にやることが出来る人間は
て任意の場所に生み出せる。ならば空中で固定武器を生成し、足場に
原理は単純だ。魔法少女の固定武器は、ソウルジェムの魔力を使っ
飛んだ。
一気に10メートルぐらい登る。そして空中でまた勢いをつけて
?
﹁天馬星座
手伝いなさい
﹂
思いついた。1度に大量の攻撃ができる存在を。
﹁⋮⋮ペガサス⋮成程。﹂
士が3人いる。
周りを見渡す。するとそこには置いてきぼりをくらっていた聖闘
!
!
﹂
上だし、正直に言うとそんなことに気を使っている余裕はなかった。
﹁よしきた。どんとこい
⋮⋮と考えてしまった凛だが、深く考えないようにした。
案 外 ノ リ ノ リ な テ ン マ。そ の 様 子 に 頼 る の は 間 違 い で は な い か
!!
383
!!
つい上から目線になってしまったが仕方が無いだろう。実際に目
!
﹂
そいつで魔女を攻撃して
﹂
﹁私がやったみたいにこの高さまでのぼってきなさい。そしたらアン
タ広範囲殲滅技あるでしょう
﹁いきなり無理難題だけど⋮⋮やってやる
!
!!
無表情になり魔女に向き直った。
︻ペガサス流星拳︼ッ
!
いいが。
﹂﹂
﹂
﹂
﹁光の球と熱気の使い魔と鏡、そしてこのプレッシャー⋮そうか。﹂
どうやら熱を発しているようだ。
﹁あちちちち
ズ︶に襲われているらしい。
どうやら後方待機していた耶人やユズリハも使い魔︵リトルサイ
﹁和んでないで助けてくれよ
正直に言おう。とても可愛らしい。
ピンポン玉ほどの大きさの光球に小さな目と手足がついた使い魔。
﹁ひ、光の球
﹂
ているので、使い捨てとしないことを考えるとエコである。どうでも
という漠然としたものに還元してからもう1度クナイに構築し直し
いるという器用なことをしていた。足場に使ったクナイを1度魔力
ちなみに凛は足元に足場を生成し続けることでその場に停滞して
の間に現れたのやら使い魔が襲いかかっていた。
という高さを落ち始めた。それだけならば問題ないのだろうが、いつ
一方はテンマ。いくら聖闘士でも重力には逆らえず、20メートル
混乱の声が聞こえた。
だが上手くいっていたのは最初だけ。ふた方向から悲鳴にも似た
﹁﹁うわわっ
流星だった。
テンマの放った拳が小宇宙を纏い、白銀の光を放つ。それは正しく
﹁リン、避けろよ
﹂
び上がってきたのだから。足場用のクナイを生成しようとした凛は
力では8メートル前後しか飛べなかったのに20メートルを軽く飛
ぶ﹄ではなく﹃飛ぶ﹄だった。何故ならば魔法少女の凛ですら素の脚
そう言うとテンマは足に力を込めて飛び上がる。それは最早﹃跳
!
?
!
384
!!
?
!!?
大抵の魔女は凛一人でも倒せる。しかしこの魔女は強すぎて凛だ
けでは倒せない。それはそれだけの力を持つ魔女だということ。そ
して魔女がそれだけの力を持つ理由、それは生前つまり魔法少女だっ
た頃強い力を持っていたからだ。魔法少女の力はカリスマと魂の強
さで決まる。わかりやすく言うと、﹃強い魔女ほど後世まで残る偉業
を貸し遂げた女性である可能性が高い﹄という事だ。
熱を発する小形の光球、それは小さな太陽と言い換えてもいい。そ
して、極めつけが鏡だ。それであらかた魔女の正体の予想ができる。
ぶっ
﹁太陽の巫女と呼ばれた存在も、魔女となってしまってはただの災害
﹂
﹂
勝手に納得してないでこっちも何とかしてくれよ
レベルか。報われないわね⋮⋮貴女も。﹂
﹁ちょっと
飛ばしていいのか
﹂
﹁五月蝿いわね⋮⋮殴り飛ばしなさい
﹁アンタ結構適当だな
﹁チッ⋮⋮︻鳴雷︼
ナルカミ
﹂
と避けるためダメージを追わせられない。
クナイを使い魔に向かって投げつける。だが小さな使い魔は軽々
!
りはない。
!!?
全然よけないと普通に雷直撃するから
﹂
﹂
!
い。
﹁当たる
ここでこのタイミングで脱げと
﹁避雷針みたいな金属の鎧着てる方が悪いわ。﹂
﹁脱げと
!!?
﹁騒 々 し い。ち ょ っ と は 黙 る と い う 言 葉 を 知 ら な い の
士って奴は⋮﹂
だから聖闘
る。一応当たらないように調節したので三人が動かなければ問題な
完全にギャラリーから悲鳴が上がったが、聞かなかったことにす
﹁﹁﹁ちょっと待てぇぇぇぇぇ
﹂﹂﹂
に告白すると技を放つ時に技名を言わなければいけないという決ま
深い意味は無い。語呂が良かったのでそう言っているだけだ。正直
雷を縦横無尽に落としまくる。若干著作権に触れそうな技名だが
!
385
!?
!
?
!?
﹁まて、騒々しいのはテンマと耶人だけだ。﹂
?
!
!?
﹁﹁ユズリハ、テメェ1人だけ関係ないふりしやがって
﹂﹂
フガーと威嚇する2人。良くも悪くも似た者同士ということだろ
うか。
﹁⋮⋮暑苦しいわね。﹂
﹁そのあたりは同意だな。﹂
そんな二人を完全にスルーして意気投合し合う女子。魔女や使い
魔の攻撃を避けながら会話するところは、流石は戦士と言うべきだろ
う。
ぴょんぴょんと魔女の周りを飛び回り、手当り次第に雷を落とす。
だが一向に事態は好転しない。
﹁いっその事、削ぎ落とせれば楽なんだけど⋮私の武器はクナイだし
⋮⋮かといって雷じゃなぁ⋮⋮﹂
トン、と地面に降り立つ凛。そのまま魔女に視線を向けながら、声
を張り上げる。
﹂
﹁誰にものを言っているの
﹁﹁﹁おう
﹂
﹂﹂﹂
﹁なら⋮⋮散開ッ
﹂
ら、凛はクナイを構えた。
﹂
カーフをサイコキネシスで操るユズリハ。その三人を横目で見なが
拳を握るテンマと若干引き顔で使い魔を見る耶人、首元に巻いたス
大量の使い魔と凶大な魔女と対峙するのは、4人の少年少女。
﹁上等だ
その言葉を聞き安心したのか、テンマは明るい声で笑う。
?
そして各自の獲物に向かって走り出した。
!
386
!
あの魔女は私がぶっ殺すか
?
﹁ねぇみんな。﹂
﹁なんだ
ら。﹂
?
心配そうに聞いてくるテンマ。凛は鼻で笑い飛ばす。
﹁⋮⋮大丈夫か
﹂
﹁あの使い魔の相手を頼んでいいかしら
?
!
!!
テンマは使い魔をどう攻撃しようか考えていた。
使い魔は光球で、熱を発している。拳で殴り飛ばす戦闘スタイルの
テンマにとって戦いづらい相手だ。
﹂
かといって何時までも避けきれるわけがない。それに敵前逃亡は
テンマが嫌う事だった。
﹁こういう時、デジェルさんが居れば楽なんだけどなぁ
﹁とりあえずやれるだけやってやる
﹂
み。勿論テンマが使えるはずが無く、困っていた。
そんな器用な真似が出来るのは、今の聖域ではデジェルと蘭華の
子の動きを鈍らせる事で凍らせるのだ。
水瓶座のデジェルは凍結技を使う。己の小宇宙で原子に干渉し、原
!
﹁アッチぃぃ
﹂
﹂
拳圧で使い魔を攻撃する。だが⋮⋮
﹁︻ペガサス流星拳︼
先に出るのだから。聖衣を脱がない所は師匠に似なくて良かったが。
砕けろ精神のテンマは、師匠が童虎という事もあり頭で考えず、体が
深く物事を考えない性格なので、拳を握り突き出す。基本当たって
!
マジこっち来んな
﹂
耶人はというと、使い魔から逃げ回っていた。
﹁ちょ、待て待て
!!
それが何なのかを理解した耶人は顔を青ざめ、わなわなと震えだ
ジェクトでも、部屋の装飾品でもない。
何に躓いたのかと思い視線を向ける。だがそこにあったのはオブ
﹁⋮⋮え、ナニコレ。﹂
いるのは自覚していることだろう。
その上を使い魔が物凄い勢いで通り過ぎていく。冷や汗をかいて
から豪快にである。
だが、部屋にあった何かに躓き、思いっきりすっ転んだ。しかも顔
のだから曲がりなりにも聖闘士と言うべきだろうか。
魔女から逃げ回りながら大声で怒鳴る。器用に、攻撃を避けている
!
387
!
⋮⋮救いようのない馬鹿である。
!!?
﹂
す。そんな耶人にお構い無しに襲いかかってくる使い魔を、耶人は見
向きもせず拳で殴り飛ばす。
﹁どういう事なんだよこれは
けんぶしょうせんきゃく
る。
オ
ハ
コ
﹁私と相性が悪い⋮︻雷 の 竜 巻︼
サンダートルネード
﹂
凛はと言うと、やはり困っていた。
け歩き出す。流石は白銀聖闘士、それしか表現のしようがない。
クルリとポニーテールを翻しながら、使い魔だったナニカに背を向
﹁ふう、私の分はこれで終わりだな。﹂
にヒールを履いた女性の蹴りなど一種の凶器だ。
使うものが多いのは、拳よりも威力があるからなのかもしれない。特
足に小宇宙を纏わせて、使い魔を蹴り抜く。女子の聖闘士に足技を
﹁︻絢 舞 裳 閃 脚︼
﹂
敵の弱点を探し、冷静に判断するところはハクレイそっくりであ
ハクレイに直接手ほどきを受けたのが大きいのだろう。
う青銅聖闘士とは違う、白銀聖闘士である。またシオンの師匠である
小宇宙の扱い方が長けている所を見ると、やはりテンマや耶人とい
せることでそれを防いでいた。
スカーフは布なので本来なら燃えるのだが、ユズリハは小宇宙を纏わ
首元のスカーフを使って、使い魔を縛り上げ必殺技を食らわせる。
ユズリハは一番効率よく戦っていた。
耶人の絶叫にも似た怒声が木霊した。
!?
﹁なッ
ハカッ⋮⋮﹂
凛の雷によってダメージを受けたのは凛自身。
魔女はダメージを負わなかった。
かった。いや、その言い方は正しくない。当たったはずなのだ。だが
十八番と言うべき技を繰り出す。だがその攻撃は魔女には当たらな
!
388
!!
自分自身の技をマトモに受け、吹き飛ばされる。身体中に電撃が走
!?
り、一瞬意識が飛かける。
﹂﹂
背中から地面にのめり込みクレーターができる。
﹁﹁リンッ
テンマとユズリハの声が聞こえるが、返事はしない。
未だ筋肉がこわばっている四肢に力を入れ立ち上がる。体が痺れ
ているが、動けない程ではない。
﹁なぜ⋮⋮成程、鏡か。﹂
いくら何でも
そう、鏡の魔女が相手だ。魔女は自分自身の鏡を使って凛の攻撃を
跳ね返したのだ。
﹂
﹁くっそ⋮⋮銅鏡で跳ね返すとかRBGじゃないのよ
反則でしょう
!
理解出来たのか、魔女は高らかに叫ぶ。
!!
﹂
﹂
!
い魔の3分の1を潰すことができた。
魔女は咄嗟に、使い魔を縦にして防ぐ。だがその魔女の行動で、使
い来る。
左手を掲げると勢いよく振り下ろした。水の槍は使い魔と魔女に襲
すると空気中から水が生成され、無数の細い霧状の槍となる。凛は
た。
潮の香りが周囲を包み込んだ。少なくともテンマたちはそう感じ
﹁︻海の怒り︼
ラ ウ ト イー ラ
音に敏感に反応した凛は、全力でキレた。
潮星サモットの冥闘士を舐めるんじゃないわ
﹁⋮⋮ふふ、私に対して音を武器に使うとはいい度胸じゃないの。地
不協和音が衝撃波を生み、辺りが陥没する。
とも耳を塞いだ。
くなる衝動に駆られる。実際にテンマと耶人とユズリハは一瞬なり
ガラスとガラスを擦り合わせたかのような不協和音に、耳を塞ぎた
﹃Hd│#bal∼veuxva;2j
﹄
内心舌打ちする。そしてその様子を見たのか、それとも己の優勢が
み、そしてそのどちらともが効かないのだ。
本格的に詰んだ。凛の魔法少女としての攻撃手段はクナイと雷の
!?
!!
389
!!
だがそれでは納得出来ないのか、凛は地面に片膝をつき右手を地面
に触れる。ゴゴゴ⋮と地鳴りがすると、地表から大量の水が吹き出
﹂
し、空中で大きな渦を作り出した。
ウェルテクスペンテスト
﹁︻大 渦 の 大 嵐︼ッ
マ リー ナ
まさかこれで終わ
もっと私を楽しませて
私に喧嘩売ってこれでネタ切れだ
さあさあどうしたの魔女さん
﹂
!
﹂
早くなん
アハハハハハハ
!
と頷く。
殺しちゃうよ
!!
﹁反射できないでしょ
とかしないと死んじゃうよ
?
だって雷と違って物理攻撃だもの
テンマの意見はユズリハも同じだったのか、二人は顔を見合わせる
ねぇぞ、完全に目がイっちまってるんだけど。﹂
﹁や べ ぇ、リ ン を 止 め る べ き だ よ な。も は や キ ャ ラ 崩 壊 ど こ ろ じ ゃ
よ、もっと怒らせてよ
なんて、リコールものにも程があるわよねぇ
りってわけじゃないんでしょう
﹁ア ハ ハ ハ ハ ハ
テンマの言葉は的を射ていたが、それに気づく者は誰もいない。
見てもポセイドン側の能力だよな。﹂
﹁⋮⋮アレって冥闘士って言うより最早海闘士だよな。どっからどう
けない後方で凛を見つめていた。
凛の豹変具合にドン引きしたテンマとユズリハは、とばっちりを受
魔女に叩きつけた。
中2心満載の必殺技名を叫びながら、ハイライトが消えた瞳で渦を
!
会話を続ける。
﹁だがどう止める
ら冷静にいう。
と半ば答えが決まっているのにわざわざ聞く。
呆れたようにユズリハはため息をつくと、スカーフを首に巻きなが
﹁勿論、﹂
どっちにする
か、見なかったことにして傍観に徹するかだ。﹂
﹁⋮⋮⋮⋮ 俺 た ち の 選 択 肢 は 二 つ。大 怪 我 覚 悟 で あ の 間 に 割 り 込 む
行為だぞ。﹂
あの中に割り込み止めるなど、本当にタダの自殺
壊れたように大暴走する凛を横目で見ながら、テンマとユズリハは
?
?
390
!!
?
?
!!
?
?
﹁﹁後者に決まっている︵よな︶。﹂﹂
﹂
正義の闘士は、この日この瞬間自分の心の中の何かに負けた。
﹁そういえば耶人は
﹂
﹁⋮脈が無い、死んでいるな。﹂
知らないから、理解出来ない現実を突き付けられる。
は誰もいない。魔女という存在をテンマたちは知らないから。
呆然と瞳を丸くしながら震えた声を出すテンマ。だが答えるもの
﹁な、なんだよコレは。﹂
ととなる。
不審に思った二人は耶人に駆け寄る。そして残酷な現実を見るこ
﹁耶人
片隅で呆然と立ち竦んでいる耶人を見つける。
今気がついたようにユズリハは辺りを見渡す。するとこの空間の
?
3人が半ば放心状態で見ていたものは、黒髪の一人の少女の遺体
だった。
391
?
決着と青銅
聖域組3人が固まって動けない間、凛は大暴走しながら水を操り魔
女をフルボッコだドンしていた。
﹁⋮⋮はぁ、疲れたわ。﹂
鏡が割れ、なんかもうかわいそうな感じになってしまっている魔
﹂
女。それを見てようやくスッキリしたのか、攻撃をやめた。
これ何なんだよ
﹁⋮何やってるのよアンタ達。﹂
﹁ちょ、リン
﹂
!
とは明白だ。
﹁これがどうしたのよ
﹂
﹁どうしたもこうしたもねぇだろ
﹁ちょっと耳元で怒鳴らないでくれる
?
!
?
﹂
議なのかさっぱり理解出来ていないので、首を傾げるしかない。
﹁なんでここで女の子が死んでるんだよ
として考えるなら死んだことになるけれど、
人間
別に死んでいるわけじゃないでしょう。そりゃ、その
少女としての生
﹂
と考えれば生きているわ。﹂
﹁⋮⋮どういう意味だ
"
﹁死んでる
!?
意味がわからないのか、首を捻るユズリハ。
?
をやめた生物
"
"
耶人が噛み付くようにリンに問いかける。リンとしては何が不思
のよ。﹂
だから暑苦しいって言われる
何なんだよこれは。﹂
る。怪我がないところを見ると、この魔女の元となった少女であるこ
ことから、この魔女か、この魔女に殺られた魔法少女のどちらかであ
少女の死体があった。明らかに時代が違うであろう服装をしている
ら、放っておいてテンマたちの側まで行く。するとそこには、黒髪の
魔女のダメージは深く、逃げるにもおそらく逃げられないだろうか
たような声に怪訝な顔をする。
三人が固まっているのに気が付き声をかけるのだが、テンマの焦っ
﹁⋮⋮はぁ
!
"
392
?
?
﹂
﹂
そういえばさっきも言ってたな。ん
魔女とか魔法少女とか。﹂
マホウショ⋮⋮
﹁もしかして知らないの
﹁⋮⋮えっと⋮
﹂
もつ魔法冥闘士。﹂
﹂
﹁蘭華は元魔法少女よ。私は魔法少女と冥闘士の両方の能力をあわせ
唯一話についてこれていないユズリハ。
﹁⋮⋮ランカ⋮とは誰だ
するようにうんうんと頷いていた。
わけが分からない、とテンマが問う。耶人も同じ意見なのか、同調
﹁⋮どうしてそこで蘭華が出てくるんだ
﹁⋮⋮蘭華から聞いていないの
ん、なんだそりゃ。﹂
﹁⋮⋮マジョ
?
?
﹂
﹁殺さなきゃ⋮駄目なのか
﹂
らないけどね。でも存在を消すという意味では同じでしょう。﹂
﹁そう、
﹃殺す﹄よ。息の根を止めるの。息をしているのかどうかわか
﹁⋮殺す⋮⋮﹂
﹁そんなのどうでもいいから、早く魔女を殺すわよ。﹂
納得出来ねぇと耶人は微妙そうな顔をした。
﹁なんでディスられてんだよ俺ら。﹂
て理解しなさい。﹂
これ以上簡単に説明することは不可能よ。無い頭をフル回転させ
使いすぎると魔女になる。
るの。そしてその魔法少女って言うのが私や蘭華。魔法少女は力を
そうね、魔女という存在を倒すために魔法少女と言われる存在がい
﹁同族よ。
理解出来ていないのか、顔を引くつかせているテンマと耶人。
﹁⋮⋮つまり
になるなんて皮肉だけどね。﹂
少女は力を使い果たすと魔女になるの。魔女を倒し続けた結果、魔女
﹁そしてそこで転がってる死体は魔法少女の成れの果てよ。私達魔法
?
魔女の正体を知ったからか、悔しそうに凛に問いかけるテンマ。そ
?
393
?
?
?
?
?
れは耶人も同じなのか、しょぼんと落ち込んでいる。ユズリハはある
程度割り切れているのか、顔色が悪いが何も言わない。
﹁正義の味方である聖闘士の言葉なのか、耳を疑うわ。アレを野放し
そうならばそんな感情捨てなさ
にしておくと、どれだけこの後犠牲者を出すか分からない。
それともあの魔女に同情したの
い。魔法少女になったならばいつかは辿り着く宿命、私だってそう
よ。それが分かっていて契約し、日々戦っているの。それを同情され
るなんて不愉快だわ。
いわゆるあの姿は、自業自得なの。たった1度の奇跡を求め、魂を
対価に差し出した私達に対する罰。﹂
ーーだから同情なんてしないで。私たちを哀れまないで。
凛の声が響いた。それは凛の本音であり、同時に蓋して隠してきた
己の気持ち。
その時だった。テンマと耶人とユズリハの3人は目を見開き、凛は
ポカンと自分に起きた現象を見ていた。
﹁⋮⋮かはっ⋮﹂
まだトドメをささずにいた魔女の攻撃が、凛の身体を貫いた。
鏡と太陽を操る巫女、その魔女がビームサーベルのように光の筒を
﹂﹂﹂
凛の心臓を貫いていた。
﹁﹁﹁リンッ
胸から流れる血は真紅で、ぼんやりとその赤に魅入っていた。
ぐらりと揺れる身体。地面が急接近し、軽い衝撃があった。痛い、
ただそれだけ。テンマ達が走ってくるのが見えるが、軽口を叩く余裕
などなかった。
医者ですら匙を投げるような大怪我、それは死を免れぬ致命傷だっ
た。
﹁それが人間だったら⋮だけどな。﹂
鈴の音を転がした様な声。明らかに四人とは違う第3者の声に、凛
を除く全員が身構える。
394
?
焼け付くような熱さ、そこからは表現のできない痛みが凛を襲う。
!!!?
﹂
だが3人には目で追えない黒い影が眼の前をよぎった。
﹁え⋮⋮
放つ。
パレワウングイス
"!!
﹂
?
﹂
まなくなるだろう。
二人の間で火花が散る。勿論それは比喩だが、そのうち例えでは済
﹁蘭華に近づく奴に警戒するのは当然でしょう。﹂
﹁初対面だろうが。﹂
﹁五月蝿い。アンタのことは嫌というほど知ってるわ。﹂
﹁自己紹介ぐらいさせてくれよ。﹂
年は慌てること無く、凛の拳を受け止めた。
口の中の血を吐き捨てると、凛は少年に向かって拳を突き出す。少
ば痛みなんて感じないのね。﹂
﹁それは同意見。まだ身体が動くとか一種のホラーよ。その気になれ
﹁本当に化物だな。心臓を貫かれてまだ立ち上がるか普通
でカウントダウンを始めたはずの凛が立ち上がったのだから。
ぎょっとしたのはテンマ達である。何故ならば致命傷をおい、死ま
﹁うる⋮⋮さいわよ。﹂
口が悪い少年は凛にそう言葉を浴びせた。
﹁いい加減起きろよ。そんなもんじゃ魔法少女は死なないだろうが。﹂
の瞳が凛を見据える。
少年はそう呟くと、踵を返しテンマ達に向かって歩いてくる。水色
﹁せめて安らかに眠れ、日本の巫女。﹂
一つ。
上げ砕け散った。その場に残されたのは純黒のグリーフシードただ
白銀の爪が魔女を襲い、トドメを刺す。魔女は声にならない悲鳴を
﹁
﹂
その少年は右腕を振り上げ、魔女を殴り付ける。そのまま必殺技を
上り詰めていた。
聖衣は青銅、だが動く速さは青銅聖闘士の限界を超え、白銀の位まで
青髪短髪の少年が魔女に向かって駆け出す。白と蒼を貴重とした
!?
﹁ちょっと待てよ
!
395
"
ここで忘れられた3人がストップをかける。
有り得ねぇよ。﹂
﹂
こんなヤツと
﹁え、二人は知り合いなのか
﹁知り合いぃぃ
﹁お前ら仲悪いな
てか凛、大丈夫なのか
﹂
﹁こちらのセリフよ。知り合いだなんて虫唾が走る。﹂
?
!?
?
少なくともテンマと耶人は信じられなかったようで、怪我の手当を
と叫ぶ。
﹁鬱陶しいわね。大丈夫と言ったら大丈夫なのよ。﹂
﹁そうだそうだ、コイツは首をはねても死なないだろう。﹂
﹁黙れ餓鬼が。﹂
﹁おーこわ。﹂
﹂
﹂
﹂
凛と少年は一種のコントのようなやり取りをしていた。
﹁てか⋮お前、何でここに
知り合いか
耶人の呆れとも不可解とも取れる疑問。
﹁そもそも誰だ
﹁俺は、鳩座コルンバのカルト。青銅聖闘士だ。﹂
青髪青眼の少年、カルトは笑顔でそう名乗った。
﹁候補生仲間だよ。てかいつの間に聖闘士になったんだ
﹁お前らが脱走騒ぎを起こす直前。﹂
今は
﹂
・
﹁そう身構えるなよ、知ってるからさ。今は連れ戻しゃしないよ。﹂
・
それ見たカルトはケラケラと笑い否定する。
連れ戻しに来たのかと、テンマと耶人、ユズリハの三人は身構える。
下、白銀以下は知らないのだ。
アテナも教皇も知っているので脱走とは言わないのだが、黄金より
テンマは、表向きは聖域から脱走しているという事になっている。
?
?
唯一この場で、少年を知らないユズリハが首を捻る。
?
!
だ が 心 臓 を 貫 か れ た 人 間 の い う こ と な ど 誰 が 信 じ ら れ る だ ろ う。
﹁ええ。死にはしないわ。﹂
!?
﹁そ、そうか⋮⋮って
"
"?
あとついでにマニゴルド様にも。﹂
396
!?
?
﹁そう、
﹃今は﹄だ。アテナ様と教皇様と長、そしてデジェル様に感謝
しろよ
?
﹁マニゴルドはついでなのか⋮⋮﹂
﹂
﹁まぁな。テンマ、お前の護衛に耶人とユズリハ、あとエルシド様が付
いていたんだが、﹂
﹁なんだそれ初耳だぞ
カルトの言葉を遮り突っ込むテンマ。カルトはため息をつくと、テ
ンマにチョップを食らわせる。
﹁人の話を聞けっての。﹂
﹁お、おう。﹂
凛はそんな二人を横目で見ながら、あほらしいと怪我の手当を始め
た。魔法少女の衣装を解除し、ワンピース姿になると自分のソウル
ジェムを胸に当てる。蒼色のソウルジェムが輝き、怪我を癒した。
﹁んで、話を戻すけど。黄金聖闘士を含めた三人が護衛ならばまだ良
いかと放t⋮じゃなくて傍観していたんだが、﹂
﹁今放置つったよな。﹂
﹁魔女の結界に入り込んじまった事にアテナ様が気づかれて、手が空
いていた俺を結界内に送り込んだって訳だ。﹂
﹁な、なる程。﹂
納得したテンマ達だったが、1人だけ納得しない者がいた。凛であ
る。
﹁そ れ な ら 護 衛 の エ ル シ ド を 送 り 込 め ば よ か っ た ん じ ゃ な い の か し
ら。何故アンタなのよ。﹂
﹁エルシド様なら、今四神と戦闘中だ。﹂
﹂
﹁へぇ⋮⋮って、今とんでもないことをさらっとカミングアウトした
わよ
﹁四神⋮⋮まさかあの
﹂
確かにタナトスが動き出したとしたら、配下の神が動き出すのは自
?
﹂
然な流れ。あの妙な気配と視線は神のものだったのかと理解する。
﹂
﹁なら助けないと
﹂
﹁アンタバカ
﹁え
?
!
397
!?
四神と戦っているなどと言うカルトに、凛は一応突っ込む。
!?
?
テンマはお約束のように、エルシドを助けに行こうとした。
﹁あのね、四神はペガサスを狙っているの。エルシドは恐らくだけど
馬鹿なの死ぬの
﹂
肩を竦めてそう言うカルトに、疑問符を浮かべる凛。
﹂
﹁カルディア様とリーシェだよ。﹂
﹁誰が
いだろう。﹂
﹁人手不足ら事実さ。だが神を相手に1人で戦わせるわけにはいかな
﹁意外ね。聖域は結構人手不足だと聞いていたのだけど
﹂
そのとばっちりを受けているのよ。それなのに目標がノコノコと出
﹂
ていってどうするつもり
﹁でも
?
﹁エルシド様の方にも助っ人が行ってるさ。﹂
?
その爆弾発言に、テンマ達の悲鳴に似た驚愕の声が上がったのは言
うまでもない。
398
?
!
?
シリェーナとペルセポネとマミ
worldまどか☆マギカ
シオンside
お菓子の魔女、シャルロッテは倒したはずだ。現にグリーフシード
は手の中にあるのだから。ならば何故まだ﹃魔女の結界の中にいる﹄
魔女の結界は、持ち主である魔女が消滅したら消え去る筈だ。蘭華
からも、ほむらからもそう聞いている。だが今いるこの空間は明らか
﹂
に魔女の結界と呼ばれる空間だ。
﹁⋮どういう⋮ことだ
﹂
?
では、この魔女は誰だ
?
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
プロローグ
ま
。
苦しみと憎しみ、絶望といった負の感情の螺旋に囚われた命。人に
魔女の生が始まる。
なかった未来の後者。巴マミという少女の命が終わり、巴マミという
そう、巴マミという少女は﹃魔女となった﹄のだ。それは考えたく
どちらも考えたくなかった未来だった。
ミが魔女との戦闘で死ぬという最 悪と、魔女になるという最 悪
エピローグ
そうとしか考えられない。そう、そうとしか考えられないのだ。マ
﹁⋮⋮マミ⋮なの⋮か⋮⋮
﹂
は異質すぎた。ではこの結界の持ち主はシャルロッテでは無いのだ。
シャルロッテの結界ではない。あまりにもシャルロッテの結界と
壁にはHAPPY BIRTHDAYの文字が描かれている。
た、プレゼントのように包装された箱が無数に転がっており、屋敷の
上にケーキやティーセットが並ぶんでいる光景が目に入った。
振り向くとそこには、パーティ会場のような屋敷の中でテーブルの
﹁⋮⋮魔女⋮だと
ちたくなかった。だから、わざとゆっくり振り返った。
・
れは戦士の行動として失格だ。だが頭の中の最悪の状況に確信を持
嫌な予感がする。だからこそ、シオンはゆっくりと振り返った。そ
?
?
399
?
﹂
仇なす人類の敵。そう、アテナの敵。
﹁⋮⋮どうして⋮
魔女になってしまったのだ、と。答えのない問いを投げかけるしか
できない。勿論帰ってくる言葉などない。
﹁マミ、どうしてなんだ。﹂
助けたいと思った命は全て手からこぼれ落ちていく。戦士である
以上、そんな感情はどこかにしまっておかなければならないのは分
かっている。感傷に浸れば、死ぬということも十分理解している。
だが身体が思うように動かない。動けと、鹿目まどかと美樹さやか
を助けなければならないと思うのに、呆然と巴マミだったものを見つ
めるしかできない。
その魔女は黄色のリボンをシオンに向けて放つ。風を切る音が煩
い。まるで刃のようにシオンを狙った攻撃は、動けないシオンに効果
的だった。
﹂
避けなければと思うのに、鉛のように重くなった体は回避行動を取
らない。
﹁シオンさん
Ochiro απ
κεραυν
﹂
?"!!!
できないうちにリボンがシオンに襲いかかった。
﹁
?
Παρακαλ
πεσε κ
τω
?
﹂
"!
少女の声。
﹁
?
﹁らんか⋮⋮
﹂
のだ、間違えるはずがないのだ。
出すはずがない。だがこの声は間違いない。何年一緒にいたという
嘘だ、と心の中で自分が否定する。彼女がこんな殺気に満ちた声を
?
﹁蘭華なのか⋮
﹂
は間違いなく、蘭華だった。
魔女とシオンに間に降り立った一つの影。艶のある長い黒髪と顔
?
それなのに確信が持てない理由、それは瞳の色だ。蘭華の瞳は翡翠
?
400
?
その声はまどかのものなのか、さやかだったのか。それすらも判別
!!!
その時。金色の光が魔女に落ちた。ギリシャ語で紡がれた言葉は、
"
"
﹄と聞く前に、蘭華は
のようなエメラルドグリーンだった筈だ。だが、今目の前にいる少女
の瞳は藤色。透明度の高い紫色をしている。
﹁⋮シオン⋮﹂
悲しそうに、ポツリと呟かれた言葉は名前。
﹁ごめんなさい⋮⋮﹂
泣きそうな顔で紡がれた謝罪の言葉。﹃何を
魔女に向きなりおり、右手をかざした。
﹁
雷よ落ちなさい
﹂
そしてそのまま蘭華は雷を落とす。
ださい。そして、貴方も逃げて。﹂
﹁シオン、頼みがあります。あの二人を安全なところまで逃がしてく
?
﹁蘭華
﹂
﹂
素人が口を挟むことではない、大人
﹁⋮⋮いいえ、逃げてください。あの魔女は私が相手をします。﹂
﹁バカを言うな。蘭華を一人残せるわけがないだろう。﹂
それでも今は、問うべきことではない。
色が変わっているのかとか⋮
聞きたいことは多々ある。今まで何をしていたのだとか、何故瞳の
"!
﹁分かっていないのは貴方です
﹂
しく引きなさい
﹁なっ⋮⋮
!
﹁理解出来なかったのですか
た。
!
・
・
・
・
・
・
邪魔なのです、消えなさい。﹂
物分りが悪い、いい加減に⋮﹂
﹁⋮⋮だが
﹁っ
﹂
蘭華は、まるで敵を見るかのような険しい声色で﹃邪魔だ﹄と言い切っ
てくれるアンドロメダの少女は、ここには居なかった。同じ顔をした
普段の蘭華からは考えられない言葉。いつも笑って、胸を暖かくし
?
かったからだ。
信じられなかった。蘭華から引けと言われるなど考えたことがな
!
!
!
けてきたからだ。
蘭華の言葉は途中で止まった。痺れを切らした魔女が攻撃を仕掛
!
401
"
﹁まどか、さやか
﹂
無事か
﹂
﹂
﹁あ そ こ で 戦 っ て い る 彼 女 は
あの時弾丸を受け止めた子でしょう
ほむらも予想外だったのか、数秒固まってしまった。
﹁なんですって⋮
﹁⋮巴マミが魔女となった。﹂
teではないわ。﹂
ればこの状態というわけ。⋮⋮何があったの、アレはcharlot
﹁巴マミの拘束が急に解けたのよ。胸騒ぎがして急いで駆けつけてみ
﹁ほむら、無事だったか。﹂
すらこの状況が理解出来ていないらしい。
むら。紫と黒を基調とした服、黒髪を靡かせながら歩いてくる彼女で
そんな時だった。硬い声で半ば呆然と声をかけてきたのは、暁美ほ
﹁これは、どういう状況なのかしら。﹂
をかけた。
二人の一般人の存在を思い出したシオンは、瞬間移動で移動して声
!?
?
果たしてアレは、蘭華と呼べるのか
・
・
み、そして戦士としての未来を選んだ。例えそれが茨の道であったと
そんな事、今まで考えたことなどなかった。修復師として修行を積
ーー私は争い事には向いていないという事を。
シオン
た。だが分かってしまったのだ。唐突に悟ってしまった。
12、3の少女を戦わせ、己は後ろで傍観するなど考えられなかっ
る﹄という選択肢など存在しない。いやその筈だった。
随分と心に響く言葉だった。黄金聖闘士であるシオンには﹃逃げ
逃げろ
・
うけれど、ここにいるよりはマシだわ。﹂
﹁そのふたりを連れて逃げなさい。結界の中からは出られないでしょ
れていた。
ほむらの紫の瞳がシオンを射抜く。それは憐れみと侮蔑が込めら
"?
402
!
!?
﹁⋮⋮分からない。蘭華である筈だ、だが⋮﹂
?
﹁随分と変わったわね貴方。﹂
"
しても後悔はしないはずだったのだ。だが気がついてしまった。
自分は優しすぎるのだ、という事を。そして救いようが無いほど馬
鹿だということ。
マミが魔女になったと知って、動けなくなった。数日前に知り合っ
た少女であり、それ以前に交流などなかった。運命のイタズラが無け
れば存在を知ることすらなかっただろう。だが知ってしまった。だ
理解したつもりでいた
。
から﹃守りたいと思った﹄。それは同情だと分かっていた。いやそれ
では正しくない、同情だと
同情などではない、己と重ねていたのだ。幼き
"
こんな考えは聖闘士として相応しくない。
と神の争いに首を突っ込むなどバカのすることだ。
人間と神、抗うすべなど存在しないではないか。蘭華も神なのだ。神
き っ と こ れ か ら も カ イ ロ ス の 手 の 中 で 踊 ら さ れ 続 け る の だ ろ う。
﹃分岐点﹄
スの言葉が頭から離れない。
その生き方をこれから先も後悔することはないだろう。だがカイロ
今まで、地上の愛と平和、そしてアテナを守る為だけに生きてきた。
ても結果が変わらぬことぐらい。分かっているのだ。
た。歩みを止めてしまった。わかっているから、自分がいてもいなく
それを唐突に悟ってしまった。だから足は、手は止まってしまっ
い。
他人に与えられた大義名分。自分を慰めるためだけのものでしかな
結末の上で必死に足掻き続ける人間などいる訳が無い。﹃願い﹄すら、
レー ル
命をかけてまで叶えたい願いに必ず絶望する、そんな決められた
から。
ステムは賞賛に値するものだ。必ず元が取れるとわかっているのだ
望みのため自分の命を差し出した少女達。インキュベーターのシ
だけなのだ。
を通じて見ていただけだ。願いが無残に壊れ崩れるさまを見ていた
頃、冥闘士の手を取り師を裏切ろうとした自分をマミや他の魔法少女
実際にはどうだ
"
守りたいと思ったマミを失った。蘭華に拒絶された。そして世界
403
?
からも拒絶される。こんなの理不尽だ、私が何をしたというのだ。
嘆きたい衝動に駆られる。だがそんな資格はない。何故ならば、そ
れ以上に嘆きたいであろう人間がいるから。
﹁いや、戦う。﹂
﹁何故。﹂
﹁⋮⋮理由は無い。正義、平和、安全⋮そんな言葉で片付けるのは簡単
だ。﹂
きっと今までならそう答えただろう。
﹁だが私は⋮何を理由として戦うべきなのか見失ってしまった。己が
あまりにも無力なのだと、自覚させられた。
だが戦う。ありふれた、建前の理由が欲しい訳では無い。ただ﹃戦
いたいと思ったから﹄戦うんだ。不十分な動機だとしても、私にとっ
てそれが最大の目的。﹂
・
・
・
・
・
﹂
ああ、そうだ。理由なんてない。目的を見つけることが目的で戦う
・
なのかな。
?
404
のだ。
・
﹁それの何が悪い
⋮⋮それと、マミさんは⋮﹂
てればいいってことでオーケー
﹁あのー、よく分かんないんだけどさ⋮私とまどかは後ろでずっと見
が声をかける。
ポツリと呟かれた言葉。その時、ずっと黙っていたまどかとさやか
﹁⋮変な人間ね。﹂
理解出来ていないのだからほかの人間が理解できる道理がない。﹂
れ以上でもそれ以下でもないんだ。自分ですら何を考えているのか
﹁もとより理解など求めていないさ。私は私以外の何者でもない。そ
﹁⋮⋮理解できないわ。﹂
というのだ。
えられる。終点はどこかわからない、だがそれを知ることの何が悪い
ルの上しか走れないことがわかっていたとしても、走るスピードは変
ら、
﹃戦う目的を探す人間がいてもいいじゃないか﹄。決められたレー
人のあり方などそれぞれだ。十人十色、考え方もそれぞれ。だった
?
﹁⋮⋮﹂
今すぐにでも逃げ出したい。マミさんが死んで
﹁⋮何が起きているのかわかんない。でも、きっとこれは目を背けて
たらダメなんだね
だったら今は理解することな
情報多すぎて頭がパンクしちゃいそうだけ
るってこと信じたくない。信じられないよ。
でも事実なんだよね
んて全部放り投げて、生き残る。
ど、でもこれは変わらないんでしょう
?
魔女、助けを期待しないで。﹂
﹁仲 間 は 助 け る の が 当 た り 前 だ ろ う
巴マミに向かって、聖闘士と魔法少女は歩き出した。
﹁⋮行こう。﹂
た。
彼女は私と同じだと思ったから。だから、勝手ながら頼る事にし
﹁そうだな。だが、私は思った通りに動く。ただそれだけだ。﹂
﹁勝手な自論を私に押し付けないで欲しいわ。﹂
い。﹂
足りないものは補い合えばい
﹁⋮勝手にしなさい。でも、魔女を甘く見ない事ね。私も初めて戦う
を救う術を諦めたくない。
あることはわかっている。でも、だからといって諦めたくない。マミ
確かに素人だ。魔女との戦闘経験などない。一番の足でまといで
﹁ああ。後ろに居てくれ。﹂
開いている。だが、さやかの言っていることは最もだ。
さやかの言葉。彼女らしからぬ言葉だった。現にほむらも目を見
救ってください。
だから、助けてください。私とまどかを、そしてこの場にいる皆を
も生き残らなきゃダメなんだよね。﹂
﹁キュウべいが何を考えてるのか分からない。でも、理解するために
﹁ええ。魔法少女は魔女となる。これは事実よ。﹂
きっとこれは偶然なんかじゃない。﹂
⋮⋮かっこ悪いこと言ってるのは分かってる。でも怖い。だけど、
?
?
405
?
ーー
ーーー
蘭華side
・
・
嫌な予感はしていたのだ。いや違う、嫌な予感しかしていなかった
のだ。
魔女の結界を病院で見つけた。入口を探す時間が惜しかったので、
それ
結界の一部を叩き壊して無理やり侵入した。魔法少女では不可能な
﹂
ことでも、小宇宙を使った人間には容易いことだった。
﹁なんで、どうしてこんな嫌な予感がするの⋮
理由などない、ただそう本能で悟った。唯それだけなのに、
が頭から離れない。
﹁このっ、執拗い
﹂
は雷を落とすことで撃退していた。
どこが中心部なのか分からない。使い魔が襲いかかってくるが、蘭華
結界の中を全力で走る。正規のルートで侵入した訳では無いので、
"
?
間で別の場所から魔女が現れるわけがない。そこから導き出される
つまりそれは、新しい魔女が現れたことと同義。そして、こんな短時
魔女の結界が消えた瞬間、別の﹃新しい﹄結界が敷かれたのだから。
とだ。だが安心するにはまだ早かった。
魔女の結界が消失した。つまり、この結界の魔女が死んだというこ
と、その時だった。
原因なのだが、焦っている蘭華はその事実に気が付かない。
壁を殴りつけてぶち壊す。その目立つ行動が使い魔を呼び寄せる
た蘭華は、その間に一気に駆け抜けた。
が埃と塵、砂煙を巻き上げ当たりが見えなくなる。即席の煙幕を張っ
拳を握り、小宇宙を燃やす。そして全力で地面を殴りつけた。爆風
せる対象でしなかった。
感が頭の中で空回りしている蘭華には、増え続ける使い魔はイラつか
消しても消しても、無限に湧き出てくる使い魔が頭にくる。嫌な予
!
406
"
答え、それは﹃誰かがこの場で魔女となった﹄事だった。
では﹃誰﹄なのだろう。現時点で魔法少女なのは知っているだけで
2人。巴マミと暁美ほむらである。しかし、暁美ほむらが魔女となる
可能性は低いだろう。何度も何度も同じ時間を繰り返している彼女
は思慮深く、慎重だ。まともとは言えない精神を持っている彼女が
魔 女 と な る の は ほ ぼ 有 り 得 な い。そ し て 同 じ よ う に グ
﹁嫌な予感とはこれか⋮
﹂
となると巴マミが魔女となったことになる。
う。
リーフシードを失って魔力を使い切る、ということもあり得ないだろ
絶望して
"
蘭華
﹃雪美蘭華﹄だ。
イレギュラー
つまり、
は、本来ならば存在しないはずの存在なのだ。正
て赤子のようにリセットされた精神状態から生まれた人格、それが
雪那が魔法少女になった時、鏡夜は記憶を失った。記憶を失って、全
まれ変わった人間の名前が﹃神凪鏡夜﹄。親友の名前が﹃三桜雪那﹄。
私は、冥王ハーデスの妻ペルセポネの生まれ変わりである。その生
7年間は幸福だった。だが﹃蘭華﹄という人格、それは作り物だ。
た10年間は地獄、そして記憶を失ってから﹃蘭華﹄として過ごした
前世を思い出すまでは考えられなかっただろう。﹃鏡夜﹄として生き
そう簡単に割り切れてしまう自分かいる事実、それはきっと自分の
別に誰が魔女になろうと構わない。親密な関係では無いから。
!
ランカ
は目覚めてしまった。いや、覚
ギリシャ神話を知っている人間ならわかるだろうが、セイレーンは
る。シリェーナとは、ロシア語でセイレーンの事である。
シリェーナ、つまり八神凛の事だが、彼女とは前世より繋がりがあ
"
シリェーナ
八神凛
"
醒したと言った方が正しいだろう。
ついた﹃鏡夜﹄がいた事で、
ば、シリェーナが巻き込まれることは無かった。無様にも生にしがみ
鏡夜が記憶を失った時、鏡夜は命を絶つべきだったのだ。そうすれ
﹁私は、生まれてきてはいけなかった。﹂
の私。
しく異分子と言えるだろう。生まれるはずのなかった人格、それが今
"
407
"
"
元はペルセポネに仕えていたニュムペー︵妖精︶なのだ。
シリェーナ
としての記憶があったのだろう。だから、蘭華の
つまり、前世で主従関係にあった。いつからかは分からないが、凛
には
ワタシ
﹁私は、いてもいなくても同じだった。誰も
私を必要としない。﹂
蘭華
を見ない、だれも
"
う
分からないまま歩を進める。嫌な予感は、まだしていた。無意識
シオンの小宇宙を感じ、足を向ける。行ってどうするというのだろ
なかった。思わなかった。
思い出さなければよかった。そうすればきっとこんなことは考え
"
くなかった。だが受け入れざるをえないではないか。
して生きてきた私は、蘭華が存在しないものという事実を受け入れた
偶然出来上がった人格、それは分かっている。だが、7年間蘭華と
﹃蘭華を見ている人は誰も居なかった﹄
は無い。それが蘭華の中でずっと暗い影を落としていた。
りでなければ、見向きもしなかっただろう。蘭華自身を見ていた訳で
その事実はきっと覆らない。凛は、蘭華がペルセポネの生まれ変わ
ポネだった。﹂
﹁けれど、凛ちゃんが見てたのは私じゃない。蘭華じゃなくてペルセ
そばから決して離れようとしなかった。
"
入り込んだ。
一番最初に目に入ったのは金髪。その次に見えたのが魔女。シオ
よ
落
ろ
κεραυ
ち
﹂
ンは魔女の攻撃を避けようとしなかった。その瞬間、蘭華の中の何か
が弾けた。
雷
Ochiro απ
?
"!!!
シオンの驚いたのような顔が、だんだん困惑げなものに変わる。だ
向けた忌むべき存在に殺気を向け、何のためらいもなく攻撃した。
気がつくと蘭華は、ギリシャ語で言葉を紡いでいた。シオンに刃を
﹁
?
408
"
のうちに走り出していた蘭華は、飛び込むかのように結界の中心部に
?
"
平
伏
Παρακαλ
な
さ
πεσε κ
い
τω
﹂
"!
し
?
が蘭華は攻撃を続けた。
﹁
?
悪魔にだって魂を売ろう。その想いが体を突き動かす。
シオンを護るためなら蘭華は鬼になろう。愛する人の為にならば
?
蘭華
には人を愛する資格など無いのに
だがここで我に返った。
ーー
"
﹂
た蘭華は、シオンにあわせる顔などない。
﹁らんか⋮⋮
﹁蘭華なのか⋮
﹂
?
﹁シオン、頼みがあります。あの二人を安全なところまで逃がしてく
そして、貴方の想いに応えられなくてごめんなさい。
敵陣のペルセポネでごめんなさい。
騙していてごめんなさい。貴方の敵でごめんなさい。
﹁ごめんなさい⋮⋮﹂
だから、こういうしか出来ない。
﹁⋮シオン⋮﹂
無くなれば消える。それが運命。
鏡夜が立ち直るまでの﹃繋ぎ﹄である、即席の存在だから。役目が
のかはわからない。だがきっと蘭華は2度と表に出てこられない。
いう本来の人格が表に出てくるのか、それともペルセポネが出来くる
壊れかかっている証だからだ。蘭華という人格が消え去ると、鏡夜と
その時愕然とした。蘭華なのか
という言葉は、蘭華という人格が
そんな心情に気が付かないシオンは、まだ疑問の声をあげる。
できなかった。
聞かれて、蘭華でもあり同時に鏡夜やペルセポネでもあるので反応が
?
?
シオンの困惑の声は蘭華を責めているように感じた。蘭華か
と
とペルセポネは同一人物であって別人だ。だが許されない罪を犯し
シオンの前から去ったのは、それが理由だったはずだ。蘭華と鏡夜
る。そんな罪人が人を愛していいわけがない。
消え去る心なのだ。そして雪那を魔女へと負いやった罪の証でもあ
と。蘭 華 は 作 り 物 の 人 格 だ。つ ま り 本 来 の 鏡 夜 で は な い。い ず れ
"
?
409
"
ださい。そして、貴方も逃げて。﹂
頼める立場ではないことはわかっている。だが、今は一般人を巻き
﹂
込むわけにはいかないし、何より⋮シオンに魔女と戦って欲しくな
雷よ落ちなさい
かった。
﹁
﹁蘭華
﹂
しく引きなさい
﹂
素人が口を挟むことではない、大人
﹁⋮⋮いいえ、逃げてください。あの魔女は私が相手をします。﹂
うと同時に気がつく。変わってしまったのは自分だということに。
視線を向けてそう言い切るシオン。シオンは変わらないのだな、と思
さっきまで訝しむような顔とはうって変わり、はっきりとまっすぐ
﹁バカを言うな。蘭華を一人残せるわけがないだろう。﹂
る。魔女との戦いで同情は命取りだ。危険な目に合わせたくない。
シオンは優しいから、きっとこの魔女の元となった巴マミに同情す
"!
﹁分かっていないのは貴方です
!
﹂
になってしまった。
﹁なっ⋮⋮
﹂
﹁理解出来なかったのですか
﹁⋮⋮だが
・
・
・
・
・
邪魔なのです、消えなさい。﹂
物分りが悪い、いい加減に⋮﹂
シオンに、何故喧嘩腰で邪魔だと言
﹂
?
る。
﹁⋮さぁ、終わらない狂った悪夢を始めましょう
ゲー ム
えている状況じゃないし、資格もない。だから気のせいだと割り切
離れていってしまったことで少し胸が痛む。だがそんなことを考
レポートで移動した。
シオンは後ろで震えていた二人の少女の存在を思い出したのか、テ
ら、シオンが目を見開いたのもわかる。
い放っているのかが分からない。自分自身でも驚愕しているのだか
私は何を言っているのだろう
﹁っ
?
!
!
・
ただ危険な事に巻き込みたくないだけなのに、思いの外強い物言い
違う、突き放したいわけじゃない。素人などと思っていないのに。
!
!
?
!
410
"
ステージはここ、プレイヤーは巴マミ。敵は蘭華。
﹁頑張って、私を殺してよ。﹂
自ら死ぬ事は出来ない。だが殺されることならばできる。蘭華と
いう人格が消える前に、神凪鏡夜という生を終わらせたかった。
蘭華は小宇宙を燃やすと、魔女に向かって駆け出す。そして拳を振
り上げ、振り抜いた。
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