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5.1.2 天気図記録・低気圧状況
5.1.2 天気図記録・低気圧状況 川上 あづさ Weather FAX report 1.はじめに 域を航行していた為、風力 6 を超え時化ていた。 我が国で船舶向けに運用されている気象 FAX は、 24 日以降は追い風になり順調に航行した。 大型船舶や遠洋漁船はもとより、最近は小型漁船 やセールポートの情報収集源としても利用されて いる。天気図によって、各地の天気や、風向・風 力(風速) ・高気圧・低気圧・前線の位置などが分 かり、さらに、前日・前々日の天気図を見比べる ことで、低気圧の経路や発達・衰弱、高気圧・前 線の移動、天気の分布等が分かる。海上交通や水 産活動では、ある程度の気象の推察により、荒天 を事前に回避する事ができ、海難防止に役立てる 事ができる。 Fig.5.1.2-1 11 月 23 日 0:00UTC 天気図 本報告書では、海鷹丸航海中の5つの海域で受 1 信した FAX の天気図について報告する。 Fig.5.1.2-2 はトロール操業後半にインドネシ 2.方法 ア沖で受信した天気図である。 (12 月 21 日 0: 海鷹丸が航海中に受信した気象 FAX のうち、出 00UTC)この天気図を見ると熱帯性気候である事が 港直後揺れがひどかった 11 月 23 日、インドネシ わかる。オーストラリア上方にある低気圧の中心 アでのトロール中の 12 月 21 日、マグロ延縄中の にひっぱられるような風向であった。ジャワ島西 2 月 7 日、フィンスタビライザーを使用した 2 月 方での操業中は天気も良く暑かったが、東方では 19 日、揺れが激しかった 2 月 27 日の 5 つの海域 雨が多く寒かった。雨期の影響で雨が多かったの で受信した FAX について低気圧・高気圧・前線の ではないかと思われる。 動きをその前後に受信した FAX より調べ天気図上 にその動きを記入した。 受信状況の違いにより、種類の異なる天気図が いくつか受信されていた場合、最も明瞭な天気図 を選んで使用した。天気図上では、低気圧の動き を青の矢印、高気圧の動きを赤の矢印、前線のそ の後の位置を黄色で示した。 3.結果 Fig.5.1.2-1 は日本出港直後の日本近海で受信 Fig.5.1.2-2 12 月 21 日 00:00UTC 天気図 した天気図である。 (11 月 23 日 00:00UTC)この 天気図を見ると西高東低の冬型の天気配置である ことが分かる。日本北方の低気圧から延びている Fig.5.1.2-3 はマグロ操業中に受信した天気図 前線の後ろ側は大陸からの北の風をうけている。 である。 (2 月 7 日 12:00UTC)操業は経度 150° また、本州の沖には GW(Gale Warming)の強風 に沿うように行った。この付近は上方にある高気 警報が出ている。11 月 21 日∼23 日はこの強風 圧から噴出すような風向であり、操業中は北東の 64 風を受けていた。操業は南半球から北半球をまた さまったが、29 日は少々時化た。この天気図を見 いで行ったが、北半球に入ると気温も下がり少し ると分かるように多く前線があり、等圧線の間隔 時化気味だった。 も密なところが多く揺れる原因が多い為、時々時 化を避けるように航行していた。 Fig.5.1.2-3 2 月 7 日 12:00UTC 天気図 Fig.5.1.2-5 2 月 27 日 18:00UTC 天気図 4.考察 Fig.5.1.2-4 はハワイ沖で採泥中に受信した天 気図である。 (2 月 19 日 12:00UTC)この日この航 今回天気図を使用し、本船の航路と気圧配置を 海初のフィンスタビライザーを使用した。天気図 調べてみて低気圧や前線が天候・風・海況に影響 上方にある低気圧を中心に等圧線がかなり密にな を与え、さらにそれらは本船の航行にも関係する っている為にうねりが強かった。しかしフィンス ということを改めて確認できた。荒天を避けた安 タビライザーを使うほどではなかったと思われる。 全な航行を行う為には天気図から低気圧や前線の では何故使用したのかと言うと、甲板に多くの実 位置や動きを把握し、過去の天気図を比べてある 験機材を積んでいたため揺れで壊れる事がないよ 程度の天候の予想をたてる事が必要である。その うにとの理由からのようだ。 ためにも気象 FAX の受信を怠らず、過去の天気図 をデータとしてきちんと蓄積させておくことが重 要である。 参考文献 1)福地章:海洋気象講座,成山堂書店,1987, pp96-107 2)松村照男著:図解雑学気象のしくみ, ナツメ社, 1999,pp52-53,pp118-119 Fig.5.1.2-4 2 月 19 日 12:00UTC 天気図 Fig.5.1.2-5 はハワイ出港後に受信した天気図 である。 (2 月 27 日 18:00UTC)この日は時化てい て、この航海で最大の動揺 34 を記録した。食器が 割れたり、パソコンの液晶が割れたりと大惨事だ った。この日風力8を超え、平均風速は 18〔m/s〕 を超えた。 この日前線をまたぐ様に航行しており、 前線からの影響であると思われる。28 日時化はお 65