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本邦空港の気象特性と その留意点 - 航空操縦学専攻

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本邦空港の気象特性と その留意点 - 航空操縦学専攻
東海大学工学部
航空宇宙学科航空操縦学専攻
2015 年度卒業研究論文
本邦空港の気象特性と
その留意点
――低視程障害現象の事例研究を通して――
2016 年 2 月
学番:2BEO1117
氏名:沼田 潤
指導教員:新井直樹
目次
第1章
序論 .......................................................................................... 1
1.1
研究背景 ......................................................................................................... 1
1.2
研究方法 ......................................................................................................... 3
1.3
本論文の構成 .................................................................................................. 3
第2章
低視程障害現象とは ................................................................. 4
2.1
低視程障害現象をもたらす気象現象 .............................................................. 4
2.2
欠航要因としての低視程障害と日本の地理的制約 ......................................... 4
第 3 章 低視程障害現象の事例 ............................................................... 6
3.1
島原湾からの暖湿気流入と熊本空港の滑昇霧(2015 年 4 月 3 日).............. 6
3.2
やませによる北東気流と青森空港の滑昇霧(2014 年 7 月 3 日) ................. 9
3.3
釧路空港の海霧(2014 年 6 月 5 日) .......................................................... 12
3.4
日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)と新潟空港の豪雪(2012 年 2 月 2 日) ....... 16
3.5
南岸低気圧と羽田空港の大雪(2013 年 1 月 14 日)................................... 19
第4章
本邦空港の気象特性と運航上の留意点についての考察 .......... 26
4.1
気象特性①:滑昇霧 ..................................................................................... 26
4.2
気象特性②:海霧(移流霧) ....................................................................... 27
4.3
気象特性③:大雪 ......................................................................................... 28
4.4
考察と今後の課題 ......................................................................................... 29
謝辞 ...................................................................................................... 30
参考文献 ............................................................................................... 31
第1章
序論
1.1 研究背景
本研究は、本邦空港における低視程障害現象についての事例研究を通じて、その
気象特性や運航上の留意点を理解し、より良い運航を実現する一助とすることを目
的とする。気象現象は日々の運航に多大な影響をもたらす要因の一つであり、航空
気象についての理解は運航乗務員にとって不可欠なものである。とりわけ本研究が
扱う空港ごとの気象特性や運航上の留意点を理解することは、本邦航空会社におい
て運航を担う運航乗務員にとって有意義かつ重要なテーマであると考える。その理
由としては以下の 3 点が挙げられる。
① 日本において顕著な気象の特性や運航上の留意点を理解することは、日本とは
異なる気象環境を有する海外で訓練を実施し、国内航空会社にて運航を担う運
航乗務員にとって有益であること。
より良い運航の実現のためには日本における就航空港の持つ気象的特性を十分に
理解しておくことが肝要であることは言うまでもない。しかし近年では、基礎訓練
を実施するソースの多様化により、日本と運航環境の異なる海外の訓練所で基礎訓
練を修了した運航乗務員も少なくなくなった。その場合、実運航で初めて日本の運
航環境を経験することとなり、ともすれば日本の気象や運航上の制約に対する理解
が不足しているということにつながりかねない。例えば、本専攻が基礎訓練を実施
している米国ノースダコタ州グランドフォークスは、周囲に山岳地帯が存在しない
平坦な地形を有している。加えて、同州は北アメリカ大陸のおよそ中央に位置し、
周囲を海洋に囲まれている日本の運航環境とは大きく異なっているといえる。そう
した地理的要因から生じる気象的な相違は少なくなく、視程障害という観点から本
邦空港が持つ気象特性を理解することは有益であると考える。
② 本邦航空運送事業における欠航事由の約 1/4 を視程障害が占めていること。
国土交通省航空政策審議委員会による 2007 年の統計(図 1.1)によれば、本邦航
空運送事業の欠航・ダイバートの約 40%には気象が関係している。とりわけ視程障害
による欠航は欠航要因全体の 24%を占めており、これは機材繰り・機材故障に次ぐ第
二の欠航事由となっている。航空運送事業の社会的役割を鑑みれば、視程障害によっ
て発生している欠航やダイバートがその利用者や日本経済に与える影響は看過でき
ないものであろう。したがって、航空気象のなかでも特に視程障害をもたらす現象に
対する理解を深めることは重要である。
1
図 1.1 年平均就航率と自空港気象による欠航要因
(国土交通省航空政策審議委員会第 7 回航空分科会資料より)
③ 視程障害に起因する航空事故が数多く発生していること。
現在まで、低視程障害に起因する航空事故が少なからず発生している。例として、
1977 年 3 月に発生したテネリフェ空港における滑走路上でのジャンボ機衝突事故は
視程障害が一因となり発生した 20 世紀最大の航空事故として広く知られている。ま
た近年では、2015 年 4 月に広島空港で発生したアシアナ航空 162 便の着陸失敗事故
も視程障害による影響が示唆されている。これらの視程障害が発生した背景には空港
ごとの地形的その他の特性が関与していたと考えられ、そうした留意点に対する理解
は不可欠である。
2
1.2 研究方法
本研究では、日本国内の空港において発生した顕著な視程障害現象についての事
例研究を通じて、その気象特性や運航上の留意点を明らかにする。本研究で取り上
げた低視程障害の事例は以下の通りであるが、これらの事例研究においては、各国
内航空会社の欠航便データ等の資料、Google map の地形データ、各空港や官公庁
が公開する統計データ等の資料、気象庁発行の各種天気図を使用して解析をおこな
う。また気象情報可視化ツール(Wvis)を使用しながら、当該の気象現象が生じた
時点の発生状況およびその理由を考察する。
1.
2.
3.
4.
本研究が取り上げた低視程障害現象の事例
島原湾からの暖湿気流入と熊本空港の滑昇霧(2015 年 4 月 3 日)
やませによる北東気流と青森空港の滑昇霧(2014 年 7 月 3 日)
釧路空港の海霧(2014 年 6 月 5 日)
日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)と新潟空港の豪雪(2012 年 2 月 2 日)
5. 南岸低気圧と羽田空港の大雪 (2013 年 1 月 14 日)
5.南岸低気圧と羽田空港の大雪(2013 年 1 月 14 日)
1.3
本論文の構成
本論文では、まず第 2 章で本研究のテーマとして取り上げる低視程障害現象につ
いて日本の地理的特徴と関連付けながら紹介したのち、第 3 章で国内の空港におい
て発生した顕著な低視程障害現象の具体的事例を取り上げる。最後に、第 4 章にお
いて本研究が取り扱った 5 つの事例を通じて明らかとなった本邦空港の気象特性と
運航上の留意点について考察する。
3
第2章
低視程障害現象とは
2.1 低視程障害現象をもたらす気象現象
視程障害をもたらす気象現象は①霧(FG)、②降水現象(RA/SN)、③煙霧・煙
(HZ/FU)に大別される。
① 霧
霧は地表近くの視程を著しく悪化させ、航空機の離着陸に多大な影響を及ぼす重要
な気象現象であり、気象規定では、視程1km 未満と定められている。それ以上の視
程の場合はもや(Mist)と呼ぶ。さらに、霧はその発生要因によって滑昇霧、蒸気霧、
移流霧(海霧)、降水霧などと区別されている。
② 降水現象
降水現象による視程障害は降水に伴う雨粒や雪粒によって引き起こされる。一般に
降水のうち霧雨と雪は雨に比べてより視程を悪化させるといわれている。特に豪雪が
降ると視程が 0~数メートルにまで悪化する場合がある。
③ 煙霧・煙
工場排気や自動車の排気ガス、黄砂等の浮遊微粒子も視程障害をもたらす一因とな
る。しかし、本研究では煙霧・煙は研究対象とせず、上述した霧と降水現象に着目し
て研究をおこなった。
2.2 欠航要因としての低視程障害と日本の地理的制約
視程障害は航空運送事業の欠航要因の 1/4 を占めるものとなっているが、これには
日本特有の地理的制約が関係しているものと考えられる。日本には山岳地帯が多く存
在し、地形的な制約により計器進入方式における精密進入を設定できる空港は限られ
ている。そのため米国のように滑走路の両側に ILS が設置されている空港はほとん
ど存在しない。加えて、CAT-2 や CAT-3 のような高カテゴリーILS 運用空港も 9 つ
の空港(新千歳・青森・羽田・成田・中部・関空・広島・熊本)に限られ、これらの
空港においても、片側滑走路にのみ高カテゴリーの ILS 進入が設定されている場合
も少なくない。こうした制約により、VOR アプローチや周回進入等の非精密進入が
実施されている空港が多く、進入限界高度が高く設定されていることが視程による欠
航につながっている一因であると考える。
4
図 2.2.1
図 2.2.2
高カテゴリー運航の概要(国土交通省)
高カテゴリーILS 運用空港(国土交通省航空局)
5
第 3 章 低視程障害現象の事例
3.1 島原湾からの暖湿気流入と熊本空港の滑昇霧(2015 年 4 月 3 日)
2015 年 4 月 3 日の熊本空港は濃霧に覆われ、多くの運航便が影響を受けた。例え
ば伊丹空港発・熊本空港行きの JAL2389 便(CRJ 機)は熊本空港における霧による
低視程のために着陸が出来ず、福岡空港への目的地外着陸をおこなった。
熊本空港は西に島原湾、東に阿蘇山系の山岳地帯が存在する標高 193m の高遊原
台地に位置する。滑走路は RWY07-25(3000)の 1 本であり、RWY07 については平
成 7 年 9 月より日本では初めてとなる ILS CAT-3 の運航が開始されたことも特徴的
である。
図 3.1.1 は 4 月 3 日 06UTC と 12UTC の地上天気図である。北海道の西に前線を
伴った中心気圧 986hpa の低気圧が解析され、06UTC 時点では東北東に 45kt/h で移
動していた。熊本空港では 12UTC にかけて寒冷前線の通過が見られた。
図 3.1.1
3 日 06UTC(左)と 12UTC(右) 地上天気図 (気象庁)
図 3.1.2 は 3 日 06UTC における 925hpa の風向の GPV データを気象情報可視化
ツール(Wvis)により可視化したものである。前線の暖域側に位置する熊本を含む九州
地方全域に南西風が流入していたことがわかる。
図 3.1.3 は同時刻の 925hpa における相当温位を示したものであり、相当温位が
333K を超える範囲を可視化している。九州地方の南西側には高い相当温位を持った
暖湿気の存在がみてとれる。この暖湿気が前述した南西風に乗って熊本空港の周囲に
流入していたものと考えられる。
6
図 3.1.2
図 3.1.3
2015 年 4 月 3 日 06UTC 925hpa 風向 (Wvis)
2015 年 4 月 3 日 06UTC 925hpa 相当温位 (θe >333K)(Wvis)
図 3.1.4 は 08UTC 前後の熊本空港における卓越視程の時系列である。01UTC ま
では 10km 以上の視程が報じられていたが、02UTC から断続的に視程が悪化し、
08UTC 前後には 600m と最も悪くなった。加えて、この視程障害による卓越視程の
時間変化も大きく、短時間で数 1000m から数 100m にまで変動している。
7
図 3.1.4
卓越視程の時系列(熊本空港 METER より作成)
では、なぜこのような視程障害が発生してしまったのだろうか。図 3.1.5 は熊本空
港を南西から見た Google Earth によるイメージ図である。冒頭に述べた通り、熊本
空港は標高 193m の高遊原台地に存在している。とりわけ熊本空港南西側には急陵
な台地傾斜が存在し、地形図をみると一気に 100m 程度標高が高くなっている。した
がって、島原湾からの暖湿気が熊本空港の南西に存在する台地傾斜を滑昇したことで
滑走路付近に滑昇霧が発生したことが視程障害につながったと考えられる。
図 3.1.5 熊本空港と高遊原台地による傾斜 (Google Earth)
8
3.2 やませによる北東気流と青森空港の滑昇霧(2014 年 7 月 3 日)
2014 年 7 月 3 日の青森空港における霧の事例を取り上げる。この日の青森空港は
概して晴天に恵まれたが、12UTC 頃から霧の影響で一時地上視程が 900m 程度まで低
下した。
青森空港の周囲には空港の南東側に八甲田山系の山岳地帯がそびえ、北側には青森
市街と陸奥湾が位置する地理的環境にある。運用滑走路は RWY06-24 の一本であり、
RWY24 側には ILS(CAT-3)が整備されている。青森空港の ILS CAT-3 運用は国内空
港では熊本、釧路、成田に次ぐ 4 番目である。
陸奥湾
津軽半島
夏泊半島
青森市街
青森空港
図 3.2.1
青森空港の地理
(Google map)
図 3.2.2 は 3 日 12UTC の地上天気図である。オホーツク海には 1018hpa の高気
圧が存在し、停滞している。このような気圧配置は春季から夏季に良くみられ、青森
をはじめとした東北地方ではオホーツク海気団からの冷たく湿った東よりの風(やま
せ1)が卓越する。
図 3.3.3 は地表付近である 1000hpa の風について Wvis を用いて可視化したもの
である。ここからもオホーツク海高気圧からの吹き出しに伴う東よりの風が陸奥湾付
近に流れ込んでいたことが見て取れる。さらに、この東風(やませ)は夏泊・津軽半
気象庁の定義によれば、
「やませ」とは春から夏に吹く冷たく湿った東よりの風(風向が
東を中心に北東から南東の範囲でばらついている風)のこと。農作物に冷害をもたらす
ことから東北地方では凶作風といわれる。
1
9
島の影響により、青森空港周辺では北から北東風となって流れ込む。そのため 3 日に
観測された青森空港の METER によると風向は 330(NW)から 050(NE)で推移してい
た。
図 3.3.2
3 日 12UTC
地上天気図
青森空港
やませは夏泊・津軽半島の影響により、青森空港周辺では北~北東風となる
(青森空港管理事務所 HP より)
図 3.3.3
3 日 12UTC 地上風
(Wvis)
この北東風と霧とは何らかの関係があるのであろうか。そのことを考える上で重要
なのは青森空港の地形的な特徴である。図 3.3.4 および図 3.3.5 は青森空港周辺の地
10
形を示したイメージ図である。青森空港の北東側には入内断層が存在し、青森空港は
約 200m の高台に位置している。したがって、前述したやませによる北東風がこの地
形傾斜を滑昇して霧を発生させたと考えられる。青森空港管理事務所による 2000 年
から 2005 年までの統計分析データによれば、こうした「やませ」による滑昇霧は青
森空港を離発着する運航に影響を与えた霧の発生要因の 45%を占めており、青森空
港の気象特性を考える上で重要な気象現象となっている。
青森空港
青森空港の北東側には入内断層があり、
陸奥湾からの湿った北東風が滑昇する。
図 3.3.4
図 3.3.5
入内断層と青森空港(Google Earth)
やませによる滑昇霧のイメージと霧の発生状況(青森空港管理事務所)
11
3.3 釧路空港の海霧(2014 年 6 月 5 日)
釧路空港は海岸線から約 5km という極めて海洋に近接した位置に存在し、霧が多
いことで有名な空港である。図 3.3.1 は大気現象別に月別平均発生日数(1976 年から
2014 年までの統計)を示したグラフであるが、釧路空港では年平均で約 88 日もの期
間で霧を観測しており、特に 6 月から 8 月においては月の半分もの日で霧を観測して
いることがわかる。この霧対策の為、釧路空港においては早い時期より高カテゴリー
ILS 進入方式のための環境が整備され、使用滑走路である RWY17-35(2500m)のう
ち RWY17 側については熊本空港とほぼ同時期の平成 7 年より CAT-3a の運用が開始
されている。
図 3.3.1
大気現象の月別平均発生日数(気象庁 釧路空港出張所)
ここでは 2014 年 6 月 5 日に発生した海霧の事例を取り上げる。この日の釧路空港
は北海道南東海上で発生した海霧のため、視程が数 100m にまで悪化した。
図 3.3.1 は 5 日 00UTC における地上天気図である。千島近海に中心気圧 1022hpa の
高気圧があり、東南東に 20km/h の速度で移動している。またこの高気圧は日本の東
の海上へ大きく張り出しており、その縁辺を回って流れ込んでくる高気圧回転をもっ
た風の吹き出しにより、北海道の太平洋側と三陸の空港では南東風が卓越していたと
考えられる。
12
図 3.3.2
6 月 5 日 00UTC
地上天気図
(気象庁)
図 3.3.3 は 4 日 21UTC における 850hpa の風向と相当温位(θe >335K)について
Wvis を用いて可視化したものである。釧路空港付近の太平洋側の北海道にはやはり
南東風が流入していることが分かる。加えて、太平洋上には高い相当温位を持った暖
湿気も存在し、三陸沖や北海道南東海上への流入がみられた。
図 3.3.3
4 日 21UTC における 850hpa の風向と相当温位
13
(Wvis)
また、図 3.3.4 は 5 日の海面水温の分布である。北海道の南東海上には千島列島沿
いからの冷たい海水(親潮)が広がっている。この親潮によって、太平洋側から流入
してくる暖湿気が冷やされ霧が発生し、更に南よりの風によって北海道南東側の陸上
へと流入したものと考えられる。
図 3.3.4
6 月 5 日における海面温度(SST: Sea surface temperture)
(気象庁)
図 3.3.5 は 5 日 18UTC 有効の下層悪天予想図である。アンバー色で塗られた部分は
地上視程が 1km 以下となると予想された領域を示しているが、当該時刻において北
海道の太平洋側と三陸沖に霧が予想されていたことがわかる。釧路空港についても、
北海道南東海上に発生した霧が南東風によって空港にまで移流してきたと考えられ
る。
下層悪天予想図は元々小型機の安全と効率的な運航の支援を主な目的として、下層
空域の悪天を対象として 2014 年 3 月より提供され始めた予想図であるが、エアライ
ンの運航においても活用が期待される。今回の事例においては、当該の海霧の大まか
な範囲や程度を予測または把握するのに極めて有用な資料であり、とりわけ TAF が
報じられない地方空港においては貴重な予報資料となると考えられる。
では実際の海霧による視程障害の状況についてみていきたい。図 3.3.6 は 5 日の
00UTC から 12UTC までの視程の時系列を示したグラフである。06UTC ごろから釧路
空港周囲に存在していた海霧が空港にかかり、一気に視程が 300m ほどにまで悪化し
た。また同期間においては約 10kt 程度の南よりの風が継続して流入しており、06UTC
14
以降に一度視程が悪化してからの視程の時間変化がほとんどないという点も特徴の
1つといえる。
図 3.3.5
下層悪天予想図(VALID TIME: 5 日 00UTC)(気象庁)
図 3.3.6
卓越視程の時系列(釧路空港 METER より作成)
15
3.4 日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)と新潟空港の豪雪(2012 年 2 月 2 日)
本事例は 2012 年 2 月 2 日の新潟空港における豪雪の事例である。この日は降雪の
ために JAL2243 便等、多数の旅客便が欠航となった。新潟空港は日本海側の代表的
な空港の一つであり、北側は日本海、東西方向はそれぞれ阿賀野川、信濃川の河口付
近に面している。滑走路は RWY04-22(1314m)と RWY10-28(2500m)を有し、通常エ
アライン機は後者の RWY10-28 を使用する。一方、RWY04-22 は航空機使用事業に
用いられる小型機やヘリコプターが使用する滑走路である。
図 3.4.1 は 2 月 2 日 03UTC の地上天気図である。等高線が縦に並び、典型的な冬
型の気圧配置(日本列島を基準として西に高気圧、東に低気圧)であることがわかる。
したがって、新潟空港をはじめとした日本海側では北西の季節風が強く、強い寒気が
流れ込んでいたものと思われる。
図 3.4.1
2 月 2 日 03UTC
地上天気図
(気象庁)
図 3.4.2 は 2 日 00UTC における 975hpa の風向を Wvis により可視化したもので
ある。本州日本海側の地域には北西風が卓越して流入していることがわかる。さらに
着目すべきは新潟付近と鳥取付近に二ヶ所の下層風の収束帯が存在していることで
あり、これらが日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)2 であると考えられる。
日本海寒帯気団収束帯(Japan sea Polar air mass Convergence Zone):
冬季に日本海側に形成される下層風の収束帯のこと。
朝鮮半島北部にそびえる白頭山(2744m)を含む長白山脈によって、大陸からの寒気が
2
二分され、風下側の日本海付近で再び合流する際に収束すると考えられている。JPCZ
付近ではしばしば対流性の雲(CB)が発達し大雪を降らせることがある。
16
図 3.4.2
2 日 00UTC 下層の風向と風速
(Wvis)
次に衛星画像についてみてみたい。図 3.4.3 はそれぞれ 2 日 03UTC の可視画像と
赤外画像である。可視画像をみると日本海側には筋状の雲がみられるが、前述した収
束帯に沿うかたちで筋状とは形状の異なる雲域が広がっている。一方、赤外画像では
筋状の雲の雲域は暗灰色(通常、雲長高度は低く 2~3km)であるのに対し、新潟付
近に存在する JPCZ に伴う雲域は白く映り、雲頂高度の高い発達した対流雲(CB)で
あることがみてとれる。
図 3.4.3
2 日 03UTC 可視画像(左)と赤外画像(右)
17
図 3.4.4 は 2 日 00UTC の実況を表した国内悪天実況図(UBJP)である。新潟空港
付近に強いレーダーエコー強度を持った降水バンドがかかっていることがわかる。こ
れは新潟付近に位置する JPCZ に伴う下層収束による対流雲域と対応する。
また図 3.4.5 は 2 日 00UTC から 04UTC までの新潟空港の METER を抜粋したも
のである。02UTC 付近で強いしゅう雨性の降雪がみられる。加えて 50kt を超える
ガストも報じられており、JPCZ に伴う CB を含む対流雲の通過は運航に大きな影響
を与えたと考えられる。
図 3.4.4
2 日 00UTC 国内悪天実況図
(気象庁)
RJSN 020000Z 27034G44KT 9999 -SHSN FEW010 SCT015 BKN030 M00/M05
RJSN 020142Z 27035G45KT 2000 -SHSN FEW015 SCT025 BKN040 M00/M05
RJSN 020200Z 26032G44KT 0200 R28/0450V1400D +SHSN VV003 M01/M02
RJSN 020206Z 32036G57KT 0100 R28/0400V0650D +SHSN VV001 M01/M02
RJSN 020300Z 21005KT 9999 VCSH FEW020 SCT050 BKN070 M02/M04
RJSN 020350Z 26008KT 2000 -SHSN SCT009 BKN015 M02/M05
RJSN 020400Z 25006KT 200V290 0300 R28/0750V1700D SHSN VV003 M02/M04
図 3.4.5
新潟空港 METER (00UTC~04UTC より抜粋)
18
3.5 南岸低気圧と羽田空港の大雪(2013 年 1 月 14 日)
本事例は 2013 年 1 月 14 日の関東における大雪の事例である。この日は本州の南
海上を低気圧が発達しながら北東進し、関東地方を中心に大雪となった。気象庁は 14
日未明まで「この南岸低気圧の通過に伴う都心での積雪の恐れは小さい」と予想して
いたが、首都圏では 14 日 01UTC ごろから降水が雨から雪へと変わり、東京都心で
は 8cm の積雪を観測するなど記録的な大雪となった。この降雪により 700 便以上の
航空便が欠航となり、鉄道等の様々な公共交通機関にも影響がでた。
降雪は視程障害のみならず航空機の運航に大きな影響をもたらす。例えば、航空機
への積雪は離陸性能を悪化させるため除雪や防氷作業を実施する必要がある。さらに
滑走路上に積雪がある場合には離着陸自体が制限される場合もある。そのため航空機
の運航においては降雪開始の時間帯や降雪強度を予測することは重要であるが、この
日は気象庁の予報に反し、午前中から降雪となったことも被害を悪化させた。
図 3.5.1 は 14 日の 00UTC と 12UTC の地上天気図である。00UTC 時点で、今回
大雪をもたらした南岸低気圧(中心気圧 988hpa)は日本の南に位置し、東北東に
45km/h の速度で進んでいた。12UTC においては、この低気圧の中心示度が 964hpa
に低下し、12 時間で 12hpa もの気圧低下がみられたことがわかる。加えて、移動速
度も 75km/h にまで増加し、北東へ進んでいた。
図 3.5.1
1 月 14 日 地上天気図(00UTC(左)・12UTC(右))
図 3.5.2 および図 3.5.3 は 14 日 00UTC の AUPQ78 と AUPQ35 である。上層は
西谷となり、西南西から南西風が流入していることから、00UTC 時点で低気圧は発
達傾向にあったと考えられる。AUPQ78 では南岸低気圧に対応する下層の湿潤域が
広く関東を覆っている一方、降雪の目安となる 850hpa の-6℃線は東北地方、
500hpa の-30℃線は函館付近に位置しており、関東地方にはかかっていない。この
ように、関東地方の気温が降雪の目安となる気温よりも高かったことから、気象庁は
雨またはみぞれという予想を発表したと考えられる。
19
図 3.5.2
14 日 00UTC
20
AUPQ78
(気象庁)
図 3.5.3
14 日 00UTC
21
AUPQ35
(気象庁)
では、なぜ気温が高かったはずの関東地方において降水が雪に変わったのであろう
か。ここで重要であると考えられるのが下層の気温変化である。図 3.5.4 は羽田空港
における地上気温の変化を示したグラフである。00UTC から約 2 時間という短期間
に 6℃から 1℃へと急激に気温が低下したことがわかる。この気温低下に伴って、
0224UTC ごろに降水が雨やみぞれから雪へと変わった。この急激な気温低下に至っ
た要因としては主に次の 2 点が考えられる。第一に、低気圧の通過に伴って関東地方
に強い寒気移流がみられたこと。第二に、降水による大気の冷却効果が強かったこと
である。これら 2 点について以下で述べる。
図 3.5.4 羽田空港の気温変化(METER より作成)
まず、低気圧通過に伴う関東地方の寒気移流についてみてみたい。図 3.5.5 は 14
日 06UTC の地上付近の風と等温線を示した Wvis によるイメージ図である。発達し
た低気圧により北からの寒気が引きずり込まれ、関東の気温が下がっていることがわ
かる。さらに図 3.5.6 はそれぞれ 13 日 12UTC と 14 日 12UTC の茨城県館野におけ
る地表から 700hpa までのエマグラムである。ここでも 13 日 12UTC に対し、14 日
12UTC では大気下層で低気圧の影響とみられる 50kt 程度の強い北よりの風が流入
していることに加え、気温値が全体的に左へシフトしていることがわかる。
22
0℃
3℃
図 3.5.5
14 日 06UTC 地上付近の風(1000hpa)と等温線
図 3.5.6
(Wvis)
館野のエマグラム (University of Wyoming)
23
また図 3.5.7 は 13 日 00UTC に出された FXJP854 である。14 日 00UTC・12UTC
では低気圧の前面に暖湿気の流入が予測されていた一方で、12UTC にかけて前述し
た寒気移流が強まる様子も見て取れる。低気圧の通過に伴い、関東付近にこうした強
い寒気移流があったことが急激な気温低下をもたらす一因となったと考えられる。
図 3.5.7
13 日 00UTC
24
FXJP854
(気象庁)
次に、降水による大気の冷却効果について述べる。夏場の一時期を除き、日本にお
ける温帯低気圧による降水は上層の氷や雪片が地上に届くまでに融解して雨滴とな
っている。この融解の際、周囲の空気から熱(凝結熱)を奪うため、周囲の空気が冷
やされる効果を持つのである。加えて、降水粒子が地表に届くまでに気化することで
も熱を奪う為、さらに気温が低下するという現象が起きる。したがって、降水量が多
いほど、または湿度が低いほど降水による冷却効果は大きいといえる。今回の事例に
ついても、前述した南岸低気圧の通過に伴う寒気移流だけでなく、強い降水による冷
却効果が相まって、短時間で下層の気温が低下したと考えられる。
図 3.5.8 は 14 日 00UTC から 02UTC における関東の狭域悪天実況図(UBTT)で
ある。図 3.5.7 でみられた暖湿気の流入が相まって、関東には強い降水域が広がって
おり、降水による強い冷却効果があったとみられる。また、ブライトバンド3が小さ
くなっていることからも、次第に融解層が下がり、地表付近まで氷点下となる高度が
下がった様子が見て取れる。そのため上空の雪片が解けることなく地表に届き、降水
が雨から雪へと変わったことで大雪の被害をもたらしたと考えられる。
図 3.5.8
14 日 狭域悪天実況図(関東)
(気象庁)
ブライトバンド: 気温が 0℃付近の層では、氷や雪が凝結や着氷により結合し、それが融けて一
時的に大きな水滴となる。このような層を融解層といい、それよりも上層・下層に比べて局地的
に強いエコーが気象レーダーによって観測される。この融解層に対応して、実際よりも強く観測
されるエコー域をブライトバンドと呼ぶ。融解層が水平に広がりを持っている場合、気象レーダ
ーのアンテナをある仰角で水平に回転させて観測すると、強いエコーがレーダーを中心とする環
状の領域に観測される。
(気象庁 HP、
『航空気象情報の利用の手引き』p45 より)
(関東地方の気象レーダーは千葉県柏市の気象大学校に設置されており、図 3.5.8 においても気
象レーダーがある千葉県柏市を中心とした環状のブライトバンドが表現されている。
)
25
3
第4章
本邦空港の気象特性と運航上の留意点についての考察
本研究で取り上げた 5 つの事例を通して明らかとなった本邦空港の気象特性と運
航上の留意点は以下の 3 点である。
4.1 気象特性①:滑昇霧
空港周囲に地形的な傾斜が存在する空港では直接的に運航に関与するような滑昇
霧が生じやすい。熊本や青森といった周囲に台地や断層が存在する空港では、海洋側
からの暖湿気が流入した際に滑昇霧が特に発生しやすいと考えられる。したがって空
港周囲の地形傾斜や海洋の位置関係と、風向・風速に十分留意する必要がある。また
滑昇霧については、風向・風速によって霧による視程の変動が大きいことも留意すべ
き点といえる。
図 4.1 滑昇霧と運航上の留意点
26
4.2 気象特性②:海霧(移流霧)
北海道太平洋側と三陸地方の空港おける海霧は日本の顕著な気象特性の一つであ
る。海霧は主に初夏から夏にかけてよく見られる現象であり、風向きによっては内陸
の沿岸空港にまで霧が流れ込んで視程障害をもたらす。また空港付近の海洋側から陸
地に向けて吹きつける風が継続する場合、視程障害が比較的長く続くと考えられるの
でホールディングや引き返しの判断を下す際にも留意すべきである。海霧の程度や範
囲予測には、2014 年より提供が開始された下層悪天予想図の活用が有効である。
図 4.2 海霧と運航上の留意点
27
4.3 気象特性③:大雪
日本においては大雪をもたらす気象条件が日本海側と太平洋側で異なるというこ
とが特徴の一つである。日本海側では西高東低の気圧配置により、大陸からの強い寒
気が日本海上空を渡ってくる際に、比較的暖かい海面からもたらされる熱や水蒸気に
よって気団変質し、雪雲が発生する。一方、太平洋側の大雪は南岸低気圧の通過に伴
うものであり、一年を通して良く見られる温帯低気圧による降水と同じ原理である。
冬季の日本海側については、とりわけ日本海寒気団収束帯(JPCZ)に発生する対
流雲は豪雪をもたらし、視程を著しく低下させる場合があるので注意が必要である。
太平洋側の南岸低気圧の通過よる大雪については、850hpa の-6℃線、500hpa の
-30℃線はあくまでも目安であることを忘れてはならない。降雪の判別において本
質的に着目すべきなのは下層の気温と湿度、降水量であることに留意すべきである。
本研究で取り上げた 2014 年 1 月 14 日の関東地方における大雪では、元々の気温は
それぞれの気圧面における降雪の目安となる温度より高かったものの降雪となった。
これは低気圧の通過に伴う強い寒気移流に加え、多量の降水が大気中で融解または気
化することによって周囲の空気から熱を奪い、気温が下がった結果、雨から雪へと変
わったからであると考えられる。
図 4.3 大雪と運航上の留意点
28
4.4 考察と今後の課題
これまでみてきたように、本研究がテーマとした低視程障害という観点に限定し
た場合でも、日本の空港にはそれぞれ多様な特性があることが明らかとなった。そ
うした気象特性についての不十分な理解は、ともすればインシデントやアクシデン
トの誘発につながりかねない。より良い運航の実現のためにも、就航空港が有する
特性を十分に理解する必要があると考える。とりわけ、今後初めて日本の空を飛ぶ
こととなる新人パイロットはこの点を強く認識し、知識や経験を積み重ねていくこ
とが重要である。
本研究では滑昇霧や海霧、日本海側と太平洋側の大雪についての顕著な事例を取
り上げることで、日本の気象特性として代表的である低視程障害についての理解の
一助とすることができた。しかしながら、一年間という時間的制約や筆者の力量不
足から、事例研究の範囲が限定的なものとなってしまったことは課題であり、今後
も継続して就航空港ごとの幅広い気象特性について研究を進める必要がある。
29
謝辞
本論文の作成にあたり、一年間有意義な助言やご指導をいただいた新井直樹先生
にこの場を借りてまず感謝致します。いつも穏やかで、真摯に私たち学生に向き合
ってくださる新井先生から学んだことは数え切きれません。
また、これまでの訓練で苦楽を共にしてきた研究室同期の石田さん、大森さん、
川北君、志方君、古川君、本当にありがとう。ノースダコタの広い空で朝から晩ま
でフライトのことを考え過ごした日々は今後も忘れることはありません。訓練を終
え日本に帰ってからも、同期の皆のおかげで、楽しい研究室生活を送ることが出来
ました。
卒業という一つの節目にあたり、本当に多くの方々に支えられていること、夢を
実現する環境にいる幸運に感謝して、新しいスタートを迎えたいと思います。同期
全員で空を飛び、機長となる日を目標にこれからも努力していきます。
30
参考文献
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(閲覧日:2016.2.12)
[2] 国土交通省「交通政策審議会第 7 航空分科会議事概要 資料 2
航空保安システムのあり方について」
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[3] 国土交通省「航空:高カテゴリー運航の概要」
http://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000402.html
(閲覧日:2016.1.14)
[4] 国土交通省「航空:空港分布図」http://www.mlit.go.jp/common/001085993.pdf
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[7] METER アーカイブ http://www.ikki.org/wx/metararch.php (閲覧日:2016.1.8)
[8] JAL 企業サイト「運航情報」
https://www.jal.com/ja/flight/information/ (閲覧日:2015.10.23)
[9] 熊本空港
http://www.kmj-ab.co.jp/index.html
(閲覧日:2016.1.12)
[10] 新潟空港 http://www.niigata-airport.gr.jp (閲覧日:2016.1.23)
[11]「気象庁の「積雪なし」予想大外れ 東京都心」『日本経済新聞』 (2013.1.14)
[12]「アシアナ機事故、着陸基準下回る視界か「滑昇霧」急速に」
『日本経済新聞』
(2014.4.17)
[13] 気象庁「気象レーダー」
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[15] 環境省釧路湿原自然再生プロジェクト「湿原データセンター」
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[16] 気象庁 釧路地方気象台
http://www.jma-net.go.jp/kushiro/tenki/index.html (閲覧日:2016.1.23)
[17] 青森空港管理事務所
CAT-3b「霧の壁を突き破れ」
http://aomori-airport.jp/ (閲覧日:2016.2.2)
[18] 気象庁 仙台航空測候所 青森空港出張所
http://www.jma-net.go.jp/aomori-airport/index.html (閲覧日:2016.2.2)
[19] 気象予報士試験受験支援会 『らくらく突破 改訂版 気象予報士かんたん合格
テキスト<学科専門知識編> 』、東京:技術評論社 (2014)
[20] 横田友宏 『エアラインパイロットのための航空気象』
、東京:鳳文書林出版販売
(2013)
31
[21] 事業用操縦士課程 『航空気象スタディーガイド』(2014)
[22]
AIM-JAPAN 編纂協会 『Aeronautical Information Manual-JAPAN』、第 63 号
東京:日本航空機操縦士協会 (2015)
[23] 安斎政雄 『新・天気予報の手引き』
、東京:クライム気象図書出版 (2013)
[24] 気象庁総務部航空気象管理官 『航空気象情報の利用の手引き』
、東京:財団法人
気象業務支援センター (2011)
32
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