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男らしさ・女らしさって何だろう

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男らしさ・女らしさって何だろう
岸和田市立天神山小学校
【単元名】
男らしさ・女らしさって何だろう
【学校名】
岸和田市立天神山小学校
所在地
人権・生命 【5年生】
(実施学年 3年生)
岸和田市天神山町 1-1-1
電話番号 0724-27-8775
うな授業の創造を目ざして取り組んできた。
1.学校の概要
○子どもが主体となる授業
○子どものよさが生かされる授業
(1) 学校や地域の概要
①児童数(422) 教職員数(29)
学級数(13)
②地域・児童の様子
●地域の様子
○子どもどうしがふれ合う授業
○教師の個性が生かされ、子どもと豊かにふれ合
う授業
具体的には、楽しい学習素材・問題解決学習・学
本校区は岸和田市の中間丘陵部にあり、もと
びあいの場などの学習過程、自然・社会・文化的な
もとは丘陵であったところを開発造成した、岸
体験活動や参加体験型などの学習活動、学級・学年
和田市でも比較的新しい地域である。今も、校区
の枠をはずしたTTの取り組みなど、指導体制の
の周りは、溜池、田畑、竹林、雑木林等が多く、自
創意工夫に取り組んだ。
然豊かな地域である。平成 10 年には、創立 20 周
年記念行事を地域の人と共に開催した。また、
地域の夏祭りや体育祭など学校施設を使った子
どものための行事は盛んであり、餅つきのよう
に学校との共催行事もある。保護者も日曜参観
後に親子の交流を目的とした行事を開催したり、
月に1回サークルで読み聞かせを実施するなど、
子どものための活動に力を注いでいる。このよ
うに、地域の人たちの学校に対する思い入れは
深く、何かにつけ協力を惜しまない伝統ができ
ている。
●児童の様子
児童は、全体的に明るく純朴である。また、一
人一人の子どもは、よくありたいと願い、たくま
しく成長を続ける存在である。しかし、友達関係
の悩みをもっている、挨拶など基本的生活習慣が
身についていないといった生活面の課題や、与え
られた課題はこなせるが、自ら課題を見つけ主体
的に行動することが不得手であるといった学習
面の課題が見られ、まさに今日的な状況にある。
(2)教育活動の特色
本校では、平成 11 年に研究主題を「自らの力で
生き生きとしたより豊かな学校生活を送れる子ど
もに」と定め、すべての教育活動において、教科・
道徳・特別活動等の特性を生かして実践を進めた。
「生き生きとした豊かな学校生活」とは教師と子
ども、子ども相互間に温かい、良好な人間関係があ
り、子どもにとって心の安らぎや落ち着きがあり、
自己の存在感や自己実現の喜びを実感できる場で
ある。そのために、楽しさや充実感のある次のよ
128
(3)「総合的な学習の時間」の取組について
①学校としてのねらいや設定の趣旨等
「豊かな心を育む」ために、「人とのふれあい」
「自然とのふれあい」「社会とのふれあい」を核
とした体験活動を教育活動の中に位置付けた。体
験活動から生まれた課題を解決することを通して、
また、学習したことを実生活の場で生かすことを
通して「豊かな心」を育むことができると考えた
からである。
平成 11 年度は「福祉教育」「環境教育」「男女
共生教育」の3つの主題を設定し、子どもが主体的
に取り組めるように総合的な学習を展開した。
また、次のような子ども像を想定している。
○自身の身の回りから学習課題を見つける。
○体験的な活動により学習課題を解決する。
○仲間と共に学習課題を解決する。
○学んだこと、解決したことをくらしの中で活
用する。
○連続して新たな学習課題をもつ。
②研究の経過や推進体制等
本校では、平成8年より「算数の楽しい授業作
り」を通して、豊かな学校生活を味わわせる実践を
進めてきた。平成 10 年、大阪府教育委員会より「豊
かな心を育む教育」の研究委嘱を受けたことを機
会に、総合的な学習を視野に入れながら、豊かな心
の育成につなげようと努力してきた。
組織を、大きく「研究部」「指導部」の2部に分
けた。「研究部」では「教科領域部」「同和教育
人権・生命
岸和田市立天神山小学校
3年生
部」「養護教育部」、「指導部」では「生徒指導部」
という見方・考え方を育てていきたい。また、子
「保健体育部」「学芸部」のそれぞれ3部に分か
どもたちの生活の中で、「男であること・女であ
れて研究を推進してきた。
ること」で不利益を被る場面があれば、それを取
り除くことも必要である。
③指導観
2.学習活動の計画
本単元では、子どもたちが無意識のうちに抱い
ている「男」「女」についての固定的な概念を取
(1)単元名 「男らしさ・女らしさって何だろう」
り除くことをねらいとしたい。日常生活の様々な
場面で性による区別や決めつけがあることに気づ
(2)指導にあたって
かせるために、「黄色のキャンディー」(大阪府
①子どもの様子
同和教育研究協議会編
低学年の間は男女関係なく一緒に活動していた
じぇんだぁ・ふりぃBO
Xより)では、性別による色の偏りについて、「ど
子どもたちであるが、3年生になると、男の子ど
うしよう」(大阪府教育委員会
うし・女の子どうしの結びつきが強くなり、時に
ける男女平等教育指導事例集より)では、「男の
は反目し合う場面も目にするようになった。そこ
子だから」「女の子だから」と決めつけることに
で、3年生は事前調査(資料1)を参考にしなが
ついて考えた。
ら、男女共生を視野に入れて仲間づくりをすすめ
小・中学校にお
また、「だれのこと?」「あなたはどう思う?」
ていこうと考えた。
(小学館
みんなとの人間関係を豊かにする教材
本単元での活動に先立ち、1学期には、自分自
より)では、男女の特性や才能について固定観念
身をしっかり見つめ、自分のよいところを見つけ
がないか調べたり、日常生活の中での親子の会話
ようというねらいで、実物大自画像(写真1)やい
を題材にロールプレイを取り入れて活動するなど、
いところ見つけ(資料2)などの活動をした。さ
子どもたちが主体的に学習し、気づいたり発見し
らに、男の子も女の子も、同じようにかけがえの
たりすることができるようにした。
ない命をもって生まれてきた大切な存在であるこ
指導にあたっては養護教諭と連携を図り、TT
とに気づいてほしいという願いも含めて、性教育
体制で取り組んだ。本単元での活動を通じて、「男
にも取り組み、男の子と女の子の違いや命の始ま
らしく」「女らしく」ではなく「自分らしく」生
りについて学習した。
きることの大切さに、子どもたちが少しでも気づ
いてくれればと思う。そして、男・女という性の
②教材観
枠にとらわれずに、一人一人の個性を認め、お互
男女共生教育は人間尊重の教育のひとつであり、
いに協力して生活できるようになることを願って
個々の児童がもつ多様な能力や個性を伸ばし、生
いる。
きる力を培う大切な教育であると考える。その第
一歩として3年生では、様々な活動を通して矛盾
に気づかせ、無意識のうちに抱いている概念をく
(3)単元の目標
○日常生活の様々な場面で、性による区別や決めつ
だくことから始めることにした。
けがあることに気づくことができる。
子どもたちの中にある「男」「女」としての決
○子どもたち自身の生活を見直し、性別役割分業に
めつけや偏見を取り除き、「こんな女(男)の子
とらわれずに行動することの大切さについて考え
もいるんだよ」「男(女)だから○○してはいけ
ないっていうことはないんだよ」「こういう生き
ることができる。
○性別にとらわれず、お互いの個性を尊重し、協力
方もできるんだ」「女・男に関係ないと思うよ」
し合うことができる。
【年間指導計画】
4月
5月
7月
9月
10 月
11 月
12 月
1月
2月
3月
大きくなったら
男らしさ・女らし
さって何だろう
家の中の仕事
命の始まり
わたしはこ んな子
どもです
3年
6月
129
岸和田市立天神山小学校
人権・生命 【5年生】
(4)学習活動の展開(全 17 時間)
子どもの活動と意識
課題設定(6時間)
<みつける>
①性による区別や決めつけが、日常生活の様々な
場面で見られることを話し合う。
今まではあまり考
えたことがなかっ
たな。
「男の子だから」と
か「女の子のくせ
に」と言われたこと
があるよ。
<しらべる>
②自分たちの身の回りには男女の固定的な見方
がないかどうか調べる。
課題追究(8時間)
自分たちの持ち物
の色はどうかな。
<まとめる>
③調べたことを、多様な方法でまとめる。
ペープサートにし
たいな。
グラフを使うとわ
かりやすいかもし
れない。
○「男」
「女」についての固定的な見方があるこ
とに気づかせるために、適切な教材をを選んで提
供する。
○児童が主体的に学習し、気づいたり発見したり
することができるように、学習形態を工夫する。
○グループでの話し合いや活動がうまくすすめ
られるように机間巡視し、調べ方やまとめ方つ
いて、必要に応じて適切に支援する。
○教室及び学年の予備教室を開放し、課題別にT
Tを組んで指導にあたる。
○活動している中で、困ったことや問題があれ
ば、取り上げてみんなで話し合う場を設ける。
○模造紙、画用紙、マジック、セロテープなど、
必要な物はできるだけ準備しておく。
交流・振り返り(3時間)
<ひろげる>
④まとめたことをそれぞれの方法で発表する。
○グループで協力して、聞く人によくわかるよう
に発表できるように助言する。
⑤友だちの発表を聞いて、思ったことや気づいた
ことなど、感想をまとめる。
○友だちの発表をよく聞くようにする。
工夫してまとめて
いるね。
大きな声でしっか
り発表しているね。
<ふりかえる>
⑥本単元での活動を振り返り、感想をまとめる。
男だから・女だから
と決めつけるのは
おかしいんだ。
130
男の子、女の子で好
きなことに違いが
あるのかな。
指導者の役割
お互いの個性を認め
合おう。
○各グループの発表について、よいところや工夫
している点を見つけて励ます。
○単元の目標に近づいた発見や感想が見られた場
合は、全体に広げる。
人権・生命
3年生
岸和田市立天神山小学校
3.学習活動の実際
資料1
(1)学習過程の様子
①課題設定の段階
子どもたちは、テレビやマンガなどの情報から、
また、親の生活や考え方から、「男」「女」につ
いての固定的な概念を植え付けられている。しか
し、3年生の段階ではそれを意識している子はほ
とんどいない。そこで、日常生活の様々な場面で
見られる性による区別や決め付けについて考えた。
初めに、男の人が赤ん坊のおむつを換えたり、洗
濯をしている絵や、女の人がダンプカーの運転を
している絵を提示して、どんなことを感じるか話
し合った。すると、「お父さんが洗濯をしていた
ら少し変。おばさんにいじめられているみたい」
「ダンプカーの運転は普通男の人がやるのに、お
かしい。女の人がやってたらこわそう」というよ
うに、男女の役割や仕事を固定的にとらえている
意見が半数近くを占めた。その後で、ビデオ『時
代はいま両立(ともだち)』を見て感想を出し合
ったが,「お父さんが赤ちゃんの世話や洗濯をし
たって変じゃない。お父さんが何でもするってい
いなあ」というように変化が見られた。次に、『黄
資料1
事前調査
色のキャンディー』(大阪府同和教育研究協議会
編
じぇんだぁ・ふりぃBOXより)を使って話
し合った後、身の回りに男女で色が分かれている
ものがないか調べた。大阪府教育委員会
小・中
学校における男女平等教育実践指導事例集から選
んだ『どうしよう』では、「男の子だから」「女
の子だから」と決めつけることに対して、女とか
男とか関係ないから、我慢せずに自分のやりたい
方に決めたらいいという意見が多くの子どもたち
から出された。『だれのこと?』(小学館
みん
なとの人間関係を豊かにする教材55より)では、
男女の特性や才能について固定観念がないか見直
すことをねらいとして次のような活動をした。プ
リント(資料3)の 10 項目の事柄について、男の
人に多い・女の人に多い・どちらでもない・どち
らにも当てはまるのいずれかに○をつけさせる。
写真1
実物大自画像
(写真2)
回答にかたよりのあった事柄を取り上げ、なぜ
そう思ったかを質問し、話し合いをした。1の料
理が上手なのは?に対しては過半数の子どもが、
女の人に多いと答えている。普段お母さんが料理
をするのを目にすることが多いのでそう思ったと
いうことであるが、話し合いの中で「レストラン
とかでは男のコックさんが多い」「テレビ番組の
中で、男の人が料理をしていた」「あんまり作っ
てくれへんけど、お父さんの料理もおいしい」な
資料2
いいところ見つけ
どの意見が出てきた。
131
岸和田市立天神山小学校
人権・生命 【5年生】
上手なのは?ともう一度挙手で調べたところ、
その後、料理がどちらにもあてはまるが圧倒的多
数になった。8の後かたづけをきちんとするの
は?についても、女の人に多いに○をつけた子が
多いが、「自分は女の子だけどそんなに上手じゃ
ない」という意見が出てきて、「男の人、女の人
に決められないなあ」「人それぞれや」という結
論で授業は終わった。
②課題追究の段階
前述の様々な教材から発見したことや気がつい
写真2
たことを、子どもたちの身近な生活の中で検証し
た。すなわち、子どもたち自身の生活を見直し、
資料3
性による区別や決めつけがないかどうかを調べた
り考えたりした。「女の子だから」「男の子だか
ら」ということで、してはいけない、またはしな
ければならないと言われたことはないか考えたり、
これまでに学習したことと関連づけてさらに調べ
てみたいことなどを出し合い、グループで調べた。
アンケートや聞き取りなど、調べる方法もグルー
プごとに話し合って決め、まとめ方についてもそ
れぞれのグループで考えた。指導者は、グループ
での話し合いやまとめる活動がうまくすすめられ
るよう机間指導し、調べ方やまとめ方について適
切に支援した。話し合いの結果、次のような課題
追究活動を行った。
持ち物の色調べグループは、手提げカバン・習
字道具・お道具箱・体操服の袋などについてクラ
ス全員の色を調べ、表にまとめた。男子では黒・
青・緑が多かったが、女子の場合、好きな色はと
いう質問にはほとんどが水色と答えているのに水
色の持ち物は全くなく、ピンク・赤が多かった。
そこで、すきな色と実際の持ち物の色が違うのは
どうしてだろうかとグループで話し合った。家の
中の仕事は誰がしているかを調べるグループは、
資料3
「だれのこと」
洗濯物を干す、買い物に行く、ご飯の用意をする、
布団を敷くなどの 16 個の仕事について誰がしたか
をクラス全員に答えてもらい、それを集計して棒
グラフにまとめた。
テレビのアニメについて調べたグループは、新
聞のテレビ番組欄から男の子が主人公になってい
るアニメと女の子が主人公になっているアニメを
拾い出し、推理・旅・家族・戦いなど似たジャン
ル別に表にまとめた。その結果、男の子が主人公
になっているアニメの方が、女の子が主人公にな
っているアニメよりも圧倒的に数が多いことを発
見した。また、推理や戦いや旅のジャンルに入る、
男の子が主人公のアニメが非常に多いことも見つ
けた。
男の子と女の子で、好きなものに違いがあるか
どうかを調べたいと思ったグループは、クラスの
資料4
132
「だれのこと?」の結果
人権・生命
3年生
岸和田市立天神山小学校
子どもたちにアンケートを取り、男女別に集計し
てその結果をクイズにした。
その他にも、遊びの中でありがちな男女の対立
を紙芝居やペープサートで表現したり、男女の固
定的な見方をしている場面を盛り込んでお話を作
ったグループもあった。
③交流・振り返りの段階
グループで調べ工夫してまとめたことを、それ
ぞれの方法で発表することにより、他のグループ
と情報交換し、互いに学び合う中で本単元の学習
をさらに深めていった。発表するグループには、
聞く人によく分かるように協力して発表できるよ
う助言し、聞く側には友達の発表をしっかり聞く
よう助言して発表会を始めた。
指導者は、それぞれのグループの発表が終わる
と、よいところや工夫している点を見つけて全体
に広げた。すべてのグループの発表が終わってか
ら、友達の発表を聞いて思ったことや気がついた
ことなど、感想をまとめた。
そして、最後に単元全体の活動を振り返って一
人ひとり感想をまとめて学習を終えた。
(2)評価について
総合的な学習に移行する前の段階であったので、
本単元の活動は、主に道徳や特別活動の時間を使っ
て行った。従って、具体的な評価は行っていないが、
課題設定の段階から、活動の前後で変わったことや、
活動をして気がついたことを文章にして自己評価を
することを続けた。
課題追究の段階においては特に自己評価を行わな
かったが、それぞれの時間の活動がうまくいったか、
次時はどのように活動をしようか考える時間をとっ
た方がよかったかもしれない。単元全体については、
学習の始めと終わりを比較することにより、それぞ
れが自分の成長を認めることが大切だと思う。
4.成果と課題
振り返りの段階の最後に書いた感想の中に、「女の子
が男の子の遊びをしてもいいと思う。男の子が、女の子
のよくやる遊びをしたらだめとか、女の子が野球をした
らあかんとかじゃなく、女の子も男の子も別に何をして
もいいと思います。」という文章があった。男女共生に
関わる問題は意識の問題であるので、一朝一夕に身につ
いたり、行動がすぐに変わったりするものではない。し
かしながら、子どもたちの発達段階に応じて適切な題材
を提供したり、折にふれ話したりしていくことが非常に
大切だと考えられる。そのためには、指導者自身が男女
平等の意識を常に持ち続け、性別にとらわれずに一人一
人の個性を尊重する態度を忘れてはならないと思う。
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