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増粘多糖類 (PDF: 24.4 KB)

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増粘多糖類 (PDF: 24.4 KB)
増粘多糖類
現在、加工食品は、一部を除き、パッケー
ように、類似の構造でも、pH の安定性や
ジに原材料名が記載されています。その多く
耐熱性、耐酸性にそれぞれ違いがあるためで
の加工食品に「増粘安定剤」あるいは「増粘
す。
多糖類」をいう表示が見られます。増粘多糖
最近では、こうした増粘多糖類の応用とし
類とは一般的に、水に溶解すると粘性を示し
て、一般の食品だけでなく、嚥下障害者用食
たり、ゲル化したりする性質を持った水溶性
品の粘度調節剤としての利用も増えています。
の高分子物質のことを総称しています。
例えば、お茶のように粘度のない飲料は嚥下
増粘多糖類は、表1に示すように様々な食
障害者には飲み難いものですが、とろみをつ
品に機能を付与するために使用されています。 けることで、飲みやすくしたりします。また
このような機能や特性を特徴付ける重要な因
増粘多糖類は、食物繊維として、脂質代謝改
子として、分子量、分子形態、構成糖、官能
善、糖質代謝改善、便通改善の効果があるこ
基の有無が挙げられます。例えば、種子多糖
とも報告されています。生理機能についても
であるグアーガム、ローカストビーンガムは、 研究が進められ、タマリンドシードガム(成
ガラクトースとマンノースからなるガラクト
分はキシログルカン)は従来知られていたア
マンナンですが、それぞれ、ガラクトースと
ロエよりも強い免疫応答維持活性を持つこと
マンノースの構成比率とその分布が異なるた
が報告されています。
以上のように増粘多糖類は、幅広い用途の
めに、異なった粘性挙動を示します。
このようにそれぞれの特徴を生かして、
可能性が示唆されており、現在、食品工業技
食品に利用するわけですが、その選択のポイ
術センターでは、植物の有効利用として、あ
ントとして、まず、①期待する機能(増粘、
る植物の茎中に含まれる粘性成分について研
ゲル化あるいは安定効果)、②使用する食品
究を始めています。まだこの粘性成分がどの
の成分(pH、糖度、食塩量、カルシウム量
ような物質であるか、また従来の増粘剤との
等)、③製造条件(殺菌温度等)が挙げられ
特性の相違は明確になっておりませんが、近
ます。これに経済性を加味して使用する増粘
い将来、新規増粘剤の一つとして利用できる
剤を選択します。このことは、上記で述べた
ようにしたいと考えています。
機能
増粘性
ゲル化
乳化
被膜形成
離水防止
泡沫安定
乳タンパク安定
結晶析出防止
結着
表 1 増粘剤の機能と食品への利用
代表的な増粘多糖類
利用分野
グアーガム、キサンタンガム、タ スープ、た れ、フルー ツソース、 ド
マリンドシードガム、
レッシング
カラギーナン、寒天、ペクチン
プリン、ゼリー、ジャム、ババロア
ケーキ、たれ、佃煮
キ サ ン タ ン ガ ム 、 タ マ リ ン ド ガ ドレッシン グ、たれ、 ねり胡麻、 レ
ム、カラギーナン、アラビアガム トルトソース
アラビアガム、プルラン、大豆多 あられ、麺 、米飯加工 品、顆粒状 食
糖類
品(ふりかけ、調味料)
キサンタンガム、カラギーナン
ゼリー、チーズ、ソーセージ
グアーガム、ローカストビーンガ
ホイップクリーム、アイスクリーム
ム
ペクチン
ドリンクヨーグルト
グアーガム、タマリンドシードガ
アイスクリーム
ム
カラギーナン
ソーセージ
食品工業技術センター
児島雅博
研究テーマ:植物茎節中の粘性成分に関する研究
指導分野 :農産加工製造(麺、でん粉)、エクストルージョン
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