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(医用高分子材料) 2008

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(医用高分子材料) 2008
高分子材料学2008
医用高分子材料
講義の目的:生きている細胞と直接接触する高分子材料(生体材料、バイオマテリア
ル)の特徴と応用例を理解する。
1)目的と必要な性質
目的
1.
2.
3.
4.
臨床検査
診断
治療
リハビリテーション
期間
1. 長期(人工臓器)
2. 短期(医療器具)
実用化されている高分子を用いた医用機器
医用材料に必要な性質(広義の生体適合性)
1.
2.
3.
4.
機能性(物質分離、接合、固定、補填、ポンプ、バルブなど)
生体安定性(生体に潰瘍、発熱、溶血、壊死などを引き起こさない)
生体適合性(抗血栓性、補体非活性、組織接着性など)
可滅菌性(滅菌により分解しない)
医用材料として必要な特性と機能の分類
高分子材料の特徴
長所
1.
2.
3.
4.
軽量
易加工性
柔軟性
安定性
短所
1.
低強度
金属とセラミクスの特徴は?
金属
長所:高強度、高靱性
短所:腐食、細胞毒性
セラミクス
長所:高強度、耐腐食
短所:低靱性、難加工性
医用高分子材料の例
2)表面の性質と血液適合性
血液適合性
材料表面に血栓を形成させない性質
人工血管
血液浄化用材料ー人工腎臓、人工肝臓
人工肺
人工心臓
に要求される性質。
6-8g/dl
血液中の
血小板
フィブリノーゲン
血液凝固因子
が血液の凝固と関係
(相互作用の弱い材料
表面を設計する必要性)
血栓形成
材料表面に吸着したタンパク質を介した生体反応
タンパク質を吸着しない表面
血栓形成を誘起しない吸着タンパク層を形成する表面
細胞との相互作用の弱い表面
血栓を形成し難い表面
高含水率、高い分子運動性表面
(長岡ら 1985)
水和したポリエチレングリコール(PEG)
鎖の分子運動や排除体積効果により
タンパク質や血小板が吸着しない
人工腎臓の透析膜などに利用
ミクロ相分離構造と血液適合性(岡野ら 1978)
ポリスチレンとポリヒドロキシメタ
クリレートが非相溶であるためミ
クロ相分離構造を形成する
ミクロ相分離を有する表面では血小板
のダメージも少ない
1.5mmφ、長さ20cm
のチューブが血栓形
成で閉塞するまでの
時間
生体膜類似の官能基を表面に賦与
(石原ら 1990)
リン脂質類似の構造を有するメタクリレート系
共重合体(MPC)
ー血液との相互作用が弱い、高い保湿性
膜タンパク質
コレステロール
リン脂質
細胞膜のモデル
コンタクトレンズ関連では、
ハードコンタクト用洗浄液
(SEED: ピュアティワンボトル
タイプ, BAUSCH & LOMB:
O2- All in Oneなど、ソフトコン
タクトレンズ:Cooper Vision:
Proclear)
人工腎臓用中空糸
人工心臓
人工肺
人工関節
3) 様々な人工臓器
a)人工心臓と補助人工心臓ポンプ
心臓が機能を回復あるいは心臓移植
(1967年から7万件、日本では3
6人)までのつなぎの補助人工心
臓としての応用(日本では年間
170件以上)
ポンプ材料に必要な条件
1. 長期間の繰り返し変形に耐える
2. 生体内で高い安定性
3. 優れた血液適合性
弾性ポリウレタン
が上記の1-3に優れている。
拍動流ポンプ(空気駆動)
非拍動流ポンプ(遠心ポンプ)
B)人工血管
目的 血行再建
1.
2.
3.
ポリエステル布製(ダクロンの編み物、織物)
延伸テフロン
生体組織由来(臍帯静脈、牛頸動脈)
1,2では患者自身の血液をもちいて目詰め操作を
行った後、移植。吻合部より侵入した患者の細
胞により覆われた後、内口腔に偽内膜が形成
される。
末梢動脈、冠動脈用の4mm以下の細い口径の人
工血管の開発が課題ーポリウレタン
必要な性質
• 抗血栓性
• 生体内で安定
• 疲労強度が高い
• 生体血管との力学的マッチング
• 縫合のしやすさ
c)血液透析ー人工腎臓
生体腎の機能
1.
2.
3.
4.
5.
6.
水・電解質の調節
タンパク質終末代謝産物の除去
薬物の排泄
血圧の調節
赤血球数の調節
ビタミンDの活性化
慢性腎不全患者の治療
1.
2.
腎移植
血液透析
2004年 透析患者数 24.8万人
血液透析
1-3の機能を代行
透析
半透膜を介して溶液と
溶媒を触れさせ、低分
子の溶質を拡散により
分離したり、溶液中の
高分子量物質を精製
する操作
血液透析器ー膜による有
害物質と余分の水分
の除去
• 幅広い分子量の有害
物質の除去
• 水透過性
• 分離時の圧に耐える力
学的な特性
• 抗血栓性
大面積(数百m2)で均一に
薄い膜が必要
• 中空糸型
• 積層平板型
透析
一回4-5時間
週3回
5% 20年以上
膜材料
1.
2.
3.
4.
5.
再生セルロース
酢酸セルロース
PMMAステレオコンプレックス
ポリアクリロニトリル
エチレンービニルアルコール共重合体
CH2OCOCH3
H
O
H
OCOCH3 H
H
H
クリアランス
腎臓で1分間に浄化されるタンパク質代
謝産物を含む血液量
クリアランスの向上により透析時間の短
縮が可能
HD 血液透析
HF 血液濾過
HDF 血液透析濾過
O
OH
n
d) 眼内レンズ
眼内レンズ(Intraocular lens, IOL)とは、白内障手術で水晶体を摘出したとき
に挿入される人工の水晶体。近視矯正目的の有水晶体で挿入する眼内レン
ズも存在 (白内障 H11年 418千人(男) 1 041 千人(女))
眼内レンズ:ポリメタクリル酸メチル(PMMA)
http://www.jscrs.jp/ippan/hakunaisyo/syujyutsu.html
e) ステント治療
冠動脈が動脈硬化などのために
狭くなる病気が狭心症(狭心症・心
筋梗塞172万人以上)、
バルーンカテーテル治療では、まず狭くなった冠動脈へ、先端に風船(バルーン)
をつけた極細のカテーテル(バルーンカテーテル)を入れる。この風船をふくらま
せることで、狭くなっている冠動脈を大きく広げる。そのあとバルーンカテーテル
は抜き取ります。
ステント
ステント治療は、このバルーンカテーテル治療を応用したもので、ステントは、
ステンレスなどの金属でできた小さい網目模様の筒を乗せた構造をしてい
ます。これをバルーンカテーテル治療に使う風船でふくらませる。このように
冠動脈の狭窄部位でステントを拡張することで病変部を治療する。
4) 高分子と再生医療
肝臓や膵臓などのホルモンや生理活性物質を合成・分泌する臓器
人工臓器の開発は困難
→生体内で適当な速度で分解する生分解性高分子を足場マトリクスとして細
胞(臓器)を再生させる
組織工学
(Tissue Engineering)
生分解性高分子を足場にして生体組織を再生する
1998年11月に米国でヒトの胚性幹
細胞(ES細胞=Embryoric Stem
Cell)の分離培養技術の確立
ES細胞はすべての細胞へと変化す
ることのできる細胞で、どのように特
定の細胞へ変化していくかという過
程の解明も少しずつ進展
胚性幹細胞から思い通りに目指す細
胞、組織,器官を作り出すことができ
るようになれば、再生医療のすそ野
は大いに広がる。
再生医療関係の情報は
http://www.trc-net.ne.jp/trc/default.asp
高分子膜表面での細胞培養
細胞培養
表面をプラズマ処理したPSシャーレ
接触角 70°
細胞が接着、
増殖、伸展 培養液に含まれる接着性
タンパク質の吸着層
温度応答性基質を利用した細胞シートの回収
肝実質細胞から高度な分化機能を維持したままの回収
トリプシン処理→分化機能を大幅に消失
PNIPAMを共有結合で固定化した表面の利用(岡野ら 1993)
トリプシン処理なしに培養細胞を脱着(細胞外マトリクスも接着したまま)
→細胞シートを利用した医療
ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)
感温性高分子
体温では収縮
低温では膨潤
37℃
疎水性表面
細胞培養
4℃
親水性表面
細胞シート剥離
細胞シートの応用
傷ついた角膜の修復
5分程度で角膜に接着
細胞接着性タンパク質
を有しているので、縫
合の必要がない
問題
1.
2.
医用高分子材料に要求される性質をその例とともに解説せよ。
生活の質の向上のために医用材料はどのように貢献しているか例をあげて解説
せよ。
参考書
1.
2.
3.
石原 一彦, 山岡 哲二 、 畑中 研一 、 大矢 裕一 、バイオマテリアルサイエンス、東京化
学同人(2003).
荒木 孝二、高原 淳、明石 満、工藤 一秋 、有機機能材料、東京化学同人(2006).
前田瑞夫、バイオ材料の基礎、岩波現代工学の基礎3、岩波書店(2000).
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