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スリランカにおける出生率低下と社会経済環境の変化

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スリランカにおける出生率低下と社会経済環境の変化
Kobe University Repository : Kernel
Title
スリランカにおける出生率低下と社会経済環境の変
化(Fertility Decline and Socio-economic Changes in Sri
Lanka)
Author(s)
西村, 教子
Citation
国際協力論集,7(1):165-181
Issue date
1999-06
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
publisher
DOI
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/00182906
Create Date: 2017-03-30
1
6
5
スリランカにおける出
I.はじめに
出生率は直接・間接的に経済成長や生活・
生率低下と社会経済環
社会環境の影響を受ける。スリランカの出生
境の変化
9
6
0
年代以降継続的に低下傾向を見せて
率は 1
9
5
3
9
3
年の聞に 5
.
3人
おり、合計出生率も 1
から 2
.
3人と半減した。
一般的に出生率低下は経済成長と関係があ
西村教子*
ると考えられており、スリランカでも合計出
生率と一人当たり GNPとの強い負の相関関
係が見られる。1)しかし、経済成長が出生率
の低下に直接影響を与えているのではない。
経済成長(発展)は社会や生活環境を変化(改
善)させる。これにより、出生行動に変化を
与えるのである。人口転換論に見るように、
死亡率が高い段階(多死)では、そのリスク
を補うような出生行動(多産)を起こすが、
死亡率の低下(少死)は予備的な出産動機を
押しとどめる効果を持つ。他に、教育水準の
向上、女性の雇用機会の拡大、
(耐久)消費
財の購入機会の拡大、都市化などが挙げられ、
これらは子供に対する需要や再生産期間に影
響を与える。加えて、家族計画政策の普及に
よって、出産調整も可能となる。
一般的に
2
)
再生産期間の短縮や計画的な出産行動は出生
率を低下させる。
スリランカの死亡率は戦後すぐに低下しは
0
年代から低下を始めている。
じめ、出生率は 6
出生率の低下の原因として第一に、結婚パタ
ーンの変化が挙げられる。
特に初婚年齢の
3
)
1)松下, [
1
l
. 129-131ページ。
2) E
a
s
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r
l
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n叩 dC
I
i
mmins
・
,[
6)
3) J
.C
a
l
d
w
e
l
Ie
ta
l
.,[5,
JESCAP,[71および、 Femando,
*神戸大学大学院国際協力研究科学生
J
o
u
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lof
I
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u
d
i
e
sVo
.
17,
NO.l
[8J
.
1
6
6
国 際 協 力 論 集 第 7巻 第 1号
上昇は出産可能期間の短縮につながるため、
貢献度および寄与度を計測し、出生率および
その顕著な上昇は出生率低下の重要な要因と
その低下に影響を与えた主要因の変化を考察
なる。これは戦後に、 (
1
)
結婚適齢期の男女比
する。第二に、 1
9
6
3一例年の県別の婦人子供
2
)社会的価値観の変化による女子
率の変化、 (
比を用いて、時系列および地域的な特徴を挙
の教育や社会進出の促進、および(
3
)若年層男
げ、全国的な婦人子供比の低下を地域的な変
子の失業の増加によって起こったと言われて
化から考察する。第三に時系列および県別の
第二に、 6
8
年に導入された家族計画
社会経済環境の比較から、社会経済環境の相
プログラムなどにより、避妊知識の普及がそ
互関係および出生率との関係を検討する。こ
の実行を容易にしィスリランカでは速やかに
のような比較によって、出生率低下の要因の
5
)はスリラ
避妊実行率が上昇した。 J.Caldw巴u
変化が時間的および地理的にどのように変化
ンカの出生率が戦後よりすでに低水準であっ
したのかを確認することができる。
いる。
4
)
たのは、 1
9
2
0
3
0
年代に伝統的手法が普及し
ており、非常に効果的であったことを指摘し
E 出生カの近因分析
ている。避妊手法は子供の需要に対応した選
妊字力と現実の出生率とは誰離しており、
択しており、出生行動および計画に対する意
これは出生に影響を与える近因の効果によっ
識は非常に高いことも指摘されている。
こ
7
)
o
t
t
e
r
は総出生力モ
て起こる。 BongaartsandP
のように、スリランカにおける出生率低下に
デルによって、合計出生率 (TFR) と妊字力
関する研究の多くは結婚パターンおよび避妊
の関係を明らかにし、定式化している。この
行動との強い関係を指摘し、それらが他の社
モデルで用いられている近因は(1)結婚(Cm)、
会経済環境と相互に依存しあうことを示唆し
(
2
)
避 妊 (Cc)、中絶 (Ca)、
(
3
)産 後 不 妊 (
ci
)
ている。
である。図 lのように、結婚 (Cm) の影響
6
)
本稿ではスリランカの「人口センサス J
を取り除いた出生率は有配偶出生率 (TM)、
(
19
5
3、1
9
6
3、1
9
7
1お よ び1
9
8
1年)、 r
W
o
r
l
d
避妊 (Cc) および中絶 (Ca) の影響を取り
r
Dmographicand
除いた出生率は自然出生率 (TN)、そして産
F
e
r
t
i
l
i
t
y SurveyJ0
9
7
5
年
)
,
巴
19
8
7
および1
9
9
3
年)を主に用
H
e
a
l
t
hS
u
r
v
e
y
J(
後不妊 (
C
i
) の影響取り除いた出生率は妊苧
いて、これまで個々にしか分析されていなか
力 (TF) と定義される。 Cm、CcxCaおよび
った出生率と社会経済環境との関係を総合的
Ciは(1)式から (
3
)
式のように各出生率聞の比
9
5
3
9
3
年の出生率に
に考察する。第一に、 1
4
)
式のよ
率として表される。よって TFRは(
直接影響を与える近因の合計出生率に対する
うに表すことができる。
4) B
.C
a
l
d
w
e
l
l,[3) および、 L皿 g
f
o
r
d
,[
n
)
.
5) J
.C
a
l
d
w
e
l
le
ta
l
.,(4).
同 組dTh
a
p
a,(
1
3
) および T
s
u
ie
ta
,
.
l (
1
5
)
.
6) M
a
l
h
o
t
7) Bong
組出a
n
dP
o
t
t
e
r
. (2),c
h.
4
.
スリランカにおける出生率低下と社会経済環境の変化
1
6
7
産後不妊 (
c
i
)
出生力に対する抑制効果
出所:B
o
n
g
a
a
r
t
sa
n
dP
o
t
t
e
r,
[
2
J,P79.
図 1 出生率と近図の抑制効果
TFR
(
1
) Cm=一 一
TM
凶仕×
ω4
い。産後不妊期間(i)は再生産期間に影響
を与える。それは社会環境、特に伝統的社会
慣習に左右される授乳期間と関係が強く、授
乳期間の長期化は産後不妊を延長させる効果
(
3
)
TN
u =TF
があり、両者の関係は側式のように推計され
ている 8)。以上のようにこれらの近因は社会
(
4
) TFR=CmxCcxCaxC
ixTF
.生活環境の変化に依存することが伺える。
TFR以外の出生率は計測不可能であるた
結婚 (Cm) は女子の再生産期間に影響を
1
)一(
4
)
式から近因の効果を計ることは
めに、 (
5-49
才
及ぼす。女子の再生産期間は一般に 1
5
)一(同式を用いれば、各近因の
できないが、 (
と考えられているが、実際に再生産行動を行
効果を計測できる。
うのは有配偶女子であると規定すれば、結婚
パターンの変化が出生率に与える影響は大き
F
ー
ヱ m(a)g(a)
(
5
) Cm一一一一一一一
I
.g(a)
い。次に、避妊 (
C
c
) は出産に対して意図
的な制限を行う行動であり、出産数を抑える
目的で行っている点で結婚行動とは異なる。
しかし、避妊によって合計出生率が低下する
(
6
) Cc=1-1
.0
8xuxe
_I
.e(w)u(w)
(
7
) e一一一一一一一
点では結婚の効果と共通している。中絶
(
C
a
) は避妊と同様に出産数の制限のため
(
8
) Ca=1
に行われ、百R に重要な影響を及ぼす。し
かし、その現状を把握することは非常に難し
8) I
b
i
d
.,
p
.
2
5
.
国 際 協 力 論 集 第 7巻 第 l号
168
Cmは全ての再生産可能年齢女子が有配偶
20
(紛糾=市石万
者であるならば 1となり、有配偶者でないな
ら Oとなる。 Ccは全く避妊が行われていな
(
1
0
) i
=1
.753eO.01396B-O曲 J872B2
いとき、または全く効果がないときには 1と
ここで m は女子有配偶率、 gは有配偶出生
なり、実行率の増加およびより効率的な手法
率9)である。 aは女子の年齢グループである
の採用によって Ccは低下する。 Caは中絶が
ので、 m (
a
) は年齢別女子有配偶率および g
全く行われていなければ 1、全ての妊娠が中
(
a
) は年齢別有配偶出生率となる。したが
絶されていれば Oとなる。ここでは中絶に関
って、
(1-Cm) は未婚によって回避され
た出産割合となる。
U は避妊実行率、
w は避
w
) は手法別避妊実
妊手法であるので、 u (
する資料が不十分であるために Ca=1と仮
定する。 Ciは授乳や産後自制が行われてい
なければ l、不妊期聞が無限に長ければ Oと
行率となる。そして eは避妊手法の平均的な
実行効率 10)であるので、 e (
w
) は手法別避妊
効率となる。 Ccは実行率と手法効率の双方
なる。
各近因の算出には「人口センサス J 1953お
9
)
式の iは平均産後不妊期間で
に依存する。 (
よび 1963年(以後 Census53お よ び Census63
あり、倒式のように Bの平均授乳期聞から i
と略す。)、 iWorldF
e
r
t
i
l
i
t
yS
u
r
v
e
y
J1975年(以
の推計が可能で、ある。 75年には (
1
0
)
式により得
後
、 WFS75と略す。)、 i
DemographicandH
e
a
l
t
h
られた i
Iを用いるが、 87および93年は iが得
S
u
r
v
e
yJ 1987年および 1993年(以後、 DHS87
られるので、 (
9
)
式の iに87
年は 10.2および93
お よ び DHS93と略す。)を用いる 12)。人口セ
年は 8.8を直接代入する。ここでの産後不妊
期間とは産後の不妊期間および産後自制によ
って妊娠のリスクを負わない期間と定義する。
ンサスは全人口を対象にその性別や年齢など
の属性、教育水準や就業状態などの調査を行
っている。 WFS75、DHS87お よ び DHS93は
(
9
)
式右辺の分子は産後不妊期間が最も短いと
きに想定される平均出産間隔であり、分母は
産後不妊期間
0
)の延長を考慮したときの
平均出産間隔である。川
9) 15-19年齢層の出生率は g(
1
5ー 1
9
) =0.75Xg(2
0-24) を用いる。Ibi
d
.,
p
p
.8
1
8
2
1
0
) 実行効率は P
i
l
l
=
0
.
9
4
9,IDU=0.963, 不 妊 手 術 =
1
.0
0,コンドーム =0.616,周期法 =0.798、その他
=0.70とする。 I
b
i
d
.,
p
.8
4
.
1
1
) 平均出産間隔は胎児死亡のリスクを伴わない妊娠ま
.
5ヶ月および妊娠期間 9ヶ月の合計は 1
8
.
での期間 9
5ヶ月になり、産後不妊期間を加える。最短不妊期
間を1.5ヶ月とすると 2
0ヶ月となる。Ibi
d
.,pp3
6
-41
佃
d
p
.
8
6
.
出生力と家族計画における広範囲の調査であ
り
、 WFS75のサンプル数は 8,
834世帯(有効
回答率は 89.7%)および既婚女子 6,
854人(同
99.
4
%
)
、 DHS87は9,
119世 帯 ( 同 94.5%) お
よび6,
170人(同 95.1%
)
、 DHS93は9,
230世帯
(
同 97.6%) お よ び7,
078人(向 98.7%) で
ある。調査項目は多岐にわたり、回答者の年
1
2
) Dep
町 伽l
e
n
to
fC
e
n
s
u
sa
n
dS
t
a
t
i
s
t
i
c
s, [
1
7
],[
1
8
],[2
2],[
2
3
]a
n
d[
3
0
]
.
スリランカにおける出生率低下と社会経済環境の変化
1
6
9
齢や居住地などの属性、出産歴などの出生行
層の有配偶率の低下によって説明できる。女
動、出生の選好、家族計画(避妊)の知識や
3年の 20.9才から 7
1年 13)
子の平均初婚年齢は 5
実行、配偶関係や産後不妊状況および乳幼児
の23.5
才まで上昇し、若年層の有配偶率は 5
3
の健康状態などである。人口センサスから有
-75
年までに 15-19才で 23.9%から 6.5%に
、
配偶率が得られるため、 Cmの計測が可能で、
20-24
才では 68.4%から 38.0%へと減少し、
ある。 WFS75、DHS87お よ び DHS93で は 有
Cmを低下させる原因となった。そして、 75
配偶率、手法別の避妊実行率、および産後不
-93年の Cmは緩やかな低下であったのに対
妊期聞が得られるため、 Cm、Cc,および C
i
年に 0.71から 0.42と急速に
し
、 Ccは75-87
の計測が可能である。
3年には 0.39まで
低下し 14)、Cmを下回り、 9
表 1は TFRおよび近因と TFの算出結果を
低下している。 TFRの決定に及ぼす貢献度
(
表 l下半分)は 75年に C
iが5.0人 (43%)、
示している。 TFRは1
9
5
3年以降継続的に低
下し、 93年までに 3人減少し、 Cmは0.21低
下した。 75-93年までに Ccは0.32
低下し、
1
3
)D
e
p
a
r
t
m
e
n
to
fC
e
n
s
u
sa
n
dS
t
a
t
i
s
t
i
c
s, [
2
0
,
] p
.1
0
0
.
C
iは0.05
増加した。 Cmの低下のほとんどは
53-75年までに起こっており、この間に Cm
は0.18
低下している。この Cmの低下は若年
1
4
) WFS75の実行率は避妊手段に対する知識の普及が十
分ではなく、実際には伝統的手法の実行率は広く普
及していた。そのため C
cは過小評価されていると考
えられる。 G司j
a
n
a
y
a
k
ea
n
dJ
.C
a
l
d
w
e
l
l, [9], p
p
.
99-10l
.
表 1 合計出生率と各指標の推移および貢献度
年
1
9
5
3
1
9
6
3
2
1
9
7
5
)
1
9
8
7
1
9
9
3
年
TFR
5
.
3
2
5.04
3
.
8
1
2.83
2.28
と
出
生
率
Cm
Cc
0.692
0.653
0.513
0.710
0.422
0.500
0.392
0.
480
貢 献 度3)
指
4
票
C
i
0.679
0.697
O
.733
人関
Cc
T
F
)
)
1
5
.
4
1
1
9
.
2
4
1
6
.
5
3
TF-TFR
Cm
C
i
1
9
7
5
11
.60
(
10
0
.
0
)
3.62
(
31
.2
)
3.03
(
2
6
.
2
)
4.95
(
4
2
.
7
)
1
9
8
7
41
1
6.
(
1
0
0
.
0
)
2.83
(
17
.
2
)
7.75
(
4
7
.
2
)
5.93
(
3
5
.
5
)
1
9
9
3
1
4
.
2
5
(
1
0
0
.
0
)
2.47
(
17
.
3
)
7.37
(
51
.7
)
4.41
(
3
4
.
0
)
注: 1) 宵 は (
4
)
式より算出。
2
)B
o
n
g
a
a
r
t
sa
n
dP
o
t
t
e
r, [
2
,
] P
.8
3
.
3)各近因の貢献度は次のように計算した。 Cmは(百1
T
F
R
) I(
T
F
一時間、 C
cは (TN-TM)パTF-TFR)、
C
iは(宵-TN) I(宵ー官R
)。括弧内は貢献度の割合である。
出所) D
e
p
a
r
t
m
e
n
to
fC
e
n
s
u
sa
n
dS
t
a
t
i
s
t
i
c
s, [
1
7
,
] [
1
8
],[
2
2
,
] [
2
3
]a
n
d[
3
0
]
.
国 際 協 力 論 集 第 7巻 第 l号
1
7
0
Cmが3
.
6人 (
3
1%)であり、 Cmの貢献度は、
から 16.5%に増加している。
8
7
年には 2
.
9(
17%)、
9
3年には 2
.
5人(17%)
パリティ(既往出生児数)別に避妊実行率
と大幅に低下した。他方、 7
5年の避妊の貢献
の傾向を見てみると、避妊実行率はパリテイ
.
0
一
人 (
26%) と最も低かったが、 8
7
年
度は 3
Oで
、 8
7年 が6.5%、9
3年 が1
1
.7%と低いが、
Iになると 43.5%、52.4%と1
首力日し、
と9
3年には、 7
.
8人 (47%)、7
.
4人 (52%) と
ノTリティ
最も高くなった。
パリティ 3以上では 75%、80%と非常に高く
7
5年以降、 Ccが大きく低下したのは、避
なる。各パリテイにおける実行者の手法は以
妊実行率の上昇、特に効率的な手法の実行に
下の通りである。パリティ 0-1では実行者
よって説明できる。本格的に家族計画プログ
の半数以上が伝統的手法 ωを利用し、次いで
3年に FamilyPlanning
ラムが導入されたのは 5
3年のパリテイ lで
近代的手法であったが、 9
A
s
s
o
c
i
a
t
i
o
nがサービスを開始してからである。
は両手法の実行率に差はなかった。不妊手術
6
8年には国家政策としてこのプログラムが取
はパリテイが 2になると、 8
7
年に実行者のう
り入れられ、避妊手段の知識とサーピスが国
3
年は 21%が利用し、パリテイ 3
ち約 26%、9
家によって無償で受けられるようになっ
では 56%、57%、パリテイ 4以上では 70%と
た
。
そのため 7
5年 以 前 の Ccは7
5
年のO
.7
1
1
5
)
67%と実行者の大半を占めるようになる。パ
よりも高い値になると思われる。避妊実行
リテイの増加は避妊実行率の増加だけでなく、
率 16)は7
5年の 41
.4%から 9
3年には 66.1%まで
より効率的な手法が選択され、パリテイが l
上昇し、全ての年齢層で20%以上増加してい
-2で出生制限の意識が起こっていることも
る。年齢別に見ると、その上昇が最も高かっ
わかる。結果、 Ccの低下は実行者の増加と
たのは 35-44
才で、 7
5年の48.4%から 9
3年に
より効率的な手法によるものであることがわ
は75.6%まで上昇しており、次いで'
15-24才
5年以降の近代的な避妊行動の実
かる。特に 7
4.4%から 49.7%に上昇している。つまり、
が2
行 者 の 急 増 が TFRの低下の主要な要因とな
2
5才以上の有配偶女子の 60%以上、 2
5
才未満
ったと考えられる。
の有配偶女子もおよそ半数が避妊を実行して
5
年 以 降 の 近 因 の 変 化 が TFRに及
次に、 7
R と各近因
6
)
式にあるように Cc
いることになる。また、 (
ぼす影響を計測してみよう。
は実行率とともに避妊効率にも依存している。
iおよび妊苧力の
の変化率を P仁 Pm,Pc,Pa,P
この期間に最も効率的な不妊手術の実行率が
変化率を P
rとおくと、判4
)
式は (
1
1
)
式のよう
1
9
)宵
10.6%から 27.2%へ、近代的手法17)も 10.8%
1
8
) 伝統的手法は,周期法,性交中絶,その他の総計で
あ
る
。
1
5
)不妊手術に関しては奨励金を受け取ることができる。
1
6
) 実行率は全手法の合計である。
1
7
) 近代的手法はピル, IUD,注射,殺精子剤,コンド
ー
ム
、 Norplantの総計である。
1
9
)B
o
n
g
a
a
t
sa
n
dP
o
t
t
e
r
,
p
o
.c
i
,
.
tp
p
.1
0
3
2
6
.
四川一 TFR,
)/TFR"
20)TFRおよび近因の変化率は Pf=(T
日n=(Cm
,
.
,
一 Cm
)
,ICm" ~c =(C,
C
.
,-Cc)
,ICct、
Pa=(
C
a
.
.
,
ー Ca
.
)IC,
.
a P
i=(
C
i,
.
,
ー Ci,
)/Ci
,
および
Pr=(T
F
,
川 TF
)
,IT
,
F である。 tは時間を表す。
1
7
1
スリランカにおける出生率低下と社会経済環境の変化
にまとめられ、 TFRの変化率は各近因の変
高く、特に 75-87
年の変化率は -41%であっ
化率に分解できる。このうち妊字力の変化率
iは87-93年のほうが1.5た
。 Pmおよび P
(貯)はその他の近因の変化率、子 1)は近因の相
2倍の値であり、 87-93
年の期聞が短いこと
互作用の変化率とする。
を考慮すると、この 2近因の変化は軽視でき
。= + + + + +
ない。同式は 2期間の TFRの差(変化分)
を各近因で分解したものであり、それらを寄
)
1 Pf Pm PC Pa P
i Pr 1
年では避妊の寄与率が
与率と呼ぶと、 75-87
,
= ,
+++
(
1
2
) T
F
R
'
+
I-TFR TFR (
Pm PC Pa P
i
最も高く、 P
cは 官Rを1.5
5人低下させる効
rと P
i
果を持っていたことになる。しかし、 P
+Pr+1)
。
の寄与率は合わせて1.0
5人増加させているた
1
)
式および同式の計測結果は表 2に示される。
年で
めに、その大半を相殺している。 87-93
75-87
年の TFRの 変 化 率 (
P
f
) は26%、8
7
rの寄与率が最も高くー 0
.
4
0人、次いで
はP
年には 19%であった。 87-93
年の期間は
-93
P
cの寄与率が一 0
.
2
0
人とこの期間の低下の
75-87
年の半分の 6年であるので、 87-93
年
大半を占めており、 TFRの決定および変化
のほうが、低下スピードが速いことがわかる。
に最も影響を与えているのは両期間とも避妊
8
7
年の TFが 1
9と非常に高い値であるために、
である。以上のことから、 I下R の低下は継
P
r
) が高い変化率となり、その
その他近因 (
年は結婚、 7
5
続的に起こっているが、 53-75
年と 87-93
年で異なる。他 3近
符号は 75-87
-93年は避妊が第一要因となっていることが
因の変化率 (
P
m、P
C、pi)は両期間とも符
わかり、これは産後不妊や結婚といった意図
cは両期間とも最も
号の変化はなかった。 P
的でない行動の効果から意図的なものに転換
していることを示している
却
I
=
t
z
p
乃+
Ezp明 +
R
R
.
pa川
p句
R
L
+
n
.
P川
PH
す
ト -M
PJ
C
a守 山 門
rす 臼 何
℃ム M
s
=
E 出生率の推移 (
1
9
6
3
9
4年)
=
ここで h m,
c
,
a
,
i
,
r
,j'
"m,
C,
a
,
i
,
r
,k m,
C,
a
,
i
,
r
,1
=m
,
c
,
a
,
I
,
rおよび h宇j宇 k宇 Iである。
1963-94年の県別出生率の変化を見てみよ
う。ここでは出生率を示す指標として婦人子
表 2 合計出生率の変化の要因分解
Pm
P
c
P
i
p
r
I
-40.56
合計
1975-87
変化率陶 -2
.
5
3
寄与率(人) - 0
.
1
0
- 1
.5
5
+2
.
6
5
+0
.
1
0
+
2
4
.
9
1
+0
.
9
5
-10.18
-0
.
3
9
-25.72
-0
.
9
8
1987-93
変化率問 -4
.
0
0
寄与率(人) - 0
.
1
1
-7
.
1
1
-0
.
2
0
+5
.
1
6
+0
.
1
5
-14.09
-0
.
4
0
+0
.
6
0
+0
.
0
2
-19.43
-0
.
5
5
一
出所:表 lより算出。
1
7
2
国 際 協 力 論 集 第 7巻 第 l号
供比 (CWR) を用いる。 CWRは15-49
才女
地域であるコロンボ、を中心とした南西部およ
子人口千人あたりの 0-4才児の人口(9'
0
0
)
び中部はウェット・ゾーンと中央高地という
で表される。用いたデータは C
e
n
s
u
s
6
3、7
1
地理的条件にある。低出生地域はコロンボお
および8122)と D
e
m
o
g
r
a
p
h
i
cS
u
r
v
e
y(
1
9
9
4年)却
よび近隣県の工業、商業・サーピス業および
である。 CWRを県別にみると、地域格差が
戦前からスリランカ経済を支えた主要輸出産
確認できるため、簡略化して、低出生地域と
品である紅茶・ゴム・ココナッツの生産およ
高出生地域に区分する(表 3)oCWRはコロ
び加工地でもある。また、高出生地域に区分
ンボを中心にその隣接県と西沿岸部の CWR
される東部および北部は、ドライ・ゾーンと
が低く、東部にいくほど高くなるが(図 2参
呼ばれる自然条件のもとにあり、主要産業は
照)、全県が低下傾向にある事がわかる。全国
農業で、圏内消費を目的とした米などの穀物
平均をみると、その低下の度合いは 81-94
年
・根莱作物を生産している。独立直後からこ
'
1
7
3
.
2
%
。、次いで63-71年の -1
が最も高く -
年代後半に島の
の地域は開発対象とされ、 60
。である。県別では 71-81年に -1∞%。
05.6%
a
h
a
w
e
l
i開発計画が
東側大半を対象とする M
3
以上の低下はわずか 7県であるのに対し、 6
本格的に実施された。この計画は長期的かっ
ー7
1年は 1
9
県となり、特に 6県(うち低出生
多目的であり、水力発電、湛瓶開発を中心に、
地域は 5県)は -200%
。以上低下している。
インフラ整備などの充実やそれらに伴う入植
3年に 265.2%
。あった地
この急速な低下は、 6
促進などが行われている。その結果、東部全
域格差を 7
1年までに 198.9%
。に縮小させた。
域において大小の濯瓶事業が施され、耕作面
8
1一例年には全県の CWRは -100%
。以上低
積の飛躍的拡大、高収量品種と化学肥料の導
下し、高水準の県ほどその程度は大きく、地
入による単位収量の増大に成功した。高出生
域格差は 67.0%
。と更に縮小した。その結果、
地域が経済的に注目されたのは戦後からであ
スリランカは 6
3年から 30年間に CWRを666
った。このように、 CWR水準は自然条件お
%。から 315%
。に半減させることに成功し、 6
3
よび主要産業の分布と一致する。特に、農業
年の最低水準であった K
e
g
a
l
l
eよりも例年に
部門であっても、輸出作物生産地域と国内消
o
n
e
r
a
g
a
l
aの CWRのほう
最高水準である M
費作物生産地域別とはその傾向が異なること
が低くなった。
が分かる。
各県の出生率と地理的・経済的条件との関
CWRと所得の関係を見てみよう。所得に
係を見てみると以下のことがわかる。低出生
関する資料はスリランカ中央銀行の
2
2
)D
e
p
a
r
t
m
e
n
to
fC
e
n
s
u
sa
n
dB
t
a
t
i
s
t
i
四
, [
1
8
J,[
l9
Ja
n
d
[
2
1
]
.
町 田 開t
o
fC
e
n
s
u
sa
n
dS
t
a
t
i
s
t
i
c
s, [
2
4J
.北部およ
2
3
) Dep
2,
1
8
0世帯を対象に調査しており、
び東部を除く、 9
調査項目は人口センサスとほぼ同じである。
2
4
) 農業部門のこのような区分定義は一様でなく、輸出
作物部門は近代部門やプランテーション部門と呼
ばれている。また国内消費作物部門は伝統部、農
,P
.
民また零細部門とも呼ばれる。 H
. Nakamura
.M.P
.S
e
n
a
n
a
y
a
k
e, [
1
4
Jp
.2
5
0
.
R
a
t
n
a
y
a
k
e叩 dS
スリランカにおける出生率低下と社会経済環境の変化
1
7
3
一
)v
m
(圃
滅﹃
増一
3L-
の-
比一県
44EE--
仲代目
Lル由
人一
子一
qd-11
婦寸│
:
;
一域
表一地
1
9
8
1
9
4
S
r
i
L
a
n
k
a
1
7
3
.
2
'低出生地域
w
C
o
l
o
m
b
o
w
Gampaha
w
K
a
l
u
t
a
r
a
5
5
6
.
4
C
K
a
n
d
y
C
3
6
8
.
6
1
11
.0 1
1
4
.
9 2
5
0
.
2 1
1
8
.
4
4
2
0
.
4
2
7
3
.
5
4
8
3
.
3
4
6
5
.
6
7
.
8 2
9
2
.
4 -7
3
.
1 -1
1
7
3
.
1
6
51
.8
5
2
2
.
8
4
5
9
.
1
1
2
8
.
9 -6
1
51
.1
3
0
8
.
1 3
.
7 -
N
u
w
a
r
aE
l
i
y
a
6
6
8
.
4
5
3
2
.
6
5
01
.7
0
.
9 1
3
5
.
8 -3
1
4
6
.
1
3
5
5
.
6 -
S
G
a
l
l
e
5
8
7
.
6
5
0
3
.
7
4
4
6
.
1
7
.
6 1
21
.4
3
2
4
.
8 -8
3
.
9 -5
S
M
a
t
a
r
a
6
8
3
.
6
5
31
.7
4
6
8
.
8
2
.
8 1
51
.9 -6
1
1
2
.
5
3
5
6
.
3 -
NW
K
u
r
u
n
e
g
a
l
a
7
7
3
.
5
5
5
6
.
8
4
6
0
.
7
6
.
1 2
1
6
.
7 -9
1
7
3
.
0
2
8
7
.
7 -
NW
Pu
t
t
a
l
a
m
6
9
0
.
1
5
6
4
.
3
5
5
7
.
7
.
6 1
2
5
.
8 - 6
2
2
8
.
5
3
2
9
.
2 -
S
a
R
a
t
n
a
p
u
r
a
6
7
4
.
8
5
6
3
.
0
5
21
.2
.8 1
4
9
.
0
11
.8 -41
3
7
2
.
2 一1
S
a
K
e
g
a
l
l
e
5
0
0
.
7
5
01
.7
4
3
3
.
1
2
8
8
.
9
5
9
4
.
5
4
8
3
.
5
1
4
6
.
8
8
.
7 1
4
4
.
1
1
.0 -6
高出生地域
N
J
a
f
f
n
a
6
1
4
.
9
5
5
6
.
3
4
8
7
.
2
9
.
1
-5
8
.
6 -6
N
M
a
n
n
a
r
9
51
.6
7
3
7
.
9
6
5
8
.7
9
.
1
2
1
3
.7 -7
N
V
a
v
u
n
i
y
a
9
7
8
.
1
7
61
.8
6
6
6
.
8
5
.
0
2
1
6
.
3 -9
N
M
u
l
l
a
i
t
i
v
u
E
B
a
t
t
i
c
a
l
o
a
8
8
4
.
7
7
4
7
.
6
6
6
3
.
5
1
3
7
.
1
E
Ampara
9
31
.5
7
8
3
.7
6
2
2
.
6
1
4
7
.
8 1
61
.1
E
T
r
i
n
c
o
m
a
1
e
巴
9
4
0
.
6
7
8
2
.
1
7
0
9
.7
1
5
8
.
5
7
1
3
.
5
8
4
.
1
7
2.
.
4
NC
A
n
u
r
a
d
h
a
p
u
r
a
1
0
0
5
.
5
8
3
2
.
2
6
4
7.
4
1
8
4
.
8 1
7
3
.
3 2
8
7
.
4
3
5
9
.
9 -
NC
P
o
l
o
n
n
a
r
u
w
a
1
0
2
5
.
0
7
8
8
.
6
6
0
2
.
2
1
8
6
.
4 2
3
6
.
4 2
3
7
.
1
3
6
5
.
1 -
Uva
B
a
d
u
l
l
a
7
5
6
.
8
6
2
0
.
1
5
0
3
.
8
1
3
6
.
7 1
1
6.
4 1
3
4
.
6
3
6
9
.
2 -
Uva
M
o
n
e
r
a
g
a
l
a
1
0
5
7
.
9
8
1
7
.
1
7
0
8
.
2
2
4
0
.
8 1
0
9
.
0 2
6
0
.
3
4
4
7
.
9 -
S
H
a
m
b
a
n
t
o
t
a
9
0
4
.
1
6
3
6
.
0
日9
.
7
2
6
8
.
0 -8
6
.
4 1
6
0
.
2
3
8
9
.
5 -
C
M
a
t
a
l
e
7
8
8
.
9
6
1
5
.
6
5
0
6
.
9
1
0
8
.
7 4 1
6
0
.
6
1
7
3.
3
4
6
.
2 -
:1
)W:西部, C:中部, S
:南部, NW:北西部, S
a
:サパラガムラ, N:北部, E:東部, E:東部,
NC:北中部, U
v
a
:ウ バ
出所:D
e
p
a
r
t
m
e
n
to
fC
e
n
s
u
sa
n
dS
t
a
t
i
s
t
i
c
s,口8
],[
1
9
],[
2
1
]a
n
d[
2
4
]
.
注
国 際 協 力 論 集 第 7巻 第 1号
1
7
4
ConsumerF
i
n
a
n
c
eandSocio-EconomicS
u
r
v
e
y
の上昇率が関係しているとも言いがたい。
(
197125)、78/79、81/82および'86/87年)
スリランカの組死亡率は 63年J
こ8.7%
。と非
から得られる。これは家計および個人の社会
常に低く、高出生地域の方が若干低くなって
・経済状況の調査で、調査項目は所得や支出
いる。しかし、 46年の平均粗死亡率は低出生
などの家計状況、栄養・保健、住居や就業状
。に対し、高出生地域では 24.1%
。
地域の 17.9%
況などであり、表 4は73年から 86/87
年まで
と高かった。高出生地域はドライ・ゾーンと
の 1ヶ月の稼得者所得を示している。この調
いう地理的条件からマラリアによる死亡が非
査では調査地域を社会経済状況から 5つのゾ
常に多かったためである。 46年から実施され
ーンに区分しているが、更に所得水準から、
た保健プログラムとともに、マラリア撲滅の
z
o
n
e5 (コロンボ市)を高所得地域、 zone4
プログラムが始まり、 53年に高出生地域の粗
を低所得地域および他のゾーン (
z
o
n
e1、 2
死亡率は 11
.4%
。まで低下し、低出生地域の
および 3)を中所得地域に区分できることが
1O.7%,。との格差はほとんどなくなってい
わかる。低出生地域は中所得地域の z
o
n
e1、
るO
2
6
)
低 所 得 地 域 の zone4お よ び 高 所 得 地 域 の
粗死亡率の低下には女性死亡率の低下と乳
zone5で構成されており、出生率と所得の関
児死亡率の低下が寄与しており、 CWRは高
係は見出せない。高出生地域の多くは中所得
くなるはずである。死亡率と出生率の低下に
地域の zone2と zone3に属し、高出生率が
は時間差を伴うことを考慮すれば、両地域の
低所得によって説明できないことがわかる。
CWR格差の一要因として、 46年以降の死亡
このように所得水準と CWRとの顕著な相関
率の低下と深く関係していることが伺える。
関係は見られず、 CWR低下率の差異に所得
2
6
)CDRは1945-50年の短期間に激減し、特にマラリ
2
5
) 71年は C
o
n
s
u
m
e
rF
i
n
a
n
c
eS
u
円 e
y、8
6
/
8
7
年の調査は
北部およひ凍部は対象から外されている。
表4
アによる死亡率は46-47
年の 1年間に 3分の lに低
r
a
y, [
1
0
]
.
下した。 G
ヶ月平均稼得者所得 (Rs)
Zone
県
l
Colombo,
G
a
l
l
e,
Gamp
油a
,K
a
l
u
t
a
r
a
,
M
a
t
a
r
a
2
1973
1978/79
1981/82
1986/87
262
627
1126
2006
企盟E箆
妄
, Anuradhapura, Hambantota,
Moneragala
,
Polonnaruwa,
Pu
t
t
a
l
a
m
262
713
1183
1987
3
,
皇 盟担旦笠, M
u
l
l
a
i
t
i
v
u, B
a
t
t
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c
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J
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f
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Vavuni
盟
,T
r
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n
c
o
m
a
l
e
e
273
742
1133
4
盟益坐, Kandy,Nuwara E
l
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a,.
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'
!
旦
血l
l
a
,
K
u
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a
l
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,
R
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t
n
a
p
u
r
a,K
e
g
a
l
l
e
178
508
'
9
6
3
1399
5
Colombom
u
n
i
c
i
p
a
l
i
t
y
275
1134
1979
3842
注:下線部は高出生地域に含まれる県である。
出所:C
e
n
t
r
a
lBanko
fS
r
iL
a
n
k
a,[
1
6
],p
.
2
4
5
.a
n
dW
.D
.Lakshman,[
1
2
],p
.
1
9
2
.
スリランカにおける出生率低下と社会経済環境の変化
1
7
5
つまり、両地域の死亡率低下の時間差は出生
のである。しかし、死亡率とは異なり、出生
率低下にも時間差を生み出し、結果として地
率の低下のメカニズムは社会経済環境の変化
域格差が生まれたのではないかと考えられる。
に影響を受けるため複雑で、ある。そこで、出
2
7
L
a
n
g
f
o
r
d
)
が示している C
W
R
*
2
8
)は、ここで
生率に影響を与える他の諸環境を見てみよう。
使用している CWRとは若干定義が異なるが、
l
V 出生率に影響を与える社会経済要因
それを用いると 1
946-53年の聞に低出生地域
の 4県が低下を始めており、増加率は 2.1%
ここでは両地域の社会経済環境を比較し、
であった。他方、高出生地域においてはほぼ
CWRとの関係を検討してみよう(表 5)。
社
全県で増加しており、増加率は 20%と1
0
倍の
会経済環境として結婚、抑制行動、教育、就
増加率となり、地域格差は更に拡大したこと
業を挙げ、各項目ごとに検討してみる。
を示している。このように出生率の地域格差
結婚は'慣習的な要素を持っている一方、他
は死亡率低下の時間的格差および出生率がこ
の社会経済環境の影響も受けやすい。女子の
れに速やかに対応したことによって起こった
平均初婚年齢は低出生地域の方が高く、高出
生地域との格差は 6
3年に 3才
、 8
1年には 2才
2
7
)L
a
n
g
f
o
r
d,[
l
l
,
)p
.
2
9
0
.
2
8
)CWRが 1
5
4
9才女子人口千人あたりの 0-4才児
人口であったのに対し、 C
W
R
'は1
5
4
9
才女子千人
であった。 6
3年において、低出生地域の 3県
4才を超えていたのに対し
の平均初婚年齢は 2
あたりの 1才未満児人口と定義される。
表 5 CWRと社会経済環境の変化
域
地
年
CWR
附
1
)
粗死亡率
附)
2
平均女子初婚
年齢(羽
女子識字率
開
男子識字率
開
女子就業率
開
失業率
開
低
出
生
地
域
高
出
生
1
9
6
3
6
3
8
.
1
3
(
6
1
7
2
.
5
)
地
域
1
9
7
1
1
9
8
1
1
9
9
4
1
9
6
3
1
9
7
1
1
9
8
1
1
9
9
4
1
2
.
6
3 9
5
2
4
.
3
5 4
6
3
.
9
1 3
0
3
.
3
0 7
2
3
.
2
5 6
1
8
.
4
6 3
7
9
.
6
4
(
9
51
.
1
) (
2
5
8
2.
4
) (
1
4
7
6
.
4
)(
1
6
1
2
2
.
0
) (
8
3
6
7
.
0
) (
6
6
7
2
.
6
) (
1
3
1
5
.
7
)
8
.
2
1
8
.
6
5
7
.
8
4
5
.
9
6
5
.
9
9
6
.
9
9
4
.
8
8
4
.
3
6
(
2
.
7
)
(
2
.
2
)
(
0
.
6
)
(
0
.
8
)
(
1
.8
)
(
2
.1
)
(
1
.
1
)
(
1
.
4
)
2
2
.
4
5
2
4
.
0
5
2
4
.
9
4
.3
3
2
2
.
7
1
1
9
.
3
8
21
(
2
.
3
)
(
2
.
0
)
(
2
.
0
)
(
1
.3
)
(
1
.5
)
(
1
.7
)
6
6
3
.
2
1
7
0
.
7
3
8
3
.
9
5
1
.6
2
7
7
.
1
5
5
3
.
8
3
.5
)
1
11
(
4
6
.
3
)
(
1
3
4
.
7
) (
.9
)
(
9
5
.
4
)
(
71
(
12
3
.
7
)
7
9
.
1
9
9
1
.9
1
8
6
.
0
6
7
3
.
9
9
7
9
.7
5
8
7
.
1
9
(
7
.
6
)
(
2
3
.
8
)
.7
)
(
3
0
.
4
)
(
31
(
14
.
6
)
)
(
2
6
.1
1
8
.
6
4
2
1
.2
0
1
7
.
9
6
9
.
1
9
1
3.
4
9
1
1
.7
9
(
5
9
.
2
) (
(
9
7
.
2
) (
(
8
6
.
3
)
1
0
3
.
7
)
(
4
8
.1
1
0
8
.1
)
)
1
9
.7
0
2
0
.
1
7
1
4
.
3
4
1
0
.
4
1
1
0
.
2
8
1
0
.
4
3
(
1
0
.
7
)
(
1
7
.
8
)
(
3
.
6
)
(
3
4
.
0
)
(
51
.9
)
(
14
.
2
)
注:括弧内は分散。
出所:1)表 3より算出。
2
)粗死亡率は D
e
p
a
r
t
m
e
n
to
fC
e
n
s
u
sa
n
dS
t
a
t
i
s
t
i
ω,[
2
5
,
] [
2
6
],[
2
7
],[
2
8
]a
n
d[
2
9
]
.
3) それ以外は表 3と同じ。
国 際 協 力 論 集 第 7巻 第 l号
1
7
6
て、高出生地域で2
0
才を超えていたのはわず
62.8%、次いで NuwaraE
l
l
i
y
aと Kandyの6
3
.
8
か 4県で、 7県は 1
8
才台であった。しかし、
%と低出生地域の方が低い県もあった。手法
8
1年には高出生地域のうち 4県の平均初婚年
別に比べてみると、近代的手法の実行率に地
齢が2
4
才台になっており、最も平均年齢が低
域差はなく、 8
7
年は 9-12%、9
3
年は 16-20
かったのは B
a
t
t
i
c
a
l
o
aの21
.1
才であった。他
%であった。低出生地域は伝統的手法の実行
方、低出生地域では P
u
t
t
a
l
a
mの2
2
.
2才 が 最
率が高く Kandyと Nuwara E
l
i
y
aを除くと 87
5才を越えている。つまり、
も低く、 7県は 2
年には 20-30%、9
3年には 25-30%で、不妊
0年間の
両地域の初婚年齢の上昇傾向には約2
手術の実行率が24-29%から 21-27%に低下
時間差があると思われる。
3年には近代的手法の実行
したことにより、 9
避妊の実行には経済発展や死亡率の低下な
率が最も高くなった。一方、高出生地域は、
どによる出産数を減らす動機と避妊知識の普
不妊手術が8
7年に 30-36%、9
3年に 29-37%
及が必要である。家族計画プログラムはその
と実行率の半分を占めており、近代的手法と
知識とサービスを提供し、実行を容易にする
伝統的手法は共に 10%台である。 Kandyと
環境を与えた。 2節で用いた WFS75、DHS
NuwaraE
l
i
y
aは低出生地域に属するが、全体
8
7および
2
9
)を用いて避妊実行率を比
DHS93
の実行率は比較的低く、実行されている手法
5年の避妊実行率はすでに低
較して見ると、 7
は高出生地域と同様に不妊手術が半数を占め、
出生地域は高く、最も実行率の高かったのは
近代的手法と伝統的手法はあまり差がな
コロンボ市の 54%で、最も低かったのは高出
7
年以降両地域の実行率は同
い
。 30) つまり、 8
生地域である J
a
f
f
n
a
,
Mannar
,V
a
v
u
n
i
y
aおよび
水準であるがその実行手法は異なり、その効
M
u
l
l
a
i
t
i
v
uの19%であり、その実行率格差は
率の差が高出生地域の出生率をより低下させ
35%であった。しかし、 87
年にその格差はな
る事になったのである。
くなり、実行率は最低でも低出生地域の
教育水準は初婚年齢、抑制行動に影響を与
Nuwara E
l
l
i
y
aと Kandyの57.3%で、最高は
0
才以上31)女子識字
えると考えられている。 1
低 出 生 地 域 の コ ロ ン ボ ( 県 ) 、 Gampaha,
率は 6
3年からすでに高〈、低出生地域で6
3
.
2
K
a
l
u
t
a
r
aの66.9%であった。高出生地域は 5
8
%、高出生地域で 53.8%であった。両地域と
-64%と地域内の格差はなく、全体に高かっ
も8
1年までに 20%以上上昇しており、男子識
た
。 9
3年 に は 高 出 生 地 域 の P
o
l
o
n
n
a
r
u
w
aと
字率との格差を縮小させている。表 6は15-
H
a
m
b
a
n
t
o
t
aの実行率が71
.5%と最も高い実
才ての女子就学率32)を示しているが、女子就
1
9
行率となり、最も低かったのはコロンボ市の
3
0
) これらの県は輸出作物部門が盛んで、女性の経済的
役割が大きく、中絶が頻繁に利用されていた。 J
.
2
9
) WFS75は県を 6つのゾーン、 DHS87
お よ び9
3は 7つ
のゾーンに区分し、 2つのゾーンにまたがる県もあ
る
。
C
a
l
d
w
e
l
le
ta
l
.,
[4],
p
.1
8
.
3
1
)6
3
年は 5才以上
3
2
) 15-19
才女子就学率は(15-19
才女子就学人口 /15
才女子人口)である。
-19
スリランカにおける出生率低下と社会経済環境の変化
表6 1
5ー 1
9才女子人口の就学率(%)
1
7
7
B
a
t
t
i
c
a
l
o
aの23%であり、その差は 26%と変
化がない。
低出生地域
高出生地域
出所:D
e
p
a
r
t
m
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n
to
fC
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dS
t
a
t
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s
t
i
c
s,[
2
0
],p
p
.
1
5
0
5
1
教育と同様に結婚や避妊行動に影響を与え
るのは就業、失業状況である。女性の就業率
の上昇は初婚年齢を高めると考えられる。ま
た、結婚後の就業は機会費用を高めるために、
学率は 1
0
年間で両地域とも 11%増加し、地域
避妊行動の増加をもたらす。女子就業率 (
1
0
格差には変化がない。この年齢層は中等教育
才以上女子雇用数33)/10
才以上女子人口)は
就学期にあたり、スリランカの教育は識字率
低出生地域のほうが高く、特に N
u
w
a
r
aE
l
i
y
a
に見られるような初等教育の普及にとどまら
は6
3
年から 8
1年の 3ヶ年とも 40%を超えてい
ず、女子においても中高等教育の普及が進ん
た。他方、高出生地域の女子就業率は低く、
でいることが分かる。
6
3
年に女子就業率が1
0%以上であったのは 3
教育期間の延長は女性の社会参加を促し、
県で、 5%以下は 5県あった。 B
a
d
u
l
l
aの女
初婚年齢を引き上げる効果をもっ。また、女
子 就 業 率 は6
3-81年 と も 約30%であるが、
子就学率の高さは家族計画プログラム、リプ
CWRは同地域の中で最低水準にあり、女子
ロダクテイブ・ヘルスの普及に役立つ。学校
の就業も CWRに寄与していることが伺える。
が普及活動の場となり、学校教育がその理解
失業、特に男性の失業は結婚の遅滞および
を助けるからである。よって教育水準の高い
所得獲得機会消失による出産抑制の動機を促
地域では初婚年齢や抑制行動の実行率が高く
す。失業率 (
1
0
才以上失業人口 /10
才以上労
なる。だが、この就学率には地域内格差が見
働力人口 ω) については低出生地域の方が高
られ、低出生地域に属する N
u
w
a
r
aE
l
i
y
aと
く
、 7
1年と 8
1年の地域格差は約 10%あり、高
Pu
t
t
a
l
a
mは低く 7
1年では 21%と22%、8
1年で
失業率と低出生率の関係が確認できる。
1%であった。就学率の高い県は 7
1
も28%と3
以上のように、両出生地域で社会経済環境
年で M
a
t
a
r
aの40%、8
1年で K
e
g
a
l
l
eの55%と
は改善されているが、高出生地域の改善の速
M
a
t
a
r
aの53%で あ り 、 そ の 差 は 19%から 2
8
度は速く、地域格差を縮小させた。これは
%に拡大している。 N
u
w
a
r
aE
l
i
y
aは紅茶生産
CWRの低下の地理的傾向とも一致している
の中心地であり、プランテーションの労働力
ことカ宝わかった。
は女性に依存しているために、女子の教育水
準は低水準にとどまると考えられる。高出生
地域の場合、 7
1年および8
1年の J
a
f
f
n
aの就学
率は 39%、5
0%と最も高く、最低水準にある
3
3
) 就業は賃金または給与を受け取る労働者、自営と賃
3
年は 5才以
金等を受け取らない家族労働を含む。 6
の は7
1年 に は M
a
n
n
a
rの12%、8
1年 に は
上
。
3
4
) 労働力は就業人口と失業人口の合計で示される。
国 際 協 力 論 集 第 7巻 第 l号
1
7
8
V
おわりに
激な変化が避妊の出生率に対する貢献度を増
本稿ではスリランカの『人口センサス』
7
年以降は避妊が出生率に対する第
加させ、 8
(
1953、1
9
6
3、1
9
7
1お よ び1
9
8
1年
)
、 r
W
o
r
l
d
一要因に転換したことがわかった。第二に、
(
1975
年
)
, W
D
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g
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a
p
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ca
n
d
F
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婦人子供比 (CWR) の県別比較において、
H
e
a
l
t
hS
u
r
v
e
yJ
(1
9
8
7および1
9
9
3
年)を主に用
その水準から低出生地域および高出生地域に
いて、スリランカの出生率と社会経済環境の
区分でき、 6
3年以降両地域の CWRは低下し
関係を考察した。
ていたが、特に高出生地域の急速な低下が地
第一に、合計出生率 (TFR) の近因分析で
域格差を縮小させ、全国水準の CWRの低下
は
、 53-75
年では出生率に対する結婚の貢献
に寄与していたことが分かった。第三に、
度が高かった。しかし、 75-87
年の避妊の急
CWRと社会経済環境の関係を見てみると、
社会経済環境においても地域間格差および地
域内格差が見られた。 6
3年以降、全国的に諸
環境の改善が進み、特に高出生地域では初婚
年齢の上昇と避妊実行率の上昇が同時期に起
こったために、 CWRの急速な低下につなが
った。このようにスリランカの出生率の低下
は主に結婚や避妊といった近因の変化によっ
て説明されるが、これらの変化は他の社会経
済環境の変化と強い関係があることが確認で
きた。
参考文献
[1]松下敬一郎「島幌国家の人口と経済
ースリランカの事例を中心に一」、小林和
正、加藤蕎延編『第三世界の人口と経済
発展』、大明堂、平成 5年、第 7章
。
[2] J
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nB
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1
9
8
3
.
[3]B
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l
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w
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l
l,“The F
a
m
i
l
y a
n
d
注:1
9
8
1年の便宜上の県境を示している。
出所:ESCAP, [
7
,
] p
.
6
.
図 2 スリランカ 1
9
8
1
e
a
l
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D
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6(
1
9
9
6
),
pp.
4
5
6
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.
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nReview,
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スリランカにおける出生率低下と社会経済環境の変化
1
7
9
T
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組
ヘStudiesi
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1
9
8
7
),pp.I-21
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EconomicChangei
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