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訴権の行使と国際裁判管轄権
訴権の行使と国際裁判管轄権 黄 進** 李 慶明** ち,特定の民事紛争に訴訟救済の必要がある。 一 訴権の行使 つまり,訴えの利益を有する,「利益がなけ れば訴権なし」である 3。 訴権の行使を検討するにあたって,まず訴 権利は範囲を有し,その行使には制限があ 権の意味を明らかにしなければないない。訴 り,それを濫用してはならない。訴権も例外 権は何かについては,各国学界には一致する ではない。訴権は重要な権利であるが,その 見解が存在せず,一国内にも,議論が分かれ 行使を濫用してはならないし,不法に訴権を ている。今まで,訴権については,多様な定 行使してはならない。実務上,当事者が訴権 義がされ,数多くの学説が主張されてきた。 を濫用することはよく発生する。例えば,起 例えば,私法訴権説,公法訴権説(また,抽 訴権,反訴権の濫用等である。多くの当事者 象訴権説,具体訴権説,本案判決請求権説と は,自分の非合法の目的を達成するために, 司法行為請求権説に分かれる),憲法訴権説, 訴権の行使要件を満たしていないことをはっ 1 多元訴権説等がある 。 きりと知りながら,訴権を行使し,ひいては 伝統的にわが国では「二元訴権説」が支持 事実を偽り,証拠を偽造し,相手を訴える。 されている。すなわち,訴権が手続法上の訴 現在,世界の大多数の国は,訴権の濫用を 権と実体法上の訴権に分けられる。我々はこ 禁止する規定を設けている。英米法上,訴権 のような立場に賛成する。訴権は,民事権利 の濫用を不法行為と構成する。『ブレーク法 が侵害され,あるいは他人と争うことに基づ 律辞典(第8版)』には,訴権の濫用を(abuse き,当事者が裁判所に審判権を行使して民事 of process,または abuse of legal process; malicious abuse of process; malicious abuse of legal process; wrongful process; wrongful process of law とも言う)合法に発行された 召喚状を不当にまたは不法に使用し不法の或 いは召喚状の範囲を超える結果を得ることと 定 め て い る 。 1977 年 の 『 不 法 行 為 法 再 論 (第二回)』第 682条には,「不法の目的のた めに訴権を濫用する者は,それによって生じ る損害を賠償する責任を負わなければならな い」と規定している。学者の間にもこの問題 について検討が行なわれている 4。 権利を保護し,或いは民事紛争を解決するよ う請求する権利である 2。もちろん,注意し なければならないのは,外国人の内国におけ る民事法律地位も一般的に承認され,外国人 も一般的に内国民と同様な権利を享受する。 民事訴権の要件には二つの側面が含まれてい る。¸主体に関する要件,すなわち,訴訟救 済の請求権利を有する主体とは,大陸法系の 訴権理論によれば,一般的に当事者適格を満 たす者を指す。¹客体に関する要件,すなわ * 中国武漢大学国際法研究所教授 **中国武漢大学法学院博士後期課程 214 ― ― 依然として召喚状の送達を対人管轄権の行使 二 訴権の行使と送達 の依拠としている。Kadic v. Karadzic 事件に おいて,第9巡回裁判所は,たとえ被告が米 訴権が承認され,その行使が有効であるた 国と何らの実質的関連も有せず,単に米国を めには,裁判所に受理されなければならない。 通過するだけであっても,それによって送達 そして,裁判所の受理は送達とも関係する。 がされれば,裁判所が管轄権を取得すると判 送達に関する考え方が違うから,それと管轄 示した 10。 2.送達と訴訟競合 権との関係に関する考え方にも違いが生じる。 大陸法国では,送達は,英米法国のように ó 送達と管轄権 それによって管轄権を取得するほど重要では 1.送達による管轄権の取得 ないが,平行訴訟を解決する役割を果たして 英米法国の裁判所は,管轄権を行使するた いる。この部分については,後半で検討する めに,伝統的なコモン・ロー上の「効果」原 ので,ここで省略する。 則及びこの原則の例外である当事者が自らそ れに服従することに依拠している。したがっ ô 送達の有効性 て,このような国々は,しばしば送達によっ それでは,送達が合法で有効なものと如何 て対人管轄権を確定する。従来,英米法系の に判断すればいいか。米国裁判所は,送達の コモン・ロー上の見解によると,被告に対す 重要な機能が,被告に訴訟の開始を通知し, る対人管轄権は,主に裁判所の司法強制力の 一定の時間内に一定の方式により答弁,抗弁, 5 一つの機能であった 。当初,イギリスのコ 反対を主張する公平の機会を被告に提供する モン・ロー裁判所は,被告が既に実際的に裁 ことであるとしている 11。したがって,重要 判所に出頭した場合を除き,対人訴訟に対し な問題は,被告が必要な通知を受けたかどう て判決を下すことができなかった 6。19世紀 かである 12。そうすると,電子送達さえ可能 初めの米国では,裁判所が対人訴訟に対し判 になる 13。被告が送達の受領を避け,文書の 決を下すためには,被告を捕まらなければな 受取を拒否する場合,送達人が,被告に接し, 7 らない( get hold of the defendant)。その 裁判所の文書を送達する意図をはっきりと説 後,実際の人身逮捕が象徴的な逮捕により取 明し,被告が送達する文書を受取るように合 り換えられ,裁判所は,起訴された刑事犯の 理的に努力すれば,合法で有効な送達が完成 ように民事被告を拘束するではなく,召喚状 したとみなされる 14。 逆に,送達意図が不明確で,被告が有効な を通じて被告を呼び出す。 19世紀,20世紀初めの多くの米国判例に 通知を受けることができなければ,送達が無 は,裁判所は,法廷地に現れた被告に送達す 効と認定される可能性があり,管轄権を行使 ると,被告がそこに住んでいるか一時的に滞 することができない。Weiss v. Glemp 事件 15 在するかを問わず,管轄権を取得し,判決を において,裁判所は,ポーランド赤衣主教に 8 下すことができると示した 。送達によって 対する送達について,送達人がただ書類のよ 管轄権を取得する伝統は,現在まで引き継が うなものを持って,「要りますか。この……」 れ て い る 。 1990年 Burnham v. Superior と言っただけで,主教の付添い人が「要らな Court 事件において,伝統的な規則が挑戦を 受けたが,米国連邦最高裁判所は,送達が完 了すると,管轄権を取得したと判示した 9。 現在にも,米国連邦裁判所と各州裁判所は, い,要らない」と言いながら,それを捨てた 場合,原告のこのような送達が「合理的な方 法による」被告への通知ではないこと,送達 人が所持する文書も明確なものではなくパン 215 ― ― フレット,抗議書或いはその他の非法律的文 使を認めない。 書かもしれないこと,被告が意図的に送達を ö 小括 拒否する証拠はないことを理由に無効と認定 した。 上述のように,送達が訴権の行使と密接に 米国では,送達が私人間の問題であり,国 関連し,適切でない送達は,訴権の濫用であ 家主権と関係ないとされているから,国外に り,それによって訴権を実現することはでき 対するいろいろな方式の送達,他の国が米国 ない。当事者が訴権を濫用することを防止す での直接送達が認められている。しかし,ド るために,各国は,送達から始め,当事者が イツ,スイスを始めとする国々は,送達手続 関連する法規に反し送達,訴権を濫用するこ が「司法」或いは「公権力」に属する行為で とを認めず,当事者に送達,訴権を濫用する あり,私人が行うことができないという反対 機会を与えず,さらに当事者の送達,訴権の の立場を採っており,外国裁判所の本国国民 濫用に協力してはならない。このほかに,国 に対する直接送達を認めない。わが国も同じ 境を越える送達によって行使する管轄権は, 立場である。 その根拠が合理的でなく,世界の多くの国に 反対される「過剰管轄権」の一つである。こ õ 送達有効性の例外 のような管轄権の依拠は,客観的に当事者が 英米法国は,送達について,比較的に緩や 裁判所を選び,訴権を濫用することを助長し, かな自由の立場を採っている。一般的に,送 被告に困難と圧力を強い,被告の合法の権利 達の意図があり,且つ文書が合理的な方式に を害するかもしれない。これは,一種の司法 より被告に通知されたら,送達が成立する。 排外主義(judicial chauvinism)17 の現れであ 但し,情況によって送達が無効になる可能性 り,国際礼譲と司法慣習に合致しない。この もある。例えば,特権と免除を享有する者に ような過剰管轄権の依拠を減らせば,正当な 対して行う送達は,常に違法で無効である。 訴権の行使はさらに可能になる。 1965年の Hellenic Lines, Ltd. v. Moore 事件 三 訴権の行使と管轄権の抵触 において,米国裁判所は,「国務省が裁判所 に駐米チュニジア大使に対して行う送達が米 国の対外関係と外交職務の正常な実行を害す 国際民事訴訟における訴権の行使と管轄権 る恐れがあると通知した後,本来チュニジア は,密接に関連する。以下,両者の関係につ に送達すべき召喚状を駐米チュニジア大使に いて簡単に検討する。 送達したことが適切ではない」と判示した 16。 ó 管轄権抵触の概念 ほかに,外国国家元首に対して送達を行う ことは,常に当該外国とその指導者に対する 学界と実務界は,すでに管轄権問題の重要 冒涜とされている。本国国内で国家訪問を行 性を認識しているが,何が国際民事訴訟の管 う外国指導者に対する送達,管轄権の行使が 轄権かについて見解が分かれている 18。我々 認められると,本国政府および指導者が国外 は,国際裁判管轄権とは,一国の裁判所或い においても同様な待遇を受ける恐れがあり, は裁判権を有する他の司法機関が国際的要素 これは,本国政府の外交政策,目標,利益に 或いは渉外的要素を有する民商事事件を受理, とって不利である。それで,英米法国は,実 審判する権限を指すと考えている 19。特定の 務上,本人に送達するか本人に第三者への引 国際民商事事件に対し,いかなる国の裁判所 渡しを依頼するかを問わず,国内で訪問中の が管轄権を有するかの問題を解決するのは, 外国指導者に対する送達,さらに管轄権の行 その趣旨である。その後の当該国のどの審級, 216 ― ― どの裁判所が管轄権を有するかを特定するこ とに寄与した。 とは,当該国の国内民事訴訟法が解決する問 不便宜法廷地の原則は,国によってその適 題である。したがって,国際民事訴訟法にお 用が異なるが,一般的には,当該国裁判所は, ける裁判管轄権を「国際裁判管轄権」(inter- 管轄権を有するにもかかわらず,当該事件に national jurisdiction)と称する学者もいる。 国際裁判管轄権をいかに特定するかについ ては,主に国籍管轄,地域管轄,専属管轄, 合意管轄,応訴管轄等がある。管轄権に関す る各国の立法,特に管轄根拠となる規定が異 なるから,国際民事訴訟において,常に管轄 権の抵触問題が生じる。国際裁判管轄権の抵 触とは,国際民事訴訟において,特定の国際 民商事事件に関係する全ての国が管轄権を行 使するまたは拒絶する場合を指し,前者を管 轄権の積極的抵触と,後者を管轄権の消極的 抵触と称される 20。 管轄権の抵触は,訴権の行使と濫用に更な る機会と可能性を提供し,問題を複雑にする。 管轄権の消極的抵触が比較的に少ないから, ここで検討しないとするが,ここで管轄権の 積極的抵触と訴権の行使との相互関係につい て検討したい。 管轄権を行使することが非常に不便または不 公平であり,かつ他に当該事件をより便利に 審理できる外国裁判所が存在する場合,管轄 権の行使を拒否することができる 22。 米国では,すべての当事者の利益と正義の 目的を実現し,原告が訴訟手続を濫用し被告 にとって非常に「煩わす」「圧迫される」裁 判所を選択することを防止するために,1947 年のある事件において不便宜法廷地の原則を 確立した。裁判所は,二段階の分析方法を 採っていた。すなわち,第一段階では,審理 可能の一つの外国裁判所を特定し,第二段階 で は , 公 共 利 益 と 個 人 利 益 を 衡 量 す る 23。 1981年の Piper Aircraft Co. v. Reyno 事件に おいて,米国連邦最高裁判所は,不便宜法廷 地の原則について一歩進んだ説明を示した 24。 最高裁判所は,不便宜法廷地を判断する基準 を,従来の厳格な「濫用手続」から比較的に 緩やかな「最も適切な裁判所」に転換し,一 ô 不便宜法廷地 部の外国原告が米国裁判所に提訴することを 本国の利益を保護するため,各国が管轄権 制限した。これは,連邦下級審裁判所および の根拠を幅広く規定し,ある程度司法排外主 州裁判所が,国際事件において外国原告によ 義(judicial chauvinism)の問題が存在する。 る訴えを拒否することに根拠を提供した 25。 これは,管轄権の積極的抵触の根本原因であ 現在にも,米国裁判所は,不便宜法廷地の原 る。管轄権の積極的抵触により生じる問題を 則に基づき原告の訴えを却下している 26。も 克服するために,実務上,不便宜法廷地 ちろん,米国に住所を有する個人に対して, ( forum non conveniens)の原則によって, 裁判所は,一般的に当該裁判所を便宜な法廷 管轄権の行使を拒否し,訴訟負担を減らし, 地と認め,外国裁判所に提訴するよう命じず, 本国の利益を保護する国は,いくつかある。 被告の不便宜法廷地の原則による抗弁を認め 不便宜法廷地の原則は,スコットランドか ない 27。 21 イギリス,カナダ,オランダ,ニュージー 不便宜法廷地の原則の本来の目的は,国際裁 ランド,ベルギー,ギリシア,スイス,フイ 判管轄権の積極的抵触を解決するためではな ンランド,アルゼンチン等の国にも,原告が く,受訴裁判所の受理により生じる不便を解 裁判所を選ぶことによって,被告に不公平を 決するためであり,受訴裁判所が不便を理由 もたらし,その国の限られた司法資源に影響 に受理を拒絶することができるから,客観的 を及ぼすことを防止するために,類似の制度 に国際裁判管轄権の積極的抵触を解決するこ を確立した。 ら始まり,その後,他の国により採用された 。 217 ― ― õ 訴訟競合 の裁判所での訴訟の進行を禁止する命令を指 訴訟競合とは,未決訴訟とも言われ,同一 す 28。 当事者が同一紛争について同一の事実及び目 わが国の学界,実務界では,訴訟禁止令に 的に基づき同時に二つ以上の国の裁判所で訴 ついて見解が分かれている 29。しかし,この 訟を進行する現象を指す。重複訴訟と対抗訴 制度を真剣に研究する必要があり,当事者に 訟に分けられる。訴訟競合は,当事者が訴権 よる訴権の濫用に対して,訴訟禁止令を利用 を行使する現れの一つであるが,当事者に濫 しそれを阻止することが考えられる。 用される可能性もあり,この場合,当事者の ö 管轄合意と仲裁合意 利益保護に繋がず,司法資源の浪費でもある。 訴訟競合については,競合する訴訟を引続 管轄合意と仲裁合意とは,異なる部分が多 き係属すると認める国もあるし,当事者に裁 いが,一つだけ同じで,即ち,当事者が紛争 判所を選択させる国もある。この二つの方法 解決の方法を定めたことである。当該合意そ は,訴訟競合の問題を解決していない。訴訟 のものに問題があり或いはその他の否定でき 競合の問題を解決するために,ブリュッセル る事由がある場合を除き,当事者間に管轄合 条約第 21条には,「先受理原則」を規定し, 意と仲裁合意がある場合,当事者の意思を尊 その第1項には,「同一当事者間に同一の訴 重すべきである。仲裁合意については, 訟原因について異なる締約国の裁判所に訴え 「ニューヨーク条約」があるから,各国は, が提起された場合,最初に訴えを受理した裁 基本的にそれを尊重し,当事者間に仲裁合意 判所以外の裁判所が自主的にその裁判管轄権 を定めたのに,その一方当事者が訴権を濫用 を放棄し,最初に訴えを受理した裁判所に審 し提訴した場合,裁判所がそれを受理せず, 理させるべきである。」と規定している。そ たとえ受理したとしても却下するであろう。 の第 23条には,「複数の裁判所が専属管轄権 管轄合意については,各国の見解がそれぞれ を有する訴訟の場合,最初に訴えを受理した であるが,我々は,できる限り当事者の意思 裁判所以外の裁判所が自主的にその裁判管轄 を尊重すべきで,一方当事者の事後的変更, 権を放棄し,最初に訴えを受理した裁判所に 訴権の濫用が許されないと考えている。 審理させるべきである。」と規定している。 如何に「最初に受理した」を判断するかにつ ÷ 小括 いては,送達の前後により,最初に送達した 管轄権の抵触は,客観的に当事者に訴権を ものを最初に受理したものとし,その裁判所 濫用する機会と可能性を提供した。これにつ は,裁判管轄権の行使を継続でき,その後受 いては,各国は,管轄権の抵触に関する協力 理した他の裁判所は,裁判管轄を中止すべき を高め,国際条約の締結を通じて解決すべき である。 である。同時に,各国の裁判所は,善意の立 競合訴訟を解決する条約を締結していない 場から,管轄権の抵触を合理的に解決し,管 国の間に,如何に競合訴訟を解決し,公平, 轄権の行使を自主規制することによって,当 正義を促進し,当事者が訴権を行使するのを 事者の訴権を濫用する機会を減らし,関係す 制限するか。前述した不便宜法廷地の原則に る人々にもたらす困惑と不便を無くすべきで よる解決のほか,英米諸国の訴訟禁止令 ある。 ( Anti-suit Injunction)制度を参考すること もできる。訴訟禁止令とは,一国の裁判所が 四 訴権の行使と裁判権免除 当該国の裁判所の管轄に属し他の国の裁判所 で訴訟を進行する一方当事者に対し,他の国 218 ― ― 裁判権免除があるから,当事者による訴権 の行使もある程度の制限を受ける。相手が裁 判権免除を享有することを知りながら,敢え て訴権を行使する者もいるが,結局,自分の 時間,財産,体力を無駄にし,同時に被告に 困惑と不便をもたらし,司法エネルギーを浪 費することになる。現在,裁判権免除につい ては,外交特権と免除,国家免除が認められ る。 ó 外交,領事特権と免除 いわゆる外交特権と免除とは,国際慣習法 または関係する協議に従い,国家間における 互恵を基礎に,主に一国の外交代表機関及び その職員が駐在国において有効に職務を遂行 できるために,駐在国が与える特別な権利と 優先的待遇を指す 30。いわゆる領事特権と免 除とは,領事館及びその職員が受入国におい て有効に領事の職務を遂行できるために,受 soko 事件には,裁判所は,米国国務院が被告 に証明書を発行しなかったため,その「特別 顧問( special advisor)」の身分では,外交 免除を享有することができないとした 34。も ちろん,裁判所は,実務において米国国務院 が訴訟係属中に証明書を発行することに気付 いた。Republic of Philippines by Cent. Bank of Philippines v. Marcos 事件には,国務院は, 米国で証言するフィリピン検察総長に外交身 分を授与した 35。 Abdulaziz v. Metro. Dade County 事件には,サウジアラビア王国の王 子及びその家族は,訴訟係属後,外交身分を 得た 36。 確かなことは,ある当事者が外交特権と免 除を享有する相手を訴えた場合,それが訴権 を不当に行使するものである一方,関係する 裁判所が裁判管轄権を行使せず,それを却下 しなければならない。 入国が与える特別な権利と優先的待遇を指 す 31。両者共に,訴えられることを免れ,裁 ô 国家免除 判権免除の権利を享受するから,論述の便宜 1.国家免除の原則及びその新たな展開 上,以下では,外交,領事特権と免除を外交 特権と免除と略す。 国家免除とは,主にひとつの国及びその財 産が他の国の国内裁判所の司法管轄を受けな 外交特権と免除については,国際条約とし いことを指す 37。国家免除は,昔からの国際 て「ウィーン外交関係条約」と「ウィーン領 法原則として,世界各国により受け入れ,実 事関係条約」があり,これらによって生じた 行し,遵守されてきた。少なくとも,各国は 国際的義務を履行するために,各国が一般的 公の場において否定していない。 昔から各国は一般的に絶対免除を主張して にそれらに対応する国内法を制定している。 したがって,外交特権と免除を享有する者を きたが,現在,その多くは,制限免除を主張 訴える場合,一般的にその訴権の行使は認め している。2004年,国連で「国家及びその られない。例えば,米国では,外交職員と領 財産に関する裁判権免除に関する条約」が採 事職員がすべて免除を享有し,米国裁判所の 択され,制限免除の立場を採っている。この 管轄を受けない。外交免除が受入国の承認に 条約には,国家免除を一般原則として肯定す 基づかなければならないことはいうまでもな ると同時に,国家免除に制限を課す具体的規 32 い 。そうでなければ,免除を享受すること 定を設け,国は,主権活動を従事する際,裁 ができない。米国に行く外国の地方官庁の官 判権免除を享有するが,商業活動を従事する 僚は,外交使命を有しない限り,一般的に外 際,それを享有できず,他の国が裁判権を行 交免除を享有することができない。「外交身 使することができると規定している。条約は, 分の全部の特権と免除は,昔からこれが承認 国家利益の保護と私人利益の保護とのバラン され外交業務を遂行する外交職員である」33。 ス問題を比較的にうまく解決した。条約第 United States v. Foutanga Dit Babani Sis- 10条第1項には,私人の当事者間の契約或 219 ― ― いは取引における正当な権利を保護するため に,「ある国が外国の自然人或いは法人と商 取引を行い,国際私法の適用規則に基づき, 当該商取引に関する紛争を他の国の裁判所が 管轄すべき場合,当該国は,当該商取引に関 する訴訟において裁判権免除を援用すること ができない。」と規定している。同時に,外 国の私人の当事者が主権国家を相手に訴権を 濫用することを防止するために,条約は,特 に「国は,その裁判所が他の国に対して提起 された訴訟に裁判権を行使することを避けな ければならない」と強調した。「他の国に対 して提起された訴訟」には,「当該訴訟の一 方当事者に指名された」場合だけでなく, 「当該訴訟が実際に他の国の財産,権利,利 益及び活動に影響を及ぼそうとした」場合を も含む。 制限免除を主張する国が多くなっているの は確かであるが,どの国でもいかなる場合で も制限免除を理由に他の国の主権行為に対し て裁判権を行使すべきではなく,当事者が他 の国の主権行為に対して提起した訴訟を受理, 審理せず,当事者の訴権濫用行為を制限すべ きである。 2.外国国家元首及び政府官僚の免除 注意すべきなのは,米国の司法実務におい て,裁判所は,米国「外国主権免除法」に個 人(国家元首をも含む)に適用するとの明文 規定はないが,裁判所が既に判例の中で自分 の職権範囲内でその職権を行使する外国官僚 に免除を適用すると指摘したとしている 38。 米国裁判所がその判決の中で指摘したように, 「外国主権免除法」には外国元首の免除を規 定しておらず,国家免除しか規定していない から,裁判所は,1976 年以前の実務に基づ き,行政府の意見を考慮しながら判断するし かない 39。1976 年以前の事件に,米国連邦裁 判所と下級審裁判所は,「行政府の免除に関 する意見は,最終的で,裁判所に遵守される べきで,裁判所の司法審査を受けない。」と 判示した 40。1945 年の Republic of Mexico v. Hoffman 事件には,米国裁判所は,「裁判所 は,政府の認める合理的な免除理由を拒否し ない。たとえ認められなかった免除理由でも, 現在認められれば,我々裁判所は拒否しな い。」と判示した 41。 外国国家元首と政府官僚に免除を授与する ことは,国際礼譲の要求であり,国際法にお ける国家免除の原則のあるべき意義であり, 「外国主権免除法」から推定できる精神でも ある。「外国主権免除法」が直接に外国主権 に対する訴訟の提起を阻止するためのもので あるから,もし無制限に職権を行使する外国 官僚に対する訴訟の提起を認めたら,外国主 権免除を弱めることになる 42。 米国裁判所は,外国国家元首と政府官僚が 免除を享有することを認めるが,その私的行 為について免除を享有することはできないと 考えている。免除を授与するか否かについて, 通常重要な問題は,当該外国官僚が個人とし てそれとも政府官僚として権力を行使したか をいかに判断するかである 43。この問題につ いて,外国官僚に対する訴訟が,「その代表 する国家を訴えるための偽装訴訟で,実質的 に直接に主権に対し訴訟を提起するに等し い」ものであるか否かを考慮しなければなら ない。Park v. Shin 事件には,第九巡回裁判 所は,重要なのは,裁判権の行使によって当 該官僚を雇用した国の主権或いは政策制定権 を干渉したか否かであると判示した 44。ほか には,米国裁判所は,外国官僚が,その権限 を超え行為した場合,その行為が個人行為と なり,「外国主権免除法」が適用されず,免 除を享有できないと示した 45。たとえ起訴さ れたとき在任中であっても例外ではない 46。 外国官僚の行為が合法か否か,その権限に 属するか否かを如何に判断するかは,いわゆ る国際法或いは法廷地法によるべきではなく, 当該外国の国内法にのみよるべきである。し たがって,フィリピン前大統領マルクスの行 為が大統領の職権に基づいたものではないか ら,彼が免除を享有できないと判断された。 220 ― ― マルクスは,大統領であるが,国家ではない 的に主権免除問題を審査する場合もある。た から,彼に適用すべき法律に従わなければな とえ外国の被告が抗弁せず,或いは訴訟を無 らない 47。Trajano v. Marcos 事件においても, 視しても,裁判所は,国家免除をもって管轄 Marcos-Manotoc が,フィリピン法に従わず, 独断で行動したと自ら認めたから,免除を享 受することはできない 48。 主権免除の重要な目的の一つは,主権者に 訴えられない権利を授与することである 49。 もし国際法或いは法廷地法に基づき外国主権 者の行為が合法か否かを判断するなら,実体 的審理が必要となり,これは,訴えられない という目的と意義に反する 50。したがって, Siderman de Blake v. Republic of Argentina 事件には,第九巡回裁判所は,たとえ国際人 権法のような強行法に反しても,「外国主権 免除法」による外国主権に対する免除に影響 しないとまで判示した 51。 Sampson v. Federal Republic of Germany 事件には,米国連 邦第七裁判所は,国際強行法に反することが 「外国主権免除法」の規定する免除例外では ないと判示した。即ち,たとえ国際強行法に 反しても免除を享有することができる 52。米 国国内で損害が発生した場合を除くことはい うまでもない 53。 実務上,外国法の内容を誤解し被告の行為 がその本国法に反したとして免除を授与しな いことのないように正確に外国法を適用,解 釈しなければならない。外国官僚の行為につ いても,慎重に判断し,これを理由に他の国 の主権と内政を侵害してはならない。 3.免除の積極的授与 米国裁判所は,外国国家,国家元首,政府 官僚及び国家財産に関する訴えをよく受理す るが,実際に職権で国家免除に関係するか否 かを審査する可能性もある。米国憲法の伝統 上,裁判所が「政治問題の理論( political question doctrine)」に基づき,一般的に政 治問題について司法審査を行わない。国際民 事訴訟において,外交関係に影響し,行政府 が対外交流のような「政治問題」を解決する に不利な可能性があるから,裁判所は,積極 権がないとして訴えを却下することができる。 「外国主権免除法」に,並行制を止め,国 家免除問題の決定権を完全に裁判所に移した が,米国国務院が外国国家免除問題に関与し ないとは限らない。米国国務院の法律顧問が 1976年 11 月2日司法省長官に出した手紙に, 米国国務院が訴訟における米国の重大な利益 に関係する外交関係問題について「法廷の友 人」として関与することを示した 54。実務上, 米 国 国 務 院 は , 利 益 声 明 ( Statement of Interest)を出し,もし裁判所が裁判権を行 使したら,米国の外交政策,対外関係,国家 利益に影響する可能性があると宣言し,裁判 所に事件を却下するよう求める。 õ 小括 当事者が訴権を享有し,各国も当該国で裁 判権を行使する根拠を規定する権利を有する が,当事者による訴権の濫用を防止するため に,他の国の主権を尊重し,認められる国際 的準則を遵守し,積極的に裁判権免除の問題 を審査しなければならない。 五 結びに代えて 国際民商事交流が頻繁に行われるにつれ, 国際民商事紛争も多発し,当事者が訴権を濫 用する,裁判所を選択する機会も可能性も増 加した。管轄権の視点から,必要でない司法 困惑を無くすために,如何に当事者による訴 権の濫用を防止し除去するかは,国際民事訴 訟法における直面し解決すべき問題である。 上述した通り,訴権の行使が,送達,管轄権, 外交特権と免除,国家免除等の問題に関係し, 実務上,当事者による訴権の濫用についてあ る程度制限があり,いくつかの措置を採るこ とによって阻止することもできる。問題の要 は,当事者が訴権を濫用せず,各国の裁判所 221 ― ― も国際法の原則,規則,国際協力,国際礼譲 及び公平,正義の視点から適切に管轄権を行 使することである。このようにすることに よって,自国の司法費用の負担を軽減し,司 法エネルギーを節約できるだけでなく,当事 者,他の国に責任を持つ態度でもあり,侵害 されないようにその合法な権利,利益を保護 するにも有益である。訴権が正当に行使され るように。 注 1 各学説の内容については,江偉=邵明=陳 剛『民事訴権研究』(法律出版社,2002年) 5頁以下。 2 江偉・前掲注¸150頁。 3 江偉・前掲注¸168頁。 4 See Michele Taruffo, Abuse of Procedural Rights: Comparative Standards of Procedural Fairness, Kluwer Law International, 1999. 5 Robert C. Casad(劉新英訳)「米国民事訴 訟における管轄権」法学評論 1999年4号 110 頁。 6 See Nathan Levy, Jr., “Mense Process in Personal Actions at Common Law and the Power Doctrine”, 78 Yale L.J.52, 58 (1968). 7 Hart v. Granger, 1 Conn. 154, 168 (1814). 8 Vinal v. Core, 18 W. Va. 1, 20 (1881); Roberts v. Dunsmuir, 75 Cal. 203, 204, 16 P. 782 (1888); Smith v. Gibson, 83 Ala. 284, 285, 3 So. 321 (1887); Savin v. Bond, 57 Md. 228, 233 (1881); Hart v. Granger, 1 Conn. 154, 165 (1814); Mussina v. Belden, 6 Abb. Pr. 165, 176 (N.Y. Sup. Ct. 1858); Darrah v. Watson, 36 Iowa 116, 120-121 (1872); Baisley v. Baisley, 113 Mo. 544, 549-550, 21 S.W. 29, 30 (1893); Bowman v. Flint, 37 Tex. Civ. App. 28, 29, 82 S.W. 1049, 1050 (1904). See also Reed v. Hollister, 106 Ore. 407, 412-414, 212 P. 367, 369-370 (1923); Hagen v. Viney, 124 Fla. 747, 751, 169 So. 391, 392-393 (1936); Vaughn v. Love, 324 Pa. 276, 280, 188 A. 299, 302 (Pa. 1936). 9 Burnham v. Superior Court, 495 U.S. 604, 109 L. Ed. 2d 631, 110 S. Ct. 2105 (1990). 10 70 F.3d 232 (9th Cir. 1995)).この種の管轄 権根拠が合理か否かは検討する必要がある。 11 Henderson v. United States, 517 U.S. 654, 672, 116 S.Ct. 1638, 134 L.Ed.2d 880 (1996). 222 ― ― 12 United Food & Commercial Workers Union v. Alpha Beta Co., 736 F.2d 1371, 1382 (9th Cir.1984); Chan v. Soc’y Expeditions, Inc. 39 F.3d 1398, 1404 (9th Cir.1994); Mullane v. Cent. Hanover Bank & Trust Co., 339 U.S. 306, 314, 70 S.Ct. 652, 94 L.Ed. 865 (1950). 13 Rio Props., Inc. v. Rio Intern. Interlink, 284 F.3d 1007 (9th Cir.2002). 14 See Errion v. Connell 236 F.2d 447, 457 (9th Cir.1956); Novak v. World Bank, 703 F.2d 1305, 1310 n. 14 (D.C.Cir.1983); Doe v. Karadzic, 1996 WL 194298 (S.D.N.Y. Apr 22, 1996); Trujillo v. Trujillo, 71 Cal.App.2d 257, 162 P.2d 640, 641-42 (1945); In re Ball, 2 Cal.App.2d 578, 38 P.2d 411, 412 (1934). 15 792 F. Supp. 215 (S.D.N.Y. 1992). 16 120 U.S. App. D.C. 288, 345 F.2d 978, 98081 (D.C. Cir. 1965). 17 「司法覇権」と訳す者もいる。楊良宜=楊 大明『禁令』 (中国政法大学出版社,2000年) 570頁。See also, Donald J. Carney, “Forum Non Conveniens in the United States and Canada”, 3 Buff. Jour. Int’l L. 117, 131 (1996). 18 蔡彦敏「国際民事訴訟における管轄権」現 代法学 1998年 5号 118頁。その中には,6つ の見解が挙げられ,著者も自ら1つの見解を 示した。 19 黄進編『国際私法』(法律出版社,第2版, 2005年)638頁。 20 劉力『国際民事訴訟管轄権研究』(中国法 制出版社,2004年)184頁。 21 袁泉「不便宜法廷地原則三題」中国法学 2003年6期141頁。 22 徐卉『渉外民商事訴訟管轄権衝突研究』 (中国政法大学出版社,2001年)124頁。 23 Gulf Oil Corp. v. Gilbert, 330 U.S. 501, 508, 91 L. Ed. 1055, 67 S. Ct. 839 (1947). 24 See Piper Aircraft Co. v. Reyno, 454 U.S. 235, 254, 70 L. Ed. 2d 419, 102 S. Ct. 252 (1981). 25 徐偉功「学術の視野における不便宜法廷地 原則」東方論壇2003年3期83頁。 26 See ICC Indus. v. Isr. Disc. Bank, Ltd., 170 Fed. Appx. 766 (2006); Carey v. Bayerische Hypo-Und Vereinsbank AG, 370 F.3d 234 (2004). 27 See Iragorri v. United Technologies Corp., 274 F.3d 65, 75 (2d Cir. 2001) (en banc). 28 徐卉・前掲注(22)177頁以下,楊良宜・ 前掲注(17)492頁以下,劉衛国「英米民事 管轄制度における『禁訴令』に関する評析」 米中法律評論 2005年4期 36頁,欧福永「中 国における禁訴令に関する利用及び対応」中 国国際私法学会編『中国国際私法学会 2006 年年会論文集』673頁以下。 29 欧福永・前掲注(28)673頁以下。 30 梁西編『国際法』(武漢大学出版社,補訂 版,2000年)387頁。 31 梁西・前掲注(30)396頁。 32 See United States v. Lumumba, 741 F.2d 12, 15 (2d Cir.1984). 33 United States v. Enger, 472 F.Supp. 490, 506 (D.N.J.1978). See also Tabion v. Faris Mufti, 73 F.3d 535, 536 (4th Cir.1996) (スー ダン大使館一等秘書と顧問に外交免除を授与 した ), Logan v. Dupuis, 990 F.Supp. 26, 26 (D.D.C.1997) (カナダのアメリカ州国家組織 常 駐 代 表 団 代 表 に 外 交 免 除 を 授 与 し た ), Fatimeh Ali Aidi v. Amos Yaron, 672 F.Supp. 516, 516 (D.D.C.1987) (イスラエル大使館の 軍事参事に外交免除を授与した). 34 995 F.Supp. 1469, 1470 (S.D.Fla.1997). 35 665 F.Supp. 793, 799 (N.D.Cal.1987). 36 741 F.2d 1328, 1329 (11th Cir.1984). 37 啨刃 䶠『国家免除問題に関する比較研究』 (北京大学出版社,第2版,2005年)1頁, 黄進『国家及びその財産免除問題に関する研 究』 (中国政法大学出版社,1987年)1頁。 38 Chuidian v. Philippine Nat’'l Bank, 912 F.2d 1095, 1103, 1106-1107 (9th Cir.1990). 39 United States v. Noriega, 117 F.3d 1206, 1212 (11th Cir. 1997). 40 Spacil v. Crowe, 489 F.2d 614, 617 (5th Cir. 1974); Isbrandtsen Tankers, Inc. v. President of India, 446 F.2d 1198, 1201 (2d Cir. 1971); Rich v. Naviera Vacuba S.A., 295 F.2d 24, 26 (4th Cir. 1961); Ex Parte Republic of Peru, 318 U.S. 578, 589, 87 L. Ed. 1014, 63 S. Ct. 793 (1943); Compania Espanola de Navegacion Maritima, S.A. v. The Navemar, 303 U.S. 68, 74, 82 L. Ed. 667, 58 S. Ct. 432 (1938). 41 324 U.S. 30, 35, 89 L. Ed. 729, 65 S. Ct. 530 (1945). 42 Chuidian v. Philippine Nat’l Bank, 912 F.2d 1095, 1102 (9th Cir.1990). 43 Chuidian v. Philippine Nat'l Bank, 912 F.2d 1095, 1106 (9th Cir.1990). See e.g., Jungquist v. Sheikh Sultan Bin Khalifa Al Nahyan, 115 F.3d 1020 1028 (D.C.Cir.1997) (個人行為であり,免除を享有することがで 223 ― ― きないとした); Doe v. Bolkiah, 74 F.Supp.2d 969, 974 (D.Haw.1998) (職務行為であり,免 除を授与するとした). 44 313 F.3d 1138, 1144 (9th Cir.2002). 45 United States v. Yakima Tribal Court, 806 F.2d 853, 859 (9th Cir.1986); Chuidian v. PhilippineNat’l Bank, 912 F.2d 1095, 1106 (9th Cir.1990); Re Estate of FerdinandMarcos, Human Rights Litig. 25 F.3d 1467, 1472 (9th Cir.1994). 46 Cabiri v. Assasie-Gyimah, 921 F.Supp. 1189, 1198 (S.D.N.Y.1996). 47 Re Estate of Ferdinand Marcos, Human Rights Litig. 25 F.3d 1467, 1471 (9th Cir.1994). See also Republic of the Philippines v. Marcos, 862 F.2d 1355, 1362 (9th Cir.1988). 48 978 F.2d 493, 498 (9th Cir.1992). 49 El-Fadl v. Cent. Bank of Jordan, 75 F.3d 668, 671 (D.C.Cir.1996). 50 Id. 51 965 F.2d 699, 717-718 (9th Cir.1992). 52 250 F.3d 1145, 1149-50 (7th Cir. 2001).ほか には,See Smith v. Socialist People’s Libyan Arab Jamahiriya, 101 F.3d 239, 244 (2d Cir. 1997); Princz v. Federal Republic of Germany, 307 U.S. App. D.C. 102, 26 F.3d 1166, 1173 (D.C. Cir. 1994); Siderman de Blake v. Republic of Argentina, 965 F.2d 699, 719 (9th Cir. 1992). 53 Letelier v. Republic of Chile, 488 F.Supp. 665, 672 (D.D.C.1980). 54 黄進・前掲注(37)140頁。