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近代地理学のルーツ

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近代地理学のルーツ
2015/9/15
「地誌学」第1回目
地誌学」第1回目
「地誌学とは?
地誌学とは? … ルーツを辿る
・「地誌学」とは,
地誌学」とは,所与の地域
」とは,所与の地域の「
所与の地域の「地域性
の「地域性」を探求する学。
地域性」を探求する学。
・一方,「
一方,「地理学」
地理学」とは,地表上のいろいろな現象に「
とは,地表上のいろいろな現象に「空間的まとまり」
空間的まとまり」=「地域」
地域」
を発見し,説明する学。
・別の言い方をすると,地表の諸現象に「地域
別の言い方をすると,地表の諸現象に「地域」や「
地域」や「地域性
」や「地域性」を発見する
地域性」を発見する方法
」を発見する方法や,
方法や,
それが成立する理論
それが成立する理論や
理論や一般モデルを探求するのが「
一般モデルを探求するのが「地理学
を探求するのが「地理学」。
地理学」。 それらを用い
て所与の地域の
所与の地域の地域性を言い当てるのが「
地域性を言い当てるのが「地誌学
を言い当てるのが「地誌学」
地誌学」 … という関係にあると考
えてよい。
・いずれの場合も,その主たる手がかり
いずれの場合も,その主たる手がかりとなるのは,現象の客観的形態であり,
手がかりとなるのは,現象の客観的形態であり,
とりわけその「
「空間的まとまり」
とりわけその
空間的まとまり」としての「景観
としての「景観」
景観」
・地理用語としての「景観
)とは,目に映る様相そのものではなく
地理用語としての「景観」(
景観」(Landshaft)とは,目に映る様相そのもの
」(
)とは,目に映る様相そのものではなく,一定の
ではなく,一定の
共通の特徴を背景として,ひとつの「
共通の特徴を背景として,ひとつの「まとまり
を背景として,ひとつの「まとまり」としてとらえられる地表の像で,かつて「
まとまり」としてとらえられる地表の像で,かつて「景
」としてとらえられる地表の像で,かつて「景
域」という訳語があてられた時代もあった。
」という訳語があてられた時代もあった。
・Landschaftの意味からして,そのほうが訳語としてふさわしかったが,英語の
の意味からして,そのほうが訳語としてふさわしかったが,英語のlandscape
の意味からして,そのほうが訳語としてふさわしかったが,英語の
の訳語である「景観」の定着とともに,地理用語としても準用されるようになった。
「地誌学」の
地誌学」のルーツ
」のルーツ
… それはすなわち,「近代地理学」
近代地理学」
のルーツをひもとくことに。
・「geography」という語は,
geography」という語は,ギリシャ
」という語は,ギリシャの昔から存在する。
ギリシャの昔から存在する。
・それは,人間は,周囲の空間
それは,人間は,周囲の空間を自分
周囲の空間を自分にとって
を自分にとって意味
にとって意味あるように
意味あるように秩序
あるように秩序立て,
秩序立て,構造化
立て,構造化しないと
構造化しないと
生きられない存在であるから。
「近代地理学」
近代地理学」の理念と
理念と方法
・フンボルトが追求
フンボルトが追求した「
が追求した「学
した「学」の理念
」の理念は,その著書名から
理念は,その著書名から
コスモスの理念」と呼ばれる。
「コスモスの理念」と呼ばれる。
・つまり … 「地表上の事象は,個々ばらばらに存在する
のではなく,相互に関連
のではなく,相互に関連しあいながら,
関連しあいながら,1
しあいながら,1つの「調和像
つの「調和像」と
調和像」と
して存在する」
して存在する」
・この理念
この理念を科学的研究として実践するため,言い換えれば
理念を科学的研究として実践するため,言い換えれば
観察事実を「
観察事実を「調和像
を「調和像」として
調和像」として表現
」として表現するため,彼は,
表現するため,彼は,
個々の事象を「標本
標本」として分離せず,
」として分離せず,その場にあるまま
個々の事象を「
標本
」として分離せず,
その場にあるまま
の姿で理解する
の姿で理解する という方法
という方法を追求。
方法を追求。
その具体化の方法として,各種の景観図
景観図や
分布図を考案。
・その具体化の方法として,各種の
景観図
や分布図
を考案。
・これが,「
これが,「空間的まとまり
が,「空間的まとまり」をとらえ,
空間的まとまり」をとらえ,表現
」をとらえ,表現する
表現する方法
する方法として洗
方法として洗
)として確立。
練され,地表の 「相観学」(
相観学」(physiography)として確立。
」(
・Humboldtは
Humboldtは, 当時のヨーロッパの時代思潮であった「ロマン主義
当時のヨーロッパの時代思潮であった「ロマン主義」の
ロマン主義」の科学的
」の科学的
実践者として,ヨーロッパのサロン界の寵児となる。ゲーテ,シラーらとも親交。
実践者として,ヨーロッパのサロン界の寵児となる。ゲーテ,シラーらとも親交。
・その死去
その死去にあたって,プロシアの
死去にあたって,プロシアの国葬
にあたって,プロシアの国葬で送られる。
国葬で送られる。
<左表
左表>
左表
<右表
右表>
右表
1:高度,2:光屈折度,3:海上から山が
視覚に入る角度,4:各大陸のいろいろな
場所の高度,5:大気現象,6:耕作景観,
7:測定重力,8:大気の明澄度,9:湿度,
10:気圧,11:高度
1:高度,2:気温,3:大気成分,4:各緯
度による万年雪の下限高度,5:家畜・動
物,6:水の沸点,7:地形,8:大気の光線
透過度,9:高度
・身の回りの空間や
の回りの空間や環境,
環境, 知らない場所,
知らない場所, “あの山”
あの山”や”あの海”
あの海”の向こうへの探究
の向こうへの探究=
探究=
地理的関心は
地理的関心は,物事の歴史的由来
,物事の歴史的由来に関する興味と
歴史的由来に関する興味とともに
に関する興味とともに,人間の
ともに,人間の本能的な知的
,人間の本能的な知的欲求
本能的な知的欲求。
欲求。
・ギリシャ時代には,
ギリシャ時代には,ヘロドトス
時代には,ヘロドトス,
ヘロドトス,プトレマイオス,
プトレマイオス,エラトステネスら
エラトステネスら”地理学者”
地理学者”が輩出。
地中海を中心とする「
地中海を中心とする「世界観」
を中心とする「世界観」を生み出す。
世界観」を生み出す。
・大航海時代には,列強各国は
大航海時代には,列強各国は王立
には,列強各国は王立や
王立や国立の「
国立の「地理学協会
の「地理学協会」を組織
地理学協会」を組織
して,世界の資源や事物の収集を推進。
・その流れの中で,地表の諸現象
その流れの中で,地表の諸現象に対して,
地表の諸現象に対して,純粋な科学的関心
に対して,純粋な科学的関心の目
純粋な科学的関心の目
を向け,当時ようやく確立されはじめた自然現象の科学的分析法
自然現象の科学的分析法を
を向け,当時ようやく確立されはじめた
自然現象の科学的分析法を
駆使して,中南米を
駆使して,中南米をはじめ,幾度にわたる
中南米をはじめ,幾度にわたる探検調査旅行
はじめ,幾度にわたる探検調査旅行を敢行して,
探検調査旅行を敢行して,
その成果を大著「Kosomos」(
」(5
その成果を大著「
」(5巻)に集成したのが,アレクサンダー・
巻)に集成したのが,アレクサンダー・
フォン・フンボルト(
フォン・フンボルト(右写真)。
・彼こそ,近代地理学
こそ,近代地理学,つまりは「
近代地理学,つまりは「科学としての
,つまりは「科学としての地理学
科学としての地理学」の創始者。
地理学」の創始者。
1843年の肖像
アンデスの自然像(全体)
2015/9/15
地表の自然地域区分
地表の自然地域区分
・Humboldtの「コスモス学」は
の「コスモス学」は自然科学
の「コスモス学」は自然科学であり,
自然科学であり,
自然地理学諸分野の母体となった。
自然地理学諸分野の母体となった。
チンボラッソ↓
チンボラッソ
← コトパクシ
・Ritterの「
の「Erdkunde」には,農耕形態などの
」には,農耕形態などの
の「
人文要素も含まれていたが,当時は
人文要素も含まれていたが,当時は 科学=
自然科学 の時代で,自然地理学
の時代で,自然地理学が急速に発
自然地理学が急速に発
展し,それは地表の「自然地域区分
展し,それは地表の「自然地域区分」,現代的
自然地域区分」,現代的
に言えば「地表空間システム
に言えば「地表空間システム」の研究に結実。
地表空間システム」の研究に結実。
←植生景観図
Alexander von Humboldt
・区分の最重要な手がかり ⇒
「Landshaft」(
」(景観,
景観,より正確には,まとま
りをもった「景観地域」(景域
景域)
景域 )
・地表で最も顕著な自然景観として
Humboldtと後継者たちの関心を引いた
と後継者たちの関心を引いた
のは「植生景観
植生景観」
のは「植生景観」
⇒ 様々な植生景観区分
様々な植生景観区分の試み
植生景観区分の試み ⇒ 植生
(植物)地理学へ展開
(植物)地理学へ展開
↓景観(
景観(景域)
景域)区分
「アンデスの自然像
アンデスの自然像」
アンデスの自然像
近代地理学の誕生
近代地理学の誕生(2)
の誕生
・Humboldtの著作は知識人たちに
の著作は知識人たちに自然
の著作は知識人たちに自然の
自然の新しい見方を喚起。
新しい見方を喚起。
・Karl Ritter(1779-1859)は,そのままでは壮大すぎる
は,そのままでは壮大すぎる
Humboldt の方法(
の方法(コスモス理念+
コスモス理念+相観学)を,
相観学)を,通常科学
)を,通常科学として
通常科学として
継承・実践できる学問
継承・実践できる学問を創始。
学問を創始。
・そのタイトル
」 ⇒右図
そのタイトルは
タイトルは 「Die Erdkunde」
= Earth Science,
,地学,地球科学
・方法を副タイトルに:「allgemeine vergleichende
geographie」=
」=一般比較地理学
」=一般比較地理学
・つまり,一気に地表全体の「調和像」に至るのではなく,まず地表の部分空間の調査か
ら始めて,「比較」によって順次,より一般的な「調和像」に迫るという「科学的帰納法」を
あてはめた。 ・またこの際,当面の研究対象となる「部分空間」の設定の仕方について,
何らかの「まとまり」ある現象に基づく「地理的固体」=「地域」であるべきと規定。
⇒Ritterは,
は,「
学”を「
を「地域
は,「地表の科学
地表の科学」としての
の科学」としての”
」としての”Humboldt学
を「地域の科学
地域の科学」
の科学」
に読み替えることで,通常科学
に読み替えることで,通常科学としての形式を確保。
通常科学としての形式を確保。
・ これが明治の日本
これが明治の日本に導入された際,
明治の日本に導入された際,伝統的に用いられてきた漢語「
に導入された際,伝統的に用いられてきた漢語「地理
伝統的に用いられてきた漢語「地理」
地理」
の存在や,学校教科との関係から, 「地学」ではなく「
地学」ではなく「地理学
」ではなく「地理学」の語で定着。
地理学」の語で定着。
世界の植生帯
世界の植生帯区分
植生帯区分
⇒ 自然景観区分
自然景観区分 ⇒ 気候地域区分へ
気候地域区分へ
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