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近代地理学の誕生
近代地理学の誕生(1) 2014前期 前期 「地理学」,「基礎地理学」予定表 (地域構想学科・高野担当) ★「近代地理学」の誕生 ・Alexander von Humboldt (1769-1859) 1843年の肖像 ・数度にわたる中南米 数度にわたる中南米の 中南米の自然探査と膨大な著作 自然探査と膨大な著作 を通して時代の寵児 を通して時代の寵児に。 時代の寵児に。 ・幼少期から身に着けた広範な自然事象の観測 幼少期から身に着けた広範な自然事象の観測 技術や調査法を駆使して,調査地の 技術や調査法を駆使して,調査地の自然の姿 を駆使して,調査地の自然の姿を, 自然の姿を, それまで例のなかった科学的な観察眼 それまで例のなかった科学的な観察眼で描写。 科学的な観察眼で描写。 ★「地理学」とは? 地理学」とは? ・地表の諸現象にみられる「空間的まとまり 地表の諸現象にみられる「空間的まとまり」を 空間的まとまり」を発見 」を発見し, 発見し,説明 し,説明する学。 説明する学。 … 「まとまり」として認識された まとまり」として認識された地表 」として認識された地表の 地表の部分空間を「 部分空間を「地域 を「地域」と呼ぶ。 地域」と呼ぶ。 つまり 「地理学」 地理学」 とは,この「地域 とは,この「地域」を 地域」を発見 」を発見し, 発見し,説明 し,説明する学 説明する学 … 「近代地理学」 近代地理学」 ・ところで … 「空間的まとまり」を 空間的まとまり」を発見 」を発見したいという欲求は,物事の過去からの 発見したいという欲求は,物事の過去からの由来 したいという欲求は,物事の過去からの由来 =歴史に対する関心と同様, 歴史に対する関心と同様,人間に に対する関心と同様,人間に本来的 人間に本来的に 本来的に備わった知的欲求。 備わった知的欲求。 ・それは,人間は,身の回りの空間 それは,人間は,身の回りの空間を 身の回りの空間を秩序立て, 秩序立て,意味づけ 立て,意味づけることを通して初めて, 意味づけることを通して初めて, 地表の一部を,自ら安住できる特別な 地表の一部を,自ら安住できる特別な場所 自ら安住できる特別な場所にできる,という特質をもつから。 場所にできる,という特質をもつから。 ・「Geography」という言葉も, 」という言葉も,紀元前ギリシャ 」という言葉も,紀元前ギリシャの昔から存在。 紀元前ギリシャの昔から存在。 … 地球の広がり,未知の土地, 地球の広がり,未知の土地,世界各地の自然事象や文物への関心。 未知の土地,世界各地の自然事象や文物への関心。 ⇒大航海時代の 世紀以降,列強 大航海時代の17世紀以降, 世紀以降,列強諸国に王立・国立の「 列強諸国に王立・国立の「地理学協会 諸国に王立・国立の「地理学協会」が組織。 地理学協会」が組織。 … 植民地経営を下支えする世界各地の有用・珍奇情報を収集 植民地経営を下支えする世界各地の有用・珍奇情報を収集 ⇒ 「博物学」的関心。 博物学」的関心。 ⇒「-logy」ではない 」ではない「-graphy」としての「学」 」としての「学」 ・一方,漢語 一方,漢語の「 漢語の「地理 の「地理」も,古来から 地理」も,古来から地勢 」も,古来から地勢や「 地勢や「風水 や「風水」を意味する語として存在 風水」を意味する語として存在。 ・これらの語が,「近代地理学 これらの語が,「近代地理学」の誕生後も,そのまま 近代地理学」の誕生後も,そのまま転用 」の誕生後も,そのまま転用されることに。 転用されることに。 Kosmos (全5巻) (全 巻) ・長年にわたる世界の自然観察の成果を 集大成した「自然誌 集大成した「自然誌」。 自然誌」。 ⇒ヨーロッパの知識人たちを感嘆させる。 ・彼が追求した「学 彼が追求した「学」の理念は,「コスモスの理念 」の理念は,「コスモスの理念」と呼ばれる。 コスモスの理念」と呼ばれる。 ・つまり … 「地表上の多様な事象は,個々ばらばらに存在する のではなく,相互に関連 のではなく,相互に関連しあいながら, 関連しあいながら,1 しあいながら,1つの「 つの「調和像」 調和像」として存 在する」 在する」 ・観察事実を「調和像 観察事実を「調和像」として 調和像」として表現 」として表現するため,個々の事象を「 表現するため,個々の事象を「標本 するため,個々の事象を「標本」とし 標本」とし て分離せず,その場にあるままの姿 その場にあるままの姿で理解する,という方法を追求。 て分離せず, その場にあるままの姿で理解する,という方法を追求。 ・それを実現するため,各種の景観図 それを実現するため,各種の景観図や 景観図や分布図を考案。 分布図を考案。 ・これが,「 これが,「空間的まとまり が,「空間的まとまり」をとらえ,表現する方法として洗練される。 空間的まとまり」をとらえ,表現する方法として洗練される。 … 「相観学」( ) 相観学」(Physiographie) 」( ・Humboldtは, Humboldtは, 当時のヨーロッパの時代思潮であった「ロマン主義 当時のヨーロッパの時代思潮であった「ロマン主義」の ロマン主義」の科学的実践者 」の科学的実践者 として,サロンの寵児となる。ゲーテ,シラーらとも親交。 ・その死去にあたって,プロシアの国葬 その死去にあたって,プロシアの国葬で送られる。 国葬で送られる。 1 近代地理学の誕生(2) 近代地理学の誕生 チンボラッソ↓ チンボラッソ ・Humboldtの著作は知識人たちに自然の の著作は知識人たちに自然の 新しい見方を喚起。 ・Karl Ritter(1779-1859)は,そのままでは は,そのままでは 壮大すぎるHumboldt の方法( 壮大すぎる の方法(コスモス理念 +相観学)を, 相観学)を,通常科学 )を,通常科学として継承・実践 通常科学として継承・実践 できる学問を創始。 ← コトパクシ ・そのタイトル 」 そのタイトルは タイトルは 「Die Erdkunde」 =Earth Science, ,地学,地球科学 ・副タイトルにその「方法」: 「allgemeine vergleichende geographie」= 」=一般比較地理学 」=一般比較地理学 Alexander von Humboldt 「アンデスの自然像 アンデスの自然像」 アンデスの自然像 <左表 左表> 左表 <右表 右表> 右表 1:高度,2:光屈折度,3:海上から山が 視覚に入る角度,4:各大陸のいろいろな 場所の高度,5:大気現象,6:耕作景観, 7:測定重力,8:大気の明澄度,9:湿度, 10:気圧,11:高度 1:高度,2:気温,3:大気成分,4:各緯度 による万年雪の下限高度,5:家畜・動物, 6:水の沸点,7:地形,8:大気の光線透 過度,9:高度 ・つまり, つまり,地表全体の「 地表全体の「調和像 全体の「調和像」にすぐに迫るの 調和像」にすぐに迫るのではなく 」にすぐに迫るのではなく,まず ではなく,まず地表 ,まず地表の 地表の部分空間 の調査から始めて の調査から始めて,「 から始めて,「比較 ,「比較」によって順次, 比較」によって順次,より一般的 」によって順次,より一般的な「 より一般的な「調和像 な「調和像」 調和像」に至るという, 実証科学の「 実証科学の「帰納法 の「帰納法」をあてはめた 帰納法」をあてはめた。 」をあてはめた。 ・またこの際,当面の研究対象となる「部分空間 またこの際,当面の研究対象となる「部分空間」の 部分空間」の設定の仕方については, 」の設定の仕方については, 何らかの「 何らかの「まとまり かの「まとまり」ある まとまり」ある現象 」ある現象に 現象に基づく範域 基づく範域= 範域=「地域」であるべきと規定。 地域」であるべきと規定。 ⇒Ritterは, は,「 は,「地表の科学 地表の科学」としての の科学」としての Humboldtの「コスモス学」あるいは の「コスモス学」あるいは 「地表」の科学 地表」の科学を,「 」の科学を,「地域 を,「地域」 地域」の科学に読 の科学に読 み替えることで,近代的な み替えることで,近代的な実証科学 ,近代的な実証科学と 実証科学と しての形式を確保。 ・ これが明治の日本に導入された際,伝統的 に用いられてきた漢語「地理」の存在や,学校 教科との関係から, 「地学」ではなく「地理学」 の語で定着。 ※日本最古の地理学会「東京地学協 東京地学協会」 ⇒ 東京地学協 その英語名にはGeographyが使われている。 機関誌「地学雑誌」の英名も「Journal of Geography」。2014年は123巻を数える。 アンデスの自然像(全体) 2