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第19回非破壊計測シンポジウム講演要旨集, pp. 160-161

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第19回非破壊計測シンポジウム講演要旨集, pp. 160-161
マルチバンドイメージスキャナによるメロンの糖度分布可視化
蔦
瑞樹 1、一ノ瀬
修一 2、小川
紋弘 3、杉山
純一 4、相良
泰行 1
東 京 大 学 大 学 院 農 学 生 命 科 学 研 究 科 1 、 ア イ メ ジ ャ ー ( 有 ) 2 、( 有 ) ダ ッ ト 3 、
独立行政法人食品総合研究所 4
Visualization of the Sugar Content Distribution of Melons Using a Multi-Band Image
Scanner
M. Tsuta 1 , S. Ichinose 2 , F. Ogawa 3 , J. Sugiyama 4 and Y. Sagara 1
The University of Tokyo 1 , iMeasure Inc. 2 , Dat Inc. 3 , National Food Research Institute 4
1.緒言
筆者らは、分光スペクトルを2次元的に計測・解析し、
対象の成分分布を可視化する近赤外分光イメージング手法
の 研 究 に 取 り 組 ん で き た 。 こ れ ま で に 、 CCDカ メ ラ の 各 画
素を近赤外分光装置の検出器として扱うことにより、メロ
ンの糖度分布可視化を行ったが
i , ii
、 CCDカ メ ラ に よ る 可
視化手法においては、サンプルに対する均一な照明、サン
プ ル の 位 置 決 め と 保 持 、 CCDカ メ ラ の 焦 点 調 節 な ど の 作 業
に熟練を要し、安定した計測が困難であるという課題が残
された。そこで本研究では、取り扱いが簡便で、常に一定
の 条 件 で 対 象 を ス キ ャ ン す る イ メ ー ジ ス キ ャ ナ に 着 目 し 、任 意 波 長 に お け る サ ン プ ル の ス キ ャ
ンを安定して行う「マルチバンドイメージスキャナ」を開発し、その有効性を検証するため、
メロンの糖度分布可視化に取り組んだ。
2.実験方法
【 マ ル チ バ ン ド イ メ ー ジ ス キ ャ ナ 】本 研 究 で
は 市 販 の イ メ ー ジ ス キ ャ ナ( セ イ コ ー エ プ ソ
ン 社 製 ES-2200)を ベ ー ス に 、照 明 か ら ラ イ
ンセンサに至る光路上にバンドパスフィル
タ を 挿 入 す る こ と に よ り 、任 意 の 波 長 に お け
るスキャン画像の取得が可能な装置を開発
し た ( 図 1 )。 ス キ ャ ン に 際 し て は 、 最 初 に
本体に内蔵された標準白色板をスキャンし、
そ の 輝 度 値 を 基 準 ( =65,535) と し て サ ン プ
ル の 相 対 的 な 輝 度 値 を 16bit( 0∼ 65,535)で
出 力 す る 。 こ の た め 、 照 明 ム ラ や CCD ラ イ
ンセンサの感度ムラの影響は自動的に除去
さ れ る 。 ま た 、 16bit の 階 調 度 は 従 来 の 近 赤
外 分 光 分 析 装 置 と 同 等 で あ り 、本 装 置 は 近 赤
外分光分析による定量解析にも利用可能で
あ る と 考 え ら れ た 。さ ら に 、ス キ ャ ナ の 特 性
上 、 サ ン プ ル と CCD ラ イ ン セ ン サ 間 の 距 離 や 角 度 は 常 に 一 定 に 保 た れ る た め 、 安 定 し た 計 測
が期待された。
【 サ ン プ ル 】サ ン プ ル に は 市 販 の 緑 肉 メ ロ ン( 高 知 県 産 ア ン デ ス メ ロ ン )を 用 い た 。品 温 変 動
による測定誤差の低減を図るため、室温で一昼夜放置した後、実験に供試した。
【 果 肉 断 面 の ス キ ャ ン 及 び 吸 光 度 変 換 】サ ン プ ル を 半 分 に 分 割 し 、そ の 切 断 面 を マ ル チ バ ン ド
イ メ ー ジ ス キ ャ ナ に て ス キ ャ ン し た 。 ス キ ャ ン 波 長 は 、 糖 度 と 逆 相 関 の あ る 676nmと し た i 。
吸 光 度 の 定 義 に 従 い 、得 ら れ た ス キ ャ ン 画 像 の 各 画 素 に 下 記 の 式 1 を 適 用 す る こ と に よ り 、図
2 に示す吸光度画像を得た。
65 ,535
⎛ サンプルの輝度値 ⎞
⎛
⎞
…( 1 )
⎟ = log 10 ⎜
⎟ 標準白色板の輝度値
サンプルの輝度値
⎝
⎠
⎠
⎝
吸光度 = − log 10 ⎜
【 検 量 線 の 作 成 】断 面 を ス キ ャ ン し た サ ン プ ル よ り 円 柱 状 に 果 肉 を 抜 き 取 り 、こ れ を 検 量 線 用
サ ン プ ル と し て そ の 内 側 果 肉 断 面 を ス キ ャ ン し た 。得 ら れ た 画 像 の 各 画 素 に 式 1 を 適 用 し て 吸
光 度 に 変 換 し 、図 2 中 段 に 示 す 白 点 線 の 範 囲 内 に あ る 画 素 の 平 均 吸 光 度 を 算 出 し た 。ま た 、ス
キ ャ ン し た 部 分 か ら 1mm 厚 の ス ラ イ ス を 切 り 出 し 、 そ の 果 汁 を 絞 っ て 糖 度 を デ ジ タ ル 糖 度 計
( ア タ ゴ 社 製 PR-100) で 測 定 し た 。 以 上 の 作 業 を 果
肉の内側から果皮付近まで繰り返すことにより、検量
線用サンプルの様々な深さにおける吸光度と糖度実
測値を得た。さらに、両者に回帰分析を適用し、図 3
に示す糖度の検量線を作成した。
【糖度分布の可視化】作成した検量線を、半割サンプ
ル断面の吸光度画像の各画素に適用し、吸光度を糖度
に変換した。さらに、糖度の大小をカラーマッピング
す る こ と に よ り 、図 4 に 示 す 糖 度 分 布 の 可 視 化 画 像 を
得た。
3.結果及び考察
図 3 に 示 す 通 り 、 検 量 線 の 相 関 係 数 が 0.980 と 高 精
度であること、また、図 4 に示す糖度分布の可視化画
像において、糖度分布の異常な勾配は見られないこと
から、照明ムラなどの影響を受けない正確な糖度分布
の可視化画像が構築されたと考えられた。これは、安
定してサンプルをスキャン可能なマルチバンドイメ
ージスキャナの特性によるものと思われる。よって、
本装置は近赤外分光イメージング装置として十分な
精度を有し、成分分布可視化に有用であることが示唆
された。今後は、様々な食品における成分分布可視化
への応用が期待される。
J.Sugiyama: Visualization of Sugar Content in the Flesh of a Melon by Near-Infrared Imaging ,
J. Agric. Food Chem., 47, 7, pp.2715-2718( 1999)
i i M. Tsuta, J. Sugiyama and Y. Sagara: Near-Infrared Imaging Spectroscopy Based on Sugar
Absorption Band for Melons , J. Agric. Food Chem., 50, 1, pp.48-52( 2002)
i
( ※ 本 論 は 第 19 回 非 破 壊 計 測 シ ン ポ ジ ウ ム 講 演 要 旨 集 pp. 160-161 に 掲 載 さ れ た も の で す )
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