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3.古代地中海世界の文様

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3.古代地中海世界の文様
イメージの系譜 第3回
古代地中海世界の文様より 地中毒を触り暴く白々
2古代地中海世界の文様(1)
アジア、アフリカ、ヨーロッパの3大陸に囲まれた地中海は、文明の伝播の拠点である。エジプ
ト、メソポタミアと言う2大先進文明をギリシアは独自に消化し、やがて東方の様式を取り入れ西
洋文明の基礎となる文化を築いた。
BC4世紀後半のアレクサンドロス大王の東方遠征以後、このギリシア文化はオリエントの諸国に
広がり国際的なヘレニズム文化へと発展する。更にこの文化を継承するローマが地中海を取り巻く
諸国を征服するやこれらの文化は遠大な広がりを見せていく。
(注)日本ではオリエントはエジプト、西アジア、小アジアを含む地域をさす言葉として使われている。
【A.エジプトの文様】
エジプトは周囲を砂漠で囲まれ、
異民族の侵入を受けることが少なく、BC525年にペルシャに征服されるまでほぼ3000年間
単一国家として存続し、伝統的な様式を色濃く残した。代表的な文様であるロータス(睡蓮)とパ
ピルス(紙の原料になる多年草)の文様はナイル川の上流に睡蓮、下流にパピルスを有し、正面的で
シンメトリーな構図が浮かび上がる。
ロータス繋ぎ文
タイル パピ/レス文 BC14C
古代エジプトの蓮華文の基本的な単位は,図のように開花状態を上面から見たロゼットと側面か
1
らみたロータス、および膏の側面形、になる。蓮華文はやがて東方に伝播し、仏教とともに日本に
渡ったことは周知の事実でもある。
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柱頭
これらロータスやパピルスは建築の柱の形態にも見られ、その様式化は著しく、工芸の縁取り装飾
にも好んで用いられた。
一方、王制の元でシンボライズされた文様は、守護神としての蛇やハゲタカを聖獣として表現した。
また墓などを飾る文字装飾も多く見られ、聖刻文字として表された。
象形文字ヒエログリフは世界最古の象形文字でアルファベットの原点です。ヒエログリフはエジプ
ト初期の歴史を記録するために作られた文字であり、巨大などラミッドやスフィンクスで有名な
古代エジプト王朝で、今から 紀元前3000年∼紀元前30年にわたって使われていた。
壁画部分 ハゲ鷹と蛇
墓石のテキスト
このようにエジプトの文様モチーフは多様であるが、いずれも多神教と関わりあった点で文様
が装飾機能と同時に象徴機能を合わせ持ったのである。
(図版は世界の文様から複写加工)
【Bメソポタミアの文様】
世界で最初に生まれた文明の地で、ティグリス河とユーフラテス河に挟まれた地域をメソポタミアと呼び、現
在のイラクの辺りになる。南の下流域のイラクに対して、北の上流域は地中海沿岸のシリアや小アジアと接する
東西を結ぶ要衝であり、シメール人を中心に複数民族から生み出された文様が多く見られ、すでに紀元前6千年
頃から農耕社会が出現した。この時代を代表する出土品のひとつに、彩文土器の皿がある。
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皿 イラク BC4400
彩文土器 BC3200 イラン
パルメット 鉢 イラク
文様の特徴としては幾何学文と動物文が目立ち、また植物モチーフではパルメット(ナツメヤシ)などの、シン
メトリーな構図と唐草状に展開する構図が多い。イラン西南部でも紀元前4千年頃に入ると彩文土器が作られる
ようになり、動物の頭や角を極度に強調したデザインが、この地方の装飾の特徴となっている
これら彩文土器とは別にメソポタミアは世界で最初の青銅器文明を実現した。
さて、ルネサンス時代の画家ブリューゲルの描いた「バベルの塔」で
知られている新バビロニア王朝は、BC7世紀∼BC6世紀にメソポタミアか
らシリア・パレスティナを支配した王朝で、別名カルディアとも呼ばれてい
る。写真の分銅はその時代の都市バビロンで出土したもの。
《アッシリア美術》
メソポタミア北部のティグリス川流域を中心とするアッシリアは、
軍事力を背景にバビロニアを占領支配し、宗教・言語の分野でアッシリアの
ヨ バビロニア化を進めることとなった
が、美術に関しては、アッシリア固有の美術を展開したのである。
またアッシリアの出土品からは、日本の天皇家の16菊花紋そっくりの文様
の物が何点か有る事も知られている。
黄金神杯
古代地中海世界の文様 3
【Cギリシアの文様】
エーゲ海は地中海東部に位置し西はギリシア東はトルコのアナトリア半島に挟まれた海域であり、
大小2500の島を擁しその中で最大の島のクレタ島で発展したクレタ文明は、地中海交易でエジ
プトやフェニキアの美術が流入し、BC2600年頃から青銅器の生産により高度な工芸品を生み出さ
れた。ローマ帝国に支配されるまでギリシャ美術はヘレニズム時代(BC330∼31)まで続く。
葉状文 壷 BC15C 赤像式水瓶 シチリア BC 4C 渦巻き文青銅器 クレタ島BC25
ギリシャの文様の特徴は植物文を好み、文様の螺旋運動化が進んで唐草の原型である渦文や曲線に
対する愛着が波状文に及び、エジプトのそれに比べると流動的で自由な動感がある。地中海に面し
たクレタ島フアイストス神殿などから出土した壷などに見られる渦文は波のイメージからやがて渦
の唐草に発展していったものである。
パルメットの連続文 陶器の縁取り
ヘレニズム文化と生命樹 BC400年半ばのアレクサンドロス
大王のペルシャ征服からBClOO年後半のローマ支配の確立までの
間、地中海と中東地域でギリシャの文化と学術が支配的であった時
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当
代をヘレニズム時代と言い、この時代にはギリシャ人が盛んに東方
に移住したため、ギリシャ文化が広く普及し、東西文化が融合し、
新しい文化が生まれた。これをヘレニズム文化と呼ぶ。下の図の生
命樹はアラブ・オリエント世界(古代文明発祥のエジプト、メソポタミア、広い意味で中近東をさす)
の宗教のシンボルであったが、広く地中海からインド、中国にまで及ぶ、古代では最もポピュラー
な主題でありその中核をなすのはパルメット(ナツメヤシ)であった。
片輪車文 12C 日本平安時代
図は8世紀北イタリアのレリーフで、十字架を囲む生命樹と四福音史家の象徴、そして動物の戯れ
4
る姿が描かれる。組紐の十字架が法輪であればそのまま仏教美術になるものでもある。
●注 法輪とは日本の王朝文様の代表に「片輪車」と呼ばれる文様がある。水流に片方だけの車輪が浮き沈みしてい
る絵柄で、牛車の車輪の乾燥を防ぐために川につけている景物を文様化したものだが、この水の中の車輪には悟りへ
の障害を打ち破る法輪のイメージが託されている。法輪は仏の教えが衆生の悪を打ち砕いて地に展開するさまを車に
たとえている仏教的な意味合いがある
D【ローマの文様】
ローマ人は、ギリシア人のような独創的な文化を創り出すことができず、ギリシア文化・ヘレニズ
ム文化の模倣に終ったが、古代文化を集大成し、後世に伝えたという点では功績を残した。ローマ
の文化は略奪と融合の中で発展し王政時代から共和政末期までの遺品が極めて少なく、帝政ローマ
になってからも文様はギリシャ時代の継承で、パルメットに加えアカンサスの装飾が建造物に多く
見られる。特に貴族や富裕層の住宅の天井や壁を絵画で装飾することが流行する。ポンペイなどの
遺跡では人物、風景、静物画が建物の空間を飾った。ここでは文様という観点からこれら絵画の画
像は割愛させて頂く。
建物の装飾 ローマ
(図版は世界の文様から複写加工)
建物の装飾 ポンペイ
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