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NHK技研3か年計画 2015~2017年度

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NHK技研3か年計画 2015~2017年度
NHK技研3か年計画の策定にあたって
メディア環境や国際環境などの変化に適切に対応し、2020年の東京オリンピック
・パラリンピックへ向けた取り組みを着実に進めていくため、NHKは新たな
経営計画
(2015-2017年度)
を策定し、公表しました。放送と通信の融合時代に
ふさわしい 公共メディア への進化を見据えて、最新技術を生かし2020年に
最 高 水 準 の 放 送・サ ービ スを 実 現 するというビ ジョンをまとめ、新 た な
可能性を開く放送・サービスの創造などを重点方針としました。公共放送NHKの
ビジョンと計画を実現するため、私たち放送技術研究所
(技研)の使命は、
2020年はもとより、今から20年後を想定し、最先端の放送技術およびサービスの
研究開発において先導的な役割を果たすことだと考えています。
高臨場感放送スーパーハイビジョンは、技研が研究をスタートさせてから
今年で20年になります。撮像から記録、圧縮、送受信、表示まで、各要素技術の
研究開発と標準化が進み、いよいよ実用化へ向けた準備を加速させる段階と
なりました。NHKは、2016年に8Kスーパーハイビジョンの試験放送を開始し、
2018年までの実用放送、東京オリンピック・パラリンピックが開催される
2020年の本格普及を目指しており、技研はそのための研究開発を着実に進めます。
インターネットの利用拡大やモバイル端末の急速な普及など、情報をめぐる
環 境は激しく変 化しています。放 送 法の改正を踏まえ、多様な伝 送 路で
より多くの人に公共性の高い情報や番組などのコンテンツを届けるため、
インターネットを活用した情報の収集や発信、新たなサービスの展開のための
研究開発に、積極的に取り組みます。すでに実用化しているハイブリッドキャスト
については、サービスの一層の高度化や8Kスーパーハイビジョンの高精細な
大画面を生かした魅力的なサービスの研究開発に力を入れていきます。
究極の2次元映像である8Kスーパーハイビジョンの次の放送として、特別な
めがねなしで自然な立体映像を見ることができる立体テレビについても、
技研は2030年頃の実用化システムの構築を目指して研究開発を進めていきます。
また、より高度な番組制作技術や、視聴者のみなさまに快適に放送を楽しんで
いただくための人にやさしい放送技術の研究開発も推進します。
この3か年は、8Kスーパーハイビジョンの着実な実用化と高度化のための
研究開発、そしてその次の放送サービスにつながる研究を加速するフェーズと
位置づけて、計画を策定しました。
2015 ∼ 2017年度 NHK技研3か年計画
1
技研3か年計画の基本方針
想定する20年後のメディア環境
8Kスーパーハイビジョンが定着し、自然な立体テレビが現実のものとなっています。
また、インターネットを活用した放送と通信の融合が進み、伝送路の違いを意識せずに
多様な情報にアクセスできます。誰もが、使いやすいインターフェースでこれらの恩恵を
享受できます。
家庭のリビングルームでは、壁全体に表示できるフレキシブルかつ大画面のシート型
ディスプレーに、臨場感あふれる8Kスーパーハイビジョン映像が映し出され、さらに
その他の壁にも連動した映像が表示されます。テーブル型やタブレット型ディスプレーでは、
立 体 映 像 や 触 力 覚 に よ る 実 物 感 の あ る コ ン テ ン ツ を 体 感 で き ま す。 モ バ イ ル で は、
ウェアラブルや折り畳みディスプレーなど、さまざまなタイプの携帯端末が普及し、いつでも
どこでも多様な情報を楽しむことができます。
高齢者や障害のある方へのバリアフリーサービスも充実し、大容量の情報の中から、
個人の好みやニーズに合った情報を即座に利用できるなど、高度な機能を誰もが容易に
利用できる環境が整っています。
多彩で豊かなコンテンツを制作するため、ワイヤレスの8Kスーパーハイビジョン小型
カメラや、ネットワークを利用した収録・編集・送出システムが普及し、どんな場所でも
高精細な映像を制作することができ、視聴者のみなさまに質の高い番組が提供されます。
2
2015 ∼ 2017年度 NHK技研3か年計画
技研3か年計画の基本方針
今後の研究開発目標
この3か年、技研は直近の「インターネット活用技術」と「8Kスーパーハイビジョン」、
そして将来の
「 立 体 テ レ ビ 」の3つ の 重 点 項 目 を 軸 に し て、
「 高 度 番 組 制 作 技 術 」と
「 人 に や さ し い 放 送 」の2つ の 研 究 項 目 で 全 体 を 支 え な が ら、 放 送 技 術 と サ ー ビ ス を
より高品質で高機能なものへ成熟させていきます。
2015 ∼ 2017年度 NHK技研3か年計画
3
3か年重点項目
「8Kスーパーハイビジョン」
∼高臨場感放送の実現へ∼
8Kス ー パ ー ハ イ ビ ジ ョ ン は、 画 素 数 が3,300万( 水 平7,680画 素、 垂 直4,320画 素 )の
超高精細映像と、22.2マルチチャンネルの3次元音響からなる高臨場感放送システムです。
8K本来の画素数に加えて、広色域とフレーム周波数120Hzの性能を備えたフルスペック
8Kス ー パ ー ハ イ ビ ジ ョ ン の 実 現 に 向 け て、 番 組 制 作、 符 号 化・ 多 重・ 伝 送、 表 示 と
音響再生など各種技術の研究開発を進めます。
■ 番組制作技術
フルスペック8Kスーパーハイビジョンに対応した実用的な小型カメラや映像制作システム、
3次元音響制作システムを開発します。
映像・音声などの番組素材を中継現場から放送局へ無線で伝送する技術と、放送局内や
放送局間を非圧縮で光伝送する技術を開発します。
■ 放送用符号化・多重・伝送技術
フルスペック8Kスーパーハイビジョン信号を伝送可能な符号化装置を開発します。
衛星、地上、ケーブルなどの各種伝送路を使って、スーパーハイビジョンの放送を効率的に
家庭に届けるための方式の開発と性能改善を進めます。
インターネットを使って放送の伝送路を補完するとともに、サービスを充実させるための
多重技術の開発を進めます。
■ 家庭視聴用表示・音響再生技術
家庭に8Kスーパーハイビジョンの大型ディスプレーを導入するために、フレキシブルな
シート型ディスプレーの大画面化と高精細化に向けた基盤技術の開発を進めます。
家庭視聴向けに少ないスピーカー数で22.2マルチチャンネル音響が再生可能な3次元音響再生
システムの開発を進めます。
4
2015 ∼ 2017年度 NHK技研3か年計画
3か年重点項目
「立体テレビ」
∼自然な立体映像の実現に向けた研究を推進∼
特別なめがねが不要で自然な立体映像を楽しむことができる、空間像再生型立体テレビの
研究を進めます。この3か年は、インテグラル立体映像を高品質化する技術と立体映像の
品質を評価する技術の開発、さらに将来のホログラフィーによる立体表示や立体映像の
撮影に向けた新しいデバイスの研究開発を進めます。
■ 立体映像技術
複数のデバイスを使ったインテグラル立体映像の撮影装置や表示装置の開発を進め、立体映像の
高解像度化と広視域化を図ります。
2次元状に配置された多視点カメラを用いて被写体の3次元情報を広範囲に取得し、高品質な
インテグラル立体映像に変換する技術を開発します。
自然さや見やすさなど、立体映像の品質を評価する技術を開発し、撮影・表示システムの設計や
映像を伝送する際の符号化技術の開発に活用します。
■ デバイス技術
超微細な画素からなるホログラフィー用超高密度表示デバイスや、光ビーム形状を自在に
操作できる光制御デバイスの基盤技術を開発します。
超多画素と高フレームレートを両立する3次元構造撮像デバイスの基盤技術を開発します。
2015 ∼ 2017年度 NHK技研3か年計画
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3か年重点項目
「インターネット活用技術」∼放送と通信の融合時代の新たなサービスに向けて∼
多様化する社会のニーズや視聴者の生活環境に対応した、より身近で信頼できる
公共メディア の実現に向けて、放送にインターネットを活用するための研究開発を進めます。
■ 視聴者の幅広い期待に応えるサービスを実現するための技術研究
ハ イ ブ リ ッ ド キ ャ ス ト の 技 術 を 応 用 し、8Kス ー パ ー ハ イ ビ ジ ョ ン の 大 画 面・ 高 精 細 に
ふさわしい、新たなサービスを実現するための技術を開発します。
家庭やモバイルなど多様な生活環境に適したスタイルで、ユーザーにタイムリーな情報や
コンテンツを届け、分かりやすく提示する技術を開発します。
映像コンテンツや番組関連情報を利活用して、放送局をはじめ、さまざまな企業や組織の
多様なサービスの創出を可能とするデータ提供手法およびシステムの研究開発を進めます。
個々の視聴スタイルに応じたサービスの実現に向けて、視聴しているコンテンツに関する情報を
統合的に解析して個人の好みやニーズを抽出する技術を開発します。
■ 放送通信連携による公共放送を支える基盤技術の研究
放送と通信の精密な同期提示や、利用端末に応じた最適な方法でのコンテンツ視聴など、高度な
放送通信連携サービスに向けた基盤技術を開発します。
さまざまな受信端末を持つ視聴者に対して、インターネットを活用してライブ動画を安定に
配信し視聴できる配信マネージャー方式の配信基盤技術を開発します。
放送時間やチャンネル、番組単位にとらわれないザッピング型の新しい視聴スタイルを実現
するためのクラウド技術を開発します。
放 送 通 信 連 携 サ ー ビ ス の 高 度 化 に 向 け て、 ク ラ ウ ド 上 で 個 人 情 報 を 利 用 し た 場 合 で も
安全・安心が担保されるプライバシー保護技術を開発します。
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2015 ∼ 2017年度 NHK技研3か年計画
3か年重点項目を支える研究項目
「高度番組制作技術」
∼多彩で豊かなコンテンツ制作をサポート∼
高品質で魅力的な番組の制作、安全・安心を確保する緊急報道の支援など、現行および
将来の放送サービスを高度化する番組制作技術の研究を進めます。
■ 取材現場と放送局の間で映像素材やデータを確実に送る技術
映像やデータを高速かつ双方向に伝送できる無線伝送技術の開発を
進めます。
■ 多様な放送サービスの制作を支援するメディア処理技術
双方向無線伝送装置
番組を分かりやすく豊かな表現とするために、センサーや映像解析
技術を高度に活用した映像加工および映像表現の技術開発を進めます。
映像やテキストの解析技術を応用し、効率的な制作や利活用が可能な、
情報抽出・提示技術や評判分析技術などの開発を進めます。
映像表現の適用例
■ 将来の番組制作を支えるデバイス技術
8Kスーパーハイビジョン番組制作の多様化を図るため、高感度な
撮像デバイスや小型・低消費電力の高速記録デバイスの開発を進めます。
8Kスーパーハイビジョンのアーカイブを目指した大容量ホログラム
記録装置の開発を進めます。
「人にやさしい放送」
大容量記録実験装置
∼すべての人にやさしい放送技術の開発を推進∼
放送・サービスをすべての人が楽しめるよう、耳や目に障害のある方や、外国人を含むすべて
の視聴者が、聞きやすく、見やすく、分かりやすい「人にやさしい」放送技術の研究開発を進めます。
■ 耳に障害がある方へのコンテンツ提供技術
気象情報の原稿から手話CGを自動生成するため、顔の表情および
手指の動きがより自然で分かりやすい手話CGの研究を進めます。
字幕番組を拡充するため、これまで音声認識の適用が難しかった
情報番組の音声を直接認識可能な技術の研究を進めます。
手話CG
■ 目に障害がある方へのコンテンツ提供技術
文字を単に読み上げるだけでなく、感情や雰囲気なども表現可能な
音声合成技術の研究を進めます。
触れて情報を伝えるサービスを実現するため、可搬型の触力覚提示
装置と図やグラフを触覚で提示する実用的な装置の開発を進めます。
触力覚提示装置
■ 外国人の方へのコンテンツ提供技術
外国人の方にも分かりやすい日本語のコンテンツを提供するため、
ニュースをやさしい日本語に自動的に書き換える技術の研究を進めます。
分かりやすい日本語変換例
2015 ∼ 2017年度 NHK技研3か年計画
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3か年計画推進に向けた施策
研究開発と外部連携の推進
■ 研究開発の推進
放送技術の発展につながる 新奇 研究テーマの発掘に取り組みます。
最新の研究成果を国内外に向けて積極的に発信し、技研の国際的なブランド力を高めます。
■ 外部連携の推進
ITU(国際電気通信連合)やARIB(電波産業会)など国内外の標準化団体に参加して勧告や標準
規格の策定および改訂を進めるとともに、日本の技術の国際普及に積極的に貢献していきます。
最新の放送技術・研究の情報交換や研究員の交流など、ABU(アジア太平洋放送連合)等
国内外の放送関連機関との協力を進めていきます。
知的財産への取り組み
■ 特許出願と権利確保の推進
研究開発の過程で生まれた発明の着実な特許出願・権利確保を推進していきます。
特に標準化活動と連携した効果的な特許出願・権利化により、新たな放送・サービスに向けて
普及に貢献していきます。
■ 技術協力と実施許諾による研究開発成果の利活用促進
NHK保有技術の周知斡旋活動を積極的に実施し、技術協力及び実施許諾による社会還元を
広く進めます。
視聴者との結びつき・経営課題への対応の強化
■ 研究成果の公開、視聴者のみなさまとのふれあいの強化
技研公開をはじめ、機関誌やホームページなどで研究成果を公開し、視聴者のみなさまに技研の
取り組みを分かりやすくお伝えします。
地域のみなさまとの結びつきを大切にし、より魅力的な地域イベントを開催するとともに、
見学対応や技研ギャラリーなど、技研ロビーの充実に努め、引き続き 身近な技研 を目指します。
■ 環境経営・コンプライアンスの推進
電気・ガスなどの使用量削減やCO2排出基準のクリアなど、省エネ・リサイクルに努め、
技研ビルを利用する組織が一体となって環境経営を一層推進します。
公共放送の研究機関として、研究の進捗管理と適正経理の推進に取り組み、コンプライアンスの
更なる徹底を図ります。
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2015 ∼ 2017年度 NHK技研3か年計画
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