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「金属ガラスの成形加工技術」 中間評価報告書(案)概要

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「金属ガラスの成形加工技術」 中間評価報告書(案)概要
第3回研究評価委員会
資料 4-2-4
「金属ガラスの成形加工技術」
中間評価報告書(案)概要
目
次
(頁)
分科会委員名簿・・・・・・・・・・・・
1
プロジェクト概要・・・・・・・・・・・
2
評価概要(案) ・・・・・・・・・・・・・
6
評点結果 ・・・・・・・・・・・・・・・
12
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 研究評価委員会
「金属ガラスの成形加工技術」(中間評価)
分科会委員名簿
(平成16年8月現在)
氏名
分科会
会長
吉原
分科会
小林
会長代理
分科会
委員
所属、肩書き
一紘
紘二郎 大阪大学
安宅
龍明
齊藤
良行
服部
丸山
独立行政法人物質・材料研究機構
正
正明
大学院工学研究科
オリンパス株式会社
早稲田大学
日経BP社
生産科学専攻
教授
未来創造研究所
テーマコーディネータ
理工学部
兵庫県立大学
理事
物質開発工学科
教授
高度産業科学技術研究所
教授
編集委員室
編集委員
敬称略、五十音順
事務局:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究評価部
1
プロジェクト概要
作成日
制度・施策
(プログラム)名
革新的部材産業創出プログラム
事業(プロジェクト)名
高機能高精度省エネ加工型金属材料
(金属ガラス)の成形加工技術プロジェクト
担当推進部/担当者
ナノテクノロジー・材料技術開発部/山本 道晴
0.事業の概要
H16.5.7
プロジェクト番号
T01040
21世紀の中核を担う革新的部材である金属ガラス(特定の数種類の元素を混合・溶
解し、急冷凝固して得られる高稠密充填構造を持ち、しかも過冷却液体域を示す非晶
質金属材料)は、高機能・高精度、さらに省エネ加工型の金属材料として期待されてい
る。本プロジェクトでは、我が国の強みである材料創製技術と成形加工技術の融合によ
り、高い技術に立脚した高付加価値部材を創出するため、金属ガラスについて、加工
性を重視した材料創製技術と材料特性を活かした成形加工技術を一体的に開発し、精
密機械部品や高精度計測機器部品等に適用する。
【NEDOが関与する意義】
我が国の材料産業は、これまで国際的に高い技術力と競争力を維持してきており、
情報通信機器、機械等の広範な分野を支えてきた。ところが、昨今の国際競争の激化
により、更なる飛躍的発展のキーテクノロジーとして革新的な材料創製技術が求められ
ている。金属ガラスは、高機能・高精度、さらに省エネ加工型の金属材料として期待され
ており、日本が先行している技術の一つである。
従来、金属ガラスにおいては、限定された材料が試験的に研究されているのみであ
り、広範囲な材料の創製技術や各種部材への実用化技術、更には成形加工との一体
的な研究開発は十分になされていない。これらが国家的なレベルでなされなかった場
合、社会的に多大な損失が生じる恐れがあり、一方で民間の自主的取り組みにも限界
がある。
従って、「材料技術の推進に当たって、基礎的・先導的な研究開発や産業化をも視野
に入れた基盤技術の開発といった、市場原理のみでは戦略的・効果的に達成し得ない
領域の研究開発を重点的に推進する(科学技術基本計画)」ための施策として、国とし
て関与する必要がある。
【実施の効果(費用対効果)】
(1)費用: 3.8億円(平成16年度予算)×5年間
Ⅰ.事業の目的・政
(2)効果: 総額;1,840億円
策的位置付けにつ
内訳:精密機械部品 1,580億円
いて
高精度計測機器部品 180億円
自動車用スプリング/航空機部品 80億円
【事業の背景】
近年国際競争は激化の一途を辿っており、材料産業は自らのコア領域を「コモディテ
ィ」から「スペシャリティ」へ、そしてさらに「ソリューション提供ビジネス」へとシフトさせつ
つある。このようなシフトは必然として、物理的・科学的な加工度の高度化を要求する
結果となっている。一方、組み立て産業にとっても、部品のファイン化を背景として、材
料特性に依存する部品、ひいては製品が増大してきている。従って、産業の構造改革
の中で、材料産業はもはや素材ではなく、高付加価値の部材を供給するという新たな
産業モデルである「革新的部材産業」が始動しつつある。
【目的】
本プロジェクトは、我が国の強みである材料創製技術と成形加工技術の融合により、
高い技術に立脚した高付加価値部材を創出するため、高機能高精度、かつ省エネ加
工型の金属材料である金属ガラスについて、加工性を重視した材料創製技術と材料特
性を活かした成形加工技術を一体的に開発し、精密機械部品や高精度計測機器部品
等に適用することを目的とする。
2
【位置付け】
事業の類型 産業技術研究開発制度
産業技術戦略における位置付け
革新的、基盤的技術の涵養のうち③材料・プロセス技術においては「様々な産業製
品を生み出すための重要な基盤技術である多様な高機能性材料を最適に設計・創製
する技術が重要である」こと、及び「環境調和型の…サスティナブル・デベロップメントの
視点を踏まえた人間・環境調和型高効率生産プロセス技術が重要になってくる」ことが
指摘されている。また、④製造技術においては、「素材・機能発現単位のミクロなレベル
からの構造創製・集積化技術等の開発により…マイクロ/ナノレベルの微細な加工、
制御、応用技術により高度な機能を実現する技術が重要である」と指摘されている。
関連する国内外の研究の動向、その中での位置付け
現在の金属ガラスに関する研究は、日本主導であることは間違いないが、海外にお
いては米国、中国、韓国および欧州諸国で研究が活発化してきている。特に、米国で
はカリフォルニア工科大が中心となり、製品化・実用化を考慮した基礎研究が行われて
いる。韓国では Yonsei 大学、中国では中国科学技術院、シンガポールではシンガポー
ル 国 立 大 学 、 欧 州 で は ケ ン ブ リ ッ ジ 大 学 、 IFW- ド レ ス デ ン 、 RISO 国 立 研 究 所 、
LTPCM-CNRS 等が研究実績を挙げている。
さらに、デンマーク、欧州共同体、米国、韓国等では既に金属ガラス開発に関する国
家プロジェクトも立ち上がっている。このような研究の世界的活発化の中、日本では東
北大学金属材料研究所が常に材料創製分野で先行しており、研究の優位性・先進性
は充分あるものと推察される。
Ⅱ.研究開発マネジメントについて
平成 18 年度までに、特定の数種類の元素を混合・溶解し、急冷凝固して得られる非
晶質相を示す金属ガラス組織制御技術および粘性流動特性を利用したニアネットシェ
イプ加工技術を開発する。
事業の目標
また、超精密部材、輸送機器構造部材、高精度計測機器機能部材の試作・評価を実施
する。
さらに、これら技術を体系化しデータベース化する。
H14fy
H15fy
H16fy
H17fy
H18fy
主な実施事項
精密部材組織制御技術
輸送機器構造部材
成形加工技術
高精度計測機器機能部
事 業 の 計 画 内 材成形加工
容
技術
金属ガラスの新創製プ
ロセス開発
知識・基盤技術
整備
会計・勘定
開発予算
一般会計
(会計・勘定別
に 実 績 額 を 記 特別会計
載)
(単位:百万円) 総予算額
開発体制
経産省担当
原課
H14fy
H15fy
H16fy
000
388
380
563
000
000
563
388
380
H17fy
製造産業局産業機械課素形材産業室
3
H18fy
総額
運営機関
新エネルギー・産業技術総合開発機構
プロジェクトリーダー
所属:東北大学金属材料研究所 所長
氏名:井上 明久
委託先
(財)次世代金属・複合材料研究開発協会
独立行政法人 産業技術総合研究所
再委託先
なし
共同研究先
①群馬大学大学院工学研究科
②東北大学金属材料研究所
③大阪大学産業科学研究所
④秋田県立大学システム科学技術学部
情勢変化への
適宜対応する
対応
平成15年度末の時点で、殆どの項目で中間目標(平成16年度)を達成し、予想を
上回る状況で進捗している。材料創製については、新規合金系である Fe 基、Ti 基、Ni
基合金等で部材成形が可能なことを確認した。平成15年1月の時点での特筆すべき
成果を下記に示す。
新規に材料創製した合金系で以下の優れた特性を得た。
①外径 6.0 mm、内径 4.0 mm の Ti 基金属ガラスパイプの作製に成功し、これを用いて
作製したコリオリ流量計で従来比感度 6 倍を達成した。
②溶湯加圧鍛造法および新開発の低温蒸着法を用いて試作した Ni 基および Zr 基金
属ガラス圧力センサで従来比感度 2 倍以上を達成した。
③Fe 基金属ガラスヨーク材を用いたリニアアクチュエータが、特定の駆動条件下で従
来の軟磁性材より大きな推力を発生できることを確認した。
金属ガラス化が可能な合金を用いて以下の部材作製に成功した。
①直径 1.7mm の Ni 基金属ガラス製超精密歯車を試作し、これを用いた直径 2.4mm
Ⅲ.研究開発成果
のマイクロギヤードモータを作製して、従来より高負荷で長寿命が得られることを確認
について
した。
②金属ガラス大型板材を用いた粘性流動加工による航空機部品の成形加工に成功
した。急速加熱コイリング法により Ti 基金属ガラススプリングを試作した。
③射出成形法等を用いて精密歯車の製造プロセスの大幅な工程低減(省エネ)に成
功した。
その他
①高ガラス形成能かつ低融点の Mg 基金属ガラスを用いて、電磁振動がガラス化に有
用であることを確認した。
②データベース構築に関する基本的事項を確定した。
投稿論文
46件
講演
46件(国際シンポジウム予定 1 件を含む)
特許
10件(出願予定4件を含む)
報道
10件
コリオリ流量計、圧力センサ及び超精密歯車、については解決すべき課題が若干残さ
れているものの、部材作製に成功し、実用化、事業化の可能性が高い見通しを得た。
Ⅳ . 実 用 化 、 事 業 研究開発中の分野では、製品化の出口イメージをより明確にし、更なる小型化や高性
化の見通しについ 能化を進めて医療機器、次世代輸送機器、半導体製造装置用高精度計測器等の今
て
後大幅な市場拡大が見込める部材の開発を行う。また、材料創製において優れた特
性を有する合金系が見出されたため、これらの金属ガラスを部材化することにより応
用分野が広がることが期待される。
Ⅴ.評価に関する 評価履歴
事項
評価予定
策定時期
Ⅵ.基本計画に関
変更履歴
する事項
平成16年度 中間評価実施
平成19年度 事後評価実施予定
H13年3月
4
金属ガラスの成形加工技術の研究開発実施体制
経済産業省
プロジェクトリーダ
東北大学金属材料研究所 所長
(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構
井上明久
(独)産業技術総合研究所(7名)
金属ガラスの新創製プロセス技術開発
超精密部材組織制御G
(財)次世代金属・複合材料研究開発協会
RIMCOF王子分室(4名)
金属ガラスの新創製プロセス技術開発
(並木精密宝石株式会社)
部材の設計、精度評価および製品性能評価
輸送機器構造部材成形加工G
RIMCOF宇都宮分室(5名)
(富士重工業株式会社)
粘性流動加工技術の開発および製品設計
RIMCOF神戸分室(8名)
(株式会社神戸製鋼所)
高精度計測機器機能部材成形加工G
RIMCOF
東北大学研究室(15名)
(YKK株式会社)
(並木精密宝石株式会社)
(日本素材株式会社)
(富士重工業株式会社)
(株式会社真壁技研)
(株式会社青山製作所茨城工場)
大型部材鋳造技術の開発
RIMCOF長岡分室(1名)
(東京計装株式会社)
製品設計、精度評価および製品性能評価
RIMCOF勝田分室(3名)
(株式会社青山製作所茨城工場)
部材の無歪加工および結合技術の開発
RIMCOF丸子分室(6名)
(長野計器株式会社)
製品設計および性能評価
RIMCOF日立分室(2名)
材料創製、成形加工技術開発、
製品設計および評価
(株式会社日立製作所)
摩擦攪拌接合技術の開発
共同研究
RIMCOF川越分室(2名)
(ヒーハイスト精工株式会社)
共同研究契約
製品設計、精度評価および製品性能評価
大阪大学産業科学研究所(4名)
群馬大学工学部(1名)
ナノ構造・ナノ組織に関する微細構造解析
粘性流動加工による金属ガラスの転写性評価
秋田県立大学(2名)
東北大学金属材料研究所(11名)
実験的および計算科学手法による合金探索
軟磁性金属ガラス素材に関する基礎技術開発
5
「金属ガラスの成形加工技術」(中間評価)
評価概要(案)
1.総
論
1)総合評価
集中研究室と分室という研究体制を作り、グループリーダーの強力な指導の元に、
金属ガラスの実用化を目指して、材料創製技術と成形加工技術が調和した研究が進
められ、独自性のある成果を出しつつある。そして、中間評価時点までに相当部分
の最終目標を達成している。この段階としての成果の達成度としては、大変高く評
価でき、研究プロジェクトとして成功している。研究開発としてはより加速すべき
である。日本発の研究成果である金属ガラスを事業化することは、日本発の独創的
な製品開発につながり、日本の産業競争力の強化に貢献すると期待できる。
一方、量産化を目的とした具体的な製品ターゲットの仕様決定には、市場調査を
ある程度は行う必要がある。市場ニーズを把握し、予算の重点配分等の措置により、
製品化を急ぐ課題を選定することを勧める。また、提案しているテーマ以外でも実
用化できそうなものをさらにピックアップしてほしい。なお、本研究は、より大き
な波及効果の可能性があるので、基礎的な側面を軽視する事のないような取り組み
が必要である。
2)今後に対する提言
日本を特徴付ける技術とするため、研究開発を拡大・強化すべきである。特に、
ギヤードモータ、圧力センサ、コリオリ流量計については良い成果を得ているので、
より競争力のある製品へとポリッシュアップすることが必要である。
なお、プロジェクト終了後に企業の経営陣などが、事業計画案を承認する環境を
つくるために、事業化に踏み切る量産化データを多く提供することが望ましい。事
業化にはコスト低減などを考慮し、生産性を向上させることも考慮しなければなら
ないので、製造方法の規格化、製品検定法の標準化などを進めるなどし、歩留まり
を向上させることを試みてほしい。
さらに、基礎的な研究も強化し、金属ガラスの新たな用途の開発も検討するとと
もに、積極的な広報活動を行ってほしい。
2.各 論
1)事業の位置付け・必要性について
日本の独創的な研究開発成果である金属ガラスを実用化することを目的とした、
産業への波及効果の高い材料の研究開発であり、かつ日本独自の強みを持つプロジ
ェクトである。このプロジェクトが成功すれば、先進国同士の独創的な部品開発競
争に勝ち、アジア各国との部品の差異化も実現することができる。本プロジェクト
6
には日本の製造業の競争力を高める意味があり、NEDOが実施すべきプロジェク
トである。
ただし、材料開発は基礎的な研究から実用化までに多くのステップが必要である。
より大きく日本を特徴付ける技術にするためにも、基礎的な研究も軽視せずに、研
究開発を推進することが望まれる。また、プロジェクトで実施している以外の製品
ターゲットへの応用も幅広く検討してほしい。
2)研究開発マネジメントについて
東北大学に、参加企業からの研究者を中心とした集中研究室を設けるとともに、
各参加企業に分室を設けて、具体的な製品開発ターゲットを当初から絞り込み、用
途開発と基礎研究を同時並行で進めてきた。この体制の故に、中間評価までに、研
究開発項目ごとに試作製品をつくり、性能評価するという目標設定に対して、スム
ーズに研究が進行し、実用化が視野に入る段階にまで到達したのであろう。目標の
設定、研究開発の管理が適切に行われたプロジェクトである。
ただし、護送船団方式のプロジェクトと見られないためにも、研究開発項目ごと
の責任体制をより明確にすることが望ましい。また、本プロジェクト内の研究開発
体制で推進してきた主要な用途開発以外にも、より広い用途の可能性を探るべく努
力してほしい。
3)研究開発成果について
中間目標はほぼ達成されている。また、ほぼ全ての個別研究課題で実用化が視野
に入る段階にまで到達している。特にギヤードモータ、圧力センサ、コリオリ流量
計は目標以上の達成度である。研究開発項目ごとに、具体的な部品を試作すること
で、プロジェクト後半に開発する課題を具体的に浮かび上がらせており、金属ガラ
スという新材料を実用化が視野に入る段階にまで到達させたことは高く評価でき
る。
金属ガラスにはより大きな波及効果を目指せる可能性があると考えられるので、
当初設定された研究項目・目標以外にも可能性のある課題にフレキシブルに対応で
きるようにしてはどうか。特に、コイル、リニアアクチュエータの製品ターゲット
に関しては、検討の余地があるので、もう一度見直してほしい。
また、本プロジェクトでは具体的な製品をターゲットにしているだけに、市場ニ
ーズとずれていると意味が無くなる恐れがあるので、具体的な試作製品の量産化を
追究するには、市場調査を実施してほしい。なお、本プロジェクトが開始される以
前の成果との区別を明確にしていただきたい。
4)実用化、事業化の見通しについて
中間評価の段階で、すでにいくつかの研究課題では、所期の目標仕様を満足する
試作品が完成しており、全体として、実用化が視野に入った段階にまで到達してい
7
る。現状で設定されている製品ターゲットの目標をどこまで満たすことができるか
どうかは、プロジェクト後半の成果にかかってくるが、現時点では見通しは明るい
と判断できる。特に、ギヤードモータ、圧力センサ、コリオリ流量計は実用化が見
えているので、コストの問題も検討してほしい。コスト低減のためには、ロットに
よる性能のばらつきなどを小さくし、製造方法や製品検定の規格化なども進める必
要があると思われる。事業化は、コスト面で市場競争力が持てるかどうかに左右さ
れる。コスト競争力を持たせられるかどうかは、プロジェクト後半の重要な開発目
標である。
なお、コイル、リニアアクチュエータの製品ターゲットについては見直しが必要
と思われるので、当初設定された用途以外の可能性を検討するなど、フレキシブル
に対応してほしい。
8
個別テーマに関する評価
精密部材
組織制御
技術
成果に関する評価
実用化の見通しに関する評価
今後に対する提言
金属ガラスのもつ機能特性の良いところを出せる用途が選定さ
れ、最終目標にほぼ到達し、試作品の特性評価までも実施した。
今後は、更なる小型化の検討をお願いしたい。なお、小型化に対
しては、放電加工以外に、マスター金型の研究が必要だと思われ
る。
試作品も完成しており、実験室として対応できるところは、既
に達成している。また、適用される分野の選定も綿密になされ、
世界最小のギヤードモータの開発が可能な展開であり、高く評価
できる。次のフェーズとして、実際のフィールドに近いところで
の技術の有用性を早く実証することが重要である。特に、遊星歯
車の成型と組み立てを具体的にどう進めるかについての見通しも
明らかにしてほしい。また、実用化、事業化に関して従来材との
コスト比較を行う必要があるが、ユーザーを早く決め、市場の見
通しを立て、ギヤードモータの適切な価格設定も検討してほしい。
ギヤードモータの製造にとどまらず、本技術の成果
を生かせる用途の開発や他部品への展開を検討し、よ
り実際に近いところでの実証フェーズの検討へと進
めてほしい。遊星歯車機構の基本型はできる見通しが
ついている。しかし、具体的な用途ごとに、組み込ま
れる遊星歯車機構の仕様が異なるので、今後は、精密
医療機器など、各用途の仕様にどこまで合わせていけ
るのかを効率良く追究する体制づくりが重要である。
予定以上に研究が進行し、小型モーターの遊星歯車機構の試作
に成功したことは、金属ガラスの転写性の高さを生かす用途開発
に成功したことを意味する。また、最終目標に向けて、ギヤード
モータのオール金属ガラス化の試みや生産性の向上を目指した連
続・多数個取り成型など、チャレンジングな課題に取り組もうと
していることは高く評価できる。
なお、既存品であるプラスチックや鉄鋼材料のギヤヘッドをコ
ーティングしても寿命をのばせる可能性があると思われるので、
既存品を改良してでは到達できないほどの良い特性が出ているこ
とを証明してほしい。
9
本課題は、金属ガラスの機械的特性を生かした応用であり、中
間目標も達成している。航空機部材の試作では、ガラス形成能が
比較的低いとされる Ti 基金属ガラスについて、短期間に高強度の
Ti 合金を開発し、大型板材の鋳造に成功した。さらに、摩擦撹拌
接合まで実現し、加工技術を拡充した点が評価できる。スプリン
グ部材としては、金属ガラスのヤング率の低さ(優れたバネ特性)
を有効に活用できることを明らかにし、コイルに成形する技術を
確立した点が評価できる。
輸送機器
構造部材
成形加工
技術
なお、実用化開発の前に、さらに一段の製造技術としての極限
を追求する必要があると思われる。スラットトラックカバーに関
しては、Zr 基金属ガラスでは試作品が完成しているが、所期の目
標である Ti 基金属ガラスについては未完成である。しかし、Ti 基
金属ガラス大型鋳造板材が既に完成しているので、近々目標は達
成できるであろう。スプリング部材に関しては、量産化を視野に
入れた工程の開発が必要になると思われるので、線材作製技術、
コイリング技術開発に関する研究を進めるとともに、コスト面か
らの検討も開始してほしい。
現状では、合金組成の均一制御が容易ではない面がある。事業
化のためには、生産性の向上が不可欠となるので、ロット間のば
らつきを小さくするなどの工夫が必要となろう。
スプリング部材としては、コイル径をどこまで太くできるかと
いう問題は残っているものの、実用化の可能性は高いと考えるが、
金属ガラス製バルブスプリングの性能と市場ニーズをどう一致さ
せるかの見通しをつける必要がある。また、コイルの製品ターゲ
ットではコスト面の検討が必要である。なお、コイリング技術に
関しては、実用上、疲労が問題となるであろうから、金属ガラス
の疲労に関する試験も計画してほしい。
航空機部材の試作では、輸送機器の軽量化につながる可能性が
あり、その省エネ効果は大きいと予想される。しかし、スラット
トラックカバーとしては、Ti 基金属ガラスに期待が大きいものの、
板材の安定的製造に不安がある。また、技術面で成功しても、直
ちに実際の部品採用へと繋がるわけではない。実際の部品として
の認定のためには、安全性等に関連する様々な試験を行わなくて
はならないので、息の長い取り組みが必要となる。航空機開発の
プロジェクトに参加することなど、事業化面での見通しをつける
ことが必要であろう。
なお、通常あまり使用されない金属元素も含まれているので、
回収、リサイクルに対する考え方の整理が普及の際必要となると
考えられるので、検討すべきである。
なお、生産プロセスを最適化するための連続・多数
個取り成型では、ランナー(湯道)部分が製品に対し
て大きすぎる恐れがあるので、検討してほしい。
革新的な加工・製造技術の研究開発も含めて、本課
題は強力に推進すべきである。ただし、事業化の見通
しを明らかにするため、具体的な製品・部品ターゲッ
トに対する市場調査をある程度実施することを勧め
る。金属ガラスの特性が生かせる用途開発が必要であ
るが、例えば、スプリング部材に集中して成果を確実
なものにすることも検討してほしい。また、構造体に
することはコストの点で難しいということは良くわ
かるが、一段上の製造プロセスを開発し、対処してほ
しい。
高精度計
測機器機
能部材成
形加工技
術−①コ
リオリ流
量計
金属ガラスの特性を活用した開発課題として、コリオリ流量計
を見いだしたこと自身が評価できる。強度の優れた材料を選び、
その成形加工技術を確立して、既に最終目標を達成した試作品も
完成しており、高く評価できる。最近の研究開発は一段と進展し
ており、より大きな将来展開が可能と評価できるので、今後は、
特に応用を絞り込んで、これでしかできないというような結果も
示してほしい。
実用化、事業化を想定した研究計画であり、高く評価できる。
中間評価の段階で、所期の性能要求を満足する試作品が既に完成
しており、実用化への道は近い。今後の研究開発により、より薄
く、より細いガラスパイプを製造し、高感度の流量計が実用化で
きると考えられるので、Zr 基と Ti 基のそれぞれの特徴を生かした
技術ロードマップの作成を試みてはどうか。
実用化・事業化にあたっては、すでに既存製品により市場が形
なお、金属ガラスを用いたコリオリ流量計は競争力のある日本 成されているものであるから、応用を絞り込んで、代替するため
発の製品に育つ可能性が高いので、生産性を上げるために、パイ の優位性の実証を行ってほしい。また、センサシステムとしての
プの均質性(厚さ分布)、ばらつき等を考慮した検討もしてほしい。 開発も考慮してほしい。なお、今後の課題ではあるが、高性能な
コリオリ流量計として、適正な価格に収められるかどうかが市場
形成にとって重要になると思われる。
金属ガラスの実用化、事業化を想定した研究計画となっており、
高く評価できる。研究開発としては、圧力センサの構造部品(カ
ップ状部品)をステンレス製ケース(接ぎ手)に塑性結合する技
術まで開発するなど、量産化に向けて技術蓄積がかなり進んでい
今後は、小型化の有利性をさらに実証することが望ましい。ま
る。特に、絶縁膜(SiO2)成膜および歪ゲージ膜成形に特色を出して
た、実用化するときの製造方法(生産性、ばらつき、コストなど)
おり、車載用高圧センサとして有望であるので、実用環境下での
に力を入れてほしい。
耐用試験なども計画してほしい。
金属ガラスの機械的特徴を生かした成果を得ていると高く評価
できる。最終目標を達成し、圧力センサとして高感度の試作品も
完成しており、実用化の見通しが高いレベルまで達している。
高精度計
測機器機
能部材成
形加工技
術−②圧
力センサ
なお、小型・高精度の分野での強みをより鮮明にする研究開発
を行うことにより、より高い成果が期待できるので、どの領域に
使うアクチュエータかを明確にすべきである。ただし、金属ガラ
ス組成が 6 元素と多いことは、実用化の際の問題となる可能性が
ある。
なお、金属ガラス製のパイプがニア・ネット・シェ
イプ加工になっているのかどうかを、プロジェクト後
半で明らかにしてほしい。
本プロジェクトの中では、この製品が一番市場に近
い。早期実用化に向けては何が課題かをプロジェクト
全体で議論してほしい。特に、金属ガラスの特徴を活
用した、さらなる小型化を目指す研究計画の中では、
小型化・高機能化したセンサ素子の高効率生産プロセ
スの検討を急ぐべきである。そして、小型圧力センサ
の新たな用途開発も見つけてほしい。
ただし、既存製品代替を目指すので、コスト競争が市場参入当初
から求められるので、それを意識した準備が必要となる。
なお、実用化のためには用途を絞り込み、センサはも
ちろんだが周辺の回路などまでも含めたコスト競争
を意識した実用化開発が行えるよう課題抽出を行っ
てほしい。また、溶湯鍛造でつくる圧力センサの構造
部品(カップ状部品)は、もう少しニア・ネット・シ
ェイプ成型できないかどうかを追究してほしい。
実用化、事業化を想定した研究計画であり、金属ガラスとして
の電磁的特性を生かした応用が期待できる。ただし、金属ガラス
の特徴を活かすリニアアクチュエータが開発できるかどうかは、
今後の成果にかかっているので、より本材料に適した応用に特化
した研究開発を行うことが、実用化を確実にすると考えられる。
優れた磁気特性を有する金属ガラスの特徴が活かせるターゲット
として、バイオ分野用 XY ステージに用いられるリニアアクチュエ
ータに必要なレベルの広範囲駆動・高精度位置決めが得られるか
どうかに焦点を絞り検討を進め、可能性を早期に見極めることが
重要である。また、磁気センサや電磁バルブなどの小型化・高感
度化に対しても金属ガラスの特徴がより活かせる可能性があるの
で、これらへの適用も併せて調査、検討することが必要である。
これまで、使われているアクチュエータと交替させ
るためには、従来品に比して、十分メリットのある性
能の向上が必要である。したがって、金属ガラスの特
徴を十分生かし、システムとしてのリニアアクチュエ
ータの優位性が示せるように、的を絞ったシステム開
発を進めてほしい。
10
高精度計
測機器機
能部材成
形加工技
術−③リ
ニアアク
チュエー
タ
金属ガラスの電磁的特性の応用としての成果が出ている。リニ
アアクチュエータ用ヨーク材の成形加工において、表面状態の改
善という課題が残っているものの、磁気特性に優れ、加工性に優
れた材料を得ているので、次世代のアクチュエータとして期待が
できる。一部目標値が未達ではあるが、評価用モデルを完成して
おり、最終的には目標の達成が可能な状況にあり、評価できる。
超高感度コリオリ流量計の新たな用途を開拓し、有
用性の実証に重点を置いた開発を強化してほしい。ま
た、計測機器の場合は、事業化するには機器の検定が
必要となる。したがって、事業化のためには、ロット
ごとの性能のばらつきを最大限抑える必要があり、品
質が管理された金属ガラスパイプの製造法の規格化
や製品の検定法の標準化が必要となろう。
今後は、応用を視野に入れた試作品を製造し、既存の製品との
性能比較試験を行うことが望ましい。その際には、駆動回路技術
の更なる開発も必要と思われる。
金属ガラ
スの新創
製プロセ
ス
知識・基盤
技術整備
この方法は、将来の製造方法として、非常にユニークで魅力的
である。電磁振動力印加による金属ガラスの形成能力向上効果を
確認した実験データを示しており、新創成プロセスの第一歩とし
て評価できる。
新しい研究成果であり、基盤性の高い技術と考えられるので、
その有効性の実証が期待される。更なる開発を期待したい。ただ
し、プロセス開発である以上、量産性を視野に入れざるを得ない
ので、量産化への具体的な展望を示してほしい。
ただし、現象に対するカイネティックスの説明はまだ十分では
ないので、より普遍的な技術とするためのメカニズム解明などの
基礎的な研究が望まれる。なお、本技術が真に有効かどうかは、
量産に向く連続式が開発できるかどうかに、かかっている。
金属ガラスを製造すべき条件は、用途ごとに異なっている。将
来の基盤構築のためには、普遍性、基盤性の高い技術でなくては
ならない。したがって、電磁振動プロセスの役割を明確にするた
めには、理論的な解析も含め、専門家と議論するなど基礎的な取
り組みが必要と考えられる。
データベースの設計が終わり、今後の発展が期待できる。この
プロジェクトの貴重な情報を、多くの人が利用できるデータベー
スにすることは意義がある。特に、金属ガラスという新材料を対
象とするだけに、データベース化は望ましい。ただし、アモルフ
ァス・金属ガラスについての研究は、本プロジェクトが始まる以
前からアメリカ、韓国等を含めて多くなされているので、そのデ
ータベースを検討すべきであると思う。
この分野の日本の技術競争力、応用拡大のためには、意義・重
要性は高い。データベースの設計が終わっているので、システム
の完成と、データの蓄積が楽しみである。データベース完成後の
データの追加、更新により産学の役に立つものとなる。プロジェ
クト後半には、データベース構築などの検討中の課題を早めに確
定し、蓄積性、発展性のあるデータベースにするために、データ
ベース作成に集中してほしい。
具体的なデータベースのイメージはまだ明らかではないので、
データベースの利用方法などを明確にして、この技術の大きな発
展のため、活用されやすいよう一層の整備を行ってほしい。
なお、一般の人もこのデータベースを利用できるのかなど、公
開方法も含めて、使いやすさに留意し、利用計画を策定してほし
い。
より基礎的なアプローチに徹して、さらに深く電磁
振動による液体の構造の変化について研究し、本技術
が他の技術と比較して優位であることを明確にする
ように進めてほしい。なお、更なる資源配分を高融点
合金の取り組みと、連続製造装置開発に向けてほし
い。
日本発のデータベースにするため、また、金属ガラ
スの技術競争力の強化のために、是非発展性のあるも
のにするよう積極的に進めてほしい。その際には、公
開の範囲、データベースの管理方法など明確にする必
要がある。有効に利用されることが重要なので、デー
タベースを作成するだけで終わらず、多数が利用する
データベースとしての将来の運用方法も検討して欲
しい。
11
評点結果
3.0
1.事業の位置付け・必要性
2.5
2.研究開発マネジメント
3.0
3.研究開発成果
2.5
4.実用化、事業化の見通し
0.0
1.0
2.0
3.0
平均値
評価項目
平均値
素点(注)
1.事業の位置付け・必要性について
3.0
A A A A A
A
2.研究開発マネジメントについて
2.5
A B A B A
B
3.研究開発成果について
3.0
A A A A A
A
4.実用化、事業化の見通しについて
2.5
A B A A B
B
(注)A=3,B=2,C=1,D=0 として事務局が数値に換算し、平均値を算出。
<判定基準>
(1)事業の位置付け・必要性について
(2)研究開発マネジメントについて
・非常に重要
→A
・非常によい
→A
・重要
・概ね妥当
・妥当性がない、又は失われた
→B
→C
→D
・よい
・概ね妥当
・妥当とはいえない
→B
→C
→D
(3)研究開発成果について
(4)実用化、事業化の見通しについて
・非常によい
・よい
→A
→B
・明確に実現可能なプランあり
・実現可能なプランあり
→A
→B
・概ね適切
・適切とはいえない
→C
→D
・概ね実現可能なプランあり
・見通しが不明
→C
→D
12
個別テーマに係る評点結果
(研究開発成果、実用化、事業化の見通し)
2.8
1.精密部材組織制御技術
2.5
2.7
2.輸送機器構造部材成形加工技術
2.2
3.0
2.8
3.高精度計測機器①コリオリ流量計
3.0
4.高精度計測機器②圧力センサ
2.7
研究開発成果
2.5
5.高精度計測③リニアアクチュエータ
実用化・事業化
1.7
(*)
2.8
6.金属ガラスの新創製プロセス
2.4
2.2
2.0
7.知識・基盤技術整備
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
13
平均点
研究開発成果
評価項目
実用化、事業化の見通し(*)
平均値
素点(注)
平均値
素点(注)
2.8
A B A A A A
2.5
A B A A B B
2.輸送機器構造部材成形
加工技術
2.7
A A A B B A
2.2
B B B A B B
3.高精度計測機器機能部材
成形加工技術−
①コリオリ流量計
3.0
A A A A A A
2.8
A A A A A B
4.高精度計測機器機能部材
成形加工技術−
②圧力センサ
3.0
A A A A A A
2.7
A A B A A B
5.高精度計測機器機能部材
成形加工技術−
③リニアアクチュエータ
2.5
A A A B B B
1.7
B B B B C C
6.金属ガラスの新創製
プロセス
2.8
A A A A A B
2.4
A B B B A −
2.2
B B A B B B
2.0
B B B B B B
1.精密部材組織制御技術
7.知識・基盤技術整備
(注)A=3,B=2,C=1,D=0 として事務局が数値に換算し、平均値を算出。
<判定基準>
(1)研究開発成果について
・非常によい
・よい
・概ね妥当
・妥当とはいえない
(2)実用化、事業化の見通しについて(*)
→A
→B
→C
→D
・明確に実現可能なプランあり
・実現可能なプランあり
・概ね実現可能なプランあり
・見通しが不明
→A
→B
→C
→D
(*)評価項目6と7の(2) 実用化、事業化の見通しについては、(2)将来の基盤構
築に関する評価としています。
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