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事前評価書 - 新エネルギー・産業技術総合開発機構

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事前評価書 - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
事前評価書
作成日
平成26年2月6日
1.プロジェクト名
環境・医療分野の国際研究開発・実証プロジェクト
/先進的医療機器システムの国際研究開発及び実証
2.推進部署名
バイオテクノロジー・医療技術部
3.プロジェクト概要(予定)
※当該プロジェクトに、技術開発課題④「人工関節・手術支援システム構築に
係る研究開発・実証」を追加するものであり、追加部分を中心に記載している。
(1)概要
1)背景
経済成長が著しく、富裕層の拡大と高齢化が進むアジア地域においては、
今後人工関節の大きな需要が見込まれる。現時点では高齢化社会を迎える前
であり、アジア地域でのパーソナライズド人工関節市場においては、まだほ
とんど欧米企業も入っていないが、5年後には高齢化社会に入り市場が大き
くなり始めるものと予測される。
同じアジアでも民族によって、その生活様式などの違いにより、骨格形状
が異なり、民族に合った人工関節が望まれる。
2)目的
本研究開発実証では、アジアを実証の対象地域とし、民族の骨格形状にフ
ィットした人工関節および手術支援システムの開発・実証を行い、アジア市
場獲得を狙う。
3)実施内容
民族別骨格データベースの構築、骨格形状に合わせた人工関節の製作・評
価、医師が安全、確実、容易に人工関節の埋込手術を行えるようにするため
の手術支援システムの開発等を現地国医療機関と共に実施する。
(2)規模
総事業費(一般)4億円(委託費
(3)期間
平成26年度~28年度(3年間)
※補助員費及び間接経費除く)
4.評価内容
(1)プロジェクトの位置付け・必要性について
1)NEDOプロジェクトとしての妥当性
日本再興戦略(2013年6月14日閣議決定)において、医療の国際展開として
「相手国の実情に適した医療機器・医薬品、インフラ等の輸出等の促進」が
掲げられており、アジア民族の骨格形状に合わせた人工関節の本研究開発実
証はこれに合致する。
また、NEDOが、現地国の公的機関との間でMOUを締結しておくこと
で、実施者の現地国医療機関からの臨床データ入手を容易にし、国内未承認
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人工関節を現地国へ送る際の通関を容易にできるため、本研究開発実証を「環
境・医療分野の国際研究開発・実証プロジェクト/先進的医療機器システム
の国際研究開発及び実証」プロジェクトとして行うことは妥当である。
アジア地域において、主に欧米仕様の人工関節が使用されているが、それ
らはアジア人には寸法や機能面で適合性が低く、またアジアの民族間でもそ
の生活様式などの違いにより骨格形状が異なり、民族に合った人工関節が望
まれている。国際展開支援において「相手国の要求スペックや有効需要に合
致した技術を優先する」、「企業の海外展開戦略に適合した技術であることを
重視する」、「国際標準の獲得等を視野に含め、得られた成果の当該国及び第
三国への普及・展開の促進を図る」ことはNEDOの方針として謳われてお
り、アジア民族の骨格形状に合致したパーソナライズド人工関節の本研究開
発実証はこれらに合致する。
以上より、本研究開発実証をNEDOプロジェクトとして実施することは
妥当である。
2)目的の妥当性
人工関節も含めた整形用インプラントの世界市場規模は約3兆3800億円、そ
のうち人工関節市場は約1兆1900億円存在し、人工関節の占める比率は35%と
なる。(2011 Orthopedic Outlookより) アジアにおける人工関節も含めた
整形用インプラントの市場は約6500億円(2011年 The World Medical Markets
Fact Book 2012より)であるので、上記の世界市場における人工関節の占め
る比率35%と同じと仮定して類推すると、アジアの人工関節市場規模は約2300
億円となる。さらに、65歳以上の高齢者人口の割合は、United Nations,“World
Population Prospects 2006”によると、アジア全体では7%(2010年)⇒
18%(2050年)に増加すると見込まれているので、今後さらなる市場の拡大が期
待される。
現時点では高齢化社会を迎える前であり、本研究開発実証の成果となるパ
ーソナライズド人工関節は、アジア地域においてはまだほとんど実用化され
ていないため、欧米企業が市場を席巻してしまう前に日本企業が実用化する
ことでアジア地域における大きな市場獲得が期待できる。また、人工関節埋
込手術を安全、確実、容易に行えるようにするための手術支援システム(術
前プランニングソフト、手術ナビゲーション、カッティングガイドなど)は、
人工関節を広く普及させるものとなる。
(1)プロジェクトの位置付け・必要性についての総合的評価
本研究開発実証は、国家戦略及びNEDO方針の主旨に合致するものであり、
NEDOのプロジェクトとしての位置付け、必要性について妥当であると評価
できる。
(2)プロジェクトの運営マネジメントについて
1)成果目標の妥当性
アジアの国々では、それぞれの遺伝上の違い、生活様式の違いや、礼拝を
はじめとした宗教の違いなどにより、骨格形状、靱帯のバランス、動作状態
が異なるため、欧米人向けに作られた人工関節はもちろんのこと、日本人向
けに作られたレディメイド人工関節でも、これらの国々の患者の生理的動作
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点と一致せず、疼痛や製品の耐用年数低下の原因となる。
本研究開発実証では、まずアジア地域におけるCT等画像を収集し、民族
別骨格データベースを構築する。骨格データベース構築の際、CT等画像か
ら骨画像データのみを短時間で抽出するためのソフトウェア開発を行う。続
いて、骨格データベースをもとに、人工関節の製作、評価を行う。また、医
師が安全、確実、容易に人工関節の埋込手術を行えるようにするための手術
支援システム(術前プランニングソフト、手術ナビゲーション、カッティン
グガイドなど)を現地国医療機関とともに開発する。最終的には、臨床前評
価、安全性検証を行い、本研究開発実証終了後3年程度でパーソナライズド
人工関節・手術支援システムの現地国における薬事承認、製品販売を目指せ
るだけのデータを蓄積する。
定量的目標については、実施体制決定後に委託先と協議の上、設定するも
のとする。
2)実施計画の想定と妥当性
平成26年度~27年度に骨画像抽出のためのソフトウェア開発、CT等
画像収集、骨格データベース構築、パーソナライズド人工関節の設計・製作、
手術支援システムの設計・製作を行い、平成28年度に臨床前評価、安全性
検証とシステム全体の実証と改良を行うことを想定している。
3)評価実施の想定と妥当性
本研究開発実証終了の翌年度に、バイオテクノロジー・医療技術部による
外部事後評価を実施する。外部有識者により、実用化のプロセスを見極める
評価を実施する予定である。なお、本制度全体としての制度評価は、制度評
価指針に基づき、内部評価による中間評価及び事後評価を実施する。
外部事後評価は以下の観点で実施する。
・ 成果の意義(現地での医療福祉への貢献、我が国医療産業の海外展開への
貢献等)
・ 知的財産権等の取得及び標準化の取組(知的財産権の取扱は実用化計画に
沿って国内外に適切に行われているか等)
・ 成果の普及(得られた成果の市場性、ビジネス化・普及に向けた活動等)
・ 最終目標の達成可能性(薬事承認など事業化への見込み等)
4)実施体制の想定と妥当性
公募により適切な実施体制を構築する予定である。なお、提案者がアジア
現地国の医療機関を現地パートナーとして選定し、その協力の下で実証研究
を行うことを想定する。また、必要に応じて、国内の公的研究機関、大学を
実施体制に組み込む。
例えば、日本を代表する人工関節メーカーが本研究開発実証の主担当とな
って事業化も担う。さらにCT等画像から骨画像のみを抽出するためのソフ
トウェア開発を行うメーカー、臨床現場の立場で人工関節の評価を行う国内
の医療機関、標準化作業に協力する公的研究機関、及びCT等画像撮影、人
工関節・手術支援システムが術前計画通りに設置されることの検証や臨床前
評価、安全性検証を実施する現地国の医療機関、等が加わった体制を想定で
きる。
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また、実施体制の事業者間で互いに意見交換しながら進捗管理やPDCA
サイクルを回していくために、全体の開発委員会を年2回程度実施し、さら
に研究開発項目毎の実務者会議を適時実施する。
5)実用化・事業化戦略の想定と妥当性
本事業でパーソナライズド人工関節を開発する委託先企業またはその提携
代理店が現地で販売を行うことを想定している。NEDOとしては、現地国
における人工関節とその手術手技の普及、実用化を目指し、現地国政府関係
機関等との間でMOUを締結して現地国における研究開発実証がスムースに
実施されるよう、支援を行う予定である。
6)知財戦略の想定と妥当性
現地国パートナーとの守秘契約締結等を行い、技術流出を防止する。また、
複数の日本側企業による共同提案を採択する場合には、委託先間での知財の
取り扱いについて事業開始時に予め明確化するよう、指導する方針である。
7)標準化戦略の想定と妥当性
海外競合企業の標準化動向、現地国の法規制の最新動向等について情報収
集、分析を行い、参加企業の競争領域を確保する。また、ISO TC150 等での
標準化の可能性を検討し、参加企業が優位に事業化できると想定される場合
には、標準化活動を支援する。
(2)プロジェクトの運営マネジメントについての総合的評価
成果目標、実施計画、評価観点、実施体制、実用化・事業化戦略、知財戦略、
標準化戦略、のいずれにおいてもプロジェクトの運営マネジメントとして妥当
であると評価できる。
(3)成果の実用化・事業化の見通しについて
1)プロジェクト終了後における成果の実用化・事業化可能性
アジア民族の骨格形状への最適化を実現した患者別のパーソナライズド人
工関節、およびその術前計画・手術ナビゲーション等の手術支援システムを
パッケージ化した人工関節システムを製品として想定している。
プロジェクト成果目標を達成した後、本研究開発実証終了後3年程度でパー
ソナライズド人工関節・手術支援システムの現地国における薬事承認、製品
販売を目指す。現地での販売は、委託先企業またはその提携代理店が行うこ
とを想定している。
2)成果の波及効果
現地国において、パーソナライズド人工関節埋込手術・手技の普及が促進さ
れ、日本式医療への信頼度向上や国際貢献につながるとともに、さらに周辺
国への展開も期待できる。
(3)成果の実用化・事業化の見通しについての総合的評価
成果の実用化・事業化への見通し、及びその波及効果は明確に想定されてお
り、また、事業化体制構築のための手段も講じられており、市場創出・獲得を
目指すNEDOプロジェクトとして妥当であると評価できる。
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