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2-003 - 東京経営者協会

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2-003 - 東京経営者協会
東京経協 実務シリーズ No 2011-2-003
ローパフォーマー社員をめぐる問題点(3)
Q6.
中途採用者を採用しました。能力が非常に低いので解雇しよう
と考えています。将来、万一裁判になったことを考えて、まず
どのようなことに注意すればよいでしょうか?
A6.
特定の能力、職歴を前提として採用したといえる事実・証拠が
あるかを検討する・・・
【ポ
イ
ン
ト】
● まず当該社員が能力を前提に雇用したと言える事実・証拠があるかどうかを
検討する。
● 具体的には、求人広告、履歴書・職務経歴書、面接内容、同年齢の社員と比
較した場合の賃金、配属した職務などを調べる。
【解説】
前掲(Q5)でも述べたように、ローパフォーマー社員が特定の能力、職歴を前
提とした中途採用者の場合、会社の注意・指導の義務もそれほど求められず、結果、
裁判所の普通解雇のハードルが低くなるといえます。
そこで、まず当該社員が能力を前提に雇用したと言える事実・証拠があるかどうか
を検討します。
具体的には、求人広告が特定の職歴、能力を前提としたものかどうか、当該社員
から出された履歴書、特に職務経歴書が会社の求める職歴、能力があったといえるか
を調べます。また、面接で何を話し何と答えたのかもメモなど記録にとっていたもの
が残っていれば確認します。
次に、会社の賃金体系で同年齢の社員と比較して比較的高額な賃金を提示したかど
うかも確認します。さらに配属した職務が、専門的と言えるかについても調べます。
たとえば、システム開発などで10年以上の同僚がいる部署などに配属された等です。
このようにして、特定の能力を前提に雇用したといえる証拠がそろっていれば、次
にやるべき、会社の教育、指導の義務も低くなります。
逆に、ここで特定の能力を前提に雇用したといえる証拠がないと、会社の注意指
1
導の義務が非常に高くなり、ローパフォーマー社員であっても解雇が困難になってし
まいます。
Q7.
特定の能力を見込んで採用した中途採用者が、ローパフォーマ
ー社員でした。彼の履歴書等、特定の能力を前提に採用した証
拠もあります。解雇は認められますか?
A7.
特定の能力を前提として雇用した社員でも、いきなり解雇は認
められない。注意・指導、目標設定、配置転換等を行うべき・・・
【ポ
イ
ン
ト】
● 特定の能力を前提に雇用したといえる証拠がそろっていたとしても、それだ
けではローパフォーマー社員の解雇が有効とは認められない。
● ローパフォーマー社員の解雇が有効と認められるためには、①注意・指導、
②目標設定、③目標設定に当たり社員の意見聴取、④配置転換、業務異動が
重要である。
【解説】
特定の能力を前提に雇用したといえる証拠がそろっていたとしても、それだけでは
ローパフォーマー社員の解雇が有効とはなかなか認められません。
(1)会社のとるべき具体的対応方法
近時の裁判例を分析してみると、①会社がどの程度、注意指導を行ったか(回数
および期間)②会社として具体的な目標を定めたか(改善項目設定の有無およびそ
の回数)③その目標設定に当たり社員の意見を聴取したか④解雇以前に配置転換、
業務異動があったかどうかにより解雇の有効無効を判断しています。
(2)会社が負けた近時の裁判例
営業成績の低い社員の解雇が争われた日本オリーブ事件(名古屋地決 平 15.2.5)
では、①会社の注意、指導について業務上の指示はあったが会社の指示に問題があ
ったと認定されました。また、②の目標設定についても、会社は団体交渉で「売り
上げ目標を設定した」と主張しましたが、裁判所には認定されませんでした。③目
標設定についての社員からの意見聴取④解雇以前の配置転換もなく、会社が負けて
います。
コンピューターの入力ミスを犯し、その上、放置した社員の解雇が争われた森下
仁丹事件(大阪地判 平 14.33.22)では、①注意 1 回、始末書 1 回の会社の指導は
ありましたが、②(目標設定)と③(目標設定にあたり意見の聴取)はなく④配置
転換はあったものの、配転後の業務に慣れないのも無理はないと裁判所は判断し、
2
会社が負けています。
人事考課で下位 10%に属していた社員の解雇が争われたセガ・エンタープライズ
事件(東京地決 平 11.10.15)、自動車学校の受付業務で多額の過不足金等の事態を
毎日発生させていた社員の解雇事件である松筒自動車学校事件(大阪地判 平
7.4.28)では、①~④がなく、会社がやはり負けています。
(3)会社が勝った裁判例
これに対して、会社が勝った日本エマソン事件(東京地判 平 11.12.5)、日水コ
ン事件(東京地判 平 15.12.22)、ゴールドマン・サックス・ジャパン・リミティド
事件(東京地判 平 10.12.25)では、①1 年以上あるいは 2 年以上指導、教育をい
ずれも行っており、その際、②業務課題、注意点、改善項目など会社としての目標
設定をし、しかも評価を受ける機会の付与や観察期間を設ける等しています。また、
日本エマソン事件、日水コン事件では配置転換も行っているのが参考になります。
なお、指導教育等を全く行わずに会社が勝った裁判例としてヒロセ電機事件(東
京地判 平 14.10.22)があります。この事件は業務上必要な英語、日本語能力等を
備えた即戦力として中途採用した社員が、予定された能力が全く発揮できず改善し
ようともしなかった特異な事案だったといえるでしょう。
(4)注意・指導すべき期間、パワハラとの関係、その他の留意点
注意・指導は相当期間行うべきといえます。どのくらいかは一概に言えませんが
1~2 カ月では不十分で、数カ月、複数回、注意・指導するのがよいと思われます。
なお、注意・指導をするとパワハラといわれるのではないか、と懸念する人もい
ます。しかし、パワハラといわれるのは非常に限られた場合です。誹謗中傷的な発
言があるとか、他の社員のいる前で、大声で怒鳴りつける等の一定の場合に限られ
ます。ある特定の仕事について、他の社員のいないところで注意・指導すること自
体は、それがたとえ厳しい口調となっても問題はありません。
また、その他の留意点ですが、注意・指導は裁判になったときのことも考えてそ
の場の出席者も 2 名以上が望ましく、口頭でするのではなく文書の形で残すことが
重要です。できればその人のためにノートを作って手書きの形で(後で改ざんした
と言われないために)残しておくとよいでしょう。
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労働法 実務シリーズ 発行実績と今後の発行予定
タ イ ト ル
発行時期
トラブル回避のための雇用調整の法的留意点(1)~(6)
2009 年 8 月~10 月
緊急災害時の人事・労務をめぐる法的留意点(1)~(5)
2009 年 11 月~12 月
労基法改正と使用者の法的留意点(1)~(7)
2010 年 1 月~3 月
育児・介護休業法改正と就業規則見直しのポイント(1)~(4)
2010 年 4 月~5 月
退職勧奨(解雇・雇止め)をめぐる留意点(1)~(6)
2010 年 6 月~9 月
パワーハラスメントに関わる法的留意点(1)~(6)
2010 年 9 月~12 月
懲戒処分と企業の留意点(1)~(6)
2011 年 1 月~3 月
2.今後の発行予定
(1)「ローパフォーマー社員をめぐる問題点」
(2011 年 4 月~5 月)
(2)「メンタル不全社員の退職・解雇について」
(2011 年 5 月~7 月)
≪本「実務シリーズ」に関するお問い合わせ先≫
東京経営者協会 経営・労働部(樋渡)
〒100-0004 東京都千代田区大手町 1-3-2 経団連会館 19 階
TEL:03-3213-4700(代)
FAX:03-3213-4711
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