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遺伝子解析技術を活用した ブタの育種技術 静岡県畜産技術研究所 中小家畜研究センター 養豚・養鶏科 科長 柴田 昌利 1 技術開発の背景 豚肉の国際・国内競争の激化 輸入豚肉との競争(TPPによる関税の撤廃) 国内銘柄豚肉の乱立(398銘柄*) 食べて違いのわかる、差別化可能な銘柄豚の 開発が求められている。 *:銘柄豚ハンドブック2014(㈱食肉通信社) 2 従来技術とその問題点Ⅰ 既存の銘柄豚 × 大ヨークシャー種 × ランドレース種 デュロック種 多くの銘柄豚の品種は一般的な三元豚(3品種の交雑)で、飼料等の飼育方法で差別化 品種による差別化はバークシャー種(黒豚) が多く、交雑での利用もある。 バークシャー種(黒豚) 中ヨークシャー種 食べてわかる違いになりにくい。 3 従来技術とその問題点Ⅱ 特殊な品種の利用 静岡県には中国浙江省より寄贈を受けた 金華豚がおり、品種改良に利用が可能。 御殿場市では純粋種としての銘柄化を 行っている。 金華豚 金華豚は一般の豚に比べ、良質な肉 をつくるが、脂肪が多く発育も遅い欠 点を持つ。 金華豚 一般豚 交雑種 発育速度 肉のうまみ 赤肉割合 単純に交配すると、それぞれの品種の 中間的能力になり、特徴を活かせない。 肉の柔らかさ 肉の保水性 4 新技術の特徴・従来技術との比較 遺伝子をみつけることができれば 金華豚 一般豚 新品種 発育速度 肉のうまみ 肉の柔らかさ 赤肉割合 肉の保水性 遺伝子型で選抜すれば、両品種の良いところを併せ持った合成品種 を作ることも可能。 5 遺伝子解析技術を活用したブタの作出方法Ⅰ 遺伝子の検索 C16:1 赤色度 黄色度 C18:2 シスチン 背腰長 背腰長 発育 デュロック種♂1頭 金華豚♀5頭 アルギニン 背腰長 C14:0 F1 ♀ F1♂ F1♀7頭 F1♂2頭 C14:0 C18:0 C18:1 産肉形質 肉質 脂肪酸 遺伝子 F 2 F 2 F 2 F 2 F 2 アミノ酸 C18:0 C18:1 候補解析 静岡県家系 F2 204頭 (3県合同家系 F2 554頭) 実験家系における遺伝子候補の位置 実験家系を作出し、遺伝子候補領域(QTL)を検出した。 6 遺伝子解析技術を活用したブタの作出方法Ⅱ 2番染色体上の肉の柔らかさに 関するQTLに着目 25 20 15 10 SW2443 5 0 0.0 F1 目的の肉質に関する遺伝子と 黒い毛色を持った豚(JD型) 金華豚 (JJ) (JD) 20.4 SW256 45.4 SW240 55.8 56.8 63.4 65.6 70.5 FSHB SW942 S0091 SW395 SW766 (DD) (JD) (DD) Shear_value 94.4 ♀ 戻し交配 1回目 (JD) 遺伝子を固定 ・ DD,JD型を除外 ・ JJ型だけを選抜 ♂ SW1879 戻し交配 2回目 130.5 (DD) デュロック種 SWR308 家系内 交配 遺伝子解析を行い金華豚の肉質を保ちながら、 自然交配によりデュロック種に近づけていく。 新合成豚を「フジキンカ」と命名した。 7 新銘柄豚「フジキンカ」の特徴Ⅰ 機器分析、食味試験で”ちがいあり“ 作出時に目的とした金華豚の「肉をやわらかくする遺伝子」 の効果は、ヒトが食べて判断する食味試験においても認め られた。 さらに、金華豚の良質な脂肪の性質も持ち、一度食べれ ば違いが分かる最高品質の豚肉となった。 2.5 フジキンカ 対照豚 2 好ましい やわらかい ジューシー 1.5 1 0.5 0 ジューシー感 やわらかさ 総合的なおいしさ -0.5 -1 好ましくない かたい ぱさつく -1.5 ロース肉のしゃぶしゃぶによる食味試験結果(抜粋) 遺伝子解析を活用した育種技術により食べて違いの分かる豚肉の 開発に成功した。 8 新銘柄豚「フジキンカ」の特徴Ⅱ 遺伝子による鑑別技術 一般に市販されている欧米の豚には ない「金華豚の黒い毛色の遺伝子」を 受け継いでいるため、一切れの肉か らでもこの豚であることの鑑別が可能 となった。 フジキンカ その他の豚 リアルタイムPCRによる鑑別 全身黒色のフジキンカ 金華豚由来の毛色遺伝子により一切れの肉からでも鑑別可能。 9 想定される用途 • 違いのわかる豚肉として、全国トップレベルのブラン ド豚肉となりうる。 • 海外への輸出畜産物となることも期待される。 • また、脂肪の品質にも特徴が あるので、加工品としての活 用も考えられ、6次産業化の アイテムとなる。 10 実用化の事例 ブランド名・生産地(販売店) ・プレミアム金華バニラ豚・浜松市(「豚屋とんきい」浜松市北区) ・いきいき金華・袋井市(「タマザワ」浜松市南区) ・金豚王・菊川市他(「肉のかねまる」榛原郡吉田町他) ・YSC富士金華・富士宮市(「(株)YSC」富士宮市他) 現在、生産グループごとにブランド名 をつけて販売を行っています。 11 実用化後の残された課題 • 現在の生産頭数は、4グループ合計で約 1,200頭程度である。 • 一般の豚(三元豚)と比較して、生産性が低い ため、引き続き生産性向上(繁殖成績や発育 速度等)に向けた検討をしていく。 • 脂肪品質の違いについて、科学的な検証がで きておらず、現在研究中である。 12 企業への期待 • 生産頭数については、今後増加する見込み。 • 高級畜産物の販売ノウハウを持つ、企業との連携を 希望。 • また、海外への畜産物の売り込みを考えている企業 には、フジキンカが有効と思われる。 13 お問い合わせ先 静岡県畜産技術研究所 中小家畜研究センター 養豚・養鶏科 TEL 0537-35 - 2291 FAX 0537-35 - 2294 e-mail [email protected] 14