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4章 指数関数について

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4章 指数関数について
4章 指数関数について
ネイピアの数 e について確認をする.定義は,
(
1 )n
e = lim 1 +
n→∞
n
であるが,右辺の極限の存在の確認をしておく.
(
1 )n
これは,(1) an = 1 +
が n について単調増加であること,
n
(2) すべての n に対して an < 3 が成り立つこと,から分かる 1 .
単調増加であることは,二項定理より
an = 1 +
n
∑
n(n − 1) · · · (n − k + 1) ( 1 )k
k!
n
(
1(
1 )(
2)
k − 1)
=1+
1−
1−
··· 1 −
k!
n
n
n
k=1
n
∑
1 )(
2 ) (
k − 1)
1(
<1+
1−
1−
··· 1 −
k!
n+1
n+1
n+1
k=1
k=1
n
∑
(#)
n+1
∑
1(
1 )(
2 ) (
k − 1)
1−
1−
··· 1 −
<1+
k!
n+1
n+1
n+1
k=1
= an+1
となることから分かる.最初の不等式は和の中の分母を n から n + 1 にしたことによるもので,
次の不等式は k = n + 1 の項が和に加わったことによるものである.
an < 3 であることは,k ≧ 3 に対して k! > 2k−1 であることと (#) より,n ≧ 3 のとき
an < 1 +
n
n
∞
∑
∑
∑
1
1
1
<1+1+
<
1
+
1
+
=3
k−1
k−1
k!
2
2
k=1
k=2
k=2
となることから分かる.
(
1 )n
にも注意しておく.これは,
e = lim 1 +
n→−∞
n
(
1 )−n ( n )n (
1 )n (
1 )n−1 (
1 )
1−
=
= 1+
= 1+
1+
n
n−1
n−1
n−1
n−1
から分かる.
さらに,もっと一般に次が成り立つ.
(
(
)1/h
1 )x
重要事項 1. (1) lim 1 +
=e
(2) lim 1 + h
=e
x→±∞
h→0
x
証明.(1) まず,x → ∞ のときを考える.正の整数 n を n ≦ x < n + 1 なるものとすると,次
が成り立つ:
(
1 )x (
1 )n+1
1 )n (
≦ 1+
≦ 1+
.
1+
n+1
x
n
1
単調増加で上に有界な実数列が収束することを実数の連続性という.
1
e の定義から,x → ∞ のとき n → ∞ だから
(
1 )n (
1 )n+1 (
1 )−1
1+
= 1+
1+
→ e (x → ∞)
n+1
n+1
n+1
となる.同様に,
(
1 )n+1 (
1 )n (
1)
1+
= 1+
1+
→e
n
n
n
(x → ∞)
であるから,
(
1 )x
lim 1 +
=e
x→∞
x
となる.
次に,x → −∞ の場合を考える.−x = y とおいて,y → ∞ とすると,
(
1 )−y ( y )y
1 )x (
1+
= 1−
=
x
y
y−1
(
)
(
y
1
1 )y−1 (
1 )
= 1+
= 1+
1+
→e
y−1
y−1
y−1
となり,結論を得る.
(2) h = 1/x とおけば,h → 0 は x → ±∞ と同じことだから (1) より結論を得る.
□
次に,対数関数について述べる.
対数関数の公式
′
′
(1) 指数法則 ex+x = ex ex と対応する対数関数の公式が log(yy ′ ) = log y + log y ′ である.
′
′
(∵) y = ex , y ′ = ex と書くと,対数関数の定義から log(ex+x ) = x + x′ = log y + log y ′ .
′
′
一方,指数法則より log(ex+x ) = log(ex · ex ) = log(yy ′ ) であり,log(yy ′ ) = log y + log y ′ となる.
(2) 指数法則 (ex )a = eax と対応する公式が log(y a ) = a log y である.
(∵) 対数関数の定義から,log(eax ) = ax = a log y が成り立つ.
一方,指数法則より log((ex )a ) = log(y a ) だから,log(y a ) = a log y となる.
これらから,次のことがわかる.
1
eh − 1
log(1 + h) = 1
(2) lim
=1
h→0
h→0 h
h
証明.(1) 重要事項 1 の (2) の両辺の対数をとると,
重要事項 2.(1) lim
1
log(1 + h) = lim (1 + h)1/h = log e = 1.
h→0 h
h→0
lim
(2) k = eh −1 とおくと,h → 0 のとき k → 0 であり,eh = k +1 の対数をとると h =
である.よって,(1) より
eh − 1
k
= lim
=1
h→0
k→0 log(1 + k)
h
lim
となる.
以上の,準備のもとで指数関数と対数関数の導関数を求めることができる.
2
1
log(k +1)
h
(1)
d x
e = ex
dx
(x ∈ R)
(2)
d
1
log x =
dx
x
(x > 0)
証明.(1) ex+h = ex eh より,重要事項 2(2) を用いると
ex+h − ex
eh − 1
= lim ex
= ex
h→0
h→0
h
h
lim
となる.
(2) 対数関数の公式と重要事項 1(2) を用いると,
(
1
log(x + h) − log x
1
x+h
1
h ) hx
lim
=
= lim log
= lim log 1 +
h→0
h→0
h→0
h
h
h
x
x
x
□
が得られる.
余談. e =
∑∞
1
k=0 k!
を用いると,e が無理数であることが証明できる.
a
背理法で証明する.e が有理数であると仮定すると,e = と正の互いに素な整数 a, b を用い
b
て書ける.ここで,N > b として,実数 α を
(
)
N
∑
1
α = N! e −
k!
k=0
によって定める.(i) α が整数であること,(ii) 0 < α < 1 であることを示せば,これらは矛盾
であり,e が無理数であることが証明できたことになる.
(i) は
a ∑ N!
a ∑
α = N! · −
{N (N − 1) · · · (N − n + 1)}
= N! · −
b k=0 k!
b k=0
N
N
と変形して,N > b より N !/b が整数であることに注意すればよい.
∞
∑
1
(ii) は e =
より
k!
k=0
∞
∑
1
N!
N!
α = N!
=
+
+ ···
k!
(N + 1)! (N + 2)!
k=N +1
1
1
+
+ ···
N + 1 (N + 1)(N + 2)
1
( 1 )2
1
1
N +1
<
+
+ ··· =
<1
=
1
N +1
N +1
N
1 − N +1
=
となることからわかる.
よって,e は無理数である.
3
高校以来慣れているので,指数関数の定義,または数の巾について触れずに,指数関数につ
いて述べてきたが,最後に説明をしておく (本末転倒であるが.
.
.).
p
a を正の実数とする.p が自然数のときは,a の p 乗 a は a を p 回掛けて得られる実数であ
る.その逆演算を考えれば,a1/p は p 乗すると a になる数,a の (正の)p 乗根である.
p > 0 が有理数のときは,p = r/s を既約分数とすれば,
ap = (ar )1/s = (a1/s )r
によって ap を与えることができる.p < 0 が有理数のときは,ap は a|p| の逆数として与えられ
る.いうまでもなく,a0 = 1 と定義する.
このように p が有理数であれば ap が自然に定義される.さらに,a0 = 1 より,指数法則
ap aq = ap+q ,
(ap )q = apq
が,すべての有理数 p, q に対して成り立つ.
√
p が無理数のときは,ap はどのように考えればよいだろうか.たとえば,e 2 は何を表すの
√
だろうか. 2 回掛ける,ということに意味はないので,合理的に説明する必要がある.
a > 1 としよう.p が無理数のときは,単調増加で p に収束する有理数列 {pn }∞
n=1 を考える.
すると,a > 1 より {apn } も単調増加な数列で,pn が p に収束することから上に有界である.し
たがって,apn は n → ∞ とすると収束する.この極限を ap とするのである.ただし,極限が p
に収束する有理数列 {pn } に依らないことは証明する必要がある.
0 < a < 1 のときは,{apn } は単調減少な実数列になるから,下に有界であることに注意すれ
ば,n → ∞ のときに収束することがわかる.極限を ap とするのである.
このように定義された ap (a > 0, p ∈ R) に対して,a を独立変数 x におきかえれば巾関数
xp (x > 0) が得られるし,p を独立変数として x と書けば指数関数 ax (x ∈ R) が得られる.
4
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