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集落営農組織の現状と展開方向

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集落営農組織の現状と展開方向
集落営農推進のポイントはこれだ!!!
集落営農組織の現状と展開方向
~集落営農の組織化や法人化、経営多角化等を推進する際の参考資料~
岩手県農業研究センター
岩手県の集落営農組織の現状と課題
「品目横断的経営安定対策への加入」を主たる目的として設立した集落営農組織が多い。
○ 現状 ・
・水稲は、多くの組織が経理事務のみを一元化し、構成員個々が作業を実施。
平成 19 年度に経営所得安定対策に加入した全 377 集落営農組織を対象としたアンケートによれば、
現状では、
「経営所得安定対策への加入を主たる目的として設立」された集落営農組織が多い状況に
あります。
組織化の契機
品目横断 集団転作 圃場整備 機械共同 中山間制
その他
加入
受託
事業
利用
度加入
合計
組織数
158
32
36
6
8
11
251
構成比
63%
13%
14%
2%
3%
4%
100%
集落営農組織の経営実態をみると、
「水稲については、構成員個々が自らの機械を用い、所有水
田の機械作業、栽培管理を行う方式」が中心で、個別経営の営農形態を維持したまま、経理事務の
みを一元化した形式で運営しています。
水稲の主要機
械作業の実施
方法
特定された 構成員が交 構成員が所
集落外に委
オペレータ 代出役して 有水田の作
その他
託
が実施
実施
業を実施
組織数
39
19
146
1
構成比
19%
9%
70%
1%
合計
5
210
2% 100%
組織化によるコスト削減・省力効果が現れず、組織の維持・経営発展は難しい
○ 課題
・
「麦・大豆の収量・品質が低い」
、
「資金繰りに苦労している」が上位に挙げられている。
・
「将来のオペレーター確保が難しい」など、多くの課題が明らかに。
「麦・大豆の収量・品質が低い」
、
「資金繰りに苦労している」
、
「法人化の手続きが煩雑・難しい」
、
「将来のオペレーター確保が難しい」
、
「経理に詳しい人材がいない」
、
「規模が小さく他産業並み
給与の支払いが難しい」
、
「品目横断的経営安定対策の加入手続きや一元経理の事務負担が重い」
など、多くの課題が明らかになっています。
○ 集落営農組織の目指す方向
・
「地域ぐるみで営農を実施し、地域の農地・環境を維持する」との意向が約6割。
「地域ぐるみで営農を実施し、地域の農地・環境を維持する」との意向が約6割を占めていま
す。現状では、
「規模拡大や多角化により利益拡大を図る」等の経営発展を目指す組織は、少な
い状況です。
○ 今後の対応方向
話し合いによる目指すべき方向の明確化・共有化が重要
現在、多くの集落営農組織は、経営所得安定対策の「加入要件を確保」し、特定農業団
体あるいは特定農業団体に準ずる組織になっている状況です。
今後、法人化や経営展開を進めるには、
「経営発展型」の集落営農組織を目指すのか、
「地
域資源維持型」の集落営農組織を目指すのかを、集落自らで十分な話し合いを行い、集落
の将来像(地域ビジョン)を明確化する必要があります。
「地域資源維持型」を目指す集落営農の場合には、兼業農家や定年帰農者が交代でオペ
レーターや作業員として出役する「ぐるみ型集落営農」が展開されています。
「ぐるみ型集
落営農」では、構成員個々が所有水田の機械作業を行うのではなく、組織で高性能機械を
導入し作業を行うことにより、大幅なコスト削減や省力化を図る必要があります。
「ぐるみ型集落営農」では、水稲や転作麦・大豆の作業効率化のみでは、売上高が少な
く専従者の設置が困難な場合が多いため、若手も含めた多くの兼業オペレーターや定年退
職オペレーターの確保と、作業記録の徹底やマニュアル化による業務の継続性を確保し、
徹底したコスト削減のための生産管理が必要となります。
「経営発展型」を目指す集落営農の場合には、水稲や転作麦・大豆の機械作業が専従オ
ペレータによって行われています。
「経営発展型」では、農業経営を担う機能と農地の利用
調整機能を分離・明確化させる「2階建方式」を実現させたうえで、大幅なコスト削減や
省力化を図るとともに、経営多角化を進め、事業規模(売上高)を拡大していく必要があ
ります。
経営規模
面
積
・
売
上
高
1戸1法人
経営発展型
2階建方式
担い手
法人
地代
労賃
水田
第3段階
法人化・経営 集落営農法人
発展支援
利用調整組織
認定農業者
個別規模拡
大志向農家
第2段階
加入要件確保支援
現在
第1段階
組織化支援
転作・作業
受託組織
水
田
・
労
賃
個人経営
自己完結農家
個別に水稲機械を装備
し、赤字状態
ぐるみ型
集落法人
第3段階
法人化・地域維持支援
(担い手不在の場合)
園芸専作
地
代
・
労
働
力
園芸法人
水
田
地
代
園芸+米
複合農家 兼業農家
兼業農家 高齢専業
特定農業
団体
地代
労賃、配当
利用調整組織
地域資源維持型
対品
策目
対横
象断
面的
積経
・営
要安
件定
集落営農
法人
米+園芸
米+兼業
兼業+米
任 意 組 織
集落営農組織
転作は組織に委託、
水稲は個人で実施
特定農業団体
(準ずる組織)
加入要件の確保
土地持非農家
法 人 組 織
法人設立
担い手の存在状況、地域
経済条件、目的に応じ目
指すべき経営の姿を決定
地域営農システムの中での集落営農組織の展開概念図
地域営農システム
担い手法人、集落
営農法人、園芸農
家の共存
熟
度
集落営農組織の経営発展方向
集落営農組織の農業経営を発展させるため
には、規模拡大や経営多角化を進め、労働の
周年化と生産物の付加価値の向上を図り、事
業規模(売上高)を拡大することが重要です。
集落営農組織アンケートでは、
「園芸品目の
導入や加工・販売等の経営多角化に取り組ん
でいる集落営農組織」は、16%と少数ですが、
「今後、経営多角化を検討している集落営農
組織」は、50%を占めています。
垂直的多角化
3次産業
農村レストラン
観光農園
農業体験
直売、宅配
売上高
2次産業
農産加工
1次産業
農業生産
1集落
複数集落
転作
水稲
園芸
旧町村
多角化の
導入済み 今後検討 予定なし
取り組み状況
合計
組織数
39
126
86
251
構成比
16%
50%
34%
100%
経
営
規
模
拡
大
規模拡大や経営多角化による売上高拡大イメージ
経営多角化には、
「水平的多角化」と「垂直的多角化」の2つがあります。
集落営農組織における経営多角化の方向と導入上の課題・対応策
水平的多角化
垂直的多角化
(複 合 化)
(多 角 化)
定 義
現在の生産部門と同じかそれに近い分野の
多角化
生産部門からみて原料生産側(川上側)また
は最終消費者側(川下型)に向けての事業
部門の拡大
主な品目・
部門の例
野菜(トマト,ほうれんそう,キャベツ等)
果樹(ぶどう,りんご,ブルーベリー等)
花き(小ぎく,りんどう等)
特産(たばこ,しいたけ,花木等)
畜産(和牛繁殖,肥育等)
加工(もち,みそ,菓子,漬物,パン,豆腐
等)
レストラン
直売所
観光農園
資材・苗・用土等製造販売
経営上の
位置付け
水田作(水稲,麦・大豆)の作業効率化によって生じた余剰労働力,資本の活用.
売上高の向上,作業の周年化,平準化,現金収入の確保
導入上の
課題
・水田地帯では,「米しか作ったことがない」
農家がほとんどであるため,栽培技術の習
得・向上が課題.
・導入部門を責任をもって管理できる人材の
確保・育成が重要.
・施設導入のための資金調達も必要.
・(一部の地域を除いて)これまで未経験の
加工を実施することになるため,加工技術の
習得や商品開発手法,販路確保が課題.
・施設導入資金の調達,中・長期計画の検
討.
・常に新たな商品開発,販路拡大を行える体
制づくり.
対応策
・導入初期における濃密な技術指導.
・担当責任者の長期研修派遣(篤農家,研
究機関等)による技術力の向上.
・園芸篤農家の組織内への取込み.
・生産・作業計画,販売計画の作成支援.
・雇用者マネジメント体制の確立(作業リー
ダーの育成,均質的なパート集団から組織
体制への移行).
・優良先進地,製造業の視察研修による意
識啓発.
・外部人材の活用による技術,ノウハウ習
得,担当者の資質向上(製造技術者,商品
開発コンサルタント等).
・必要な技術・知識をもつ人材の外部招聘.
・販路拡大のための商品企画力の強化,計
画的生産,幅広い人間関係の構築.
水
平
的
多
角
化
経営多角化の類型と導入のポイント
集落営農組織における多角化部門の導入方式を、
「園芸を中心とした水平的多角化の類型」
と「農産物加工・販売を中心とした垂直的多角化の類型」の 2 つに分類し、類型毎の特徴、
適応地域・経営、導入に適する品目、導入・定着などのポイントを整理しました。
○ 園芸を中心とした水平的多角化の類型
園芸を導入している類型は、地域の農業条件や集落営農組織の目指す経営目標により異なる形
態をとっています。
経営一体型
集落営農組織
適応地域・経営:平場水田地域で新規に園芸作物を導入する地域 水稲
転作(麦豆)
園芸(野菜)
メリット:組織で園芸部門に取り組むため、栽培経験や技術がなく
てもできる
デメリット:技術習得が不十分で、管理責任の所在が不明確
導入適品目:未経験者でも取り組みやすい作物
育苗ハウス・転作田等で容易に取り組める作物
すべての経営一元化
プール計算
支援策・対応策:基本技術の習得のため、普及員等の指導が必要
作業リーダーの育成と作業管理が重要
部門分化型
適応地域・経営:平場水田地域で、水田作経営の基盤が確立し
ていて、相応の投資、人員配置が可能な地域
メリット:投資を伴う集約的な園芸作物に取り組みやすい
集落営農組織
水稲部門
園芸部門
転作(麦豆)部門
A部門リーダー
構成員、パート
B部門リーダー
デメリット:大規模ハウス・施設の導入等、経営リスクが大きい
経営一元化
プール計算
導入適品目:安定して高収益が見込める施設園芸作物
多角化(販売・加工・観光農園)に繋がりやすい作物
構成員、パート
部門別経理
責任者(専従)の設置
支援策・対応策:篤農家等への研修によるリーダーの技術力向上
作付計画・作業計画・販売計画等の作成支援が必要
経営成果評価型
適応地域・経営:園芸産地で、個人経営の経営規模、技術力に
差が生じている地域
集落営農組織
水稲
メリット:個人毎の収益配分で、農家のやる気を維持・向上できる
転作(麦豆)
デメリット:個人の技術力・やる気によって収入に大きな差が出る
経営一元化
プール計算
導入適品目:当該地域の地域特産物
技術力の差が収入に大きく影響する作物
支援策・対応策:構成員の技術力の高位平準化
作物・品種・栽培方法をある程度制限することが必要
個別経営専念型
適応地域・経営:園芸・特産・畜産等の産地で、技術力・資本装
備に差が生じている地域
メリット:規模の経済性により、水田作の効率化が図られる
デメリット:組織自体の売上が伸びず、専従者の設置が困難
集落営農
組織
園芸作物
構
成
員
C
構成員D
構成員毎に栽培エリ
アを決め、売上・コスト
を個別に把握
水田利用権
設定,委託
労働力提供
個別経営
園芸農家
水稲
転作(麦豆)
導入適品目:当該地域の地域特産物
経営一元化
技術力の差が収入に大きく影響する作物
支援策・対応策:個別農家の技術力向上が重要
個別経営への集落内からの雇用導入による専作化
構
成
員
B
構
成
員
A
畜産農家
特産農家
地代,
配当受取
○ 農産物加工・販売を中心とした垂直的多角化の類型
企業的性質が強くなるに従い高収益が期待できますが、リスクも伴うので目指すべき方向を踏
まえ、販売先や導入品目・加工品の製造方法を明確にして取り組む必要があります。
地域経営資源活用型
適応地域・経営:女性・高齢者活動が活発な地域
核となる人材がいる地域
メリット:女性・高齢者の技術・ノウハウを活かせる
大きな投資をせずに事業化できる
デメリット:手作りが中心となり、生産量が限られる
利益追求意識・コスト意識が低い
導入適品目:地域伝統食品
構成女性の得意とする加工品
指導・支援
集落営農組織
加工担当
食の匠
生研グループ
JA女性部
女性サークル
農家レストラン
食産業連携型(外部委託型)
適応地域・経営:団地的生産が可能な地域
加工等の技術・ノウハウがない組織
水稲
麦・大豆
ソバ
野菜
デメリット:安い単価での契約や、単価の引き下げを
求められる可能性がある
販売収入
導入適品目:生産物を原料とした高付加価値商品
(商品開発を求める業者との連携)
導入適品目:機械化、設備化により大量生産
が可能な商品
支援策・対応策:経営基盤を確立し資本を蓄積
加工・販売部門の人材確保
直売所
地元スーパー
食産業
製品供給
加工委託料
製パン業
製麺業
販売収入
原料供給
(契約生産)
酒造業
流通・販売業
外部企業・有識者
集落営農組織
水稲、麦・豆、野菜(加工原料)
加工部門
学校給食
原料供給
(契約生産)
支援策・対応策:生産原価を把握した上で、取引交渉を行う
必要がある
綿密な作業計画により、ロットを確保する
デメリット:投資額が大きくなるため、失敗した
場合のリスクは大きい
販売先
農協・行政の橋渡,集落住
民(非農家含む)の人間関係
集落営農
組織
メリット:契約販売により、経営計画が立てやすい
委託加工により、高付加価値商品を販売できる
メリット:経営内部に技術・ノウハウが無くても
早期に事業部門を操業できる
行政・JA
集落の人材・資源を活用
女性中心のグループ活動
支援策・対応策:核となる人材のノウハウ・技術を
一般化し、マニュアル化し、組織と
しての技術力の高位平準化
外部人材・ノウハウ導入型
適応地域・経営:加工・販売に本格的に取り
組む場合
普及指導員
水稲、麦・豆、野菜(加工原料)
経験者の
外部招聘
加工部長
設備導入
構成員、パート 操作指導
加 工 業
設備販売業
コンサルタント業
ノウハウ供与
販売部門
販売部長
構成員
販売・流通業
経験者の
外部招聘
もっと詳しく知りたい方は、解説書「集落営農組織の現状と展開方向」をご覧下さい
本資料の内容を詳しく説明している、解説書「集落営農組織の現状と展開方向」は、岩手県農
業研究センターのホームページからダウンロードできます。
問い合わせ先:岩手県農業研究センター企画管理部農業経営研究室
〒024-0003 岩手県北上市成田 20-1
TEL 0197-68-4405
FAX 0197-68-2361
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