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3500 組の親子写真の撮影から見えてきた日本人の絆 ~「親子の日」の紹介と

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3500 組の親子写真の撮影から見えてきた日本人の絆 ~「親子の日」の紹介と
3500 組の親子写真の
親子写真の撮影から
撮影から見
から見えてきた日本人
えてきた日本人の
日本人の絆
~「親子
~「親子の
親子の日」の紹介と
紹介と活動報告~
活動報告~
写真家 ブルース・オズボーン氏 / プロデューサー 井上佳子氏
Photograph Record Magazine のチーフ・フォトエデ
ィターを経て 1980 年に来日。写真展「LA Fantasies」
をかわきりに日本での活動を開始。以来、テレビ CM、
広告写真、The Boom、B'z、Sophia、GLAY などの音
楽 CD など多岐にわたる分野で活躍。 ライフワークと
なる「親子」シリーズは、1982 年に撮影を開始して以
来、すでに 2,000 組以上の親子を撮影している。
1984 年には外国人特派員クラブにてはじめての「親
子」写真展を開催。その後も代官山ヒルサイドテラス、
山梨県立井美術館、大阪キリンプラザ、横浜ランドマ
ークタワー、金沢 21 世紀美術館など各地で多数の「親子写真展」を行う。
1.
英語圏にはない
英語圏にはない「
にはない「親子」
親子」の概念
(以下、B:ブルース・オズボーン氏、井:井上佳子氏)
B:どうもはじめまして、カメラマンのブルース・オズボーンです。そしてずっと一緒にパ
ートナーとして活動している、
井:プロデューサーで妻の佳子です。今日はよろしくお願いいたします。
B:今日は親子の話です。先ほどの上田さんの話のなかで、ディズニーのキャストの写真が
ありましたが、やっぱりカメラマンが笑顔じゃないと、撮られるほうも笑顔になれない。
写真はいつもカメラマンの鏡みたいなものなんですね。とても勉強になりました、ありが
とう。
井:私たちも、グローバル視点から見た日本文化の個性を、親子をキーワードにしながら
お話したいと思います。言葉が足りないかもしれませんが、2人でフォローし合いながら
お話していきます。
親子というテーマは、30 年続けている二人のライフワークです。これからお話しするの
は、写真を通じて、私たちがしてきたことや感じてきたことが中心になります。ここにい
らっしゃる方は、写真とは違うフィールドの方が多いと思いますが、個人で続けてきたこ
とが、
「親子の日」という一つのソーシャルなアクションになっていく経過を聞いていただ
ければと思います。
B:最初小松さんが言っていましたが、アメリカには「親子」という言葉はありません。
「p
arents」はありますし、
「children」もあります、でも二つを一つとする言葉はないんです。
だからこの言葉に最初はとても興味を持ちました。やっぱり分かちがたくて一緒にあるべ
き 2 つなんだと思って、30 年前から私のライフワークになりました。
2.
親子写真で
親子写真で見える家族
える家族の
家族の個性と
個性と物語
井:7 月の第 4 日曜日を「親子の日」と決めて、
だいたい 100 組の方をスタジオに招待して、撮影
会をしています。その時の様子をご覧いただきた
いと思います。
井:毎年続けていて、今年で 10 周年になります。
お見せしているのは、親子の日を始める前、30
<動画はこちらのページでご覧いただけます。
年前も前からブルースと私が撮ってきた親子
http://www.youtube.com/watch?feature=player_emb
の写真です。
edded&v=I-KWZ66__LY>
B:最初は駆け出しの時に音楽の雑誌でパンクロック
歌手の撮影をすることになって、どんな写真にしよう
か考えているとき、
「彼らの親の顔が見てみたいよね」
というところから実は親子の日が始まりました。
井:ちょうどそのとき、私たちに最初の子どもが生ま
れる直前だったので、親になるってどういうことなの
かな、という思いもあって。彼は仲野君というんです
けど、彼を撮るのに一緒になって、じゃあ親子で写真を撮ろう、と 2 人に来てもらって撮
ったんです。
その時ブルースが言っていたのは、
「親子で違いが見えると思ってたんだけど、実際来て
もらうと、すごく共通する点があって、思っていたより面白いテーマだね」ということで、
2
それからずっと撮り続けています。
B:ずっと、全身、白バック、モノクロの写真を撮っているのですがなぜかというと、その
親子だけしか映らないので、とてもシンプルに 2 人の関係性が見えてくるからです。情報
が少ないからこそ、よく見えるんですね。
井:ブルースが日本に来て最初に仕事場を持ったのが浅草だったので、割と日本文化に近
い方がたを撮る傾向がありました。たまにブルースは難題を押し付けてきて、
「刺青の親子」
とか言われると私はどうやって探したらいいの!って悩んだりもしながら、この親子に会
ったりしました。
B:親は過去、子供は未来というのが一般的なイメージかと思いますが、親子で撮ると、そ
の家族がつないできた歴史が見えます。日本に来てすぐのころから、こういう「親子で一
つ」という日本の文化に興味がありました。
井:英語では「parents and children」って一人ひとり、個の存在なのに、日本語だとの親
子は一つのユニットとして認識されている。その日本の文化や背景にブルースはすごく興
味を持って、日本の親子を撮ることが日本を知ること、という思いで撮り続けていました。
撮ってみると、それぞれの親子に個性があるんだな、と感じられまして、続けているう
ちに、もっといろんな親子を撮りたいという思いがブルースの中に生まれました。今まで
に 3500 組くらいの親子を撮っています。日本人って個性がないという認識があったりする
けれども、出逢って話を聞いていると、本当にみんないろいろな個性や物語を持っている
なと感じています。
ふとした時に照れる感じとか、後ろを向いた時の後ろ姿とか、いろいろなところに「親
子」を感じさせるものが写りこんでいると思います。
B:全部シンプルな、同じ背景で撮っていますが、そ
れでも写っている親子によって、全然雰囲気が違うこ
とがわかっていただけると思います。
井:あ、これはウルトラマンゼロとセブンです。
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B:一応親子(笑)
井:時代によって、親子も変わるんじゃないですか、とよく聞かれるのですが、時代によ
って社会の背景が変わって、親子関係でも違って見える部分もあると思うのですが、それ
でも変わらないものがやっぱりあるなあ、と感じています。これは同じ親子を、89 年に撮
った写真と、93 年に撮った写真です。
B:ワインみたいに、時間がたつと深く、美味しくなっていくんですよ。その二人の愛がね。
これは、最初撮ったときにお父さんが相撲を引退するときで、16 年後には息子さんが力士
になっていました。
井:この写真、横尾忠則さんと娘さんです。
この写真も、最初撮ったときにお嬢さんが高校生で、これからアメリカに留学する直前
で、お父さんも少し怖そうですね。何年か経って、また違う関係性になっていますよね。
こちらの親子も、最初に撮ったときと 2 回目で 24 年たってます。最初に撮ったときのお
父さんの年齢と、2 回目の息子さんの年齢が一緒になっていました。こちらは弁護士さんの
親子だったんですが、1 回目の、息子さんが大学出たての頃のお父さんの立ち位置と、2 回
目の立ち位置が違っているのをご覧いただけると思います。
ブルースと私は、こんな風にたくさんの親子を撮ってきた中で感じてきた大切なテーマ
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を、何かシェアする機会を作れないかなと考えて、
親子の日というのを作りました。
5 月の第 2 日曜が母の日、6 月の第 3 日曜が父の
日なので、7 月の第 4 日曜を親子の日にしたらい
いんじゃない、ということで、スタジオに 100
組の親子を招いて撮影会をしたのが始まりです。
B:ふつう写真撮るときはゆっくり撮りますけど、
一日で 100 組ですから、朝 9 時から、夜 8 時くらいまで、平均して 2~3 分でどんどん撮っ
ていきます。さっき見ていただいた映像のようにずーっとハイテンションで撮って、みん
なこんな風に笑顔で写っています。
井:上田さんの気遣いのお話もありましたが、これも同じように、お迎えして撮る方の気
持ちと、相手の気持ちが通じ合って、こんなふうにいい写真が撮れます。
B:去年のこの日は本当に幅広い年代の方に来ていただいて、一番若くて 2 週間か 3 週間の
赤ちゃんから、一番年上が 99 歳のお母さんでした。東北からも、関西からも、九州からも
来ていただいて、嬉しい日になりました。残念なのは 100 組限定のところで、もっともっ
とたくさん撮りたいけど、撮っているのが一人だからね・・・
井:これは、親子の日のフォトセッションの風景です。最初は私たちが招待して来ていた
だいていたんですが、今は企業の招待で来ていただくようなことも増えました。
撮影した写真をこうやって貼ってありますので、待っている間もそれを見ながら、うちは
どんな格好をして撮ってもらおうかな~、と話して、スタジオに向かいます。これが最後
の記念写真です、一日本当にハードワークなんですけども、最後もエネルギー残っていま
すね。
B:スタッフもみんなにパワーもらえているんです。
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井:すごくうれしいのが、今まで記念写真などを撮ると、アルバムにしまっている場合が
多かったと思うんですが、皆さん玄関に飾ってますとか、友達が来ると見せています、と
かおっしゃってくれることですね。
3.
個人のライフワークからソーシャルアクションへ
個人のライフワークからソーシャルアクションへ
こうしていろいろな方から応援していただいて、
年間の活動を続けています。バイリンガルのオフィ
シャルサイトもあるのでぜひご覧くださいね。サイ
トでは、撮影した親子の写真が見られたり、写真コ
ンテストとエッセイコンテストをやっていたり、各
地の親子に関するイベントを紹介していたり、親子
大賞というのをやっていたり。各企業からも応援い
ただいて、ライフワークだったものがソーシャルア
クションになって継続しています。
親子の日公式サイトはこちら
http://www.oyako.org/enter.html
B:1 年目は 2 人だけでやりましたけど、だんだん協力
してくださる企業が増えてきましたね。
井:私たちは幸運だったのかもしれませんけれど、メデ
ィアも力を貸してくれています。毎日新聞が毎月 1 ペー
ジ私たちのために提供してくれて、ブルースが撮った写
真と、記者が書いた記事を親子の日の活動紹介と一緒に
一つの紙面にして載せてくださっています。
B:最終日曜日は毎日新聞買ってくださいね。次回は谷
村新司さんとお嬢さんの詩織さんです。
井:私たちが親子の写真を撮り始めた 30 年前は、そん
なに親子ということに敏感ではなかったと思うのです
が、最近はすごく注目してくれて、雑誌であったり、
apple のアプリであったり、いろいろと作ってくださっ
ています。
人に伝えてもらうメディアと、ツイッター(@oyakonohi)や Facebook
(http://www.facebook.com/pages/Oyako-Day/230967750249010)などの自分たちででき
6
るメディアを両方使って、より多くの方に届くようにとやっています。
これは米原市なんですが、3 年前から 7 月第 4 日
曜日は親子の日、と市として制定してくれて、絆プ
ロジェクトを前向きに進めてくださっています。こ
れはそのプレゼンテーションの一部ですが、過疎地
でも自分たちにできる絆づくりというのを考えてい
て、それには故郷と親子というのがキーワードにな
ると活動しています。
B:この時は、故郷と親子がキーワードだったので、米原の自然の景色の中で親子の写真を
撮って、米原駅の中で展覧会をやりました。今年 3 月までやっています。
井:米原駅の中には、親子ギャラリーというのがあって、今はブルースの親子写真と、米
原の親子の写真が展示してあるのですけれど、4 月以降は、ブルースが撮ってきた被災地の
親子写真を展示して、被災地の支援にしていくのだそうです。
私たち写真家にとっては、写真を撮ることがコミュニケーションであり、メッセージを
伝える場であったりします。これは 21 世紀美術館で展覧会をしたときのオープニングセレ
モニーですが、美術館の中で撮影会をしたりもしました。こちらは愛知万博。子供たちも
来やすいところで撮影会をしています。
B:こちらはイオンのレイクタウンですね。
井:由紀さおりさんと安田祥子さんのライブの会場なんかもあります。これはカメラショ
ーですね。これは椿山荘の展示会。いろんな場所にお招きいただいています。いろいろな
切り口で私たちもいろいろな方に伝えたいし、皆さんも親子ということで興味を持ってい
ただいています。
また、新しい取り組みとしては被災地訪問親子撮影プロジェクトと、
「I TIE ☆ 会いた
い」プロジェクトというのが去年からスタートしました。
B:東北の地震があって、何ができるだろうと考えたのはみんな同じだと思います。みんな
写真が流されてしまって、記者を見ると家族の写真を撮ってくださいと声をかけてくる、
という記事を見て、最初は 6 月に相馬に行きました。
「ずっと笑っていなかったけど、初め
て笑えました」と言っていただいたりして、やっぱりうれしかったですね。
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大変な景色の前ですが、ここからまたスタートラインに立って、新しい親子の歴史を作
ろう、という写真になっているかな、と思います。
井:私たちも、何かしたいけど何をすれば、いつすればいいのかわからない、そんな日々
が続いたのですが、実際行ってみると、被災地の方も「話したいことがいっぱいあるし、
写真も撮ってもらってよかった」
、と感謝してくださって。それを聞いて、写真を撮れたこ
ともうれしいですが、行って会えたこともよかったな、と思いました。あと一つうれしい
ことは、この時手伝ってくださった南三陸の人から連絡があって、行ったときには、漁港
に船も何もなかったんですけど、今年もワカメが採れたから送りたい、と言ってくださっ
て。そういう交流ができたこともうれしかったですね。
B:あと、みんなが親子の大切さを感じてくれていたのもよかったね。
井:撮った方にアンケートを書いていただいたんですけど、
「いろいろなものをなくしてし
まったけど、親子の絆を大切に感じられた」という声をたくさんいただきました。
「I TIE☆プロジェクト」というのは、CIPA という
カメラ業界の助成を受けて立ち上げたのですが、現地
の子供たちや学生に写真の撮り方やネットで共有す
ることなどいろいろなことを教えてあげて、それから
地元の写真館の方と子供たちとが一緒にこれからも
つないでいけるという形をとってスタートしていま
す。
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B:10 代の子どもたちが表現した写真と文章を、ソーシャルビジネスで展開していって、
表現する力や記録する力やコミュニケーションを育てていければいいなと思っています。
4.
地球上すべての
「親子
地球上すべての命
すべての命と共有できる
共有できる、
できる、
「親子」
親子」というテーマ
井:親子の日のスローガンは、
「present to the future」
。私たちが考える、親子についての
大切な思いを、未来への贈り物にできたらいいな、と思って去年からこのスローガンで活
動しています。
少し話が大きくなりすぎるかもしれませんが、地球規模で親子について考えると、人も
含めて、地球上にいる 3,000 万種の生物はどの種も親から子への命の連鎖で成り立ってい
るわけですよね。そういう意味では、親子というテーマは地球上すべての生物と共有でき
るテーマですし、親子の日はみんなが主役になれる日じゃないかと思っています。
世界中には、人間が作った不幸や、自然災害で苦しんでいるたくさんの人や命が存在して
いて、そういう問題にきちんと向き合って解決していくことも大事なんですけれど、私た
ちは親子でうれしい一瞬を積み重ねていくことで、世界が明るい方向へ行くことを目指し
て、これからも活動を続けたいなと思っています。慣れない話でしたが、少しでも皆様の
参考になったらいいなと思っています。
B:夢は大きいですけれど、まずは親子の日を、母の日・父の日と同じくらい有名にしよう
と思っています。
井:皆さんにも応援いただきたいと思っていますのでよろしくお願いいたします。
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