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もうポイなんて しない - 経済産業省北海道経済産業局
もうポイなんて しない 北海道内の第一次産業や食品の製造過程で発生する副産物は、処理費をかけて廃棄して いるところもあり、 その処理費用の負担も経営上の課題の一つとなっています。 一方、 これらの副産物は、 もとをたどれば農産物などが原料であり、家畜の飼料原料として 有効利用できる可能性を秘めています。 本パンフレットでは、専門知識がなくても飼料化を検討するきっかけにして いただけるよう「まずはここから!」というポイントを簡単に紹介します。 経済産業省北海道経済産業局 もうポイなんて しない 目 次 1stステップ 発生している副産物を知ろう!………………………………………………………… 1 1st -1 どんなものが発生しているかを知る……………………………………………………………… 1 1st -2 どの時期に、どのくらいの量で発生しているかを知る…………………………………………… 2 1st -3 処理にいくらお金がかかっているかを知る……………………………………………………… 2 〈参考〉 【副産物の飼料化のためのコスト条件と加工の要否判断】…………………………………………… 3 2ndステップ 専門家に相談しよう!…………………………………………………………………… 4 2nd -1 現場を見てもらう、成分分析をする……………………………………………………………… 4 2nd -2 どのような飼料にするかを決める………………………………………………………………… 6 〈参考〉 【専門家検討プロセス】…………………………………………………………………………………… 6 【本パンフレット作成にあたってご協力いただいた専門家】…………………………………………… 6 3rdステップ 事業化に向けて動き出そう!…………………………………………………………… 7 3rd -1 使ってくれる畜産農家を探す……………………………………………………………………… 7 3rd -2 供給を開始する…………………………………………………………………………………… 8 別冊 事業化に向けた取組事例 1st ステップ 発生している副産物を知ろう! ここでは、 『どんなものが』 『どの時期に』 『どのくらいの量で』発生して、 『 処理にいくらお金 がかかっているか』 を把握しましょう。 1st-1 どんなものが発生しているかを知る 動物性か? ①副産物の原料は何? 植物性か? 両方混ざっているのか? ②発生時の形状は? 分別は可能か? 固形物か? 水分量はどのくらいか? 液体か? 腐敗しやすいか? 例えば) 規格外ニンジン……規格外のニンジンが大量に出ている。 一部腐敗したものも混ざっているが、分別は可能な状態。 1 1st-2 どの時期に、どのくらいの量で発生しているかを知る ③発生期間はいつ? ④発生量はどのくらい? 年間を通じて発生するのか? 発生時期が限定されるのか? 全体の発生量は何トンか? 発生期間は何月∼何月か? 発生量は安定しているか? 発生量の変動が大きいか? 例えば) 規格外ニンジン……8月∼11月に収穫し、規格外ニンジンとして毎日10t程度発生 している。 3ヶ月間でおよそ2, 000t発生しているが、 12月以 降は発生しない。 1st-3 処理にいくらお金がかかっているかを知る ⑤処理方法とコストは? 産業廃棄物処理 年間処理費用はどのくらいか? 堆肥原料供給その他 輸送費等はどのくらいか? 例えば) 規格外ニンジン…… 現在は、毎月約70万円かけて産業廃棄物として処理している。 ある程度の量になってから産廃業者に引き取ってもらうので、 そ れまで腐敗しないように冷蔵保存している。 お金が かかるなぁ 2 参 考 【副産物の飼料化のためのコスト条件と加工の要否判断】 飼料化のためには、設備投資や加工費を要する場合があります。 【飼料化のためのコスト条件】 ○副産物の飼料化が経済的に成立するためには次の2つの条件を満たす必要があります。 出す側 加工費が高くなると運搬費を抑える 必要がありますので、遠くの農家には 運べなくなります 飼料売上− (加工費+運送費) 産廃費用 副産物飼料代 使う側 従来飼料代 飼料 飼料 【加工の要否判断】 ○副産物は一般に水分が高く腐敗しやすいため、乾燥等が必要となる場合が多く見ら れます。 〈加工の要否の目処〉 乾燥しているもの (含水率<13.5%程度) 副産物 やや乾燥しているもの (含水率<20%程度) 水分が多いもの (含水率<40%程度) ①サイレージ (発酵) 調整 ②乾燥 ③リキッド・濃縮 現物で輸送可能 輸送・保存条件にもよ るが、現物輸送もしくは 飼料加工 飼料加工が必要 飼料加工 (腐敗防止) 3 2nd ステップ 専門家に相談しよう! 把握できたら、次のステップです。 『 飼料にするにはどうしたら良いか』 を専門家にも相談しな がら進めていきましょう。 2nd-1 ①飼料として使えるか? 現場を見てもらう、成分分析をする 成分は飼料として適当か? サンプルの提供 サイレージ化か? ②加工は必要か? ③どの家畜種か? 濃縮化か? 現状処理コストとの対比 乾燥か? 運べる範囲の検討 成分分析結果からするとどの家畜種か? 例えば) 規格外ニンジン…… 規格外ニンジンのサンプルを専門家に送って分析をしてもらっ たら、 「飼料に適している」 との回答をもらった。サイレージにもな るらしい。 ※牛などの「反すう動物」 には動物性たんぱく質と完全に分離した飼料 (A飼料といいます) でなければ給 餌できませんので注意を要します。 詳細は 「反すう動物用飼料への動物由来たん白質の混入防止に関するガイドライン」 をご参照下さい。 http://kashikyo.lin.gr.jp/network/guideline/konnyuubousi/guideline.pdf 4 2nd-2 どのような飼料にするかを決める ④嗜好性は大丈夫か? ⑤加工・供給の方法は? ⑥必要経費は? 給餌試験による嗜好性の確認 飼料加工の 方法は? 加工のための設備はあるか? 新たに用意できるか? 保存の 方法は? 常温保存か、冷蔵保存か? 設備は準備できるか? 積込み・ 輸送方法は? 積込み要員は確保できるか? 輸送は自社か輸送業者か? 採算が合うか? 生産コストはいくらか? 既存飼料と競争できるか? 例えば) 規格外ニンジン…… 試験で家畜に食べさせてみたらよく食べた。 自社で冷蔵保存が可能なので、近隣であればそのまま持って行 き、近隣に農家がない場合はサイレージにする。 5 参 考 【専門家検討プロセス】 以下のようなプロセスで行っていきます。 調査・検討項目 検討のポイント サンプルの成分分析・ 嗜好性調査 ○副産物の成分がどのような既存飼料を代替できるか ○対象とする家畜は副産物を既存飼料と同等に食べてくれ るのか ○飼料としての安全性は確保できるか 副産物の発生量・ 発生時期の適否検討 ○副産物の発生量や発生時期は畜産農家とうまくマッチン グできるか。 ○マッチングさせるための有効な保存方法等はあるか ○輸送はどのような方法が適しているか 飼料加工の要否検討 ○副産物の腐敗を防ぐための飼料加工を行う必要があるか ○どの飼料加工の方法が最適か 事業採算性の検討 ○飼料として供給するためのコストはどのくらいか、供給コスト は現状の廃棄物処理コストよりも安いか ○事業として採算をとるための輸送可能範囲は半径何km くらいか、 またその範囲内で畜産農家を見つけられそうか ○飼料としての供給価格は、畜産農家にとって既存飼料より 安いか 【本パンフレット作成にあたってご協力いただいた専門家】 所属・役職 氏名 雪印種苗㈱ 千葉研究農場長 石田 聡一 氏 ㈱オルタナフィード 代表取締役 饗庭 功 氏 日本ハム㈱中央研究所札幌サテライト 研究員 藤村 達也 氏 ㈱バイオマスソリューションズ 代表取締役 藤本 達也 氏 ※専門家の紹介を希望される場合は、事前に北海道経済産業局資源エネルギー環境部環境・リサイクル課 〈011-709-2311 (内線2623∼2624)〉 まで、 ご連絡ください。 6 3rd ステップ 事業化に向けて動き出そう! 飼料になると判断されたら 『使ってくれる方』 を探しましょう。 3rd-1 使ってくれる畜産農家を探す ①供給時期は? 通年か、一時受入か? ②供給規模は? 供給量に見合う畜産農家は? 副産物の発生状況 ③価格は折り合うか? コストに見合う輸送範囲は? 供給量にもよる 例えば) 規格外ニンジン…… A牧場には夏場にニンジンをそのまま供給して、B牧場は距離が あるので、サイレージにして通年供給しよう。 これで廃棄費用より経費を抑えられる。 7 3rd-2 供給を開始する 飼料加工・保存のための設備は万全か? ④供給体制は大丈夫か? 飼料化のための要員の確保は十分か? 輸送方法や輸送を委託する場合の業者確保は大丈夫か? ⑤安全性は確保されて いるか? ⑥必要な届出等は 大丈夫か? 飼料加工・保存工程での安全性管理は大丈夫か? 輸送での安全性管理は大丈夫か? 「飼料安全法」に基づく届け出は済んでいるか? 規格適合や成分表示に関する対応はできているか? ※副産物の飼料活用については 「食品残さ等利用飼料の安全性確保のためのガイドライン」 に詳しく解 説されていますのでご参照下さい。 http://kashikyo.lin.gr.jp/ecofeed/guide.pdf 例えば) 規格外ニンジン……飼料の届け出も終了したし、 これからは捨てていたものが飼 料として販売できる。もうポイなんてしない。 8 経済産業省 北海道経済産業局 資源エネルギー環境部 環境・リサイクル課 〒060-0808 北海道札幌市北区北8条西2丁目 札幌第一合同庁舎 電話:011- 709 - 2311 (内線2623∼2624) FAX:011- 726 -7474 Eーmail [email protected] URL http://www.hkd.meti.go.jp/ 別 冊 事業 化に 向け た取 り組 み事 例 本調査で飼料化の可能性が確認され、事業化に向けて取り組んでいる 以下の事例をご紹介します。 ○廃シロップ液 ○梅調味液 ○ニンジン残渣(規格外ニンジン) ○でんぷんかす(バレイショ) ○デカンタ廃液 ○廃棄卵 1 事例1 廃シロップ液 糖分供給で家畜のエネルギー補給に貢献 【副産物の概要】 ○お菓子等を製造する際に使用するフルーツ缶詰のシロップ液。 ○主に菓子や乳製品の製造工場から排出されるが、工場によって季節的に排出される場合と 通年で排出される場合がある。 ○現状は産業廃棄物として処理されている。 【飼料としての評価】 糖分と水分の単純な組成で、糖蜜などの 糖分供給飼料の代替として利用すること ができ、家畜のエネルギー補給や体重の 増加に効果を発揮。 なお、製造工場によって水分や糖度が 異なるので、それらを測定してから利用 する必要がある。 ○水分:50%~90%(製造工場によって異なる) ○サンプルの分析結果(原物:乾燥させない状態) 水分 pH 酸度 糖度 エタノール 85.5% 3.4 3.3% 16.0% 0.5% (雪印種苗㈱分析結果) ※酸度はクエン酸換算%、糖度はブリックス(溶液中の固形 分濃度)%、PH は水素イオン指数 【給餌試験から得られたポイント】 乳牛 給餌の開始に当たっては、馴致期間が必要。 給餌の量は、乾物(乾燥した状態で)で 500g程度が無難。 肉牛 肉牛は分離給餌(必要な成分を別々に与える方式)が多いが、牧草等の粗飼料を サイレージ(発酵させたもの)や、ビートパルプ等に浸透させることができる。 自家で粗飼料を栽培・サイレージ化して給餌をしているところでは有効です。 水分が多いため、リキッド(液体)飼料での給餌が望ましい。 豚 嗜好性(好んで食べる傾向)が高く、体重の増加も期待できる。 肥育豚の体重増加や母豚の食欲増進にも利用でき、離乳豚での実施例はあまり ないが可能であると考えられる。 1 事例2 梅調味液 糖分供給と保存性の良さで家畜のエネルギー補給 に貢献 【副産物の概要】 ○梅菓子を製造する際、味付けのために梅を漬け込んだ調味液。 ○梅菓子等の製造工場から排出され、現状は排水処理をしている。 【飼料としての評価】 エタノールが約 5%、pH3.2 と低いこと から品質が安定しており、1 ヶ月程度の 貯蔵は問題ない。 糖分、塩分の補給源として有効であり、 TMR(栄養水準が均一に保たれた混合 飼料)への 10%程度の添加でも嗜好性 に影響はない。 水分が多いため、利用は近郊に限られる。 ○サンプルの分析結果(原物:乾燥させない状態) 水分 pH 酸度 糖度 エタノール 88.5% 3.2 3.4% 16.8% 5.3% ○サンプルの分析結果(乾物:乾燥させた状態) 粗タンパク 粗脂肪 K Na 7.2% 0.2% 1.0% 18.3% (雪印種苗㈱分析結果) ※酸度はクエン酸換算%、糖度はブリックス(溶液中の固形 分濃度)%、PH は水素イオン指数 【給餌試験から得られたポイント】 育成牛を含め乳牛全般に給餌でき、TMRの水分が低い場合には塩分、糖分を考 乳牛 慮して加水の代替としても利用できる。 梅調味液 3kg中に食塩が約 75g含まれており、塩分要求量が高い泌乳牛にも十分 な量となる。醸造用アルコールや食酢が含まれているので食欲増進が期待でき る。 肉牛 育成牛を含め肉牛全般に給餌できるが、TMRの給餌が少ないため、その場合は ビートパルプ等に浸漬するなど工夫が必要になる。 また、泌乳牛に比べて塩分の要求量が低いため、1kg程度の給与が無難。 豚 塩分をコントロールすれば、豚用飼料として十分可能。糖分・有機酸を多く含む液 体であるため、乳酸発酵によるリキッド飼料としての利用が考えられる。 有機酸などの作用により、糞便臭の低下などが期待できる。 2 事例3 ニンジン残渣 (規格外ニンジン) βカロテンの供給に貢献 【副産物の概要】 ○農地での収穫作業や共同選果の際に分別された変形等で商品にならないニンジン。 ○排出時期は、収穫期である8~11 月と短いが、発生量は多い。 ○現状は馬農家等に引き取ってもらうか、産業廃棄物として処理している。 【飼料としての評価】 飼料用カブやビートと同様の飼料として給 餌でき、牛・豚共にβカロテンの供給源と して有効。 サイレージ化してもβカロテンは乾物で 600mg/kgほど残存し、牧草類の倍以上 含有している。 糖分が高いため、密封貯蔵することで乳 酸発酵し、保存が可能となる。 ○水分:90%程度 ○一般的な飼料成分(乾物) 粗蛋白 粗脂肪 粗繊維 TDN含量 9.1% 1.8% 8.2% 81.9% (既存文献より一般的なデータを引用) ※TDN:可消化養分総量といい飼料の栄養価の指標 単位飼料中の TDN 量を%で表したものを TDN 含量という 【給餌試験から得られたポイント】 乳牛 育成牛を含め乳牛全般に給餌できる。 ニンジンに含まれるβカロテンは分解してビタミンAとなるため、その補給源として 有効であり、泌乳牛であれば原物 10kg程度の給餌でビタミンAを充足できる。 また、βカロテンの摂取により受胎成績が改善することで知られている。 多給すると牛乳が変色するので注意が必要。 肉牛 育成牛、繁殖和牛では、βカロテンの給餌量にあまり留意する必要ないが、肥育 牛ついては、ビタミンAの摂取が高いと脂肪交雑(いわゆるサシ)の入りが悪くなっ たり、肉色が悪くなるので注意が必要。 豚 豚に給餌する場合は、ニンジン以外の野菜も含めた形での給餌になる。 ジャガイモやリンゴのサイレージ等と混合して給餌している事例がある。 3 事例4 でんぷんかす(バレイショ) 炭水化物の供給に貢献 【副産物の概要】 ○粉砕したジャガイモを遠心ふるいや遠心分離機にかけてでんぷんを精製濃縮する工程(セ パレート工程という)において排出される固形分。 ○排出時期は、でんぷん工場が稼働している 9~11 月と短いが、飼料として道内でも多くの活 用事例がみられる。 ○多くは飼料として活用されているが、未利用な工場では産業廃棄物として処理している。 【飼料としての評価】 タンパク質が低く炭水化物が高い組成で、 一般に牛の飼料として利用されている。 水分が多く腐敗しやすいが、排出後密封 貯蔵すれば乳酸発酵する。 ルーメン(牛の複胃の一つで、微生物に よる飼料分解を行う)での分解性が早い 特性を持つ。醤油粕等のタンパク質の高 い飼料と混合してサイレージ化すると、 バランスのよい飼料となる。 ○水分:80%程度 ○一般的な飼料成分(乾物) 粗タンパク 粗脂肪 粗繊維 TDN 6.4% 0.6% 16.6% 69% (既存文献より一般的なデータを引用) ※TDN の内訳としてNDF35%、でんぷん 20%、ペクチン 10%を含む ※NDF:中性デタージェント繊維といい、飼料中の繊維成分 の量を示す。NDF にはセルロース、ヘミセルロース、リグ ニンが含まれる 【給餌試験から得られたポイント】 乳牛 育成牛を含め、乳牛全般に給餌でき、炭水化物源として圧片とうもろこし 1~2kg程 度の代替は可能。 サイレージ化の際のカビ防止として、尿素の添加は有効であり、タンパク質の補給 にもなる。 肉牛 育成牛を含め、肉牛全般に給餌できるが、カロテンが含まれていないことや水分が 多いことに留意して給餌する必要がある。和牛の肥育試験例(H18 北海道農業試 験場)では配合飼料の2割程度を与え、問題ない枝肉成績を出している。 豚 排出時期が秋に限定されることと腐敗が早いことから、サイレージ化の処理を必要 とし、他の乾燥副原料と混ぜて使用する。 肥育豚、繁殖豚に対しては飼料の 1 割程度の給餌を推奨。 4 事例5 デカンタ廃液 タンパク質供給として活用に期待 【副産物の概要】 ○セパレート工程において排出される乳液で、溶解性タンパク質と灰分を多く含んでいる。 ○排出時期は、でんぷん工場が稼働している 9~11 月と短いが、発生量は多い。 ○現在は排水処理をしている。 【飼料としての評価】 そのままでは水分が高いために利用しに くいが、脱水すればタンパク質と灰分の多 い飼料になる。 既に酸処理・乾燥化してポテトプロテイン という商品名で活用されている事例もあり、 今後の有効活用が期待されている。 ○サンプルの分析結果(原物) 水分:96.6% ○サンプルの分析結果(乾物) 粗タンパク 粗脂肪 NDF 粗灰分 53.6% 0 0.3% 29.7% (雪印種苗㈱分析結果) 【給餌から得られたポイント】 乳牛 ・肉牛 デカンタ廃液は水分が 95%前後と高く、一般には脱水・乾燥化しなければ、利用は 難しい。 ただし、でんぷん工場に隣接するなど条件が合えば、飼料的にはTMR調製時の 加水の代替として使うことは可能。TMRへの 20%程度のデカンタ廃液添加では、 嗜好性や 2 次発酵への影響は加水と変わりない。 豚 豚に対してはこれまで給餌実績がないため、給餌による影響や給餌上の留意点に ついては不明であり、今後の実験等の結果を待たなければならない。 5 事例6 廃棄卵 高エネルギー飼料としての活用に期待 【副産物の概要】 ○養鶏場から排出される未成熟卵や殻・内膜が破れて商品化できなくなった卵。 ○通年排出されるが、量は養鶏場の規模によって異なる。 ○現状は産業廃棄物として処理されている。 【飼料としての評価】 これまで飼料として活用されていないが、 その成分は、タンパク質や脂質が高く 乾燥することで家畜の良質なタンパク源、 高エネルギー供給飼料として活用できる。 乾燥方法が確立すれば極めて有力な 飼料となるものと期待される。 ○水分:75%程度 ○一般的な飼料成分(乾物・可食部) 粗タンパク 粗脂肪 糖質 粗灰分 51.5% 43.1% 1.3% 4.2% (既存文献より一般的なデータを引用) 【給餌から得られたポイント】 乳牛 ・肉牛 衛生管理(腐敗や殻の汚染等)を徹底し、乾燥、サイレージ化ができれば、飼料価 値は高くなる。 牛用では乾燥鶏卵が一部代用乳に添加されているのみで、飼料として利用された 例がないため、給餌に当っての留意事項については今後の実験等を待たなけれ ばならない。 豚 衛生管理が必要だが、タンパク質が高く、アミノ酸組成にも優れているので、乾燥・ 粉末できれば利用が可能。 離乳直後の豚に血液飼料の代替として給餌した実績があり、タンパク原料として使 用可能。子豚期での利用は良質なタンパク源となる。 ただし、肥育期では獣臭や軟脂発生の原因となるので注意する必要がある。 6 参考 飼料供給のコスト計算例 ○ タンパク源である、大豆粕を酒粕に置き換えた時の飼料供給コストの計算例 【前提条件】 ・置き換える副産物:酒粕<水分量 70%、タンパク質の含有量 10%> ・代替する飼料:大豆タンパク(大豆粕) <水分量 10%、タンパク質の含有量 45%、販売価格 50 円/kg(農家渡し)> ・10tトラックで輸送<輸送単価 700 円/km> ・輸送荷姿:フレコンバック梱包<資材費: 1,000 円/t> ・作業員:2 人日(20,000 円) 【酒粕の価格設定】 ○大豆タンパク(大豆粕)を飼料として購入する場合、含まれるタンパク質の量で価格が決まる。 1.大豆タンパク(大豆粕)1kgに含まれるタンパク質の量は? 1kg×タンパク質含有量 45%=450g 2.大豆たんぱく(大豆粕)1kgに含まれる量と同じタンパク質を酒粕で供給する場合に必要な量は? ・酒粕 1kg に含まれるタンパク質の量 1kg×タンパク質含有量 10%=100g ・大豆タンパク(大豆粕)1kg と同量のタンパク質を供給するために必要な酒粕の量 大豆タンパク(大豆粕)1kg に含まれるタンパク質 450g÷酒粕 1kg に含まれるタンパク質 100g=4.5kg 3.酒粕の販売価格の計算 大豆タンパク(大豆粕)1kgの販売価格 50 円/kg÷同量のタンパク質を供給するために必要な酒粕 4.5kg =11.1≒10 円/kg ⇒酒粕の販売価格(農家渡し)は 10 円/kg 農家渡しの酒粕の販売価格は 10 円/kg で、酒粕の保存・梱包・輸送を行う必要がある 【輸送距離の計算】 1.梱包等費用 梱包等費用=フレコンバック資材費(1,000 円/t)×トラック輸送単位(10t) +作業員費用(2 人日 20,000 円)=1,000 ×10+20,000=30,000 円 2.限界輸送距離 限界輸送費用=販売価格(10 円/kg)×輸送単位 (10t=10,000kg)- 梱包等費用(30,000 円) =10×10,000 - 30,000=70,000 円 限界輸送距離=限界輸送費用(70,000 円)÷輸送単価(700 円/km) =70,000÷700=100km ○半径 100 ㎞圏内で需要家を探す 副産物の餌料化に当っての留意点 ○副産物を餌料化する際の留意点と、関係法令は以下の通りです。 【飼料としての利用が可能な副産物と安全性の確保】 食品の製造・加工、流通、消費の各段階で発生するほとんどの副産物が飼料資源として活用できま す。ただし、「飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令」で定められた規格に適合しないもの、 具体的には人の健康に害を及ぼすものや家畜に被害を与えるものは当然のことながら利用できませ ん。特に、動物性タンパク質を含む副産物については BSE 対策上の法規制があり、取扱いに注意しな ければなりません。これらについては(社)配合飼料供給安定機構が発行している「食品残さ飼料(エ コフィード)の利用を進めるために<http://mf-kikou.lin.gr.jp/topics/pdf/leaf.pdf>」に詳しく掲載されてい ますのでご参照下さい。 【飼料の養分要求量】 副産物を飼料として供給する際には、需要サイドの飼料設計について一定の理解をしておく必要が あります。 飼料設計に当たっては、水分、粗タンパク質、粗脂肪、繊維、ミネラルなどの含量、可消化栄養分総 量(TDN)、タンパク質と繊維の消化特性などの必要情報を得る必要があり、既存データの収集やサ ンプル分析などを行う必要があります。 なお、一般的な養分要求量については「日本飼養標準<http://jlia.lin.gr.jp/cali/info/standart/>」とし て出版されています。 【副産物の飼料化に関する主要関係法令】 ○副産物の飼料化に関する主要関係法令として次のものがあります。 :飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律 (昭和 28 年法律第 35 号) :飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令 (昭和 51 年7月 24 日農林省令第 35 号) :廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和 45 年 12 月 25 日法律第 137 号)