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4−25 飼料用米給与による媛っこ地鶏の生産性(第Ⅱ報) 養鶏研究所
4−25 飼料用米給与による媛っこ地鶏の生産性(第Ⅱ報) 養鶏研究所 今井士郎 緒言 養鶏用配合飼料の自給率は低く、そのほとんどを海外に依存しているが、近年のバイオ エタノールの増産等により、配合飼料価格は高騰し養鶏農家は厳しい経営を迫られている。 特に本県が開発した媛っこ地鶏の生産農家は、小規模零細農家が多く生産農家から飼料費 を低減できる低コスト生産技術開発が求められ、その対応策として未利用資源等の有効活 用が近年注目を集めている。しかしながら、小規模零細農家が多い媛っこ地鶏生産者にお いては、未利用資源の安定確保は難しい状況にある。 そこで、本試験では地域内で安定的に確保できる可能性の高い飼料用米を未利用資源に位 置付け、飼料用米給与による生産性および肉質について調査を実施しているが、昨年度の 結果から、飼育・肉質については大きな差はなく、生後 60 日以降の媛っこ地鶏に飼料用 米を 50%給与することは可能であると判断している。 しかしながら、腹腔内脂肪の蓄積が多く正肉歩留まりが低下する傾向にあり、飼料用米 の混合給与を行うためには、生産性低下を招く脂肪蓄積の低減を図ることが最も重要な課 題と考えられた。 1 材料および方法 試験期間:57 日齢∼112 日齢(56 日間) 供試鶏:媛っこ地鶏(♂♀) 試験は、雌雄 3 羽計 6 羽をケージ(100cm×120cm)に収容し、配合飼料を 100%給与 する対照区、配合飼料に対し 50%飼料用米(玄米、籾米)を給与する試験区、さらに大豆 粕および魚粉を混合し CP 含量を高めた試験区を下表のとおり設定し 2 反復の試験を行っ た。なお、飼料用米は全粒を給与し、配合飼料は休薬飼料を用い不断給餌、飲水は自由飲 水とした。 表1 試験区分 区 配合割合 参考(飼料成分値) ※ 1区 配合 100(対照区) CP:18.0%、ME:3200kcal/kg 2区 配合 50:玄米 50 CP:13.0%、ME:3440kcal/kg 3区 配合 50:籾米 50 CP:13.5%、ME:3490kcal/kg 4区 配合 40:玄米 50:その他 10(大豆粕 7:魚粉 3) CP:16.0%、ME:3420kcal/kg 5区 配合 40:籾米 50:その他 10(大豆粕 7:魚粉 3) CP:16.5%、ME:3370kcal/kg ※日本飼養標準から推算 調査項目は、飼育調査として、終了体重、増体重、飼料摂取量、飼料要求率とした。 また、解体調査として、と体重に占める部位別割合(もも、むね、ささみ、可食内臓、 腹腔内脂肪)を調査とした。 2 結果 終了時体重、期間中増体量は、2、3 区が他区に比べ大きい傾向を示した(図 1、2)。飼 料摂取量は 1 区の対照区が最も少なく、CP 含量を高めた 4 区、5 区が低 CP の 2 区、3 区 に対しそれぞれ摂取量は減少する傾向を示した(図 3)。飼料効率では、籾米を給与した 3、 5 区で他区に比べ低い値を示した(図 4)。 試験期間中の増体量(雌雄平均:g) 試験終了時体重(雌雄平均:g) 3,800 2,100 2,000 3,765 3,700 2,025 1,900 3,707 1,973 3,600 1,899 3,628 3,500 1,800 3,555 3,563 1,812 1,700 1,600 3,400 1区 図1 1,822 2区 3区 4区 5区 1区 図2 終了時体重 2区 3区 4区 5区 増体量 飼料要求率(雌雄平均) 飼料摂取量(雌雄平均:g) 6 190 180 5 170 150 4.83 171 160 164 166 5 4.70 4.73 1区 2区 153 4 140 1区 図3 5.14 5.09 179 2区 3区 4区 5区 図4 飼料摂取量(1 羽/日) 3区 4区 5区 飼料要求率 解体調査では、雌雄とも正肉歩留まりや腹腔内脂肪割合において、CP 含量を高めた 4 区、5 区が低 CP の 2 区、3 区に対しその割合が改善される傾向を示した(図 5、6、7、8)。 と体重に対する各部位歩留まり(♂:%) 45.8 44.21 43.5 45.4 44.9 50.0 3.9 40.0 30.0 3.6 14.5 3.6 3.3 13.9 4.5 3.4 12.7 3.8 4.5 3.6 3.5 14.5 14.4 23.7 23.5 23.2 22.8 23.1 10.0 図5 40.00 30.00 と体重に対する各部位歩留まり(♀:%) 44.1 43.1 43.2 43.1 44.3 4.1 4.4 4.2 3.8 4.9 3.37 3.67 3.37 3.50 3.40 15.60 15.57 14.97 15.30 15.60 20.17 20.20 20.50 20.50 20.40 1区 2区 3区 4区 5区 20.00 20.0 0.0 可食内臓 ささみ ムネ肉 50.00 モモ肉 1区 2区 3区 4区 各部位歩留まり率(♂) 5区 10.00 0.00 図6 各部位歩留まり率(♀) と体重に対する腹腔内脂肪割合(♀:%) と体重に対する腹腔内脂肪割合(♂:%) 8.0 5.0 7.0 4.0 6.0 5.0 3.0 4.0 4.2 2.0 3.7 3.1 2.8 2.7 7.2 7.0 6.1 3.0 6.7 5.4 2.0 1.0 1.0 0.0 1区 図7 2区 3区 4区 0.0 5区 図8 腹腔内脂肪割合(♂) 1.4 2区 1.4 3区 1.4 5区 3 1.6 1.4 0.1 0.2 2.0 0.0 0.7 0.1 0.7 2.0 4区 図9 0.1 1.0 0.8 0.8 1.5 0.8 2.0 4区 5区 腹腔内脂肪割合(♀) 筋胃が発達し可食内臓割合が増加した (図 9)。 1.6 3.0 3区 また、全粒籾米を給与した 3、5 区で、 1.4 0.2 2区 筋胃 脾臓 心臓 肝臓 と体重に対する可食内臓内訳(♂:%) 1区 1区 4.0 5.0 可食内蔵割合(♂) 材料および方法 試験期間:64 日齢∼93 日齢(28 日間) 供試鶏:媛っこ地鶏(♂) 試験は、雄 4 羽をケージ(100cm×120cm)に収容し、配合飼料を 100%給与する対照 区、配合飼料に対し 50%飼料用米(玄米、籾米)を給与する試験区、さらに大豆粕および 魚粉を混合し CP 含量を高めた試験区を下表のとおり設定し試験を行った。なお、配合飼 料は休薬飼料を用い不断給餌、飲水は自由飲水とした。飼料用米は全粒を給与した。 表2 試験区分 区 配合割合 参考(飼料成分値) ※ 1区 配合 100(対照区) CP:18.0%、ME:3200kcal/kg 2区 配合 50:玄米 50 CP:13.0%、ME:3440kcal/kg 3区 配合 50:籾米 50 CP:13.5%、ME:3490kcal/kg 4区 配合 40:籾米 50:その他 10(大豆粕 7:魚粉 3) CP:16.5%、ME:3370kcal/kg ※日本飼養標準から推算 調査は浅胸筋を用い、水分、加圧伸展率(35kg/cm2;1 分)、加圧保水力(35kg/cm2; 1 分)、ドリップロス(密封した試料を 4℃冷蔵庫内に 1 週間保管した前後の重量差)、加 熱損失率(密封後 70℃で1時間湯煎し、30 分流水にさらした後の重量差)、冷解凍損失率 (密封後−30℃で冷凍し、自然解凍した後の重量差)を測定した。 4 結果 水分(%) 伸展率 28.0 77.0 27.0 76.0 26.0 74.0 74.9 25.46 24.0 74.4 23.0 72.0 24.01 22.0 71.0 21.0 70.0 20.0 1区 2区 3区 4区 1区 図 11 水分(%) 2区 3区 4区 伸展率(kg/cm2) 伸展率や加圧保水力について、飼料用米を給 加圧保水力 与した区が対照区に比べ高くなる傾向を示し、 95.0 94.0 特に籾米を給与した 3、4 区でその傾向が強 93.0 92.0 92.9 91.0 92.1 90.0 い結果となった。このことから、飼料用米特 に籾米を給与することで、弾力性が高く肉汁 90.6 89.0 を蓄える力が強い肉質となる可能性を示した 88.0 87.0 86.0 26.53 25.0 75.2 73.0 図 10 26.78 75.9 75.0 (図 11、12)。 87.8 85.0 1区 図 12 2区 3区 4区 加圧保水力(%) ドリップロス 加熱損失率(%) 3.0 30.0 2.8 2.6 29.0 2.4 2.2 2.9 29.1 2.8 29.1 28.0 2.0 2.4 1.8 27.8 27.0 1.6 27.4 2.0 1.4 26.0 1.2 1.0 25.0 1区 図 13 2区 3区 4区 1区 図 14 ドリップロス(%) 2区 3区 4区 加熱損失率(%) 保存中や加熱時、加えて冷解凍した場合の肉 冷解凍損失率(%) 12.0 汁の流失量を調査した結果、対照となる 1 区 11.0 や玄米を給与した 2 区に比べて、籾米を給与 した 3、4 区が流失を抑える傾向がみられた 10.0 10.3 (図 13、14、15)。 9.0 9.3 8.0 8.6 7.0 8.1 6.0 1区 図 15 2区 冷解凍損失率(%) 3区 4区 5 まとめ 媛っこ地鶏(60 日齢以降)に飼料用米を 50%給与する場合は、CP と ME のバランスを 調整(配合飼料 40%:大豆粕 7%:魚粉 3%)することで、腹腔内脂肪の蓄積を抑え歩留 まりを改善することから、産肉性を維持し飼料の浪費を抑制できると考えられる。全粒の 籾米給与は、筋胃を発達させ可食内臓割合を増加させる傾向が認められた。 また、籾米の混合給与によって弾力性に富んだ粘りのある肉質になり、保管中や調理中 の肉汁保持効果の向上が期待できることが示された。 以上のことから、媛っこ地鶏に飼料用米を給与する場合は、全粒籾米を使用することが 生産コストや特長ある鶏肉生産のために有効であると考えられる。