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飼料イネサイレージの栄養成分と「黒毛和種」繁殖牛への給与

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飼料イネサイレージの栄養成分と「黒毛和種」繁殖牛への給与
飼料イネサイレージ
飼料イネサイレージの
イネサイレージの栄養成分と
栄養成分と「黒毛和種」
黒毛和種」繁殖牛への
繁殖牛への給与
への給与
ねらい
飼料イネサイレージは、水稲の栽培技術や機械が利用でき、一般の畑転作が困難な湿田
ほ場でも取り組め、転作作物として注目されている。畜産農家においても、給与粗飼料と
して期待されている。しかし、飼料イネサイレージの貯蔵性や消化について調査した事例
は少なく、また、モミの消化が懸念されている。そこで、飼料イネサイレージの貯蔵性と
消化率を明らかにし、飼料イネの普及・定着に資する。
主要成果
1 飼料稲サイレージの貯蔵性
飼料イネ「クサノホシ」を経時的に分析すると、各時点での栄養成分はほぼ同等であ
り、貯蔵は1年間は可能である(表1)。
2 飼料イネサイレージの消化試験
「黒毛和種」を対象とした場合、飼料イネ「クサノホシ」を出穂後30日に収穫し、小
型ロ-ルベ-ル(直径60cm)で2ヶ月間貯蔵したものは、日本標準飼養成分表(2001年版)
のイネとほぼ同等の消化率である。可消化粗蛋白質(DCP)及び可消化養分総量(TDN)含量
(乾物中)を算出すると、それぞれ5.4%、47.6%である(表2、3)。モミの消化率は、91.
0%であり消化に問題はない(表4)。
3 「黒毛和種」繁殖牛への給与
「黒毛和種」繁殖牛体重500kgの成雌牛の維持に要する養分は、飼料イネサイレージ
16.0 kg、濃厚飼料1.0kgの給与で必要養分量を供給できる。妊娠末期の成雌牛では、飼
料イネサイレージ16.5kg、濃厚飼料2.0kgを供給することで必要養分量を供給できる(表
5)。
成果の
成果の活用面・
活用面・利用上の
利用上の留意事項
1 飼料イネサイレージのみの給与でも、体重500kgの「黒毛和種」繁殖牛の維持に要する
養分を充足できるが、飼料イネの品種や刈り取り時期等に影響されるため、飼料分析を
実施して栄養成分を把握し、適正に給与する必要がある。
関連文献等
(1)秋友一郎・藤本和正・池尻明彦:黒毛和種繁殖牛における飼料イネサイレージの採食性
調査,山口県畜産試験場研究報告,17,99-107,2001.
(2)池尻明彦・藤本和正・竹下和久:黒毛和種繁殖牛における飼料イネサイレージの採食性
調査(第2報),山口県畜産試験場研究報告,19,2004.
試験成績
表1 飼料イネサイレージのpH、水分及び栄養成分の経時変化
乾物中(%)
密封後
経過日数 pH 水分(%) 粗蛋白質 粗脂肪 NFE注1) 粗繊維
30日 5.88 61.3 5.49 1.89 51.7 29.0
60日 6.32 62.5 5.65 2.16 51.7 28.3
90日 6.51 59.5 5.78 2.12 52.3 27.9
120日 6.44 57.4 5.56 2.22 50.8 28.8
150日 6.28 61.3 6.22 2.22 52.3 27.9
180日 5.35 61.7 5.86 2.07 53.0 27.0
210日 5.30 57.0 5.84 2.71 44.7 33.1
240日 4.65 59.3 5.52 2.30 51.4 28.1
270日 4.99 59.6 4.66 2.10 55.2 25.5
300日 4.85 58.1 5.98 2.01 54.0 26.2
330日 4.75 61.6 5.63 2.68 50.8 27.9
360日 4.61 60.8 6.33 2.67 50.6 28.1
注1)可溶性無窒素物
注2)平成14年10月5日に、小型ロールベール体系にて収穫(密封)した。
粗灰分
11.9
12.2
11.8
12.7
11.4
12.0
13.7
12.8
12.6
11.9
12.9
12.3
表2 給与飼料と排泄糞の日量と成分
飼料と排泄糞 日量 kg 水分 % 粗蛋白質 粗脂肪 乾物中 %
NFE 粗繊維
飼料イネ 16.0 64.9 8.6 2.5 41.9 28.9
濃厚飼料
1.0 15.7 18.2 3.6 63.5 6.4
排泄糞
14.0 78.2 9.0 2.2 36.0 27.4
粗灰分
18.0
8.3
25.4
表3 飼料イネサイレージの一般成分の消化率及びDCP、TDN含量
:%
消化率
養分含量
粗蛋白質 粗脂肪 NFE 粗繊維 DCP TDN
飼料イネサイレージ 62.4 51.9 51.9 60.5
5.4 47.6
注1)
63
46
52
62
- 50.1
イネ(出穂期)
注1)日本標準飼料成分表(2001年版)
表4 モミの消化率
飼料イネサイレージ1kg当たりの平均モミ数(n=7)
9,230
給与したモミ数
9,230 粒/kg × 16 kg
= 147,687
糞1kg当たりの未消化のモミ数(n=4)
950
総排泄糞当たりの未消化のモミ数 14.03 kg × 950 粒/kg
= 13,329
排泄糞中の未消化モミの割合 13,329 粒 ÷ 147,687 粒×100 = 9.0
モミの消化率
100 9.0
= 91.0
表5 飼料イネサイレージ給与設計(例)
乾物量 粗蛋白質 DCP TDN
飼料 給与量
(kg) (kg) (g) (g) (kg)
要求養分量 (体重500kg、維持)
― 6.54 521 247 3.27
飼料イネサイレージ 16.0 5.62 480 304 2.67
濃厚飼料 1.0 0.88 125 105 0.67
合計
17.0 6.50 605 409 3.34
充足率(%) ― 99
116 166 102
要求養分量 (体重500kg、妊娠末期) ― 7.54 700 382 4.10
飼料イネサイレージ 16.5 5.79 495 314 2.76
濃厚飼料 2.0 1.76 250 210 1.34
合計
18.5 7.55 745 524 4.10
充足率(%) ― 100 106 137 100
注)濃厚飼料は、水分12%、DCP10.5%、TDN66.5%として計算。
(1日の給与量)
(1日の平均排泄量)
(未消化モミ数)
(未消化総モミ数)
(給与総モミ数)
(未消化モミの割合)
粒/kg
粒
粒/kg
粒
%
%
研究年度
平成11年~15年
研究課題名
給与形態別飼料イネの収穫、調製、利用技術
担
畜産試験場 飼養技術部 飼料作物グループ
竹下和久(現畜産課)・元永利正・佐藤正道
当
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