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商業地街路の通行者と店舗サービスの時間帯変化に関する研究

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商業地街路の通行者と店舗サービスの時間帯変化に関する研究
商業地街路の通行者と店舗サービスの時間帯変化に関する研究
二瓶 星太郎
1.研究の背景
現在の都市において施設が充実した繁華街や人々のライフスタイルによって昼間だけでなく夜間でも都市
内を歩く機会が増えている.昼と夜とでは営業している店舗やその客層が変わってくるため,昼と夜とでの
人々の活動とともに市街地の見え方も変化していく(図 1).これは都市の景観の分野において「人々の活動や
動き」が重要な要素となるものであり,市街地周辺に在住する市民または都市の発展によってそれぞれの都市
が均一ではなくそれぞれの特徴を持つことにつながっている.都市は常に同じ活動が行われているのではなく,
一日のうちでも使われ方が異なっており,このような都市空間の利用の柔軟性や時間により都市活動が変化し
ていくことは既存の都市計画法制度の枠組みでは取り扱うことができないが,こうしたことの中に都市の魅力
の本質があるのではないか.
2.研究の目的
前述のような観点から,そうした都市の使われ方の実態に迫る端緒として,本研究では時間帯による利用状
況の変化状況を把握する.具体的には次の 3 点を東京都町田市町田駅前の事例において明らかにする.
(1) 時間帯によってどのような店舗サービスが提供され
ているか.
(2) 時間帯によって通行者が街(街路)をどのように利用し
ているか.
(3) 店舗サービスと通行者の活動がどのような関係にあ
るのか.
図 1 12/1 における通り⑤の通行者の様子(左:12 時 右:18 時)
3.研究の方法
本研究では時間帯による店舗(サービスを提供する側)
の営業時間と種類の移り変わりと,時間帯による通行者
(サービスを受ける側)の属性や人数・通行時のグループ
人数を調査し,以下のことに注目して考察していく.
① 時間帯による通行者の街路の使い分け
② 通行者の人物属性や行動人数による活動状況変化
4.調査
本研究では東京都町田市の商業地域内の人通りの多い
図 2 本研究の対象地
通り 5 街路を対象とする(図 2).時間帯により提供される
店舗サービスの変化は業種と営業時間を現地確認と店舗
へのヒアリングによって把握し,時間帯毎(12 時,18 時)
に地図上に整理した(図 4,5).通行量については対象とな
る 5 街路で昼間(12 時~13 時)および夕方(18 時~19 時)の時
間帯に平日休日各 2 日間(2012/12/1,12/5,12/8,12/12)調
査を行った.調査街路で 10 分間ビデオ撮影し,動画によ
り通行者を性別・年齢・行動人数に分けて集計した(図 3).
5.考察
図 3 通行者数の属性分け 例として,12/1 の通り⑤について考
●飲食店・居酒屋 ●衣服・雑貨店 ●娯楽店(パチンコ、カラオケなど)
●コンビニ ●その他物販店
察を述べる.提供されているサービス
については図 4 と図 5 から,昼から夕
方に移り変わると飲食店の数が増え
ており,居酒屋が営業し始めたことを
示している.一方、通行者の活動につ
いては、昼から夕方になると男性は通
行者数・単独者数ともに増加している
が,増加量は通行者数のほうが単独行
動者数よりもはるかに大きい.それに
図 5 対し,女性は通行者数に変化はあまり
ないが,単独行動者数が減少している
図 4 12/1 12 時における店舗の業種
図 5 12/1 18 時における店舗の業種
(図 6).また,図 7 から夕方の時間帯に通行するグループ数,特
に男性・男女二人構成のグループが増加していることを読み取る
ことができる.つまり夕方の時間帯は昼と比べて通行量は増加す
るが単独行動数が減少していき,その分グループ行動をする通行
者が増加していくことを示している.また,年齢層に着目すると
昼から夕方になると,成人・中年層の増加,幼年・老人層の減少
を見ることができ,特に成人男性の増加が著しいことがわかる
(図 8).以上のことからこの通りでは成人・中年層の男性が含ま
れる男性・男女グループが昼よりも夕方の時間帯に多く見られ,
それはこの通りで夕方に居酒屋が営業し始めているからではない
図 6 通り⑤性別ごとの通行者数・単独行動者
かと思われる.
6.結論
本研究の結論は次のとおりである.
1.
「店舗のサービス提供」と「通行者の利用」を時間帯ごとに
調査・計測し比較考察した。
2.通行者の属性や行動人数に着目して時間による変化を考
察した結果,次のようなことがわかった.
① 飲食店・居酒屋サービスの提供の増加によって,成人
男性・女性の通行者数と男性を含んだグループ数が大
図 7 通り⑤性別による構成別グループ数
きく増加した.
② 昼から夕方になると老人層の通行者数が減少し,成
人・中年層の通行者数が増加する傾向がみられた.
③ サービス分布が変化しても通行者に変化が見られなか
ったところもあった.
7.今後の課題
本研究では、昼(12 時)と夕方(18 時)の比較を行ったが、調査対
象となる時間帯を増やすことで、提供される店舗サービスと通行
図 8 通り⑤性別・年齢別通行者数と単独行動数
者の行動の関係をより精密に分析できると考えられる.また調査対象地区を増やし考察の一般性を高めること
が課題である。
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