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2005年8月号 (PDF/1469KB)

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2005年8月号 (PDF/1469KB)
AUGUST
自動車用トランスミッション部品のグッドカンパニー
―国内外で新たなファクトリーづくりを展開―
愛知機器株式会社
1997年に発生したアジア通貨危機は、それまで順調な経済発展を遂げてきた東アジア各国に信用不安を
もたらし、現地の日系企業にも深刻な影響がおよびました。
アジア通貨危機の背景には、各国が実質的に米ドルに固定された為替制度を採用していたことと、金融機
関が国内の長期の資金需要に対して短期の外貨による調達を行っていたという、為替・期間の「二重のミス
マッチ」があるとされています。
この教訓をふまえて、金融・資本システムの“体質改善”が進められ、その有力な取組みとして「アジア
債券市場育成イニシアティブ(ABMI)」が日本政府の提唱で進められています。その最終目標は、アジア
の貯蓄資金がアジアの民間企業の長期の資本形成や投資に回るように、アジア域内通貨建ての債券の発行を
可能にする債券市場を整備することにあります。
JBICは、このABMIの実現に向けて、保証機能をはじめとする国際金融等業務のもつツールを駆使して、
債券への保証の供与、現地通貨建て債券の発行及び現地通貨建てでの融資などに取り組んでおり、各国政府、
機関投資家などから大きな注目を集めています。そうしたJBICのアジア債券市場育成に向けた取組みを、
実績をあげながら紹介します。
通貨危機前後のアジア各国・地域のGDP成長率推移
タイ
インドネシア
マレーシア
韓国
香港
実質GDP成長率(%)
15
12
中国
フィリピン
シンガポール
台湾
9
6
0
-3
-6
-9
-12
-15
1997
1998
出所:IMF World Economic Outlook
2
JBIC TODAY AUGUST 2005
1999
2000
2001
2002
2003
2004
FOCUS
アジア通貨危機の教訓から
この二重のミスマッチにより、90年代から経済成
長著しいアジア各国に流入していた巨額な外国資金
1997年夏のタイ・バーツの急落をきっかけに、イ
が一斉に引き上げられたことで、各国の金融システ
ンドネシア、マレーシア、韓国などでも連鎖的に通
ムが機能不全に陥って信用不安が一気に広がりまし
貨が暴落し、金融機関や企業破綻が相次ぐ経済混乱
た。その結果、銀行貸出しが激減したことで、資金
を招くに至りました。このアジア通貨危機は、それ
調達を銀行に依存していた企業にも危機が拡大し、
まで順調な経済発展を遂げてきたアジアの各国に信
急速に景気が悪化していったのです。
こうした流れの根本には、アジアは貯蓄率が高い
用不安をもたらし、現地の日系企業にも深刻な影響
がおよびました。さらに、アジア通貨危機の影響は、 ものの、その大部分が欧州など域外に投資されて域
ロシア、南米にも波及して、世界的な経済危機に発
内に資金がまわらないという構造的な問題があり、
展しました。
国債や社債などの債券市場も育っていないというこ
このような事態に対して、日本政府は、1998年秋
とが指摘されています。
に通貨危機国に対して総額300億ドルの緊急金融支
援を行う「新宮沢構想」を発表。その一環として、
国際協力銀行(JBIC)は、国際金融等業務、海外
通貨危機再発を防ぐアジア債券市場育成
経済協力業務の両面で各国政府と日系現地企業を支
援してきました。
アジア通貨危機の教訓をもとに、アジア各国の金
幸い、日本をはじめ世界からの緊急金融支援と、 融当局は、外国資金の過剰流入を防ぐ為替制度の改
米国経済がITを中心に好調だったこともあって、ア
革や金融システムの立て直しに取り組む一方で、株
ジア経済は短期間で V字回復を遂げることができま
式市場や域内・国内の債券市場を育成し、アジアの
したが、各国には通貨危機の再発防止という大きな
貯蓄資金が域内・国内の企業に投資されて有効活用
課題が残されました。
される仕組みづくりに動き出しました。
アジア通貨危機をもたらした背景は、アジア各国
これを受けて、2000年5月にASEAN10カ国と日本、
が米ドルに実質的にペッグ(固定)した為替制度を
韓国、中国で構成する「ASEAN+3」の第1回財務大
採用していたことと、金融機関が国内の長期の資金
臣会議がタイのチェンマイで開催され、通貨危機が
需要に対して短期の資金を外貨によって調達してい
起きた際の“対症療法”として資金融通(通貨スワ
たという、為替・期間の「二重のミスマッチ」であった
ップ)を行う包括的協力協定(チェンマイ・イニシ
とされています。
アティブ)が合意されました。
危機前後のアジア各国への資本流入動向(銀行貸出)
(単位:百万ドル)
1992
1993
1994
1995
1996
1997
—
1,357
527
1,953
-758
-276 -2,270
韓国
1,820
720
マレーシア
3,150
フィリピン
1,921
タイ
1,758
インドネシア
7,368 11,389
6,282 -3,789
-229
1,694
9,952 -9,785 -6,233
—
—
1,648
5,036
6,589 14,295 13,218
1998
—
—
1999
2000
2001
2002
2003
126 -1,420 -1,867 -1,217
n.a.
1,418 -4,538 -4,147
n.a.
6,257
2,561
n.a.
n.a.
862
n.a.
1,668 -1,118 -2,221 -1,368
-723
50
-392
2,909 -3,045 -11,783 -11,566 -4,799 -2,534 -1,761 -1,488
出所:IMF International Financial Statistics Yearbook 2004
JBIC TODAY AUGUST 2005
3
アジアにおける金融協力
―アジア債券市場育成と、日本企業のビジネスチャンス創造―
その後もASEAN+3の枠組みでさまざまな施策の
備の一部を拠出して基金をつくり、国際決済銀行が
検討が進められてきましたが、2002年12月の非公
ファンドの運用を担当して各国が発行する国債・政
式セッションで、日本政府が「アジア債券市場育
府機関債(ソブリン債・準ソブリン債)に投資する
成イニシアティブ(ABMI)」を提唱、各国から大
ものです。ABFは、2003年にドル建て国債・政府機
きな注目を集めました。
関債への投資を開始したのに続いて、2004年末には
また、日本銀行も加盟している東アジア・オセア
現地通貨建てソブリン債を購入するABF2も創設さ
ニア中央銀行役員会議でも、債券市場育成を図る地
れました。このように、投資による財政政策の支援
域協力として、
「アジア・ボンド・ファンド(ABF)
」
を通じて国債を発行する国の経済成長を促進し、直
を創設しています。ABFは、各国中央銀行が外貨準
接金融の枠組みを育成するという効果が期待され
ています。
各国の国債、社債の市場規模推移(残高ベース)
(単位:10億ドル)
2002.12 2003.12 2004.12
日 本
中 国
国債・公債
金融機関
一般企業
4,543.7 5,831.2
1,145.8 1,217.2
683.0
769.7
伸び率
(02年∼04年)
6,836.7
1,240.6
789.4
50%
8%
16%
国債・公債
金融機関
一般企業
243.0
122.1
12.2
287.4
140.8
12.2
287.4
183.7
12.2
18%
50%
0%
国債・公債
金融機関
一般企業
15.1
23.1
7.1
15.5
23.0
6.4
15.8
24.9
5.8
5%
8%
-18%
シンガポール
国債・公債
金融機関
一般企業
33.4
16.2
4.4
37.1
16.0
5.3
44.2
16.6
5.5
32%
2%
25%
マレーシア
国債・公債
金融機関
一般企業
34.0
11.6
38.7
40.4
13.4
44.9
45.2
16.4
45.0
33%
41%
16%
タ イ
国債・公債
金融機関
一般企業
28.9
3.0
15.3
30.7
6.8
19.3
36.2
8.8
19.9
25%
193%
30%
香 港
出所:BIS Quarterly Review June 2005
アジア債券市場育成のためのABMI
一方、日本政府が提唱したABMIは、アジア諸国
の貯蓄をアジアの経済発展に必要な中長期の資金
ニーズに結び付け、アジア通貨危機の原因となっ
た通貨・期間のミスマッチの解消に向けて、銀行
融資に過度に依存することなく、アジア域内の債
券市場を育成することを目指すものです。その最
終目標は、アジアの貯蓄をアジアの民間事業者等
が長期の資本形成・投資に動員できるよう、アジ
ア域内通貨建ての債券の発行を可能とするような
アジア債券市場の整備にあります。
その基本的な考え方は、多様な通貨・期間の債
券をできる限り大量に発行して市場に厚みをもた
せるとともに、保証や格付機関などの環境整備を
行うことで、債券発行体・投資家双方にとって使
各国の資金調達手法の割合(2002)
(単位:10億ドル、%)
債 券
中 国
香 港
インドネシア
韓 国
マレーシア
フィリピン
シンガポール
タ イ
ドイツ
日 本
英 国
米 国
株 式
銀行借入
金 額
GDP比
金 額
GDP比
412.4
44.6
56.0
380.9
82.7
21.9
57.6
47.3
1,743.9
6,748.0
1,064.0
16,272.6
33.3
27.4
32.3
82.5
86.9
28.4
63.8
37.4
87.6
169.0
68.3
155.8
463.1
463.1
30.1
215.7
122.9
18.2
101.6
45.4
686.0
2,069.3
1,800.7
11,009.8
37.4
284.1
17.4
46.7
129.1
23.6
112.5
35.9
34.5
51.8
115.6
105.4
出所:Asian Development Bank, Harmonization of Bond Market Rules
and Regulations in Selected APEC Economies
4
JBIC TODAY AUGUST 2005
金 額
2,073.3
677.9
114.4
608.6
135.0
46.0
209.6
136.8
3,859.3
6,685.9
5,001.4
6,979.5
GDP比
167.6
415.9
66.0
131.9
141.8
59.7
232.2
108.2
193.9
167.5
321.2
66.8
FOCUS
アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)への対応
ABMI
アジアの高い民間貯蓄をアジアの経済発展に必要な中長期の資金ニーズ
に結びつけるため、アジア域内の債券市場を育成するもの。
多様な通貨・期間の債券発行
⇒厚み/流動性のある市場
<具体的方策>
<国際協力銀行の対応>
1.アジア各国のソブリン債の発行
2.政府系金融機関の域内債券発行
−調達資金の域内への融資
3.域内民間企業の債券発行
4.資産担保証券市場の創設
1.ソブリン債(サムライ債・域内発行)への保証
2.現地通貨建てでの債券の発行・融資
(タイ・バーツ債、中国・人民元債等)
3.現地日系企業への保証(タイTIS)
4.債券担保証券への保証(韓国CBO)
<環境整備>
1.保証の活用 (共同保証機構の設立に向けた取組みを含む)
2.域内格付育成
3.域内情報フィードバック
4.決済システム強化
5.技術支援ー阻害要因の特定・解消
信用力不足
情報開示・規制
情報の非対象性
ベーシック・システム
法制度・会計制度
等の課題解決に向けて
いやすい、流動性の高い債券市場を育成すること
に調印したタイの日系現地企業が発行したバーツ
にあります。
建て社債への保証供与です。
JBICは、このような日本政府の方針に沿って、
アジア各国に進出している日系現地企業は、為替
ABMIの実現に向けて、保証機能をはじめとする国
リスクの回避のために現地通貨建てで事業資金を調
際金融等業務の持つ多様なツールを駆使してアジア
達したいというニーズをもっていますが、現地の債
諸国政府をはじめとする関係者との協議を重ねる
券市場が未発達なために資金調達手段が限られてい
等、積極的に取り組んできました。そして、2004年
ました。比較的債券市場が整備されたタイにおいて
度には債券(社債、仕組み債)に対する保証の供与
もバーツ建て社債の発行は難しく、信用力や知名度
を実現し、また、現地通貨建て債券の発行、現地通
の高い日本企業でも円滑な債券発行が困難と見られ
貨建てでの融資などを具体化しつつあります。
ていたため、JBICの保証機能による補完を行うこと
で債券発行を支援したものです。
続く12月には、韓国の中小企業が発行する円建て
動き出したJBICの債券保証業務
社債を担保とする債券担保証券に対して、JBICは韓
国中小企業銀行と協調して保証を供与しています。
JBICはABMIの取組みで主体的な役割を担ってい
ますが、その支援第1号となったのが、2004年6月
今後も、アジア域内において引き続き積極的に
支援に取り組む考えです。
JBIC TODAY AUGUST 2005
5
アジアにおける金融協力
―アジア債券市場育成と、日本企業のビジネスチャンス創造―
事例 1
タイ/日系現地企業のバーツ建債券への保証供与
現地日系企業が発行する
現地通貨建て社債に対する保証制度 現地での製造・販売事業を行うために
必要な長期資金需要
2004年6月、三菱商事株式会社といすゞ自動車株式
会社の共同出資によるタイ現地法人「Tri Petch Isuzu
Sales Co., Ltd」(TIS)が発行する35億バーツ(約
日系現地法人
100億円)の社債において、三菱商事が保証する分に
対して、JBICが再保証を供与しました。調達した資金
は現地でのピックアップトラックの製造・販売に必要な
(発行体)
日本の法人
長期資金に充てられました。
再保証(ケース②)
その後、この社債発行が成功裏に行われた経験をて
こにして、TISでは2回目のバーツ建て社債を自力で発
保証
調達
発行
(日本の親会社や民間金融機関)
再保証
(ケース①)
(本件)
国際協力銀行
直接保証
(ケース③)
行し、現地通貨による事業資金の調達を軌道に載せて
現地通貨建債券
償還
購入
います。
現地の投資家
(注)ケース③は発行体が本邦全額出資の場合のみ
“現地自己対応型”の日系企業への支援施策に期待します
Tri Petch Isuzu Sales Co., Ltd.
C.F.O.
小池 洋介 氏
私ども TISが社債発行の検討を開始したのは2003年後
Centreの年度会議では
半です。安定的かつ競争力ある資金調達には調達ソースの
Deal of the Year第2位
多様化が不可欠であると考え直接金融市場への参入を検討
という高い評価も頂くこと
したものです。当時のタイ債券市場は、質・量ともに未成
ができました。2005年6
熟な感は否めませんでしたが、歴史的な低金利・高流動性
月の第2回起債は、JBICの
という市場環境下、現地企業が低利・多額の資金調達を目
保証無しで実施しました
指し積極的に債券発行を行った結果、市場規模が拡大し、 が、募集額の3倍もの応募
参入の機会が到来しつつあると考えていました。
を受けるなど、優良プレーヤーとしての地位を確立しつつあ
社債発行に際しては、在タイ日系企業として、また、日
ると体感しています。また、起債のエージェントは2回とも
系企業が最大シェアを占める自動車産業において初の起債
地場金融機関を起用しましたが、グローバル化の流れにあわ
であったため、格付の取得(AAA)や市場流動性の提供な
せ間接金融主体の業務内容から多角化・特色化を図っている
ど質の高い社債とし、将来にわたっての優良プレーヤーの
彼らは、引き続き重要な連携先だと認識しています。タイ資
参入として認知を受けるべく、市場関係者との信頼関係構
本市場は、まだまだ小規模な買手市場です。タイ政府の積極
築及び理解獲得に注力しました。2004年6月の初起債は、 施策はもとより、海外、特に日本の投資家による積極購入が
6
JBICにご支援頂いた結果、スムーズな参入を果たすことが
市場育成に向けての大きな起爆剤になると期待しています。
でき、非常に感謝しています。JBIC保証機能の初適用、タ
日系企業の海外活動は日本からの海外直接投資から、現
イ日系企業での初起債、アジア各国政府が提唱している
地での自己対応型に変化しています。JBICには、現地日系
「アジア債券市場育成イニシアティブ」に基づく社債等、先
企業の信用力や資産担保等に依拠した新しい支援方法をご
進性・話題性もあり、金利上昇不可避という難しい局面で
検討いただき、引き続き現地日系企業を支援いただければ
したが、募集額を上回る応募を得て、Thai Bond Deal
と思います。
JBIC TODAY AUGUST 2005
FOCUS
現地通貨建てJBIC債券の発行を検討
事例 2
韓国/債券担保証券への保証業務
JBICでは、保証供与に続く新たな展開として、
2004年12月、JBICは、韓国の中小企業46社が発行
する円建て社債を原資産とする総額77億円の債券担保証
券(汎アジア・ボンド)に対して、韓国中小企業銀行
(IBK)と協調して保証を供与しました。
現地通貨建て債券(タイ・バーツ建て、中国・人
民元建て)の発行を予定しています。
タイでは、国内市場向けに自動車、電気製品な
どを製造販売する日系企業の資金ニーズが拡大し
韓国の中小企業が発行した社債を担保とする証券を組
ています。2004年5月にタイ政府が非居住者(外国
成し、それを優先債および劣後債に分割。この優先債に
政府・外国政府系金融機関)の債券発行ガイドラ
IBKとJBICが保証を供与した債券を債券担保証券とし
インを策定したことを受けて、JBICではバーツ建
てシンガポール市場で発行(シンガポール証券取引所に
て債券発行の準備を進めています。2005年7月には
上場)し、日本やアジアの投資家に販売しました。この
タイ財務省からJBICによるバーツ建て債券発行に
取組みは、日本、韓国、シンガポールというクロスボー
ついての承認がなされました。今後は、マーケッ
ダーでの債券担保証券発行という新たな形態による債券
ト環境などを踏まえつつ、債券発行に向けて具体
発行の実現を可能とし、アジア域内の資本市場育成に貢
的な手続きを進めていく予定です。
献するものです。
また、中国においても、2005年3月に中国政府が
日本の金融機関のリーダーシップが期待されている
野村ホールディングス株式会社 グローバル・フィクスト・インカム担当執行役 柏木 茂介 氏
ABMIは、域内の資本市場の整備・発展を促し、経済を安
アジア債券市場育成には、法制面整備、アジア諸国内の機
定させ、継続的な産業成長と円滑な資金循環に寄与する意
関投資家の育成、リテール投資家層の取り込み、海外投資家
義ある取組みです。アジアにおいて、日本を含むアジア諸
の呼び込み等の課題もありますが、弊社としては、各国の資
国、欧米諸国からの投資資金が流入する資本市場が整備さ
本市場の整備度合いに応じ、必要な金融技術支援を野村総合
れ、資金需要の旺盛なアジア諸国の企業の資金調達機会が
研究所とともに行い、一定レベルに達した国々の中で具体的
拡大することを期待しています。
な事例を積み上げていきたいと考えています。また、アジ
特に、アジア諸国では、中小企業金融をどのように安定
ア・ボンド・ファンド2(ABF2)に積極的に参画し、日本
させるかということに関心が高く、熱心な研究活動や実践
の機関投資家、個人投資家の資金をアジア諸国に融通するこ
的取組みがなされており、その分野で知見のある日本の金
と、さらには日本および欧米諸国で培った証券化等の金融ノ
融機関のリーダーシップが求められています。
ウハウの紹介にも力を入れていきたいと考えています。
現状では、現地通貨の資金調達先は現地金融機関に限ら
アジア諸国において、日本の金融機関に対する期待は、日
れており、それ以外では為替変動リスクを伴うハードカレ
本国内で感じる以上に大きいと実感しています。JBICには
ンシーでの資金調達になりますが、日系企業の活発なアジ
日本を代表する公的金融機関としてアジア諸国の経済発展
ア諸国進出に伴い、市場を通じての機動的な現地通貨建て
策、日系企業の事業展開
資金調達のニーズも高まっています。
支援策などを引き続きリ
JBICはABMIの取組みとして、現地通貨建て債券への保
ードしていただくことを
証、現地通貨建て債券起債、債券担保証券への保証などに
期待していますし、我々
取り組んでおられますが、民間で分担すべき部分を熟慮し、 も精一杯協力させていた
民間主導の資本市場育成に主眼を置いている点が評価でき
ます。
だこうと考えています。
2004年12月の韓国/債券担保証券の
保証の調印式
JBIC TODAY AUGUST 2005
7
FOCUS
アジアにおける金融協力
―アジア債券市場育成と、日本企業のビジネスチャンス創造―
国際開発機関向けに、非居住者の人民元建て債券
そうした意味をふまえて、アジア債券市場育成に
発行ルールを公表したことを受けて認可取得の準
は国際開発機関も注目しており、アジア開発銀行は
備を進めています。
タイ、インド、マレーシアで現地通貨建て債券を発行
しています。また、世界銀行の姉妹機関の国際金融
公社(IFC)もマレーシアでリンギット建て債券を発
債券市場育成と日本企業のビジネスの
拡大に向けて
行しています。
JBICは、ABMI提唱国の政府系金融機関として、
今後も国際金融等業務の機能を活用して、現地通貨
アジア債券市場の育成は、アジア地域の経済発展
建て債券発行、現地通貨建てでの融資、債券の保証
と金融システムの安定化に寄与し、現地の日系企業
供与などを通じて民業補完を行い、アジア債券市場
に資するだけにとどまりません。グローバル経済に
の育成とともに、現地の日系企業の現地通貨建て借
おけるアジア各国の存在感が大きく高まり、日本経
入れニーズに幅広く対応して、日本企業のビジネス
済との関わりがいっそう緊密になりつつあるいま、 チャンス拡大に貢献していくことにしています。
アジア地域の安定化は、世界ならびに日本にとって
きわめて重要なテーマといえます。
ABMIとタイ債券市場の持続的な発展に向けて
JBICのさらなる支援に期待しています
タイ財務省公的債務管理局 局長 パンニー・サタヴァロドム 氏
タイにおける債券市場は著しい発展を遂げつつあります。 者がタイ国債や政府機関債券等を保有する場合、源泉徴収税
発行済み国内債券の残高は、1997年の5,460億バーツか
ら2005年6月末にはGDPの42.8%に相当する3兆80億
市場インフラ整備では、決済システム、情報開示、電子入
バーツにまで拡大しました。この増加は、主に国債発行に
札、電子取引及び信用格付けなどのあらゆるシステムが改善
よるものです。
されています。また、アジアの他の国々と「信用格付けの標
国債の増発は、発行市場だけでなく、流通市場や市場イン
準化」に向けた議論を行っています。決済システムでも、年
フラの整備・発展に寄与しています。さらに、タイ財務省が
内に債券/社債の保管機関を集中させることによって、他の
企業の債券発行を促進する政策を進めてきたことで、市場の
国々との決済システムを連動させる準備を進めています。
流動性も高まりました。2004年末の一日平均取引額は、
1995年の約60倍の120億バーツにまで増加しています。
ABMIに向けた取組みとして、タイ政府の重点政策は、次の
2点です。
また、ABMI推進とタイの債券市場の持続的な発展に向けて、
タイ政府は外国の債券発行者の拡大など、タイにおける債券
の多様化を計画しています。2006年中には多国籍企業に対
してバーツ建て債券の発行を許可する予定です。この計画は
1 発行体・発行債券の多様化による債券市場の厚み拡大
日本企業にとっても非常に良い機会となり、いわゆる“二重
2 アジア債券市場育成の実現に向けた決済システムなどの
のミスマッチ”の解消にもつながることでしょう。
債券市場のインフラ整備
債券市場の厚み拡大に向けて、国内債券市場発展計画を策
JBICは、昨年、タイの日系企業が発行するバーツ建て債券
の再保証を実施する等、ABMIのもとで意義ある貢献を行って
定していますが、その中で外国の発行体や投資家のシェアを
おり、今後もこうしたJBICの保証供与の広がりに期待します。
拡大し、今後10年間のうちに残高を5%以上にすることを目
また、タイ財務省はJBICによるタイでのバーツ建て債券発行
標の一つに掲げています。この実現に向けて、タイ財務省は
を先日承認するに至りました。債券市場育成に向けたJBICの
国際機関と外国政府系金融機関によるバーツ建て債券発行を
さらなる支援に期待しています。
(訳)
承認しています。また、外国からの投資奨励のため、非居住
8
15%の控除が受けられるようにしています。
JBIC TODAY AUGUST 2005
OPINION
「点」から「面」に広げる努力とともに、
インフラづくり、中小企業支援に
アジア債券市場の活用を
慶應義塾大学経済学部教授
吉野 直行
氏
アジア債券市場の育成に向けて、各国でソブリン債が
米国では銀行が住宅ローン債権の証券化に成功してい
発行され、ABMIに沿ったJBICの取組みが始まり、具体
ますが、中小企業の貸出し債権の証券化も可能だと思い
的な動きが出てきたことを歓迎します。アジアの貯蓄を
ます。中小企業の成長性やリスクを定量化することで同
域内の企業の投資資金に回していくために、このような
様に証券化できると考えます。実際に、日本では中小企
「点」の活動を、さらに「面」に広げていく努力に期待し
業のさまざまなクレジットリスクデータを蓄積すること
ています。
でリスク分析や成長予測が可能になってきています。
面に広げるには、例えば、インフラ整備への活用が有
中小企業支援では日本の金融機関に豊富なノウハウが
力なスキームとなると思います。米国の特定財源債(レ
あり、このアプローチはアジアの国々にも応用できると
ベニューボンド)のアイデアを応用して、有料高速道路
思います。例えば、競争力のある地場産業への貸出し債
や港湾、発電所などの建設のための資金を債券発行によ
権をファンド化すれば、投資家にとって魅力ある商品に
り調達し、収益を利払いと償還財源に充てるもので、ア
なり、開発途上国の地域経済の活性化と貧困削減などの
ジアでは二桁の利回りが期待できる優良案件を見出せる
支援にもつながることになると思います。
と思います。収益性のよい計画を立てないと資金が集ま
JBICは、開発途上国のインフラづくりでこれまでも豊
らず、成果をあげないと次につながらないので、事業の
富な実績があり、その経験とノウハウを活かして債券市
健全性と透明性も確保できます。また、利回りが低い案
場育成と組み合わせた新しいインフラづくりでも貢献を
件でも、必要なインフラであれば、例えば半分を税金に
期待しています。また、中小企業支援では、JBICは韓国
よる公的資金の注入とすることで、投資家に対してプロ
の中小企業46社が発行した社債を原資とする債券担保証
ジェクトの魅力を高めることができます。
券の保証を供与しており、今後とも日本の経済や社会に
日本において私は公共投資の無駄を減らすために、こ
のレベニューボンドを提唱していますが、昨今日本の
ODA(政府開発援助)の財源に制約があるなかで、アジ
アでも関心を寄せる国が出てきています。
貢献する各国の中小企業の資金調達に役立つような支援
をJBICに期待したいです。
アジア債券市場育成の取組みは始まったばかりです。私
は、基本的に債券市場育成は民間金融機関主体で行うべき
もうひとつの重要な視点は、アジアで圧倒的多数を占
だと考えていますが、導入段階では日本の政府系金融機関
める中小企業に資金がまわる仕組みづくりです。タイや
としてのJBICの信用力が大きな支えとなると思います。そ
マレーシアなどでアジア債券市場について話す機会があ
の後、債券市場が軌道に乗り、呼び水としての役割を果た
りますが、必ずといっていいほど「大企業は株式や社債
した後にはJBICは民間金融機関に引き継いで、その成功事
を発行して自力で資金調達ができるが、中小企業は債券
例を他の国・地域で新たに展開していくことにすれば、い
市場から資金が得られるのか」という質問を受けます。
っそう「面」の効果をもたらすことになると思います。
「中小企業は経営者の資質・財務内容などの評価・分析が
JBICが有するこれまでのさまざまな取組みと合わせて、
難しいため、債券市場になじまない」という欧米金融機
アジア債券市場の健全な育成と、インフラ整備、中小企
関の声もあります。しかし、工夫次第で債券市場にのせ
業の資金調達の支援に向けて、JBICのこれからの活動に
ることは可能だと思います。
期待します。(談)
JBIC TODAY AUGUST 2005
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名古屋市
愛知機器株式会社
自動車用トランスミッション部品の
グッドカンパニー
―国内外で新たなファクトリーづくりを展開―
名古屋市中川区尾頭橋に本社を構える愛知機器株式会社は、自動車部品の専門メーカーです。
トランスミッション
(変速機)のギヤー、シャフトの切削加工で高度な技術を有し、
四輪・二輪メーカー、自動車部品メーカーに幅広く製品を供給しています。
同社は、1998年に米国、2002年にインドネシアに生産拠点を設置。
2005年に入って、インドネシア工場の増強とともに、国内でも最新鋭工場の建設を進め、
“世界最適生産”を強化しています。
高精密加工技術・低コスト、
ジャスト・イン・タイムの一貫生産
愛知機器は、来年で創立50周年を迎えます。同社は、
1956年に愛知機械工業(後に日産系)の直系部品メーカ
ーとして設立され、オート三輪や農業用発動機の部品、日
本初の軽自動車「コニー360」の部品などを担当しました。
1958年から本田技研工業(ホンダ)の二輪車の部品も手
がけ、その後、四輪車に進出したホンダをサポートしてき
ました。
同社が生産するのは、エンジン部品やトランスミッショ
ンのギヤー、シャフトなど、自動車の走行性、安全性、快
適性、経済性に直結するきわめて重要な部品です。最近は
オートマチック車が主流になっていますが、その精緻な機
構を支えているのもこれら部品です。特に、切削加工分野
では業界最高水準の技術を持ち、静粛性に優れたノイズレ
ス高精密歯車などが高く評価され、ホンダ車、日産車はも
とより、トヨタ車にも製品が搭載されています。
愛知機器の特色は、創業以来、治工具から金型製作、専
用機械の設計製作を自社で行い、材料の切断から熱間鍛造
(高温加熱による成形)、ボンデ処理(成形しやすいように
潤滑被膜をつける)、冷間鍛造成形(常温での成形)、孔あ
け、歯切り、研磨(表面仕上げ)、検査に至る一貫生産を行
っていることにあります。
本田 弘之 社長
10
JBIC TODAY AUGUST 2005
「日本の自動車の品質は
世界一です。私たちは、お
客様の満足が得られる製品
を廉価に生産し、社会に貢
献することを喜びとしてい
ます。高精密加工技術・低
コスト、ジャスト・イン・
タイムの実現のため、
CAD/CAM(コンピュー 精密機械が並ぶ生産ライン
ターによる自動設計/生産)
のもと製品開発と生産技術開発の一体化を図り、ラインの
自動化・無人化、多種少量生産に応えるフレキシブル生産
などの先進システムに力を注いできました」と本田弘之社
長は語ります。
ユーザーの全面支援を得て、米国進出
近年は、ホンダへの製品供給が急拡大しており、四輪、
二輪だけでなく、農業機械、発電機などの汎用製品向けに
も幅広く製品供給しています。そうしたホンダの要請を受
けて、1998年に米国・ケンタッキー州に初の現地生産法
人「リッチモンド・オート・パーツ・テクノロジー・イン
コーポレーテッド(RAPT)
」を設立しました。
「社長に就任して最初のプロジェクトでした。当社の基
本は“需要のあるところで生産する”ことです。自動車部
品の海外生産は、労働集約型の組立工程や輸送コストがか
さむ大型品から始まり、設備投資が大きく高度な生産技術
が必要な精密部品は最終段階になります。当社は後から出
ていったので、先行進出企業の経験を参考にさせていただ
き、長年の信頼関係によってホンダから『ヒト、モノ、カ
ネ』にわたって全面支援をいただきました。資金調達面で
も政府系金融機関である国際協力銀行(JBIC、当時の日本
輸出入銀行)の支援をいただいたことが信用面で大きかっ
たですね」と本田社長。
米国では、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)
の需要が好調で、RAPTではSUVに搭載するV6エンジン
用のオートマチックトランスミッション部品などの一貫生
産を行っています。「長期的には、ミッション全体のアセン
ブリメーカーを目指したいと思っています」(本田社長)
O
U
本
代 表
設 資 本
売 上
従 業
生 産
T
L
I
N
E
社
者
立
金
高
員
品
〒454-0012 名古屋市中川区尾頭橋3-4-14 電話(052)321-9471(代)
本田 弘之 代表取締役社長
1956年1月
4億9,995万円(2005年3月末現在)
284億円(2005年3月期連結決算)
国内840名、海外470名
自動車・オートバイのエンジン・ミッション部品、汎用エンジン部品、
諸機械・器具およびその部品
工
場 本社、安城(愛知県)、関(岐阜県)など
海外進出先 米国、インドネシア
U R L http://www.aichikiki.co.jp
主要製品
高精密加工技術及び
高品質生産の原点となる国内を強化
インドネシア工場
インドネシア進出で3極体制を確立
米国に続いて、2002年にはインドネシアに現地生産法
人「アイチキキ・オートパーツ・インドネシア(AAI)」を
設立し、2003年下半期には二輪用のギヤー、シャフト、
2004年初めには四輪用ギヤーの生産を開始しました。
「経済成長著しいインドネシアの二輪マーケットは年
450万台、数年後には600万台が見込まれます。そこで
50%以上のシェアをもつホンダから現地調達率を高めるた
めに進出要請をいただき、将来性を見込んで現地生産に踏
み切りました。二輪車向けが主体ですからRAPTの投資額
の半分ですみましたが、設立手続きが複雑で神経を使いま
した。アジア通貨危機後の懸念もあっただけに、ドル資金
の調達も可能なJBICの支援が心強かったですね。設立後2
年半が経過しましたが、現地社員は勤勉で生産実績も順調
に拡大し、今年度には単年度黒字化できる見通しであり、
今後、第2期工事として鍛造の現地化を実施していきます」
と本田社長は総括します。
「AAIは、インドネシアホンダの注文をこなすのに全力
をあげています。いずれは、日本、米国、インドネシアの
3極で“世界最適生産”を推進し、インドネシアからアジ
ア、南米、ヨーロッパに製品供給していくことも視野に入
れています。さらに、中国、インドなどでの現地生産も必
要になるでしょうから、それに備えてグループとして技術、
人材、財務面の体力をつけていきたいと考えています」と
本田社長は今後を語ります。
「当社が最も大切に考えているのは、地域社会と共存し、
地元の人々に受け入れられる経営です。米国進出決定時には、
ケンタッキー州知事が当社関工場を視察され、RAPTの創立
5周年式典ではリッチモンド市長もお越しになりました。
インドネシアにおいても、AAIから毎年10人を日本に受
入れ3年研修を行っています。品質重視の企業理念の理解
と多能化を目標に研鑽を積んでいますが、来年、第一期生
がAAIに戻ります。彼らが次の時代のリーダーとなり、ひ
いては微力ながらインドネシアのものづくりの発展につな
がることを願っています」(本田社長)
「もうひとつの重要なテーマが、国内の基盤整備です。
海外拠点での高品質な生産は、日本のものづくりが原点で
す。国内の足元がしっかりしていないと世界最適生産も機
能しませんし、リスク分散の観点からも国内のものづくり
の進化は欠かせません。
そこで、2006年完成を目標に、愛知県東浦町に新本社
工場の建設を進めています。フレキシブル生産、無人化ラ
インなど蓄積してきた生産技術を集大成し、技能の練磨と
その伝承、発信のかなめとなるマザー工場を目指します。
また、環境、安全性を重視し、自動車会社の開発部門と密
接なコラボレーションを図る拠点として、世界の自動車メ
ーカーから一流のグローバルサプライヤーとして信頼され
選ばれる企業にふさわしい工場にしたいと考えています」
と本田社長は、新工場に託す夢を語っています。
米国工場
新本社工場(完成予想図)
“夢のあるリーディングファクトリー”
2006年完成予定の新本社工場
創業50周年を迎える2006年の完成を目標に、愛知県知
多半島の東浦町で新本社工場の建設が進んでいます。
新工場の建設基本コンセプトは、「地域社会と共存共栄し
た国際競争力の優れた都市型生産工場の構築」です。斬新で
スマートなデザインの工場は、先進的な生産システムの導入
だけでなく、最上階に屋上庭園とセットになった見晴らしの
いい食堂を配置するなど働く人の快適性を最優先していま
す。太陽光発電と風力発電で工場の照明をまかない、雨水を
中水として有効利用するなど環境面でもきめ細かな配慮がは
らわれ、周辺の工場からも大きな注目を集めています。
JBIC TODAY AUGUST 2005
11
T O P I C S
インフラ事業におけるHIV/エイズ対策
1
−第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議に参加−
世界中でミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けた取組みが進められています。HIV/エイ
ズ対策は、MDGsの目標のうちの一つとされており、世界が一致して取り組む課題とされています。
国際協力銀行(JBIC)でも、
「海外経済協力業務実施方針」の重点分野の一つである「地球規模問
題・平和構築への支援」の中で、エイズなどの感染症対策に積極的に取り組むことを定めています。
2005年7月、神戸市で第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議が開かれました。1990年
より開催されている国際会議ですが、日本での開催は今回が初となりました。エイズに関する研
究者、国際機関、政府およびNGOなど約4,500名が参加し、新しい情報や効果的な対策が共有
されました。
JBICはサテライト・ミーティングの主催やブースの出展を行い、エイズへの取組みを紹介しま
した。
建設現場でのエイズ対策
JBIC主催のサテライト・ミーティングは、7月2日、「メコン
応答がありました。また、会場からは、「JBICの実施するインフ
ラ事業におけるエイズ対策について、その取組みを支持する、今
後積極的に推進すべきだ」との意見が寄せられました。
地域の建設労働者へのエイズ対策−JBICインフラ事業における
「エイズ対策の実施には、建設事業に関わる企業の理解と協力
企業の社会的責任(CSR)−」と題して開かれました。大規模
が不可欠であり、企業がエイズ対策を支援することが企業の社会
インフラ事業では、経済の発展とともに人の流れの活性化が見込
的責任につながる」ことが参加者間で共有され、ミーティングは
まれます。JBICでは、HIVをはじめとした感染症が拡大するこ
閉会しました。
とのないよう、開発途上国の事業実施機関、NGOおよび保健当
この日の議論を踏まえ、7月5日、JBIC本店(東京)で、大規
局等と協力して、建設労働者と周辺住民に対しエイズ対策を働き
模インフラ整備事業におけるエイズ対策に関するワークショップ
かけています。具体的には、仲間同士によるHIV予防知識の教育
が、国際家族計画連盟(IPPF)との共催で開催されました。
活動、性感染症予防に効果的なコンドームの使用促進、エイズ対
策実施能力強化などを実施しています。
サテライト・ミーティングでは、パネリストとして、円借款事
JBICの取組み
業で支援しているカンボジアの港湾整備やタイ・ラオス国境の橋
梁建設の現場でエイズ対策を行っている関係者や日本企業の関係
JBICでは、HIV/エイズ対策を推進するために、円借款事業の
者を招きました。パネリストは、政府、NGO、企業および国際
標準入札書類(土木工事)に「HIV/エイズ予防条項」を盛り込み、
機関といった各々の立場から、エイズ対策の現場の状況を報告し
エイズ感染率の高い国での大規模工事において、エイズ対策のた
ました。
めのプログラム等を実施するよう奨励しています。
パネリストからは、「運輸、保健などの分野や、政府、NGOと
また、案件形成時に、事業実施機関に対してエイズ対策の必要
いった立場の違いをこえた横断的な取組みが重要である」と指摘
性を啓発し、相手国のエイズ対策計画や実施体制を尊重しながら、
されました。また、そのために、「各組織のコミットメントやリ
その実施を支援していきます。そのための、組織内の整備などに
ーダーシップが必要である」、さらに、
「連携(パートナーシップ)
も取り組んでいきます。
による実施が重要である」ことが確認されました。
日本企業の現場担当者からは、「我々は建設のプロではあるが、
エイズ対策やNGOとの連携についてはどうしたらよいか最初は
全く分からなかった。資金面も心配した。関係者との連携により、
良い成果が得られた」と率直な感想が述べられました。
出展ブース
企業の社会的責任として
発表後、多くの質問やコメントが寄せられ、活発な質疑応答が
行われました。例えば、「エイズ対策に関して、日本企業の本社
の理解は得られたか」との会場からの質問に対して、日本企業か
らは「現場と本社の意識共有は今後の課題であり、現場の関係団
体によるサポートおよび企業本社の理解促進が不可欠である」と
12
JBIC TODAY AUGUST 2005
現場の報告に熱視線
サテライト・ミーティング
2
大阪で「フィリピン懇談会」を開催
−現地政府と民間企業との意見交換の場を提供−
国際協力銀行(JBIC)は、6月7日に大阪において、6回目と
資環境改善に関して直接意見交換を行う機会は少ないので、非
なる「フィリピン懇談会」を開催しました。フィリピンにすでに
常によい機会であった。JBICのネットワークを通じて、今後も
進出している、あるいは進出予定の日本企業の方々と、フィリピ
引き続きこのような会を開催して欲しい」といった要望を頂き
ンの外国投資受入窓口である貿易産業省(DTI)サントス長官お
ました。
よびフィリピン経済区庁(PEZA)デリマ長官一行との意見交換
の場を提供しました。
懇談会では、まずDTIおよびPEZAからフィリピン投資環境の
状況や投資インセンティブなどについて説明がなされました。続
JBICは今後もこのような懇談会の開催を通じて、日本企業と
現地政府機関とのネットワーク構築の場を提供すると共に、意見
交換を通じて明らかになった現地の諸問題の解決に向け、今後も
現地政府との意見交換を継続していきます。
いて、フィリピンへ進出している日本企業の方々から、フィリピ
ンでの事業実施における税制や土地所有制度など投資環境にかか
る諸問題ついて、適切な解決調整および支援要請があり、フィリ
ピン政府機関側から、提起された諸問題に対して真摯な対応を約
束するなど、投資環境改善に向けた前向きな発言がありました。
左から)貿易産業省サントス長官、
進出を検討している企業の中には中堅・中小企業も含まれてお
3
り、「現在具体的な進出を検討しており、この会における情報は
フィリピン経済区デリマ長官、在
非常に参考になった。今後も進出に関するアドバイスや支援をお
大阪・神戸フィリピン共和国総領
願いしたい」、「民間企業にとって、相手国の政府機関の方々と投
事館ヴィリヤマイヨ−ル総領事
アフリカ諸国の自助努力を支援
−ウガンダ、ケニア、タンザニアに政策提言書(Blue Book)を提出−
効果的かつ現実的な行動計画を提示
せることなどが言及されています。また、2005年4月に開催さ
れたアジア・アフリカ首脳会議における「新たなアジア・アフリ
2005年6月、国際協力銀行(JBIC)および国連貿易開発会議
(UNCTAD)は、ウガンダ政府、ケニア政府およびタンザニア政
府に対して、投資環境整備に係る政策提言書(通称:Blue Book)
カ戦略的パートナーシップに関する宣言」の中でも、アジア・ア
フリカ間の投資促進が行動計画として謳われています。
JBICは、こうした背景のもと投資金融、円借款、知的支援等の
を提出しました。この提言書は、日本政府の対アフリカ支援策に
機能を総合的に活用し、アフリカ諸国が進める投資促進・環境整
基づいてJBICが、アフリカ諸国の投資環境整備に積極的に取り組
備を支援します。Blue Bookでは、ウガンダ、ケニア、タンザニ
んでいるUNCTADと共同で取りまとめたものです。上記3カ国へ
アの各国ごとに①比較優位産業の育成戦略の策定、②中小企業と
の日本企業などの直接投資を促進することにより、
「各国の経済成
のビジネス・リンケージの構築、③新規投資家へのワンストッ
長を通じた貧困削減の実現」、「2005年1月に形成された『東ア
プ・サービスの提供など、投資環境整備にとって重要で、かつ1
フリカ関税同盟』に基づく地域統合の加速」などを目的としてい
年以内に実施可能な行動計画を提示しました。また、3カ国が加
ます。また、そのために必要な効果的かつ現実的な行動計画を提
盟する東アフリカ関税同盟(EAC)による地域統合を推進する観
示しています。
点から、①域内の二重課税防止条約締結、②域内のビジネス・ビ
ザ共通化の2項目を3カ国共通の行動計画として提言しています
Blue Bookに加え、2005年6月のG8サミット財務大臣会合
日本の対アフリカ支援策として
時に「アフリカ開発銀行グループと連携した民間セクター開発の
ための共同イニシアティブ(Enhanced Private Sector
2003年9月に開催された第3回アフリカ開発会議(TICADⅢ)
Assistance for Africa)
」が日本政府より発表されたことを受け、
において、アフリカ開発のための新パートナーシップ支援を目的
JBICはアフリカ諸国の民間部門育成、経済インフラの整備等のた
とする日本の対アフリカ支援策が表明されました。その中で「経
めに、アフリカ開発銀行グループと協調して向こう5年間で10億
済成長を通じた貧困削減」は、「人間中心の開発」、「平和の定着」
ドル上限の円借款を供与する予定です。
とともに大きな柱の一つとされ、日本からの貿易・投資を促進さ
JBIC TODAY AUGUST 2005
13
国際金融第1部は、
アジア・大洋州地域を対象とする出融資・保証業務等を担当しています。金融機関の業務において
も環境・社会配慮や持続的発展の重要性への認識が高まっている現在、JBICは、国連環境計画(UNEP)と連携す
る金融機関の国際的ネットワークに参加し、活動の場を広げています。
FIのアウトリーチグループでは
Qまず国際金融第1部の業務についてお
お聞かせください。
QUNEP
JBICがチェアを務めているそうですね。
アジア・大洋州地域を対象とする輸出金融、事業開発等
金融、出資、保証業務等を担当しています。最近では、イ
2005年1月には、UNEP FIの下にアジア太平洋タスクフォー
ンドネシアにおける発電所設備改修等のための輸出クレジ
スが正式に発足しました。UNEP FIは、メンバーの主体的な
ットライン、中国での炭鉱メタンガス回収を通じた発電・都
活動を特徴としていますが、これまでアジア太平洋地域にお
市ガス供給プロジェクトや石炭ガス化プロジェクトへの事
ける活動は、他の地域に比べあまり活発でなく、メンバーも
業開発等金融、ESCO・再生可能エネルギー事業向け投資
日本、オーストラリア、フィリピンなどに偏っています。そ
ファンドへの出資、アジア債券市場育成イニシアティブに
こでJBICは、UNEP FI事務局に働きかけ、アジア太平洋タスク
基づく韓国の債券担保証券への保証に加え、タイ、マレー
フォース内に、メンバー間の連携拡充や新たなメンバーの参
シアの中小企業支援にも取り組んでいます。
加を促すことを目的とするアウトリーチグループを設け、そ
また、JBICは、地球規模問題への取組みの一環として、
2004年5月に国連環境計画(UNEP)の「金融団体による環
のチェアに選出されました。
JBICは、アジア地域の主要拠点に駐在員事務所を持ち、
境及び持続可能な発展に関する国連環境計画宣言」に署名
日々の業務で各国政府、金融機関、民間企業、NGOなどとも
し、UNEPファイナンスイニシアティブ(UNEP FI)のメンバー
接点があります。こうした強みを活かして、環境・社会配慮、
として活動しています。
地球温暖化問題への取組みを呼びかけているところです。ア
ウトリーチグループのメンバーであるフィリピンやオースト
ラリアの金融機関、パートナーであるインドネシア環境省、
FIについて詳しく教えてくださ
QUNEP
詳しく教えてください。
アジア太平洋開発金融機関協会(ADFIAP)などとは、毎月の
電話会議で相談しつつ、アジア太平洋地域でのUNEP FIの活
動拡充に向けて協力を進めています。
UNEP FIは、金融機関の環境・社会配慮や持続的発展といっ
た課題への取組みの推進を目的として1991年に発足した、世界
中の金融機関とUNEPからなる国際的なパートナーシップです。
現在、先進国のみならず、開発途上国からも含め、約200の金
Qサステイナビリティ実現の連携強化へ向
連携強化へ向けて
融機関がメンバーとなっています。日本からは、JBICを含む16
の金融機関がメンバーとなっています。
UNEP FIは、発足当初から、金融機関の環境・社会問題への
2005年6月には、再生可能エネルギーへのファイナンスをテ
ーマとした香港での会議、クリーン開発メカニズム(CDM)
取組みについて情報交換しつつ連携を模索してきました。時代
の推進をテーマとしたジャカルタでのワークショップに参加
の変化とともに、持続可能性(サステイナビリティ)をキーワ
しました。このような機会を利用して、金融機関に限らず、
ードとして、金融業務における環境・社会配慮に始まり、企業
プロジェクトを検討している民間企業や開発途上国政府の
の社会的責任(CSR)
、地球温暖化問題への取組みにまで活動の
方々に対して、JBICの経験とノウハウを紹介すると共に、
幅を広げています。現在、地球温暖化、社会的責任投資、持続
UNEP FIのもとで関係
可能性マネジメント・報告などのテーマに取り組む3つのワー
者間の緊密な連携を
キンググループの他、アフリカ、アジア太平洋、中東欧、ラテ
実現するためのネット
ンアメリカ、北米の5地域毎にタスクフォースが設けられてい
ワークづくりを進めて
ます。
いきたいと思います。
ジャカルタでのワークショップ
14
JBIC TODAY AUGUST 2005
貿易・海外投資移動相談室 国際協力銀行(JBIC)では、貿易・海外投資の手続きや、長期資金の調達方法などに関するご相談に応じています。
(予約制/お申込みは各お問い合わせ先へ)
海外投融資に関する移動相談室 地区
開催場所
開催日
お問い合わせ先
札 幌
仙 台
札幌商工会議所
ジェトロ仙台 貿易情報センター
札幌商工会議所 総務部国際課
ジェトロ仙台 貿易情報センター
Tel:011-231-1077
Tel:022-223-7484
太田(群馬)
宇都宮
東 京
柏(千葉)
名古屋
太田商工会議所
栃木県産業会館
東京商工会議所
東葛テクノプラザ
名古屋商工会議所
9/16 原則2カ月毎に開催
9/9
3,6,9,12月の第2木曜日
10/19 原則2カ月毎
随時
毎月第2水曜日
随時
毎月第1・3・4木曜日
太田商工会議所 総務部
栃木県商工労働観光部 産業政策課
東京商工会議所 中小企業相談センター
国際協力銀行 中堅・中小企業支援室
名古屋商工会議所 国際部
随時
国際協力銀行 中堅・中小企業支援室
Tel:0276-45-2121
Tel:028-623-3165
Tel:03-3283-7767
Tel:03-5218-3579
Tel:052-223-5721
Tel:052-223-5721
春日井(愛知)春日井商工会議所
移動相談室は予約制となっています。各お問い合わせ先へお申し込みの上、お越しください。
講演会・セミナー
開催予定日
お問い合わせ先
9/30
国際協力銀行 大阪支店総務課
国連貿易開発会議共催 2005 UNCTAD世界投資報告発表会
Tel:06-6346-4770
JBICでは各都市で自治体、商工会議所等が主催している講演会・セミナーに、講師を派遣しています。
講演会・セミナーの具体的なテーマや日程については、随時ご紹介していますので、ご関心をお持ちの方は
中堅・中小企業支援室(電話:03-5218-3579)までお問い合わせください。
お知らせ・刊 行 資 料
各種刊行物をご希望の方は、広報室(電話:03-5218-3101)までご連絡ください。
ホームページの「意見BOX」からもお申し込みいただけます。
「日本とインド 新たな可能性に向けて」
開発金融研究所報 第25号
JBICは、インド向け円借款についてより多
くの方に理解いただくために、リーフレット
「日本とインド 新たな可能性に向けて」を発
行しました。このリーフレットは、JBICが円
借款を通じて実施するインドへの経済協力の
概要を簡潔に説明したものです。
<特集:東アジアのインフラ整備>
●国際協力銀行・アジア開発銀行・世界銀行共同調査「東ア
ジアのインフラ整備に向けた新たな枠組み」に係るバック
グラウンドペーパー
●インフラ利用者としての日系企業のインフラ・ニーズ
他
「中堅・中小企業を応援しています!-中堅・中小企
業支援事例集-」
<特集:インドネシア>
●アジア危機後の経済改革とインドネシア上場企業の資金調
達構造
●インドネシアの銀行再建−銀行統合と効率性の分析
他
中堅・中小企業の皆様が海外進出される際に
活用いただけるJBICの支援メニューの紹介と、
これまで本誌の「わが社の海外展開」で掲載
してきた記事を再編集したパンフレットを発
行しました。海外進出をご検討される際の参
考資料としてご利用ください。
広報誌JB
IC TODAY臨
時増刊
中堅・中小
企業を応
中堅・中小企業
支援事例
集
援していま
す
■開発途上国のガバナンスと経済成長
■FTAによる金融サービスと資本の自由化
■インフラ・プロジェクトを通じた感染症対策への取り組み
上記の資料はJBICホームページでもご覧いただけます。また
配布も行っています。
「投資環境資料」
JBICでは、海外進出を検討する際の参考資料として投資環境
資料を発行しています。
このたび、以下資料を刊行いたしました。本資料は、日系企
業が中国で事業をする際によく起きる紛争にはどんなものがあ
り、その背景にはどんなことが考えられるか、主な紛争解決手
段として裁判と仲裁の制度はどうなっているか、紛争が起きる
のを極力予防する手段は何か、を記載したものです。
・
「中国での事業におけるリーガル・リスク・マネージメント」(要約版)
・
「中国での事業におけるリーガル・リスク・マネージメントに関する
調査報告」(全文)
この他既刊の投資環境シリーズについても、当行ホームページ
でご案内しています。
JBICホームページアドレス
http://www.jbic.go.jp
JBIC TODAY 2003年6月号について
JBIC TODAY 2003年6月号掲載の「わが社の海外展開」の記事にお
いて、
「岩出101株」の効果、作用に関する記述が一部ありました。
本記事は医薬品的な効果効能を標榜することを目的に作成したもの
ではございませんので、その旨ご理解賜りたく存じます。
JBIC TODAY AUGUST 2005
15
モスクワ
モスクワの休日―豊かな自然、好景気の光と影
週末をのんびり過ごす「ダーチャ」
急激に押し寄せる時代の波
モスクワ駐在員として赴任し、はや2年が経とうとしていま
一方で、周囲には、昔ながらのダーチャ街とは異次元の近代
す。担当のカザフスタンやアゼルバイジャンといった他の旧ソ
的な3階建、4階建の建物が、日本の新興住宅地さながらにそ
連諸国を駆け回る日々においては現地の方々の暮らしを垣間見
びえたち始めています。オイルブームやそれに伴う好景気にの
る機会があったのですが、お膝元のロシアの一般的、伝統的な
って成功したニューリッチのダーチャだそうです。我々からみ
生活を経験することは、残念ながらありませんでした。
るとまさにため息ものの建物ですが、友人いわく「この程度の
そんな折、ロシア人の友人の「ダーチャ」に立ち寄る機会
がありました。
「ダーチャ」というのは日本語にすると「別荘」
建物であれば、たいした人たちのものではない」とのこと。
モスクワの喧騒を離れ、ロシア式の質素ではあるが贅沢な休
ですが、大都会モスクワの社会主義時代に建設された画一的
日をかいまみる一方、郊外においても時代の波は着実、いや急
な狭いアパート暮らしをする庶民が週末に畑仕事などをして
激に押し寄せていることを痛感した一日でした。
のんびり過ごす郊外の質素な一軒家で、お風呂も電気もない
のが一般的であるといわれています。
喧騒から一時間足らずの軽井沢
友人のダーチャは華美ではないけれども、100年以上前の
木々の骨格がしっかり保存されている、クラシックなそれは
すてきな家でした。手入れされた広大な庭は陽光に照らされ
てまばゆいばかりであり、大都市モスクワの喧騒から一時間
足らずでこれほどまでに落ち着いた、自然豊かな生活が存在
するのかと感嘆しました。
ダ−チャの庭
周囲は日本でいうと軽井沢のような、昔からの由緒あるダ
ーチャ街だそうで、爽やかそのもの。近所付き合いも大層深
いようです。ご好意に甘えて隣の老夫婦のダーチャも拝見さ
せて頂きました。おじいさんが退役軍人である彼らは、夏の
間はずっとそこで過ごしているそうで、野菜をつくったり、
花を愛でたり、あるいは周囲のガラクタを拾ってきてはそれ
でオブジェをつくったりして過ごしているそうです。昨今の
プーチン政権による福祉改革(年金生活者に対する恩典廃止)
の影響を彼らも受けており、社会主義時代には安泰が約束さ
れていた老後の生活は楽ではないらしく、育てた花などを売
って家計の足しにしているようです。
ダーチャ
表 紙 タイ・バーン・パイン離宮
JBIC TODAY(ジェービックトゥデイ)2005年8月号
2005年8月発行 通巻第15号
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