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BOPビジネスと環境技術
BOPビジネスと環境技術 日本の技術が役に立つために 2013/9/29 EVF勉強会 2013/9/26 佐藤寛(アジア経済研究所) Ⓒsatokan 2013 1 1.BOPビジネスとは • 開発途上国における年間所得が3,000ドル 以下の低所得者層をターゲットとして、 • 彼らが欲する製品・サービスを購入可能な 価格帯で提供する • と同時に、彼らの抱えている社会課題解決 に資する • BOP層は世界人口の約72%を占める。経済 規模は5兆ドル(?2007年の推計)。 • 「貧困者搾取」「貧困ビジネス」との違いは? 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 2 2 BOPビジネスとは?(経産省資料より) 【世界の所得ピラミッド】 TOP 1.75億人 ★世界人口の約72%に相当する約40億 人が年間所得3000ドル未満の収入 で生活しており、その層がBOP(Base of Pyramid)層と位置づけられる。 ★BOP層の市場規模は5兆ドルに上る とされ、欧米のグローバル企業の中 には、これまで対象としていなかった BOP層をターゲットに据え、ビジネス と貧困削減の両立を目指す事例が出 年間所得3,000ドル(※) てきている。また、米国USAIDや (※)2002年PPPUNDP等、援助機関によるBOPビジネ スへの支援が行われている。 年間所得20,000ドル(※) MOP 14億人 12.5兆ドル BOP 約40億人 (世界人口の約72%) 市場規模5兆ドル (日本の実質国内総生産に相当) ★日本では、このようなビジネスへの参 入や、これに対する援助機関の支援 はほとんど行われていないが、今後 の日本企業の海外展開の一つの形 となり得るものと考えられる。 Ⓒsatokan 2013 出展:「THE NEXT 4 BILLION」(2007), (World Resource Institute, International Finance Corporation) 、「ソーシャルイノベーションの経営戦略」(野村総合研究所) 2013/9/29 3 を基に経済産業省作成 3 今後の日本企業のビジネス戦略 • 日本国内市場・・・・・・・飽和市場、人口減 • 先進国市場・・・・・・・・なじみのある市場 • 新興国高級市場(BRICs)→TOP・・新興 市場 • 途上国新興中間層→MOP・・新規参入 • 途上国低所得者層 →BOP・・将来市場 • 途上国最貧層→(BOP500)・・・難易度は 高い ボリューム・ゾーン 2013/9/29 BOPビジネスゾーン Ⓒsatokan 2013 4 4 BOPブームの火付け役 プラハラード 2005 The Fortune at the Bottom Of the Pyramid -Eradicating Poverty Through Profits IFC/ WRI 2007 Next 4 Bilion 『次なる40億人』 Market Size and Business Strategy at the Base Of the Pyramid 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 5 5 日本の経済界の注目開始 2009= BOPビジネス元年 2013/9/29 東洋経済 2010/1/9 日経ビジネス 2009/12/21-28 Ⓒsatokan 2013 6 2.BOPビジネスへの誘い • High-end(TOP) 安定市場・高収益高付加価値 市場・人口減 • Middle Zone(MOP)新興市場・標準化製品市場 • BOP (Base of the Pyramid) 将来市場・薄利多 売 ビジネスを通じた貧困削減 Poverty Reduction through Consumpti on Base of the Pyramid less than $3000 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 BOPビジネス四つの誤解 ①BOP層は「購買力が」ある/ない ②BOP層向け商品はローテク/ハイテク ③BOPビジネスはCSRの延長上/別物 ④企業とNGOは志向性が違う/協力できる 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 8 常識は間違っていた! • 貧困層には金が無い→実はある インフォーマルセクターからの収入 • BOP層に固有のニーズはない→実はBOP 層にも大きなニーズがあるが、アクセスが 無いために購買行動に結びついていない • 貧困層は商品・サービスに金を払わない →実は必要なら払う用意がある • BOPペナルティーが消費を妨げているのみ 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 9 9 3.BOPペナルティーとは何か • 貧困層の生活コストは安くない →実は不必要に高いコストを払わされている • 先進国企業から「市場」と見なされていない ので流通網・サービス網から外れている →期限切れ、粗悪品しか流れてこない →悪徳行商人にだまされやすい • 「質の悪いものを」「金持ちよりも高い値段で 」「さんざん苦労して」買う羽目になる • 日本の山村や都市貧民街でもかつてそうだ った。 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 10 10 BOPペナルティーをなくせば良い • BOPペナルティーを解消すれば、眠 っていた潜在ニーズが、購買行動に 結びつく • そのためにはさまざまな工夫が必要 =BOPビジネス・ イノベーション= 例)小袋戦略味の素小袋 2.4gで0.5ペソ(1.2円) 日雇い賃金200ペソ位 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 11 11 BOPペナルティー解消の先行例 • インド・ユニリーバの「シャクティアマ」:村 の貧しい女性がトイレタリー雑貨の販売員 として活躍 • バングラデシュのテレフォンレディー マイクロファイナンスで携帯電話購入→貸 し電話業で収入向上。村人の利便性向上。 • バングラデシュのグラミン・ダノン=グラミン レディーによるヨーグルト販売+マイクロ ファイナンスで乳牛飼育→ダノンに納入 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 12 12 小袋戦略の隆盛 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 13 消費による貧困削減 同じ商品が、より安く、より容易に入手できる ようになれば生活は安定する 同じ価格でもよりよい品質・より長持ちする商 品が入手できれば生活改善につながる これまで入手困難だった商品が入手可能、 利用可能になれば生活水準は向上する これらのビジネスは、高品質で低廉な製品が 投資を伴って投入されることから、貧困削減 にも一定の効果を持ち得るものとして捉えら れている 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 14 14 4.ローテクとハイテク • 先端技術の活用がBOPビジネスを開 拓する • プリペイドカード方式⇔現金払い • バングラデシュのバス運賃(BRTC) • 出稼ぎ送金 • 伝統蚊帳とLLIN(Long-Lasting Insecticide Nets) 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 15 プリペイド・カード(ウガンダ) 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 ⒸAll photos by Satokan 16 オリセット・ネット(マラリア対策) 住友化学(タンザニア) http://www.sumitomo-chem.co.jp/csr/africa/index.html 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 17 ソーラー・ランタン サンヨー・パナソニック(ウガンダ) 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 18 ドリップ灌漑 ヤマハ (セネガル) http://www.yamaha-motor.co.jp/global/area-marketing/csr/water-pump/ 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 19 水浄化 日本ポリグル(ソマリア) http://www.poly-glu.com/eng/index.html 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 20 5.ビジネスと開発の相互接近 ①開発にビジネスの視点を! ②ビジネスに社会的責任/倫理性を! MDGsへの参加呼びかけ 開発 (援助) 利他的 倫理的 ①効率性が必要 ②倫理性が必要 ビジネス (貿易) 利己的 効率的 CSR、リスクマネジメント 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 21 開発の側の事情 • ミレニアム開発目標(貧困削減)の目標 年である2015年が近づいている。 • 伝統的な援助手法が過去50年の努力に もかかわらず貧困削減に成功していない という認識。その理由は • 「ビジネス」の視点、効率性の視点を欠 いているからである(ex.イースタリー) • 譲許的な資源移転(チャリティーがその 代表)は貧困層の援助依存を高め、自立 ・持続性をもたらすことに失敗(ex.モヨ) 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 22 開発にビジネスの視点を! • 「開発にビジネスの視点を取り入れるこ と」の重要性が認識され、さまざまな実 践が始まっている • グラミン銀行は開発にビジネスの手法 を持ち込んだ先駆例 • フェアトレード、BOPビジネスなどはこ の実践例と考えられる。 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 23 ビジネスの側の事情 • ビジネスのよって立つ自由経済への不 信感、危機感の高まり(2009金融危機) • 無軌道な資本主義、株主至上主義に対 しての批判の目を向ける消費者・世論。 • 原丈人「公益資本主義」 • ノボグラッツ「寛大な資本主義」 • ユヌスモデルの「社会的企業」 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 24 6.エントリーとしてのCSR • BOPビジネスは収益があってこそ持続する • 目的は収益であって慈善(社会課題の一方 的解決)ではない • 援助に懐疑的な企業も取り組める • CSRに二の足を踏む企業も巻き込める • 新興国・途上国における将来のボリューム ゾーン獲得戦略の布石としての取り組み 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 25 CSRとビジネス ~「社会性」の理解が鍵~ • • • • • • 2013/9/29 「社会課題解決型ビジネス」の意味 WIN-WINは簡単ではない ムハマド・ユヌスの「社会的ビジネス」 グラミン・ユニクロ/グラミン・ダノン グラミン・雪国まいたけ 「消費者」としてのみターゲットにする( BOPビジネスver.1)から、「生産者」「 流通者」「販売者」として巻き込む(BOP ビジネスver.2) Ⓒsatokan 2013 26 経営者の理解が鍵 • 上層部のゴーサインが得られない • 企業内での位置づけ=副業的なCSR部 門と本業の企画・営業部門との分離 • BOPビジネスはCSR部門でしか話題に ならない →経営層の理解を得るための環境整備 が必要(例:経産省、JICA、ジェトロの補 助金スキームの活用、ビジネスコンテスト での入賞によるマスコミ露出) 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 27 社会的プレッシャー不足 • 国内の消費者団体、人権団体からの突 き上げ圧力が少ない • 日本企業は国際NGOのターゲットに なっていない(例・ネスレ、ナイキ) • 日本の消費者の間に途上国の社会問 題についての関心喚起の契機がない →これからのグローバル化で、日本企業 にも批判リスクが高まることに対する用意 が必要 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 28 情報不足 ●未知の市場である(社員は誰も行ったことがな い)。製品開発といわれても市場ニーズが想像 できない ●駐在してくれる社内人材がいない →公的機関の支援 BOP層の生活実態、ニーズに関する情報提供 JICA、ジェトロの現地情報提供体制の整備 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 29 7.BOPビジネストラップ① • 「こんな商品があるので、参入に適した 国を教えてほしい」 • プロダクトアウトか、マーケットインか • 現地の実情にあった製品開発、自前の 技術の「現地化」なしには浸透しない 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 30 BOPビジネストラップ② • 「社会課題解決」は「売り文句」にならない • 「無煙ストーブ」の社会性は「健康リスクの 低減」だが、目に見える効果ではない。 • 「煙が目にしみない」の方がキャッチコピー としてはわかりやすい • 戦後日本の「改良かまど」も同様 「婦人の地位向上」より「燃料費節約」 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 31 BOPビジネストラップ③ • 流通・販売ルートが見つからない • 既存の地元ビジネスマンは、BOP層を 商圏と見ていない • NGOとの協働が可能だが、NGOとの 付き合い方がわからない 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 32 BOP商品の販売方法 (最も広義の捉え方の場合) ③プロジェクト調達 企 業 国際機関 TOP層 (ハイエンド商品) ② 協 同 開 発 中間層 (標準消費財) NGO ②協同販売 2013/9/29 BOP層(低所得 者向け消費財) Ⓒsatokan 2013 配 布 ・ 補 助 金 つ き 販 売 33 33 BOPビジネストラップ④ • 技術的に最適でも、社会的に受け入れ られるとは限らない • バヌアツのソーラーパネル 夜電灯がつけば、こんなメリットが・・・・ • トイレの屋根をトタンにしたけれど・・・・ 2013/9/29 Ⓒsatokan 2013 34