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物理的支援環境

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物理的支援環境
Ⅱ 研究の実際
1 環境づくりの実践事例
物理的支援環境
① 教材・教具,支援ツールの効果的な配置
始点と終点が明確になるよう,また,動きのつながりが分かるように動線を整理したり,実態や
ねらいに合わせて教具を配置する位置や間隔を工夫したりする。
目標物との距離
■ 実態に合わせて目標物までの距離を設定
する。
■ 動きのつながりを考えて,器具を配置す
る。
■ カラーコーンや籠を設置し,始点と終点を
明確に示す。
■ 全体に指示が通りやすいように,ステージ
上にスクリーンやホワイトボードを設置す
る。
■ マット(色を意識して)やホワイトボード
の配置を整理して設置する。
■ 次の活動にすぐ移れるように,器具の位置
を近付けて設置する。
② 児童生徒の発達段階や障害特性に合った支援ツールの活用
活動内容の理解を助けるために,目標物や立ち位置を工夫したり,BGM,カード等を使用した
りする。また,動きを引き出すために,教具を効果的に使用したり,達成感が味わえるようなシー
トを活用したりする。
■ マットの色分けで技の違いを示す。
(マット運動)
■ 段ボールのハードルを設置する。
■ 手を付く位置に手形を置く。
(マット運動)
物理的支援環境
② 児童生徒の発達段階や障害特性に合った支援ツールの活用
■ 個人用の技カードを提示し,発表する技を
自分で決める。
(マット運動)
■ 高さの異なる跳び箱を設置する。手を付
く位置を,色の違いで示す。
(跳び箱)
■
跳ぶ位置,着地位置にケンステップを置
く。ケンステップ間にゴムひもを設置する。
(両足跳び)
■
カラーのフラフープで目標物を囲む。
(ボッチャ)
■ スタートを,音声の「よーいドン」に合わ
せて,赤い旗を振る。
(短距離走)
■ カラーコーンを設置し,活動場所を示す。
(水泳)
■ 握りやすいもの,音の出るもの等,児童生
徒の好きなものを提示する。
■ 前回り,丸太転がりで,スタート地点の
マットに傾斜を付ける。(マット運動)
■ 自分の取り組む器具が分かるように,顔写
真を貼る。
(サーキット運動)
■ BGMの終了とともに活動を終了させる。
人的支援環境
③ 教師の役割
【MTとSTの役割,連携】
MTは全体指示,STは各グループの指導及び個別指導を行う。
STは展開に応じて役割を柔軟に切り替える。
【立ち位置,動線】
動きの切り替えや移動のポイントに立つ。目標となる位置に立つ。
【効果的な支援の仕方】
動きを引き出すための直接支援や言葉掛けを,児童生徒の実態に合わせて行う。
受け手
送り手
■ 教師は目標となる位置に立ち,児童生徒の
動線の手助けになる。
■ MTは事前にグループのリーダーを集めて
準備や片付け,体操,練習内容を知らせ,S
Tはリーダーの動きの補助を行う。
■ 手を支える支援を行うときには,寄りかか
ることができないように配慮し,児童生徒自
身の体重移動による歩行を大切にする。
■ 児童生徒に付かず場に付き,送り手と受け手
に分かれる。
■ 意欲を喚起する言葉掛けや,動きをフィー
ドバックする言葉掛けを行う。
④ 児童生徒の役割
活動への満足感や達成感,意欲へとつながるように,役割を担うことで児童生徒の活躍の場を増
やしたり,ペアやグループでの活動を行ったり,活動場所を工夫したりする。
■ タンブリンを持ってゴールに立ち,友達の目
標となる。
■ 友達の活動が見える位置で順番を待つ。
■ ペア・グループ活動を設定する。
■ リーダーが中心となって,グループを運営す
る。
■ 見本となる児童生徒から順番に行う。
■ 準備や片付けを友達と協力して行う。
■ 良い動きをまねできるように,活動の途中で
発表を行う。
2 授業実践
高等部第2学年単一Ⅲ類型の取組
保健体育科 いろいろな運動(水泳)
「ダンススイミング(集団演技)
」
ア 単元について
運動経験が少なく,積極的に運動しない生徒が多いため体力が全体的に低く,特に巧緻性と全身持
久力に課題があったため,生徒の興味・関心の高い水泳とリズムを組み合わせ,ダンススイミングに
取り組んだ。本単元では,水中での多様な動きや歩行,長く泳ぐ運動に取り組むことで,体幹筋肉や
多様な動きを身に付けさせ,巧緻性と全身持久力の発達を目指した。また,バディやグループで行う
技に取り組み,
友達を意識して動いたり集団の中で役割や責任を果たしたりすることを狙った。
まず,
泳力測定を実施し,個々の泳力の把握と課題設定をした。そして,泳力段階別のグルーピングを行い,
それぞれの能力に応じた技能について,ダンススイミングの動きのポイントを押さえてグループ練習
をした。それを踏まえ,全体でダンススイミングの集団演技を行った。
イ 成果
・ 筋肉をコントロールしながらスムーズな動きができるようになった。
・ 段々と音楽についていく持久力が身に付き,最後は全員で泳ぎ切ることができた。
・ 生徒が動きや技のポイントを理解して練習をすることで,「動きの質」が向上した。
・ 「みんなでダンススイミングを泳ぎ切る」ことを目標に意欲的に取り組むことができた。
授業づくりシート
学部・学年等
付けたい力
単元名
高等部
○
○
単一Ⅲ類型
いろいろな運動(水泳)「ダンススイミング(集団演技)」
単元の目標
技
○
第2学年
筋肉をコントロールして,身体を上手に使いこなすことができる巧緻性
一定時間,継続して運動することができる全身持久力
水中での運動の楽
しさや喜びを味わい,
その基本的な技能を身
に付けることができる
ようにする。
思 水泳の技術の名称
○
や行い方,運動観察の
方法などを理解し,自
己の課題に応じた運動
の取り組み方を考える
ことができるようにす
る。
態 水泳に自主的に取
○
り組むとともに,友達
と協力しながら自己の
責任を果たそうとする
ことや,バディシステ
ムを活用し,健康・安
全を確認することがで
きるようにする。
ねらい・学習活動
手立て(環境づくり)
1次
(第1次)
(ア) コースの延長線上のプールサイド ○
態 3色のカラーコ
・ バディシステムを活
に3色のカラーコーンや2色の洗濯
ーンを利用して測
用し,生徒同士で,
「潜
挟みを設置し,番号を付けて,演技の
定位置を分かりや
る」「けのび」「バタ
位置を分かりやすくする。けのびの目
すくしたことで,
足」「クロール」の泳
標地点にフープを置く。①
生徒が自主的に測
力測定を行う。
(イ) 「カデンス」や「フローティング」
定に取り組むこと
(第2次)
の動きを理解させるために図や写真
ができた。(ア)
・ グループごとに,そ
で見本の提示を行い先行モデリング ○
態 測定方法を図や
れぞれの能力に応じた
とする。タブレット型端末で演技を撮
ビデオで示したこ
技能についての動きの
影し,グループで確認する。②
とで正しい方法を
ポイントを練習する。 (ウ) バディのペアーをモデルとした学
理解し実施するこ
・ 練習後に振り返りを
習をしたり,グループで演技の支援を
とができた。(イ)
して,課題と目標を確
したりすることで役割と責任を与え ○
態 バディでお互い
認し次時の練習を考え
る。④
に測定し合うこと
る。
(エ) 教師が目標なる地点や動きの切り
で自分の役割を果
(第3次)
替えポイントとなる地点に立ち,教師
たしながら友達と
・ リズムに合わせて集
の立ち位置自体が支援になるように
協力し,測定する
団演技の演目「フロー
する。③
ことができた。(ウ)
ティング」「カデンス」 (オ) MTが全体をプールサイドから見 ○
態 バディシステム
「スイムマス」「潜る」
て全体把握を行い,指導のポイントを
を活用し2人1組
「イルカジャンプ」
「け
指示する。STは泳力段階別グループ
にしたことで健
のびクロール・バタ足」
に付き,プール内で実際に生徒に指導
康・安全を確認す
「鳥居」の練習に取り
する。MTとSTとが,効果的に連携
ることができた。
組む。
して指導する。③
(ウ)
評価(環境づくりに視点を当てて)
2次
3次
思 「カデンス」や「フロ ○
技 「けのび」の目標地
○
ーティング」を図や写真
点 に リ ング を構 え た
で提示をすることで,正
ことで,ストリームラ
しい技術を理解するこ
イ ン を 保持 する こ と
とができた。(イ)
ができた。(ア)
思 タブレット型端末で ○
技 タ ブレ ット 型端末
○
撮影し,泳ぎ方を確認さ
で撮影し,自分の課題
せることで,運動観察の
を 考 え 練習 させ る こ
方法を理解し,自分の課
と で 友 達に 合わ せ て
題に気付くことができ
ゆ っ く り円 を描 い て
た。(イ)
泳いだり,友達を意識
思
バディのペアでお互
し て タ イミ ング を 合
○
いのフォームを観察い
わ せ た りす るこ と が
合うことで課題を考え
できた。(イ)
ることができた。(ウ)
技 グ ルー プで 掛け声
○
思 「スイムマス」で教師
や 合 図 をす るこ と で
○
が円状に立ち目印とな
曲 の タ イミ ング に 合
ることで,円を描いて泳
わ せ て 演技 する こ と
ぐことができた。(エ)
ができた。(ウ)
思
STが泳力段階別グ
技
○
○ M Tの 全体 指導の
ループに付き,個々の課
内 容 を ST が必 要 に
題に応じた練習を行う
応 じ て 個別 に指 導 や
ことで,主体的に練習の
支援することで,全員
仕方を考えることがで
が ダ ン スス イミ ン グ
きた。(オ)
の 動 き を理 解し て 泳
ぐことができた。(オ)
<単元全体の振り返り>
○ 身体を傾けて泳ぐスイムマスや,潜って飛び出すカデンスなどのいろいろな動きの技を練習したことで,筋肉をコントロールしながらスムーズな動きができるようになった。
○ 昨年度より1分間長い5分20秒の曲だったので,初めは,途中で疲れて休んだり,音楽に合わせて動くことができなかったりしたが,練習を重ねるうちに,音楽についていく
体力が身に付き,最後は全員で泳ぎ切ることができた。
○ タブレット型端末の映像を見て課題に気付くことができた。振り返りでの自己評価や友達からの評価を通して,具体的にどうすれば友達と合わせられるか,演技が成功するかを
話し合い,考えながら練習するようになり,「動きの質」が向上した。
○ 友達を意識して泳いだり,友達と合わせたりすることで,みんなでダンススイミングを成功させたいと思うようになり,意欲的・自主的に取り組むことができた。いろいろな動
きや体力が身に付いただけではなく,友達とのかかわりが深まった。水泳の楽しさを知り,運動をもっとやりたいと思うようになったという点で,集団演技は適していた。
3 環境づくりと児童生徒の変容
環境づくりに視点を当てた授業づくりを行った結果,児童生徒の姿に下記のような変容が見られた。
【小学部第2学年ウルトラグループ】
○ 付けたい力
○ 単元名(指導内容)
はう・歩く・走るなどの基本的な動き
基本的な運動(短距離走)
「15m走」
環境づくり(第1段階)
場の設定を固定する。
(スタートか
らゴール,待機までの動きのつなが
りを考えた配置位置。
)
目標物をステップアップさせる。
(鈴の付いたうちわを持った教師が
目標となる。→うちわの写真をパネ
ルに貼る。
)
環境づくり(第2段階)
場の設定を引き続き,固定する。
待機場所をお互いの動きが観察で
きる場所にする。
目標物としてうちわの写真,足元に
ドレミマット,キャタピラマットを使
用し、徐々に支援を減らし,うちわの
写真のみにする。
児童の姿
目標物や走るコースが分かり,スタート位置に自分か
ら立ったり,順番を待ったりすることができるように
なった。
初めは真っ直ぐ走ることが難しく,
途中で左右に反れてしまうことがあっ
たが,7mの距離を一人で真っ直ぐ
走り切ることができるようになった。
児童の姿
自分からスタート位置に立つことがで
き,ゴールに向かって走る,待機場所に
戻るという一連の流れができるように
なった。
体育館で,一人で25mを
真っ直ぐ走り切ることができ
るようになった。
環境づくり(第3段階)
体育館からグラウンドやひかり
の広場に場所を変えても,目標物や
場の設定を体育館時と同様にする。
徐々に支援を減らし,目標物をシ
ンボル支柱のみにする。
距離を変えて,2コース設定し、
コースの選択ができるようにする。
児童の姿
グラウンドに場が変わったことで,
初めは目標物を意識できるように言
葉掛けをしたり,並走したりする支援
が必要となったが,環境の変化を受け
入れやすかった。
コースを選択できるようにしたこ
とで,距離の違いを楽しみながら走行
できるようになり,グラウンドでも距
離を伸ばし,25メートルを走りきる
ことができるようになった。
○ 取組のまとめ
本グループでは,児童が一人でゴールを目指して走ることができるように,様々な環境づ
くりを行った。取組当初はスタート位置に立つことやゴールまで向かって行くことが難しい
実態の児童であったが,始点・終点や動きのつながりが分かりやすい場の設定を行い,互い
の動きが見える配置や,教師の役割分担を明確にしたことで,スタートからゴールまで一人
で向かえるようになった。また,場の設定を体育館やグラウンド等でも同様にしたことで,
場所が変わっても同じように自分から動き出すことができた。
初めは,教師を目標として走っ
ていたが,徐々に支援ツールへと移行し,その支援ツールも減らしていっても,児童が一人
で目標まで走り切ることができるようになった。
【小学部第6学年ウルトラグループ】
○ 付けたい力
○ 単元名(指導内容)
体幹を保持する力や下肢の動き
自分の体の動きを理解し,活動に取り組む力
基本的な運動(ハードル走)
「サーキットで GO!」
環境づくり(第1段階)
児童の姿
直線上にコースを設置し,折り返
し点に手形のタッチ板を設置する。
ゆっくりと走る場面が多い。
ハードルの跳び越しや折り返した
教師からの言葉掛けや並走が
後の走行の際に,教師が言葉掛けを
ないと,ゆっくりと上向きに跳ね
したり,並走したりする。
るように走行する。
環境づくり(第2段階)
絵カードで動きを提示する。
高さ,幅の異なる三角ハードルを
設置する。
1周ごとにボールやシールを1個
ずつ溜め,活動量を視覚的に示す。
児童の姿
高く遠くへ跳ぶ意識が出て
きて,足裏全体での踏み切りや
前傾姿勢での跳び越しができ
た。
毎時間10周のサーキット
を取り組めるようになった。
環境づくり(第3段階)
ハードル間にケンステップを配
置する。
タブレットを使った動きの振り
返りを行う。
児童の姿
「123ジャンプ」のリ
ズムで,リズミカルにハー
ドルを跳び越せるように
なった。
児童が,常に動いている
流れをつくることができ,
待ち時間がほとんどなく
なった。
○ 取組のまとめ
本グループは,下肢や体幹を保持する力を向上させるために,ハードル走をメインとする
サーキット運動に取り組んだ。ハードルを直線上に配置し,手形を置き,児童が分かりやす
い支援環境の工夫を行なったが,取組当初は教師の言葉掛けがないと,活動に向かうことが
難しかった。ハードルの跳び越し方は,初めはゆっくりと上向きに跳ねるように跳び越して
いたが,継続して取り組むことで,環境づくりを見直し,運動量を示すシールやタブレット
での振り返り等,児童自身が分かる支援の工夫を行ったところ,前傾姿勢でリズミカルにハー
ドルを跳び越すことができるようになった。また,児童が視覚的に運動量を捉えられる工夫
を行ったことで,教師の言葉掛けがなくても,児童が常に動いている流れをつくることがで
きた。
【中学部第2・3学年のびのびグループ】
○ 付けたい力
○ 単元名(指導内容)
姿勢の変化に対応することができる力
体のバランスをとることができる動き
いろいろな運動(器械運動)
「マット・跳び箱・平均台をしよう」
環境づくり(第1段階)
手を付く位置に手形を置く。
手で体を支持し,重心移動の間隔を
つかむため,直接的な支援を行う。
教師が隣で同じ動きをやって見せ
る。
環境づくり(第2段階)
姿勢が低くなるようハードルを設
置する。
類似の動きを活動に取り入れる。
課題別グループで活動する。
各グループにMTとSTを配置し,
教師の役割を明確にする。
生徒の姿
教師の言葉掛けや直接的な支援により動くことが多い。
教師が体を支えることで,手で体を支持する感覚が身に
付いた。
生徒の姿
手を付く位置が分かり,手で体を支
持する感覚が身に付いた。
姿勢を低くして,手で体を前に移動
させることができるようになった。
目標の動きに近付けることができる
ようになった。
環境づくり(第3段階)
生徒の姿
跳び箱の前に低い跳び箱を設置
する。
マットの上に階段状に巧技台を
設置する。
恐怖心が減り,跳び箱を跳ぶ感覚が身に付き,低い跳
び箱がなくても跳ぶことができるようになった。
マットに座り込んでいた生徒が,腰を高くして前転を
することができるようになった。
○ 取組のまとめ
本グループは,姿勢の変化に対応する力や体のバランス力を向上させ
るために,器械運動に取り組んだ。取組当初は,生徒が各器具での動き
を理解できるように,教師が直接的支援を行ったり,示範を示したりす
る場面が多かった。
また,課題別グループに分かれて行うことで,各グループの生徒の課
題に合った支援の工夫ができるようになり,平均台を歩ける距離が伸び
たり,跳び箱を跳んだり,前転をしたりすることができるようになった。
視覚的な支援を行ったり,各グループの生徒の課題を教師間で共通認
識したりすることで,活動の流れがスムーズになり,運動量を確保する
ことができた。
【高等部第3学年単一Ⅰ類型】
○ 付けたい力
○ 単元名(指導内容)
はう・歩く・走るなどの基本的な動き
動きを持続する力
いろいろな運動(水泳)「バタ足,アクアビクス」
環境づくり(第1段階)
慣れ親しんだ曲をアクアビクスに
取り入れる。
教師の言葉掛けや指さしで活動場
所を示す。
生徒の姿
自分の立ち位置が理解できず,どこで踊ればよいの
か分からない。
曲のリズムに合わせて体を動かすことはできたが,
動きは小さい。
環境づくり(第2段階)
コースの始点・終点にカラーコーン
を設置する。
学級ごとに色の違うカラーコーン
を設置する。
水面をたたく動きや水中で足を上
げる動きを振り付けに用いる。
生徒の姿
自分の学級の位置が分か
り,自分から移動し,練習に
取り組むことができた。
大きな動きで体を動かす
ことができた。
環境づくり(第3段階)
教師が始点,中間,終点に立つ。
生徒自身が使用する補助具や練
習場所を選択する。
生徒の姿
教師を目指して,一人でバタ足
で進もうとすることができた。
バタ足で進める距離が伸びた。
自分で決めた場所や補助具を
使用して,頑張ろうと,積極的に
練習に取り組むことができた。
○ 取組のまとめ
本グループは,身体の各部位を動かし,運動に持続して取り組む力を付けるために,水泳(バ
タ足,アクアビクス)に取り組んだ。
単元の初めに,泳力テストを行い,生徒の実態を把握した上で授業の内容を組み立てた。取
組を通して,水中という活動位置が分かりにくい場所においても,色別のカラーコーンを用い
て生徒が分かる工夫を取り入れたり,道具や活動場所を選択できるようにしたりして,生徒が
主体的に練習に取り組めるように工夫を行った。教師の立ち
位置も“場に付く”ということを重点に置いて指導に当たっ
た。
取組を進める中で,生徒の活動への意欲が高まり,積極的
に練習に取り組む姿が見られた。また,少しずつバタ足で進
める距離も伸び,生徒が授業時間中続けて,体を動かすこと
ができるようになった。
環境づくりに視点を当て,
児童生徒の運動量の増加と動きの質の向上を目指した授業づくりを通して,
環境づくりを効果的に授業に取り入れるためには,児童生徒の理解に合わせた段階があることが分かっ
た。
(図9)第1段階は,教師の言葉掛けや示範等,教師が直接的支援を行う場面が見られる。それは,
児童生徒に支援ツールの使い方や場の設定を指さしや言葉掛けをしながら伝えることが必要となるか
らである。教師と一緒に活動し,支援環境の理解ができたことで、児童生徒自身が動き方を理解できる
のである。次に,児童生徒の実態に合わせて支援を工夫していくことで,動きの手掛かりを児童生徒自
身が見付け,自ら動き始めることができるようになる第2段階がある。第3段階では,引き出したい動
きに合わせた教具の工夫を行うことや,支援ツールを継続して使用すること,または徐々に支援を減ら
していくこと等,物理的支援環境を見直し,効果的に整理することが必要となる。人的支援環境も,教
師の直接的支援から,位置取りや役割を考え,教師が児童生徒の動きの手掛かりとなるような支援の整
理が必要となる。物理的支援環境及び人的支援環境を,児童生徒の実態や課題に合わせて効果的に整理
することが,運動量の増加や動きの質の向上という主体的に活動に取り組む姿へとつながり,更なる活
動への意欲へとつながっていくのである。
環境づくり(第1段階)
支援ツールを,教師の指差しや言葉
掛けとともに使用する。
教師の示範や直接的支援も必要。
児童生徒の姿 やってみたい
支援ツールの活用の仕方が分かり,動き方が理解でき
る。活動に興味がもてる。
環境づくり(第2段階)
児童生徒の実態に合わせて支援を
工夫する。
児童生徒の姿 やってみよう
動きの手掛かりを自分で見つけ,自ら動き始めるこ
とができる。
環境づくり(第3段階)
物理的支援環境及び人的支援環境
を,児童生徒の実態や課題に合わせて
効果的に整理する。
児童生徒の姿 もっとやりたい
運動量の増加や動きの質の向上という,主体的に活
動に取り組む姿や更なる活動への意欲の向上が見られ
る。
【図9 環境づくりと児童生徒の姿の変容】
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