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「見えにくさ」のある子どもの 学びを支えるハンドブック
「見えにくさ」のある子どもの 学びを支えるハンドブック 冊子の発行に当たって ~ eyeあいねっとに参加して ~ 千葉県こども病院 眼科部長 礒辺真理子 平成26年度に千葉県視覚障害教育ネットワーク推進連絡協議会、通称 eyeあいね っとに2回参加させていただきました。当院の現状や疾患など短い時間でしたが熱心 に聞いていただき質問もあり、また地域グループに分かれての討議なども行われ、参 加者の熱意を感じました。 このたび見え方のQ&A発行に当たり、一言述べさせていただきます。 毎日、こども病院では多くのお子さんの診療に当たっています。どんな疾患がある のか、治療はどうするか、一人一人について真剣に対応していますが、どうしても検 査が主体になり、患者さん自身にとってはまぶしかったり抑えられたりと楽しいこと ではありません。白衣に対する恐怖もあるでしょうし、また数か月に一度で外来はい つも混んでいるので、他のお子さんの泣き声なども聞こえます。特別な時間です。 一方、学校は平日の昼間長時間おなじ仲間と過ごす、いわば生活の場です。診察室 で「学校で困ることない?」と聞くとたいてい「大丈夫です」と答えが返りますが、 実際は黒板の字がよく見えない、近くでも時計の秒針や、㎜の目盛、画数の多い漢字 などで困っていたり、板書に時間がかかる、チョークの色分けでかえってみにくかっ たりなどがあるようです。また先天眼振の方では、揺れが少ないところで見ようと顔 を曲げるので、ふてくされている様にみられることもあります。 視覚障害者手帳を交付される視覚障害者はごくわずかで、視力と視野で条件が決め られています。両眼の使い方がうまくいかない、眼鏡をしても視力が出にくい、一部 の視野がかけているなど、見えにくさがある児童生徒はたくさんいます。近年は個人 情報保護と保護者の希望の重視で、かなりの障害があっても通常学級で学んでいる方 も増えています。毎日生徒に接している先生たちだからこそ異常に早く気付いたり、 拡大教科書、書見台、単眼鏡や卓上レンズ、また近年デジタル製品で進歩の著しい補 装具の使用などについても理解していただき、見えにくいこどもたちの学校生活をよ り良いものにしていけたらと思います。 eyeあいねっとは、現在は千葉聾学校で開催され、こども病院から近いので参加で きましたが、診療の都合で毎回の参加は難しいかもしれません。しかし、医療者とし ても学校での患者様の実際を知ることができ、大変有意義と思っています。貴重な意 見交換、情報の共有の場として継続していくことを願うとともに、この冊子で少しで も見えにくさを持つ子どもを理解して頂けると幸いです。 はじめに 平成27年度現在、千葉県で視覚障害教育を行う教育の場は、千葉県立千葉盲学校、松 戸市立中部小学校弱視特別支援学級の2箇所のみです。県内の見えにくい子どもたちの多 くが、通常の幼稚園・保育園、小学校、中学校、高等学校等で学んでいるのです。視覚障 害教育に関わるネットワークを緊密にし、知識や情報を共有し、子どもたちへの指導や支 援を充実させていくことは喫緊の課題といえます。 この課題を解決していくために発足したのが「千葉県視覚障害教育ネットワーク推進連 絡協議会」通称「eyeあいねっと」です。千葉県の見えにくい子どもたちの教育や療育、 医療に携わっている方々が集まり、視覚障害教育の推進を図るとともに、よりよい体制づ くりをめざしています。この冊子は、その「eyeあいねっと」の参加者で作りました。 「どのように見えているのだろうか?」「どのように接し、どのような教育をすればよ いのか?」等、見えにくい子どもたちに関わっている方々から寄せられる様々な疑問や悩 み、相談に応えられる冊子、私たちは、「見え方のQ&A」を作成することで、見えにく い子どもたちへの理解を深め、明日の指導や支援に生かしていただきたいと考えました。 作成にあたっては、初めて見えにくい子の担任になった方でも理解しやすいように、や さしい言葉で分かりやすい内容になるように心がけました。落としてはならない専門的な 要点はなるべくかみ砕いて入れるようにしました。また、監修を「eyeあいねっと」にも ご参加いただいている千葉県こども病院眼科部長の礒辺真理子先生にお願いし、ご尽力い ただきました。 この冊子を見えにくい子どもたちに関わっている多くの方々に読んでいただくことで、 「見えにくさ」のある子どもたちが知識や生活力を身に付け、生活の質を高め、充実した 人生を送っていく助けとなるよう、「eyeあいねっと」参加者全員で願って止みません。 「千葉県視覚障害教育ネットワーク推進連絡協議会(eyeあいねっと)」は、平成24年度に 発足しました。視覚障害教育に関する情報交換を行い、千葉県における視覚障害教育の推進・ 充実を図るとともに、よりよい体制づくりをめざしています。 平成26年度から年3回、「千葉県聴覚障害教育ネットワーク推進連絡協議会(うさぎねっ と)」(平成23年度から千葉県立千葉聾学校で実施)と協力して実施しています。 ~~「見えにくさ」のある子どもの学びを支えるハンドブック ~~ 「見え方のQ&A」 冊子の発行に当たって はじめに 目 次 1 Q Q Q Q 2 i ii iii 視覚障害に関して 1 2 3 4 見えにくいって、どういうことでしょうか? 視機能の障害に対する基本的な配慮事項には、どのようなことがありますか? 主な眼疾患と見え方の特徴を知りたいのですが、教えてください。 斜視と弱視、遠視について教えてください.。 コラム1 学校生活の支援に関して 10 (1)入学時・転入時のポイント Q 5 見えにくい子どもの、どのような情報を得ておいた方がよいのでしょうか? Q 6 拡大教科書とは、どのようなものですか? その申請手続きはどのようにすれば よいのでしょうか? Q 7 拡大教科書や授業で配布するプリントなど、どのくらいの文字の大きさならよい のか知りたいときは、どのようにすればよいのでしょうか? Q 8 担任以外の先生方の理解を得るためには、どのような情報を共有しておくとよい のでしょうか? コラム2 (2)年度始めのポイント Q 9 校内や教室環境では、どのような配慮をすればよいのでしょうか? Q10 クラスメイトへの理解や配慮を促すとき、どのようにすればよいのでしょうか? Q11 学校検診の視力測定を、どのように活用すればよいのでしょうか? Q12 通学路の安全確保には、どのようなポイントに気をつければよいのでしょうか? コラム3 (3)授業におけるポイント Q13 板書する際の工夫や配慮すべきポイントは、どのようなことでしょうか? Q14 授業全体で配慮すべきことは、どのようなことでしょうか? Q15 テストのときは、どのようなことに配慮すればよいのでしょうか? Q16 タブレット型多機能端末を使った授業や情報補償のしかたは、どのようにすれ ばよいのでしょうか? コラム4 (4)教科指導のポイント Q17 地図の学習では、どのような配慮をすればよいのでしょうか? Q18 理科の実験や観察では、どのような配慮をすればよいのでしょうか? Q19 体育では、どのような配慮をすればよいのでしょうか? Q20 技術・家庭科では、どのような配慮をすればよいのでしょうか? コラム5 (5)教科外でのポイント Q21 教科外の活動では、どのような配慮が必要でしょうか? Q22 給食のときは、どのような配慮が必要でしょうか? Q23 進路指導は、どのように進めるとよいのでしょうか? Q24 緊急時の対応では、どのような配慮が必要でしょうか? コラム6 3 1 2 4 5 8 9 視力は良いが、見えにくさのある子への支援に関して Q25 視力は良いが、見る力の弱い子どもについて教えてください Q26 漢字が書けない・文字がマスにおさまらない、読み間違いをする・とばし読みな どをするときは、どのような支援をすればよいのでしょうか? Q27 見続けていると姿勢が崩れてしまう子どもへの支援は、どのようにすればよいの でしょうか? Q28 他の障害を併せ有する子ども(特に知的・肢体不自由)の見え方の把握は、どの ようにすればよいのでしょうか? 引用・参考文献 おわりに 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 -iii-