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家庭,技術・家庭科 - 福岡市教育センター

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家庭,技術・家庭科 - 福岡市教育センター
平成17年度
研 究 紀 要
(第 719号)
G7−01
目標 設 定力 を 身 に付 け ,
家 庭生 活 を 豊か に する 児 童 生徒 の 育成
よりよい家庭生活を目指して,生活課題の解決を図っていく児童生徒を
育てていきたい。そこで,目標設定力を支える要素と学習内容との関連を
明らかにしながら,学習過程に問題解決的な学習を取り入れたり,スモー
ルステップの原理を用いたりした。その結果,児童生徒が自分に合った目
標をつかみ,主体的に学習する手立てとして,身に付けさせたい力を明確
に示したスモールステップ表を活用することが有効であることが分かっ
た。
福岡市教育センター
家 庭 ,技 術 ・ 家 庭 科 研 究 室
目
第Ⅰ章
次
「ブルーム評価理論」と家庭科教育
1
ブルーム評価理論の導入‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家
1
2
家庭科教育とブルーム理論‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家
1
3
研究の目標‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家
2
4
研究の仮説‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家
2
5
研究主題についての基本的な考え方‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家
2
(1)家庭生活を豊かにするとは
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家
2
(2)目標設定力とは‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家
3
研究の内容と方法‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家
4
(1)題材構成の工夫について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家
4
(2)目標および指導と評価の在り方‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家
4
6
第Ⅱ章
1
目標設定力が身に付く指導と評価の工夫
実践例
小学校第5学年「料理って楽しいね!」‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家
6
(1)題材の基本的な考え方‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家
6
(2)授業の実際とその考察‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家
6
2
実践例
小学校第6学年「見直そう!毎日の食事」‥‥‥‥‥‥‥‥‥家11
(1)題材の基本的な考え方‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家11
(2)授業の実際とその考察‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家11
3
実践例
中学校第2学年「日常着の手入れに挑戦!」‥‥‥‥‥‥‥‥家16
(1)題材の基本的な考え方‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家16
(2)授業の実際とその考察‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家16
第Ⅲ章
目標設定力を身に付け家庭生活を豊かにする児童生徒をはぐくむ家庭科教育
(研究の成果と課題)
1
研究の成果‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家21
2
課題‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家22
引用・ 参考文献
領域」が不可分の関係にあるとし,わが国の教
第Ⅰ章
1
「ブルーム評価理論」と家庭科教育
育実践研究に大きな影響を与えた。
ブルーム評価理論の導入
2
米国の教育学者,ベンジャミン・ブルームは,
家庭科教育とブルーム理論
ブルーム理論の家庭科教育への導入は,木村
1970年代以降,わが国の教育評価研究に大きな
温美著1980年発行『家庭科の目標決定』による。
影響を及ぼした。1973年,梶田叡一翻訳『教育
木村は,ブルーム理論の「認知的領域」を,家
評価法ハンドブック』が世に紹介され,さらに,
庭科で使用しやすいように「知識→理解→適用
1980年の指導要録の改訂により「観点別学習状
→分析→総合→評価」とし,「精神運動的領
況」欄が設定されたのをきっかけに,ブルーム
域」を「運動技能領域」に変えて「観察→模倣
の評価理論は,今日に至るまで,学校教育現場
→練習(実行)→応用」と表現した。
で急速に注目を集めるようになった。
家庭科の場合,ブルームの言う,「認知的領
ブルームは,多くの子どもたちの成績のラン
域」,「情意的領域」に加えて「運動技能領
クが小学校中学年までに決定され,その後長期
域」3領域の連動を考えねばならない。3領域
にわたってそのランクが持続されることを発見
バランスのとれた学習が実現することにより,
した。そこで,教授法の改善によって,どの子
子どもたち全員に肯定的な自己イメージが育つ
にも一定水準の学力を保障することを目指した。
ことこそ家庭科教育の念願である。
その改善の特徴は,①教育目標の分類体系(タキ
平成14年からの観点別評価の実践の結果,
ソノミー)の構築,②到達目標の設定のための形
「関心・意欲・態度」の評価法や評価規準の客
成的評価を生かした授業設計,③完全習得学習
観性が問われているのは他教科と同様であるが,
論(マスタリー・ラーニング)の提案にある。教
さらに,家庭科では,「技術(能)」と「知識」
育目標の分類体系で,ブルームは,学習目標の
が不可分であるため,補助簿に分けて記述しに
枠組みを「認知的領域」,「情意的領域」,
くいこと,また,評価の4観点の関連性や構造
「精神運動的領域」でとらえ,「認知的領域」
を明確にしてほしいとの希望が多かった。
を,「知識→理解→応用→分析→総合→評価」
そこで,木村の構造を一層簡略化し,4観点
で,「情意的領域」を,「受容→反応→価値づ
の名称をそのまま使用して,家庭科授業のため
け→価値の組織化→個性化」,「精神運動的領
の評価観点の構造図を示した(図−1)。
域」を,「模倣→巧妙化→精密化→分節化→自
(甲斐
純子)
然化」とした。特に「認知的領域」と「情意的
〔知性・技能系列〕②③④
←
応 用 ・ 創意工夫②
←
技 能③
→
イメージを
(イメージを →(はやく・きれいに
転移させる)
発展させる)
↑
できる)
↑↓
技 能③
思考・判断②
(ひとりでできる)
(イメージを動かす*)
↑↓
←
理 解④
↑
→
(わかる・イメージできる*)
↑↓
↑
←
知 識④
=
技 能③
→
(知る)
(まねしてできる)
図−1
〔感性系列〕①
態 度①
(生活化・日常化)
家庭科の評価の4観点
①関心・意欲・態度
②創意工夫(工夫し,
創造)する能力
↑
③生活の技能
意 欲①
(意味付け*・価値付け)
↑
関 心①
(受容)
家庭科授業のための評価観点の構造図
家−1
④知識・理解
(2005年,甲斐作成)
3
研究の目標
生徒が家庭生活を営むために必要な技能を身
目標設定力を身に付け,家庭生活を豊か
に付けさせ,実践的態度を養うことが大変重
にする児童生徒を育成するために,家庭科
要であると考えた。各自の家庭での生活を見
学習における題材構成の工夫や目標および
直し,満足度を高めるようにしていく必要が
指導と評価の在り方を明らかにする。
ある。
本研究室では,「家庭生活を豊かにする」こ
4
研究の仮説
とを一人一人の児童生徒が家族や身近な人々
次のような視点から学習活動の在り方を改善
のことを考え,学校で学んだ家庭科に必要な
すれば,児童生徒は家庭生活を豊かにする実践
学力(P3 表−1)をもとに,「質的に」家庭生
力をはぐくむであろう。
活をよりよくしていくことととらえている。
〇
目標設定力とそれを支える要素との関連を
「研究構想図」(図−2)に示すように,児
取り入れた題材構成の工夫
〇
童生徒の生活への関心や意欲を高めながら,
学習過程における目標および指導と評価
生活の科学的認識や生活の技能を養い,学習
を重ねる中で記憶の引き出しを増やすことが
5
研究主題についての基本的な考え方
大切である。そして,その引き出しを目的に
(1) 家庭生活を豊かにするとは
応じて関連付けて整理できるようにし,生活
児童生徒を取り巻く家庭環境は,少子高齢
の場で状況に応じて,蓄えた記憶を引き出し
化や都市化とともに,家族規模が縮小し家族
ながら,思考・判断させる。さらに経験を重
および地域の人間関係も稀薄になってきてい
ね,生活課題の解決能力をはぐくむことで,
る。また,地域社会の環境の変化から生活経
児童生徒が家庭生活を豊かにすることができ
験が不足していると言われている。
ると考える。
したがって,家庭科の学習の中では,児童
図− 2
研 究構想図
家−2
(2) 目標設定力とは
家の人の体験談,示範など)
ア
目標とは
を参考にして目標を立てるこ
目標とは,生活目標と学習目標のことで,
とができる。
それぞれ目標には段階性がある。
ステップ3
児童生徒は,日常における生活経験によ
学んだことを生かして,発達
段階に応じた目標を立てるこ
って生活目標を立てることができるが,そ
とができる。
の目標は経験レベル的なものが多い 。
(ウ) スモールステップの原理
そこで,「学校知」と「生活知」をつな
学習過程の一部に,必要に応じてスモー
ぐことで,目標がレベルアップした生活目
ルステップの原理を取り入れる。これは,
標へと変わっていくことが,昨年度の研究
とりわけ習得が困難と思われる学習内容を
により明らかになった。
精選し,目標にいたる段階をできるだけ細
(ア) 生活目標の3段階
ステップ1
ステップ2
かくして容易に到達できるように整理した
日常生活の中でやりたいこと
ものである(スモールステップの原理)。自
とやるべきことを書き出すこ
分に合った目標が確実に達成できることで,
とができる。
児童生徒一人一人に達成感や成就感を感じ
書き出したことに対して,自
取らせようとするものである。
分なりの優先順位をつけるこ
イ
目標設定力とは
とができる。
ステップ3
よりよい生活を目指して,自分に合った
知識や技能,時間などに応じ
目標を立てることができる力を「目標設定
た自分の目標を立てることが
力」と考える。自分に合った目標とは,自
できる。
己を客観的に認識した上での努力すれば達
(イ) 学習目標の3段階
ステップ1
成可能な目標であり,学んだことを生かし
与えられた目標で学習を進め
たより具体的な目標である。
ることができる。
ステップ2
「目標設定力」が身に付くと児童生徒は
見本やモデル(友達の作品や
表− 1
なりたい自分がイメージできるようになり,
家庭 科の学 力とそれ を支え る要素 との関 連
生活に生かす力を育てるための要素
領域
m
l
創造力
情報収集・情報活用能力
認・運・情
認・運・情
⑥適切な意思決定力
k
計画性
認・運・情
⑤創造力
j
共に生きる場での調整能力
認・運・情
④情報収集力
i
意思決定
認・運・情
③人間関係調整力
h
生活問題の理解
認知的領域
②生活資材に関する
g
生活文化の理解
認知的領域
科学的認識と技能
f
生活用具・機械の取扱いの習得
運動技能領域
①適切な目標設定力
e
生活の技能の習得
運動技能領域
d
方法や手順の理解
認知的領域
c
原理の理解
認知的領域
b
生活資材の理解
認知的領域
a
価値観(関心・意識・価値付け)
情意的領域
家庭科に必要な学力
家−3
ウ
自分の課題が明確になる。また,その課題
標設定力を身に付けていくことができると考
に関連する記憶の引き出しを状況に応じて
えた。
引っ張り出すことができれば,興味・関心
さらに,実践力を身に付けさせるために問
をもって,意欲的に学び取ることが可能に
題解決的な学習を取り入れ,学習過程に「気
なると考える。よって,昨年度の研究の課
付く」「見通す」「さぐる」「まとめる」
題となった目標設定力とそれを支える要素
「生かす」の5つの段階を題材構成の中に仕
との関連を明らかにし,「目標設定力」を
組んだ。「気付く」段階では,課題把握のた
高める学習を繰り返し仕組むことで,実践
めに試行活動や調査活動を取り入れた。「見
力をもった児童生徒を育成できると考える。
通す」段階では,基礎的な知識や生活の技能
目標設定力とそれを支える要素
を着実に身に付けさせていくようにした。
表−1(P3)は,家庭科に必要な学力とそ
「さぐる」「まとめる」段階では,調理や製
れを支える要素との関連を示したものであ
作などの実習を取り入れた。「生かす」段階
る。この要素は生活に生かす力を育てるた
では,生活に活用できるような課題つまり生
めの要素で,認知的領域,情意的領域,運
活課題の解決を児童生徒自らが図っていった。
動技能領域の3領域に大別される。
(2) 目標および指導と評価について
「目標設定力」は表−1に示すように,
児童生徒がよりよい目標設定を行うために
価値観(情意的領域)や生活資材や原理,方
は,自分の現在の姿が客観的に把握できるよ
法や手順の理解(認知的領域),生活の技能
うな目標が必要である。そこで,目標を設定
や用具・道具の取り扱い方(運動技能領域)
する場面では,身に付けさせたい力を明確に
といった要素に支えられている。また,児
示すと同時に,個の到達度に応じた学習目標
童生徒の「目標設定力」を育てるには,こ
が立てられるよう「ステップ表」および「ス
れらの要素が不可欠である。これらの要素
モールステップ表」を作成した。
があって初めて自分を客観的にとらえる力
また,学習前における児童生徒の学習状況
が身に付くと考える。
を的確に把握するために診断的評価を行った。
題材に対する興味・関心や既に学習した知識
6
研究の内容と方法
・技能の定着度を確かめる実態調査を行った。
(1) 題材構成の工夫について
学習過程の途中では,形成的評価を行い,
家庭生活を豊かにするために,日常の生活
基礎的な学習を行った後に小テストを実施し
に根ざした教材を選択し,目標設定力を支え
た。ここでは,必要に応じて補充学習を行い,
る要素と学習内容との関連を考えながら題材
一人一人の目標達成が可能になるような工夫
構成を考えていった。つまり,これらの要素
をした。
を学習過程の中に効果的に配置し,繰り返し
さらに,各段階に学習のねらいに沿った具
児童生徒の価値観を揺さぶり,相互にかかわ
体的な評価項目を設定したり,学習過程の最
りをもたせていった。表−2(P5)は,カリキ
後には総括的評価を行ったりした。ここでは,
ュラムと「生活に生かす力を育てるための要
簡単に自己評価ができる「振り返りシート」
素」との対応表(一部)を示したものである。
等を準備し,学習への取組状況を把握させた
また,学習過程の中に,自己を振り返る場
り,感想を記述させたりした。これらによっ
や記憶の引き出しを関連付ける場を仕組んだ。
て,児童生徒が自分の伸びや成長を感じ取る
このことによって,児童生徒はより客観的に
ことができ,具体的な成果を目に見えた形で
自己を見つめることができるようになり,目
返すことによって励みになると考えた。
家−4
表−2
カ リ キ ュ ラ ム と 「 生 活 に 生 か す 力 を 育 て る た め の 要 素 」 と の 対 応 表 (一 部 )
◎…学習内容と特にかかわりのある要素
〇…学習内容とかかわりのある要素
情…情意的領域
認…認知的領域
運…運動技能領域
☆…認・運・情
学 配
年 時
生
素
情
a
価
値
観
学習指導要
領との関連
題材および学習内容
認
b
生
活
資
認
c
原
理
の
認
d
方
法
や
運
e
生
活
の
運
f
生
活
用
認
g
生
活
文
認
h
生
活
問
材 理 手 技 具
関 の 解 順 能 ・
心 理
の の 機
・ 解
理 習 械
意
解 得 の
識
取
・
り
価
扱
値
い
付
の
け
習
得
化
の
理
解
題 定 き
の
る
理
場
解
で
の
調
整
能
力
集
・
情
報
活
用
能
力
◎
○
(
学習項目
活に生かす力を育てるための要
☆
i
意
思
決
☆
j
共
に
生
☆
k
計
画
性
☆
l
情
報
収
☆
m
創
造
力
)
⑬ (4)ア
小
学
校
第
5
学
年
(5)ア
調理計画
(5)ア
(5)ウ
(5)オ
(5)カ
(1)エ
材料の計量
調理の手順
材料の洗い方,切り方
味のつけ方
後かたづけの仕方
ゆでるいためる
盛りつけや配膳
安全で衛生的な取り扱い
家族とのふれあい
(4)ア
日常の食事
⑪ (4)ア
日常の食事
(5)イ
小
学
校
第
6
学
年
食品の栄養的な特徴
(5)ア
(5)エ
オ
カ
(4)ア
(1)エ
中 ⑧ A(3)ウ
学
校
第
2
学
年
A(3)イ
調理に必要な材料の分量
手順を考えた調理計画
調理の仕方
米飯およびみそ汁の調理
盛りつけや配膳
安全で衛生的な取り扱い
食品の栄養的な特徴
家族とのふれあい
身近な衣服材料の性質
日常着の適切な手入れ
洗濯機を用いた洗濯の方法と特徴
目的に応じ,布地に応じた補修
衣服と資源や環境
料理って楽しいね!
・体内での食品の働き
・栄養バランス
・調理の意味
・調 理 の 方 法
・調理の計画
・計量
・洗い方,切り方
・ゆで方,いため方
・盛りつけ方,味のつけ方
・試食
・後かたづけ
○ ◎
○ ○ ◎
○
○ ○ ○ ◎ ◎
・食事の楽しさ
・家庭での実践計画
・食品の組み合わせ
見直そう!毎日の食事
(ごはんとみそしる)
・食べ物の組み合わせ
・調理の手順
・ご飯とみそ汁の作り方
・ご飯とみそ汁の調理
◎ ○ ○ ○
○ ○
○ ○ ◎
○ ○ ○ ◎ ◎
・栄養のバランスとおかず
・家庭での実践計画
日常着の手入れに挑戦!
・衣服の手入れや補修の必要性
・しみ抜き実習
・衣服材料の性質と手入れ
・衣服の手入れと補修の実践計画
・家庭実践レポート
・ランチョンマットの製作
・衣生活と環境
家−5
◎ ○ ○ ○
◎ ○
○
○ ○ ○ ◎ ◎ ○ ○
○
◎
○
◎ ○
○
○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○
◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
○ ○ ○ ○ ○ ○
○ ◎ ○
○
◎
○
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
イ
第Ⅱ章
目標設定力が身に付く指導と評価の
児童は5年生1学期の学習でコンロや包
の工夫
1
児童の実態
丁の使い方を学習している。学級の56%が
実践例
学習後に家庭で実践し,家庭科の学習を進
小学校第5学年
んで生活に生かそうとしている実態が伺え
題材「料理って楽しいね!」
た。事前調査を行ったところ「ゆでる」経
験がある児童が70%,「いためる」経験が
(1) 題材の基本的な考え方
ある児童が74%であった(資料ー1)。
ア
資料ー1
題材について
実習前の調理経験(対象児童33人)
人が健康な生活を営むうえで,「食」の
果たす役割は極めて大きい。成長期の児童
にとって,食事は空腹を満たすだけでなく,
体を成長させる働きや家族が楽しんだり心
を和ませたりする働きをもつ。しかし,共
「どんなことに気をつけて調理したか」
働きの増加,家族構成の変化等に伴い,児
の質問には,「火の通り具合」が27%,
童自ら食事を準備せざるを得ない状況およ
「けががないように」が20%,「特にな
び「個食」「孤食」が生じている。そうな
し」が70%であった(複数回答)。
ると,食事の準備はより手間をかけない方
このことから,ゆでたりいためたりした
向へと進む。外食・中食産業の伸びからも,
調理経験はあるものの,その食材の種類は
家庭で調理を行わないことが増えている。
少なく,火加減・時間などができばえに影
こういったなか,平成17年食育基本法が
響すること,材料や目的に合わせて調理す
制定され,食育の重要性が取り上げられて
ることはあまり意識していないと考えられ
いる。特に家庭科では,食に関する指導の
た。
充実を図ることも大切なことと考える。
一日の食事調査では,料理の品数や食品
本題材では目標設定力の定着を図りなが
数が極端に少なく,食事内容を思い出せな
ら,簡単な調理を行い,家族の一員として
い児童もいた。自分の食生活に対する関心
家庭生活を豊かにする態度を養うことをね
は低く,主体的に食生活を営んでいこうと
らいとしている。学習内容としては,調理
する態度を育てることが重要である。
に必要な材料の分量,手順を考えた計画,
(2) 授業の実際とその考察
材料の洗い方,切り方,味のつけ方および
ア
後かたづけの仕方,調理に必要な道具・こ
(ア) 問題解決的な学習
題材構成の工夫について
んろの安全で衛生的な取り扱い方,ゆでた
本題材の指導にあたっては,児童自らが
りいためたりする調理,盛りつけや配膳を
食生活の中で実感してとらえた課題を解決
考えた楽しい食事などがある。このような
するために,実践的・体験的な活動を通し
学習を通して,日常の食事に関心をもち,
て,より確実な知識や技能を身に付けさせ
自分の食生活を見直し,食生活を豊かにし
たいと考えた。
ていこうとする態度を養っていきたい。こ
「気付く」段階では,日常の食事に目を
のことは実践的な食生活への関心を高め,
向けさせるため児童共通の食体験である給
主体的な家庭生活を作り出していく上で意
食を取り上げた。給食は,栄養バランスが
義深いと考えた。
よく多くの食品が使われていることを,献
家−6
立表を用いた「給食調べ」から気付かせた。こ
資料ー5
こでは,食品の体内での働きを中心に,栄養に
達人ビデオより(一部)
ゆでる前のキャベツと
ゆでた後のキャベツの
関する基礎的な内容にふれた。その後自分の食
かさと重さを
事を調べ食生活の実態をつかませるなかで,
観察してみよう
「おもに体を整える働きをする食品が少ない」
洗い出し,目標設定力を支える要素との関
「野菜をあまりとっていない」という課題が見
連を考えながら分析していった。
えた。
特に,「見通す」段階で認知的領域であ
資料ー2
る「b生活資材の理解」や「c原理の理
調理する児童と
解」,「d方法・手順の理解」を取り入れ
それを観察する児童
「見通す」段階では,
た。自作の「達人ビデオ」を準備しておき,
基本的な「ゆでる」「いた
野菜の洗い方や切り方が食材によって異な
める」の調理計画を立て
ること,ゆでることによって野菜のかさが
実習を行った。自分の
減少することなど,生活の科学的認識を深
調理技能のレベルを知
めさせた(資料ー5)。
ることができるような
考察
スモールステップ表を
活用し実習していく中
「見通す」段階では,「ゆで野菜サラ
で,レベルアップを図った(資料ー2)。
資料ー3
ダ」「野菜いため」を全員実習し,「さぐ
る」段階では,「ゆで野菜のいろどりサラ
目標を交流する児童
「さぐる」段階で
ダ」「ベーコン入り野菜いため」を自分の
は,基礎的な2回
実態に応じて選択させた。
の調理実習を振り
つまり,生活に生かす力を育てるための
返らせた。自分の
要素の中で,b∼fまでをしっかり押さえ
技能の実態に応じ
ることで,自分の実態に合った目標を的確
た,さらなる調理
に設定することができるようになった。
技能の目標を設定させた(資料ー3)。
振り返りシートは実習直後に記録したも
ここでは,「ゆでるまたはいためる」の
ので,実習の振り返り・さらなる目標設定
調理を選択させて,レベルアップしたメニ
に役立でることができる。3回目の調理実
ューの調理実習を行った。「まとめる」段
習後の振り返りシートには,「スモールス
階では,調理実習を振り返らせ,自分の技
テップ表の☆も15こになった」と記述され
能の伸びを把握させ,家庭実践への意欲を
ており,調理技能の伸びを自分自身でも感
もたせた。「生かす」段階では,今後の食
じていることがわかる(資料ー6)。
生活について考えさせた。今回の学習で得
資料ー6
3回目の調理実習後の振り返りシート
た基礎的な知識や技能を家庭の中に生かし
たり,家族の実態に応じてアレンジした家
今日の調理実習では約10分で野菜炒めができ,自分で
庭での実践計画を立てさせた。
もびっくりしました。塩加減もちょうどよかったし,
(イ) 目標設定力とそれを支える要素
にんじんも柔らかくてもっと食べたかったです。スモ
次ページの資料ー4は,全体計画と要素
ールステップ表の☆も15こになったし,後かたづけも
との関連表である。題材構成を考えるにあ
班で協力してできたので10分でできました。このことを,
たっては,5つの段階における学習内容を
家で朝ご飯に役立てたいです。
家−7
資料ー4
第5学年「料理って楽しいね!」全体計画と要素との関連表 (全13時間)
創:創意工 夫 技: 生活の技能 知:知識 ・理解
(a∼mについては,P3の表ー1を参照)
関心: 関心・意 欲・態度
段 配
階 時
気 2
付
く
(
課
外
)
見 7
通
す
さ 3
ぐ
る
ま 1
と
め
る
(
)
生 課
か 外
す
学習活動・内容
評価規準
〈評価方法〉【要素】
具体の評価規準
十分満足できる
おおむね満足でき
(A)
る(B)
1 日常の食事に関心をも 関:自分の食生活に関心をもち,食事 ・給食が3つの働きの食品を含んで
ち,食品の栄養的な特
について見直そうとしている。
いて栄養バランスがよいことに気付い
徴に気付く。
〈活動チェック〉
【a, h】
ている。
・体内での食品の働き 知:食品の体内での主な働きがわか
・多くの食品を3つ ・食品を3つの
・栄養バランス
り,組み合わせて食べることの大切 の働きに分けること 働きに分けること
さに気付く。
ができる。
ができる。
〈学習ノート分析〉【b,l】
○「食事調べ」を行い自分 関:自分の食生活に関心をもち食事
・自分の食生活について栄養面から
の食生活に関心をもつ。
について見直そうとしている。
見た気付いている。
〈食事調べレポート分析〉【a, h】
2 ゆで野菜サラダの調理 技:調理の意味を理解し,調理実習の ・調理の手順や調 ・調理の手順を
実習の計画を立てる。
計画を立てることができる。
理時間を考えた調 考えた調理計画
・調理の意味,方法,
〈学習ノート分析〉【c,d,k,l】 理計画を立ててい を立てている。
計画(手順,材料と分
る。
量, 用具)
3 ゆで野菜サラダの調 技:安全や衛生に注意し,調理実 ・用具や食器,こん ・包丁やこんろを
理実習を行う。
習をすることができる。
ろを安全・衛生に 安全に扱ってい
・洗い方,ゆで方(水の量,
〈様相観察〉
【b,c,d,e,f,j】 気をつけて扱って る。まな板やふ
加熱時間,),切り方
いる。
きんを衛生に気
・盛り付け
をつけて扱って
・試食,後かたづけ
いる。
4 前回の実習を振り返 知:「ゆでる」調理方法を理解して ・正答率90%以上 ・正答率70%以
り野菜いための調理実
いる。〈小テスト分析〉【b,c,d,l】
・前回の実習を生 上
習の計画を立てる。 技:スモールステップ表をもとに自 かして自分の技能 ・自分の技能に
・調理の計画(手順,
分の目標に応じた調理実習の
にあった計画を立 あった計画を立
材料と分量,用具)
計画を立てることができる。
てている。
てている。
〈学習ノート分析〉 【c,d,k,l】
5 野菜いための調理実 技:安全や衛生に注意し,調理実 ・用具や食器,こん ・包丁やこんろを
習を行う。
習をすることができる。
ろを安全・衛生に 安全に扱ってい
・洗い方,いため方(火力),
〈様相観察〉
【b,c,d,e,f,j】 気をつけて扱って る。まな板やふ
切り方,味の付け方
いる。
きんを衛生に気
・盛り付け
をつけて扱って
・試食,後かたづけ
いる。
6 前回の実習を振り返 知:「いためる」調理方法を理解し ・正答率90%以上 ・正答率70%以
り「ゆでる」「いためる」
ている。
・前回の実習を生 上
の調理実習の計画を
〈小テスト分析〉
【b,c,d,l】
かして自分の技能 ・自分の技能に
立てる。
技:スモールステップ表をもとに自 に合った目標を立 合った目標を立
・調理の計画(手順,
分に合った調理実習の目標と てている。
てている。
材料と分量,用具)
計画を立てることができる。
〈学習ノート分析〉 【c,d,i,k,l】
7 自分の計画に基づ
技:食品の特徴を考えて「ゆでる」 ・水の量・時間・火 ・食品にあった
いていて調理実習を
「いためる」の調理実習をする 力に気を付けてゆ 方法でゆでたり
行う。
ことができる。
でたりいためたりし いためたりして
・洗い方,切り方,ゆで
〈様相観察〉
【b,c,d,e,f,j】 ている。
いる。
方,いため方,味の付け
方
・盛り付け
・試食, 後かたづけ
8 私たちの食事につい 創:材料や目的に合わせて家庭で ・食品や目的に合 ・目的に合った
て考え,実践計画を立
の実践計画を立てている。
った調理方法を考 調理方法を考え
てる。
〈学習ノート分析〉
えた記述がある。
た記述がある。
・食事の楽しさ
【a,b,c,d,g,h,i,j,k,l,m】
・家庭での実践計画
関:自分の食生活について学習し ・自分の食生活に関心をもち,学習し
・栄養バランス
た ことを生かした調理を行おう たことを生かした簡単な調理を行おう
○家庭で実践する
とする。
としている。
〈学習ノート分析〉 【a,j】
家−8
資料ー7
児童がまとめた
資料ー8
スモールステップ表にみられる児童の変容
家庭実践のプリント
また,それが家庭
実践への意欲につな
がっていた。家庭実
践の計画の中には,
自分の技能や家族・
目的に応じた記述が
計画の中に見られた
(資料ー7)。メニュ
ーとしては,「ベー
コン入り野菜いため
(家族全員の分)」や「やきそば」などが多
かった。実習の経験を生かそうとしている
こと,新たな材料を加えていること,家族
全員の分をつくろうとしていることなどか
ら,自分の食生活の課題に取り組もうとし
ている様子が伺えた。家庭実践後の保護者
からの感想には,「手際がよく,一人で完
成させていて驚いた。」「家族の分もつく
ってくれて,みんなでおいしく食べた。」
などがあった。また,事後調査を行ったと
ころ,「学習後に自分の食生活にどんな変
化があったか」との問いに,「栄養のこと
を気にするようになった」「食事を残さな
くなった」「たまに食事をつくるようにな
った」などがあった。
このことから,基礎的な知識や技能を着
イ
実に身に付けたことで児童の自信となり,
スモールステップ表は,「洗う」「切
自分の食生活をよりよくしようとする態度
る」「ゆでる」「盛りつける」「調理手
の育成につながったと考えられる。
順」の5項目に分かれていて,それぞれの
目標および指導と評価について
内容で児童の姿をステップ1∼3の3段階
(ア) スモールステップ表
に決めている。
スモールステップの原理に基づき,自分
スモールステップ表では,ステップ3が
の調理技能のレベルを,今の自分の姿・な
☆3つというきまりを作っていて,☆15個
りたい自分の姿・実習後の姿という形で表
で身に付けさせたい技能の最高段階となっ
し,目標を決めて実習を行わせていった。
ている。児童は,☆の数で簡単に自分の技
本題材では,「ゆでる」「いためる」「ゆ
能の伸びを自己評価し,次の目標を設定で
でるまたはいためる」の調理実習で3枚の
きるようになっている。
スモールステップ表を活用した(資料8)。
また,「実習後の姿」をスモールステッ
家−9
プ表で確認し,自分の技能の伸びや,目標
資料ー9
の適切さを確認し,次の「野菜いため」の
1 0 0%
9 0%
調理時間の変化(対象児童32人)
2 0分 以 上
20 分 以 上
2 0分 以 内
20 分 以 内
1 5分 以 内
15 分 以 内
1 回 目 ゆ で る
2 回 目 い た め る
8 0%
目標設定時に役立てていった。
2 0分 以 上
2 0分 以 内
7 0%
6 0%
5 0%
(イ)診断的・形成的・総括的評価の工夫
4 0%
3 0%
診断的評価として,事前調査を行い児童
1 5分 以 内
2 0%
1 0%
0%
の実態を把握した。その結果から,実践的
態度に結びつくような題材構成を考えた。
資料ー10
3 回 目 ゆ で る ま たは いため
る
調理実習前と後の自己評価
また,「ゆでる」「いためる」の調理実習
後には小テストを行い,各段階での児童の
実態を把握した。小テストの実施にあたっ
ては,「ゆで野菜サラダの調理方法がどれ
だけ身に付いているか確かめる」と「以後
の調理実習の目標設定に役立てる」という
資料ー11
観察シート
目的を示し,意識を高めた。テスト終了後,
誤答に対して解説をし,知識を確実に定着
させるとともに,指導と評価の一体化を図
った。また,「90点以上はA,70点以上は
B」と具体の評価規準を明確に伝え,目指
れの調理時間を示しているが,基礎的な知
す自分の姿を具体的にイメージできるよう
識や技能を身に付けさせれば調理時間がク
にした。
ラス平均の20分以内から15分以内に短くな
次に,形成的評価として「スモールステ
ップ表」「観察シート」「振り返りシー
っていることがわかる。
そして,児童の自己評価より調理技能の
ト」を活用した。スモールステップ表の実
伸びが明らかになった。資料ー10は,「見
習後の姿や,観察シートの評価,振り返り
通す」段階の調理実習前と「さぐる」段階
シートの感想から個別に助言したり,不十
の調理実習後のスモールステップ表の☆の
分な点を次回の目標へ生かすようノートに
数を比較したものである。☆の数は増加し,
記した。
最高個数の15個の児童は6人であった。
総括的評価として,「家庭実践カード」
や事後調査で,授業前後の児童の食生活に
「観察シート」は,一人実習を行う際ペア
をつくり観察したもので, 簡単な○×の記
対する実践的態度の変化を調査した。
入とアドバイスが書かれている(資料ー11)。
考察
観察シートで客観的に見てもらうことに
より,自分では想起しにくいポイントも鮮
スモールステップ表を活用したことは,
明に振り返ることができた。スモールステ
自分の技能を客観的に把握するだけでなく,
ップ表の「実習後の姿」を正確に記すこと
実習の際の手順の確認やさらなる目標の設
ができた。正確な把握は明確な次の目標設
定に有効であった(P8資料ー8)。
定につながり,なりたい姿が具体的にイメ
また,調理の経験が全くない児童でもス
ージでき,次の実習への意欲が高まった。
モールステップ表を見て確実に手順を踏ん
今回の学習を通して,児童は目標を設定
でいくことで,1人前を時間内に自分の力
することのよさがわかり,次の目標へ生か
で作ることができた。資料ー9は,それぞ
す態度がはぐくまれたと考える。
家−10
2
実践例
事前調査を行ったところ,前日の夕食に
小学校6年
主食として,「ご飯を食べている」児童は
題材「見直そう!毎日の食事」
80%であった。また,みそ汁を家庭で食べ
(1) 題材の基本的な考え方
ている児童で,「朝,夕ともに週5日から
ア
題材について
6日ほど食べている」児童が6%,「朝,
児童の食生活を見直してみると,ありあ
夕ともに週3日から4日ほど食べている」
まるほどの食品にかこまれ毎日生活してい
児童が20%,「朝,夕ともに週1日∼2日
る。しかも,お金さえ出せば,弁当やハン
食べている」児童が23%であった。その他,
バーガーが手に入り,ファミリーレストラ
「ご飯を炊飯器でつくった経験がある」児
ンでいつでも食事をとることができる。し
童が67%,「みそ汁をつくった経験のあ
かし,本当の意味で豊かな食生活を送って
る」児童は16%であった。これらのことか
いるといえるのだろうか。児童の健やかな
ら,日常生活の中で児童は自分でご飯を炊
成長や健康を考えると,決してそうとはい
飯器でつくる経験を半数以上していること
えない。そこで,「食」が揺らいでいると
が分かる。それに対し,みそ汁は半数近く
いう事実をしっかりと見つめ,自分自身の
週1,2回以上食べる身近な材料であるが,
毎日の食事を見直すことが必要であると考
つくり方については,よく分からない児童
える。
がほとんどであることが実態として考えら
本題材では,我が国の伝統的な日常食で
れる(資料−12) 。
あるご飯とみそ汁を,基礎的な調理の技能
資料−12
を生かしてつくりながら,家族の一員とし
て食生活を見直し,家庭生活をよりよくし
学習前の調理経験
(対象児童
ご飯を炊飯器でつくった経験
ようとする態度を養うことをねらいとして
30人)
みそ汁をつくった経験
ある
16%
ない
33%
いる。学習内容としては,米の洗い方,水
ある
67%
ない
84%
加減,浸水時間,炊き方,蒸らし方,だし
のとり方,実の切り方や入れ方,みその味
(2) 授業の実際と考察
や香りを損なわない扱い方,盛りつけや配
ア
膳,おかずの必要性,調理に必要な用具や
(ア) 問題解決的な学習
題材構成の工夫について
食器の安全で衛生的な取り扱い方などがあ
指導にあたっては,給食調査を行い,基
る。このような学習を通して,自分の食事
礎的な調理の知識や技能,実践的態度を身
のとり方を栄養的なバランスの面から振り
に付けさせるために,問題解決的な学習を
返りながら,自分の目標を設定し,ご飯及
取り入れながら,自分の実態を把握させ,
びみそ汁を手順よく調理することができる
明確な目標を立てさせていった。
ようにようになることを目指している。
イ
「気付く」段階では,昔からご飯を主食
児童の実態
に,みそ汁とおかずを組み合わせて食べて
児童は,5年生の時に,ゆでたり,いた
きたことを気付かせるために,事前の夕食
めたりする調理の仕方や食べることの大切
調査や1週間の給食の献立を提示し,食事
さについて学習してきている。また,調理
の実態をつかませた。ここでは,偏った食
に必要な道具や食器の使い方やこんろの使
事や朝食の欠食の問題などの課題があるこ
い方についても学習してきている。
とに気付かせた。
家−11
「見通す」段階では,実習の計画を立て
資料−14
ビデオを見る児童の様子
て,グループでのご飯及びみそ汁の調理実
習を取り入れさせた。実習前に自分がどの
位置にいるのかとらえておくために,ステ
ップ表も記入させた。
「さぐる」段階では,まず,グループで
の調理実習を名人チェック表をもとに振り
返らせた。次に,名人ビデオなどを参考に
しながら,名人チェック表に目標を立てさ
資料−15
家庭実践プリント
せ,ご飯及びみそ汁の一人実習を行わせた。
ここでは,二人一組をつくらせ,一人が実
習をしている時に,もう一人が相手の実習
の手順を観察及び評価ができるようにした。
「まとめる」「生かす」段階では,おか
ずの必要性について考えさせるために,自
分たちがつくったご飯,みそ汁と日頃の給
食を比べさせた。さらに,家族のためにつ
くる「ご飯とみそ汁」の計画を立て,家庭
での実践を取り入れた。
(イ) 目標設定力とそれを支える要素との関連
題材構成を考えるにあたっては,5つの
「見通す」段階では,グループでご飯と
段階における学習内容を洗い出し,目標設
みそ汁の調理実習を行い,自分の調理技能
定力を支える要素との関連を考えながら分
の実態をつかませた。
析した。次ページの資料−13は,全体計画
「さぐる」段階では,一人実習の目標を
立てる際に,教師による自作のビデオを活
と要素との関連表である。
「見通す」段階では,「b生活資材の理
用したが(資料−14),「ビデオが分かりや
解」,「c原理の理解」,「d方法や手順
すく,つくり方をよく復習できた。」「お
の理解」を仕組み,グループ実習をする際
米の洗い方が分かった。」という振り返り
に必要な知識を確実に身に付けさせた。ま
シートの記述から「d方法や手順の理解」
た,示範の米の吸水実験を取り入れ,生活
が高まったことが分かる。自分に合った一
の科学的認識を深めさせた。
人実習の目標を立て,実習を行った。その
「さぐる」段階では,名人ビデオを児童
ことは,資料−15にも示されるように,家
庭実践にも生かされていった。
に見せ,今の自分にとってさらに必要な
「d方法や手順の理解」が高まるようにし
家庭実践プリントを見ると,みそ汁の具
には,実習と同じ(わかめ,とうふ,ね
た。
ぎ)児童もいたが,かぼちゃ,大根,油あ
げ,じゃがいも,玉ねぎなどを選んだ児童
考察
もいた。同じ具を選んだ児童の理由として
は,「家でつくるのが初めてなので,学校
家−12
資料ー13
関心:関心・意欲・態度
段 配
階 時
第6学年「見直そう!毎日の食事」全体計画と要素との関連表 (全11時間)
創:創意工夫 技:生活の技能 知:知識・理解 (a∼mについては,P3の表ー1を参照)
学習活動・内容
具体の評価規準
十分満足できる
おおむね満足で
(A)
きる(B)
気 1 1 どんな食べ物を食べ物 関:1週間の食事を調べ,書き出し,主 ・給食の献立の中に主食やおかずが
付
を食べているか考える。
食(ご飯・パン・めん)やおかすがあ あることに気付き,普段の食事と比
く
・1週間の給食調べ
ることに気付く。<学習プリント分
べることができる。
・米の種類
析>
【a, h】
・みそのルーツや原料 知:米の種類やみそについて説明す
る。〈学習プリント分析〉
【b,g】 ・米の種類やみそ
米の種類やみそ
について理解し, について理解し,
プリントに食生活 プリントにまと
に関連付けてまと めている。
ている。
見 3 2 ご飯とみそ汁のつくり
通
方を知り,実習の計画を
す
立てる。
・米の洗い方
・水加減や浸水時間
・だしのとり方
3 グループでご飯とみそ
汁をつくる。
・調理実習(ご飯の火加
減と時間,みそ汁の具
を入れる順番)
・調理器具の取り扱い
さ 5 4 名人ビデオを見なが
ぐ
ら,名人チェック表に目
る
標を立てる。
・「ご飯・みそ汁づく
り」小テスト
・名人ビデオ
・名人チェック表
5 一人実習(ご飯・みそ
汁)を行う。
・調理実習(材料の切り方,
入れ方,みその味や香りを
損なわない扱い方など)
・名人チェック表
ま 1 6 おかずの必要性につ
と
いて考える
め
・「ご飯とみそ汁」,
る
「給
食の献立」の二
つを
比べる。
・栄養のバランスとお
かず
評価規準
〈評価方法〉【要素】
知・技:調理の意味を理解し,調理実 ・実習の手順を理 ・実習の手順を理
習の計画を立てることができる。〈学 解し,プリントに 解し,プリントにグ
習プリント分析〉
【c,d,k,l】 グループでの分担 ループでの分担
を分かりやすく計 を書くことができ
画的にまとめてい る。
る。
関:ご飯やみそ汁をグループで協力 ・与えられた時間の中で,グループ
してつくっている。<振り返りシー で協力してつくっている。
ト,活動チェック分析>
・ご飯やみそ汁をグループで手順を
【b,c,d,e,f,j】
グループで確認しながら作ってい
る。
知:ご飯とみそ汁のつくり方について
説明する。〈小テスト分析〉
【b,c,d,l】
技:名人チェック表をもとに新たな目
標を書くことができる。〈名人チェッ
ク表分析〉
【c,d,k,l】
・正答率90%以上
・名人ビデオを見
て,自分に合った
目標を名人チェッ
ク表に具体的に書
いている。
正答率80%以上
・名人ビデオを見
て,新たな目標を
名人チェック表に
書いている。
技:自分で立てた目標を達成できるよ
うに調理実習を行うことができる。
〈活動チェック,振り返りシート〉
【b,c,d,e,f,j】
・一人で学習した
手順通りに何も見
ずに実習をやり遂
げている。
(名人度3)
・手順を確認しな
がら,調理実習を
行っている。
(名人度
2)
知:おかずの必要性について考え,
給食の栄養的なバランスを調べる
ことができる。〈学習プリント分析〉
【b,c,l】
・「ご飯とみそ汁」と
「給食の献立」を比
べ,おかず加える
必要性についての
具体的な記述があ
る。
・給食の栄養的な
バランスを調べ,
プリントに分かり
やすくまとめてい
る。
・「ご飯とみそ汁」
と「給食の献立」
を比べ違いに気
付くことができる。
・給食の栄養的な
バランスを調
べ,
プリントにまと
めている。
1 7
生
か
す
家族のためにつくる 創:材料や目的に合わせて家庭での ・家族の構成や好 ・家族のためにご
「ご飯とみそ汁」の計
実践計画を立てている。
みを考えて,家族 飯とみそ汁づく
画を立てる。
〈学習プリント分析〉
の喜ぶご飯とみそ りの計画を立て
【a,b,c,d,g,h,i,j,k,l,m】 汁づくりの計画を ることができ
・家庭実践プリント
立てることができ る。
る。
(課外)
関:家族のために家庭実践に取り組
・家庭実践
んでいる。 <家庭実践プリント ・計画書にしたがって,家族の喜ぶ
分析>
【a,j】 調理を行っている。
・家族の構成や好みを考えながら,
ご飯とみそ汁をつくっている。
家−13
でつくった具だとやりやすい。」「実習の
資料−17 「名人チェック表」ご飯編
時につくって,安心だから。」「自信がつ
いたから。」などがあった。他の材料を選
んだ理由としては,「家でよく食べている
し,玉ねぎを入れると甘くなっておいしい
から。」「家でお母さんがつくるし,家族
が好きだから。」などがあった。このこと
から,児童が学校で学習したことと家での
生活経験をつなぎ,家庭実践していること,
つまり,「学校知」と「生活知」をつなぎ,
生活目標(ステップ3)を立て,実践して
いることが分かる。
資料−18 「名人チェック表」みそ汁編
家庭実践プリントの中で,保護者からの
感想には,「だしの準備からすごく丁寧に
つくっていました。とてもおいしくできた
ので,みんなでおかわりしました。」など
家族の一員として,家族のために調理実習
に取り組んでいった児童たちの様子が伺え,
家庭生活を豊かにしていく実践力につなが
ると考える。
イ
目標および指導と評価について
(ア) ステップ表
握でき,個の到達目標に応じた学習目標が
本題材では,自分のご飯とみそ汁づくり
立てられるように,ご飯であれば「①米を
が今どのレベルにあるかが把握でき,目標
はかって洗う」「②水をはかる」「③吸収
が立てやすくなるステップ表を活用した。
させる」「④たく・むらす」「⑤盛りつけ
実習前・グループ実習後・一人実習後に記
る」「⑥後片付けまで時間内にできる」と
入し,それぞれが3段階のうちどのレベル
手順を分け,それぞれが今どのレベルにあ
にあるのか,自己評価させた(資料−16)。
るのか,3段階(金・銀・銅)に分けて評
資料−16
価させた。みそ汁も同様にした。この「名
ステップ表
人チェック表」は,グループでの実習後と
一人実習の目標を設定するとき,一人実習
後に記入した。一人実習の目標を立てる際
には,ご飯であれば,「①米をはかって洗
う」「②水をはかる」などどの手順のとき
に自分の課題があるか○をつけ,その中の
(イ) スモールステップ表
何を頑張るかを記入させ,焦点を絞ってい
スモールステップ表として,「名人チェ
った。「④たく・むらす」に○をつけた児
ック表」ご飯編・みそ汁編を活用させた
童は,頑張ることとして,「水がひくまで,
(資料−17,18)。
ずっと鍋の中がどうなっているかを見
それぞれの手順での自分の調理技能が把
家−14
る。」と記述していた。
(ウ) 診断的・形成的・総括的評価の工夫
資料−20
一人実習と評価する児童の様子
診断的評価として,事前調査を行い,児
童の実態を把握した。その結果から実践的
態度に結びつくような題材構成を考えた。
また,グループでの調理実習後に,ご飯と
みそ汁のつくり方に関する小テストを行っ
た。小テストの実施を事前に伝えることで,
学習意欲を高めるようにした。テスト終了
後に,答えを確認し,児童自身が「どんな
に合った学習目標を立てることができた。
ことを目標にしたらいいか」を把握できる
資料−19のように,一人実習を進めるこ
ようにし,一人実習の目標を立てやすくす
とで「相手のチェックをするとき」と「自
るための手立てとした。
分が実習するとき」の区別がはっきりし,
次に形成的評価として,ステップ表,ス
時間を無駄にせず,相手の評価を確実にす
モールステップ表「名人チェック表」ご飯
ることができた(資料−20)。また,「○○
編・みそ汁編,振り返りシートを活用した。
さんは,何も見ずにできていてすごい。」
ご飯とみそ汁の一人実習をすることは,施
など,相手のよさを見つけることもできた。
設面でも厳しい面もあるかと思われるが,
児童のステップ表から,実習前にご飯で
隙間の時間を利用しながら,実習する人・
レベル3(時間内に,何も見ずに一人でつ
チェックする人二人組で実習できるように
くることができる)につけている児童は5
した(資料−19)。スモールステップ表の評
%だったが,一人実習後は,73%と大幅に
価や振り返りシートの感想から,努力を要
増えた。みそ汁も,実習前に8%,一人実
する児童には個別に指導をした。また,1
習後には76%で確実に伸びており,児童自
回目の一人実習終了後には,全部「金」だ
身が自己評価しながら伸びを実感すること
った児童を紹介し,本人や学級の意欲付け
ができた(資料−21)。
を図った。
資料−19
また,身に付けさせたい力を提示したス
モールステップ表「名人チェック表」ご飯
一人実習の進め方
編・みそ汁編を活用することで,自分に合
った目標をつかみ,主体的に学習すること
できたと考えられる。
資料−21 一人実習前後におけるレベル3の変化
ご 飯 (レ ベ ル 3)
80%
40%
0%
考察
実習前
一人実習後
み そ 汁 (レ ベ ル 3)
80%
ステップ表やスモールステップ表(名人
チェック表)を活用したことで自分の現在
の姿が,客観的に把握でき,自分のレベル
家−15
40%
0%
実習前
一人実習後
3
実践例
資料−22
衣服の手入れと補修についての事前調査
中学校第2学年
(対象生徒:38人)
%
100
題材「日常着の手入れに挑戦!」
(1) 題材の基本的考え方
ア
衣服の手入れや補修の経験の有無
ある
ない
80
82
題材について
60
衣服を快適に着用するためには,洗濯,
70
66
40
51
しみ抜きなどの手入れや補修が必要である。
20
しかし,洗濯機や乾燥機の普及や進化によ
り,スイッチひとつで洗濯ができたり,形
0
しみ抜き
ほころび直し
制服の名札
体操服のゼッケン
洗濯
状記憶タイプの衣類の登場やタオルハンカ
入の際に重要視するものとして,デザイン
チの登場などで,アイロンをかけることも
や流行を上位にあげるものが多く,手入れ
少なくなった。そんな中で,中学生の時期
のことを考えて購入した経験をもつ生徒は
は流行やデザイン,他の人に映る自分の姿
ほんのわずかであった。また,事前調査(
を意識して衣服を購入するものの,衣服の
資料−22)では,自分でした経験がないと答
手入れや補修については親任せのことが多
えた生徒が「しみ抜き・ほころび直し」で
く,無関心な傾向にある。
82%,「制服の名札」付けで66%,「体操
そこで,本題材では目標設定力の定着を
服のゼッケン」付けで70%であった。日常
図りながら,日常着の手入れに関する基礎
着の手入れや補修が必要なことは分かって
的な技能や知識を身に付けさせ,家庭でも
いるものの,実生活ではほとんどが親任せ
実践しようとする態度を養うことをねらい
で自分では行っていないという実態が考え
とした。学習内容としては,衣服の手入れ
られる。その理由として,「親がいつの間
の必要性,衣服材料の性質,衣服材料や汚
にかしていてくれる。」や「自分ですると
れに応じた手入れの仕方,目的に応じた補
時間がかかり,うまくできない。」,「親
修の仕方,ランチョンマットの製作などが
の方がきれい」と答えている。しかし,
ある。ランチョンマットは,生徒が日常の
「自分でできるようになりたい」とか「自
学校生活で給食時間に活用できる。実験や
分でできないと困る」と思っている生徒も
実習を取り入れ多くの体験をさせ,繰り返
半数はいた。中には,2時間かけて自分で
しの学習で生活観察力を育て,自ら主体的
ゼッケンを付けた生徒もいた。このことか
に学んでいく姿勢をはぐくんでいきたい。
ら,まずは針を気軽に持つ習慣を身に付け
このような学習を通し,衣服材料や汚れの
させることが大切であると考えた。
度合いに応じた手入れと適切な補修を自ら
(2) 授業の実際と考察
の手でできるようにすることは,健康で快
ア
適な衣生活を主体的に送っていく上で意義
(ア) 問題解決的な学習
深いと考えた。
イ
題材構成の工夫について
この題材の指導にあたっては,学校で学
生徒の実態
んだことがただの知識や技能として終わる
生徒はこれまでに,小学校家庭科でボタ
のではなく,家庭生活の中で引き出され,
ン付けや,並縫いの仕方,手洗いによる洗
生きた力として生かされ,豊かな家庭生活
濯について,中学校2学年では,衣服のは
につながっていくことを大切にした。
たらきや選択の仕方について学習している。
衣服の選択の学習では,本学級の生徒も購
家−16
そこで,「気付く」段階では自分の衣生
活を振り返らせ,衣服の手入れの必要性に
気付かせるとともに,補修に必要な技術の
資料−24
ランチョンマットを製作する生徒の様子
習得に取り組ませた。スキルアップ表を活
用し,自分の技能や知識を確認させ,本題
材全体での目指す姿をイメージさせた。
「見通す」段階では,衣服材料について,
中学生が日常着として着用する綿,毛,ポ
リエステルを取り上げた。ケチャップとし
できあがったランチョンマットを相互評価
ょうゆのしみをそれぞれに付け,しみ抜き
し,いらなくなった衣服の活用など,これ
実習を通して生活の科学的認識を育て,繊
からの衣生活について考えさせていった。
維の性質の違いや手入れの仕方の違いに気
このように問題解決的な学習の中に自分
付かせた。補修については,まつり縫いや
の技能レベルを確認し,目標を決めて練習
スナップ付けを取り上げた。教師の示範や
するという繰り返しの学習を取り入れた。
写真の手本,グループでの助け合い学習を
このことで,生徒に練習意欲と達成感をも
通じて,まつり縫いやスナップ付けの正し
たせるとともに目標設定力をはぐくんでい
い方法をマスターさせた。ここでは,まつ
くことができると考えた。
り縫いやスナップ付けを練習する時間や,
(イ) 目標設定力とそれを支える要素との関連
レベルアップ診断カードに記入する時間を
題材構成を考えるにあたっては,5つの
確保した。そのことで,生徒の針に親しむ
段階における学習内容を洗い出し,それぞ
回数を増やし,時間を区切って短時間に集
れについて目標設定力を支える要素との関
中して練習する姿勢を育てるとともに,技
連を考えながら分析した(P18資料−25)。
能の上達を図った。また,知識面を定着さ
昨年度の研究結果から,価値観を揺さぶ
せるため小テストの時間を設けた。「さぐ
ったり,「見通す」段階で目標設定力を支
る」段階では,自分を振り返る時間を設け
える要素の基礎的な知識や技能を習得させ
た。それをもとに自分に合った家庭での実
たりすることで,生活へ生かす意欲を高め
践目標やレベルアップ目標を決めさせ,夏
ることができると考えた。
休みの課題として取り組ませた(資料−23)。
そこで,例えば,「a価値観」を関心の
「まとめる」段階では,夏休みの練習の
要素として「気付く」段階(まつり縫いやス
成果を技能テストと小テストで確認させた。
ナップ付けをやってみる活動)や「見通す」
また,互いの実践を交流させた。さらに,
段階(しみ抜き実習)に取り入れていくこと
「生かす」段階では,まつり縫いとスナッ
で,情意面に繰り返しはたらきかけるよう
プ付けを中心ランチョンマットを製作させ,
にした。ここでは,単独の価値観としてで
刺し子糸を用いて自分なりの図案を刺繍さ
はなく,他の要素との相乗効果をもたせる
せた(資料−24)。できあがったランチョン
ことで「a価値観」を揺さぶり高めさせて
マットは給食時に活用させている。最後に,
いった。そのことで,自分を客観的にとら
資料−23
え,自分に合った目標を設定できるように
技能テストおよび
した。また,「b生活資材の理解」,「c
レベルアップ診断カード作成に取り組む生徒
原理の理解」,「d方法や手順の理解」
(繊維の性質の実験ビデオや汚れに応じた
手入れの方法)を学習を見通す段階に仕組
み,生活の科学的認識を確実に身に付けさ
家−17
資料−25
関:関心・意欲・態度
配
時
第2学年「衣服の手入れや補修に挑戦!」全体計画と要素との関連表(全8時間)
学習活動・内容
1 1 自分の衣生活を振り返り,衣服の
気 手入れや補修に必要な技能について
付 知る。
く ・スキルアップ表
・補修に必要な技能の実習
(スナップ付け,まつり縫い)
・診断カード1の作成
2 2 レベルアップの目標をたてまつり
見 縫いや,スナップ付けの練習をす
通 る。
す ・まつり縫い,スナップ付けの方法
3 しみ抜き実習を通して,衣服材料
や汚れに応じた手入れの仕方がある
ことに気付く。
・しみ抜き実習
・衣服材料の種類と性質
・衣服材料や汚れに応じた手入れの
仕方と洗濯
1 4 衣服の手入れと補修の実践目標お
さ よびレベルアップ目標を決め,実践
ぐ および練習計画を立てる。
る ・診断カード2の作成
・「衣服の手入れ」小テスト1
・夏休みの実践目標と計画
・意見交換および相互評価
1
ま
と
め
る
3
生
か
す
(a∼mについては,P3の表−1を参照)
具体の評価規準
十分満足できる(A)
おおむね満足できる
(B)
知①:洗濯,しみ抜きなど手入れ ・快適な衣生活を送る ・清潔な衣服を着用す
や補修の必要性に気付く。
ために洗濯や補修が必 るために洗濯や補修が
〈診断カード1〉
【b】 要であることに気づい 必要であることに気づ
関:まつり縫いや,スナップ付け ている。
いている。
をマスターしようとする。
・やり方を確認したり,何度も繰り返したり
〈活動チェック,キラリ発見シ しながらまつり縫いやスナップ付けの練習に
ート分析〉
【a,d】 取り組んでいる。
・まつり縫いやスナップ付けをできるように
なりたいと記述している。
関:自分のレベルアップ目標を立 ・自分のレベルアップ の目標を具体的に立
て,まつり縫いや,スナップ付 て,生活に生かしたいと記述している。
けをマスターしようとする。 ・意欲的にまつり縫いやスナップ付けを行っ
〈活動チェック,キラリ発見シ ている。
ート分析,学習プリントチェッ
ク〉
【a,e】
関:しみ抜きを通して日常着の手 ・しみ抜きの実習に意欲的に取り組み,繊維
入れに取り組もうとする。
やしみの種類によるしみの落ち方の違いに気
〈プリント分析)
【a】 付こうとする。
・しみを広げないよう ・しみをたたき出して
技:正しくしみ抜きができる。 にしてしみ抜きができ いる。
〈活動チェック,キラリ発見シ る。
ート分析〉
【e,f】 ・教科書やビデオの実 ・綿・毛・ポリエステ
知②:手入れにかかわる繊維の性 験などをもとに繊維の ルの性質を教科書をも
質や衣服材料に応じた手入れの 性質や汚れによって手 とにまとめ,繊維や汚
違いを理解する。
入れの方法が違うこと れによって手入れの方
〈学習プリント分析,小テスト を具体的にまとめてい 法が違うことに気付い
定期考査〉
る。
ている。
【b,c,d】
技:洗濯や補修のための計画を具 ・衣服材料や汚れ,目 ・教師や友だちのアド
体的に立てることができる。 的に応じた手入れの仕 バイスを受けて,衣服
〈実践計画プリント分析〉 方や補修の方法を,手 材料や汚れ,目的に応
【a,b,c,d,e,f】 順を考えて,具体的に じた手入れの仕方や補
計画を立てている。 修の方法を選び,具体
的に計画を立てている
知①,②〈小テスト〉
・正答率75%以上 ・正答率50%以上
工:工夫・創造 技:生活の技能
知:知識・理解
評価規準
〈評価方法〉【要素】
課外 実践目標や練習計画に従って,
衣服の手入れと補修の実践や練習を
行う。
・家庭での実践および練習
5 衣服の手入れと補修の実践を発表
しあう。
・診断カード3
・「衣服の手入れ」小テスト2
・夏休みの実践の発表と相互評価
関:家庭実践に取り組んでいる。
〈レポート分析〉
【a,b,c,d,e,f,h,i,k,
l,m】
技:衣服の材料や汚れ,目的に応
じた適切な洗濯や補修の仕方を
することができる。
〈実践レポート,相互評価分析〉
【a,b,c,d,e,f,h,i,k,
l,m】
知①,②〈小テスト〉
6 オリジナルランチョンマットを作 工:基礎縫いを活用し,ランチョ
ろう。(次の題材で活用する。)
ンマットを,工夫しながら製作
・ランチョンマットの計画と製作
している。
・ランチョンマットの仕上げ
〈活動チェック,生徒作品,自
・自己評価と相互評価
己評価〉
【d,e,k,m】
技:まつり縫いやスナップ付けが
正しくできる。
〈活動チェック,生徒の作品〉
【e,f】
7 これからの衣生活について考え 工:いらなくなった衣服の活用を
る。
実生活に生かせるよう工夫す
・いらなくなった衣服の活用
る。 〈学習プリント分析〉
・これからの衣生活
【a,g,h,j】
関:学んだことを生かして,環境
を考えた衣生活を送ろうとす
る。
〈学習プリント分析〉
【a,i,j,k,l,m】
家−18
・家庭実践に取り組み,自分なりの課題や目
標をつかんでいる。
・家庭での実践を行い ・計画に従って,家庭
よりよい方法や手順を での実践を行ってい
考えて計画の変更など る。
を行っている。
・正答率80%以上 ・正答率55%以上
・基礎縫いを活用し, ・自分なりに工夫して
自分なりに手順や方 ランチョンマットを製
法,デザインを工夫し 作している。
てランチョンマットを
製作している。
・手早くきれいにまつ ・正しい方法で,まつ
り縫いやスナップ付け り縫いやスナップ付け
ができる。
ができる。
(レベル6,7)
(レベル4,5)
・家庭で不要になった ・いらなくなった衣服
衣服を実生活に生かせ を無駄にしない工夫を
るような工夫を具体的 考えている。
に示している。
・衣服の手入れに関心をもち,これからの衣
生活に生かす方法について学習プリントに具
体的にまとめている。
せた。家庭実践には,目標設定力を支える
題に気付いて自分に合った実践目標を立て
要素のすべてが含まれており,記憶の引き
ることができた。目標設定力とそれを支え
出しを関連付けて活用する場として有効で
る要素との関連を取り入れた題材構成を考
ある。互いの家庭実践を交流することは,
えることは,全学習過程に見通しをもって
新たな価値付けや記憶の引き出しを増やし,
授業計画を立てる上で有効であった。
関連付けることにつながる。
イ
考察
目標および指導と評価について
(ア) ステップ表およびスモールステップ表
○「ステップ表」
本題材では,まつり縫いやスナップ付け
本題材では,ステップ表としてスキルア
の繰り返しの練習やしみ抜き実習など,生
ップ表を活用した。昨年度の実践では技能
徒が針を持つことに慣れ,家庭での実践に
に関するステップ表であったが,本年度は
結びつきやすい活動を取り入れた。その結
日常着の手入れに関する知識や技能につい
果,日常着の手入れや補修に関する家庭実
て客観的に自己評価することができるよう
践レポートで,実践の目標として,しみ抜
にした。全員に身に付けさせたい知識や技
きやユニホームのほころび直しなどを挙げ
能を提示し,自分に合った目標を立てやす
て取り組んでいた(資料−26)。感想には,
くするとともに,本題材のはじめにステッ
生徒の「・・・自分でできるので嬉しいで
プ表を活用して自己を振り返らせ,本題材
す。」や保護者の「裁縫道具が子どもの机
での個人目標(なりたい自分のイメージ)を
の上に置かれるようになりました。」などが
明確にもたせた(資料−27)。
あった。「縫う」ことに対する苦手意識を
本学級の生徒は,昨年度の実践を経験し
取り払い,めんどくささや時間がかかると
ており,ステップ表の見方や振り返りシー
いう思いを少しずつなくすことができた。
トの記入には慣れてきている。記入しやす
補修の技能を高め,自分でやろうという意
いよう,同じ形式を活用した。
識を育てることができたと考える。
○「レベルアップ診断カード」の活用
このように,問題解決的な学習は,実践
基礎的な知識や技能を身に付けさせる手
的・体験的な学習を通して,生徒の実態に
だてとして,自分の今の知識や技能を小テ
合った課題解決を可能にする上で効果的で
ストをしたり,まつり縫いとスナップ付け
あったことがわかる。また,目標設定力を
の技能テストを行ったりした。レベルアッ
支える要素を意図的に配置したことで,生
プ診断カードを作成させ,客観的に自分の
徒は自分を客観的にとらえながら,生活課
知識や技能を認識できるようにした。この
資料−26
レベルアップ診断カードは,まつり縫いや
家庭実践の目標と実践レポート
・野球のユニホームの穴の補修 ・洋服のしみ抜き
・制服のベルトのスナップ付け ・靴下の穴の補修
・Gパンの破れたところを補修 ・部活着の洗濯
・スカートのすそのほころび直し
など
資料−27
家−19
生徒の書いたステップ表
資料−28
意識することができると考えた。定期考査
生徒の書いたレベルアップ診断カード
にも,小テストの内容や技能テストを取り
入れ,学習の定着度を客観的につかめ
るようにした。
考察
ステップ表やスモールステップ表を活用
したことで,明らかになった個に応じた学
習目標をもとに,生徒は自分の知識や技能
を客観的に評価することができた。
資料−29
%
スナップ付けの技能を自己チェックし,自
分の知識や技能を客観的にとらえられるよ
小テストと定期考査での平均正答率
小テスト・定期考査での平均得点率の推移
80
60
40
20
0
48 %
第1回目
32 %
第2回目
65
%
定期考査
うにしたもので,小テストや技能テストの
資料−29は,知識に関する小テストと定
結果も記録させた。その際,まつり縫いや
期考査での平均正答率を示している。夏休
スナップ付けについては,生徒の実態から
みを挟んだため第2回は下がっている。定
7段階のスモールステップを取り入れた(資
期考査では倍の問題数であったが65%に上
料−28)。家庭での実践目標やレベルアップ
がっている。また,まつり縫いは約92%の
目標を決めさせる場面でも,ステップ表や
生徒が正しい縫い方ができていた。小テス
レベル診断カードを使って,より具体的な
トや技能テストを取り入れ,診断カードに
目標を設定できるようにした。
記録させたことで客観的に自己評価でき,
(イ) 診断的・形成的・総括的評価の工夫
次の目標をつかみやすく,自己の伸びを確
診断的評価として事前調査を行い,生徒
認できた結果,技能が定着したと考える。
の実態を把握した。その結果から,実践的
また,なりたい自分を具体的にイメージす
態度に結びつくような題材構成を考えた。
ることができ,自分に適した目標を設定す
また,学習の各段階に,小テストやまつり
る力へにもつながった。スモールステップ
縫いおよびスナップ付けの技能テストを取
表は生徒に目標を提示するのに有効である
り入れ,各段階での生徒の実態を把握した。
とともに,そのまま指導に活用でき,評価
形成的評価および総括的評価としてキラリ
場面でも評価の観点や具体の評価規準とし
発見シートやレベルアップ診断カードを活
て活用できる。具体的な図や写真があるこ
用した。生徒の感想や実態から努力を要す
とで,生徒も文章だけの記述より自己評価
る生徒への手立てとして,個別指導やグル
に取り組みやすく,次の目標を設定しやす
ープでの教え合い活動を取り入れた。キラ
かった。このように,ステップ表やスモー
リ発見シートには,学習全体の流れや評価
ルステップ表を活用した学習は,目標と指
規準が示されており,一枚にまとめること
導と評価の一体化の実現に有効であると考
で,生徒の学習への取組の様子や変容が分
える。課題として,さらにステップ表やス
かるようにした。これにより生徒自身も学
モールステップ表の内容に工夫や吟味が必
習目標をつかみやすくなり,自分の伸びを
要であると考える。
家−20
(2) 目標設定力とそれを支える要素との関連
第Ⅲ章
1
目標設定力を身に付け家庭生活を豊
昨年度の研究より,目標設定力を支える6
かにする児童生徒をはぐくむ家庭科教
つの要素をバランスよく組み合わせて配置す
育(研究の成果と課題)
れば,児童生徒に目標設定力を身に付けさせ
研究の成果
ることができるであろうと考えた。今回の授
今回の調査結果より,児童生徒は生活経験が
業実践を行う際に,各題材の学習内容と,こ
不足しており,客観的に自分の生活技能や生活
の6つの要素との関連を考えながら,効果的
の質をとらえることが難しい状況にあることが
に配置して題材構成を行った(P5表-2)。こ
わかった。そこで,家庭生活を豊かにするため
のように目標設定力とそれを支える要素との
には,家庭科学習の中で,児童生徒が家庭生活
関連を取り入れた題材構成を考えることは,
を営むために必要な知識や技能を身に付けさせ
全学習過程に見通しをもって授業計画を立て
ながら,実践的態度を養うことが重要であると
る上で有効であった(P8資料−4,P13資料
考えた。
−13,P18資料−25)。
本研究室では,昨年度の研究に引き続き,児
(3) 目標および指導と評価
童生徒がよりよい生活を目指して自分に合った
自分に合った目標を設定し,その実現を目
目標を立てることができる力である「目標設定
指して,計画的,意図的に見通しをもって指
力」に着目した。目標設定力を身に付け,なり
導を展開してきた。つまり,目標設定から始
たい自分をイメージできるようにすることで,
まり,その実践を目指しての見通しのある授
自分の課題を明確にできると考えた。そして,
業展開を軸にしての計画が大切と考えた。そ
課題に関連する記憶の引き出しを状況に応じて
こで題材に入る前に,衣・食における児童生
関連付けて,自ら生活課題の解決を図っていく
徒の実態調査を行って,題材構成を考える際
児童生徒を育成したいと考え,授業実践を行っ
の参考にした。
た。その結果,以下の研究の成果が認められた。
(1) 問題解決的な学習の導入
小学校第5学年の実践では,互いが評価し
合うことで作業の手順や方法を各自が確認す
小学校5学年・6学年の実践例では,「気
ることもできた。全員が20分以内に調理を終
付く」段階や「見通す」段階に,生活を科学
えることにつながった。また,食べることに
的にとらえさせたり,具体的にイメージしや
関心が向きがちな調理実習であるが,児童の
すいような自作の「ビデオ」を活用したり,
感想には,「芯があったので,次はもう少し
実習を多く取り入れたりした。これらは,基
炒める」など学習内容を意識したものが多く
礎的な知識や技能を確実に身に付けさせなが
あった。これは,スモールステップ表を活用
ら,児童生徒が生活課題に気付き,家庭実践
したことで,児童は自分の目標を具体的につ
につなげていく上で有効であった。また,中
かむことができ,学ぶ内容をしっかりと意識
学校第2学年の実践例では,しみ抜きの実習
することができていたからだと考える。自分
を体験したことで,「次からはしみが付いた
でステップ表を見て活動するという主体的な
ら自分で落としたい」という実践意欲や「し
取組が見られた。このことから,スモールス
み抜き」の家庭実践につながった。
テップ表を活用した学習指導は,児童生徒が
以上のように,問題解決的な学習は,実践
目標をつかみやすく,主体的に学習に取り組
的・体験的な学習を通して,児童生徒の実態
みやすくする。また,評価場面においても視
に合った課題解決を仕組む上で効果的であっ
点がはっきりしており,児童生徒も教師も共
た。
通して活用ができる。目標と指導と評価の一
家−21
体化の実現に有効であるといえる。今回の実
て評価を深める工夫も行った。
践で被服製作においては,基礎的な技能が定
以上のことから,目標設定力を身に付け,
着していないと次の過程に進めないため調理
実践的態度を養うことで生活課題の解決が図
技能に比べ,より細かなスモールステップ表
られ,家庭生活での実践に結びつけていく上
が必要であることもわかった。
で有効であることがわかった。
小学校第6学年の実践例では,ご飯とみそ
汁の作り方の小テストを行った際,答え合わ
2
課題
せのときに「覚えていたのに」という児童の
今回は図を入れたステップ表を工夫したこと
つぶやがあり,作り方を再確認する姿が見ら
で生活経験の少ない児童生徒にとっても自己評
れた。このように学習過程に小テスト(技能
価するときの判断の手立てになったようである。
テストも含む)を取り入れたことで,児童生
しかし,スナップ付けのスモールステップのよ
徒は「わかっているつもりでもわかっていな
うに複数のチェック項目がある場合にレベルを
い。」「この前はできたのに忘れている。」
決めるのは難しかったようである。そこで,自
ということに気付き,主体的に学習内容を再
己を客観的に振り返りやすく,目標が設定しや
確認していた。
すいものにしていく必要があり,今後も写真を
また,児童生徒に題材全体の学習の見通し
入れるなど児童生徒にわかりやすい形で「スモ
をもたせ,自己の伸びを認識させる手立てと
ールステップ表」を工夫していく必要がある。
して「振り返りカード」を活用した。これに
また,生活課題の解決能力を培うためには,今
より,児童生徒は自分の学習状況を客観的に
後も家庭科のさまざまな領域で,題材構成を工
振り返ることができた。児童生徒の記述は形
夫し,スモールステップ表を活用した授業を実
成的評価として活用し,次時の学習に生かし
践していく必要がある。そのことで,「目標設
ていった。その他「観察シート」などを取り
定力」が身に付き,家庭生活を豊かにする実践
入れ,友達に客観的に見てもらうことを通し
力の向上につながると考えている。
参考文献
1
文部省
小学校学習指導要領解説
家庭編
開隆堂出版
(平成11年)
2
文部省
中学校学習指導要領解説
技術・家庭編
東京書籍
(平成11年)
3
有園格
授業研究
4
木村温美
5
梶田
叡一
6
梶田
叡一
7
平成16年度
8
技術・家庭指導資料(家庭分野)複写編
特集ブルーム理論をどう受けとめるか
他3名
明治図書
現代家庭科教育法
家政教育社
(1980年)
教育評価
有斐閣双書
(2003年)
絶対評価〈目標準拠評価〉とは何か
研究紀要
(1983年)
福岡市教育センター
小学館
家庭,技術・家庭科研究室
開隆堂出版
(2004年)
(2005年)
(2001年)
共同研究者
甲
斐
純
子
宮
田
三佐枝
(主任指導主事)
中
島
由美子
(長尾小学校教諭)
佐
藤
一
(老司中学校教諭)
枝
(福岡教育大学教授)
家−22
貴
志
倫
子 (福岡教育大学講師)
篠
原
里
美
(三宅小学校教諭)
Fly UP