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PDF;自然のしくみ読本(パート1)

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PDF;自然のしくみ読本(パート1)
自然科学の基礎に関する読本
- 物が燃えると、熱くなって光るしくみ、説明できる? -
< パート1 >
2017年 3月15日版
楠本慶二 著
すべての物理学の理論は、
数式は別にして
子供でさえも理解できるように
簡単に説明すべきである。
by アルバート・アインシュタイン
1=1
はじめに>
長年、材料関係の研究をして多くの教科書を見てきましたが、教科書は学校用、娯楽用、専門家用のどれかで、一般の教科書
は個別の知識を並べただけ、専門書は基本を理解していることが前提で個別の現象がやたらに詳しい。
著者は「これらの関係がどうなっているか知りたい」のです。
ここでは私の知識整理のために教科書を参考に自分用メモとしてまとめています。空白のページがあるのは、そこに入れる予
定があるからです。
本原稿を見ただけで、すべての自然現象が分かる訳ではありませんが、今後、様々な文献を見る際の手がかりになるでしょう。
図は所有文献から抜き出したものを参考に改良しており、「図を見るだけで、おおまかな仕組みが分かる」ようにしています。
現在、101スライドあるので、お勧めは「印刷して、興味のあるところから見る」のがいいでしょう。素粒子、放射線、有機化学関
係は、基礎知識がないと理解できなさそうなので、ここでは対象外です。
本稿は、配布フリー、リンクフリーで著者に連絡は不要です。間違いは分かり次第、随時修正しています。ファイルアップロード
の制限上、パート1&2に分けている事、ご理解の程、お願いします。
1=2
目次>
スライド番号
〇パート1の内容 >
すべてはビックバンからはじまった
原子、分子のしくみ
水のしくみ
元素の共有結合
元素のイオン結合
元素の金属状態
1=4
1=6
1=24
1=29
1=37
1=43
〇パート2の内容 >
無機化合物の発色
(電波、発熱、発光、紫外線の発生のしくみ)
結晶の基本的しくみ
熱伝導、電気伝導、その他
地球、宇宙、光、その他
参考文献
2=1
2=xx
2=xx
2=xx
2=xx
1=3
<すべては、ビッグバンから始まった>
表 ビッグバンから元素、原子誕生への過程
年代
事項
138.2億年以前>
紐(ひも)の時代(超弦理論)、 重力が分岐するとインフレーション(大膨張)が起きて、「宇宙は一瞬で
原子サイズから銀河サイズになり」、強い力(核力、陽子同士を結び付けている力)が分岐し、いわゆる
ビッグバンが始まった。
138.2億年前>
宇宙の誕生、いわゆるビッグバン
ハッブル宇宙望遠鏡で130億光年先の宇宙が見えて(ライマンα線の変調によって判断する)、ビッグバン
当初は何億度もあった宇宙温度が2.7K(ケルビン、-270℃)ぐらいでなので、計算するとこの時期にビッグ
バンがあったと推定されている。1000年を1380万回繰り返すと138億年になる。
ビッグバン直後> 素粒子は光速で飛び回っていた。ちなみに、光(=電磁気)に、重さはなく、スピードは常に一定。
100億分の1秒後>
ヒッグス粒子が生成した結果、素粒子の速度が遅くなり、質量(重力と質量は別の概念)が発生する。
0.0001秒後>
粒子と反粒子が反応してエネルギーになるが、10億分の1の割合で粒子が多く、この世界が生成。
ビッグバン時に生成した10億分の1の粒子だけが残って、宇宙が生成。
0.001秒後>
宇宙の温度1兆K(ケルビン)。素粒子が結合して陽子(=水素イオン)、電子等が生成。
1秒後>
宇宙の温度100億K。ニュートリノが中性子を陽子と電子に変換。
3分後>
宇宙の温度10億K。陽子が核融合を起こして重水素やヘリウムを作製。
10万年後>
宇宙の温度1万度。プラズマが冷えて陽子と電子が結合し、水素原子が出来る。
37万年後>
宇宙の温度3000度。
5.5億年後>
水素原子が集合して巨大な重力が発生し、水素が核融合を始めてヘリウムを作り出し、その副次効果として
強力な光などの電磁波が放射され始める。
恒星(太陽)の誕生> 星(太陽などの恒星で、ここでは、まだ地球などの惑星は出来ていない)や銀河が出来る。
地球誕生以前>
隕石同士の衝突、超新星爆発、ブラックホールの結合による核融合、核分裂にともなって、主要元素、
化合物が生成される。
46億年前>
地球の誕生 (地球の1日は5時間、月が出来ていなければ今も8時間ぐらいだった。)
38~40億年前>
マグマから放出された大量の水蒸気によって雨が3000年降り続き、海と島が誕生。最初の生命バクテリア
が海中で発生。この時、大気には酸素はほとんどなく、海水には鉄分が多いために海は緑色をしていた。
34億年前>
単細胞生物の発生。地球に島がなければ、進化は昆虫、魚止まりで、人間は存在しなかった。
1=4
<原子、分子サイズ以下は量子の世界>
元素>物質を構成する成分(要素)を表す言葉。例えば「水は酸素元素と水素元素から構成されている」という感じ。従来は原子と
元素は区別されずに語られてきたが、科学の発展によって同じ元素でも「中性子数の異なる原子」が発見されたため、現在では
例えば「同位体数が異なる種類の酸素原子の総称が、元素としての酸素」という関係になる。
原子>「原子という粒子」そのものを表す言葉。西暦1800年代に物質を分解していった時に「それ以上分解できない基本的な粒子」
という意味で「原子(アトム)」と呼んだが、その後、原子は電子、原子核で構成され、原子核は陽子、中性子で構成され、陽子は、、
と原子の中身が明らかになり、「それ以上分解できない」という意味は薄れた。現代では原子の丸い姿が電子顕微鏡で観察出来る
ようになっている。
分子>「複数の原子が共有結合して新たに生じた粒子」を分子という。例えば、水素と酸素が共有結合したものは水分子で、多数
集合すると水分子ガス、水蒸気(水分子は1個、蒸気は空中に浮いた水の集合体であるが目には見えない)、水(小さな水は空中に
浮くことが可能で、これは雲)、氷ということになる。酸素元素同士が共有結合すると酸素分子で、集合すると酸素ガス、液体酸素と
なり、分子が結晶化したものは分子性結晶、分子性物質といって、例えば、炭素が共有結合して生成したダイヤモンド、酸素とケイ素
が共有結合して結晶化した石英(水晶)は分子性結晶と呼ぶことが出来る。
量子>量子化学、量子力学などの量子とは、原子サイズの「電子、陽子などの素粒子の小さい塊(パケット)の単位で構成された
不連続な、とびとびの世界」という意味で、ウイルスまでのサイズは連続性があるように見えても、原子サイズでみると「塊で連続性
がないとびとびの状態になっている」ことをいう。
1,2,3,4,5,6,7,…(連続 )
1, 3, 5, 7,…(不連続、とびとび )
アナログとデジタル
図 連続と不連続のイメージ
坂と階段
1=5
<原子、分子のしくみ>
1=6
大原則>化学反応(イオン化、共有結合など)は、基本的には「原子の最外殻電子の挙動」によって決まり、
実際には「個々の電子が外部からのエネルギーを受けて動いた結果」が、現在の化合物の状態(イオン化、
発光、吸光、共有結合、電気が流れる等)となって現れている。
最外殻電子( 価電子 )
〇最外殻電子を他原子に完全に渡すと、原子はイオン化
〇他原子に、一時的に渡すと金属状態になり、この時、渡した
電子は自由電子状態。
静電的引力
原子が他原子と自分の電子を共有すると
共有結合
電子が何らかのエネルギーを得て励起(興奮)
得たエネルギーに応じてイオン化レベル近くまでジャンプ
するが、熱などの電磁波を放出して特定の準位まで落ち
てくる。
原子核+原子核に
束縛された内殻電子群
基底状態( 安定状態 )に戻る
特定の準位に落ちてきた電子は、基底状態に戻る時に
エネルギーを放出する際に準位に応じた周波数の電磁波
が発生。エネルギー供給が続く限り、1秒間に周波数の数
だけこの現象が繰り返される。
内殻電子は原子間の結合や物性に影響を与える事は少ないが、
d軌道の電子状態などは発色などに影響する。
1=7
電子
原子核
原子
2s 軌道
<教科書で、よくある原子の表記>
太陽系のように原子核(陽子+中性子)の周りを電子が
回っている表現。ここでは原子軌道 1sに電子が1つなので
水素(H)原子であり、最外殻原子軌道を含むサイズを
原子半径と呼ぶ。
電子
1s 軌道
原子核を1mmとすると
50m先に電子が存在
原子核を5万個並べられるぐらい遠い先
に一番近い電子が存在。
<現実の姿> 原子核の大きさは直径で水素原子の約10万分の1。原子核の寸法を1mmと仮定すると、
原子核は50m先の電子を静電的引力で引き寄せている。電子は波の性質を併せ持つ粒子で、量子論的
には1個の電子は、「なわばり」の中で同時にどこにでも存在すると考えられており、電子は原子核の周りを
地球のように公転しているのではない。電子は陽子の約1840分の1の重さで、電気量は陽子と同じ強さ。
平均的なサイズの原子を1000万個並べると約1mmになる大きさ。水素原子を1億x1億x1億個集めると1.67グラム
1=8
<1個の原子の電子軌道は、“電子殻7番目( 電子殻Q殻, n = 7 )のp軌道”までは確認されている>
一瞬しか存在しない特殊な状態ではあるが、原子1個には陽子が最大で118個入り、電子も最大で118個入るということ。電子が118個入るという事は、
原子軌道1個には電子が最大で2個入ることが出来るので、電子の入っていない状態では空の軌道が59個あるということ。(59軌道x電子2個=118個。
これは1個の原子には「最大で118個の異なる電子状態が存在可能」という事で、例えるなら原子は電子さん118人が乗れる飛行機の指定席という感じ)。
正確には、空席の軌道が常に存在するわけではなく、電子のエネルギー状態が7p軌道の電子エネルギー準位を一時的に取ることが出来る(=状況に
応じて軌道(電子のナワバリ)が出現する)というのが正しく、下図のような球形の電子軌道もあるが、p軌道、d軌道、f軌道などは、それぞれ独特の電子雲の
形状をしていることに注意。参考>電子殻K殻(量子論では、主量子数n = 1 )、L殻( n = 2 )、M殻( n = 3 )、N殻( n =4 )、O殻( n = 5 )、P殻( n = 6 )、Q殻( n = 7 )
原子殻の最大例>
元素番号118の電子配置>
1s22s22p63s23p63d104s24p64d104f145s25p65d106s26p65f146d107s27p6
元素番号118の電子配置の簡略化した表示。
ラドンの電子構造+5f146d107s27p6
[Rn]5f146d107s27p6
Q
P
O
N
M
電子殻K
L
電子は卵の殻のように外側部分に集中して存在。黄身にあたる原子核
は、ここでは表示できないぐらいに小さく白身の部分は、一見すると無の
空間であるが、実際には現在の技術では認知出来ない未知のエネルギ
ーが詰まっているとされる。ここに記述したのは真空中の一原子の姿で、
多原子、分子状態では電子軌道の形状が変化していることに注意。
1=9
電子存在確率
原子核との距離
<原子の基本的な外観>
基本的な球状(実際には卵のような厚い殻状)の水素の
1s電子雲。実際には電子雲の形は、状況に応じて変化する。
正確には電子の存在確率密度。電子を粒子と仮定すると
電子雲は【電子のなわばり】で、電子が、ずっとそこにいる
わけではなく粒子と仮定すると動き回る、波と仮定すると
変調しまくっている。図から明らかなように、s軌道は球形
なので、最外殻がs軌道の原子、イオンは球状。
1つの原子軌道の領域に最大で2つの「回転(スピン)方向の異なる
電子」が同時に存在。厳密には電子は自転しているのではなく、
回転に相当する2つの量子状態があるということ。電子は人間が
観察した際にのみ、その時点での場所が特定される。濃い水色の
位置に電子がいる確率が高いが、原子核近傍に存在する事もある。
ここでは電子2個あるのでヘリウム原子の表現で、片方の電子は
電子の回転に由来してエネルギーが少し少ない。
図 基本的な原子の外観
1=10
N
S
S
N
N
S
シュテルン・ゲルラッハの実験(1922)>電子に2種類の“スピン”がある事が判明
磁気勾配のある空間に電子(実際には銀原子だった)を照射すると2種類の方向に電子線が分かれ、
中間の状態はなかった。「荷電粒子が角運動量を持つと磁気モーメントが発生する」という事実から、
逆に考えていくと、磁石に影響されるので磁気はある⇒角運動量がある⇒電子は回転している(実際に
回転しているわけではなく、アップとダウンの2つの状態があるということ)⇒しかも、2種類あることが
分かった。
1=11
電子の発見 ( 1896年頃 )>西暦1896~1897年頃にイギリスのJ.J.トムソンが発見したということになっているが、彼が一番最初に
発見したかは不明。「電気」自体は古代ギリシア時代から知られており、古代から漠然と電気のプラスとマイナスの概念は知られ
ていたらしい。
原子核の発見( 1911年頃 )>電子が先に発見され、「電子がマイナスの電荷を有するなら原子を電気的に中性化するプラスの電荷を
有する何かがあるはず」という考えのもとで実験が行われて1911年頃、イギリスのラザフォードによって発見された。当時、原子の
中心部(核部分)に原子核が存在していたという意味で原子核(atomic nucleus)という名称。この時点では「陽子と中性子の塊からなる
原子核」の存在を発見したということ。中性子が発見されたのは1932年なので、原子核が発見された時は「原子の中心に何かプラス
電荷のものがある」というぐらいの認識か。
1=12
<原子軌道>
z
s 軌道>s軌道は、原子を構成している電子軌道の1つであり、球状の1つの軌道。sはsharp
(鋭い)のsに由来し、これはナトリウム(Na; 1s22s22p63s1)などのs軌道に電子を有する元素の
スペクトルが鋭かったことからsと名付けられた。金属イオンなど、最外殻電子構造がs軌道の
電子雲の場合、イオンは球形になっている。
p 軌道>p軌道は、原子を構成しているアレイ状(ピーナッツ状)の電子軌道の一つであり、
px, py,pzという3つの軌道が存在し、最大で6個の電子が入る。pはprincipal(主要な、第一の)
のpに由来し、H, He, Li, Be以外のほとんどの元素で観察されるので、「主要な、第一の」と
いう意味で名づけられた。酸素など最外殻電子がp軌道の場合は、p軌道の形状の関係で
「手が伸びたような」電子雲の形になっている。
x
y
1s軌道は球形
z
(-)
d 軌道>d軌道は、原子を構成している電子軌道の1つであり、dxy, dyz, dzx, dx2-y2, dz2という
5つの軌道が存在し、最大で10個の電子が入る。dはdiffuse(広がり、散漫な)のdに由来し、
電子配置や軌道の変化分裂によるスペクトルの広がりを持つところから名づけられた。
(+)
y
f 軌道>f軌道のfはfundamentalから名づけられた。
2s軌道以上は球形の
内面と外面の2領域に
なっている
(+)
z
z
x
(-)
(-)
x
(-)
x
(+)
y
p軌道はピーナツ形が3個
(+)
y
d軌道(花びら型4本)+ひょうたん型?1本
1=13
静電的マイナス状態
静電的プラス状態
静電的引力
静電的プラス状態
静電的プラス状態
静電的反発
分子、イオン、金属形成
電子のスピン回転方向が同じ原子同士は静電的に反発し、異なる方向のスピン電子の元素を探し回って結合し、
共有結合して分子を作成したり、イオン結合したり、金属結合したりする。
1=14
引力発生
引力発生
水素原子( H )は不安定
水素は宇宙で最初に生まれた元素で、太陽では陽子(水素イオン)が莫大に
集まった重力で惑星を引き付けるとともに、主に水素が核融合してヘリウムに
なることで、副反応としてエックス線、可視光、赤外線といった電磁波が発生して
いる。原子軌道1sには電子が最大で2個入れるのに電子が1個なので不安定な
反応性の大きいラジカル状態となっている。
「2つの異なる電子スピンの水素原子( H )」が近づく
1つの原子軌道、分子軌道に「本来は2個入れるのに1個しかない」場合は、
これを「不対電子」と呼ぶ。
両者が近づくと、水素の不対電子は、もう一方の原子核の静電気的引力の
影響を受け、「影響を受けた不対電子が所属する水素の原子核を引き連れて」
互いに近づく。
○個々の原子軌道1sの電子雲が一つになって分子軌道(結合性軌道と反結合性軌道)が生成する
(=分子軌道では準位の異なる軌道が2つ存在するようになる)ことで、両方の原子核が2個の電子を
共有(共有結合)して安定=水素分子( H2 )、基本的には2つの電子はエネルギーの低い結合性軌道
に入る。
○個々の水素原子( H; 1s1 )は、安定したヘリウムの閉殻電子構造( He; 1s2 )になる
○水素分子は、水素2個から構成されるので水素原子よりも大きくなる
〇原子軌道と分子軌道は明確に区別すること!分子軌道は複雑な構成となる。
水素分子( H2 )
=安定
反発
電子エネルギー準位が最も低くなる所(基底状態)が、その状態の原子間距離。原子間
距離が無限に大きくなると、電子エネルギーが0に近づき、最外殻の電子が飛び去った
状態に等しいので、これは「元素がイオンになって孤立した状態とほぼ同じ」と考えてよい。
+
結合距離( 水素分子 0.074 nm )
エネルギー準位 0
-
原子間距離
結合エネルギー( 4.75eV )
図 「分子」の生成と共有結合
< 水素分子の場合 >
電子ボルト(eV )とは自由空間で電子一つが1ボルトの電圧で加速される時のエネルギーで、この時を1eVと定義。
1=15
水素原子A
水素原子B
+
+
+
0
0
エネルギー
準位
-
分子の形成
水素分子の生成にともなう電子エネルギー準位の変化
水素原子が近づいて分子を構成すると原子核との関係によって
結合性軌道と反結合性軌道が形成し、それにともなって電子の
エネルギー準位が変化する。よって、たとえば水素原子が水素分子を
形成した場合、1s軌道は結合性軌道と反結合性軌道の2つのエネルギー
準位に分かれ、異なるスピンを有する2個の電子はエネルギーの低い
安定な結合性軌道に入る。
原子軌道1sの
エネルギー準位
水素原子のエネルギー準位(1つの原子で1個の電子を所有)
分子軌道1sの結合性軌道(正確には中央がくぼんだピーナッツ形状)
分子軌道 1sの反結合性軌道
+
0
-
0
分子軌道 1s 反結合性軌道の準位
分子軌道 1s結合性軌道の準位;分子を形成すると準位が
下がって安定な結合になり、電子はエネルギーの低い
軌道(結合性軌道)に優先的に入る
水素分子のエネルギー準位(2つの原子で2個の電子を共有した場合)
1=16
反結合性軌道のエネルギー準位
結合性軌道のエネルギー準位
+
0
原子軌道ダイアグラム=AOダイアグラム
分子軌道ダイアグラム=MOダイアグラム
1s
シグマ結合した反結合性軌道のエネルギー準位
-
シグマ結合した結合性軌道のエネルギー準位
H原子
H2分子
H原子
水素分子のエネルギー準位
( 2つの原子で2個の電子を共有した場合 )
球形の電子雲からなるs軌道の場合
直感的表現
簡略表現
1s*
E
1s
H
1s
1s
H-H
H
水素分子のエネルギー準位を分子軌道ダイアグラム形式で表現した場合
分子軌道ダイアグラムはH2,O2,HFなど2原子分子までなら表現できるが
H2Oなど、多原子分子の表現は困難。
1=17
He, Ne, Arなどの不活性元素は電子閉殻構造を
とって、それ自身で安定している(=不活性、他と
反応しにくい)ので、ガスは「単独原子で飛び回って
いる。
気体状態ではO, Nなどの原子は共有結合してO2, N2といった「分子の形で、回転したり
振動しながら飛び回っている。」CO2、H2Oなども同じ。飛び回るエネルギーが大きい
(=高温状態)ほど、飛び回る範囲が広くなるので、これは「高温になるとガスの体積が
大きくなる」という現象につながっている。
中性子を無視すると酸素元素は陽子8個、窒素元素は陽子7個で出来ているので、単純に
いうと酸素分子は16個、窒素分子は14個の陽子で出来ており、この「陽子の数の差」が、
「気体の密度差」になって、その結果、酸素は窒素よりも密度が大きいので地球表面の
酸素濃度は高くなる。CO2分子は22個の陽子で構成されるために比重が高くなり、CO2ガスは、
水に対する溶解度が高いので海に溶解して主に炭酸カルシウム(石灰岩)として堆積する。
図 原子、分子のガスの状況
参考にした文献> 「化学結合の見方、考え方」、オーム社
1=18
H
H
不対電子を有する原子は、電子のスピン方向が同じ原子同士では
静電的引力によって反発し、スピン方向が異なる原子を探してどこかに行く。
結合距離
水素原子=0.074nm
+
エネルギー
0
原子間の距離
結合エネルギー
水素原子=4.74eV
-
H
H
H
引力
H
H H
反発
H
H
不対電子を有する原子は、電子のスピン方向が逆の原子同士では
静電的引力によって引き合うが、近づきすぎると反発し、結合エネルギー
が最低となる距離で共有結合して分子を作成する。
図 2個の水素原子からなる系のエネルギーと原子距離間の関係
参考にした文献> 「固体電子論入門」、丸善
1=19
「ジャンプする距離の長い電子ほど」高いエネルギー
(=短い波長)を放出して安定軌道に戻る。
原子軌道 3p
原子軌道 3s
ナトリウム元素のスペクトル
589.0 nm
発光
589.6 nm
分光器
< 一つの原子、分子軌道に最大で2個電子が入る事が判明した経緯 >
1924年頃、ナトリウム元素を加熱した際に発生した黄色い光(炎色反応)を分光器にかけると、波長589.6 nmと589.0 nmの
2本のスペクトルを観察。黄色い光はナトリウムの原子軌道3p(p軌道は電子分布の方向性が強く3個ある)の電子が原子軌道3sに
飛び移る際に放出する光と考えられており、予想では1本のスペクトルになるはずと考えられたが、実際には微妙に波長の異なる
(0.1%の差)光が2つ発生していた。よって、原子軌道3pにはエネルギー準位が微妙に異なる2つのエネルギー準位が形成されている
ことが分かり、これは原子軌道3pに「回転(スピン)方向の異なる電子が2個あること」及び、それらが原子軌道3sに電子が2個入ることで
説明がついた。
図
一つの原子軌道、分子軌道に「回転方向の異なる電子」が2つ入ることが判明した経緯
参考にした文献> 「化学結合の見方、考え方」、オーム社
1=20
<原子、分子軌道の縮退(縮重)現象>
ー 軌道&準位は、磁場&電界の有無で変化する ー
磁場印加>ゼーマン効果(1896年発見)
電場印加>シュタルク効果(1913年発見)
結晶場、配位子場の影響 >ヤーン・テラー効果
圧力>構造相転移
一本のエネルギー準位には基本、回転の異なる電子が2個入る事が出来る(=同じエネルギーをもつ2個の回転の
異なる電子が存在する)が、例えばs軌道では磁場、電場中では、準位が分裂して2本の光学スペクトルが観察され
、磁場や電場などを取り去ると、再び1本の光学スペクトルとなる。これによって1本の準位には最大で2個の電子が
存在する事、およびエネルギー準位は縮退(縮重ともいう)(=2つ以上の異なるエネルギー固有状態が同じエネルギー
準位をとること)することが分かった。
1=21
電子が得たエネルギーに
応じて生じた一時的な原子軌道
高エネルギーの
原子軌道
1. エネルギー(赤外線、紫外線
など)照射による励起(興奮)
2. ある特定軌道までエネルギー減少
(エネルギーは熱とか原子の回転など
に使用される)
3. エネルギー減にともなう
安定軌道へのジャンプ
4. 発光
安定な原子軌道
5. エネルギー供給が続く限り、
1秒間に周波数回数の無限ループ
図 原子内の拘束電子の励起にともなう発光メカニズム
光の正体は電磁波であり、光が原子内部に侵入すると、マイナス電荷を有した電子は、その光の周波数で揺
さぶられ(励起)、余分な運動エネルギーを有するようになる。量子の世界では、とびとびの軌道しかないので
受け取った運動エネルギー量に応じて一時的に生じる原子軌道にジャンプする。(正確には電子の運動周波数
の変調)しかし、高エネルギー状態はエネルギー的に不安定なので、電子は熱などの電磁波や回転でエネル
ギーを放出して、準安定軌道に一瞬滞在し、そこから安定軌道(基底状態)に戻る際に電子の振動状態が変化
し、光(電磁波)としてエネルギーを放出する。この時の振動数(=発光波長)が、可視光ならば光の色として観
察される。
例えば、元素を加熱した際の発光(炎色反応)、紫外線を照射すると可視光として蛍光が発光するのも、この
状態。蛍光、燐光は暗い場所でも観察出来るので発光現象。入射した可視光の一部が電子の励起に使用され
、その補色(余った色成分、透過光)が見えるのは反射光を見ていることであり、暗い場所で色は見えない事実
から、この場合は反射光を見ているということが分かる。
外部から連続して光エネルギーが供給される限り、このサイクルは続き、与えられたエネルギーを放出する時
間、放出過程に応じて発光、蛍光、燐光、畜光現象と呼ばれる。
注意>この場合は、原子核に拘束されている電子の挙動であり、金属における自由電子の挙動による銀色の
発色のメカニズムは、金属の項目に記述している。パート2の「光のしくみ」も参考にされたし。
1=22
イオン状態に近いレベル
表記されないことが多いが原子は4,5,6,7軌道(ここは現在、空軌道)も存在することに注意
+
原子軌道のエネルギー準位
0
3s, 3p, 3d
2s, 2p
原子核から軌道までの距離
の例。原子核の陽子の数が
多くなると、引力が強くなって
電子の軌道が近くなる。
1s
2He
-
3d
3p
3s
イオン化するのに必要な
エネルギー。(イオン化エネル
ギー)図からNaの最外殻電子は
エネルギー0点に最も近いので、
最小のエネルギーでイオン化し、
逆にヘリウムはイオン化するの
に最大のエネルギーが必用
(=結合が安定)なことが分かる。
イオン化エネルギーは、
Na, Li,B,Be,C,O,N,Hの順で
小さい。
2p
エネルギー不安定状態
2s
(原子殻から遠くなるので
静電的引力が弱くなり、
所有電子に対する拘束力
が弱くなる。)
3Li
4Be
5B
6C
は電子
7N
水素原子は原子軌道1sに
1個の電子を所有しているという意味
1H
8O
9F
10Ne
11Na
1s
エネルギー
安定
12Mg
原子軌道1sの準位は、原子核の正電荷が大きくなる(=陽子数が多くなるので電子に対する引力が強くなる)ので
原子番号の増加とともに下がる。
参考にした文献> 「化学結合の見方、考え方」、オーム社
1=23
プラス・スピン電子の領域
アップスピン電子
酸素原子
(+)
ダウンスピン電子
3つある
2p電子雲
の中の1番目
原子軌道2pz
酸素イオン(O2-)
他から電子を奪って生成したマイナス
イオンは、直径で原子の約2倍に
大きくなる!
(ー)
原子軌道 2s電子雲
マイナス・スピン電子の領域
+
(+)
(ー)
3つある
2p電子雲
の中の2番目
原子軌道2py
1s電子雲
1s+2s電子雲
(+)
(ー)
3つある
2p電子雲
の中の3番目
原子軌道2px
酸素イオン( O2- )の構造
=Ne原子の電子構造
( 閉殻電子構造 )
Ne原子の電子構造;1s22s22p6
酸素イオン
「酸素原子(電子8個、電子構造;1s22s22p4)」が、他から2個の電子を奪うと「電子10個、O2-イオン(1s22s2p6)」と
金属イオン
なってネオン(Ne)原子(=閉殻電子構造)となり、原子が安定状態になる。電子は静電気引力で原子核に
引きつけられているので、原子核に近い電子殻ほどエネルギーが低く、安定となっている。酸素イオンは
最外殻電子がp軌道なのでp軌道は3つあって電子雲に方向性があるので、他のイオンと結合した際には、
実際には2本の手が出たような形(+3p軌道の孤立電子対)になっている。
図 酸素イオン(=Ne原子)の電子構造
1=24
<水のしくみ>
1=25
H1s-O2px軌道
H
Hと共有結合
「共有対電子」、
「共有電子対」とも表現
H
H
90°
104.5°
Hと共有結合
O
H
O
H1s-O2py軌道
O2s軌道
孤立電子対
O2pz軌道
<実際の水分子の姿>
<電子の充填ルールから予想される姿>
上は、酸素の原子軌道2sから順番に電子が詰まった時に
考えられる電子構造。
酸素原子の電子配置は1s22s22px12py12pz2であるので、通常の電子の
詰まり方なら上図のようになるが、右のような「sp3混成軌道」の方が全体的に
エネルギーが低くなるので、実際には混成軌道を形成している。
注>煩雑になるので「反結合性分子軌道」は表示していないが、
化学反応では、この空の電子軌道が重要になる。
「sp3混成軌道」が形成し、共有電子対による2つの“手”&孤立電子対
2つによる“手”で合計4つの結合手が出来ている。OとHの共有結合では
電子を引っ張る力は、陽子1個分のHよりも、陽子8個を持つOが圧倒的に
大きくO側に電子雲が片寄る。
sp3混成軌道=分子軌道sと分子軌道pの3つが混合して電子軌道を形成
したもので他と結合可能な“手”が4つあるということ。
図 水分子の電子構造と「sp3混成電子軌道」
1=26
共有結合の記号
H
H
O
電子
H
水(H2O分子)の
簡単な表記
「孤立電子対」による
水素結合の手
H
陽子1個分の弱い静電的引力
O[2pz2]
O
陽子8個分の強い静電的引力
O[2py2]
O[2px2]
O[2s2]
H2O分子の電子分布の立体構造
「sp3混成軌道=手が4本」
H2O分子の現実に近い姿
酸素イオンは水素イオンの5倍の大きさであるが、実際
には原子核は電子雲の10万分の1サイズなので、ここでは
原子核は誇張して記述している。
実際には、水素に属する電子と、酸素に属する電子は区別出来ず、
電子の色分けには意味がないが、分かりやすさのために表記。
1=27
H
H
< 水素結合 >
δ+
δ+
O
δ+
δ-
δ-
水分子は2本の水素結合の
手を持っているので、常にだれかと
手を組むと安定状態になれる。
<水分子は電気的極性を持つ>
酸素原子の原子核(陽子8個で構成)は、水素(陽子1個)よりも圧倒的に大きいので
水素の電子に対する引力が大きく、実際は共有結合部分の電子雲が酸素側に偏って
いる。その結果、酸素原子領域は「少しマイナス(δ-)」、水素原子領域は「少しプラス(δ+)」
に帯電している。
氷は、「水分子」同士が水素結合で結晶化したもので水分子が「く」の字になっている
ことで、結晶化すると水より密度が低くなるので水に浮く。
液体の水は、水中でクラスター状態(~10個程度?)の水分子が水素結合を作ったり
切ったりしながら、たえず動いている。
液体の水は、加熱、真空などによって水素結合を切るだけのエネルギーを得たら気化
する。水蒸気は小さな液体の水であり、ガス状態の水分子とは区別される。
液体・水蒸気・気体への変化>
δ+
蒸発・気化>加熱によって水素結合が切れる。
液化>気体の運動エネルギーが減少し、水素結合力が勝る。
水素結合は弱い結合力なので、少ないエネルギー(常温など)で
分離、結合する。
δ+
δδ+ δ+
δ+
δ-
液面
δ+
δ-
水
図 水分子の水素結合
1=28
< 氷の性質は、人間の誕生に関係している >
4℃の水は、最も比重が大きいので、基本的には海底は4℃の
水が滞留している。氷は水より約10%軽いので海面に浮いた
状態であり、このおかげで水中生物が生きられる環境になっている。
もし、氷が水よりも比重が大きかったら、海底に氷山が堆積して
生物が住む場所が無く、生命が人間まで進化することはなかった。
ちなみに、陸が無くては進化は昆虫、魚までであり、人間が誕生する
ことはなかった。
つまり、宇宙に水に覆われた地球型惑星が存在しても、陸がなくて
は理論的には魚以上にはならないと考えられている。
空
氷山
4℃の水
地球
1=29
<元素の共有結合>
〇共有結合では、必ず共有結合性の電子軌道と反共有結合性の電子軌道
が生成する。
〇反共有結合性の電子軌道は、バンド理論の際に伝導帯として重要な役割
があるので、(共有結合=結合軌道+反結合軌道)を意識すること。
1=30
大きな分子の
軌道エネルギー
エネルギー
固体の
軌道エネルギー
エネルギー
空の伝導帯
原子軌道
エネルギー
バンドギャップ
安定
電子の価電帯
小さな分子の
軌道エネルギー
電子の状態密度
構成原子数が多くなるほど軌道が結合軌道と反結合軌道に
分裂し、その結果、バンドギャップが現れるようになる。
1=31
<原子AとBで共有結合する時は、結合性の電子軌道と同時に必ず空の反結合性の電子軌道が生成する。>
<原子AとBで電子軌道のエネルギー準位の差が小さい場合>
反結合性軌道
電子軌道の
エネルギー
準位
幅広のバンド
狭いバンドギャップ
A
B
結合性軌道
反結合性軌道
狭いバンド
電子軌道の
エネルギー
準位
A
幅広いバンドギャップ
B
結合性軌道
<原子AとBで電子軌道のエネルギー準位の差が大きい場合>
孤立した原子AとB元素
分子A-B
A-B元素から
構成される固体
1=32
共有結合
2pz0
2s2
2py2
2px0
炭素( C )の電子構造: 1s22s22p2
炭素原子は電子が6個なので原子軌道1s,2s電子雲と順番に電子が詰まると、
3つある原子軌道3pの2つには電子が存在せず、原子軌道3pyもすでに電子が
2個詰まっているので、他との結合は出来ないはず。しかし、多原子からなる
ダイヤモンドは存在する。なぜか?⇒ 「sp3混成軌道」が生成して、4つの
共有結合をしているから。S軌道とp軌道ではエネルギー差がほとんどないので
混成軌道が出来やすい。同じ共有結合でも、「原子核に近い方の共有結合は
原子核からの拘束力が強い」ので、4つの共有結合をもつダイヤモンドは硬い。
「sp3混成軌道」(原子軌道sが変形)になることで
結合手は4つになって、他原子と結合することで
原子1個でいるよりもエネルギー的に安定化。
図から明らかなようにp軌道(sp混成軌道も)は
横に伸びて方向性を持つ電子雲となっている。
一方、最外殻がs軌道の原子、イオンは球形に
電子雲が広がっている。
図 炭素の「sp3混成軌道」の生成
1=33
z
z
z
z
(+)
(-)
(+)
x
x
x
x
(+)
y
y
原子軌道 2s
y
(-)
原子軌道 2py
原子軌道 2px
(-)
y
原子軌道 2pz
4個の原子軌道が
均等になる
(+)
(-)
(-)
(-)
(+)
(-)
(+)
(+)
(+)
sp3 混成原子軌道の生成
1=34
共有結合
3pz0
3s2
3py2
3px0
シリコン( Si )の電子構造:
1s22s22p63s23p2
シリコン原子では原子軌道3s電子雲に順番に電子が詰まると、
3つある原子軌道3pの2つには電子が存在せず、原子軌道3pyも
すでに電子が2個詰まっているので、他との結合は出来ないはず。
しかし、多原子からなる半導体シリコン結晶は存在する。なぜか?
⇒「sp3混成軌道」が生成して、4つの共有結合をしているから。s軌道と
p軌道ではエネルギー差がほとんどないので、混成軌道を生成可能。
基本的には周期律表の4B族のCもGeも同じ仕組み。
「sp3混成軌道」(原子軌道sが変形)に
なることで結合の手は4つになって、
他原子と原子1個でいるよりも
エネルギー的に安定化。
図 Siの「sp3混成軌道」の生成
1=35
d-
d+
H
Cl
d+
d+
H
H
(電子対は酸素側に偏っているが、
分子全体では電荷の偏りは
なくなる)
O
d-
H2, Cl2など
同じ元素同士ならば分子の
電子的極性無し。
元素が異なれば極性発生
HCl
(塩素は電子を引き寄せる力が
強いので電子対が塩素側に
偏っている)
CO2
H2O
d-
d+
d-
O
C
O
(酸素側と水素側では
電荷の偏りが発生)
局所的に極性があっても、分子の形状で極性分子と
無極性分子になる。
1=36
原子軌道s
原子軌道s
電子原子軌道s
s軌道同士のσ(シグマ)結合例
sp混成原子軌道
原子軌道p
sとp軌道によるσ結合例
sp混成原子軌道
電子
spn混成軌道同士のσ結合例
原子核
図 シグマ結合( σ bonds )
=「結合軸方向を向いた直線上の原子、分子の原子軌道同士による共有結合」
s-s軌道、s-p軌道、sp-sp軌道、p-p軌道、p-d軌道、d-d軌道同士などがある。
1=37
<電気陰性度>
→分子内の原子が電子を引き寄せる相対的な尺度
(分子内の「共有電子対の位置の偏り」の度合い)
<Allred&Rochowの電気陰性度>
F原子4.10 原子とイオンは違う
O
3.50
N
3.07
Cl 2.83
C
2.50
H
2.20
Si 1.74
Fe(II) 1.64
Bi 1.55
Al 1.47
Pb(II) 1.44
Ti 1.32
Zr
1.22
Ca 1.04
Na 1.01
Ba 0.97
K 0.91
「結晶化学入門」、講談社
PbO→構成元素&構成元素数を示しているだけ
○○分子=共有結合
結合
差(絶対値)
C-C結合(ダイヤモンド) 2.50-2.50= 0.00 代表的共有結合(=量子効果による結合)
Si-Si結合(金属Si、半導体)
0.00
H-Cl(塩化水素HCl)
0.63(HClはイオン結合ではなく共有結合!)
Si-C(炭化ケイ素)
0.76
Si-N(窒化ケイ素)
1.33
Si-O(石英)
1.76
1.8以上がイオン結合性の目安。現実はイオン結合、共有結合、分子間力が入り混じっている
Na-Cl(食塩、NaCl)
1.82 有名なイオン結合物質(=静電効果による結合)
H-F (フッ酸、フッ化水素)
1.90
Bi-O(酸化ビスマス)
1.95
Al-O(アルミナ)
2.03
Pb-O(酸化鉛)
2.06
Ti-O(酸化チタン)
2.18
Zr-O(酸化ジルコニウム)
2.28
Ca-O
2.46
Fe-O(酸化鉄)
2.46
Ba-O(酸化バリウム)
2.53
Na-F(フッ化ナトリウム)
3.09
K-F(フッ化カリウム)
3.19
Allred&Rochowの電気陰性度>原子核が荷電子に及ぼす静電的な力と電気陰性度と定義した値
電気陰性度はpolingのものが有名だが、後に改良されたAllred&Rochowの方が実態に合っている。
H:H
Na
: Cl
塩素は電気陰性度(電気的マイナスになりやすさ)が
圧倒的に強いのでNaは価電子を塩素に奪いとられて、
イオンに近くなっており、共有電子対は塩素側に偏って
いる。NaClはイオン結合:共有結合が8:2ぐらいに
なっている。
1=38
電気陰性度> 共有結合している原子間で原子が共有電子対を引き寄せる度合いを数値化したもの。
「原子核の大きさ」に由来する「最外殻電子に対する静電的引力の強さの力関係」によって決まる。原子核が
大きくて原子核に近い原子軌道を有する元素が電子を奪い取る力が大きく、フッ素(F)が電気陰性度が高くなる
のは、この理由による。
教科書に載っている典型的なイオン結合物質
イオン結合
100
KF=3.19
BaO=2.53
NaCl=1.82
教科書に載っている
典型的な共有結合分子
50
結合の
イオン性(%)
Si-O=1.76
SiO2(石英、水晶)は共有結合
とされているが、SiO2の4面体を
とることでイオン性を有する。
HCl=0.63
H2=0
0
イオン・共有の
中間結合
0
1
2
3
共有結合
電気陰性度の差
1=39
<元素のイオン結合>
原子とイオンは、まったく別物であるので注意!
単イオン状態と多イオン状態でも電子の分布状態が変化している!
1=40
隙間がある!
「原子核同士の静電的引力の力関係」
によって塩素に電子が奪われる!
ナトリウム(Na)原子
塩素(Cl)原子
原子サイズでは、ナトリウムは塩素の
約1.9倍の大きさ
Na+0.8イオン
Cl-0.8イオン
NaCl(食塩)
〇Na原子は電子0.8個分をCl原子に“奪われて”NaイオンはNa原子より20%程度小さくなるが、電子0.2個分の電荷は所有しており、
若干プラス電荷になっている。
〇Cl原子は電子0.8個分を奪ってClイオンはCl原子の約1.9倍に大きくなるが、まだ電子0.2個分の余裕があり、マイナス電荷になっている。
〇個々のイオンの電子雲は、球ではなく四角に近くなっており、個々のイオンは接触していない。
一般の教科書では、「Naは電子一個を放出して+イオンに、Clは電子一個を得てーイオンになってNaClが形成。」と記述している。実際には、塩素は原子核が大きく(
=簡単にいうとNaは11個の陽子で、Clは17個の陽子で電子を引っ張っている)、その強い静電的引力で
ナトリウムの最外殻電子から電子を奪う力が大きいので、電子が移動する方がエネルギー的に安定になるから、そうなる」というのが
正しい。教科書どおりに電子が1個完全に移動したならば、「個々の原子が不活性ガスと同じ電子閉殻状態になって安定化し、NaClの
ような結晶を形成する駆動力がなくなる。」 しかし、現実にはNaClの結晶は存在する、なぜか?
⇒ 実際は、Na原子はNa+0.8、Cl原子はCl-0.8になっており、Naは電子1個分は放出しておらず、0.8個分しか、逆にClは0.8個分しかNaから電子を奪えていない。よって
、個々のイオンに異なる極性のイオンを引き寄せようとする静電的駆動力が残っているから規則的に並ぶ。
イオン状態(=閉殻電子構造に近い)は極性がないので静電的引力(クーロン力)によって立体的に積み重なって配列するが、近づきすぎるとイオン同士がクーロン
力反発(静電反発)するのでイオン同士は接触していない。NaClと表記するが、Naイオン一個とClイオン一個で
完結するわけではなく、NaイオンとClイオンが大集合したものがNaCl分子結晶(NaCl分子からなる結晶)。NaClはイオン結合の代表例
であるが、100%イオン結合ではなく、共有結合性も有しており、イオン結合性は80%程度である。イオン結合は、異なる原子間で電子が
片方の原子に著しく引き寄せられた(=完全に奪われた訳ではない)結果、一方が陽イオンに、片方が陰イオンになったもの。一般に食塩、氷、酸化ケイ素(水晶)など
の小さな原子番号で構造が単純な結晶は巨大化しやすく、巨大化するほど個々のイオンはエネルギー的に
安定になるので、これらの結晶は人間の目に見えるほど大きくなりやすい。
参考にした文献> 「化学結合の見方、考え方」、オーム社
1=41
固体片
マイナスイオン
陶磁器などイオン結合性物質の強い物質から
構成されるものは塑性変形の限界を超えると
イオン同士が+イオン同士、ーイオン同士の
反発位置になるために急激にパカッと割れる。
静電的反発
固体
マイナスイオン
固体
図 イオン結合性物質の破壊
参考にした文献> 「化学結合の見方、考え方」、オーム社
1=42
<炭酸イオン、ケイ酸イオンは存在しても、炭素イオン、ケイ素イオンは基本、存在しない >
周期律表の4B族(炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛)及び、5B族(窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス)は、電子構造の
関係でsp混成軌道を形成して共有結合しやすいので、基本的には原子がイオン化することは少ない。よって、炭素イオン、ケイ素
イオン、窒素イオンなどとは普通言わない。しかし、どの分野でも例外はあり、C4-というイオンがあるらしい。ただし、SiO2などで
SiO2の単位ユニットがまとまって電荷を有したものはケイ酸イオンと呼び、炭酸イオン、アンモニアイオンなど、「炭素や窒素を含んで
いても分子の構造に由来して極性を有したもの」は分子イオンとして区別される。
<様々なイオン半径>
イオン半径に関しては、現在までに大別して三種類が提案されており、それぞれ以下のような特徴がある。教科書では簡単に
表現するためにパチンコ玉のような剛球で表現されるが、現実には「イオンの大きさは原子核をとりまく電子雲の大きさのこと」であり、
この電子雲の大きさは、様々な条件によって変化するので、厳密はイオン半径というものはないというのが真相である。しかし、
イオンがどのイオンよりも大きい、小さいという範囲で表現するにおいては正しく、最近の研究者はシャノンのイオン半径を使用する
のが常識になっている。
○Goldschmidtのイオン半径>単純な構造を持つ酸化物とふっ化物を用いてX線回折を用いて測定を行い、実測値から求めた
イオンのサイズ
○Paulingのイオン半径.>イオン半径を有効核電荷の増大と関係づけ、その値を量子力学的に計算したもの。
○Shannonのイオン半径.>多数の同型化合物の実測した単位格子体積とイオン半径の3乗に比例する関係と、イオン半径が
配位数に依存することを考慮して配位数別に区別して表現したサイズ
出典:「工学のための無機化学」、サイエンス社
1=43
原子核を1とすると原子核を5万個並べた先ぐらいに
最外殻電子が存在し、多数の小さな電子群は、この
空間内の外側領域に収まり、水素(水素イオンは陽子
そのもので、電子をなくすと極端に小さくなる)を除くと
所属電子が少ない軽元素と、所属電子が多い重元素では、
大きさは、最大で26倍程度。図にしてみると小さい
イオンと大きなイオンでは大きさが、けっこう違う。
大きなイオンの代表例
C4- (0.26nm)
小さなイオンの代表例
N5+ (0.01nm)
13
1
イオン
H+(=陽子)
N5+
Li+
Na2+
Ba2+
O2C4-
所有電子数
0
2
2
10
54
10
10
26
イオン半径 (nm)
0.875x10-6
0.01nm
0.068
0.097
0.134
0.140
0.260
原子核
表から、Baイオンは54個の電子を有していても、10個の電子を
所有する酸素よりイオン半径が小さく、所有電子数はイオンの
大きさと関係ないことが分かる。
1=44
最外殻電子
水素原子の大きさ
水素元素の原子半径
水素イオンの大きさ
H+のイオン直径
=陽子の大きさ
二価の鉄イオン(Fe2+)のイオン半径
二価の鉄イオンは鉄原子から電子が2個少ない状態
図
共有結合時の
水素の共有結合半径
三価の鉄イオン(Fe3+)のイオン半径
基本的には所有電子が少ない分だけ電子雲サイズは
小さくなるが、例外もある。三価の鉄イオンは鉄原子から
電子が3個少ない状態で2価の鉄よりも小さくなる。
Fe2+ 0.076nm, Fe3+ 0.064nm。
「元素半径の表」が複数ある理由
1=45
<元素の金属状態>
自然は、その「本質的上品さ」ゆえに真実を隠す。
策略によって隠すのではない
by アルバート・アインシュタイン
1=46
Na分子を形成すると準位が下がって、安定な結合になる
エネルギー準位の階段
最外殻電子
最外殻電子
動ける範囲が狭い。
Na原子核に束縛
されて動けない
Na原子は自由電子が抜けると
瞬間的にイオンになれるので安定化
3sと3p軌道が重なる部分が生成し、
室温などの少ないエネルギーで
自由電子が上の空の軌道に励起
されており、自由に移動できるよう
になる。
自由電子の誕生
+
0
0
0
3p軌道バンド
-
3p
3s
x6
2p
x2
2s
x2 1s
3s軌道バンド
2p軌道バンド
2s
1s
1個目
Na原子1個
Na分子( Na原子2個 )
2個目
3個目
4個目
金属全体で見た場合
多数のNa原子が集まった場合( 金属状態 )
図 Na原子が集合して金属状態になって自由電子が誕生する過程
バンドギャップ、
エネルギーギャップ
上図は、絶対温度0℃での状態を示しており、無数の元素が集合すると「エネルギー差が微妙に異なる無数の準位(本系では
3s軌道と3p軌道)が生成」し、図示すると、これが帯(バンド)のように見えるから、バンド構造が出来ていると表現される。
例えば室温では室温の熱エネルギーによって自由電子がエネルギーを得て上の空の準位に励起されており、これが電子が
自由に金属内を動けるようになった状態(=自由電子の誕生)。バンド理論は半導体の説明で、よく出てくるが、必ずしも半導体
だけでなく金属、半導体、絶縁体でも原子の個数が数多くなればバンド構造が出来ていると考えられており、バンドギャップ
エネルギーは、物質の温度が上昇すると格子振動の増加によって減少する傾向がある。
参考にした文献> 「固体電子論入門」、丸善
1=47
変形
金属は変形しても「自由電子のノリで瞬時に結合が生成される」
ので、やきもののようにパカッとは割れない。自由電子は原子核から
遠いほど原子核からの拘束力が少ないので、金属アルミ、金属鉄
などに比べて、金、鉛など原子量の多い金属(=陽子の数が多い
元素)は自由電子が動きやすく、金は軟らかく、銀のように電流も
熱も流れやすい。
自由電子
金属結合>例えばNa元素はNa分子を形成することも出来るが、数多く集まった方がエネルギー的に安定となる。よって、元素が多数集合
すると、電子エネルギー準位的に、すべての原子の最外殻電子軌道が重なるようになり、個々の原子が自由電子を放出することによって
「瞬間的に陽イオンの電子閉殻構造になれる」状態になる。つまり、個々の原子が自由電子の押し付け合いを行っているようなもので、
これは金属全体では「自由電子の海に陽イオンが詰まっている状態」に見える。また、自由電子は原子をまとめるノリの役目もしている。
「自由電子」は自由に動ける電子という意味で、個々の原子に束縛されている電子と区別するために自由電子というが、自由電子という種類の
電子があるわけではない。実際には自由電子は原子核から遠いところにいるので原子核の静電引力が小さくなって最外殻電子に対する影響力が
弱くなった状態に近く、内殻電子が多いと原子殻からの自由電子へのクーロン力が弱まるので、銅、銀など密度の大きい金属は電流が流れやすい。
図 金属結合
参考にした文献> 「ニュートン2016年9月号」、ニュートンプレス
1=48
表記されないことが多いが、実際には4,5,6,7軌道もあることに注意。
Na原子2個集まると、Na原子の反応面である3sと3p軌道が2つに分裂 !
反応に寄与しない内殻の1s,2s,2p軌道のエネルギー準位は変化しない。
+
0
イオン化状態
3p
3pエネルギー帯
3s
最外殻電子
3sエネルギー帯
電子
エネルギー準位
2p
重なる部分が出来る!
少ないエネルギーで原子は最外殻電子を
放出(=自由電子)して陽イオンになりやすくなる
2s
-
1s
1
2
3
4
5
無限個(=金属Na状態)
構成原子数
図 構成原子の増加によるエネルギー帯(バンド)の形成と金属状態の出現(Naの場合)
エネルギー帯形成の仕組み(Naの場合)>2つのNa原子が近づくと2つの3s軌道が重なりあって、結合性分子軌道と
反結合性分子軌道が生成し、Naの3s準位は2つに分裂する。さらに別のNa原子が近づくと、3s準位は3つに分裂し、原子
が無限に集合すると、3sと3p順位は重なる部分(準位エネルギー差がほとんどない状態)が出てくる。これによってNa原子
の最外殻電子は、少ないエネルギーで3p軌道にジャンプして自由電子として活動できるようになる。
1=49
(-)
(+)
衝突して隣を押し出す
自由電子
金属の電気の伝わり方>電池などのエネルギー源に発生した電圧の差によって金属中の「マイナス電荷を有する
自由電子」はプラス極方向に移動を開始し、隣の原子に衝突する(実際には最外殻電子の領域)ことで、隣の自由電子を
「ところてん」のように次々と押し出す。この動きがバケツリレーのようにプラス極方向に伝わる。この現象を外から見ると
マイナス極からプラス極側に自由電子が流れるように見えるが、実際には自由電子は隣り合う原子間で隣の自由電子を
押し出しているだけで、実際の移動距離は少ない。外から見て、流れるように見える自由電子の多さが電流量の大小となり、
自由電子が動く際の抵抗の大小(高温では原子核自体が激しく振動しているので衝突しやすい)が金属の発熱量の大小となる。
参考にした文献> 「ニュートン2016年9月号」、ニュートンプレス
1=50
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
熱平衡状態
-
電子の
移動速度
電界が印加された時
電界が印加されていない時、金属中の自由電子は熱的平衡にしたがって、
あらゆる方向に自由に動き回っている。電界が印加された場合、自由電子は
電界によって加速されながら、格子振動している陽イオンや不純物に衝突しながら
玉突き状態で移動を始め、金属は1cm3に自由電子が1022個程度あるので、電流が
流れる。陽イオンの格子振動は、高温では大きく振動するので自由電子が衝突する
確率が高くなり、電流が流れにくくなる。自由電子が衝突する時間間隔は、一定では
ないので電流量(電子の移動速度に比例)は一定にはならないものの、平均速度は
存在する。
平均速度
時間
1=51
自由電子
金属の熱の伝わり方>ミクロの視点で見ると「熱は粒子の運動の激しさ」を意味する。金属が加熱されると、熱エネルギーを
吸収した自由電子が運動エネルギーを得て激しく運動し、この運動が金属原子間で伝わる事によって原子(拘束された電子+
原子核)が激しく運動し(正確には結晶の格子振動)、この現象が他の原子に伝搬していく。よって、自由電子がある金属は
熱を伝えやすいということになる。電気と熱をよく伝える金属は、銀、銅、金、アルミニウムの順番であり、銀は単位体積あたりの
自由電子の密度が高いので、電気も熱もよく伝える。
参考>金属の熱伝導率(単位 W/cm・deg )
銀4.28, 銅4.01, 金3.18, アルミ2.35, 亜鉛1,19, ニッケル0.91, 鉄0.84, 白金0.73, 錫0.67,鉛0.35, チタン0.22, ビスマス0.11
1=52
参考にした文献> 「ニュートン2016年9月号」、ニュートンプレス
< 金属が銀色に光る理由 >
白色光、可視光
白色光、可視光
金色の反射光
白色の反射光
X線、ガンマ線
X線、ガンマ線
有色金属の<金>の場合
銀色金属の<銀>の場合
参考にした文献> 「ニュートン2016年9月号」、ニュートンプレス
1=53
金属光沢発生のしくみ>光の正体は電磁波(電界と磁界が振動しながら伝わる)であり、これは「電気を帯びた粒子を
揺らす波」と表現可能である。マイナス電荷を有する自由電子は、金属に光が照射されると、金属中に振動電界が発生し、
この電界を受けて自由電子が加速され集団的に動くようになる。その結果、自由電子が光と同じ波長の振動数で揺さぶら
れるようになる。照射された光のうち、可視光線が金属表面に到達すると金属表面の自由電子が可視光線と同じ周波数で
振動させられて、可視光線をいったん打ち消して金属内部に侵入させない。同時に自由電子は自分自身の振動によって
照射光と同じ周波数の可視光線が発生し、金属表面から放射(=反射光)する。
ただし、自由電子の動ける速さには限度があり、照射光においてエックス線やガンマ線成分は金属内部に侵入し、内側の
電子殻にある電子に光が到達し、拘束電子の励起にエネルギーが消費される。この理屈によって赤外線などの可視光より
も低い周波数の光は金属表面で反射されることが分かる。ただし、金属の種類によって自由電子の動ける速度が異なり、
銀などはほとんどすべての可視光を反射するが、金(ゴールド)の自由電子は青色や緑色の可視光を打ち消すことが出来ず、
青や緑色は金属内部に侵入し、残りの色の成分(主に黄色)を反射するので黄金色が見える。
自由電子の振動できる最高速度は金属の電子密度が高いほど早くなり、電子が82個も詰まっている金属鉛などは
放射線の侵入を防ぐことが出来る。高い周波数の波長の場合は、光からエネルギーを得た電子は、原子核からの束縛を逃れて、
外に飛び出てくることがあり、これは光電効果と呼ばれる。
1=54
真空準位
EVAC
電子親和力
仕事関数
イオン化ポテンシャル
伝導帯
伝導体下端
ECBM
バンドギャップ(Eg)
フェルミ準位
EF
価電子帯上端
EVBM
真空準位>電子が物質から無限に離れる事の出来るエネルギー
電子親和力>電子を一つ付与するのに必要なエネルギー
イオン化ポテンシャル>電子を一つ取り除くのに必要なエネルギー
フェルミ準位>化学ポテンシャル。電子の占有と非占有状態の境界の
エネルギーで、電子の存在確率が½となるエネルギー
仕事関数>真空準位から計ったフェルミ準位
バンドギャップ>ECBMからEVBMを引いた値
CBM(Conduction Band Minimum), VBM(Valence Band Maximum)
バンドギャップ
価電子帯
1=55
<原子AとBで電子軌道のエネルギー準位の差が小さい場合>
反結合性軌道
電子軌道の
エネルギー
準位
幅広のバンド
狭いバンドギャップ
A
B
結合性軌道
反結合性軌道
狭いバンド
電子軌道の
エネルギー
準位
A
幅広いバンドギャップ
B
結合性軌道
<原子AとBで電子軌道のエネルギー準位の差が大きい場合>
孤立した原子AとB元素
分子A-B
A-B元素から
構成される固体
図> 孤立した原子、分子及び固体中における電子軌道のエネルギー準位
電子準位の異なる元素間では、原子間の準位の差に応じて固体になった時のバンドギャップの
幅に差が出てくる。
1=56
金属銅の色
金属銅が吸収する波長域
紫外線領域
赤外線領域
100
光の反射率 (%)
金属(銀)
金属(銅)
金属(金、黄金)
0
400
500
600
光の波長 ( nm )
金属に色がある仕組み>金属(銅)は点線領域の波長は反射しにくいので、反射光は赤色が強く見えるが、点線領域の
可視光も50%程度は反射するので、ここの光(弱い白色)も加算されて、結果として反射光は「白っぽい赤色」として見える。
一方、銀は可視光領域のほとんど全てを反射するので、反射光に色はつかず、銀色(鏡面)に見える。グラフから金、銀、銅
など金属は、赤外線領域の光を反射することが分かる。注意> 反射光であるので、当然、照射光の波長によって外観の
色合いは変化する。
1=57
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