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南極隕石について
学生番号:01150001
総合文系 1 年 赤嶺俊希
2015/7/15
1.はじめに
現在、日本の隕石保有数は 16000 個以上
で世界二位であるが、この狭い面積の島に
降り注いでるのではなく、他の地域と比べ
て隕石の探索がしやすいためである。
これほど多くの隕石が降り注いでいるわけ
ではない。実際、日本の本土で隕石である
(2)風化が起きにくい
と認定されたものは 50 個ほどである。しか
南極隕石は長い間氷床に閉じ込められ、
し、1969 年、南極地域観測隊が昭和基地付
また表面に出現してからも雪や雨が非常に
近の山脈のふもとで 9 個の隕石を発見した
少なく、また極寒の南極の空気の中にある。
ことを皮切りに、今では 16000 個ほどの南
そのため、鉱物間の結合を緩める水流や石
極隕石を保有している。
中の水分の凍結と融解による影響をあまり
では南極隕石は何故このように大量に発
見されているのであろうか。また、これら
受けない。そのため、隕石が落ちた時の状
態から大きな変化なく保存されている。
の南極隕石は、人間にとってどのような価
値を持つのだろうか。
2.南極隕石の特徴
(3)汚染されていない
南極隕石は南極という人間の手があまり
入りこんでいない場所であるという特性上、
南極で発見される隕石には主に以下の 4 つ
地球上にある人為的な物質による汚染をほ
の特徴を持っている。
とんど受けていない。
(1) 雪氷の上に転がっている
南極以外で発見される隕石は、あったと
(4)隕石の種類が多い
しても他の普通の石に紛れてしまい、非常
1969 年の南極隕石発見のときに回収さ
に発見しづらい。特に森林などに落ちてし
れた隕石は 9 個しかなかったにも関わらず、
まうとほぼ発見できなくなってしまう。雪
その種類は 6 種類ととても豊富だった。ま
氷に覆われた南極大陸では、それらの隕石
たそれからも月由来の隕石や、火星由来の
は白い雪氷の中に隕石がただ一つ浮いてい
隕石など珍しい隕石が発見され、水星や金
るように存在しているため、目視で存在が
星から飛来された可能性がある隕石さえあ
把握でき、非常に探索しやすい。南極で隕
る。
石が多くみられるのは、南極に多く隕石が
3.南極隕石の発見される場
所
なっている考え方は、20 世紀にオパーリ
ンが提唱した化 学 進 化 説 である。化学進
化説は、簡単な物質が化学反応を繰り返
すことで徐々に複雑な物質を形成してい
南極隕石はたいてい、大きな山脈のふ
き、その過程で生命が生まれた、とする
もとの氷が雪に覆われておらず露出して
仮説である。この説は海底の熱水噴出孔
いる場所(裸氷帯)で固まって発見される
が生物に必須のアミノ酸などを形成する
ことが多い。このように隕石が局所的に
環境を作り出すことができる点などで支
発見されるのには、氷床の流れと深い関
持されている。これはつまり、地球上の
連があった。
生命は地球の物質である、ということで
南極大陸に落ちた隕石は氷床の中に閉
ある。
じ込められ、氷床の海に向かう流れに巻
反対に、地球の生命体は地球外から隕
き込まれる。海に流れ出すまでに何も障
石や、恒星が出す光の放射圧と共に飛来
害となるものがないと、隕石もそのまま
してきた、とする説をパ ン ス ペ ル ミ ア 仮
氷床から切り離された氷山と共に海に落
説 という。これは「隕石に乗った微生物
ちていく。だが氷の流れる経路に山脈が
が宇宙船の放射に耐えきれない」
「地球に
あると、流れを止められた氷は日射によ
突入する時の高温に耐えられない」など
って融解したり、風によって風化された
の理由で化学進化説に比べるとあまり支
りして消えていく。こうして氷の表面に
持を得られなかった仮説であるが、南極
隕石が浮かび上がってくる。このような
で大量の隕石が手に入り、研究が進めら
隕石の集積システムがあるために、隕石
れ て い る 。 2011 年 に は 南 極 隕 石 か ら
は山脈の麓に集合するのである。
DNA に含まれるタンパク質であるアデ
ニンやグアニンが発見されており、最近
では 2014 年に南極隕石中から、代謝に必
要なビタミン B3 として知られるニコチ
ン酸やナイアシンといった物質も発見さ
れている。これらはパンスペルミア仮説
を支持する重要な証拠となりうる。これ
4.南極隕石の研究利用につ
いて
から南極隕石の研究が進むにつれ、宇宙
に生物の種があるという重要な証拠が出
てくる可能性は十分にある。そうなれば、
それは地球の生命の起源の解明について
生物学の一大テーマである「生物はど
の重要な一歩になるだけに留まらず、他
こからきたのか?」という問いには人間
惑星の地球外生命体の存在に関する研究
はまだ確信を持って答えられていない。
においても大きな影響を及ぼすことにな
生命の起源に対して現在最も一般的と
ると思われる。
2015/7/14 閲覧
5.おわりに
『AstroArts:隕石の中から DNA の構成
宇宙開発が進んだ 1980 年代から我々
要素と宇宙由来の有機物を確認!』
の宇宙に対する見識はどんどん広がりを
(http://www.astroarts.co.jp/news/2011/
見せている。だがそれが広がっていくに
08/22meteorite/index-j.shtml) つれ、また更にわからないことが増えて
2015/7/15 閲覧
いることも事実である。南極隕石はこれ
らの宇宙に関する未知の事実を解き明か
「生物はどこからきたのか?(パンスペ
す手掛かりを我々に与えている。地球で
ルミア仮説)』―文・浅川伸一(東京女子大
最後に発見された大陸に、宇宙につなが
学情報処理センター助教授)
る重要なものが存在するというのは少し
(http://www.cis.twcu.ac.jp/~asakawa/M
ドラマチックであるが、事実人間は次の
athBio2010/panspermia.html)
ステップに進みつつあるのであろう。今
後の南極隕石の研究に注目したい。
参考にした文献・サイト
『北極と南極の 100 不思議』(東京書籍)
―監修・神沼克伊 著・神沼克伊、麻生
武彦、東久美子、和田誠、渡邉研太郎
『国立極地研究所・南極サイエンス基地』
(http://polaris.nipr.ac.jp/~academy/scie
nce/index.html) 2015/7/14 閲覧(画像
提供元)
『生物は海底の熱帯噴出孔から生まれ
た?』
(http://home.hiroshima-u.ac.jp/hubol/bi
osphere/deepsea/hydrothermal.htm)
― 文 ・ 長 沼 毅 ( 広 島 大 准 教 授 ) 
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