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Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 羽毛品質の改善に関する検討 Study for improvement of the feather quality 河田, 敏勝; 落合, 穣; 松浦, 信男; 榊, 宏之; 西村, 訓弘 Kawada, Toshikatsu; Ochiai, Yutaka; Matsuura, Nobuo; Sakaki, Hiroyuki; Nishimura, Norihiro 三重大学社会連携研究センター研究報告. 2010, 18, p. 51-56. http://hdl.handle.net/10076/11468 羽毛品質の改善に関する検討 ■ quality for of the Study St ud yf wimprovement I mpr ove me nt O f t Aefeather f e at Ae y qual l ' t y 河 田敏勝 ,落合 穣 1),松浦信男 1 ) ,榊 宏 之 1),西村 訓弘 1 ) 1 ) 2) T o s Al ' kat suKawdal )2) Y ut a kaOc Al ' al' 1 ) ,No buoMat suu z d) ,Hl ' Z 1 0 yu hl ' Sa kahl' 1 ) , No n' Al ' r oNl ' s Al ' mu m1) , 1 )nl anS l at l ' o na lMe d l ' c a lSc l ' eDCe ,So c i a la ndEmq ' Z 1 0 Dme Dt a lMe d l ' C 1 ' ne ,Gr adu at eSc ho o l o fMe d l ' c l ' ne ,Ml ' eUDl' ve z : S l ' t y 2 )KawadaFe at he rCo . ,Lt d. 1.羽毛についての基礎知識 れらの他 には各種ダックとマスコピーのハイブ 羽毛製品に使われている羽毛は、-羽の鳥 リッドのムーラー ( 不妊)だけである。 から採取できる羽毛の量が限られている為、食 肉産業からの副産物を利用しているのが実情 2.羽毛供給の現状 である。また、ダウンと呼ばれる綿毛は水鳥し 昨今は、動物愛護の間違った認識と動物愛 か持っておらず、食 肉として用いられている家 護協会の意図的な情報操作が激しい状況とな 禽 は、ガチョウ( グース)とアヒル ( ダック)とマス っており、これらを受けて行われる極端な抗議 コピーの3種類だけである。 活動を避 ける為 に、環境破壊を覚悟 に、多く Ans e r 具 体 的 には、キバ シハ イイロガン ( の地域で、ハ ーベストダウン( 換 羽期 の手詰 a ns e ra ns e r )から家禽化されたヨーロッパガチョ め)の収穫量が極端 に減ってきている。この為、 Ans e rc yg noi de s )から家禽 ウと、サカツラガン( 現在では屠殺時に採取される羽毛がほとんど 化されたシナガチョウの2種類から、現在登録 の供給源 となってきている。また、世界 中にお ハイブリッドを入 されている54種類のガチョウ( けるコスト競争 により、食 肉産業は、如何 に短 a na spl a t y r h ynhos れ ると94種 類 )とマガモ ( 期 間に、最小 限の飼料 を使って、可能な限り pl a t y r h ynhos )から家禽化 された60種類 以上 の肉を回収できるかという国際競争 に明け暮 c a i r i namos c ha t a ) のダック、並びにノバリケン ( れ、水鳥飼育もブロイラー化、品種改造による から家禽化されたマスコピーが食 肉として用い 短期 間飼 育 に移行 してきている。一部では、 られている家禽化された水鳥であり、羽毛製品 日照時間と温度管理 により、一 日を23時間と に利用される羽毛を採取する品種としては、こ して飼育し、飼育期 間の短縮を図ることも行わ れている。このような環境下では、羽毛 自体の - 51- 研究成 果報 告 1 ) 三重大学大学院 医学系研 究科生命 医科学専攻環境社会 医学講座 トランスレーショナル 医科学 2)河 田フェザー株 式会社 600-1000個 /g ダウンのサイズ : 成 長 は二 の次 になる為 、食 肉用 に飼 育 された 水 鳥 か らの羽 毛では、短 期 間飼 育 による換 羽 O上級クラスのダウン( 綿毛) 回数 の減 少 などにより、ダウンの小粒 化 、羽枝 ガチョウから採取される。 1200-1800個 /g ダウンのサイズ : の低 密 度 が進 み 、品質 が大 きく低 下 してきて Fi g. 1、2参 照) 特 にグースでは、長 期 間 いる ( O中級クラスのダウン( 綿毛) の飼 育期 間 が必 要 となることか ら、食 肉用 とし ガチョウの良くない羽毛、飼 育期 間の長いダック ての生産 量 自体の減少も進 んでいる。 とマスコピーから採取される。 。 2000-2800個 /g ダウンのサイズ : Oボリュームゾーンに使用されるダウン( 綿毛) ダックとマスコピーから採取される。 ダウンのサイズ : 2500-4000個 /g O低価格帯のダウン( 綿毛) ダックの飼育期間の短い物及び加 工度が低い物、 選別残の再選別物。 ダウンのサイズ : 3000-5000個 /g Fi g. 1 正 常なダウン 3.嵩高の良い羽 毛を作るために 羽 毛 を取 り巻 く環 境 の変 化 に伴 いダウンを 取 り扱 う上でも種 々の問題 が発 生 してきてお り、 特 に下記 の課題 が懸念 されている。 1.トッ クラスの羽 毛 の生産 が大 きく減 少 し、 プ 需要も大きい為 、供 給 に問題 がでてくる。 2.上級 クラスの羽 毛 がガチョウ( グース)のみ で、数 量の多いダックが使 えない。 著者 らは、これ らの課題 解 決に 取 り組 み 、そ Fi g. 2 低 品質 のスモールダウン れぞれ に対 して有 効 な解 決 策 を見 出し、事 業 - の適 応 を果 たしている。以 下 にその詳 細 を ( 参考) ダウン素材の分類 ガチョウ、マスコピーとダックのダウンのマーケ ットでの使われ方 は、下記 の分類 により取り決 め 示 した。 3-1.トップクラスの羽 毛の減 少 - の対策 られている。 上述 の 1の課題 につ いては、未 熟 羽 毛の含 ○トッ クラスのダウン( 綿毛) プ 有 量 が、ガチョウのハ ー ベ ストダウンで は 2% ガチョウのハーベストダウン( ガチョウの飼育期 間 以 下であるため、未 熟 羽 毛 の選 別 排 除 を行 う が長いものから採取される) 2- 5 -ラー種の羽毛は品質も安定して、非常に嵩 考えられてきた。このような考え方 に立ち世界 の良い羽毛であると考えられていた。しかしな 中で何 十年 と努力 はされてきたが、理論 がで がら、ムーラー種の羽毛は、フェザー にもダウ きていなかったため、これまでは適切な方法が ンにも、小羽枝 に3本突起の節 が多く存在し、 開発 されてこなかった これ に対して著者 らが 飼 育期 間が長 いため節も大きく成長 している 関わっている河 田フェザー㈱では、新たな理 ため、非常に絡み易く、ダウンとフェザーの選 論 を構 築 し、それを実現した方 法 によって課 別 が難 しい羽毛として知 られていた。また、フ 題を克服している( 理論及び方法は社 内秘) 。 ェザーは羽軸 が太 くて固いため、大きな羽毛 。 の混入が起こり、品質上 において大きな問題 と 3-2.グース以外からの上級ダウンの取得 課題 2については、品質の良い羽毛がガチ なっていた。 ョウ以外でも存在することは知 られていたが、 羽毛の選別 が難 しく、これまでは加 工度 の低 い状態 ( 低 品質のダウン)で使われていたのが 実情であった しかしながら、近年では技術進 。 歩 により、羽毛の形状が顕微鏡 下で 目視 によ り確認 できるようになったため、その性質の推 定も容 易 となってきている。著者 らは、グース 以外の羽毛からの上級ダウンを取得する試 み を種 々行っており、既 に事業化 にも成功してい る。下記 に、その一つの成功事例を示した 。 ( 事例) フランスのピレネー地方で飼育されているム ーラー種は、飼 育期 間が長く、フォアグラ生産 にも良質の肉としても用いることができる非常 に優れた品種であり、マスコピー種の血筋であ ることから、羽毛の小羽枝が長く、飼育期間も1 Fi g. 3 ムーラーの顕微鏡写真 3-14週 と長 いので、非常に丈夫な羽枝 にな Fi g. 3参照) フォアグラ生産 の為 に っている( 。 屠殺 時 に羽毛を取 り除く為 には、1)水 に5 は、飼育期 間は短くできず、肉も高級 肉用で、 分 ほど浸した後 、熱水 に2分 -3分浸して、皮 飼 育期 間が 12週 と少 し短くなると味が落ちる 膚を加熱し、皮膚から羽毛が抜 けるようにする 為 、マーケットでは受け入れられない。このよう か、2)熱水 に1分 ほど浸す と同時に超音波を な事情から飼 育期 間が安定しているので、ム 使って一気 に皮膚を湯 に曝す方法がある。前 -5 3- 研究成 果報 告 理論 と方法を考えれ ば良い結果 が出ることが 者 には羽毛に水がしみ込み、羽毛が非常に柔 混じった他の水を別排水経路とするように食 肉 らかくなり傷まないという特徴があり、後者 には 処理場での改善を促 し、混入 防止 と排水処理 節水 できるという利 点はあるが、太 く大きな羽 方法の負担軽減を同時に行ってもらう( 少量で 毛の中心まで、水がしみ込まないので、フェザ も負担の大きな体液の入った排水 と処理負担 ーが固く脆く、 ラッキングにより壊れ易いとい の少ない羽毛の入った排水を分けて排水処理 う特徴がある。 をする)ことを徹底させた。 プ 水 が高価 で、屠殺 時 に大量の水 が使 い難 ダウンとフェザーの選別方法の改善-の措 いフランスの国情から、フランスでは、大きなフ 置 としては、現在使 われている選別理論 の改 ェザーの羽枝 に水がしみ込んで柔らかくならな 善とそれを実現するための技術 開発 が必要で い内に、羽毛のプラッキングマシーンにかけて あると判断し、実行した。 しまう食 肉処理場 が多く、固い羽枝 が折れて 羽 毛の性質上、湿度 が下がると選別 が難 し 生じるフェザーファイバーが大量 に混入 してし くなることは分かっていたが、その理 由はほと まう問題 が生じていた。また、屠殺 時の熱水 と んど理解 されていなかった しかしながら、昨 。 ラッキング時のシャワーを混ぜてしまい、脂 今 の電子顕微鏡 の発 達 により、ダウンの形状 肪分 、体液 が入った熱水の中に羽毛が浸かる が明らかになり、容易 にその理 由が推定される ことを招いていたため、羽毛が変質し、嵩高も ようになってきた 著者 らは、これらの新たな知 なくなり、使用できる用途が限られるという状況 見を基 にし、下記の対策を実施した。 プ であった 。 。 3-3.ダウンとフェザーの選別方法の改善 以上のような状況を鑑みて著者 らは、ムーラ ー種から良質なダウンを作る方法 について考 察を行い、 選別 し難 いものの特徴 としては、下記 の内 容が知られている。 1.羽枝 、小羽枝の多さとそれぞれの小羽枝 に 1)フェザーファイバーを減少させる ついている節の総数が多い羽毛 2)脂肪 、体液と羽毛を熱水 中で混ぜない 2.節の形状が幅広の物 3)ダウンとフェザーの選別方法を改善する ことが必要であるとの結論 に達し、これ らの 措置 について下記の対応策を実行した。 成熟した羽毛は、上述の両方の問題 点を持 っており、特 にダックは節の形状が幅広で、絡 みやすい。毛綿ガモ類 は、小羽枝 の根元から まず 、フェザーファイバーを減少させるため の措置として、湯付と ラッキングマシーンとの 先 まで、節 が有 り、羽枝も小羽枝 の数も多く、 プ 間に時間を取るように食 肉処理場での処理方 一つ のダウンに大量の節 がついてお り、羽毛 どうLが絡み合い、繋がり塊状 になる。 法 に改善を行い、羽毛に十分 に水分が染みる ようにす る対策 を施 した。次 に、脂肪 、体液 と 羽 毛を熱水 中で混ぜないための措置 として、 ガチョウの繋 がる羽毛だけを手選別 して塊 状 にしたものを標 準室 ( 20℃ 、65%)の状魔 に置 くと、ほとんど繋 がらなくなった また、ガ 。 プ ラッキング時のシャワー水と熱水及び体液の - 5 4- チョウにおける節の幅がダックより狭いため、塊 もし、大きなハネが入っていれ ば、それが羽毛 状態のダックの羽毛は多少標準室で変化した どうしの繋がりを断つように働くのではないかと が、ガチョウと比較すると繋がりはかなり残るこ 推察した。 以上の考察を経ることで発想 を変 え、最初 とが分かった。顕微鏡下で羽毛を拡大しながら に2重の選別機でダウンを取り除き、手前の部 小羽枝 が閉じていくことが明らかとなった 羽 屋 に残ったフェザー類をさらに従来の選別機 毛の温度調整機能 は、湿度の変化 により、小 に移動して、大きなフェザーから小さなフェザ 羽枝が開いたり閉じたりすることで、1)断熱層 ーと一部ダウンが混ざったフェザー に分離す である空気 の小部屋を多くしたり減 らしたりす るという2段階選別を行うことを考案した。また、 ることと、2)吸湿発熱 により生じた温度上昇を ダウンとフェザーの分離を良くするために、壁 用いて空気の流れを作り、湿度を周り-移動さ をフェザーが隣の部屋まで到達できない高さと せることの複合的な作用によって、全体が調整 5mま した ( 通常4-6メートルの立ち上がりを12. されていると考えられる。 で高めた)。このような羽毛選別機 では、軽い 。 以上の観 察結果より、絶対湿度をある程度 フェザーは、その形状から時々バランスを崩し、 のレベル以上 に高めれば、ダック、マスコピー 2-3m落ちてはまた上がってくることを繰り返し の羽毛といえども、小羽枝が閉じて、羽毛同士 ながら上昇するが、乱気流を発生しやすい様 の繋がりが減ってくることが考えられた。以上 に壁 に中途から上部 に突起を付 けることで、 のような理論 に基づき、新たな羽毛選別機 を 1 0m以上にはなかなか上がれなくなるため、2 開発し、グース以外からの上級ダウンの取得 重 目に入るフェザーの量は極稀 に少なくなる する方法を確立した。 上記の検証より、湿度が或る一定以上 に高い 。 5m以上の立ち上がりを持った2 環境下で、12. 3-4.新たな羽毛選別機の開発 重式選別機 を用いれ ば、良質なダックダウン 現在の羽毛選別機では、羽毛は風を受けて の選別が可能となることを確認した。 持ち上げられ、次の部屋-つながる壁を越 え るか超えられないかで選別される。この部屋を 次 に、温度 20℃ 、湿度 65%における羽毛の 絡み具合 について確認を行った この結果 、 。 いくつもつなげて、順次重い物からより分けて 行き、最後 の部屋 に軽いものを取る。このよう に選別されたものがダウンの含有量の多い羽 毛となる。しかしながら、この方法では良質の ダックの羽毛は、絡みやすいダウンと絡み易い 小さなフェザーが最後の工程まで残るため、 静止状態ではダックのダウンは絡みがかなり 少なくなり、ガチョウのダウンはほとんど絡まな くなることが確認された占羽毛が動いている間 は、放湿性が高くなるのか、動いていない時よ りも羽毛が絡みやすく、20℃ 、湿度 65% では、 選別 が不可能であった 羽毛が動いている状 。 選別 に限界があり、絡んでいる羽毛をバラバラ にする必要があった そして、羽毛の選別 中に、 態で色々試してみると、温度 25℃ 、相対湿度 。 80% 以上で、全く絡みのない理想的な選別が - 5 5- 研究成 果報 告 湿度を上げた状態を観察すると、湿度とともに、 できることが判 明した。選別を確認して行くと、 4.まとめ 本検討では、高価なガチョウの羽毛を使 用 25℃ 、70% 以 上なら、フェザーの含 有料 が 5%以下に選別できることが確認できた。また、 しなくても良質の羽毛を作成する技術 につい 温度 が低 下しても湿度 が上がるため、夜 間の て考察と検討を行い、上級クラス或いはトッ 温度 が下がった場合 の選別 にも、問題 がでな クラスで使用可能なガチョウ以外の羽毛を作る いことが確認できた。昼 間の湿度が25℃ 、湿 ことに成功した。また、本技術 によって作製 し 度 70% 以上の状況であれ ば、選別 可能で有 た羽毛は、その繊維の圧縮 回復性の良さから、 り、昼間の温度が25℃ 、湿度 80%以上であれ 今までにない、軽量でボリュームのある羽毛素 ば、フェザーの含有量が4%以下の理想 的な 材であり、まったく新しい高品質羽毛を創 出し 選別が可能になると結論づけた。 たことになる。 プ 以上の改 良と検証 を進 めることで、従来技 以上のような技術基盤を確立することで、著 術では、ダウン率 8 8 %、かさ高 1 6 0 mmが限界で 者 らは世界的な原材料の獲得競争状態 にある あったが、検証 の結果 明らかにした理想 的な 羽毛業界 において、事業継続さらには勝ち残 2 %以 上 、か さ高 気 候 状 態 で は 、ダ ウン率 9 るための高い優位性を獲得することができてい 1 6 5 mm以上の羽 毛が、無人で 24時間、生産 る。 可能となった。 -5 6-