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AIJ投資顧問株式会社事案を踏まえた「金融商品取引 業等に関する内閣
AIJ投資顧問株式会社事案を踏まえた「金融商品取引 業等に関する内閣府令」等の改正案の公表について 2012 年 11 月 はじめに 金融庁はAIJ投資顧問株式会社の事案(以下、「AIJ 事案」といいます。)を受けて、資産運用にかかわる規制・監督等 の見直し(案)を公表し、意見募集の後に、2012 年 10 月 12 日に「金融商品取引業等に関する内閣府令」等改正案(以 下「改正案」という。)を公表しました。この改正案については、2012 年 11 月 12 日まで意見の募集を行っております。 今回は、金融庁より公表された改正案について、主に投資一任業者への影響を中心に解説します。 <金融庁の報道発表資料へのリンク> ¾ AIJ 投資顧問株式会社事案を踏まえた資産運用に係る規制・監督等の見直し(案)に係る御意見の募集の結果及 び「金融商品取引業等に関する内閣府令」等改正案の公表について (2012 年 12 月追記) 金融庁は 2012 年 10 月 12 日に公表した改正案に対するパブリックコメントの概要及びコメントに対する考え方を示す とともに、改正案を一部修正の上で 2012 年 12 月 13 日付で「金融商品取引業等に関する内閣府令」等公布をしていま す。改正案では不明確だった事項に対する金融庁の考え方、施行・適用日などが記載されていますので、当ファンド ニュースをご利用の際は下記のリンク先を併せてご参照ください。なお、当改正についての解説は、改めてファンド ニュースにおいて公表することを予定しています。 <金融庁の報道発表資料へのリンク> ¾ 「金融商品取引業等に関する内閣府令」等改正案に対するパブリックコメントの結果等について http://www.fsa.go.jp/news/24/syouken/20121213-2.html 改正案の概要 改正案は、ファンドスキームを用いた AIJ 事案が見直しの発端になっており、第三者(国内信託銀行等)によるチェック が有効に機能する仕組みの構築を目的としたファンド監査の導入など、顧客が問題を発見しやすくする仕組みや投資 運用業者等に対する規制・監督・検査の在り方の見直しを目的とした各種開示書類の記載事項の拡充などが検討され ております。規制対象は投資一任業者に限らず、顧客資産の運用又は管理を行う信託会社と保険会社も含まれていま す。 今回は厚生年金基金が投資一任業者と投資一任契約を締結し、信託銀行と年金特定金銭信託契約を締結した場合 を例示し、解説をおこないます。 1.投資一任契約において運用資産に対象有価証券を組み入れる場合の措置 AIJ 事案では、投資一任業者が「ファンド」および関係会社などを利用して年金基金などへ虚偽の報告を行っていた ことが問題となりました。そのため第三者(国内信託銀行等)によるチェックが有効に機能する仕組みを講じています。 投資一任業者 投資一任契約を締結し、対象有価証券*1 を取得又は買付を実施する場合、当該投資一任業者は次の①から③の 措置*2 を講じる改正が検討されています(金融商品取引業に関する内閣府令改正案第 130 条第 1 項 15 号)。なお、 特定投資家との投資一任契約に基づき投資する場合には、規制の対象外とされています。 改正内容 信託銀行が対象有価証券の真正な価額を知るために必要な措置として次に掲げるいずれかの措置を講じること ① ・信託銀行等が当該対象有価証券の価額について、6月(厚生年金基金については3月)に1回以上、当該価額の算出を行う ものから直接通知を受けることを確保するための措置 ・信託銀行等が当該対象有価証券の価額について、当該価額の算出を行うものに対し直接確認することができることを確保す るための措置 ② ファンド監査が行われていること*3,4 信託銀行が真正な監査報告書等の提供を受けるために必要な措置として次に掲げるいずれかの措置を講じること ・ファンド監査を行ったものから直接に提供を受けることを確保するための措置 ③ ・ファンド監査を行ったものから当該金融商品取引業者又はその親法人等、子会社法人等もしくは関係外国法人以外の者を経 由して提供をうけることを確保するための措置 ・その他、信託銀行等が真正な監査報告書等の提供を受けることを確保するための措置 *1:対象有価証券は、国内外の投資信託及び投資証券、みなし有価証券として取り扱われる匿名組合又は投資事業有限責任組合への出資など、い わゆる「ファンド」と呼ばれるものをいいます。改正案においては、下記のとおり定義されています。(金融商品取引業に関する内閣府令改正案第 96 条第4項) 次に掲げる有価証券(当該有価証券に関して金融商品取引法第4条第7項に規定する開示が行われている場合に該当するものを除く。)をいう。 一.金融商品取引法第2条第1項第 10 号又は第 11 号に掲げる有価証券 二.金融商品取引法第2条第1項第 14 号に掲げる有価証券のうち、投資信託の受益証券に類似するもの 三.金融商品取引法第2条第1項第 17 号に掲げる有価証券のうち、前号に掲げる有価証券の性質を有するもの 四.金融商品取引法第2条第1項第 20 号に掲げる有価証券で、前3号に掲げる有価証券に係る権利を表示するもの 五.前各号に掲げる有価証券に表示されるべき権利であって、金融商品取引法第2条第2項の規定により有価証券とみなされるもの 六.金融商品取引法第2条第2項の規定により有価証券とみなされる同項第5号又は第6号に掲げる権利 *2:次の対象有価証券の場合は当該措置を講ずる必要はありません(金融商品取引業に関する内閣府令改正案第 130 第3項 1 号、2号) 一.投資信託の受益証券であって、当該投資信託の受託者と運用財産の権利者(信託会社等)が同一であり、かつ投資信託約款において投資の対 象とする資産が金融商品取引所に上場されている株券若しくは投資信託、国債証券、市場デリバティブ取引に係る権利、為替予約取引預金又は コールローンに限定されているもの。 二.指定外国金融商品取引所に上場されているもの *3:金融商品取引業者の所属する金融商品取引業協会の規則の定める要件を満たす外部監査を指し、当該協会規則には次に掲げる事項が定めら れなければならないとされています(金融商品取引業に関する内閣府令改正案第 130 条第 4 項第 5 項) 一.外部監査の対象となる貸借対照表、損益計算書その他の財務計算に関する書類に関する事項 二.外部監査を行う主体に関する事項 三.外部監査の基準及び手続に関する事項 四.協会規則を変更する場合には、あらかじめその内容を金融庁長官に通知する旨 *4: 国内籍と外国籍の区別なく義務付けファンド監査は義務付けるとされております。(2012 年 10 月 12 日金融庁公表 「AIJ 投資顧問株式会社事案 を踏まえた資産運用に係る規制・監督等の見直し(案)に係るコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」) 信託銀行(信託会社等) 信託銀行(信託会社等)は上記①および③により対象有価証券の価額、監査報告書等および金融商品取引業者が 運用報告書に記載した有価証券の銘柄・数・価額といった情報を入手した場合、これらの情報を照合し、その結果を 当該権利者に対して通知することを確保するための十分な体制を整備する必要があります(金融機関の信託業務の兼 営等に関する法律施行規則改正案第22条第1項第9号、信託業法施行規則改正案第41条第2項)。 2.契約締結前交付書面の記載事項の拡充 投資一任契約等*5 に係る契約締結前交付書面の記載事項に、次の①から③の事項を加える改正が検討されてい ます。投資一任契約であり特定の銘柄の対象有価証券を投資の対象とする方針の場合には、さらに、④から⑧の事項 を加える改正が検討されています(金融商品取引業に関する内閣府令改正案第 96 条第 1 項第 2 項)。 *5:投資一任契約又は投資一任契約の代理又は媒介の契約 改正内容 ① 運用の基本方針 ② 金融商品取引業者の業務又は財務に関する外部監査の有無 ③ 外部監査を受けている場合は、外部監査を行っている者の氏名または名称ならびに外部監査の対象と結果の概要 ④ 対象有価証券の名称、価額の算出方法、価額を報告する頻度および方法に関する事項 ⑤ ファンド関係者(対象有価証券の発行者、ファンド資産の運用に係る業務を行う者、ファンド資産の保管に係る業務を行う者、そ れら以外の業務に係る事務を行う者)の商号・名称、住所・所在地、それらの者の役割分担 ⑥ 金融商品取引業者等とファンド関係者の資本関係および人的関係 ⑦ ファンド関係者間の資本関係 ⑧ ファンド資産に係る外部監査の有無、当該外部監査を行うものの氏名又は名称 3.契約締結時交付書面の記載事項の拡充 投資一任契約等に係る契約締結時交付書面の記載事項に、運用報告書を交付する頻度を加える改正が検討され ています(金融商品取引業に関する内閣府令改正案第 107 条第 1 項第 11 号)。 4.運用報告書の記載事項の拡充 投資一任契約の場合、運用報告書の記載事項に次の①から③の事項が加わるとともに、運用財産に対象有価証券 が含まれている場合には、さらに次の④から⑧の事項を加える改正が検討されています*6。また、運用報告書の交付 頻度は従来から6月とされていましたが、投資一任契約の相手方が厚生年金基金又は国民年金基金である場合は3 月を超えてはならないとする改正が検討されています(金融商品取引業に関する内閣府令改正案第 134 条第 3 項)。 なお、投資一任契約でかつ運用財産に対象有価証券が含まれている場合は運用報告書のうち対象有価証券の銘 柄、数、価額を信託会社等に遅滞なく通知する必要があります(金融商品取引業に関する内閣府令改正案第 123 条 第 1 項 29 号)。 改正内容 ① 運用報告書の対象期間における運用財産の運用の経過(運用財産の価額の主要な変動の要因を含む) ② 運用状況の推移 改正内容 ③ 当該金融機関がその業務または財務に関する外部監査を受けている場合において、当該運用報告書の対象期間において当 該外部監査に係る報告を受けた時は、外部監査を行った者の氏名・名称、外部監査の対象、結果の概要 ④ 対象有価証券の名称、価額の算出方法、価額を報告する頻度および方法に関する事項 ⑤ ファンド関係者(対象有価証券の発行者、ファンド資産の運用に係る業務を行う者、ファンド資産の保管に係る業務を行う者、そ れら以外の業務に係る事務を行う者)の商号・名称、住所・所在地、それらの者の役割分担 ⑥ 金融商品取引業者等とファンド関係者の資本関係および人的関係 ⑦ ファンド関係者間の資本関係 ⑧ ファンド資産に係る外部監査の有無、当該外部監査を行うものの氏名又は名称 *6:ただし、当該報告書の交付前 1 年以内に、契約締結前交付書面、契約変更書面、報告書のいずれかにおいて下記事項の全てが記載されている 場合には、記載を省略することが可能(金融商品取引業に関する内閣府令改正案第 134 条第 2 項) 5.事業報告書の拡充 金融商品取引業者が作成する事業報告書の記載事項を追加するする改正が検討されています。改正箇所は投資 運用業に係る経営の状況、投資一任契約に係る業務の状況、投資信託、外国投資信託及び投資法人に関する運用 に係る業務の状況、法第 2 条第 8 項第 15 号に掲げる行為に係る業務の状況と広範囲におよびます((金融商品取引 業等に関する内閣府令改正案 別紙様式第十二号 1 (19)-(22))。これら複数の業務について、共通の性質をもつ改 正も含まれており、改正箇所を性質ごとに分類すると以下の 9 項目の改正が検討されています。 改正内容 ① ② ③ 投資運用業者に対する監査の状況 ファンド資産に対する外部監査の状況 主要な経営指標等の推移 (全体収益、投資運用部門の収益、投資一任契約の件数および運用財産総額、年金基金からの受 託割合など) ④ ⑤ 投資一任契約の契約件数等 (公的年金、私的年金の別を含む) 運用資産の売買に関する発注先 (発注先が自己又は関係会社以外の場合には取引総額の 10%を超える発注先のみの記載、 発注先が自己又は関係会社の場合にはすべての発注先について記載) ⑥ ⑦ 自己又は関係会社が発行・設定する有価証券の組入れ状況 投資先ファンドの価額算出者やファンド関係者((対象有価証券の発行者、ファンド資産の運用に係る業務を行う者、ファンド資 産の保管に係る業務を行う者、それら以外の業務に係る事務を行う者等)における関係会社 ⑧ ⑨ 時価を把握することが困難な投資対象 (情報ベンダーから価格を入手できない場合等を想定) 対象有価証券の名義人 (権利者が信託を行うものであって、投資した対象有価証券の名義人が信託会社でない場合に記載) 6.その他 投資運用業に関する禁止行為を追加する改正が検討されています。(金融商品取引業に関する内閣府令改 正案第 130 条第 1 項 12 号から 14 号) 改正内容 ① 厚生年金基金が分散投資義務に違反するおそれがあることを知った場合に、厚生年金基金にその旨を通知しないこと ② 厚生年金基金から、厚生年金基金令第 30 条第 3 項の規定(投資一任契約は投資判断の全部を一任することを内容とするもの でなければならない)に違反し、特定の取引に関する指図があった場合において、これに応じること ③ 積立金の運用に関して、厚生年金基金に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、または確実であると誤解させるお それのあることを告げること また、投資運用業を行う金融商品取引業者等から投資一任契約の締結の媒介の委託を受けている場合において、 その旨及び当該金融商品取引業者等の商号又は名称を顧客にあらかじめ明示しないで、次に掲げる行為を行うこと を禁止する改正が検討されています(金融商品取引業に関する内閣府令改正案第 117 条第 1 項 34 号)。 改正内容 ① 投資顧問契約の締結の勧誘をすること ② 当該顧客との投資顧問契約に基づき、当該顧客が当該金融商品取引業者等と投資一任契約を締結する場合に当該金融商品 取引業者等が運用として行うこととなる取引の対象に係る助言をすること ③ 投資一任契約の締結の媒介を行うことを内容とする契約の締結の勧誘をすること ④ 当該金融商品取引業者等を相手方とする投資一任契約の締結の媒介をすること さらに、投資運用業者は厚生年金基金との投資一任契約において、厚生年金基金(特定投資家を除く)から運用基 本方針が示された時、それに従い積立金の運用を行うことによる利益の見込み及び損失の可能性について、当該厚 生年金基金の知識、経験、財産の状況及び投資一任契約を締結する目的に照らして適切に説明を行うための十分な 体制を整備していない状況がある場合には、公益に反し投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして取り扱 う改正が検討されています。(金融商品取引業に関する内閣府令改正案第 123 条第 1 項第 28 号) 7.適用時期 金融庁はこれらの改正案のうち法律改正事項につきましては、国会に提出することを検討しておりますが、現時点に おいて適用時期は明記されていません。ただし、外部監査の義務付けの場合は交付から施行までの間に適切な準備 期間を設けることとされています。 おわりに 改正案は対象有価証券の真正な価額に対する措置の構築、業務又は財務に関する外部監査の導入検討、ファンド 監査の導入または検討、各種開示書類の追加開示事項に対するシステム対応など内部のみならず外部との対応も必 要となり、実務に大きな影響を与えると考えられます。 私どもあらた監査法人は、会計・監査のプロフェッショナルとして資産運用業界の発展に貢献をすることをミッションと しており、年金資産の運用管理も含め資産運用に関するさまざまな提言やサービスを提供しています。そのため、改正 案の動向に関しまして、引き続き注視し、随時に情報を提供いたします。 文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることを申し添えます。 あらた監査法人 第3金融部(資産運用) シニアマネージャー 須藤 健 あらた監査法人 第3金融部(資産運用) お問い合わせフォーム 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