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卵巣における11-ケトテストステロンの作用
「卵巣における11-ケトテストステロンの作用」 医学・薬学 (教員名) 矢澤 隆志 (所 属) 医学部 医学科 バイオ 生命情報医科学講座 分子生体情報学 PCOS診断法の開発 11-ケトテストステロンの生理作用の解析 (1)シーズ概要 男性ホルモン(アンドロゲン)は、卵胞の発育に必要不可欠であると同時に、合成が過剰になると卵胞の発育 障害をもたらす。多嚢性卵巣症候群(PCOS)は 、この典型で、男性化兆候を伴う排卵障害となり、 多くの周産期の女性にとって深刻な問題となっている。しかしながら、その原因となるアンドロゲン作用の 実態が、分からないため、明確な診断法や治療法は確立されてない。本研究では、私たちが、哺乳類の卵巣で 多く合成されることを見出した、11-ケトテストステロン(11-KT)やその合成経路が、PCOSによる不妊や生理 (月経)不順のマーカーとなるか調べることを目的とする。同時に、PCOSの原因遺伝子の探索を行う。 (2)これまでの研究成果 70 60 male female Testosterone (ng/ml) 11-ketotestosterone (pg/ml) 私たちは、哺乳類の精巣や卵巣で11-KTが合成されていることを世界で初めて証明した(Yazawa et al. Endocrinology, 2008 149,1786-92)。11-KTは、魚類の雄性化に関わるアンドロゲンであるが、驚いたことに マウスにおける分泌量は、雌雄間に差がなかった(下図)。このようなアンドロゲンはこれまでに報告がなく、 哺乳類では11-KTがメス(女性)において強力なアンドロゲン作用を発揮しており、その合成異常は女性生殖 に大きな破綻をもたらすことを示唆する。よって、11-KTの女性生殖における機能やその動態を調べることは、 非常に重要であると考えられる。 50 40 30 20 10 25 20 male female 15 10 5 0 0 0 24 hours 48 0 24 hours 48 (3)新規性・優位性、適用分野 11-KTは、魚類のアンドロゲンであると考えられていたため、これまで哺乳類においては全く調べられて いなかった。しかしながら、このアンドロゲンは哺乳類の卵巣で多く合成されることが我々の研究で明らかに なった。このアンドロゲンの女性生殖における役割や動態を調べることにより、11-KTがPCOSを含む不妊 患者の診断基準となり、その治療法の確立にも繋がると考えられる。 【適用分野】 11-KTが診断基準となることが明らかとなれば、その血中量を診断するキットの製品化が必要とされるように なる。 特許出願:国際特許 間葉系幹細胞をステロイド産生細胞に分化させる方法 国際公開番号:WO2005/085425 関係論文: Endocinology 147(2006) 4104-11, Endocrinology 149(2008) 1786-92