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さっぽろを元気にする路面電車活用のあり方

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さっぽろを元気にする路面電車活用のあり方
さっぽろを元気にする路面電車検討会議
平成 18 年(2006 年)9 月
提言にあたり
「さっぽろを元気にする路面電車検討会議」では、まちづくりにおける路面電車の
活用の可能性について平成 17 年 8 月より検討を続けてきました。
この会議は次の2つの視点を重視して進めてきました。
1つ目は、『公開性』という視点です。
まちや市民を元気にする路面電車は、市民の皆さまが活用し、支えていくものと考
えています。このような観点から、活用の主体である市民に検討の過程をきちんと見
せることとし、この検討会議の討論及び資料はすべて公開してきました。
2つ目は、この会議では『アウトカム』について議論を行うという視点です。
投資金額をインプットとすると、建設された路線長や購入された車両はアウトプッ
トとなります。これに対してアウトカムとは、どれだけの利用者が増えたのか、沿線
の経済活動がどれだけ活性化したのかということです。
本検討会議では、路面電車への投資によっていかに都市が活性化するかをアウトカ
ムとしました。
路面電車を活用してどのように「さっぽろを元気にする」か、このことが検討会議
に課せられた課題でした。
このようなことを念頭におきながら、提言書である『さっぽろを元気にする路面電
車活用のあり方』をまとめ、これをもとに『まちや市民を元気にする都市の装置』と
して、路面電車を有効に活用していただきたいと考えております。
平成 18 年(2006 年)9月
さっぽろを元気にする路面電車検討会議
委員長
佐藤
馨一
1.路面電車に関するこれまでの検討経過と活用の基本的な考え方
札幌市では、路面電車について平成14年度から約3年間、存廃について検討を
行い、設備投資に一定の税投入が必要であるものの、それまでに寄せられた市民の
意向に加え、民間のノウハウを取り入れるなどの手法により経営効率の向上が見込
まれること、路面電車が持つ人や環境にやさしい特性等がまちづくりへ寄与する可
能性があることなどを踏まえ、平成17年2月にその存続を決定し、今後の取組み
として、都心のまちづくりなどでの活用を検討することとした。
この結論を踏まえ、市民や札幌のまちにとって、路面電車をどのような形で存続
させ、また、どのように活用していくべきかということについて、札幌市によりそ
の具体的な検討の場である「さっぽろを元気にする路面電車検討会議」が設置され
た。
この検討会議では、路面電車を単に沿線住民の通勤・通学等の足となる交通機関
としてだけではなく、魅力ある都心の創造に寄与する「都市の装置」として、また、
将来の都市像を具現化するための「まちや市民を元気にする道具」として、路面電
車の様々な特性等を積極的に活かし、都心の賑わいの創出や地域・産業の振興等、
まちの活性化に貢献することを活用の基本的な考え方として検討を行った。
- I -
2.これからの路面電車
路面電車の現状を踏まえた、これからの路面電車の活用のあり方について
(1)収支改善と運行サービス向上
沿線人口が微増傾向にあるにもかかわらず、利用者数は長期間にわたって微減傾
向にある経営状況を踏まえ、まず早急に収支改善や運行サービス改善等に取組み、
現状での税投入を少なくするための経営改善を図るべきである。
そのためには、沿線住民のニーズや夏冬の利用変動理由等の詳細なマーケット情
報の調査や他都市事例から、利用目的と運行便数の関係等を分析し、利用の実態・
ニーズに合わせた運行サービスの向上が必要である。
(2)利用促進と路面電車の魅力向上
まちを元気にする道具として路面電車を活用するには、単に路面電車の収入を増
やすだけではなく、利用者を増やして人の動きを活発にすることにより、まちを活
性化する社会的役割を持たせることが必要である。
新たな需要を確保するためには、誰を対象に、どのように利用者を増やすのかな
ど、様々な切り口でのニーズの掘起こしが重要であり、住民の足としての通勤、通
学等といった目的以外のイベント等による新たな利用目的の増加や、沿線にある藻
岩山・中島公園等の観光資源を活用した観光客・市民等の利用者掘起こしなどを行
い、路面電車の料金面や沿線施設と連携したサービスの向上についても検討を行う
必要がある。
さらに、今後の高齢社会に対応したバリアフリー*1 なまちづくりの実現に向け、
子供や高齢者、体の不自由な方も安全で気軽に乗降できるよう路面電車そのものを
使いやすく、魅力的な乗り物へと価値を高めるべきであり、老朽車両更新の際には
低床車両*2 を導入すべきである。
そして、こうした利用促進や路面電車の魅力向上の取組みが、沿線の魅力向上に
もつながるものと考えられる。
(3)沿線施設・地域との連携と路面電車の活用
沿線地域の活性化に貢献する観点から路面電車の活用を考えると、路面電車の持
つ価値は高く、札幌のアイデンティティ*3 である大通公園・中島公園・藻岩山等の
各施設を結びつけることで更なる効果を生むと考えられることから、沿線の魅力・
- II -
価値を最大限に活かすために、路面電車と各施設の連絡が便利になるよう接続性を
向上させる必要がある。
併せて、路面電車単独ではなく、沿線の観光素材・生活素材の見直し、路面電車
の活性化と素材の開発等を並行して実施し、沿線を生活空間と捉えるほか交流空間
とも捉えるなど、これまでとは違う観点から活用を考えることが重要である。
具体的には、電車事業者と市民・地域・企業・商業者等の様々な主体による取組
みを促進する枠組みを設け、様々な事業連携・参画を促すことが必要である。
このような事業の取組みを通じて、多くの人々が愛着を感じ、先人から受け継が
れてきた札幌の大切な財産である路面電車と藻岩山・中島公園等の施設を有効に活
用しながら、文化を継承し、人づくりや地域づくり、観光促進を始めとする経済の
活性化につなげていくべきである。
また、このような取組みは、既存沿線だけではなく、都心部にもつなげていくこ
とが重要である。
3.都心の活性化と路面電車
都心の現状を踏まえた、都心の活性化に貢献する路面電車の活用あり方について
(1)中心市街地の活性化
中心市街地の活性化に向けては、市内外から多くの人が訪れて賑わうことができ
るように、買物・食事・娯楽・交流・鑑賞・散歩・休憩等の様々な行動、活動を支
えるとともに、都心及びその周辺に暮らす人々の生活を支えるうえでも「まち歩き」
を楽しめるような魅力的な空間を創ることが重要であり、都心全体の面的な広がり
を考慮し、楽しく、のんびりと歩いて巡れるように回遊性を高める必要がある。
また、「札幌駅周辺地区」と「大通・すすきの地区」で商業集積の 2 極化が進ん
でいるほか、観光施設・ホテルが各地区に点在している都心の現状と、都心を抵抗
なく歩ける距離には限界があるという市民アンケートの結果や、今後の高齢社会の
進展等を考え合わせると、さらに公共交通機関の重要性が増していくものと考えら
れる。
こうしたことから、誰もが都心の持つ魅力に触れることができ、賑わいを創出す
るためには、歩くことを基本にしながら交通手段を補助的に組み合わせて考えるこ
とが重要であり、「まち歩き」を楽しむ道具として、また、都心内の回遊性を高め
る道具として、積極的に路面電車を活用することが望ましい。
- III -
(2)一体的・総合的なまちづくり
路面電車の活用にあたっては、商業・観光等の既存の様々な施設の配置や、都心
におけるまちづくりの方向性とその再整備の事業動向を踏まえながら、インパクト
のある沿線の魅力・賑わいづくりに向けて、路線整備を考えていくことが必要であ
る。
一方、中心市街地活性化の観点からも、都心の再整備の機会を捉え、路面電車を
活用して沿線の魅力を高めるなど、一体的・総合的なまちづくりを行うことが重要
である。
また、こうした取組みを通じ、投資対象としてのまちの魅力等を高めることで、
さっぽろを元気にすることが可能になると考えられる。
(3)交通ネットワークの形成
路面電車の接続・連携のあり方については、いろいろな地域に関する意見が出さ
れたが、路面電車活用の最初の段階としては、都心部分についての検討を行うべき
だと考えた。
中心市街地の活性化に貢献する公共交通ネットワークを形成するためには、都心
部での回遊性を向上させる観点から、「札幌駅周辺」「大通」「すすきの」の3地区
を結ぶために、路面電車を延伸する必要がある。さらに、商業・娯楽・観光・文化
施設等の状況、都心のまちづくりの方向性や事業の動向等を踏まえ、東西方向への
面的な広がりを持たせることが望ましい。
その際、観光客・ビジネス客が札幌を訪れる際の玄関口となる JR 札幌駅に路面
電車を接続することや、基幹となる地下鉄3路線の都心各駅やバスターミナルと路
面電車を結び、公共交通のネットワークを形成することで、都心内・沿線への集客
機能と回遊性を高めることが望ましい。
併せて、まち全体の活性化に貢献するためにも、路面電車のみならず、地下鉄・
バス・タクシー等との乗継ぎ・運行サービス機能等をハード・ソフトの両面から高
め、都市交通システムとしての質的向上を図ることが重要である。
(4)路面電車の魅力向上
路面電車は、バリアフリーなまちづくりを目指すうえで不可欠な交通システムで
あるとともに、札幌のアイデンティティを発信する重要な道具である。
このため、車両については、高齢社会に向け誰もが利用しやすく安心して気楽に
- IV -
都心を移動できる低床車両を基本とし、都市景観や美しい街並みとの調和を図るた
め、架線レス車両*4 等を含めた、デザイン面、技術面での検討も進める必要がある。
併せて、軌道の敷設位置については、交通バリアフリーの観点や路上駐車の規制
強化により、道路空間を有効に活用できる可能性が高まったことなどから、路側走
行方式*5 も含めて検討を進めるとともに、車両や電停等も含め、トータルデザイン
*6
を考えていく必要がある。
さらに、路面電車が市民・観光客から愛され、札幌の新しい生活価値や魅力を創
造するためには、観光・商業等の中心市街地の活性化、交通ネットワークの形成、
ユニバーサルデザイン*7 等の観点を踏まえ、世界に向けて誇れるような札幌のまち
全体のトータルデザインを構築していく必要がある。
また、こうした取組みにあたっては、デザインや福祉関連の学校等との事業連携
や、市民・経済界の参加等を得るような仕組みの構築が重要である。
(5)都心における路面電車の交通課題
都心部で路面電車を活用するにあたっては、他都市の事例も参考にしながら、道
路空間の使い方等のニーズや課題を勘案し、荷さばきや冬期交通の問題等も含めて、
電車事業者と関連する交通事業者・行政機関・商業者・企業、そして市民が連携し
て交通課題の解決に取り組むべきである。
4.まちづくりと路面電車事業
路面電車のまちづくりへの貢献と事業経営の考え方を踏まえた、まちづくりから
捉えた路面電車事業のあり方について
(1)路面電車の価値と効果の捉え方
路面電車の価値や効果については、単なる交通機関として、電車事業者の直接的
な効果や事業採算性だけに捉われずに、まちの価値を高めることにより期待される
社会的便益を総合的、多面的に捉えて評価することが必要である。
この路面電車が生み出す社会的便益には、その効果を数値で捉えることのできな
いものもあり、その「市民の幸福感」のようなものこそが、豊かな生活を享受して
いるという価値として重要である。
このようなことから、さっぽろのまちや市民を元気にする価値・効果の捉え方や
数値化して評価しにくい社会的便益も含めた指標の出し方、さらには価値や効果を
- V -
生み出すための事業連携等の仕組みについて、その内容を市民にわかりやすく説明
して理解を得ていくことが重要である。
(2)路面電車の事業経営のあり方
本来、路面電車の経営を考えるには、今後の事業展開等を踏まえた経費の精査等、
数字を用いた詳細な検討が必要となるが、今回の検討会議は、そうした専門的な経
営解析を行う場ではないことから、事業経営の基本的な考え方について整理を行っ
た。
まず、どのような経営形態であっても、公共交通にとって一番重要な安全性と信
頼性を確保できる仕組みにするとともに、運行コストを運賃収入等で賄える経営体
質とすることが必要である。そして、設備投資も含めて路面電車の維持にかかる
様々なコストとメリットを明らかにし、民営、公設民営、PFI、公営等、どのよう
な経営形態や経営手法が望ましいのか、どの程度までの行政負担が望ましいのかに
ついて整理をしたうえで、市民の理解と適切な判断を得ることが重要である。
また、この検討にあたって、札幌を豊かな暮らしと活力のあるまちとするために
は、これまでのように個別の経営主体の問題と捉えるのではなく、都市全体を経営
する観点や公共交通全体をコーディネート*8 する観点から、これからの路面電車の
経営を考えることが重要であり、地域社会全体の問題として、札幌市をはじめ様々
な主体が関わって路面電車の経営を支えていくことが必要である。
そのためには、利用者である市民が寄付や出資等により事業に参画したり、情報
の開示等により経営をチェックするなど、地域全体で経営を支える仕組みをつくる
ことが重要である。
- VI -
< 目 次 >
1章 はじめに .................................................................................................................................................... 1
(1) 路面電車活用の基本的な考え方.....................................................................................1
(2) 札幌市の将来人口・産業構造............................................................................................3
2章 これからの路面電車............................................................................................................................ 5
1. 路面電車の現状と課題 ....................................................................................................................... 5
(1) 路面電車の利用者数の推移と経営状況......................................................................5
(2) 路面電車の使われ方.............................................................................................................7
(3) 沿線地区の現状.......................................................................................................................8
2. 路面電車の活用のあり方 .................................................................................................................. 9
(1) 収支改善と運行サービス向上 .........................................................................................9
(2) 利用促進と路面電車の魅力向上................................................................................. 11
(3) 沿線施設・沿線地域との連携と路面電車の活用 .............................................. 13
3章 都心の活性化と路面電車 .............................................................................................................. 15
1. 都心の現状と課題 ............................................................................................................................ 15
(1) 路面電車に関連するまちづくり計画....................................................................... 15
(2) 都心再生の動き................................................................................................................... 18
(3) 主要施設の概況と卸売・小売業の商品販売額の推移..................................... 19
(4) 路面電車を活用した都市再生の動き....................................................................... 23
2. 都心の活性化に貢献する路面電車活用のあり方 ............................................................. 25
(1) 中心市街地の活性化......................................................................................................... 25
(2) 一体的・総合的なまちづくり ..................................................................................... 27
(3) 交通ネットワークの形成 ............................................................................................... 28
(4) 路面電車の魅力向上......................................................................................................... 30
(5) 都心における路面電車の交通課題............................................................................ 32
4章 まちづくりと路面電車事業 ......................................................................................................... 33
1. 路面電車のまちづくりへの貢献と事業経営の考え方 ................................................... 33
(1) まちづくりにおける路面電車活用の効果 ............................................................. 33
(2) 路面電車の事業経営の捉え方 ..................................................................................... 36
2. まちづくりからみた路面電車事業のあり方 ....................................................................... 38
(1) 路面電車の価値と効果の捉え方................................................................................. 38
(2) 路面電車の事業経営のあり方 ..................................................................................... 39
5章 おわりに ................................................................................................................................................ 41
参考資料 ............................................................................................................................................................ 48
(1) 「さっぽろを元気にする路面電車検討会議」名簿.......................................... 50
(2) 検討会議開催経過.............................................................................................................. 51
(3) 路面電車事業の収支改善に向けた取組み ............................................................. 52
(4) 市民・行政・電車事業者・企業が連携した路面電車の活用例 ................. 53
(5) 事業連携の展開のイメージ .......................................................................................... 55
(6) 1 日乗車券による利用促進効果................................................................................. 56
(7) 路面電車(LRT)に対する国の支援 ...................................................................... 57
(8) 路面電車を活用したまちづくりの他都市事例 ................................................... 59
(9) 路面電車に関する交通施策の事例............................................................................ 63
用語説明 ............................................................................................................................................................ 64
1章
はじめに
(1)路面電車活用の基本的な考え方
〇
路面電車に関するこれまでの検討経過
札幌市の路面電車については、平成14年度から約3年間、存廃について検討を
行った結果、設備投資に一定の税投入が必要であるものの、それまでに寄せられた
市民の意向に加え、民間のノウハウを取り入れるなどの手法により経営効率の向上
が見込まれること、路面電車が持つ人や環境にやさしい特性等がまちづくりへ寄与
する可能性があることなどを踏まえ、平成17年2月にその存続を決定し、今後の
取組みとして、都心のまちづくりなどでの活用を検討することとした。
この結論を踏まえ、市民や札幌のまちにとって、路面電車をどのような形で存続
させ、また、どのように活用していくべきかということについて、その具体的な検
討の場である「さっぽろを元気にする路面電車検討会議」を設置した。
○
活用の基本的な考え方
検討会議では、路面電車を単に沿線住民の通勤・通学等の足となる交通機関とし
てだけではなく、魅力ある都心の創造に寄与する「都市の装置」として、また、将
来の都市像を具現化するための「まちや市民を元気にする道具」として、路面電車
の様々な特性等を積極的に活かし、都心の賑わいの創出や地域・産業の振興等、ま
ちの活性化に貢献することを活用の基本的な考え方としたところである。
- 1 -
○ 路面電車をまちや市民を元気にする道具として活用
■路面電車に関するこれまでの検討経過
路面電車を
今後も存続
させていくた
めには、
90億円規模
の設備更新
が必要。
利用者減少が
続く中で90億
円規模の設備
更新を行うのは
困難。
路面電車を残すべき
との市民意見が多く
あった。
(H14市民アンケート等)
民間の経営ノウハウ
を取り入れることによ
り、経営効率の向上
が見込まれる。
(企業ヒアリング)
路面電車を
存続させる
(平成17年2月)
存廃の検討(平成14∼16年度)
まちづくりに積極的
に活用すべきとの意
見が多くあった。
(市電フォーラム等)
活用方策がまとまるま
で、安全運行確保のた
めの暫定的な設備改
修費は20億円と試算。
まちづくりの中での
活用方策の検討
(一定の税投入が必要)
税投入を
少なくす
るための
収支改善
が必要
■路面電車活用方策の検討の方向性(基本的な考え方)
■1950∼1960年代
■1970年代∼ 現在
■ これからは・・・
路面電車は、まちや市民の
足を支える主要な交通機関
としての投資だった。
路 面 電車 は、地 下鉄の
整備や自動車利用の進展
などで、路線が縮小され、
利用者減少傾向が続き、
新たな設備更新が難しい
経営状況に至った。
路面電車は、都心のまちづくりなどと
一体となった活用方策のもと、価値を再
評価し、新たな活用が求められる。
運賃収入により再投資し、
まちを拡大
運賃収入だけでは、
投資は不可能
<路面電車事業>
収入増
収入増
維持
維持
<路面電車事業>
<路面電車事業>
市域地拡大の抑制
少子高齢社会
活性化
再投資
収入増
収入増
再投資
再投資
市域拡大
人口増加
<交通基盤づくり>
現在の利用者数は、
1972年(昭和47年)
の約23%
都心のまちづくりなどを
進める中で
「交通機関として活用」
『まちや市民を元気にする
道具として活用する』
- 2 -
(2)札幌市の将来人口・産業構造
平成 17 年10月現在の札幌市の人口は約 188 万人であるが、平成 12 年の国
勢調査を用いた国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、今後は少子化の進
展により、平成 27 年をピークに減少に向かうものと予測されているほか、高齢化
も急速に進展し、平成 37 年における 65 歳以上の高齢者は、平成 12 年の 2 倍強
の約 57 万人に増え、全人口における 65 歳以上の高齢者の割合は、6.8 人に 1 人
から 3.4 人に 1 人に高まることとなり、高齢社会の到来が予測されている。
また、平成 16 年度に実施した札幌市高齢社会に関する意識調査によると、65
歳以上の高齢者が外出するときの移動手段について約 7 割が公共交通機関と回答
しており、高齢社会においては、公共交通機関の重要性がさらに高まると考えられ
る。
一方、札幌市の産業構造は、事業所数の 87.2%が第3次産業に特化していると
いう特徴があるほか、平成 15 年度の集客交流産業基礎調査によると、第3次産業
を中心に集客交流に分類される飲食・買物・レジャー・観光・宿泊・交通等の業種
は、事業所数で全産業の約 4 割と推計されており、札幌の産業には集客交流産業の
分野が大きな影響を与えているといえる。
したがって、市民の暮らしを支えるとともに、まちの魅力・活力を維持・増進す
る活性化の方策として、市内・市外(道内外・海外)から物(財)やサービスを買
う人を集めて交流を促進させる観点からも、公共交通を利用する仕組みづくりの重
要性が増すものと考えられる。
高齢社会の進展
人口減少社会の
到来
産業構造は
第3次産業に特化
将来人口・産業構造を見据えた検討が必要
まちの活力を維持・増進
市内外からの集客・
交流が必要
公共交通の
市民の暮らしを支える
さっぽろを元気にするには?
- 3 -
重要性が増す
○ 将来の高齢人口増加や産業構造の現状を見据えると公共交通機関の充実が必要
■現況、将来の年齢階層別人口
現在
平成12年度(2000年)
10年後には
(平成27年(2015年)頃を
ピークに総人口が減少)
平成17年度(2005年)
総人口(1,881千人)
総人口 1,822千人
20年後には
総数
平成37年度(2025年)
総人口 1,907千人
総数
平成12年(2000年)
平成37年(2025年)
老年人口2.1倍
85∼
85∼
老年人口
266,294人
(14.6%)
80∼84
80∼84
75∼79
6.8人に1人
老年人口
568,062人
(29.8%)
3.4人に1人
70∼74
65∼69
約30万人増
60∼64
55∼59
50∼54
45∼49
生産年齢人口
1,304,166人
(71.6%)
40∼44
35∼39
生産年齢人口
1,141,454人
(59.8%)
30∼34
25∼29
20∼24
15∼19
年少人口
251,909人
(13.8%)
200,000
(人)
150,000
10∼14
年少人口
197,816人
(10.4%)
5∼9
5∼9
0∼4
0∼4
100,000
50,000
0
0
50,000
100,000
150,000
200,000
(人)
資料:平成 12 年の国勢調査を用いた国立社会保障・人口問題研究所の推計
■札幌市の産業構造
■高齢者が外出時に移動する手段
(65歳以上、複数回答)
第 3 次産業の
割合87.2%
5 .4 %
徒歩
0 .9 %製造業 建設業
3.9%
2 .0 % 運輸通信業 8.7%
3.0%
金融保険業
2.0%
不動産業
11.0%
25
自転車
サービス業
29.1%
18.2
自家用車
(同居する家族
以外が運転)
札幌市
自家用車
(同居する家族が運転)
77,605箇所
18.7
自家用車
(自分が運転)
26.8
福祉タクシ ー
卸売小売業
42.0%
3 2 .7 %
19.2
JR
※ 外部円の は該当業種の「集客・交流産業」
※ 1.0%以上の業種のみラベルを表示
11.2
バス
「集客交流産業」を、来札者の直接の目的に対して、財・サービ
スを提供する業種(飲食、買物、レジャー等)と、これらの基盤
を提供する業種(コンベンション、交通、宿泊、観光企画、情報メディ
ア等)と定義している。(札幌市集客交流プラン 平成14年度)
資料:札幌市統計書、平成 15 年度集客交流産業基礎調査
1
タクシ ー
集客交流産業
の割合41.8%
自家用車
(いずれか1つ
以上利用)
47.3%
5.4
54.9
地下鉄
60.5
路面電車
公共交通機関
(いずれか1つ
以上利用)
72.1%
9.6
0
10
20
30
40
50
60
70
資料:札幌市高齢社会に関する意識調査(H17.3)
- 4 -
2章
これからの路面電車
1.路面電車の現状と課題
(1)路面電車の利用者数の推移と経営状況
○
利用者数の推移
路面電車は、現在の大通地区にある西 4 丁目電車停留場から、山鼻地区を囲む形
で、すすきの電車停留場に至る約 8.5km で運行されている。
利用者数は、地下鉄開業に伴う路線縮小後も減少傾向が続き、平成 16 年度には
日平均 20,227 人となり、平成 12 年度に比べて約2,800 人(約15%)も落
ち込んでいる状況にある。
一方、沿線人口は平成 16 年10月時点で約91,000人であり、バブル経済崩
壊後の平成 12 年から微増に転じて約5,000 人増となっているが、路面電車の利
用者増にはつながっていない状況である。
◇ 路面電車利用者減少の主な要因
① 公共交通全般的に考えられる主な利用減少要因
□ 交通手段面からの要因・・自動車交通への依存 等
□ 社会経済面からの要因・・景気低迷による事業所・従業員の減少
生活スタイルの多様化や都市の二十四時間化
目的地の分散化(郊外での大型商業店舗の出店等)等
□ 社会制度面からの要因・・週休2日制による通勤通学の減少
少子化による学生・生徒の減少 等
② 路面電車沿線地域の状況を踏まえた主な利用減少要因
□ 交通手段面からの要因・・自転車等への転換 等
□ 利用目的面からの要因・・教育・公共施設移転
事業所・従業員の減少(平成 8 年度から 5 年間で
事業所 14.0%減、従業者 12.0%減) 等
○
経営状況
平成 16 年度の営業収支は、約2億9千万円の赤字であり、過去数年間の取組み
として、乗務員の嘱託職員化や整備業務の委託化等の支出削減を進めてきたが、利
用者減少に伴う乗車料収入の減少等によって、営業収支の改善が進まない状況にあ
る。加えて、老朽化の著しい車両や軌道、車庫等の維持・更新が必要なことから、
今後、更なる経営の効率化や需要喚起等により、収支改善を進め経営の安定化を図
る必要がある。
- 5 -
○ 利用者数の推移と経営状況を踏まえると収支改善による経営の安定化が必要
■路面電車の利用者数の推移
100,000
路面電車日平均利用者数
札幌市人口(万人):中央区人口(千人):沿線人口(千人)
5
,38
88
単位(人/日)
150
1
,70
66
120
115
110
131 133
128
124
137
140
143
146
149
191
186
183 185
180 181 182
1
7
9
176 174
176 177
1 8 7 1 8 6 90,000
173 171 173 174
183
179
165
176
162
173 174 175
171 169
157 159
168 168 170
167 169
80,000
152 154
中央区人口
単位:千人
札幌市人口
単位:万人
70,000
60,000
1
37
,14
53 52,1
沿線人口
単位:千人
100
7
,8 9
41
88
86
87
87
85
84
84
85
86
85
85
86
87
90
89
91
4
2
,08
9
37
,08 ,76 534
34
,
8
35 34
6
33 32,5 1,42
1
0
,0 1 4 7
6
3
99
30 29, 8,3 8,00 ,59 ,231 95
7 13 03
1
8
2
2
27 27
,7 ,49 6,4 5,9 5,47 ,802 5,55 ,808 175 53 18
1
0
2
25 25 2
2
24 2
24 24, 23,8 3,2 3,00 2,94 382
31 27
2
,
2
2
21 20,3 20,2
50
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
0
0
S47 S48 S49 S50
S51 S52 S53
S54 S55 S56 S57
S58 S59 S60 S61
S62 S63
H1
H2
H3
H4
H5
H6
H7
年 度
H8
H9
H10 H11 H12
H13 H14 H15 H16
※沿線人口は路線が通過している統計区の合計値
■経営状況と収支改善のイメージ
営 業 収 支
収入:10.8億円
(平成16年度決算見込)
このままでは設備の更新や
改修の費用をまかなうのは
非常に困難
赤字
2.9億円
設備更新・設備改修
支出:13.7億円
(平成16年度決算見込)
車両更新、工場車庫改修、延伸等
経営効率化
の推進
支出の圧縮
□ まちづくりによる増収施策
□ 附帯事業による増収施策
□ 設備更新による増収施策
収入の増
今後の検討課題
- 6 -
□ 税・補助
等の投入
日平均利用者数(人/日)
200
(2)路面電車の使われ方
路面電車の月別利用割合を見ると、冬期は夏期に比べ利用人員が多く、最少月の
1.35 倍となっており、これは地下鉄、路線バスと比べると、季節変動による格差
が大きいといえる。
次に、天候による利用人員の変化を見ると、雨や雪等、気象条件の悪い日には、
一時的に路面電車の利用者数が増加している状況が見られることから、自転車、徒
歩等からの転換が考えられる。
また、時間帯別・目的別の利用割合を路線バスと比べると、路面電車は日中の利
用率が高いほか、買物、娯楽、通院等の私事目的が多く、市民の暮らしの中に定着
していることがうかがえる。
○ 路面電車の利用実態を踏まえた検討が重要
■月別利用割合の比較:夏期、冬期の利用者数の格差が大きい
▼路面電車(H12、16)
▼地下鉄(H16)
単位:千人/日
30
700
25
▼路線バス(H15)
単位:千人/日
400
最少月の
1.25 倍
650
350
20
600
300
15
最少月の
1.35 倍 550
250
10
500
単位:千人/日
200
4月 5月6月 7月 8月9月10月11月12月1月 2月3月
資料:札幌市交通局調べ(H12
最少月の
1.23 倍
4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
4月5月6月7月8月9月10月11月12月1月2月3月
は参考)
■天候による利用人員の変化(平成 16 年度 日別利用客数・積雪推移表)
積雪cm
8/20(金)
6∼9 時で
23.5mm の雨
利用者数
200
10/27(木)
8cm の積雪
18,000
150
13,000
100
8,000
年末年始
により減少
9/8(水)
台風 18 号の影響で運休
50
0
04 01
04 08
04 15
04 22
04 29
05 06
05 13
05 20
05 27
06 03
06 10
06 17
06 24
07 01
07 08
07 15
07 22
07 29
08 05
08 12
08 19
08 26
09 02
09 09
09 16
09 23
09 30
10 07
10 14
10 21
10 28
11 04
11 11
11 18
11 25
12 02
12 09
12 16
12 23
12 30
01 06
01 13
01 20
01 27
02 03
02 10
02 17
02 24
03 03
03 10
03 17
03 24
03 31
3,000
積雪量(cm)
利用者数(人/日)
23,000
4/28(水)
6∼9 時で
2.5mm の雨
月日
資料:札幌市交通局調べ
■時間帯別利用割合の比較:日中の利用率が高い
▼路線バス
▼路面電車
早朝
1 .4 %
深夜
1.8%
夜
9.5%
夕 ラ ッ シュ
2 2 .1 %
朝ラ ッ シュ
17.7%
日中
4 7 .6 %
▼路面電車
早朝
2.4%
深夜
2.4%
夜
8.9%
夕ラ ッ シュ
2 2 .8 %
■目的別利用割合の比較:私事(買物、娯楽、通院
等)目的の割合が高い
朝 ラ ッ シュ
26.6%
その 他
11.4%
帰宅
24.8%
通院
8.8%
日中
3 7 .0 %
資料:平成 12 年電車実態調査
出勤
2 1 .4 %
登校
2 .1 %
仕事
11.8%
買物・ 娯楽
19.7%
資料:平成 12 年市営バス実態調査
- 7 -
▼路線バス
帰宅
31.5%
その 他
出勤
7.0%
23.3%
仕事
通院
7 .2 %
7.5%
買物・ 娯楽
13.4%
登校
1 0 .2 %
(3)沿線地区の現状
路面電車の沿線地区では、居住する人口は増加しているものの、高校・大学等の
公共施設が転出したことや、商業施設等の事業所数が減少したため、沿線地区を目
的地とする人の移動が減少しており、地域の活力も低下してきている。
一方、kitara*9、中央図書館等の文化施設や藻岩山、中島公園等、市民・観光客が
訪れる魅力的なスポットが多数存在しているのにもかかわらず、相互の連携が図ら
れていないなど、魅力的な資源が十分に活かしきれていない状況にある。
○ 路面電車沿線等における集客・交流施設等との連携が必要
■集客交流施設と病院施設の分布状況
JRタワー展望台
北大附属植物園
道庁旧庁舎
時計台
市民会館
厚生年金会館
道立近代美術館
教育文化
会館
テレビ塔展望台
札幌市資料館
豊平館
渡辺淳一文学館
道立文学館
kitara
旭山記念公園
水道記念館
ちざきバラ園
旧小熊邸
凡例
中央図書館
藻岩山
主な集客交流施設
藻岩山ロープウェイ
病院(病床数100以上)
- 8 -
2.路面電車の活用のあり方
(1)収支改善と運行サービス向上
検討会議では、路面電車事業の経営状況を踏まえて、現在の経営努力、利用者の
ニーズの把握とその捉え方等、事業者としての更なる収支改善と運行サービス向上
の必要性について議論した。
【検討会議で出された意見概要】
2億円以上の税金投入について、今後どうしていくのか議論が必要である。
事業性の問題として、交通局の経営努力(雑巾の絞り具合)が妥当なのか。
路面電車の沿線人口が増加し、潜在的に顧客が増えているのにもかかわらず、利用人員
は減っている状況が続き、電車事業者として経営がうまくいかないというのは、事業経
営のあり方として考えるべきところがあるのではないか。
既存線の8.5kmでも満足に経営できないのであれば、伸ばしてもダメではないか。
路面電車の位置付けや活用方法を考えるには、構造改善的方法(都心の公共交通のあり
方、冬・環境の問題等、札幌スタイルの確立)、コーディネート的方法(大通・すすき
の地区の商業・サービス業との関係性強化等)、付加価値的方法(都市観光として藻岩
山との連携等)
、経営改善的方法(人件費圧縮等)
、未来観的方法(高齢化による沿線需
要の変化等)等、いろいろな観点からのアプローチがあるのではないか。
税投入を少なくするための収支改善が必要である。
沿線住民ニーズや夏冬の利用変動理由等、詳細なマーケット情報の調査が必要ではない
か。
路面電車の乗客増となった、又は、ならなかった要因について、他都市事例から分析す
ることも参考になるのではないか。
路面電車は、バスと比較すると交通渋滞に巻き込まれない、揺れないなどの優位性があ
り、夏・冬の定時性に関する詳しい調査が必要ではないか。
バスとの比較でラッシュ時の混雑率の調査が必要ではないか。バリアフリー化に関する
障がい者、高齢者の意見等の調査が必要ではないか。
今の路面電車は、運行ダイヤが利用需要と一致していないなど、費用対効果が得られて
いないため、正確な現状把握による戦略的な事業経営をすべきではないか。
少なくても現行路線だけを対象としていては、いくらみんなでアイディアを出しても、
そう大きな進展は見込めず、収益性の限界があって将来性はないと思われる。また、沿
線の住民しか乗らないため、市民全体が合意してくれないので行政投資が見込めない。
もっと多くの観光客や市民が使うものとするためには、都心に伸ばしていかないと無理
だろうと思う。
- 9 -
【検討会議における意見のまとめ】
沿線人口が微増傾向にあるにもかかわらず、利用者数は長期間にわたって微減傾
向にある経営状況を踏まえ、まず早急に収支改善や運行サービス改善等に取組み、
現状での税投入を少なくするための経営改善を図るべきである。
そのためには、沿線住民のニーズや夏冬の利用変動理由等の詳細なマーケット情
報の調査や他都市事例から、利用目的と運行便数の関係等を分析し、利用の実態・
ニーズに合わせた運行サービスの向上が必要である。
既に、取組みを始めています。
○ ラッシュ時の利用実態調査に基づく沿線公共施設等の利用状況等を踏まえた
朝・夜間の増便や、沿線マンション等での時刻表の掲示によるサービスアッ
プの実施等により、収支改善に取組んでいます。
⇒
- 10 -
参考資料P52参照
(2)利用促進と路面電車の魅力向上
検討会議では、利用者の減少と路面電車の沿線施設の現状を踏まえ、様々な切り
口での利用者の掘起こし、観光需要に対する取組みなど新たな路面電車利用促進の
可能性について議論した。
【検討会議で出された意見概要】
沿線住民の構成も変わってきており、ユーザーの掘起こしが必要ではないか。
普段乗る人なのか観光客なのかなど、誰を対象に増やすのか。また、目的地に行く用事
を増やすのか。これらの点を考えることが必要ではないか。
交通事業として、施設更新費も含めて事業が存続できればよいが、それには多分限界が
あるので、札幌市全体の公共の役割としての価値を再評価する方向で、議論をしている。
乗車料収入が増えるといった利益より、いかに多くの人が路面電車を大切に思っている
かというような、路面電車を評価する指標をどのように考えるかが重要である。
今の利用(通勤・通学等)をどう増やすか、新たにどう増やすか、路線の魅力をどうつ
くるのか、多方面から検討すべきではないか。
イベントも含めた、沿線に出かける用事を増やすことや、電車のサービスを上げて利用
客を増やすなどの検討をしなければならない。
運賃や施設、他交通機関との乗継ぎのしやすさ、運行頻度、料金の決め方等、公共交通
が抱える問題が非常に大きいのではないか。
自転車利用者の状況を踏まえると路面電車の料金面の検討も必要ではないか。
都市観光として札幌は、何を目的に、何をポイントとして整備していくのかということ
を検討することが重要ではないか。
全国的に見ると駅前に路面電車が走ると、広く市民や観光客等、誰もが認知できるが、
現状では、観光客は、札幌に路面電車が走っていることを知らないのではないか。
観光需要に対する取組み方法として、藻岩山や都心部等の観光地と札幌駅との関係性を
どう考えるかがポイントではないか。
既存線から中心部へという流れは、新たな沿線という視点から非常に大事であり、都心
居住を促していく大きな要素になると思う。
子供もお年寄りも体の不自由な方も楽に安全に乗降できる電車でなくてはならない。
高齢社会に向け、誰もが利用しやすく、移動できる「低床車両」の導入が望ましいので
はないか。
- 11 -
【検討会議における意見のまとめ】
まちを元気にする道具として路面電車を活用するには、単に路面電車の収入を増
やすだけではなく、利用者を増やして人の動きを活発にすることにより、まちを活
性化する社会的役割を持たせることが必要である。
新たな需要を確保するためには、誰を対象に、どのように利用者を増やすのかな
ど、様々な切り口でのニーズの掘起こしが重要であり、住民の足としての通勤、通
学等といった目的以外のイベント等による新たな利用目的の増加や、沿線にある藻
岩山・中島公園等の観光資源を活用した観光客・市民等の利用者掘起こしなどを行
い、路面電車の料金面や沿線施設と連携したサービスの向上についても検討を行う
必要がある。
さらに、今後の高齢社会に対応したバリアフリーなまちづくりの実現に向け、子
供や高齢者、体の不自由な方も安全で気軽に乗降できるよう路面電車そのものを使
いやすく、魅力的な乗り物へと価値を高めるべきであり、老朽車両更新の際には低
床車両を導入すべきである。
そして、こうした利用促進や路面電車の魅力向上の取組みが、沿線の魅力向上に
もつながるものと考えられる。
既に、取組みを始めています。
○ 利用しやすい乗車券として、市電専用で土・日・祝日限定の1日乗車券を平
成 17 年 9 月から試行発売し、平成 18年5月から「どサンこパス」として
本格発売
⇒
参考資料P53参照
○ 藻岩山ロープウェイ窓口での「どサンこパス」の提示により、ロープウェイ
往復料金の割引
⇒
参考資料P53参照
○ 新たな観光需要掘起こしのため、平成 18年 9 月から「さっぽろ路地裏ウォ
ーキング」事業の実施
⇒
- 12 -
参考資料P54参照
(3)沿線施設・沿線地域との連携と路面電車の活用
検討会議では、沿線施設の現状や路面電車の使われ方を踏まえ、様々な主体との
連携、沿線施設・地域との連携、イベント等との事業連携等これからの路面電車の
活用について議論した。
【検討会議で出された意見概要】
路面電車とまちづくりとの連携を考えると、商業者・地域・電車事業者の協力による使
い方が様々考えられるのではないか。
路線マップを観光・買物・公共施設などの視点から作成するために、様々な主体が新た
に協力体制を組み直せば、明るい話ができるのではいか。
市電のロープウェイ入口電車停留場から藻岩山のロープウェイ山麓駅までは距離があ
り、観光客等がたどり着くのが大変なので、ロープウェイと路面電車を大胆に結び直す
などの発想も必要ではないか。
路面電車の利用促進だけを単独で捉えるのではなく、沿線地域の見直しや素材の開発な
どを並行して捉え、路面電車活用による経済効果、波及効果も視野に入れた検討をする
ことが重要ではないか。
中心商店街も、既存線の魅力を再発見しながら、藻岩山・中島公園・市電等の財産と上
手に連携を図ることによって、中心市街地の活性化に寄与できればいいのではないか。
我がまち札幌で大事にしたいと思う場所が、路面電車沿線にいろいろとあると思う。大
通公園・中島公園・藻岩山など、札幌のアイデンティティをつくり出すであろう空間を
つないでいく意味で、路面電車の価値は大きい。
沿線には、中央図書館、kitara、中島公園やその中にある豊平館、文学館という文化施
設、さらには歴史的建造物もあることなどから、路面電車というツールを活かして沿線
を札幌の文化地区という形で掘起こし、都市観光の面で新たな展開を構想することがで
きるのではないか。
札幌の財産である既存路線をより活かしていくという観点から、都心部の活性化につな
げていくようなまちづくりの考え方が必要だと思っている。
沿線地域では、電停を利用したまち歩きのマップの作成が始まるなど、路面電車を活用
した地域の取組みが活発化してきている。
- 13 -
【検討会議における意見のまとめ】
沿線地域の活性化に貢献する観点から路面電車の活用を考えると、路面電車の持
つ価値は高く、札幌のアイデンティティである大通公園・中島公園・藻岩山等の各
施設を結びつけることで更なる効果を生むと考えられることから、沿線の魅力・価
値を最大限に活かすために、路面電車と各施設の連絡が便利になるよう接続性を向
上させる必要がある。
併せて、路面電車単独ではなく、沿線の観光素材・生活素材の見直し、路面電車
の活性化と素材の開発等を並行して実施し、沿線を生活空間と捉えるほか交流空間
とも捉えるなど、これまでとは違う観点から活用を考えることが重要である。
具体的には、電車事業者と市民・地域・企業・商業者等の様々な主体による取組
みを促進する枠組みを設け、様々な事業連携・参画を促すことが必要である。
このような事業の取組みを通じて、多くの人々が愛着を感じ、先人から受け継が
れてきた札幌の大切な財産である路面電車と藻岩山・中島公園等の施設を有効に活
用しながら、文化を継承し、人づくりや地域づくり、観光促進を始めとする経済の
活性化につなげていくべきである。
また、このような取組みは、既存沿線だけではなく、都心部にもつなげていくこ
とが重要である。
既に、地域でも取組みを始めています。
○ 沿線商業地の賑わいと地域への愛着を深める
「ウェルカムフラワープラン」の展開
⇒
参考資料P54参照
⇒
参考資料P54参照
○ 沿線の魅力掘起しと電車・地域への愛着を深める
「(仮称)市電沿線ぶらりまち歩きマップ」の作成
既に、企業も取組みを始めています。
○ 路面電車を活用した沿線の魅力掘起しによる新たな観光事業の開拓
「さっぽろ路地裏ウォーキング」事業の実施
⇒
参考資料P54参照
路面電車活用のあり方に対する議論を踏まえ、以下のことを目指します。
○ 一層の効率的な運営に努めるとともに、まちを元気にする観点から、行政とともに、
市民・地域・企業・商業者等との様々な事業連携による利用促進を図り、運行コストを
運賃収入等で賄うことができるような経営の実現に向けて、3年を目途に乗客数増
加傾向の定着を目指します。
⇒
- 14 -
参考資料P52参照
3章
都心の活性化と路面電車
1.都心の現状と課題
(1)路面電車に関連するまちづくり計画
○ 都市計画マスタープラン
都市づくりの理念として、2つの視点から「持続可能なコンパクト・シティ*10
への再構築」を掲げ、5 つのテーマを力点として設定している。
【視点】 □市街地の拡大抑制を基調とし、既存の都市基盤を有効に活用しながら
都市の魅力と活力を向上させる都市全体の視点
□居住機能を中心とした身近な範囲での多様な機能のまとまりを持って
構成する身近な地域の視点
路面電車の活用検討においては、特に、「都心の再生・再構築」における交通環
境の適正化と公共空間の活用・再生や、魅力的で快適な空間のネットワーク化等を
念頭に検討を行う必要がある。
○ まちづくりの将来像を踏まえた検討が必要
■都市計画マスタープラン(都市づくりの理念と 5 つの力点)
持続可能なコンパクト・シティへの再構築(理念)
1.都心の再生・再構築
1.都心の再生・再構築
■ 個別開発の統合・連鎖による都心の骨格軸と結節
■ 個別開発の統合・連鎖による都心の骨格軸と結節
点の明確化
点の明確化
■ 交通環境の適正化と公共空間の活用、再生
■ 交通環境の適正化と公共空間の活用、再生
■ 魅力的で快適な空間のネットワーク化
■ 魅力的で快適な空間のネットワーク化
4.市街地の外の自然環境の保
全と活用
■ 良好な自然環境の維持・保
全・創出
■ 市街地ならではの特質を生か
す土地利用検討
2.多中心核都市構造の
充実強化
■ 各拠点の特性に応じ
た都市開発の誘導と
基盤整備
■ 主要な拠点を中心と
した地域単位での交
通機能の向上
3.多様な住まい方を支える質の高い
3.多様な住まい方を支える質の高い
居住環境の実現
居住環境の実現
■ 都心周辺部、地下鉄沿線などにおける居住の誘導
■ 都心周辺部、地下鉄沿線などにおける居住の誘導
■ 住要求の変化を踏まえた郊外住宅地の質の維持・
■ 住要求の変化を踏まえた郊外住宅地の質の維持・
向上
向上
- 15 -
5.オープンスペース・ネットワークの充実・強化
■ 骨格的なオープンスペース・ネットワークの強化
■ きめ細かなオープンスペース・ネットワークの充実
○ 都心まちづくり計画
「これからの時代をつくる」、
「世界都市さっぽろをつくる」という都心まちづく
りの2つの目標と、その実現に向けたまちづくり展開の構造となる4骨格軸、3交
流拠点を設定し、6つの方針を掲げている。
【骨格軸】
□
にぎわいの軸(駅前通)
札幌の目抜き通りとしてのにぎわい、多様性、美しさの創出
□
等
はぐくみの軸(大通)
人の活動が多様で豊かに展開できる場や機会の中心的な提供
□
等
やすらぎの軸(創成川通)
水辺環境と呼応する良質で落ち着きのある活動空間の形成
□
等
うけつぎの軸(北3条通)
歴史的価値を継承し、都心の発展を東方向へつなげていく
【交流拠点】
□
札幌駅交流拠点
広域的な文化機能の導入、優れた都市景観の創出
□
大通交流拠点
都心内の中心性を象徴的に表現する「サッポロ広場」の形成
□
創世交流拠点
「はぐくみの軸」「やすらぎの軸」の形成を先導する
【目標実現に向けた方針】
□
安心と快適のまちづくり(都市の魅力を享受しながら安心して活動できる都
市環境を確保する。)
□
五感にひびくまちづくり(新しい札幌のライフスタイルを創造する。)
□
先人の記憶が残るまちづくり(札幌の個性と魅力を伸ばす。)
□
札幌の魅力が世界にとどくまちづくり(キラリと光る札幌の個性を世界へ向
けて発信する。)
□
市民の夢を支援するまちづくり(市民のニーズを多面的に支援する。)
□
新たな産業、出会いが生まれるまちづくり(人材・情報の集積とネットワー
ク化を通じて、新たな産業活動や交流を生み出す。)
- 16 -
○ 都心まちづくりを実現する骨格構造を踏まえた検討が必要
■都心まちづくりの必要性と対象区域
今後は、市民生活の質の向上がまちづくり
の重要な目標となる中で、消費、文化、娯楽、
新しいビジネス、居住などのさまざまな面で
多様な選択性を確保することが都心に求めら
れ、それは札幌市内に止まらず、札幌圏や全
道で生活している人々にとっても重要であ
る。
また、このような質の高い生活の場である
ことに加え、札幌の特質や美しさ、投資対象
としての魅力などが都心で端的に表現されて
いることが、札幌を世界にアピールし、都市
間競争の時代に確固たる地位を築くために不
可欠である。
■都心まちづくりを実現する骨格構造(4 骨格軸 3 交流拠点)
- 17 -
都心まちづくり計画
計画対象区域
(2)都心再生の動き
少子・高齢化が進展する状況においては、既存の都市基盤を有効に活用し、市街
地の拡大を抑制するとともに、市民生活の質を向上するコンパクト・シティの実現
がまちづくりの重要な目標となり、これを都心が先導する必要がある。
このような観点から、札幌市では近年、「都心のまちづくり」に重点的に取り組
んでおり、札幌駅前通、創成川通といった都心の骨格軸においては、歩行者を中心
に据えた魅力的で賑わいのある空間整備が進められている。
一方、まちづくりに寄与する民間都市開発に対しては、協働的な事業展開を進め
るための仕組みを設けるとともに、規制緩和等、必要な支援も行っている。
これにより、札幌駅前通沿線では、(仮称)ニッセイ札幌プロジェクト等、地下
歩行空間への接続に伴う民間ビルの開発により、魅力的なオープンスペース*11 や
賑わいのある商業空間の整備も予定されている。
その他、創成川通沿線でも、市民会館の建替えに伴う市民交流複合施設の検討や
創世 1.1.1 区の事業化検討等、将来に向けた様々な検討が進められている。
○ 都心再生に向けた様々な取組みとの連携が必要
■都心における様々な取組み
□ 新幹線の整備
(札幌への延伸を要望)
□ 民間開発
○ 『(仮称)ニッセイ札幌プロジェクト』
平成18年秋第一期竣工予定
平成21年春第二期竣工予定
◎創成川アンダーパス連続化
創成川親水空間整備
イメージパース
○ 『(仮称)札幌ビジネス
センタービル』構想
□ 創世1.1.1区事業化検討
○ 『札幌秋銀ビル建替え』構想
(平成18年度内に一旦の方向
性の見極めを行う予定。)
□ 市民交流複合施設検討
◎ 札幌駅前通地下歩行空間整備(地下・地上)
(平成18、19年度に市民会館
に替る新たな複合施設検討を進
める。)
- 18 -
(3)主要施設の概況と卸売・小売業の商品販売額の推移
○ 主要施設の概況
都心では、平成 15 年 3 月に開業したJR札幌駅南口の複合商業施設により、札
幌駅周辺地区の潜在能力が飛躍的に向上し、それまで都心商業を牽引してきた大
通・すすきの地区における商業集積との 2 極化が進んでいる。
都心部の主要な観光施設や大規模なホテルは、特定の商業地区には集積しておら
ず、各地区とその周辺に点在している。
また、JR・地下鉄の駅、バスターミナル、路面電車の起終点となる停留場は、
いずれかの地区内に設置されており、各地区を結ぶ地下鉄の駅間距離は、600m
∼800m程度となっている。
一方、都心内で地上を歩くことに関し、平成 17 年 12 月に実施した市民アンケ
ートでは、約 9 割の人が、冬期でも概ね 150m であれば抵抗なく歩けると回答し
ている。
このことから、都心で季節にかかわらず、抵抗なく歩ける距離を150mとする
と、各地区内の駅やバスターミナルから、半径150mの範囲では、商業集積して
いる各地区や都心まちづくり計画における「4骨格軸」「3交流拠点」を相互に結
ぶことができないだけではなく、観光施設・ホテル等も十分にカバーできない区域
が生じる。
こうした状況を踏まえ、中心市街地を活性化するためには、より多くの観光客や
市民が商業・観光・芸術文化等の施設を利用し、様々なイベントに参加することな
どを通じて、まちの賑わいを創出し、商業の売上げを増大させることが重要となる
ため、現在よりも、分かりやすく、便利で、使いやすい交通手段が必要になると考
えられる。
○ 卸売・小売業の商品販売額の推移
卸売・小売業の商品販売額は、バブル経済の崩壊の影響等から、平成 3 年と平成
14年を比較すると、札幌市全体で約 21%の減少となっている。
区別では、中央区以外が約7%の減少に対し、中央区が約30%と減少比率が大
きく、全市に占める中央区の割合も小さくなっていることから、都心の活力が低下
している状況にあり、このような傾向が続くと、中心市街地である都心の空洞化を
招く恐れがあると考えられる。
- 19 -
○ 都心の主要施設等の現状を踏まえた検討が必要
■都心内の主要施設
□ 商業施設の分布
□ 駅の分布
□ 観光施設・ホテルの分布
商業施設は札幌駅周辺地区、大通・す
すきの地区に集積している。
地下鉄の駅間距離は、600m∼800m
程度である。
都心に点在している。
駅
JR札幌
163,246人/日(H15)
JRタワー
札幌駅バスターミナル
398,445人/年(H16)
東豊線(さっぽろ)
48,750人/日(H15)
南北線(さっぽろ)
110,938人/日(H15) 駅間約600m
435,029人/年(H16)
商業施設の延べ床
面積が全体の40%を
超えるエリア
道庁
赤レンガ
駅・路面電車停留
場・バスターミナル
201,667人/年(H16)
中央バス
札幌ターミナル
大通バス
ターミナル
時計台
385,572人/年(H16)
テレビ塔
園
大通公
南北線(大通)
58,346人/日(H15)
東西線(大通)
74,774人/日(H15)
定員300人以上の
宿泊施設
南北線(すすきの)
37,768人/日(H15)
東豊線(大通)
37,768人/日
(H15)
駅間約800m
東豊線
(豊水すすきの)
12,196人/日
(H15)
すすきの地区
資料:都市計画基礎調査(H15)
■商業(卸売・小売業)の商品販売額の推移
14,000
H3と比較して
合 計 額 2,748億円減少
その他9区
349億円減少
中 央 区 2,399億円減少
12,991
11,763
12,000
10,585
10,000
11,355
10,243
5,073
4,765
4,927
3,772
5,075
4,724
︵
商
品
販
8,000
売
額
11,655
億 6,000
円
中央区
︶
4,000
6 ,81 3
2,000
その他
その他
中央区
64%
7 ,91 8
61%
6 ,99 8
6,7 28
59%
58%
6,2 80
55%
5,51 9
54%
0
S63
H3
H6
H9
H11
H14
※中央区の下段の数値は全市に対する割合
資料:札幌市統計書
- 20 -
○ 都心には、現在よりも、わかりやすく、便利で、使いやすい交通手段が必要
■都心地上部において、抵抗なく歩ける距離
【夏期(6 月から 8 月頃)
】
150m以内
2%
150m超∼
300m以内
900m超∼
9%
1,200m以
内
300m超∼
27%
600m以内
26%
600m超∼
900m以内
36%
【冬期(12 月から 2 月頃)
】
900m超∼
1,200m以
150m以内
内
14%
8%
600m超∼
900m以内
17%
150m超∼
300m以内
28%
300m超∼
600m以内
33%
「夏期」
「夏期」
概ね300m
概ね300m
であれば、
であれば、
約9割の人が
約9割の人が
抵抗なく歩ける
抵抗なく歩ける
資料:市民アンケート(平成 17 年 12 月実施)
■都心の集客交流施設と徒歩によりカバーできる範囲
□抵抗なく歩ける範囲
約9割の人が「冬でも抵抗なく歩ける」
範囲は150m
《駅・バスターミナルから設定》
観光客やビジネス客・市民の
集客交流する場所は・・・
道庁
赤レンガ
時計台
・ 商業集積エリアを
相互に結ぶことができない。
・ 観光施設やホテルを
十分にカバーできない。
テレビ塔
大通
・まちづくりの基本となる
「骨格軸」や「交流拠点」を
相互に結ぶことができない。
都心の持つ様々な機能や魅力を
都心の持つ様々な機能や魅力を
誰もが味わうには、現在よりも、わ
誰もが味わうには、現在よりも、わ
かりやすく、便利で、使いやすい交
かりやすく、便利で、使いやすい交
通手段が必要
通手段が必要
- 21 -
「冬期」
「冬期」
概ね150m
概ね150m
であれば、
であれば、
約9割の人が
約9割の人が
抵抗なく歩ける
抵抗なく歩ける
○ 路面電車により、新たな都心での過ごし方を創造
■都心での過ごし方イメージ(現状)
1 公共交通機関で都心に買物で来た場合
○ 目的の店に近い駅・停留場(バ
ス・路面電車)で下車する。
○ 都心内にわかりやすい
交通手段がない。
徒歩で移動
○ 目的の店が自分が利用する駅・
停留場に近いとは限らない。
徒歩で移動
結構歩くなぁ
徒歩で移動
徒歩で移動
買物も済んだし、
疲れたから帰ろう
もし、都心内を楽にスムーズに移動できる交通手段があったら、あまり疲れないから、ほかの店と商品を見
比べたり、ほかの用事を済ませたりすることもできるようになるのになぁ
2 自家用車で都心に買物で来た場合
欲しい物があるといいな
○ 目的の店の「特約駐車場」に並んで待っ
て 車を停める。(車を停める時点で、「買
う店」 が決まってしまう。)
時間だ、時間だ!
あの店にはこれしかなかったしな
特約駐車場
もし、特約の無料駐車を気にしなくて済んだら、本当に欲しいものを探して、他の店も
回ってそこで買ったり、じっくり買物ができたのになぁ
■都心での過ごし方のイメージ(都心内を楽にスムーズに移動できる路面電車があった場合)
○ 来街者の満足と都心の活性化の想定
都心へアクセス
○ 待たずに乗れる
○ 行き先がわかりやすい
○ 使いやすい停留場設置の
工夫(場所・間隔等)
公共交通機関
○ 都心内移動手段の
乗り場に近い駅・停
留場で下車
○ 本来の目的から派生す
る新たな消費の誘発
これ、おもしろそうだな
買っちゃおう
また、すぐ来た
すぐ来た
店の前に停ま
るなんて楽チン
イメージと違うなぁ
他の店も見てみるか
降りたらすぐだ
これを買いに
着たんじゃない
んだよな
自家用車
どうしようかな。
さっき見えた店で
お茶でも飲みな
がら考えるか
いっぱい
買っちゃった
○ 都心内移動手段の
乗り場に近い「都心
共通駐車券」(札幌
商工会議所札幌T
MOが実施中) の
使える駐車場に車
を停める。
よっ!
え∼、流行って
るんだぞ、いま。
この店はどうかな
おっ、久しぶり。
何だその格好
ちょっとぶら
ぶらするか
○ 滞在時間の延長による
「交流機会」の拡大
○ 流行や未知の文化に触れ
る機会の拡大
- 22 -
やっぱり最初
の店だな。
○ 本来の目的を達するため
の疲労が少なくなることか
ら、新たな目的を設定
○ 滞在時間の延長による
「賑わい」の拡大
○ 街がショーウィンドとなるこ
とでの新たな消費の誘発
○ 滞在時間が長くなることで
の新たな消費の誘発
(4)路面電車を活用した都市再生の動き
近年、「高齢社会への対応、環境負荷の低減、都市の再生等」といった観点から
公共交通の重要性が再認識され、海外では多くの都市で LRT*12(路面電車)が導
入され、まちの魅力を向上させるなど様々な効果を上げている。
このような動きを踏まえ、国土交通省では、路面電車(LRT)の整備に対する支
援制度の拡充を図り、また富山市・高岡市では、高齢社会への対応や中心市街地の
空洞化対策として、行政、商工会議所、NPO*13 等が一体となって路面電車事業を
再生したほか、多くの都市で路面電車の導入検討が進められている。
○ 車両:国内の企業においても車両の開発が進んでおり、誰もが利用しやすい
「低床車両」や都市の景観と調和した、
「架線レス車両」等、デザイン
的、技術的にも優れた車両の開発が行われている。
○ 軌道:軌道敷設位置について、従来の道路中央方式*14 のみではなく、歩道側
に軌道を敷設する路側走行方式を採用した都市がある。
・道路中央方式
長所:交差点での軌道の右左折が比較的容易であり、沿道施設からの出入
等の影響が少ない。
短所:利用者が停留場に行くためには、道路を横断しなければならず、危
険を伴う。
・路側走行方式
長所:歩道空間を有効活用して停留場を確保することにより、利用者が安
全・容易に歩道から直接乗降できる。
短所:自動車の左折時に軌道を横断することや沿道の荷さばき、路上駐車、
除雪等の調整が必要である。
○ 停留場:広告媒体としての活用や地域案内版の設置等、複合的に機能拡大が
進んでおり、沿道施設と融合・連携し、都市景観との調和、優れた
デザインによって、拠点性を持たせた事例も多い。
- 23 -
○ まちづくりに貢献するためには路面電車の魅力向上が必要
■国内外の車両
▼ 富山:ポートラム
▼ 広島:グリーンムーバーMAX
平成18年4月開業した富山港線
国産の低床車両
▼岡山:MOMO
▼フランス・ボルドー
車内のデザインにも
工夫が凝らされている
周辺景観に配慮し、
周辺景観に配慮し、
架線等
架線等のない車両(架線レス車両)
のない車両(架線レス車両)
*地中のレールから集電する方式
■軌道敷設位置
富山市:路側走行方式
▼道路中央方式
▼路側走行方式
■個性的な電停
▼富山市:富山港線
広告媒体として活用
▼富山市:富山港線
沿線地域の情報掲示
- 24 -
▼フランス・モンペリエ
拠点性を持たせた電車停留場
2.都心の活性化に貢献する路面電車活用のあり方
(1)中心市街地の活性化
検討会議では、都心の現状と課題を踏まえて、中心市街地の活性化に向けた、都
心全体の機能向上や魅力アップと路面電車活用の視点等について議論した。
【検討会議で出された意見概要】
まち歩きを楽しめるような魅力的空間をつくり、観光・商業をはじめ、産業・芸術文化
等の様々な施設・機能・資源と結び、魅力・賑わいづくりに向けた事業連携を進め、一
体的なまちづくりが望ましいのではないか。
食、住、遊、学、観光といったものが一体となった街をつくっていくということが必要
ではないか。
コンパクト・シティを目指す観点からは、都心内で、人と人とがふれあう場所を随所に
どうやって創って行くのかということが重要で、街の中に住む、買物する、観光する、
ただブラブラする等の様々な要素を路面電車がどれだけカバーしていけるのかという
ことではないか。
都心の魅力を考えた場合、どれだけ楽しく充実した時間が過ごせるかといった観点が非
常に重要である。また空間のポテンシャル*15をどう活かしていくのかという中で、歩く
ということや路面電車の魅力等を総合的にどう判断していくかだと思う。
都心を広く使うために歩ける範囲をいかに拡大するか、その中で人々のニーズが多様化
していることから、多くの人が自分の好みを具体化できる場の確保が重要となる。
コンパクト・シティを考えたとき、何をどの程度することが良いのか考えなくてはなら
ない。また、ライフスタイルの転換も考えていく必要があるのではないか。そして、歩
く環境をどうつくっていくかの観点が非常に重要である。
札幌市は財政悪化の中で、税収を増やすことが大切だと思う。公共交通の役割は、人を
動かすことで、人が動けばお金が落ちる。「車だと移動させることが面倒、2時間以内
に戻らないとお金がかかる」などということを考えずに済むように、のんびり歩けるま
ちづくりを目指すことが必要だと思う。例えば、高齢者が動けば寝たきりが減り、福祉
での介護等の支出が減るし、人が動けば治安も良くなるという面も含めて、いかに市民
に理解してもらうかだと思う。
商業者の側にもまだ工夫の足りないところが随分あるのではないか。
街の中の地表面を、安全、円滑、快適に移動できる公共交通というものが日本にないの
で、それをみんなに見てもらう、利用してもらうということを追及していくべきである。
既存線から中心部へという流れは、都心居住を促していく大きな要素であり、都心内の
回遊は、札幌市民の暮らしとともにある街をどう見てもらうかが重要であり、それが観
光の面で新しい要素となっていく。
- 25 -
高齢化は過疎地から始まるが、最終的に高齢化が凄まじいのは都市、中でも都心である。
5年後・10年後のマーケットも想定しながら、路面電車の位置付けや活用を考えるべ
きではないか。
2007年から団塊の世代の退職年次になる。もう10年経ったときの公共交通の重要
性について、例えば70歳で車を運転する人がどれくらいいるのだろうかということも
今から考え、まちづくりに活かしていかなければならない。とりわけ、路面電車の重要
性が再度見直される可能性が高いのではないか。
「札幌駅周辺」、「大通」、「すすきの」の3地区において、札幌らしさを連続して伝え、
感じられる街にする必要があるのではないか。
面的な広がりや回遊性というキーワードは重要であり、既存線も活かしながら考えるべ
きである。
カフェテリア方式*16の観光というのもコンセプトとして考えられるのではないか。
札幌を元気にするということは、街に内外から多くの人が集まってきて、賑わうことで
ある。
都心の3割近くを占める道路等のオープンスペースをどう変えていくのか、その中で人
中心の都心をどのように実現していくのか。人は歩く距離に限界があるので、補助手段
として交通機関と歩くことをセットで考えることが必要ではないか。
【検討会議における意見のまとめ】
中心市街地の活性化に向けては、市内外から多くの人が訪れて賑わうことができ
るように、買物・食事・娯楽・交流・鑑賞・散歩・休憩等の様々な行動、活動を支
えるとともに、都心及びその周辺に暮らす人々の生活を支えるうえでも「まち歩き」
を楽しめるような魅力的な空間を創ることが重要であり、都心全体の面的な広がり
を考慮し、楽しく、のんびりと歩いて巡れるように回遊性を高める必要がある。
また、「札幌駅周辺地区」と「大通・すすきの地区」で商業集積の 2 極化が進ん
でいるほか、観光施設・ホテルが各地区に点在している都心の現状と、都心を抵抗
なく歩ける距離には限界があるという市民アンケートの結果や、今後の高齢社会の
進展等を考え合わせると、さらに公共交通機関の重要性が増していくものと考えら
れる。
こうしたことから、誰もが都心の持つ魅力に触れることができ、賑わいを創出す
るためには、歩くことを基本にしながら交通手段を補助的に組み合わせて考えるこ
とが重要であり、「まち歩き」を楽しむ道具として、また、都心内の回遊性を高め
る道具として、積極的に路面電車を活用することが望ましい。
- 26 -
(2)一体的・総合的なまちづくり
検討会議では、都心の再整備の動きを踏まえ、「まち歩き」や回遊性を高める道
具として路面電車を活用する路線整備の考え方や相乗効果について議論した。
【検討会議で出された意見概要】
中心市街地は、観光客にインパクトを与えるポイントでなければならない。札幌の中島
公園、藻岩山、古い街並みを結びつけて観光客に発信し、商業ゾーンとスクラムを組む
ことが必要ではないか。
都心が都心でなくなってきてしまっている。五感で感じるまちづくりのしつらえ方やど
こにインパクトを置くのかといった認識が必要であり、それが社会活動の発展を誘発し、
回遊性が生まれる。今の商業施設、商業ゾーンというものを念頭において、都心のルー
トを考えるべき。
日本にまだないトランジットモール*17というのを意識していく、それ自体が札幌の魅力
となっていくものであり、それを狙っていくべきである。
都心のまちづくりとして、商業施設をこれからどうするのかという、街のコンテンツア
ップ*18と一緒に議論しなければならない。言い換えれば、街の投資環境を改善したいと
いうことである。例えば、大通界隈のビルの再活用、そういう大胆な投資が呼び水にな
り、様々な再投資を呼び込むような議論をしていく。こういうものと交通政策をセット
にしていくということが必要である。
都心の土地利用や人の流れも多様に変化しているため、既存のまちづくりの計画は、固
定して考えるのではなく、修正や追加ということを意識していかなければならないので
はないか。
【検討会議における意見のまとめ】
路面電車の活用にあたっては、商業・観光等の既存の様々な施設の配置や、都心
におけるまちづくりの方向性とその再整備の事業動向を踏まえながら、インパクト
のある沿線の魅力・賑わいづくりに向けて、路線整備を考えていくことが必要であ
る。
一方、中心市街地活性化の観点からも、都心の再整備の機会を捉え、路面電車を
活用して沿線の魅力を高めるなど、一体的・総合的なまちづくりを行うことが重要
である。
また、こうした取組みを通じ、投資対象としてのまちの魅力等を高めることで、
さっぽろを元気にすることが可能になると考えられる。
- 27 -
(3)交通ネットワークの形成
検討会議では、中心市街地の活性化に貢献する交通ネットワークの形成として、
路面電車と都心の各地区や交通拠点等との接続・連携のあり方等について議論した。
【検討会議で出された意見概要】
「札幌駅周辺」、
「大通」、
「すすきの」の3地区を結ぶとともに、東西方向への面的な広
がりを考慮し、回遊性の向上のために路面電車を活用することが望ましいのではないか。
JR札幌駅に路面電車を接続し、交通ネットワークを形成することにより、都心内・沿
線への集客機能と回遊性を高めることが望ましいのではないか。
回遊性をつくるための投資は、限定性と広がりのバランスが非常に大きなポイントにな
る。やはり、どこにインパクトを置くか、そのうえでどう回遊性を高めていくのかを認
識する必要があり、この観点から、まずは南北方向の整備をやらない限り、やるべき時
までに都心がなくなってしまう危惧を抱いている。
JR札幌駅に直結すれば、JR札幌駅エリアと大通を結んで街を活性化するという意味
合いが出てくる。
交通手段で考えると路面電車とJRは、接続の効果が相乗の関係にあり、札幌駅との結
び方が最大の見栄えのするところである。路線の明解さを考えると札幌の中心ストリー
トでもある駅前通がよいのではないか。
西2丁目と西3丁目の一方通行の道路にそのまま路面電車を単線で走らせて、グルッと
回すルートは、商業地域という点から意味のあるルートでないか。
西4丁目電車停留場からまっすぐ東に向かい、創成川まで行って、国道36号線のすすき
の駅までの大きなループがあれば、買物するのが楽しくなるのではないか。
将来の延伸可能性を考えるとあまり複雑な路線構成ではない方がいいだろう。
来街者や観光客も含めて考えると、西4丁目電車停留場から東に向かい、札幌ファクト
リーを抱き込んで札幌駅に結ぶのがよいのではないか。
高齢者の居住地として、現在は開発されていない創成川以東へのルートも考えられるの
ではないか。
これからの高齢社会に向けて、通院が楽になるように、市立病院や北大病院に路線があ
ればよいのではないか。
札幌は、地下鉄とJR等の駅や施設間の距離を微妙に離してつくるのが好きな街だと思
う。都市全体が老いてくる状況になってくると、特に冬場は辛い感じがする。高齢者の
増加は莫大なものがあると考えられることから、人の動線がスムーズに流れるような仕
組みにつくり変えていくということは絶対的に必要だと思う。
路面電車と地下鉄・バス等が連携して、ハード面だけでなくICカード*19のような運行
サービス機能面も積極的に進め、システム面でも連携をとってスムーズに移動ができる
- 28 -
環境をつくっていくことが不可欠だと思う。
路面電車とタクシーの乗継ぎシステム等があったら良いのではないか。タクシーと路面
電車の共存共栄を展望し、回遊性と利便性、生活者にとっての公共交通のあり方を考え
ると出口が見えてくるのではないか。
市民が必要とするところに電車を走らせるのが一番大事なことではないか。
沿線の活性化ではなく、街に電車が行って沿線を新たにつくるべきである。
中心市街地に路面電車を結びつけるのが一番大事であり、そのために延伸や付け替えは
必要である。
【検討会議における意見のまとめ】
路面電車の接続・連携のあり方については、いろいろな地域に関する意見が出さ
れたが、路面電車活用の最初の段階としては、都心部分についての検討を行うべき
だと考えた。
中心市街地の活性化に貢献する公共交通ネットワークを形成するためには、都心
部での回遊性を向上させる観点から、「札幌駅周辺」「大通」「すすきの」の3地区
を結ぶために、路面電車を延伸する必要がある。さらに、商業・娯楽・観光・文化
施設等の状況、都心のまちづくりの方向性や事業の動向等を踏まえ、東西方向への
面的な広がりを持たせることが望ましい。
その際、観光客・ビジネス客が札幌を訪れる際の玄関口となる JR 札幌駅に路面
電車を接続することや、基幹となる地下鉄3路線の都心各駅やバスターミナルと路
面電車を結び、公共交通のネットワークを形成することで、都心内・沿線への集客
機能と回遊性を高めることが望ましい。
併せて、まち全体の活性化に貢献するためにも、路面電車のみならず、地下鉄・
バス・タクシー等との乗継ぎ・運行サービス機能等をハード・ソフトの両面から高
め、都市交通システムとしての質的向上を図ることが重要である。
- 29 -
(4)路面電車の魅力向上
検討会議では、国内外の路面電車の事例等を踏まえて、中心市街地の活性化に向
けたまちのデザインの必要性や路面電車自体の魅力向上について議論した。
【検討会議で出された意見概要】
電車だけでなく札幌のまちとしての全体のトータルデザインを今ここで、しっかり構築
することが大事である。
路面電車は都市観光の活性化やアイデンティティを発信する重要なツールである。路面
電車を使って観光のテーマをはっきりさせる取組みなどを通じて、札幌の街並みをひと
つのシンボルとして捉える議論が必要ではないか。
札幌の新しい生活価値や魅力を創造し、世界に向けて誇れるような電車の導入が望まし
いのではないか。
トータルでバリアフリーなまちづくりを目指すならば路面電車は不可欠な交通システ
ムである。それを電車・バス等も含めて実現できれば、公共でやるべきという合意が得
られるのではないか。
車両は技術的にもデザイン的にも世界に誇れるものでなくてはならない。
高齢社会に向け、誰もが利用しやすく、楽に都心を移動できる低床車両の導入が望まし
いのではないか。
都市景観との調和の観点から、架線レス車両の導入についても検討する必要があるので
はないか。
あえて無理に架線レス車両を前提にする必要はない。ヨーロッパでは架線があるが全然
気にならないし、デザイン的に処理できる問題だと思っている。コストアップの要因に
つながるうえに技術的にまだ確立されていない。
新たな路線部分は、架線・支柱のない低床車両で走ることも検討する必要がある。
デザインというと、車両の色や形というイメージがあるが、それだけではなくバリアフ
リー、ネットワーク、そのための交通機関の乗換えや自家用車との接続等を意味すると
思う。
歩行空間の延長が路面電車の車内であるということを目指さなければいけない。
都心部でのまち歩きとバスや地下鉄との連携という観点から、歩道側に電車を走らせる
走行方式は、非常に有効である。
電車をメディア*20として使うことを考えるべきである。また、高齢社会に対応するよう
な低床車両、環境にやさしい電車でなくてはならない。
路面電車を札幌の起爆剤というか、札幌のブランドの核にして、ブランド全体で見たと
きにどうなのかという観点で考えることが必要ではないか。
もっと検討会議の議論が、市役所内部や市民に広がり、一緒に取り組む方策が必要では
- 30 -
ないか。
一部の地域ではなく、全市的に関心が持たれ、路面電車はまちの財産との意識が芽生え
るような努力が必要ではないか。
市民・観光客から愛されるデザインに優れた車両の導入を核とし、デザインや福祉関連
の学校等との事業連携や、市民・経済界の参加等も得ながら、電車の外観や高齢者に配
慮した座席等も含めた内観、さらに電停等のトータルデザインを導入することが望まし
いのではないか。
【検討会議における意見のまとめ】
路面電車は、バリアフリーなまちづくりを目指すうえで不可欠な交通システムで
あるとともに、札幌のアイデンティティを発信する重要な道具である。
このため、車両については、高齢社会に向け誰もが利用しやすく安心して気楽に
都心を移動できる低床車両を基本とし、都市景観や美しい街並みとの調和を図るた
め、架線レス車両等を含めた、デザイン面、技術面での検討も進める必要がある。
併せて、軌道の敷設位置については、交通バリアフリーの観点や路上駐車の規制
強化により、道路空間を有効に活用できる可能性が高まったことなどから、路側走
行方式も含めて検討を進めるとともに、車両や電停等も含め、トータルデザインを
考えていく必要がある。
さらに、路面電車が市民・観光客から愛され、札幌の新しい生活価値や魅力を創
造するためには、観光・商業等の中心市街地の活性化、交通ネットワークの形成、
ユニバーサルデザイン等の観点を踏まえ、世界に向けて誇れるような札幌のまち全
体のトータルデザインを構築していく必要がある。
また、こうした取組みにあたっては、デザインや福祉関連の学校等との事業連携
や、市民・経済界の参加等を得るような仕組みの構築が重要である。
- 31 -
(5)都心における路面電車の交通課題
検討会議では、都心部に路面電車を導入する場合の交通課題対応の考え方等につ
いて議論した。
【検討会議で出された意見概要】
都心部の交通計画の方向を考える必要があるのではないか。
駐車場の問題や自家用車の乗り入れ規制等、冬の公共交通特区等の検討も必要ではない
か。
将来、都心部に路面電車の新線ができる場合、都心部の交通抑制の一助となるのではな
いだろうか。
道路利用者等との利害関係を超えて、多くの市民が納得する路線・車両等のあり方の提
示が必要である。
路上駐車の規制強化により道路空間が空く可能性がある。これをどのようにうまく利用
していくかを考えていかなければならない。
運輸局としては、法的規制の面で、できるだけ検討内容を尊重した支援を考えていきた
い。
日本初、世界初という難しいことにチャレンジして、そこで起きた様々な問題をどう克
服してきたかを見せることがまちの一つの売りになってくる。
路線の具体的な検討段階になると、都心部分の渋滞問題、荷さばき問題、バス交通の問
題、歩行者の動線も含めて、総合的な交通問題として捉え、総合交通体系の枠組みの中
でチェックが必要である。このような段階では、関係の行政機関や事業者等の調整を十
分に図っていくべきと考えている。
違法駐車の問題は平成18年6月から解決できるメドが立ったが、除雪の問題は残る。
この2つが実はネックとなって、利害関係が非常に難しくなっている部分だと思う。
富山市では、交差点における自動車の右折車線を確保するために、交差点部分の電車の
軌道位置を1車線分ずらして走行させるなど、交通安全ということも考慮し、非常に細
かいところまで検討していると思った。
【検討会議における意見のまとめ】
都心部で路面電車を活用するにあたっては、他都市の事例も参考にしながら、道
路空間の使い方等のニーズや課題を勘案し、荷さばきや冬期交通の問題等も含め
て、電車事業者と関連する交通事業者・行政機関・商業者・企業、そして市民が連携
して交通課題の解決に取り組むべきである。
・路面電車に関する交通施策の事例
⇒
- 32 -
参考資料P63参照
4章
まちづくりと路面電車事業
1.路面電車のまちづくりへの貢献と事業経営の考え方
(1)まちづくりにおける路面電車活用の効果
路面電車は、その様々な特性から、札幌のまちづくりの課題である環境低負荷型
社会・高齢社会・人口減少社会への対応の可能性があるものと考えられる。
また、都心まちづくりの実現に向けても路面電車は、
「路線がわかりやすい」、
「定
時性に優れている」、
「ゆれが少ない」などの特性から、その価値を高めて「ユニバ
ーサルデザイン」、
「わかりやすい運行サービス」、
「路線の延伸」等を実現するとと
もに、市民・企業・行政・電車事業者が様々な事業連携を通じて路面電車を活用す
ることにより、まちづくりに貢献することが期待される。
○ 路上をゆっくりと走り、揺れが少なく、景色や街並みを眺めながら移動でき
る路面電車は、大変乗り心地のよい乗り物であり、
「安心と快適のまちづくり」
に貢献する。
○ 路面電車は、通りの景観を形成し、都市空間を演出する要素の1つとなるこ
とから、都心での新しい過ごし方等を創造し、
「五感にひびくまちづくり」に
貢献する。
○ 札幌の財産であり、北海道遺産*21 でもある路面電車を有効に活用し、その魅
力を高めることにより、「先人の記憶が残るまちづくり」に貢献する。
○ 軌道があることで、どこに行くかもわかりやすく、定時性もある路面電車は、
初めて札幌に来る人にも安心感を与え、「札幌の魅力が世界へ届くまちづく
り」に貢献する。
○ 路面電車は、市民に様々な活動や表現の場を提供し、新たな交流が生まれる。
さらに、路面電車を使った活動は、新鮮な印象を与えることから、人目を引
き、一層交流の輪が広がり、「市民の夢を支援するまちづくり」に貢献する。
○ 路面電車の停留場や車内を利用した新たな産業活動が生み出され、札幌の活
力を向上することで、
「新たな産業、出会いが生まれるまちづくり」に貢献す
る。
このような観点から、路面電車の価値や効果を評価する際には、事業採算性だけ
に捉われず、まちの価値を高めることにより期待される効果(社会的便益)を総合
的、多面的に捉えることが重要と考えられる。
- 33 -
○ 路面電車の特性をまちづくりに生かすことが重要
■路面電車の特性
路面電車は、バスに比べ走行速度のばらつき
が少なく定時性が高いことなどから
岐阜市の路面電車廃止の事例(平成17
年4月)
岐阜市の路面電車廃止の事例(平成17年
バスの約1/3
バスの約1/3
乗用車の約1/5
乗用車の約1/5
バスで代替運行を実施した結果
バスの
約1/3
1/3
揖斐線
方面
美濃線
方面
廃止前の
電車利用
738人
887人
廃止前の
バス利用
174人
357人
廃止後の
バス利用
617人
850人
443人
493人
転換利用者
(転換率) (60%転換) (56%転換)
【都市・環境】
世界に誇れる環境に
やさしい街の実現
(環境低負荷型社会への対応)
自家用車等に
転換→約4
転換→約4割
【人・暮らし】
質の高い暮らしの実現
(安心・安全・快適)
(高齢社会への対応)
路線のわかりやすさ
電気動力
個性的な乗り物
【まち・経済】
魅力的で賑わいの
あるまちの実現
(人口減少社会への対応)
まちの個性を創る
定時性(確実性)
優れた乗降性・揺れが少ない
質の高い乗り物
例えば,
例えば,札幌市に低床車両が導入されると・・・
電車があると・・・
都心に路面
都心に路面電車があると・・・
20,000人/日 × 14% =
1日約2,800
人
日約2,800人
「どサンこ
∼4)
サンこパス」のアンケートによると(H17.9
パス」のアンケートによると(H17.9∼
(実験期間中の (パスがあったから
(想定される
平均利用者数) 外出した人)×実験日数 新たに外出した人)
520人/日 × 6.4% × 77日 =
実験期間中
約2,600人
2,600人
大
通
札幌駅
(高岡市)
(想定される増加人員) 地下鉄駅からの移動範囲
地下鉄駅からの移動範囲(駅は約600m間隔)
低床車両導入に
600m
冬でも抵抗なく歩ける距離を
よる推定増加率 増加
冬でも抵抗なく歩ける距離を
すすきの
(札幌市)
路面電車の1日
平均利用者数
路線バスに
転換→約6
転換→約6割
150mで計算すると
150mで計算すると
路面電車は、気軽に移動でき
る行動範囲を1.7倍に拡大
し、これは、郊外大規模小売店
舗約6個分の広さとなる。
300m
路面電車電停から
の移動範囲(電停は約300
m間隔)
路面電車電停からの
移動範囲(電停は約300m間隔)
- 34 -
○ 路面電車の価値や効果を多面的に捉えることが必要
■都心の活性化に貢献する路面電車の活用・事業連携のイメージ
・ 路面電車の特性(価値)を高めて、様々な事業連携を通して、まちづくりに貢献する。
①安心と快適のまちづくり
①安心と快適のまちづくり
都心の魅力を享受しながら安心して活動
都心の魅力を享受しながら安心して活動
できる都市環境
できる都市環境
○活用例
・ 観光ボランティアによる車内での観光案内
・ 商業者・観光・ホテル業者等との連携による
買物乗車券、観光乗車券等の発売 等
③先人の記憶が残るまちづくり
③先人の記憶が残るまちづくり
先人が札幌の都市づくりに込めた思いや
先人が札幌の都市づくりに込めた思いや
遺産を継承し札幌の個性と魅力を伸ばす
遺産を継承し札幌の個性と魅力を伸ばす
○活用例
・ 住民による「路電の日」にちなんだイベントの
実施
・ 観光業者による、沿線の魅力紹介マップと
乗車券をセットにした、「さっぽろ路地裏
ウォーキング事業」の実施 等
⑤市民の夢を支援するまちづくり
⑤市民の夢を支援するまちづくり
活動の場や機会を提供するなど多面的に
活動の場や機会を提供するなど多面的に
支援
支援
○活用例
・ 沿線住民・市民団体による沿線マップづくり
・ 商店街によるフラワープランターを使った魅
力づくり
・ 市民・企業からの車両、電停デザインの
公募 等
様々な事業連携を通して、
まちづくりに貢献する
市民
市民
企業・
企業・ NPO
NPO
連携
電車事業者
電車事業者
行政
行政
②五感にひびくまちづくり
②五感にひびくまちづくり
魅力にあふれる都市空間と世界へ誇れる
魅力にあふれる都市空間と世界へ誇れる
新しい札幌スタイルを創造
新しい札幌スタイルを創造
○活用例
・ 大学・専門学校等との連携による魅力的な
車両、電停のデザイン
・ 民間企業による魅力的な電停広告展開 等
元気にする道具として活用
元気にする道具として活用
④札幌の魅力が世界へとどくまちづくり
④札幌の魅力が世界へとどくまちづくり
札幌の個性を世界へ向けて発信する
札幌の個性を世界へ向けて発信する
ユニバーサルデザイン
先進的な車両導入
路線の延伸等
わかりやすい
運行サービス
歩道から直接乗降
他交通機関と
円滑な乗継ぎ
○活用例
・ 車内での国際短編映画祭等プロモーション
ビデオ等の上映
・ 商業者による雪祭り開催時等の車両の装
飾 等
価値を高める
安心感・存在
安心感・存在
感がある
感がある
ランドマーク
ランドマーク
になる
になる
軌道があり
軌道があり
わかりやすい
わかりやすい
現在の路面電車が持つ特性
地上を走行し
地上を走行し
人目を引く
人目を引く
ゆれが少ない
ゆれが少ない
⑥新たな産業、出会いが生まれるまちづくり
⑥新たな産業、出会いが生まれるまちづくり
新たな産業活動や交流を生み出し、
新たな産業活動や交流を生み出し、
札幌の活力を引き出す
札幌の活力を引き出す
○活用例
・ 企業による新型電車のお土産品販売
・ 観光ハイヤー・バスとの連携企画乗車券の
販売
・ 沿線ホテルと乗車券をセットにしたツアー企
画 等
■路面電車活用で期待される社会的便益の体系と指標例
<期待される社会的便益>
【都市・環境】
環境負荷
の低減
まちの価値を高める
世界に誇れる
環境にやさしい
街の実現
(環境低負荷型
社会への対応)
【人・暮らし】
社会的便益の指標例
地球環境保全への寄与
CO2排出量の削減
排出ガス低減(沿線・都心部)
NOX排出量の削減
エネルギー消費量の効率化
エネルギー消費量の削減
交通事故件数減少(自動車転換率)
交通利便
性の向上
安全性の向上
バリアフリー化による移動距離の拡大
高齢者の外出回数の増加
質の高い
暮らしの実現
(安心・安全・快適)
使いやすい公共交通の提供
(わかりやすい、定時性の確保)
観光客等の利用機会の拡大
交通拠点へのアクセス向上
(高齢社会
への対応)
移動時間の短縮
滞在時間の増加
【まち・経済】
魅力的で賑わい
のあるまちの実現
集客・交流
の拡大
賑わいの創出
外出機会の増加
消費額の増加
商業・観光・文化等の活性化
メディアでの紹介回数の増加
(人口減少社会
への対応)
魅力的な街並みの形成
- 35 -
資産価値の上昇(固定資産税)
(2)路面電車の事業経営の捉え方
路面電車の経営に関しては、国の社会資本整備審議会の中間とりまとめで、基盤
整備や運営の成立を図る新たな考え方が示されたことを踏まえて、まちづくりに路
面電車を活用することで期待される社会的便益を考慮し、地域社会が路面電車に設
備投資するための新たな枠組みの検討が必要と考えられる。
併せて、公営・民営等の経営形態のほか、民間活力の導入による運行委託・公設
民営・一括委託等の経営手法も含め、路面電車をまちの活性化の資源として有効活
用していくための事業経営の検討が必要である。
○ 社会的便益を考慮した路面電車事業経営の検討が必要
■まちの活性化に貢献する路面電車の事業経営の捉え方
◎都市交通施策の戦略的な取組のあり方
○ 公共交通は、集約型都市構造の実現にとって必要不可欠なものであり、交通事業とし
て成立するか否かのみによって存廃や導入の有無等が決定されることは適切でない
と考えられるため、「市場への働きかけ(適切な公的関与)」を行い、公共交通機関の
適切な利用が図られるよう総合的な支援が必要
○ バス専用レーン設置やLRTの導入など、道路空間を公共交通で優先的に利用
○ 交通事業者のみの負担で採算性を確保されないものの、公益性が高い路線について
は、効率性を確保しつつ、公益の範囲で税その他による財政支援や地域による支援等
を行い整備・運営を成立
(社会資本整備審議会都市計画・歴史的風土分科会都市計画部会都市交通・市街地整
備小委員会 平成18年7月3日 中間とりまとめより抜粋)
路面電車経営
支出
削減
社会的便益
地域社会(受益者別の便益例)
運賃収入 等
黒字
赤字
運
賃
収
入
等
路面電車経営+都市の経営
運行経費等
運行経費 等
経常
(損益)
存続
収入増
(運行サービス
の向上・一体的
な事業連携)
○札幌市(固定資産税等の増収力の向上)
○沿線商業(潜在的な集客力の向上)
○企業(潜在的な事業性の向上)
○市民(交通利便性の向上)
○観光客(満足感の向上)
○都市全体(潜在的な事業可能性・集客力
の向上)
既存
路線
設備投資
(資金)
車両改修等
都心
路線
必要最
低限の
実施
設備投資
(資金)
車両更新等
社会的便益を
考慮して投資
軌道敷設等
社会的便益を
考慮して投資
- 36 -
投資方法(例)
○税投入(札幌市)
○寄附金(市民・観光客・電車愛好団体
等)
○車両等のスポンサー(企業・各種団体)
○電停等の一体整備(財産保有者)
○出資(※公営事業以外の場合)
○ 様々な経営形態や手法の特性を考慮した事業経営の検討が必要
■まちの活性化に貢献する路面電車事業経営の捉え方
経営形態
公営
概要(目的)
メリット
デメリット
◎ 公営企業として、公共の福祉の増進 ○市政との一体性が強い
●収益力が低い
まちづくりを推進する観点から、
運営の柔軟性・即効性(サー
を図ることを目的とする。
一体的な事業展開ができる
ビス向上・経費削減)が弱い
○ この目的達成にあたり、市民負担を
○資金調達力が強い
●順応力が低い
軽減するため経済性を発揮する。
会社存続の信用力が高いため、
借入が容易で借入額も大きい
経
営
の
手
法
例
民営
法制度等により、環境変化に
対する意思決定が遅いなど
運 民間会社等に運転業務など、運営の一部を委託する。
行 ※ 軌道法では、「国土交通大臣の許可を受けた場合に限り、
軌道の事業若しくは運転の管理の委託をすることができる」
委
に該当すると考えられる。(関係分を転載)
託
●目的:運営で収益力を高めるため
●課題:委託元の電車事業の安全運行を確保する
観点などから、受託会社等の責任、運営
能力を担保することなど(実施例なし)
公 自治体が設備投資を行い、民間会社等が運営を行う。
設 ※ 軌道法では、「国土交通大臣の許可を受けた場合に限り、
民
軌道の事業若しくは運転の管理の委託をすることができる」
営
に相当すると考えられる。(関係分を転載)
●目的:運営と設備投資の実施主体を分け、
一 特定目的会社に設備投資と運営を一括して委託する。
括
委 ※ 軌道法に規定はないが、平成11年9月に施行された「民間
資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する
託
法律(PFI法) 」に基づくものである。
※ PFI法の考え方は、民間事業者の資金や経営ノウハウを最
大限に引き出し、公共サービスの費用対効果の最大化を目
的としている。
●目的:運営で収益力を高め、設備投資負
◎ 民間企業として、収益を上げること
を目的とする。
○ この目的達成の範囲内で、公共交
通としての使命・役割を果たす。
公 営
○メリット
担の軽減を図るため
●課題:運行委託の課題に加え、特定目的会社
等の設置が必要(実施例なし)
※ PFI事業の基本的な仕組みは、委託元である
公営企業と特定目的会社との事業契約、この
会社と、出資する企業連合(建設会社、運営
会社等) ・融資を行なう金融機関・リスクを軽
減する保険会社等との業務契約となる。
○収益力が高い
○順応力が高い
□目的
○市政との
□公共の福祉
一体性が強い の増進
●デメリット
●収益力が低い
●順応力が低い
○資金調達力が強い
経
営
手
法
の
例
民 営
・運行委託(運営の収益力を高めるため)
・公設民営(運営と設備投資の実施主体を分
け、運営に対するリスク軽減を図るため)
・一括委託(運営の収益力を高め、設備投資
の負担軽減を図るためーPFI事業)
●資金調達力が弱い
○収益力が高い□収益を上げる ●税制優遇がない
○順応力が高い
- 37 -
●資金調達力が弱い
●税制優遇がない
都市経営
路面電車などを、
まちの活性化の資源として
有効活用
路面電車経営
運営に対するリスク軽減を図るため
●課題:公営企業のない富山市・高岡市では、第
三セクターを設置し、設備投資の資金措
置等を実施(財産面を含めた実施例なし)
2.まちづくりからみた路面電車事業のあり方
(1)路面電車の価値と効果の捉え方
検討会議では、路面電車の活用や事業連携を踏まえ、想定される価値と効果の捉
え方、効果を把握するための指標等について議論した。
【検討会議で出された意見概要】
路面電車の価値の捉え方の一つは、事業単体の収支と都市全体の収支とを合わせて経済
価値とする方法、例えば、年間3億円の赤字でも路線を廃止すると大きな固定資産税の
減収を招くというような経済価値の捉え方である。もう一つは、路面電車が必要不可欠
という市民の意思と合意のもと、行政が補助金を出すということに見られるような社会
的な価値という捉え方である。
市民・観光客・商業者等の立場から、札幌が元気になることを実感できることが必要で
ある。一般市民に向けては、わかりやすい言葉での説明が必要である。
社会的便益を数値化するのは難しいが、総合的な判断に加えて、これで良いのか悪いの
かということを、大まかな数字にして押さえることが大事だと思う。
例えば、クール(かっこいい)というのは、どう考えても便益として評価できないけれ
ど、これから都市が稼いでいくうえで路面電車が必要な場合、そこをどう構想して市民
に訴えて実現していくのかが重要である。
路面電車の価値の定性的なものとして、出かける楽しみ・お楽しみ生活等、市民の幸福
感のようなものがあると思う。
定性的な指標こそ、市民の誇り・豊かな生活を享受しているという価値につながり、こ
れを伝えることが、市民に路面電車の重要性を理解していただく第一歩である。
【検討会議における意見のまとめ】
路面電車の価値や効果については、単なる交通機関として、電車事業者の直接的
な効果や事業採算性だけに捉われずに、まちの価値を高めることにより期待される
社会的便益を総合的、多面的に捉えて評価することが必要である。
この路面電車が生み出す社会的便益には、その効果を数値で捉えることのできな
いものもあり、その「市民の幸福感」のようなものこそが、豊かな生活を享受して
いるという価値として重要である。
このようなことから、札幌のまちや市民を元気にする価値・効果の捉え方や数値
化して評価しにくい社会的便益も含めた指標の出し方、さらには価値や効果を生み
出すための事業連携等の仕組みについて、その内容を市民にわかりやすく説明して
理解を得ていくことが重要である。
- 38 -
(2)路面電車の事業経営のあり方
検討会議では、現在の経営状況や公共交通に関する社会資本整備審議会の中間と
りまとめなどを踏まえ、路面電車の事業経営の基本的な考え方等について議論した。
【検討会議で出された意見概要】
少なくとも、事業として存続できるよう、運行コストを運賃収入等でカバーできるとこ
ろまでは目指すべきものであるし、それを越えて後は設備の部分や資本の部分、それを
どこまで税金等の負担でカバーしていくか、本当は数字を使った議論が必要だと思う。
既存線の8.5㎞で終わるのか、それとも伸びていくのか、それとも将来的にはどんどん
ネットワークが広がるのかということがあって、その上で最も望ましい形態は何かとい
うことを、数字を見ながら考えることが必要である。
一般的な人たちは、 民営で安全は大丈夫なのか 、 赤字になったらすぐにやめてしま
うのではないか
という思いを抱くと思う。
安全安心な乗り物という一番重要な視点なしに公共交通は語れない。
安全運行の確保が十分にできるような、組織体が必要ではないか。
民間でできることをなぜ公営でできないのだろう と単純に思う。収益率についても、
なぜ民間で収益率が高く頑張れるのに、公務員になると頑張れないのか
とも思う。
大切なのは、民営か公営かということではなくて、許されるその許容範囲の中でどうや
って運営するか。1つの方法として、金額で判断してしまうことも可能ではないか。
路面電車の事業の経営だけではなく、都市全体を経営する観点から公共交通の問題は都
市基盤施設として考えるべきである。
路面電車だけではなく、バスや他のものも含めて、どこかで責任を持って、全体をコー
ディネートする必要がある。
超高齢化社会に向けては、豊かな暮らしと活力のある都市、これに公的な交通資源をど
う使っていくか、どうコーディネートしていくかが問題である。
路面電車の経営形態を考える観点の一つは事業の採算性の問題であり、もう一つはまち
づくりにどう位置づけるかというバランスの問題である。どちらを重視して経営形態を
どのように考えるかの検討が必要である。
路面電車事業は、公営と決められない中間領域の公共サービスであるため、運営の仕組
みがあいまいにならないための視点として、事業主体以外にリスクを及ぼさない、長期
的なスパンで評価できる体制、市民参加が担保されるやり方の3つがあると思う。
単純に民に移行してコストカットするのではなくて、今の中でもできることはあると思
う。例えば、行政内部のパブリックなセクターというのも良いのでは。
従来のそれぞれの専門職、セクションのみでの組立てというのは、もう全ての面で成り
立たない時代になってきているような気がしている。
- 39 -
採算性や、費用対効果ばかりで物事を判断するのではなく、多少赤字でも、市民が出歩
きやすいような方向でいけば、市民も納得できるのではないか。
公営、民営も含め、みんなで支えていかなければいけないことが見えてきた。
今まで「交通」は、個別企業の問題として捉えてきたが、もうそういう時代でない。軌
道系交通は装置産業であり、いわゆる基盤部分は誰が負担するかで採算性が異なる。従
って、この基盤部分は行政が担う考え方を入れていくべきである。
今までの第三セクター*22方式で抜けていたものは、肝心の利用者だとか市民という部分
が経営に関して入っていないということ、つまり官と民の都合のいいところだけが寄せ
集まっても、それをチェックする機構がないということである。
便益を得る最大のステイクホルダー(利害関係者)は利用者であるべきで、対価を払う
ときに、評価をする権利と義務が発生する。それを経営に直接参画するのか、モニタリ
ング*23するのか、経営の仕組みとのバランスによって幾つかの方法があるが、いずれに
しても市民が参加するべきと思っている。
【検討会議における意見のまとめ】
本来、路面電車の経営を考えるには、今後の事業展開等を踏まえた経費の精査等、
数字を用いた詳細な検討が必要となるが、今回の検討会議は、そうした専門的な経
営解析を行う場ではないことから、事業経営の基本的な考え方について整理を行っ
た。
まず、どのような経営形態であっても、公共交通にとって一番重要な安全性と信
頼性を確保できる仕組みにするとともに、運行コストを運賃収入等で賄える経営体
質とすることが必要である。そして、設備投資も含めて路面電車の維持にかかる
様々なコストとメリットを明らかにし、民営、公設民営、PFI、公営等、どのよう
な経営形態や経営手法が望ましいのか、どの程度までの行政負担が望ましいのかに
ついて整理をしたうえで、市民の理解と適切な判断を得ることが重要である。
また、この検討にあたって、札幌を豊かな暮らしと活力のあるまちとするために
は、これまでのように個別の経営主体の問題と捉えるのではなく、都市全体を経営
する観点や公共交通全体をコーディネートする観点から、これからの路面電車の経
営を考えることが重要であり、地域社会全体の問題として、札幌市をはじめ様々な
主体が関わって路面電車の経営を支えていくことが必要である。
そのためには、利用者である市民が寄付や出資等により事業に参画したり、情報
の開示等により経営をチェックするなど、地域全体で経営を支える仕組みをつくる
ことが重要である。
- 40 -
5章
おわりに
路面電車について、各委員より一言
亀森委員
とある、まちづくりNPOの方がおっしゃっていた非常に印象深い言葉がありま
す。それは「利益が継続を保証する」というものです。NPOの事業であっても、
赤字続きでは関係者の協力を得ることはできないし事業を続けることもできなく
なる。したがって、NPOといえども、収支をないがしろにしてはいけない、とい
う意味です。
路面電車が多くの市民に愛され、また様々な効用や可能性を持っていることは、
この会議を通じて改めて明らかになりました。そこで、今後必要なことは、路面電
車の「継続を保証する利益」やそれを実現するための体制について具体的に議論を
深めていくことと思います。
高橋委員
今、観光の世界では、業をまたいだ色々な形での連携ということが言われていま
すが、その中で非常に重要な要素として、公共サービスの関わりということが言わ
れていると思うのです。今回の検討会議には、市役所が部局をまたいで参加してい
たり、メンバーにも様々な業種の方がいたり、行政機関の方もいたり、それぞれ壁
を乗り越えた議論ができたということが、今後の行政のあり方、政策の展開の仕方
にとって非常に重要なことであったと改めて感じております。
また、この会議の最大のテーマが、今後、急速に展開する少子高齢化の時代の中
で都市がどうやって生き延びていくのかということであり、そのまちに生きる方た
ちの安心・安全・利便性・快適性・その他をどこに求めていくのかという議論がこれ
からも続いていくと思っています。公共交通機関と一口で言っても、地下鉄があり、
バスがあり、路面電車があり、タクシーがあり、様々なものがありますが、それぞ
れがどういう役割を担って生き方を見つけていくべきなのかということが非常に
重要なことだと思います。
その中で、特に路面電車がどういう位置づけでどういう機能を果たしてくれるの
かが、非常に楽しみであります。札幌の歴史と共に歩いてきた路面電車を私たちが
大切に育てて、札幌を元気にするためにもう一度路面電車に頑張って働いてもらお
う、という方向に向かっているこの議論を大切にしていただいて、新しい路面電車
の誕生を待ち望みたいと思っております。
- 41 -
竹内委員
ともすれば、市電の存廃を考える時、単に沿線地域住民の足として、通勤・通学
の手段としての視点に重点を置いて議論されがちでしたが、「さっぽろを元気にす
る路面電車」という観点から検討を進めて、路面電車の活用方法、殊に「観光都市
札幌」の誇れる文化的遺産であるという認識、沿線には自然豊かな藻岩山、豊平川、
中島公園、大通公園等、また、図書館、美術館等の多くの文化施設、中心商店街、
すすきのに代表される大型集客地区に接続する利便性等、利用方法を考えると「さ
っぽろを元気にする」道具としての価値はまだ広く、全市民にもっともっとアピー
ルする必要があると思います。
一方、関係者の努力によって経営改善も進み、乗降者も沿線人口の増加に伴い増
加傾向にある中で、更なる検討を加え、新型車両の導入、延伸も視野に入れて「さ
っぽろを元気にする路面電車」の価値を高め、また、高齢社会に対応する交通機関
としての役割を十分に発揮してほしいと思います。
伏島委員
先日の夕刊紙で全国の 50 歳以上の人による『いつか住んでみたい憧れの街』の
アンケート結果が紹介されましたが、トップが札幌なのです。我々が思っている以
上に、札幌は全国で人気があります。そういった中で、この街をより楽しく豊かな
街にする一つのパーツとして路面電車をどうするかという議論を、この委員会でし
てきたと思っております。
最後の会議で今後の展開について説明がありましたが、この中に市議会はどう関
与するのかと思いました。予算の審議だけではなく、これから、きちんと議会の皆
さんのお話を聞きながら、議論をしながら進めていくのだろうと思っております。
何故その様なことを申し上げるのかといいますと、私の言う参画とは、様々な参画
があるからです。議会、議員の参画もあれば、プランニングの段階でも、あるいは
事前チェック、事後チェックという形での参画もあるでしょう。市民が出資して経
営に参加する、あるいはサービスを享受するだけではなく、サービスを自ら提供す
る、嘱託職員や有償ボランティアのような形で、路面電車の運営に関わっていくよ
うなことも展望できるのではないかと思います。
札幌は内外に人気のある街ですから、楽しいプロジェクトであれば、参画したい
という人は必ずや出てくるだろうと思います。そのタイミングが、団塊の世代の退
職年次である 2007 年ではないかと思いますので、そこに向け、広くしたたかに
経営を組み立てるということを、札幌市の皆さんに期待したいと思います。
- 42 -
山本委員
議論は様々ありましたが、私個人としては消化不良と申しますか、もっとこうい
うことを提案しなければいけなかったのではないかというところもあります。ただ、
こうした委員会や検討会議のあり方として、テーマに対して極めて前向きに議論し
ていかないと駄目な時代になったなということを、検討会議を重ねるごとに思いま
した。
今回の検討会議では、札幌市の部局を越えて変えていこうというマインドが形に
なって、会議に3局のトップが参加しているわけですが、是非とも検討会議の議論・
提言をベースに、札幌市全体の都市政策の中で、具体的なプランの検討をお願いし
たいと思います。路面電車についての議論は、この先の事業計画で明快な形が見え
ないと、市民も待ちくたびれた感があるのではないでしょうか。当然ですが、最終
的に経営視点で裏づけがないと事業として成り立つのかという議論が付いて回る
ことなので、専門度の高いチームでこの点はクリアしていただきたいと思います。
まち全体のデザインという観点で、私も今後、自分の立場でできることは是非や
っていきたいと思っております。
武田委員
私は、路面電車の沿線に住む一住民として、
「路面電車がなくなっては困る。」と
いう単純な利用者の立場から始まって、委員としてこの検討会議に参加させていた
だいたわけですが、会議の中で事務局から紹介のあった国土交通省の LRT の助成
制度など、折角あるこのような制度を使わせてもらいながら事業を進め、これから
の路面電車の経営についても、ぜひとも、札幌市全体が経営や企画のスペシャリス
トと手を携えて、思い切った改革に着手していただきたいと思います。
そして、路面電車だけではなくて、路面電車を加えた便利でスムーズな公共交通
体系という総合的観点に立って都市計画を進めていっていただけたらと思います。
吉岡委員
この会議では、既存線の 8.5 ㎞の問題が解決しないと、延伸や新たな経営システ
ムの展開に移行できないという論調が多く見受けられました。しかし私は、限られ
た時間・資金・知見といった資源を、既存線だけ分けて考えるという、多くの効果
を望めないところに投入するのではなくて、大きな新しい世界を描いて実現してい
くことに投入していくべきだと思います。路面電車の設備にも限界が来ていますし、
国交省の LRT 整備の動きもあり社会環境においてもチャンスであります。タイミ
ングを失することなく進めていくのが、この政策の非常に重要なポイントだと思い
ます。
次に、路面電車のあり方については、戦略的に価値を創造していくということを
示し、都心部での大きな政策のひとつとして、アウトカムにとどまらず、インパク
トをどう狙っていくかが大事であると考えます。それは、公共交通の新しい姿と街
- 43 -
の再生を都心の中で描いていくことが、ひとつの暮らし方の改革になって魅力的な
まちになって、観光などにもつながっていくという、その連鎖反応を創りたいが故
のプロジェクトであるということをしっかり押さえる必要があると思います。
最後に、このプロジェクトは、
「稼ぐ」と「暮らす」が両立した札幌の将来像を、
都心から全市や世界に向けて明快に示すためのものだろうと思います。今回は、残
念ながら検討の「場」はありましたが、有効に議論するための「像」を提示できま
せんでした。議論をするために、どのような「像」を描くかは私を含めて専門家に
課せられた大きな課題であるし、立場はいろいろあると思うのですが反対される方
は、自分ならこういう姿を描くという具体的な対案を示してもらわないと、いつま
で経っても議論にならず実現しないのだろうと考えています。
札幌市にとって波及度の大きいプロジェクトだと思いますので、これからも積極
的に関わっていきたいと思っております。
吉中委員
私は、市電沿線の町内会が中心となって組織された「市電の会」を代表してこの
会議に参加しています。市電の存廃がいろいろと取り沙汰された時期には大変心配
していましたが、平成17年2月に市長が存続を意思表示してからは大変安心し、
昨年から市電祭りも復活しているところであります。
そして、この検討会議の名称の頭に付いている『さっぽろを元気にする』という
言葉に大変期待をしておりました。札幌を元気にするなら、人のたくさん集まると
ころに路線を敷くとか、世界的に広がる LRT のシステムなどにも議論が及ぶのか
と思っておりましたが、具体的な路線の話にはならず、どうなることかと心配して
おりました。最終的には、将来に向かった展望や希望なども織り込んだ結論にまと
まり、大変有意義な会議であったと思っております。
なお、現在、市電の会では「ぶらりまち歩きマップ」というのをつくっておりま
して、これは電話や郵送のほか、インターネット上の白地図への書込みやワークシ
ョップ等を通じて、広く市民の方から沿線の魅力的な場所や市電の思い出をいただ
き、これを掲載情報として盛り込んでいくという地図でございます。今年度末に完
成の予定でございまして、市民一般にもお渡ししたいと思っておりますので、お楽
しみにお待ちください。
吉見委員
この検討会議の成果のひとつとして、路面電車の価値と捉え方ということがある
と思います。すなわち、路面電車単体の事業体としての損益ということを重視する
よりは、まちづくり全体の中での効果を考えていこうという、この時代のまちづく
りの中で非常に大事なことであり、公共交通を位置づける場合にも大事な見方です。
これまで日本の行政ができなかったところに、札幌市でこの位置付けができたとい
うことは、大変重要な一歩ではないかと考えております。また、この 1 年間の会議
- 44 -
を通して、路面電車やまちづくりに関して市民の皆さんからの注目を浴びることが
できました。やはり札幌では、路面電車が一部の市民のものであり、多くの市民の
議論につながりにくいものであったのが、全体の議論となったというところで役に
立ったと思っております。
さらに、過去の経緯と比べて大きく違う点として、国の諸機関を代表した各行政
機関の協力の方向性ということが明確に表されたということがあります。「これは
できない」というのではなく、「どうやっていくか」という方向での発言・議論が
多く、そこが非常に良かったと思っております。
対して、この会議の反省点を考えますと、やはり、結果として具体性に欠けたと
いうのは否めないのではないかと思います。具体性と言いますのは、どういう投資
をするのか、それは路線、車両などの設備、具体的な経営の方向性の問題も含みま
す。もうひとつは、今後のタイムスケジュールが明確にならなかったということで
す。実際にどのようなスケジュールで導入し、どのように進めていくのかというこ
とは議論されていませんので、今後はスピーディーな意思決定、進め方をしていた
だきたいと思います。
林委員
市電に求められる機能ということにつきましては、市民生活を支える生活交通の
側面と観光交通の側面と、2つの側面があり、そのような前提でこの検討会議でも
これまで議論がされてきており、将来のまちづくりを踏まえたうえで、いろいろと
市電のあり方について検討ができたと思っています。
札幌市の交通を考えますと、JR、地下鉄、バスを中心とした交通体系となって
おりまして、どちらかと言いますと路面電車は補助的と言いますか、劇で言います
と脇役的な感じでございますが、将来、きらりと輝くような脇役になったらいいと
考えております。
小町谷委員
個人的な感想になってしまいますが一言述べさせていただきます。
地域の魅力は、住んでいる場所だけではなく、相当広域的な生活圏全体の評価に
関わり札幌の魅力如何は、北海道全体の魅力にも影響を与える存在だと思います。
さて、人口の首都圏への一極集中の要因は、さまざまあろうかと思いますが、東
京の都市としての多様性の魅力によるところが、大きいのではないかと私は感じて
います。
札幌のまちづくりについても、安全安心で暮らしやすいまちづくりがベースとし
て極めて大事ですが、プラスαのおもしろさ、楽しさの多様性をいかに生み出し育
てていくかがまちの魅力を高め人を引きつけられるかどうかのポイントではない
かと思いますし、北海道では唯一の百万都市札幌でしかできないことも多く、期待
も大きいと思います。
- 45 -
全国的にも高い評価を得ている札幌のまちの何が魅力なのか、それをさらに発展
させるために、マクロには行政主導の計画的な基盤づくりを進める一方で、ミクロ
な民ベースでのゲリラ的なおもしろい動きの誘発を仕掛け、その背中を押してあげ
るようなバックアップが更なる札幌の多様な魅力を創出するために大事なことで
はないかと思います。
路面電車は、周辺住民の生活の足としての機能だけではなく、札幌の魅力を高め
る多様な動きを生み出す契機としてまちづくり計画と一体として位置づけられた
時、幅広い札幌市民の支持を得られるのではないかと思います。少し風呂敷を広げ
て、ニセコへのオーストラリア観光客や登別温泉への台湾人等の観光客の来訪等、
国際的観光の芽生えを着実に育てる上で、道央圏における拠点都市としての札幌の
都市観光の魅力アップは今後の課題だと捉えれば、路面電車の都市観光ツールとし
ての可能性や位置づけももっと広がり、札幌市民のみならず道民全体への関心の広
がりも期待できるかもしれません。
本検討会議では、委員の方々から路面電車の多様な側面からの価値、機能につい
てさまざまな提案、討議がなされたという点で大変有意義なものだったと思います。
今後、経営上の課題、公共交通体系の中での位置づけなど、まちづくりとの連携の
他に、さまざまな課題への具体的な検討が進められることと思いますが、札幌市民
はもとより広く道民、内外の観光客にも愛される路面電車に向けての合意形成が図
られることを期待します。
古瀬委員
高齢化の進展や環境負荷の低減など、札幌の将来を見据えると、公共交通の重要
性は今後、更に増していくものと考えられます。
この様な観点から、まちづくりにおける路面電車の活用、及びそれに向けた交通
ネットワークの形成を進めていくことは、今後の札幌のまちをいかに元気にするか
において、重要な視点であると考えます。
一方、交通管理という視点から述べさせていただくと、都心での延伸を具体的に
検討するにあたっては、荷さばきなどの商業活動や自家用車・バス・タクシーなど
の自動車交通との連携、冬期交通等、様々な課題を整理するとともに、安心・安全、
そして円滑な交通ネットワークの構築を目指すことが重要です。
また、実現にあたっては、市民・行政・商業者等、様々な関係者が協力して進め
ることも重要だと考えます。
札幌市市政推進室長 生島
いろいろな立場から参加されている委員の方におかれましては、様々なプレッシ
ャーもあったかと思いますが、本当にお疲れ様でした。
私は札幌市の市政推進室という立場で検討会議に参画させていただきました。直
接関係がないように思われたかもしれませんが、市政全般にわたる調整を行う立場
- 46 -
であり、市役所全体の横串を通していくという役割は、今後とも果たしていきたい
と思っております。
そしてこれから一番大切なのは、いかに市民の方々の理解を得ていくかというプ
ロセスではないかと思います。市役所というのは市民の幸福を追求していくわけで
すけれども、その為には結論はもちろん大切ですが、そこに至るプロセスが非常に
大切ではないかと、今、強く思っておりますので、市民の理解を得てさっぽろを元
気にするために、今後一層努力して参りたいと考えております。
札幌市交通局交通事業管理者 濱田
検討会議を通して、委員の皆さまの熱心な議論、それから貴重なご意見というも
のを拝聴させていただきまして、今後の参考にさせていただきたいと思っておりま
す。
札幌市の路面電車は、様々な歴史を経まして来年で、80 周年と、ひとつの節目
を迎えます。今、このように新たな存続に向けた議論をしているということは、80
年の節目を経て新たなスタートを切るという意味で本当に意義深いものがあると
感じております。
今後はこの提言を受け、具体的な取組みが始まることになります。路面電車の経
営を預かっている私の立場からしますと、将来に継続できるように、日々の安全な
運行と、それに加えて「さっぽろ路地裏ウォーキング」の取組みのような事業連携
を図りながら、需要喚起にも努め、そして収支の改善に努力していきたいと考えて
おります。
委員の皆さま、本当にありがとうございました。お礼を申し上げたいと思います。
札幌市市民まちづくり局長 下村
これまで 7 回の検討会議を通し、このような提言をまとめていただきまして、委
員長を始め、各委員の方々に対し心からお礼を申し上げたいと思います。これまで
いただいた多くのご指摘やご意見を真摯に受けとめて、今後の検討を進めて参りた
いと思います。
今後の展開として、この提言を基に具体的な検討を進めることが、これからの
我々市民まちづくり局の使命であるわけでございます。しかしながら、この提言の
意見や方向性に関しては、実は多くの方が疑問を呈しているという状況でございま
す。
我々にとっては、具体的な解決案を示しながらその方々のベクトルを、路面電車
を上手に使いながら、本当に魅力あふれる札幌の都心を創っていこうというような
同じ方向に合わせていくというのが、実は一番大きな仕事であると思っています。
そして、説得力ある考え方を市民の方々に早急に示しながら、まちや市民を元気に
する路面電車の実現に向けて、最大限の努力を尽くして参りたいと考えております。
- 47 -
参考資料
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< 参 考 資 料
目 次 >
(1) 「さっぽろを元気にする路面電車検討会議」名簿.......................................... 50
(2) 検討会議開催経過.............................................................................................................. 51
(3) 路面電車事業の収支改善に向けた取組み ............................................................. 52
(4) 市民・行政・電車事業者・企業が連携した路面電車の活用例 ................. 53
(5) 事業連携の展開のイメージ .......................................................................................... 55
(6) 1 日乗車券による利用促進効果................................................................................. 56
(7) 路面電車(LRT)に対する国の支援 ...................................................................... 57
(8) 路面電車を活用したまちづくりの他都市事例 ................................................... 59
(9) 路面電車に関する交通施策の事例............................................................................ 63
用語説明 .................................................................................................................................................. 64
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(1)「さっぽろを元気にする路面電車検討会議」名簿
(所属は、平成18年4月1日現在)
氏
名
委員長
佐藤 馨一
(さとう けいいち)
所
属
北海道大学大学院教授
和博
(かめもり かずひろ) 日本政策投資銀行北海道支店企画調査課長
高橋
威男
(たかはし たけお)
日本旅行業協会北海道支部長
竹内
宏二
(たけうち ひろじ)
札幌TMO運営委員会副委員長
伏島
信治
(ふせじま のぶはる) 伏島プランニングオフィス代表
山本
光子
(やまもと てるこ)
株式会社電通北海道マーケティングプランニング部マーケティング・
プランナー
武田
広子
(たけだ ひろこ)
平成 16 年度第2回市電フォーラム意見発表者
吉岡
宏高
(よしおか ひろたか) LRTさっぽろ代表
委
亀森
員
吉中 新太郎
(よしなか しんたろう) 市電の会会長
吉見
(よしみ ひろし)
宏
札幌LRTの会会長
林 雄三郎 (はやし ゆうざぶろう)
北海道運輸局鉄道部長
(江里口 善和) (えりぐち よしかず)
小町谷
信彦 (こまちや のぶひこ) 北海道開発局事業振興部都市住宅課長
古瀬
高嗣
(ふるせ たかし)
市
生島
典明
(いくしま のりあき) 札幌市市政推進室長
職 員
濱田
(黒田
下村
北海道警察本部交通部交通規制課長
雅英 ( は ま だ ま さ ひ で )
札幌市交通局交通事業管理者
隆樹) (くろだ たかき)
邦夫
(しもむら くにお)
札幌市市民まちづくり局長
委員13名、市職員3名、合計16名
(敬称略)
※ 行政機関所属の委員及び市職員の一部について、平成18年4月 1 日付け人事異
動により委員の交代があったため、前任者氏名を(
)内に表示している。
- 50 -
(2)検討会議開催経過
■ 第1回
平成 17 年(2005 年)8 月 4 日(木)
○ 委員自己紹介、委員長選出
○ 議事:事業存続の方向性
・ 路面電車利用の現状把握
・ 路面電車の価値と効果の整理
■ 第2回
平成 17 年(2005 年)10 月 4 日(火)
○ 議事:路面電車の価値とその効果を高める基本事項と重点課題の検討
・ 関連する既存資源や計画・事業との連携可能性等の検討
・ 路面電車の価値・効果を高める重点課題の検討
■ 第3回
平成 17 年(2005 年)12 月 16 日(金)
○ 報告:市民1万人アンケートについて、路面電車フォーラム2005概要
○ 議事:路面電車の価値とその効果を高める活用・連携方策の検討
・ 既存路線の活用方策の検討状況
・ 都心のまちづくりとの連携方策の検討
■ 第4回
平成 18 年(2006 年)2 月 17 日(金)
○ 報告:市民アンケート結果
○ 議事:路面電車の価値とその効果を高める活用方策の検討
・ 都心活性化に貢献する路面電車の価値と活用の視点
・ 都心活性化に貢献する路線・車両・軌道・電停のあり方等
■ 第5回
平成 18 年(2006 年)5 月 31 日(水)
○ 報告:路面電車における他都市の事例紹介等
○ 議事:中心市街地の活性化方策について
・ 交通拠点との接続・連携について
・ 沿線での一体的なまちづくりの展開について
・ 路面電車の役割やトータルデザイン等について
■ 第6回
平成 18 年(2006 年)7 月 26 日(水)
○ 報告:交通課題・都市交通システムへの対応事例等
○ 議事:まちの活性化に貢献する路面電車の事業経営の仕組みについて
・ 仕組みの実現に向けた路面電車事業経営の収支について
・ まちの活性化に貢献する路面電車事業を実現するための経営形態について
■ 第7回
平成 18 年(2006 年)9 月 1 日(金)
○ 報告:路面電車活用のあり方を踏まえた今後の展開
○ 議事:さっぽろを元気にする路面電車活用のあり方についてのまとめ
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(3)路面電車事業の収支改善に向けた取組み
今後も利用の実態・ニーズに合わせた運行サービスの向上を進め、様々な事業連
携による利用促進を図るなど、運行コストを運賃収入等で賄うことができるような
経営の実現に向けて、更なる収支の改善に取組みます。
実態調査
調査日:平成17年11月16日(朝ラッシュ時) 天候:雪
西線6条電停⇒西4丁目(7:30∼9:00 23便(3.9分に1本))
最大乗車人数
: 95名 (7:56 西線6条発車車両)
平均乗車人数
: 74名(西線6条発車時)
乗り残し最大人数 : 20名(西線6条)
サービスアップ策(すぐ実施)
冬期利用実態を踏まえ朝増便
冬期利用実態を踏まえ朝増便
(11月21日より冬ダイヤ実施)
(11月21日より冬ダイヤ実施)
運行サービスの向上には、経費との
運行サービスの向上には、経費との
バランス(費用対効果)が重要であり、
バランス(費用対効果)が重要であり、
より効果的・効率的な運行計画が必要
より効果的・効率的な運行計画が必要
沿線公共施設の運営等を考慮し、
沿線公共施設の運営等を考慮し、
夜間の増便(11月21日より実施)
夜間の増便(11月21日より実施)
利用実態や周辺施設等の影響を考慮し、
利用実態や周辺施設等の影響を考慮し、
随時弾力的な運行計画の改定が必要
随時弾力的な運行計画の改定が必要
「いつ電停に
行ってもすぐ
電車に乗れる」
という
イメージを更に
アップ
沿線公共施設や病院・新設マンショ
沿線公共施設や病院・新設マンショ
ン等に時刻表等を掲示
ン等に時刻表等を掲示
自立した経営に向けた取組み
自立した経営に向けた取組み
『 収入の確保 』
☆乗車料収入
<すぐに実施>
・沿線の公共施設・病院・マンションへの時刻
表配布
・利用実態に合わせたきめの細かい配車計画
<18年度に実施予定>
・市電専用1日乗車券の商品化(4月予定)
・路面電車内における傘の無料貸出
・沿線ガイドマップの発行
・利用しやすい時刻表の作成
・貸切電車のPR強化
・企画乗車券の発売拡充
・地元住民との連携によるイベントの実施
(市電フェスティバルの継続等)
☆広告料収入
・ペイント電車の増車(17年度内4台増車)
(百万円)
H16実績
営業収入
1,037
乗車料
993
その他
44
営業支出
1,352
人件費
818
経費
410
減価償却費
124
営業収支
-315
営業外収入
273
営業外支出
20
経常収支
-62
『 支出の抑制 』
☆人件費の抑制
・嘱託運転手の採用拡大による総人件費圧縮
☆経費の削減
・業務内容の見直しによる徹底したコストダウン
○償却前経常収支の
○償却前経常収支の
黒字を維持
黒字を維持
○今後3年をめどに
○今後3年をめどに
経常収支の黒字転
経常収支の黒字転
換を目指す
換を目指す
・さまざまな手法による増
・さまざまな手法による増
収対策
収対策
・支出抑制と生産性の向
・支出抑制と生産性の向
上
上
・今後とも赤字補填のた
・今後とも赤字補填のた
めの補助を見込まない
めの補助を見込まない
1日あたり、約1200人の乗客増で経常収支は黒字転換
(H16実績をベースにした算定条件による)
- 52 -
(4)市民・行政・電車事業者・企業が連携した路面電車の活用例
1日乗車券
■ 「どサンこパス」の発売
z 土日・祝日のみ利用可能な市電1日乗車券
z 大人 300 円
(大人 1 名につき、こども 1 名無料:市電の通常運賃 170 円)
利用促進と他の事業者等との事業連携などによる地域の活性
化への取組みが期待される。
■ 藻岩山ロープウェイ利用料金割引
他の施設と連携
z ロープウェイ窓口での「どサンこパス」の提示により、ロープウェイ往復料
金が割引される。
〔割引額〕 大 人(通常)1,100円 →900円
こども(通常)
550円 →450円
沿線マップ
■ 「市電路線図」の発行
z 沿線の魅力を紹介するマップ
市電1日乗車券と組み合わせて、利用することにより
乗客増加及び市電沿線地域の活性化が期待される。
他の施策とも連携
■ 「ちゅうおう区ウォーキングマップ」の活用
z 健康づくりを目的に中央区が発行したマップで、区民が自ら歩
いてコースを選択
■ 「札幌散策おすすめコース」を活用
z 観光文化局監修の地元市民のお勧めコースを紹介した
散策ルートマップ
「 ど サン こパス」 と組 み合 わ せて利用 する こ とによ り、 さらに「 ま ち
歩き」が便利になり、相乗効果が生ずる。
- 53 -
地域の取組み
■ 「ウエルカムフラワープラン」の展開
z 環境局の支援事業を活用し、電車沿線の商店街
にフラワープランターを設置
(平成18年8月から)
沿線商業地の賑わいと地域への愛着や
つながりが生まれる。
地域の取組み
■ 「(仮称)市電沿線ぶらりまち歩きマップ」の作成
z 中央区の支援事業として、市民団体
「市電の会」がマップを作成
z 電話や郵送のほか、インターネット上
の白地図への書き込み、ワークショッ
プ等を通じて沿線の魅力的な場所や
市電の思い出、まち歩きルート等、掲
載情報を募集 (平成18年度末完成
予定)
沿線の魅 力 発信や 活性 化につ な が る とと
もに、マップ作りを通して、地域や路面電
車への愛着が深まる。
企業の取組み
■ 「さっぽろ路地裏ウォーキング」事業の実施
「さっぽろの路地裏」という切り口で市電沿線を紹介し、
札幌観光の新たな魅力をPRする取組み
z さっぽろ路地裏ウォーキング実行委員会
(代表:株式会社ジェイティービー北海
道)がウォーキングマップと市電1日乗り
放題パスのセットを500円で発売(土
日・祝日のほか平日も利用可能)
z 札幌市内中心部のホテル13箇所で平
成18年9月から11月までの3月間の
試験販売
新たな観光 事業の開拓 や消費活動 の活
性化につながる。
to be continue...
- 54 -
(5)事業連携の展開のイメージ
○ 路面電車の活用・事業連携等により、新たな行動の誘発や、消費活動の活性化等、
賑わいの創出につながっていく。
■路面電車の活用・事業連携の展開イメージ
電車でいけるなら、わ
高齢社会への対応かりやすいし、わしらだ
うまく、使ってね
けでも行けそうだなー
消費活動の活性化
活用・連携
中島公園でイ
ベントを企画して
るよ、PRして人
が来てほしい。
まち歩きを助ける
ための「どサンこパ
ス」を発売します
沿線マップを見てカ
レーを食べに行ってき
たらおいしかったよ。
おじいちゃんカレー好
きだったよね
波及
効果
+
+
どサンこパスは、子供
が無料だから、孫を
誘って行きましょう!
中島公園のイベント
にも行ってみたーい。
電車の上手な活用
地域振興のた
めに、皆の思
いをまとめます。
地元の人しか知ら
ない穴場のカレー屋
さんを知ってるよ
賑わいの創出
活用
利用
コンビニなどで
マップの配布
マップ作成を通した、
マップ作成を通した、
事業連携・
事業連携・協働
お!! このマップ
はなんだろう?
こんなところにカ
レー屋があるんだ
次の休みは家にい
る予定だったけど、
Aさんを誘っていって
みよう!!
まちや市民が
元気になる
新たな行動を誘発
■観光客による路面電車利用の展開イメージ
うまく、使ってね!!
『ちょい旅電車!! 観光客編』
時間があるから
どうしようかな∼
『ちょい旅』しよう
ホテルで売ってた乗車券・・・・
彼が使う
乗車券は?
「さっぽろ路地裏
ウォーキング」事業の実施
線路があるから、
わかりやすい!!
予定を立てるのに
定時性があるのは
グット !!
さらに、
彼が手に持って
いたのは?
「(仮称)市電沿線ぶらり
まち歩きマップ」 作成
- 55 -
景色が見えるので
こんな魅力を発見!!
あの乗り物
かっこいいな!!
はっ!!
あの花なんだ!!
「ウエルカムフラワー
プラン」の展開
広告媒体としても目立つ
(新たな活用:車内でも
モニター設置し、宣伝)
うーんいい旅だ、
札幌にまた来よっ!!
お!!こんなことも
やってるんだ!!
様々なイベント、
祭りとの連携を検討中
(6)1 日乗車券による利用促進効果
○ 「どサンこパス」の試行発売時のアンケート結果によると、パスによって新たに外
出する機会を促す効果や自動車等からの転換を促す効果があった。
■市電専用1日乗車券試行発売アンケート結果
(アンケート実施期間:H17.10.1 から H17.11.27 まで。総サンプル 1,123 件)
問 1
5回 1回
以上 4%
4回 4%
14%
この乗車券 1 枚で何回乗車しましたか?
1回
2回
3回
4回
5回以上
合計
1人当たり平均
人数 構成比
41
3.7%
625 55.7%
246 21.9%
162 14.4%
49
4.4%
1,123 100.0%
2回
56%
2.6 回
問 2 家族割引を利用しましたか?
利用した
使用しなっかた
合計
3回
22%
人数 構成比
185 16.5%
938 83.5%
1,123 100.0%
○利用した家族のうち、1日乗車券があることによって、
新たな外出をした家族の割合は、8.1%
利用した
16%
利用しなかった
84%
問 3 この乗車券がなかったらどうしましたか?
なくても乗った
市電以外に乗った
外出しなかった
合計
人数 構成比
887 79.0%
164 14.6%
72
6.4%
1,123 100.0%
○ 自動車等から市電への乗換え 14.6%
○ 1日乗車券利用者の6.4%が新たな利用者
外出しなかった
6%
市電以外に
乗った
15%
なくても乗った
79%
市電1日乗車券の試行発売によって、使用者のうち、6.4%の人が新たに外出し、
自動車等から電車に転換した人を合わせると21%の人の路面電車の利用促進に
つながったことになる。
○
平成18年 5 月より「どサンこパス」として本格販売しているが、7月9日現在
で、1 日平均約630枚の売り上げを計上していることから、アンケートの結果を
踏まえると 1 日平均約340人の新規需要につながっていると予測される。
そして、
「どサンこパス」を活用した様々な事業連携により、更なる効果が今後期
待される。
- 56 -
(7)路面電車(LRT)に対する国の支援
かつて路面電車は、国内の都市で最も身近な市民の足として活躍してきた。
しかし、路面電車の営業路線は、自動車交通の進展等により、昭和 30 年代から
減少の一途をたどり、現在ではピーク時の約1割程度となっている。
しかしながら近年、「都心に魅力的な公共交通と快適な歩行空間とを配置した都
市では賑わいが蘇っている」という認識等に基づき、海外では多くの都市で LRT
(路面電車)が導入されまちの魅力の向上等、様々な効果を上げている。
我が国においても、「高齢社会への対応、環境負荷の低減、都市の再生等」とい
った観点から公共交通の重要性が再認識されており、多くの都市で高齢社会への対
応や、中心市街地の空洞化対策の 1 つとして、行政のほか、商工会議所や NPO 等
が一体となって、都心部への路面電車の導入検討が進められている。
このような状況を受け、路面電車(LRT)の整備に対する国の助成制度も、平成
9年度より基盤施設(インフラ)を中心に整備され、平成17年度からは LRT
システム整備補助 により運営施設(インフラ以外)に対しても拡充が図られつつ
あるほか、 LRT総合整備事業
により各助成制度の同時採択による一体的・総
合的支援が可能となっている。
また、平成18年7月、国の社会資本整備審議会の中間とりまとめにおいても、
「公共交通は、集約型都市構造の実現にとって必要不可欠なものであり、交通事業
として成立するか否かのみによって存廃や導入の有無等が決定されることは適切
でないと考えられるため、
『市場への働きかけ(適切な公的関与)』を行い、公共交
通機関の適切な利用が図られるよう総合的な支援が必要である」ことや、「交通事
業者のみの負担で採算性を確保されないものの、公益性が高い路線については、効
率性を確保しつつ、公益の範囲で税その他による財政支援や地域による支援等を行
い整備・運営を成立させる」ことなど、都市交通施策の戦略的な取組みのあり方が
示された。
- 57 -
■現行のLRTに関する助成制度(国)
■LRTに関する国の助成制度の概要
資料:まちづくりと一体となったLRT導入計画ガイダンス
- 58 -
(8)路面電車を活用したまちづくりの他都市事例
◇ JR 富山港線の路面電車化(富山市)
○導入の背景:「コンパクトなまちづくり」の推進
富山市は、低密度市街地の拡散が進行し、自動車保有台数全国第2位、道路整備
率全国第1位、自動車分担率*2472.2%と自動車交通への依存が高い都市となって
おり、そのため人口減少・高齢社会の到来に向け、公共交通を活用して、都市機能
を集中させたコンパクトなまちづくりを目指している。
○導入の経緯:北陸新幹線の建設(平成 26 年の完成を目指して)
平成13 年度の北陸新幹線建設に関する事業認可を契機に、県都にふさわしい広
域交通拠点の整備として、JR 富山駅の連続立体交差事業等に着手した。
その主要事業の1つとして JR 富山港線の路面電車化を進め、平成 18 年 4 月に
は新しく全車両を低床化した路面電車として、富山港線を開業している。
○今後の展開:中心市街地の活性化への寄与
富山港線の富山駅南側への延伸による市内路面電車との相互乗り入れ、市内路面
電車の環状化構想の実現に向けた検討を進めている。
○路面電車化の概要
□利便性快適性の向上
富山駅北口市街地へのアクセス利便性の向上と駅南側の中心市街地活性化に寄
与するために、一部区間を併用軌道(道路上を走ること)に変更する路面電車化
に合わせて、車両・電停の更新、運行サービスの向上を行っている。
□トータルデザインによる一体的なまちづくり
「まちづくりと連携して富山の新しい生活価値や風景を創造していくこと」、さ
らには「世界に向けて富山市民が誇れるような新しい富山港線とすること」を意
図して、路線デザインの基本コンセプトを設定している。また、富山港線の沿線
を「沿線活性化地域」とし、一体的なまちづくり事業を展開している。
□公共・地域による支援
運営会社である第三セクターが公共交通サービスの提供、施設の維持・管理を
行っているが、施設の整備、更新・改良については、富山市が支援を行っている。
また、沿線自治振興会で組織する「富山港線を育てる会」が設立され、施設の
維持や経費の助成のための「富山港線路面電車事業助成基金」への参加や寄付を
広く市民、企業等へ呼びかけている。
- 59 -
■富山市における市内電車の環状線化構想
南北路線の一体化
富山駅付近連続立体交差事業
呉羽方向から中心市街地への
直達性向上
(約1km)
中心市街地の回遊性の向上
南富山・大学前間の
直達性向上
凡 例
中心商業地を東西に補完し、
回遊性の向上
富山港線(鉄道区間)
富山港線(軌道区間)
南北路線の一体化
環状線の構想
JR線
■
■
■
■
■
■
低床車両の導入(全車両ー7編成)
低床車両の導入(全車両ー7編成)
新電停の設置(併用軌道区間:3電停、専用軌道区間2電停)
新電停の設置(併用軌道区間:3電停、専用軌道区間2電停)
運行サービス(増便、始発・終発時刻の改善、均一料金制、IC
運行サービス(増便、始発・終発時刻の改善、均一料金制、IC
カード・案内情報システムの導入等)
カード・案内情報システムの導入等)
■
■
■
■
■
■
富山港線のシンボルマーク(富山の「T」をモチーフ)
富山港線のシンボルマーク(富山の「T」をモチーフ)
電停のデザイン(マストをモチーフにし、沿線情報で個性化)
電停のデザイン(マストをモチーフにし、沿線情報で個性化)
車両のデザイン(立山の新雪をモチーフに、
車両のデザイン(立山の新雪をモチーフに、 7色のアクセントカ
7色のアクセントカ
ラーで富山の夢と活気を表現)
ラーで富山の夢と活気を表現)
ICカード
■
■ 駅アクセスの改善として、駅前広場の整備(同一ホームによる
駅アクセスの改善として、駅前広場の整備(同一ホームによる
円滑な乗り継ぎ)、駅に接続するフィーダーバス路線の新設
円滑な乗り継ぎ)、駅に接続するフィーダーバス路線の新設
■
■ 観光資源を活かしたまちづくりを推進し、歴史を活かしながら憩
観光資源を活かしたまちづくりを推進し、歴史を活かしながら憩
いと親水の公園機能を演出している富岩運河、岩瀬浜地区の
いと親水の公園機能を演出している富岩運河、岩瀬浜地区の
風情ある街並みの修景
風情ある街並みの修景
■
■ 運営・施設の維持管理を行なう第三セクターの設置
運営・施設の維持管理を行なう第三セクターの設置
■
■ 富山港線を育てる会を設立し、施設の維持や運営経費を助成す
富山港線を育てる会を設立し、施設の維持や運営経費を助成す
る基金を設置して、広く市民・企業からの寄付を募集
る基金を設置して、広く市民・企業からの寄付を募集
■
■ 電停に関する命名権の譲渡、個性化壁への協賛、ベンチの記念
電停に関する命名権の譲渡、個性化壁への協賛、ベンチの記念
プレートの設置で、広く市民・企業への参加呼び掛け
プレートの設置で、広く市民・企業への参加呼び掛け
富岩運河
- 60 -
◇ 万葉線の再生(高岡市)
○廃止の経緯(高岡市と新湊市を結ぶ万葉線の利用者数減少)
万葉線を運営する加越能鉄道株式会社は、平成 10 年 2 月、国からの欠損補助打
ち切りを機に、利用者減少に歯止めがかからないとして、路面電車を廃止し、バス
代替輸送への転換で、公共交通の使命を果たしたいとの意向を表明した。
○再生の基本的な考え方
□検討の視点
地域社会の将来を展望するときに、有形・無形、私的・公的を問わず、路面電車
の潜在的な価値は図り知れず、いかにそれを掘り起こすかにある。
□基本的な考え方
「少子高齢社会に対応する生活路線、また沿線2市の魅力あるまちづくりに活用
する都市施設(再活性化に必要不可欠な社会資本)である」とし、一定の枠組みを
確立して再生する。
□多様な役割
①通勤・通学・買物等、沿線住民の交通手段、②進展する高齢社会への福祉対策、
③環境対策、④都市の個性の象徴として、まちづくりに活用できること、⑤両市を
結ぶ都市の絆
等
※従来、地域の公共交通は、単に人の移動手段としてしか位置付けられていなか
った。万葉線問題をきっかけにそれが都市の魅力に大きく関係する重要な都市
機能の一部として認識され始めた。
□枠組み
新しいタイプの第三セクターでの経営 (加越能鉄道株式会社の経営踏襲でもな
く、行政依存型の第三セクターでもない、潜在的可能性を最大限に引き出す会社組
織として、平成 13 年 3 月に万葉線株式会社を設置)
○再生の取組み
・出資・寄付・財政支援:新会社の経営を監視・支援する観点から、県、市、地
元企業からの出資金と一般市民からの寄付金、行政の財政支援を実施
・新型車両:2両導入(平成 15・16 年度に各1両)
・まちづくりとの事業連携
①観光協会、沿線商店街、企業、大学とのタイアップや自治会等の協力
②万葉線対策協議会(市、市議会、商工会議所、自治会等)、万葉線を愛する会、
路面電車と都市の未来を考える会・高岡とのタイアップ
- 61 -
■高岡市と新湊市を結ぶ万葉線沿線マップ
○ 事業再生の枠組み
新会社創設に向けて
○ 新型低床車両(アイトラム)
斬新なデザイン等により沿線のイメージアッ
プ・利用促進に大きな効果をあげている。
(万葉線株式会社では、新型車両導入
による利用者数の増加を13.9%と推測)
- 62 -
□ 施設整備
行政が全面的に支援
※市民・県民・企業等から市に
寄せられた寄付金を含む。
(両市で1億円)
新会社維持に向けて
□ 運営・施設の維持管理
事業者が責任を持って運営
(一定の行政支援を実施)
□ 新たな施設整備
行政側が全面的に支援
(9)路面電車に関する交通施策の事例
■交通課題への対応事例
富山市:富山港線
●
● 軌道により車線が減線し、交通容量が低下する
軌道により車線が減線し、交通容量が低下する
○
○ 交通管理者との連携による違法駐車車両の撤去
交通管理者との連携による違法駐車車両の撤去
○
○ 右折レーン確保による自動車交通の円滑化
右折レーン確保による自動車交通の円滑化
以前は・・・
●
● 道路車線を横断して右折する
道路車線を横断して右折する
路側走行方式
○
○ 信号制御(黄色矢印)
信号制御(黄色矢印)
路上駐車による交通容量の低下
路上駐車による交通容量の低下
<路面電車自体の運用変更>
<路面電車自体の運用変更>
●
● 自動車の進行方向と逆に走行する
自動車の進行方向と逆に走行する
●
● 歩道側を走行する(路側走行方式)
歩道側を走行する(路側走行方式)
○
○ 縁石設置による安全性の確保
縁石設置による安全性の確保 等
等
○
○ 芝生軌道による視覚的差別化
芝生軌道による視覚的差別化
○
○ 道路管理者や沿線施設管理者との連携
道路管理者や沿線施設管理者との連携
右折車両による直進車の走行阻害
右折車両による直進車の走行阻害
高岡市:万葉線
単線
複線
自動車交通との調和を図り、道路空間の
自動車交通との調和を図り、道路空間の
使い方等の課題やニーズを勘案し、軌道の
使い方等の課題やニーズを勘案し、軌道の
単線、複線の併用、軌道敷設位置、交通
単線、複線の併用、軌道敷設位置、交通
施策とのパッケージ化など、様々な工夫や
施策とのパッケージ化など、様々な工夫や
連携を図る必要がある。
連携を図る必要がある。
●
● 道路幅が一部狭いところがある
道路幅が一部狭いところがある
○
○ 道路状況に合わせた単線、複線の併用
道路状況に合わせた単線、複線の併用
(車内無線による交信により安全運行を確認)
(車内無線による交信により安全運行を確認)
■都市交通システムの質的向上
区
分
施設整備関係
運行サービス関係
分
類
効 果
事 例 等
交通結節点 ・スムーズな乗継ぎ
他交通機関
(シームレス化)
・バリアフリー
・バス等と同一ホームでの乗り換え
・他軌道・バスターミナル・商業施設等への乗り入れ
・交通広場(鉄道、バス、タクシー)
・軌道内にバスを乗り入れる公共交通レーン化
・パークアンドライド駐車場等(その他、バス、自転車)
・タクシー等との連携の工夫(乗継ぎ割引等)
歩行環境
・乗降性の向上
・歩行環境の向上
都市環境
・景観、防災への配慮
・低床車両の導入を核としたバリアフリー化
・トランジットモール(歩行者と公共交通のための道路空間)
・路側走行方式(軌道)
・ テラス型電停(沿道サービスへの配慮)
・ 架線の集約化(カテナリー、センターポール方式)
・ 架線レス(地中式やバッテリー車両の運行)
走行環境
・運行速度の確保・向上
交通情報
・移動予定の向上
・ 運行情報の提供 (電停、携帯)
・えきバスナビ等の情報提供(インターネット)
運賃収受
・乗降時間の短縮
・ ICカードの導入(他交通機関・商業施設等との共通カード)
・ チケットキャンセラーの導入(セルフサービス式)
料金
・利用しやすい料金体系
・ 他公共交通機関との共通カード(ウイズユーカード等)
・ 昼間・土日祝日の割引
・ 1日乗り放題パスや環境定期等の企画定期券発行
・商業・観光施設入場料と路面電車乗車券との共通カード
・路面電車優先信号(感知システム等)
・信号交差点における電停位置の工夫
・道路管理者との除雪連携や消雪溝の整備
・制振・制音・景観への配慮 ・ 樹脂固定軌道、 芝生軌道
- 63 -
用語説明
*1:バリアフリー(P Ⅱ)
障がいのある人が社会生活をしていく上で、障壁(バリア)となるものを取り除くという意味。
ここでは、段差等の物理的バリアを取り除くことを表すが、より広義には、障がいのある人の社
会参加を困難にしている社会的、制度的、心理的なバリアを除去していくことにも用いられる。
*2:低床車両(P Ⅱ)
乗降口を含め、車内の床全体が低く段差のない車両のこと。一般的には乗降口が道路から 30cm
程度の高さにあり、停留場から段差なく乗車できるため、高齢者や体の不自由な方も乗り降りしや
すい。
*3:アイデンティティ(P Ⅱ)
個性、独自性
*4:架線レス車両(P Ⅴ)
道路上に張られた架線から電気を集めるのではなく、車内に設置したバッテリーや地中に設置し
た架線から電気を集め走行する路面電車の車両のこと。
*5:路側走行方式(P Ⅴ)
路面電車が車道の端(歩道寄り)を走行する方式のこと。
*6:トータルデザイン(P Ⅴ)
①
統一概念のもと、複数の施設等を関連付けながら、個別具体のデザインにあたること。
②
施設等の具体のデザインにあたり、各専門分野の協働体制をつくること。
*7:ユニバーサルデザイン(P Ⅴ)
「すべての人のためのデザイン」を意味し、年齢や障がいの有無等にかかわらず、できるだけ多
くの人が利用可能であるようにデザインすること。
*8:コーディネート(P Ⅵ)
物事を調整、調和、同調させること。
*9:kitara(P 8)
札幌市が保有する音楽ホールの名称。札幌の中心部に広がる中島公園の西側に位置している。
*10:コンパクト・シティ(P 15)
都市郊外化を抑制し、市街地のスケールを小さく保ち、歩いて行ける範囲を生活圏と捉え、コミ
ュニティの再生や住みやすいまちづくりを目指そうとする都市設計の発想のこと。
- 64 -
*11:オープンスペース(P 18)
道路等や建物敷地内外の公共的空間のこと。
*12:LRT(P 23)
軽量軌道交通(Light Rail Transit:LRT)のこと。本来は都市間路線や国際路線といった大型
車両を用いた本格的鉄道(Heavy Rail)に対し、都市計画・地域計画等で位置付けられた都市内や
近郊での運行を行う中小規模鉄道全般を指す言葉だが、併用軌道との組合わせによる都市内輸送と
の親和を図ったシステムが注目され、最近では専用軌道を用いた都市交通システムとしての認識が
強くなっている。具体的には、
「従来の路面電車の走行環境、車両等をグレードアップさせた、人や
環境にやさしく経済性に優れた公共交通システム。
(平成9年6月都市計画中央審議会答申より)」
などと整理がされている。
*13:NPO(P 23)
Non-Profit Organization の略で、利益追求のためではなく、社会的な使命の実現を目指して
活動する組織や団体のこと。通常、「民間非営利組織」と呼ばれる。
「非営利」であるため、株式会社等の営利企業とは違い、収入から費用を差し引いた利益を関係者
に分配せず、次の活動の費用に充てることを特徴としている。
*14:道路中央方式(P 23)
路面電車が車道の中央を走行する方式のこと。現在、札幌の路面電車はこの方式を採用している。
*15:ポテンシャル(P 25)
潜在的な力、可能性としての力
*16:カフェテリア方式(P 26)
利用者が自由に選択し、組み合わせることができる方式のこと。
*17:トランジットモール(P 27)
中心市街地の活性化、道路交通環境の改善、公共交通サービスの向上を目的に,歩行者専用のシ
ョッピングモールにLRTやバス等、路面を走行する公共交通を導入した都市の商業空間等を指す。
*18:コンテンツアップ(P 27)
素材を増やしたり、内容を高めることによって、全体の魅力を向上させること。
*19:ICカード(P 28)
キャッシュカード大のプラスチック製カードに極めて薄い半導体集積回路(IC チップ)を埋め込み、
情報を記録できるようにしたカードのこと。電子マネーやテレホンカード等に応用されている。磁
気カードに比べて 100 倍近いデータを記録でき、データの暗号化も可能なため偽造にも強いとい
う特徴がある。
- 65 -
*20:メディア(P 30)
媒体、情報を伝える手段
*21:北海道遺産(P 33)
北海道に関係する次の世代へ引き継ぎたい有形・無形の財産の中から、北海道遺産構想推進協議
会によって選定されたもの。平成18年9月現在、52件が指定されている。
*22:第三セクター(P 40)
国および地方公共団体が経営する公企業を第一セクター、私企業を第二セクターとし、それらと
は異なる第三の方式による法人という意味。国または地方公共団体が民間企業と共同出資によって
設立した法人を指すことが多く、その場合、多くは設立が比較的容易でその運営方式も自由な株式
会社の形態を採る。
*23:モニタリング(P 40)
監視、日常的かつ継続的な点検のこと。
*24:自動車分担率(P 59)
様々な交通手段による移動のうち、自動車で移動する人の割合のこと。
- 66 -
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