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新分野進出成功のポイント
新分野進出成功のポイント ■講師の略歴等 大和田 善男 株式会社 興和総合研究所 代表取締役 所在地:札幌市中央区大通西16丁目3−12 電 話:011-633-3132 FAX:011-633-3138 URL:http://www.kouwasouken.com/ 略歴:中央省庁から旧国鉄へ出向後、民営化 に伴いJR北海道へ。大規模商業開発、 土地区画整理事業に伴う企業統合・企 業設立を手がける。準大手コンサルタ ント会社の役員を歴任し、平成14年、 (株)興和総合研究所を設立。 資格:米国公認会計士 講演する大和田氏 経営基盤の強化 ■必要な経営資源 ・機能する組織体制と、やる気ある元気な社 員の存在。 ・設備や機械だけでなく、特殊技術や工法等を 活用できることが企業として大きな財産で ある。 ・売上、原価、利益率、キッシュフロー等の財 務管理。 ・業界全体の状況、他社の情報等を集めること も重要。 必要な経営資源 ・「ヒト・モノ・カネ・情報」といった経営資 源の現状を把握し、活用することが大切。 ■経営者のすべきこと ・新分野進出に限らず、どの会社にも言えることだが、どんなに厳しい状況になっても、“会社を つぶさないこと”が最優先である。場合によっては、リストラをせざるを得ないときもあるかも 知れないが、経営者は会社を存続させることを一番に考えなければならない。そして、少しでも 利益が出るように組織を立て直して行くことが必要。 ・そのためには、自社を知ることが大事。自社の強み・弱みを知り、見極めることが必要である。 ・会社のリーダーである社長が、会社の5年後・10年後の姿を描き、社員と共有し一心同体とな ってそれに向かって行く体制づくりが大切となる。 ・常に、企業の業績向上を考え、追求し続けて、新しいことを始めるときや改革するときなどは、 経営者自ら先頭に立って、責任を持って進めて行くという意識を持たなければならない。 -3- ■事業計画書の必要性 ・企業には、それぞれ存在意義や使命となる経営理念があるはず。 ・それに向かって3年後、5年後、10年後の企業の姿・ビジョンをはっきり描き、全社員と共有 し、それを成し遂げるための仕組みづくりを行う。 ・その仕組みに沿って、数字で表して行くのが「事業計画」であり、それができて初めて安定した 経営基盤が形成されると言える。 ・前年と比べて売上を何パーセント増やしたい等、対前年比で計画を作っている企業が多いが、そ うではなく、経営者の夢や企業の将来の姿をどのように実現するか、どのような仕組みや方法で 実行するのか、それを数字で表した「事業計画」を作成しなければならない。その「事業計画」 が会社の方向性を左右することになる。 ・赤字を出さない安定した経営基盤のある企業が、新分野進出成功へのカギとなる。 新分野進出のプロセス ■自社の強みとチャンスを知る(SWOT分析) ・自社の強み・弱みを洗い出すことにより、現状 把握ができ、自社の得意分野は何かを見極める ことができる。 ・市場規模、経済動向や社会情勢から、自社に対 する機会か脅威かを判断。 ・自社の強みを生かせるチャンスを知ることが大 切。 ■事業戦略の展開 SWOT分析 ・事業戦略の展開は、大きく4つに区分でき る。 “市場浸透戦略”新分野に進出せずに、現在の建設業という市場で、今までどおり公共工事 等を続ける。 “製品開発戦略”現在と同じ建設業という市場の中で、新しい工法や技術を取り入れて、そ れを売りにして行く場合。例えば、土木事業から建築業へ進むなど。 “市場開発戦略”建設業が得意とする技術力や機械力を活かして、建設業以外の新しい市場 を開拓して行く。 “多角化戦略” 建設業以外の全く新しい市場や業界へ進出する場合。例えば、外食産業、 介護ビジネスなど。 ■進出分野の見極め方 ・建設業者の中には、特に土木事業や港湾事業を得意とする会社は、「土」と「水」に詳しい。 そういった技術を、新分野に活用して環境リサイクルや農業に進むケースが多い。 ・農業といっても何種類もあり、企業が生産業務から販売まで行う場合や、委託業務や、販売 だけを行う場合もある。 ・介護福祉に進む建設業者は、地域に根付いている企業が多い。 -4- ・小売・飲食業は多岐にわたっている。焼肉店、ラーメン店などチェーン店に進むケースも多 い。建設業者には、1日で売上が何百万円も入って来るという金銭的な魅力があるようだ。 ・市民サービスビジネスといわれているコミュニティ−ビジネスに進出するケースも最近は多 くなった。しかし、まだパイが小さく、最初から常に仕事があるわけではない。依頼が無け れば仕事が無い。 ・IT産業に進む建設会社は、開発能力のある会社で、その道に詳しい人材がいる会社である。 ・どの分野に進むにしても、しっかりと見極めなければならないが、実際は、なかなか踏み切 れない会社が多い。なぜかというと、建設業者として始めた会社なので、建設業者として生 き残って行きたい、という強いこだわりがある。 ・又は、社長が、「社員のリストラなどもってのほか、一人でも多くの雇用を維持したい。」 という思いで新分野に進む必要性を感じていても、社員の理解が得られない場合が多い。 ・介護ビジネスを始めたある建設業者の例を挙げると、進出当初は、「なぜ今になって介護ビ ジネスを始めなければならないのか。」と社員から強い反発があった。「建設業者が経営す るような介護施設に家族を入れられない。」とまで社員に言われた。 ・しかし、最終的にその会社は、社員と経営者がじっくり話し合った結果“みんなで一生懸命 やって、自分たちの親も預かれるような施設にして行こう”と団結して新分野で頑張ってい る。 ・企業として生き残るにはどうしたら良いか、事業として成り立たせる手段やビジョンを作り、 切実に考えて行かなければいけない。 ■参入決定のプロセス ・企業の危機感を感じて、会社の存続の方向性を考えて行く。 ・新分野進出した際に、いかにして地域に貢献するか、地域や地元を活性化させるか、といっ た大義名分が無ければ長く続かない。雇用を増やし、地元に利益を落として行く大義を持っ ていただきたい。そういうビジョンを持ち、将来どれだけ地域に貢献できるかを考える。 ・日本の建設業は非常に技術力があり、レベルが高い。ところが、営業力は非常に弱い。公共 工事は受注生産で、営業する必要が無かったため、売る方法を知らない。営業力の拡大と営 業マンの育成が重要である。 ・精密で緻密な事業計画を作成しなければ、新分野では生き残れない。計画が絵に描いた餅に ならないように、緻密な3年後、5年後、10年後の事業計画を作成しなければ、事業が成 り立って行かない。 ・全社員が一丸となって、総意で新分野に参入することが大事。経営者と社員が共に考え、将 来のビジョンを描き、全員の総意で進めて行かなければならない。苦労するのは当たり前、 それをみんなで苦労しようという気持ちを持ってもらいたい。 ・強い協力者の存在が必要である。地域の人々や行政は、強い協力者になり得る。その人達の 応援や協力がなければ成功しない。“我々は、この新分野に進みます。ついてはご協力くだ さい”という気持ちで多くの協力者を巻き込んで行くことが、成功のポイント。 ・資金計画をしっかり立て、どれだけの資金を投入して行くのか、投資した資金が何年後に回 収できるか計画を立てる。投資した資金が回収できないような事業は、事業ではない。何年 後に回収でき、プラスになるのは何年後なのか、更に資金が必要になるのは何年後までか、 -5- 計画することが重要。 ・その計画を行う人材をどのように育てて行くのか人材育成計画も必要である。 ・このように、いろいろな計画を立てて手順を踏んで、それができて初めて成功できる新分野 事業の確立となる。 新分野進出のポイント ■新分野進出の失敗の原因 ・建設業の「請負体質」とのギャップ。 ・作ったモノが必ずしも売れるとは限らな い。良いモノを作っても、売れなければ 売上に結びつかず、失敗に終わってしま う。 ・何を生産し提供すれば仕事に結びつくの かという視点がなく、マーケティング感 事業計画の4つの条件 覚に乏しい。 ・「面白いから」「これが良いと勧められたから」等、進出する根拠が明確ではない。 ・売先を決めずにモノだけを作り、後になって販路が見つからないケースが多く、「販路」を確定 しないで進むことが、最大の失敗原因。 ■建設業の弱みを克服 ・大企業と言われる企業も、最初は小さい一歩だった。二番煎じではない地域のニッチを探し出し 市場を開拓する。小さな一歩でも、どのようにステップを踏んで進んで行くのかが大事。 ・消費者は何を求めているのか、求めているモノを提供できる事業を見つけてもらいたい。 ・会社のトップである経営者は、強い情熱と追求心を持ち続けることが大事。先頭に立って社員を 引っ張って行かなければいけない。 ・自社の強みを活かした分野に進むのが一番成功しやすい。特に建設業者は、イニシャルコストが 小さくて済む分野が理想。 ・しっかりとした事業計画を作りビジョンを明確にする。そして、撤退時期を見極めることも大切。 ■新分野事業成功のポイント ・危機に対して敏感になること。自社の現状はどうなっているのか把握して、危機を逆にチャ ンスと考える。 ・挑戦する勇気、立ち止まらず一歩一歩前に進んで行く。 ・地元や行政を巻き込み、強い協力者を得ること。 ・社員の理解と意思の疎通を大切にし、協力体制を整え社員一丸となって、地域を巻き込んだ 戦略 ・事業計画、資金計画等をしっかり作り、ひとつひとつチェックしながら進める。 ■事業計画のポイント ・「何をやるのか」「どのようにやるのか」「誰がやるのか」「いつまでやるのか」、この4 つのポイントをしっかり押え、地域に貢献できる事業で成長し続けていただきたい。 -6-