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添付1 - 当番世話人挨拶
ご 挨 拶 テーマ:考えよう,透析患児の様々な環境 腹膜透析,血液透析は安定した電気や水などがあって,初めて確実 にできる医療です.しかし,それらが供給できなくなった場合,一 体どのように対処すれば,患者さんに負担をかけずに続けて医療が できるのでしょうか.今回,東日本大震災をご経験された医師,災 害に詳しい看護師から御講演をしていただき,限られた環境でいか に医療を継続したのか,3年を過ぎてどのようなシステムを構築し ているのかなどを知りたいと思っております.そのほか,皆さんが 悩んでいると思われる透析を最後の延命として導入するか否か.一 度皆さんと一緒に考えていければと思っております.その時,医療 的な立場だけからではなく,法律的にもどうなのか,専門の先生を お招きして違う角度からもこの問題を考えていければと思っており ます.また,移行期支援に関しても,いかに密接な親子関係から自 立させていくか,いつも医療現場では悩まされます.今回,御講演 をいただき,今後の参考にしていただければ幸いです. 子供たちの環境は,私たちの時代よりもより複雑になってきており, その中で病気を抱えている患児は,がんばって生活をしております. この研究会が,少しでも透析患児のお役に立つことができれば幸い です. 第 28 回日本小児 PD・HD 研究会 当番世話人 久野 正貴 -1- ご 案 内 会場:東京女子医科大学 弥生記念講堂 〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1 TEL:03-3353-8111(大代表) 会期:平成26年12月13日(土)12:00~17:30 参加費(年会費込):4,000円(内年次会費:1,000円) 懇親会:平成26年12月13日(土)17:50より 会 場:東京女子医科大学 佐藤記念館 参加費:無料 単位認定:本研究会は,日本小児科学会(3単位),日本透析医学会(3単位),日本 腎臓学会の腎臓専門医更新のための単位(1単位),透析療法指導看護師 の受験および更新に必要な6学会合同認定資格ポイント(4ポイント)の認 定を受けております. 日本透析医学会の単位(ポイント)が必要な方は,受付にお申し付けくだ さい. <運営委員会> 日時:平成26年12月13日(土)11:00~12:00 会場:東京女子医科大学 B1F A会議室 (昼食は出ません.ランチョンセミナーを利用して下さい.) <当番事務局> 第28回日本小児PD・HD研究会事務局 当番世話人:久野 正貴(千葉県こども病院 腎臓科) 事 務 局:服部 元史(東京女子医科大学 腎臓小児科) 中野 栄治(千葉県こども病院 腎臓科) 千葉県こども病院 腎臓科 〒266-0007 千葉県千葉市緑区辺田町579-1 TEL:043-292-2111,FAX:043-292-3815 Email:[email protected] -2- 演者ならびに座長の方々へ 1. 座長の先生方へ 担当セッションの開始15分前までに次座長席にご着席下さい. 2. 発表時間について ランチョンセミナー 発表30分(質疑応答含む) 特別講演Ⅰ 各発表20分(質疑応答含む) 特別講演Ⅱ 発表40分(質疑応答含む) シンポジウム 各発表20分(質疑応答含む) 一般演題 発表7分,質疑3分 3. 演者の先生方へ 1) 発表データの受付・映写について ① 発表時間の30分前までにPCセンターにお越しください. ② 発表の10分前までに次演者席にお着きください. ③ ご発表はパワーポイントによるパソコン発表のみとします. ④ 投影スクリーンは1面で,プロジェクター1台を使用します. 2) データ作成時の注意点 ① スライド枚数の制限はございませんが,必要最低限の枚数にしてください. ② 動画の使用やMacintoshの使用の場合はノートパソコンをお持込ください. ③ アニメーションの使用は認めますが,これも最小の数にとどめてください. ④ 会場で使用するPCは以下の環境のものをご用意いたします. Windows OS:Windows 7 Power Point 2010 ※Macintoshはご用意しておりませんのでPC本体をご持参ください. ⑤ Windows Power Pointにて作成してUSBフラッシュメモリーまたはCD-Rに 保存してお持ちください. ※バックアップとして予備のデータをご準備いただく事をお薦めいたします. ※持ち込まれるUSBは,各自で必ずウィルスチェックをお願い致します. ⑥ フォントはOS標準で装備されているものをご使用ください. ⑦ 画面レイアウトの崩れを防ぐには,以下のフォントのご使用をお薦めい たします. [日本語]MSゴシック,MSPゴシック,MS明朝,MSP明朝 [英語]Times New Roman,Arial,Arial Black,Century,Century Gothic 3) 日本小児PD・HD研究会雑誌への二次抄録原稿の提出について ご発表の内容を,日本小児PD・HD研究会雑誌におまとめいただきます. 文字制限は特に定めておりません.2015年1月31日までにメールにてお送り ください.※ご不明な点がございましたら当番事務局までご連絡ください. -3- ~日本小児PD・HD研究会雑誌への 二次抄録原稿の提出のお願い ご発表頂いた先生方へ 本研究会におきましては、ご発表の内容を毎回日本小児PD・HD研究会雑誌として作 成し、研究会の充実を図っております。皆様方におかれましては大変お忙しいと存じ ますが、2015年1月31日までに原稿をご提出いただけますよう、ご協力お願いいたし ます。また、個人を特定できるような情報(個人情報)には細心の注意をお願いいた します。 なおシンポジウム・ワークショップ等、特別プログラムでご発表頂いた先生は、ス ライド原稿による代用もおこなっておりますので、不明な点がございましたら下記事 務局までお問い合わせください。 投稿・原稿規定 1. 文字制限は特に定めておりませんが、文字数の目安として2,000〜5,000字(文字 のみ)、図表は10点までとしてください。 2. 原稿はMicrosoft Wordを使用してください。段組みをしていただく必要はありま せん。 3. 医学用語は「日本透析医学会透析医学用語集」に準拠してください。 4. 外国語,外国人名,外国地名,外国薬品名などは原語のまま記入してください。 一般に日本語化しているものはカタカナで表現してください。 5. 度量衡の単位は,mm,cm,mL,dL,L,mg,mmolなど CGS単位系を用いてく ださい。 6. 字句を略して表記する場合には,その字句が最初に表記された箇所で( )内に適 切な略語を表記してください。 7. 文献は引用箇所に番号を付け末尾に一括し,次の形式に従い引用順に並べてくだ さい。 (著者が2名までは全ての氏名を記してください。2名以上の場合は筆頭者のみを記 し、2人目からは省略して“他”、英文の場合は“et al.”としてください。) a. 雑誌の場合 著者名:論文名.雑誌名.巻:頁(初め-終わり),西暦年 [例1]上村治, 他: 日本人小児の血清クレアチニン基準値. 日本小児腎臓病学会雑 誌. 23:241-244, 2010 [例2] Ishikura K, et al.: Effective and safe treatment with cyclosporine in nephrotic children: a prospective, randomized multicenter trial. Kidney Int. 73: 1167-1173, 2008 -4- b. 書籍の場合 著者名(1名):論文名.書籍名(編者名).頁(初め-終わり),出版社名,所 在地,西暦年 [例3] 吉川徳茂, 他: 治療法 小児ネフローゼ症候群治療ガイドライン. Annual Review 腎臓2009(御手洗哲也 他編),251-257,中外医学社,東京, 2009 [例4] Verrina E: Peritoneal Dialysis. In : Pediatric Nephrology (Aver ED et al, Ed), 6th ed, Springer-Verlag, Berlin Heidelberg, p1785-1816, 2009 c. 誌名を略記する場合 日本語誌名は省略なく記載し、外国のものはIndex Medicus所載のものを用いて ください。 d. インターネット上の情報を記載する場合には、情報源とともに参照した日付を記 入してください。 [例5]池田光穂「情報ロジスティクス入門」 http://cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/050616infologis.html (2005年6月22日) 8. 図表はMicrosoft PowerPointで作成し、原稿とは別々に作成してください。 9. 図表については発表時に用いたものでも結構ですが、印刷時に解像度が落ちます ので、Microsoft PowerPointに貼り付ける際には、なるべく解像度が高いものを 使用してください。 10. 図表はすべてグレー印刷となりますのでご注意ください。 モノクロ印刷で見え方を確認していただくことをお勧めいたします。 11. 各論文との統一のため、事務局で一部変更させて頂くことがあります。 校正にご協力お願い致します。 12. 作成していただいた二次抄録はメール添付にて日本小児PD・HD研究会事務局 ([email protected])までお送りください。 お問合わせ先: 〒183-8561 東京都府中市武蔵台2-8-29 東京都立小児総合医療センター 腎臓内科 TEL: 042-300-5111, FAX: 042-312-8162 E-mail: [email protected] -5- 会場案内 会場:東京女子医科大学 弥生記念講堂 〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1 TEL:03-3353-8111(大代表) <会場案内図> 地下鉄若松河田駅 地下鉄曙橋駅 交通アクセス 地下鉄 都営大江戸線 地下鉄 都営新宿線 都営バス 宿 74 系統 都営バス 宿 75 系統 都営バス 早 81 系統 都営バス 高 71 系統 若松河田駅若松口より徒歩5分・牛込柳町駅西口より徒歩5分 曙橋駅A2出口より徒歩8分 新宿駅西口→東京女子医大前 新宿駅西口→東京女子医大前←三宅坂 早大正門→東京女子医大前←渋谷駅東口 高田馬場駅前→東京女子医大前←九段下 -6- 日程表 11:00 ~ 12:00 運営委員会:B1F A 会議室 12:00 ~ 12:05 開会式 12:05 ~ 12:35 ランチョンセミナー 座長:服部元史(東京女子医科大学 腎臓小児科) 「小児腎性貧血の診断と治療の動向」-ガイドラインを中心に- 芦田 明(大阪医科大学医学部 泌尿・生殖発達医学講座 小児科) 共催:協和発酵キリン株式会社 12:45 ~ 13:25 特別講演Ⅰ 座長:幡谷浩史(東京都立小児総合医療センター 総合診療科) 「小児腹膜透析は,いかに大災害に備え対応するべきか」 −東日本大震災からの教訓− 熊谷直憲(東北大学大学院 医学系研究科 小児病態学分野) 「災害対策学習会を開催して」 由元由美(医療法人 偕行会 透析事業部) 13:30 ~ 14:00 一般演題 1 ~ 3 座長:郭 義胤(福岡市立こども病院・感染症センター 腎疾患科) 座長:楡木志帆(東京女子医科大学病院 看護部) 1:菊永佳織(東京都立小児総合医療センター 腎臓内科) 2:中倉兵庫(第一東和会病院 小児科) 3:内海加奈子(千葉県こども病院 看護局) 14:00 ~ 14:30 一般演題 4 ~ 6 座長:永井琢人(あいち小児保健医療総合センター 腎臓科) 4:浅野達雄(千葉県こども病院 腎臓科) 5:上田博章(大阪市立総合医療センター 小児総合診療科) 6:北山浩嗣(静岡県立こども病院 腎臓内科) 14:40 ~ 15:40 シンポジウム 座長:大田敏之(県立広島病院 小児腎臓科) 「重症心身障がい児への腎代替療法」-導入する立場から- 亀井宏一(国立成育医療研究センター 腎臓・リウマチ・膠原病科) 「透析導入をしないという立場から」 藤永周一郎(埼玉県立小児医療センター 腎臓科) 「治療の「不開始」をめぐる法学の議論」-医療者による責任ある判断のために- 辰井聡子(立教大学大学院法学研究科 教授) 15:40 ~ 16:10 総会・事務報告 16:15 ~ 16:45 一般演題 7 ~ 9 座長:田中亮二郎(兵庫県立こども病院 腎臓内科) 座長:鈴木さと美(聖隷浜松病院 看護部) 7:西山 慶(九州大学病院 小児科) 8:森下英明(静岡県立こども病院 腎臓内科) 9:波多野美季(あいち小児保健医療総合センター 31 病棟) 16:50 ~ 17:30 特別講演Ⅱ 座長:太田有美(名古屋第二赤十字病院 看護部) 「成人期を迎える小児慢性疾患患者へのトータルケア」 -小児医療の中で医師・看護師が何をどうするのか- 丸 光惠(甲南女子大学 看護リハビリテーション学部) 17:30 ~ 閉会式 17:50 ~ 懇親会:佐藤記念館 -7- 【プログラム】 ランチョンセミナー 12月13日(土)12:05~12:35 座長:服部元史(東京女子医科大学 腎臓小児科) 「小児腎性貧血の診断と治療の動向」-ガイドラインを中心に- 芦田 明 先生(大阪医科大学医学部 泌尿・生殖発達医学講座 小児科) 共催:協和発酵キリン株式会社 特別講演Ⅰ 『震災の当時の状況と対応対策』 12月13日(土)12:45~13:25 座長:幡谷浩史(東京都立小児総合医療センター 総合診療科) 「小児腹膜透析は,いかに大災害に備え対応するべきか」 熊谷直憲(東北大学大学院 医学系研究科 小児病態学分野) 「災害対策学習会を開催して」 由元由美(医療法人 偕行会 透析事業部) 一般演題1~3 12月13日(土)13:30~14:00 座長:郭 義胤(福岡市立こども病院・感染症センター 腎疾患科) 楡木志帆(東京女子医科大学病院 看護部) 1:テンコフカテーテル抜去を要したAchromobacter xylosoxidansによる 難治性腹膜炎の1歳女児例 菊永佳織(東京都立小児総合医療センター 腎臓内科) 2:腹膜透析患者に対する二種類の持続型赤血球造血刺激因子製剤の 長期投与経験 中倉兵庫(第一東和会病院 小児科) 3:慢性腎不全をもつ学童・思春期の子どものセルフマネジメントとその困難 ‐腹膜透析・血液透析を行う4症例の分析から‐ 内海加奈子(千葉県こども病院 看護局) 一般演題4~6 12月13日(土)14:00~14:30 座長:永井琢人(あいち小児保健医療総合センター 腎臓科) 4:PD/HD併用療法を施行した長期PDの女児例 浅野達雄(千葉県こども病院 腎臓科) 5:浮腫の管理に腹膜透析を導入した巣状分節性糸球体硬化症の1例 上田博章(大阪市立総合医療センター 小児総合診療科) 6:ビタミンC過剰で血中蓚酸が上昇し,ミルク変更が有効であった 原発性過蓚酸尿症の1症例 北山浩嗣(静岡県立こども病院 腎臓内科) -8- シンポジウム 『腹膜透析する立場,しない立場』 12月13日(土)14:40~15:40 座長:大田敏之(県立広島病院 小児腎臓科) 「重症心身障がい児への腎代替療法」-導入する立場から- 亀井宏一(国立成育医療研究センター 腎臓・リウマチ・膠原病科) 「透析導入をしないという立場から」 藤永周一郎(埼玉県立小児医療センター 腎臓科) 「治療の「不開始」をめぐる法学の議論」-医療者による責任ある判断のために- 辰井聡子(立教大学大学院法学研究科 教授) 総会・事務報告 12月13日(土)15:40~16:10 一般演題7~9 12月13日(土)16:15~16:45 座長:田中亮二郎(兵庫県立こども病院 腎臓内科) 鈴木さと美(聖隷浜松病院 看護部) 7:透析液の混合不足によって低Na血症を示した4歳女児 西山 慶(九州大学病院 小児科) 8:血液透析における低ナトリウム血症補正の計算法 森下英明(静岡県立こども病院 腎臓内科) 9:改訂版災害時マニュアルの指導に向けて~患者指導の工夫と看護師教育~ 波多野美季(あいち小児保健医療総合センター 31病棟) 特別講演Ⅱ 『成人移行期支援について』 12月13日(土)16:50~17:30 座長:太田有美(名古屋第二赤十字病院 看護部) 「成人期を迎える小児慢性疾患患者へのトータルケア」 -小児医療の中で医師・看護師が何をどうするのか- 丸 光惠(甲南女子大学 看護リハビリテーション学部) -9- ランチョンセミナー 小児腎性貧血の診断と治療の動向 ーガイドラインを中心にー 大阪医科大学医学部 泌尿・生殖発達医学講座 小児科 芦田 明 腎性貧血は慢性腎臓病の重篤な合併症のひとつであり,その機序は腎におけ るエリスロポエチン産生の低下に起因した相対的なエリスロポエチン不足によ る赤血球産生障害とされ,これに慢性腎不全に伴う鉄欠乏をはじめとする栄養 障害,血液喪失,急性・慢性炎症などさまざまな要因が加わるとされている. 赤血球造血刺激因子製剤 (erythropoietin stimulating agent: ESA) 療法が臨 床導入されるまでは,頻回の輸血に伴う鉄過剰症,感染症,抗 HLA 抗体出現に よる腎移植実施困難など様々な問題を引き起こす極めて深刻な合併症であり, 1990 年代に入り導入された ESA 療法はこれら腎性貧血の治療を行う上で多大な る福音を患者にもたらした. 小児に対する腎性貧血治療は,小児期には新生児より青年期まで各発達段階 における成長,代謝,発育,精神的要素などさまざまな変化が加わることから, 成人に対する以上に各発達段階を考慮した診断・治療方針の決定が必要となる. このような観点より小児期における腎性貧血治療ガイドラインの必要性が唱え られるようになり,わが国でも 2008 年日本透析医学会より出された「慢性腎 臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」の中で小児患者の腎性貧血治 療ガイドラインが盛り込まれ,臨床現場において活用されてきた. この日本透析医学会より発表されたガイドラインの中で記述された ESA 療法 は,遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン製剤 (rHuEPO) の投与量,投与経路 として原則的に添付文書と反故のないように記述されている.しかし,実際に はガイドラインに記載された投与法,投与量では目標ヘモグロビン値に達しな いとの報告もあり,rHuEPO の投与量,投与回数などは今後もさらなる検討が 必要と考えられている.そうした中で,成人領域では承認され,血中半減期が rHuEPO に比し長く,投与回数の減少が報告されているダルベポエチンアルファ は,痛みやコンプライアンス,家族への負担などへの配慮から小児に対する適 応承認が切望されていた.本邦でも小児 PD 患者および小児保存期腎不全患者, PD 患者,HD 患者に対する効果と安全性が検討され,2013 年 9 月小児に対する 適応承認が取得された. 一方,2012 年には KDIGO より KDIGO clinical practice guideline for anemia in chronic kidney disease. が発表され,それを受け我が国でも,日本透析医学 会の「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」も現在改定中であ る. 本発表では,腎性貧血の診断・治療のあゆみと動向をガイドラインを中心に, わかりやすく概説する. - 10 - 昭和 38 年 4 月 7 日生 (51 歳 ) 本籍 京都府 【略歴】 昭和 63 年 3 月 大阪医科大学卒業 昭和 63 年 5 月 医師国家試験合格 昭和 63 年 6 月 大阪医科大学附属病院にて臨床研修開始 平成 2 年 3 月 同上終了 平成 2 年 4 月 大阪医科大学大学院入学 ( 専攻 小児科学 ) 平成 6 年 3 月 同上終了. 学位を授与さる.( 医学博士 ) 平成 6 年 4 月 柏原赤十字病院医員 ( 小児科 ) 平成 7 年 4 月 同上退職 平成 7 年 5 月 大阪医科大学小児科助手 平成 16 年 3 月 同上辞退 平成 16 年 4 月 大阪医科大学 学内講師 ( 小児科学 ) 平成 19 年 4 月 大阪医科大学 講師 ( 小児科学 ) 平成 19 年 4 月 東京女子医科大学腎臓小児科非常勤講師 【資格】 日本小児科学会専門医 日本腎臓学会専門医 【所属学会】 日本小児科学会 ( 代議員 平成 23 年~ ) 日本腎臓学会 日本アフェレシス学会(評議員 平成 25 年 11 月~), 日本透析医学会 (CKD-MBD 診療ガイドライン作成委員 平成 22 年 9 月~) (腎性貧血診療ガイドライン作成委員 平成 24 年 11 月~) 日本小児腎臓病学会(平成 16 年~評議員,平成 26 年 6 月より理事) 日本小児感染症学会 日本臨床腎移植学会(評議員・日本臨床腎移植学会雑誌編集委員 平成 24 年 10 月~) 日本小児腎不全学会(評議員 平成 24 年 10 月~) 日本小児体液研究会 ( 幹事 ) 日本小児高血圧研究会 ( 幹事 ) 腎とフリーラジカル研究会 ( 実行委員 ) 近畿小児腎臓病研究会 ( 幹事 ) - 11 - 特別講演Ⅰ 小児腹膜透析は,いかに大災害に備え対応するべきか −東日本大震災からの教訓− 東北大学大学院 医学系研究科 小児病態学分野 熊谷直憲 東日本大震災でなくなられた方のご冥福をお祈りします. 2011年3月11日に発生した東日本大震災では,大地震に加え同時に起 きた津波などのため各種ライフライン等に大きな障害が生じ,日常生活のみな らず医療現場においても大きな混乱が生じました.大災害の際には小児腎臓病 の領域においては腹膜透析を行っている患児にとって大きな問題が生じえま す.腹膜透析の特徴として,継続して行う必要があり,自動腹膜灌流装置用の 電源が必要であり,透析液を含めた腹膜透析関連物品が必要であり,腹膜透析 の操作は家族により行われるため,いずれにおいても問題が生じると腹膜透析 を行うことが困難となり,腹膜透析の中止が死につながる恐れがあります.東 日本大震災の際には,東北大学病院小児科においてもこれらの点が問題となり ました. 大震災当時,東北大学病院小児科では 6 名の腹膜透析患者の診療を行ってお りました.年齢は1歳から12歳で,仙台市内在住の方が3名,県北地区が 1 名, 県南地区が1名,湾岸地区が 1 名でした.全員が電源を必要とする自動腹膜灌 流装置を用いる APD でした.透析液や透析回路等の腹膜透析関連物品に関して は,東北大学病院小児科病棟には数回分位しか在庫がありませんでしたが,ど の患者さんの自宅にも2週間分程度の在庫がありました.東北大学病院では地 震後停電となりましたが,数時間後には非常用の自家発電に切り替え翌日には 復旧いたしましたが,地域により復旧の状態は異なっておりました. そのような状況下での,東日本大震災における東北大学病院小児科での腹膜 透析患者への対応を示します.皆様の施設では,このような事態に対してどの ように備えており,どのように対応されますか? ・まず,患者さんへの連絡を最優先事項としました.通話規制のためなかなか 電話連絡が出来ません.仙台在住の方は直接大学病院へ来院されたため現状把 握とその後の対応がスムーズに行えました.遠方に在住で連絡が付かない患者 さんもおり,自らの判断で適切に対応されていたかた,後日医療従事者からの 助言が必要なかたもおりました.別医や透析機器会社の担当者から患者さんの 現状確認をして頂いたこともありました. ・日中に来院して頂き外来通院扱いで東北大学病院小児科病棟にて腹膜透析を 行った患者さんもおりました.短期間で電源などのライフラインが復旧し早期 に自宅で腹膜透析を再開できる患者さんもおりました.一方,遠方に在住であ る,停電からの復旧のめどが立たない,などのため入院対応が必要となる患者 さんもおりました. - 12 - ・腹膜透析の操作は患者家族が継続して行われていましたが,普段操作を行わ れている家族に問題が生じたため,入院のうえ医師がかわりに操作を行った方 が 1 名おりました. ・被災状況や医療環境上の問題のため疎開や転院を検討・必要とした患者さん もおりましたが,各方面からのご支援のおかげで無事対応できました. ・腹膜透析関連物品に関しては,当初は患者自宅に在庫する物品を使用してお りましたが,透析機器会社の迅速な対応のおかげで大震災発生数日後には必要 物品を適切に供給して頂けました. 東北大学病院小児科で診療していた腹膜透析患者は皆無事に大震災を乗り切 れました.振り返りますと,患者・家族での対応,医療機関での対応,後方支 援体制,透析機器メーカーでの対応など関係者が最善を尽くしたおかげと思い ます.小児腹膜透析は,患者(自助),病院,透析機器会社,後方支援体制(共 助,公助)が個々に備えると同時にあらかじめネットワークを構築し大災害に 備えることが大災害の対応に不可欠です. 【略歴】 1994年 3月 東北大学医学部卒業 1994年 6月 日立総合病院小児科研修医 1997年 4月 東北大学大学院医学系研究科入学 2001年 3月 東北大学大学院医学系研究科卒業 以後,石巻市立病院,仙台医療センター,仙台市立病院などに勤務. 2008年 4月 1日 東北大学病院 小児科助教 2011年10月 1日 東北大学病院 小児科院内講師 以後,現在に至る 【資格】 医学博士,日本小児科学会専門医,日本腎臓学会腎臓専門医 日本小児腎臓病学会評議委員 日本小児腎臓病学会小児 CKD 宮城県代表者 宮城慢性腎臓病対策協議会理事 【所属学会】 日本小児科学会 日本腎臓学会 日本小児腎臓病学会 など - 13 - 特別講演Ⅰ 災害対策学習会を開催して 医療法人 偕行会 透析事業部 由元由美 はじめに 自然災害には暴風雨・地震・洪水・台風 などがあります. 1995 年の阪神大震災や 2000 年の東海豪雨 2011 年 3 月 11 日の東日本の地震は記憶に新しい.そして最近では御嶽山の 噴火はまだ現実です.在宅の治療である腹膜透析にとって,災害対策について 指導を行うことは重要と考えます. 当院の災害対策学習会の経緯 1999 年より災害対策の学習会を開催する必要性を感じ,情報収集・資料作成を 行う 2000 年 東海豪雨で避難中の指南場所でのバック交換が原因で腹膜炎を発症し た症例あり災害対策学習会の必要性を痛感.同年第 1 回目災害対策学 習会を開催 以後毎年 10 月に災害対策学習会を開催 2004 年 10 月 災害対策学習会の一環として,名古屋市港区区役所 災害対 策コーナーへPDNs・PD患者で出向き,実際に地震体験を行う. 2013 年に 1 回災害対策学習会は開催していないが,今日まで災害対策学習会を 開催してきた. 内容も毎年思考を凝らし,災害のシュミレーションを行ったり,災害時の食事 を実際に調理したりもしてきた. 学習介護のアンケートの結果 毎年学習会を開催しても,実際災害時避難用のリュックや物品,非常食などを 準備できている家庭は少ないことを実感した.また災害時避難用物品を出来れ ば病院で販売してほしいという希望者も少なくない状況であった.そして年に 1 回の学習会だけでなく,常に意識付けしてほしいという貴重な意見も頂いて いる. 災害対策学習会で心がけていること. 1 3 日間PDが出来なくても大事に至らない注意事項を徹底 2 バック交換して安全でない環境でのバック交換禁止 3 自宅や兄弟や子供世帯にも 3 日分程度の透析液の備蓄を行っていただく. 4 APD患者様にはCAPDも出来るように指導し家族にも指導 5 WEB上での情報提供・情報の共有 - 14 - 終わりに 学習会の形式として 一方的な説明や講義ではなく 患者様主体の参加型学習会や,答えを導き出す 様な個人指導 そして実践できる具体的なアドバイスや日常的に意識してもらう為の働きかけ が重要と考える. 【略歴】 昭和 58 年 愛知県立総合看護専門学校卒業 名古屋逓信病院 同年 その後遠州総合病院を経て 平成 2 年 偕行会に入職 HD看護 10 年 PD看護 12 年 現在も腹膜透析の業務に従事 災害対策学習会は年 1 回開催しており早 14 年開催し続けている. 現在 保存期の指導 腎代替療法選択時の指導 導入時指導などを行っている - 15 - シンポジウム 重症心身障がい児への腎代替療法 -導入する立場から- 国立成育医療研究センター 腎臓・リウマチ・膠原病科 亀井宏一 寝たきりで自分の意思を伝えられない重症心身障がい児への腎代替療法の適 応については,様々な考え方があり,統一した見解は得られていない.医療ス タッフ側としては,透析に耐えられるか心機能をはじめとした他臓器の状態な ど医学的な評価を行った上で,保護者に十分な説明を行い,その中で透析をし ないというオプションも提示し,何が患児にとって最善なのかを何度も話し合 っていく必要がある.当センターで経験した 4 症例を紹介する. 【症例 1】女性 原疾患:重症仮死,左無形成腎,右低形成腎 寝たきり.啼泣などで感情の表現は可能だが,意思疎通は不可.全介助下で経 口摂取可能. 末期腎不全のため 14 歳で PD 導入.22 歳時,緑膿菌の腹膜炎のため PD が施行 できなくなり,内シャントを造設して血液透析へ移行した. 【症例 2】男性 原疾患:結節性硬化症,多発性嚢胞腎 寝たきり.啼泣などで感情の表現は可能だが,意思疎通は不可.全介助下で経 口摂取可能. 末期腎不全のため 17 歳で PD 導入. 【症例 3】女性 原疾患:Cockayne 症候群 寝たきり.発語なく意思疎通不可.経口摂取可能だが,ほとんどが胃瘻からの 経管栄養. 末期腎不全のため 8 歳で PD 導入. 【症例 4】女性 原疾患:拡張型心筋症,高血圧性腎硬化症の疑い 歩行可.啼泣などで感情の表現は可能だが,意思疎通は不可.全介助下で経口 摂取可能. 末期腎不全のため 32 歳で PD 導入.移植を模索したが,心不全のため 37 歳で死亡. 当センターでは,御家族と十分に話し合った上で,比較的積極的に腎代替療 法(腹膜透析が多い)の導入を行ってきた.その管理の大変さや合併症などに ついて十分な情報提供を行い理解し得た上で,御家族が腎代替療法を希望され た場合は,導入しない理由は見当たらない.また,重度の障がい児でも,点滴 や内服薬や採血などの医療行為は通常行っている.こういった治療は行うのに, 透析などの腎代替療法は行わないとした場合,それはなぜなのか,両者の違い はあるのか,という疑問に遭遇する.腎移植の生着率も,重度の障がい児でも そうでない患者との間で急性拒絶反応や生着率に差はないという報告もある (Ohta T. Am J Kidney Dis 2006; 47: 518-527).医学的な十分な検討と,御 家族への十分な説明がなされた上で,合意に至れば,重度の障がい児でも積極 的な腎代替療法を行っていくべきと考える. - 16 - 【略歴】 現職 :国立成育医療研究センター 腎臓・リウマチ・膠原病科医員 生年月日:1969 年 9 月 10 日 現住所 :東京都世田谷区大蔵 2-11-2-205 電話 :03-3416-6090, 090-4961-9035 E-mail :[email protected] 【学歴】 1995 年 3 月,東京医科歯科大学医学部卒業 【勤務歴】 1995 年 4 月~ 東京医科歯科大学小児科研修 1996 年 4 月~ 一般病院小児科研修 2001 年 4 月~ 清瀬小児病院腎臓内科非常勤勤務(国内留学) 2002 年 11 月~ 東京医科歯科大学小児科医員 2003 年 10 月~ 武蔵野赤十字病院小児科勤務 2005 年 4 月~ 国立成育医療研究センター腎臓科医員 2009 年 4 月~ 現職 【資格】 小児科専門医,腎臓専門医・指導医,透析専門医,腎移植認定医 医学博士(学位)(2010 年 2 月取得) 【所属学会】 日本小児科学会,日本小児腎臓病学会(代議員),日本小児腎不全学会,日本 腎臓学会,日本透析医学会,日本臨床腎移植学会,日本アフェレーシス学会, 国際小児腎臓病学会(IPNA),アメリカ腎臓学会(ASN),国際腎臓学会(ISN) 【趣味】 ピアノ,スキー,スポーツ鑑賞 - 17 - シンポジウム 「透析導入の見合わせについて考える」 透析導入をしないという立場から, 埼玉県立小児医療センター 腎臓科 藤永周一郎 【はじめに】 近年の医学の進歩によって,小児の腎代替療法は確立された医療となり,末 期腎不全患児の生命予後は著しく改善している.一方,重症心身障がい児例に おける腎代替療法の導入の適応は,健常児と異なり画一的ではなく,家族と十 分吟味したうえで決定すべきである.我々は,重度の精神発達遅滞を伴う 4p モノソミー症候群の男児に PD 導入を試みたが,合併症のため断念したケース, および重度の精神運動発達遅滞と多動の女性に HD 導入を勧めたが,家族の同 意が得られず断念したケースを経験した. 【症例1】 13 歳,男児.36 週 5 日,1054 g,二卵性双胎の第 2 子.心房中隔欠損症, 動脈管開存症,口蓋裂,尿道下裂,停留精巣等の多発奇形と特異的顔貌のため 染色体検査施行し 4p モノソミー症候群と診断された.4 歳時に両側低形成腎に よる腎機能障害で当科受診し,血清 Cre 1.32mg/dl,eGFR 32ml/min/1.73m2 で あった.大島の分類 1 点と最重症,寝たきりの重症心身障がい児であった.徐々 に腎機能障害は進行し,両親と相談の上,13 歳で PD 導入に踏み切った.強度 の側湾によって腹腔スペースは狭くなっており,透析液貯留量を通常の 1/3 量 としたが,腹腔内圧上昇による不穏,誤嚥性肺炎を繰り返し PD 継続は困難と なった.日本小児科学会の「重篤な疾患を持つ子どもの医療をめぐる話し合い のガイドライン」には,「父母(保護者)または医療スタッフなどの関係者は, 子どもの最善の利益に適うと考えられる場合には,生命維持治療の差し控えや 中止を提案することができる.」と記載されている.このガイドラインに基づき, 患児の最善の治療について,家族,医師,看護師,ソーシャルワーカーと再度 議論した結果,「PD を中止して自宅で一緒に過ごしたい」との家族の希望によ り退院となった.しかし,退院直後の外来で急性心外膜炎,心タンポナーデに よる全身状態不良を認め,同日緊急入院しドレナージ術を施行,その後も,誤 嚥性肺炎や栄養障害で再入院となり,PD 導入を試みて以来,長期入院を余儀な くされている 【症例 2】 33 歳,女性.学校検尿(17 歳)にて,血尿,蛋白尿指摘.高度の精神運動発 達遅滞があるため当センター紹介となり,当科フォローとなる.著しい多動の ため腎生検は行われておらず 「 将来腎不全となっても透析導入は行わない 」 と 初代の主治医と母親との間で同意がなされていた.外来にて,降圧薬(ACEI や ARB)が投与されていたが,尿蛋白は増加し,末期腎不全へ移行した.生命維 持のためには透析導入が不可欠なことを再度説明したが,母親は,患児の介護 によって疲労が極限状態に達しており,同意は得られなかった.その後,維持 HD の可能な腎臓内科を紹介したが,導入することなく 4 ヵ月後,肺水腫,呼吸 不全から自宅で永眠された. - 18 - 【考察】 末期腎不全の重症心身障がい児において腎代替療法を導入する際は,医学的 な適応だけではなく家族背景なども考慮する必要がある.症例 1 は PD 導入を 契機に状態が悪化し,透析を断念するのみならず長期入院を要し,結果的に家 族と過ごす期間の短縮につながってしまった.一方,症例 2 は透析導入を断念 した結果,最期まで入院することなく家族と自宅で過ごすことが可能であった. したがって,児や家族の QOL を考慮すると,日本小児科学会のガイドラインを 活用し「透析導入をしない」という選択肢の提示も大変重要であると考えられた. 【略歴】 役職:埼玉県立小児医療センター 腎臓科科長(副部長) 平成 9 年(1997 年)順天堂大学医学部卒業. 同年より同愛記念病院小児科において初期研修 平成 10 年(1998 年)順天堂大学小児科学教室入局,関連病院に勤務 平成 15 年(2003 年)埼玉県立小児医療センター 腎臓科医員 平成 17 年(2005 年)現職(科長) 平成 18 年(2006 年)順天堂大学医学部 医学博士号所得 平成 19 年(2007 年)順天堂大学医学部小児科 非常勤講師兼任 【専門分野】 小児腎臓病の臨床,急性血液浄化療法,夜尿症 【主な所属学会および役職】 日本小児腎臓病学会(代議員),日本夜尿症学会(常任理事),日本腎臓学会(専門医, 指導医),日本小児科学会(専門医),厚生労働省 臨床研修医指導医,関東小児腎臓研 究会(幹事)IPNA 他. 【主な受賞】 平成 17 年 4 月 第 108 回 日本小児科学会 学術集会 ファイザーアワード(優秀論文賞) 平成 23 年 6 月 第 22 回 日本夜尿症学会 学術集会 奨励賞 平成 26 年 6 月 第 49 回 日本小児腎臓病学会 学術集会 優秀演題奨励賞(臨床部門) 【主な著書(分担執筆)】 今日の治療指針,小児腎臓病学,腎と透析,小児内科,小児科診療,小児科,小児科 臨床など 【主な原著論文】 1. Cyclosporine versus mycophenolate mofetil for maintenance of remission of steroid-dependent nephrotic syndrome after a single infusion of rituximab Fujinaga S. et al. Eur J Pediatr. 2013, 172(4):513-8 2. Nephrotoxicity of once-daily cyclosporine A in minimal change nephrotic syndrome. Fujinaga S. Kaneko K. et al. Pediatr Nephrol. 2012, 27(4):671-4 3. Single daily high-dose mizoribine therapy for children with steroid-dependent nephrotic syndrome prior to cyclosporine administration. Fujinaga S. Kaneko K. et al. 2011, 26(3):479-83 4. Single infusion of rituximab for persistent steroid-dependent minimal-change nephrotic syndrome after long-term cyclosporine. Fujinaga S. Kaneko K. et al. Pediatr Nephrol. 2010 25(3):539-44 5. Mycophenolate mofetil therapy for childhood-onset steroid dependent nephrotic syndrome after long-term cyclosporine: extended experience in a single center. Fujinaga S. Kaneko K. et al. Clin Nephrol. 2009 72(4):268-73 6. Is single-daily low-dose cyclosporine therapy really effective in children with idiopathic frequentrelapsing nephrotic syndrome? Fujinaga S. Kaneko K.et al. Clin Nephrol. 2008 69(2):84-9. 7. A prospective study on the use of mycophenolate mofetil in children with cyclosporine-dependent nephrotic syndrome. Fujinaga S. Kaneko K. et al. Pediatr Nephrol. 2007 22(1):71-6. 8. Independent risk factors for chronic cyclosporine induced nephropathy in children with nephrotic syndrome. Fujinaga S, Kaneko K. et al. Arch Dis Child. 2006 91(8):666-70. ほか - 19 - シンポジウム 治療の「不開始」をめぐる法学の議論 ー医療者による責任ある判断のためにー 立教大学大学院 法学研究科 教授 辰井聡子 医学界においては,「終末期における治療の中止は『作為』であるため犯罪 を構成するが,治療の不開始は『不作為』であるため犯罪にはならない」とい う認識が流布していると聞いたことがある.そうすると,透析の見合わせのよ うな「不作為」の可否について,法的には議論の手がかりがない,ということ になりそうである.しかし,近年の議論は,作為か不作為かは本質的な問題で はないとして,当該行為の治療行為としての妥当性を直截に論じる方向に向か っており,作為か不作為かで一律に結論が定まることはない.無用な紛争を避 けるためには,当該行為の可否につき,医療者自身が真摯に,かつオープンに 議論を行い,社会と意識を共有していくことが最善である. とりわけ,終末期は,医療の本来的な役割が切実に問われる場面である.医 療の役割が,患者を何が何でも死なないようにすること,一分一秒でも長くそ の生命を伸ばすことだと考えるなら,死期の短縮を伴う措置は,治療行為とし て不当,ということにならざるを得ないが,現在このような立場をよしとする 者は少ないであろう.演者は,医療の役割は,「人が生まれてから死ぬまでの 過程に寄りそって,なるべく健康に,医学的な意味で安楽に,そのせいを全う できるようにするもの」ではないか,と書いたことがあるが,こうした理解が どの程度社会に共有されているかは心許ない.法が治療行為としての妥当性を 判断するとき,基準は「医療の役割に合致しているか否か」に置かれることに なるため,この点の議論の薄さはそのまま法的判断の不安定さにつながる.し たがって,透析の見合わせ等を検討する際にも,医療の本来の役割とは何かを つねに問い,議論を蓄積していくことが重要である.それらの議論は,社会の 意識に影響を与え,同時に法的な判断にも,直接的に影響を及ぼす. 日本では検察官は有罪となることが確実な事案しか起訴しないため,それ以 外の事案についての法的な議論が医療者に知られる契機が少ない.そのために, やや極端な理解が通説かしたり,誤解が生じている面もあるように思われる. この機会に,判例等の解釈も含めた標準的な議論を紹介し,建設的な議論に資 するよう努めたい. - 20 - 【略歴】 上智大学大学院法学研究科法律学専攻博士後期課程満期退学.博士(法学) 桃山学院大学法学部,横浜国立大学大学院国際社会科学研究科,明治学院大 学法学部を経て,現職. - 21 - 特別講演Ⅱ 成人期を迎える小児慢性疾患患者へのトータルケア −小児医療の中で医師・看護師が何をどうするのか− 甲南女子大学 看護リハビリテーション学部 丸 光惠 【20 歳を超えた小児慢性疾患患者の問題】成人期を迎える小児慢性疾患患者 の概要:20 歳未満の小児慢性疾患患者はおよそ 10 万人前後で推移しており, 毎年約 1000 名程度の患者が成人を迎えている.20 歳以上の小児慢性疾患患者 の多くは,原病・合併症・後遺症等に関する治療を必要としており,病状が進 行しつつある者も少なからず存在する.成人後に小児医療内だけでは対応でき ない問題を抱える患者も多い.小慢の受給年齢を過ぎてからの医療費負担は健 常な 20 代・30 代の数倍となり,医療費負担の経済的問題は就労と共に若年成 人期の患者にとって大きな問題である. 【なぜ・何を移行するのか?】筆者は,東京および近郊都市の 4 病院の看護師 らと共に,看護職を対象とした生涯教育講座を開催し,10 代の小児慢性疾患患 者の成人移行期支援に取り組んできた.これまで思春期と呼んできた時期を「成 人への移行期」と位置づけ,「将来自立した成人患者となるために必要な,心理 的・物理的準備を段階的に行っていくこと」を「成人移行期支援」としている. 関西医科大学の石崎優子先生にご紹介いただき,参考とした米国の transition program 1)においても,移行期支援は単なる転科・転院をさせるためのもので はなく,成人後に「その人らしい生活・人生を送れるようにすること」を目的 としている.小児期より慢性疾患をもつ子どもたちが「大人になること」とは, 単に年齢を重ね,医療の場が変わるだけでなく,患者本人が意思決定の主体者 となることを意味する.この意思決定の主体者が親・保護者から子ども本人へ 移行することが,移行期支援の中でも最も困難かつ重要な課題であり,従来小 児医療の中で行われてきた成長発達支援の中に,より具体的な移行プログラム が必要と言われている. 【意思決定の主体者になること】多くの小児慢性疾患患者は,社会生活と治療 生活を両立させ,就労・結婚している者もいる.しかし,例えば「妊娠・出産 に伴って原病が悪化する」などの状態に陥ることもある.そのような時に,中 絶などの厳しい意思決定を迫られることもある.①ヘルスリテラシー(健康増 進や維持に必要な情報を入手・理解・利用していくための意欲・動機・能力) と②医療者との対応なコミュニケーション能力(自己擁護と意思決定能力)が 重要な力となる.家族と共に10代患者のトータルケアの一つとして,こうい った力に着目しながら支援していくことが必要と考えている.小児期発症の 10代患者の中には,曖昧な病識のまま長年通院している者もいる.本人の反 応をみつつ,まずは病識の確認と,再説明の必要性を見極める必要がある. 【移行プログラムの構成】移行プログラムは 10 代早期から開始し,成人医療 へと移行するまでの 10 年近い年月を要する.10 代は短い期間にライフスタイ ルが大きく変化する.治療やセルフケアを生活の中で継続するには,①多職種 チームによる支援が計画的になされ,評価を繰り返すことが必要となる.患者・ 家族と目標を共有し,②移行計画を立てる事から始まる.移行の進展状況を確 認し,それぞれの時期に必要な準備ができるように,患者・家族のニーズに合 - 22 - わせて③移行状況の確認を行う(成人移行チェックリスト).チェックリスト の中身は, 「病気・治療に関する知識」,「体調不良時の対応」,「医療者との対 等なコミュニケーション」,「診療情報の自己管理」,「自立した受療・セルフケ ア行動」,「思春期・青年期患者としての健康教育」,「主体的な移行準備」の 7 項目である.実際に臨床で試用し,北里大学の看護師らの協力も得て親用のチ ェックリストも作成した2).移行準備として最後の重要な作業は,患者が自ら の病気や必要な診療情報を自分の言葉でまとめて作成する「医療サマリー」で ある.国立成育研究センターや千葉東病院の看護師らによって1型糖尿病・腎 臓病のフォーマットを作成した3). 【移行プログラムの課題】近年,「成人期への移行」が「20 歳以上の小児慢性疾 患患者」を「いかに成人医療へ移行させるか」という視点で議論されることに はやや違和感をもっている.20 歳を超えた患者が小児科医に留まる理由は様々 であり,患者側の事情や専門医の不足などの問題も無視できないと考えている. 移行プログラムは,現在10代の患者の能力をいかに伸ばしていくのかを焦点 としているが,プログラムそのものの一番の課題は成人医療との連携であり, 移行後の評価を踏まえた改善であると感じている. 【トータルケアの充実】 移行プログラムはトータルケアの一部であり,トータ ルケア本体が重要となる.思春期に慢性疾患と共に生きていくこと自体がクラ イシスであり,未来をふさがれたような気持に陥っている患者は多い.人の幸 福は疾患の有無で決まるのではなく,人と人との豊かな温かい交流で育まれる ものであると思う. 振り返れば卒後何十年という年月を重ね,小児医療の目覚ましい進展には瞠 目するばかりである.大人が近視眼的になり,現在の知識だけで子どもの予後 を悲観するのではなく,新たな治療が生まれた時に十分その恩恵を享受できる よう,「疾患をもっていても健康に生活することの大切さ」を伝え,「将来の夢 を持つこと」ができるような生活を支えていく必要がある.そして10代の患 者が「生きる事には意味がある」と感じられることが,移行期支援の何よりも 重要な推進力となると考えている. 1)Bronheim S, Fiel S, Schidlow D, et al. Crossing: A Manual for Transition of Chronically Ill Youth to Adult Health Care.: ttp://hctransitions.ichp.edu/ CrossingsPDFs/Crossings. pdf 2)大塚香 移行期支援の実際ー成人移行チェックリストの活用方法ー,治療 , 93(10), 2011, 2094-2098 3)「成人移行期支援看護師・医療者のための移行期支援ガイドブック」 ダウン ロード用パスワードをお送りいたします.[email protected] 【略歴】 1987 年千葉大学看護学部卒業後,国立国際医療センター小児病棟看護師を経 て,千葉大学看護学部,北里大学看護学部,東京医科歯科大学にて小児看護学 の講義・実習を担当.2009 年より国際競争力強化部門 国際看護開発学へ異 動.2014 年 10 月より甲南女子大学看護リハビリテーション学部 国際看護開 発学 教授.2010 年より看護職対象の成人移行期支援に関する生涯教育講座を 開催.成人移行期支援看護師・医療スタッフのための移行期支援ガイドブック 作成 2014 年日本思春期学会学術小委員会「小児期発症の慢性疾患患者の成人 移行期支援検討委員会」委員長.著書 医学書院「小児看護学」他. - 23 - 一般演題 1 テンコフカテーテル抜去を要した Achromobacter xylosoxidans による難治性腹膜炎の 1 歳女児例 菊永佳織(きくながかおり)1),原田涼子 1),山本かずな 1),羽田伊知郎 1), 松岡大輔 1),三上直朗 1),久保田亘 1),寺野千香子 1),橋本淳也 1),濱田 陸 1), 石倉健司 1),幡谷浩史 1)2),本田雅敬 1) 東京都立小児総合医療センター 腎臓内科 1) 総合診療科 2) 【はじめに】 Achromobacter xylosoxidans(A. xylosoxidans) は弱毒菌だが,多くの抗菌 薬に耐性を示し,カテーテルなどの人工物に感染した場合抜去が必要となるこ とが多い.今回 A. xylosoxidans による Peritoneal Dialysis(PD)関連腹膜 炎の治療に苦慮した症例を経験したため報告する. 【症例】 定期検査で入院した PD 管理中の常染色体劣性多発性嚢胞腎の 1 歳女児.腹膜 透析導入後 6 ヶ月で PD 関連感染症の既往はなかった.入院 2 日目に 38 度台の 発熱を認め,出口部感染所見や PD 排液混濁,除水不良は認めなかったが,腹水 白血球細胞数と培養検査を行った . 細胞数は 419/mm3(多核球 58%)と,国際 腹膜透析学会の腹膜炎の診断基準は満たすが日本小児 PD・HD 研究会の細胞数の 基準には至らず経過観察とした.腹水培養より A. xylosoxidans が同定された ため,細胞数,培養検査を再検した.培養で同一菌を検出し,A. xylosoxidans による PD 関連腹膜炎と診断,入院 5 日目から Ceftazidime 腹腔内投与による 治療を開始したが排液培養は陰性化しなかった.Ceftazidime 単独では治療困 難と判断し,ST 合剤内服を併用したが,同菌は陰性化しなかった.このため テンコフカテーテルの抜去が必要と判断し,入院 13 日目にカテーテルを抜去, その 3 日後に再挿入した.カテーテル先端,内側カフ,外側カフの全てから A. xylosoxidans を検出し , 潜在的なトンネル感染と判断した.計 4 週間抗菌薬治 療を継続した後の排液培養は陰性であり,再燃は認めなかった. 【考察・結論】 これまで 11 例の A. xylosoxidans による腹膜炎が報告されているが,本例 が最年少で,カテーテルからも菌が証明された症例である.既報では 7 例がカ テーテル抜去を要しており,今回も感受性のある抗菌薬を投与したが,培養が 陰性化せずカテーテルを抜去した.臨床所見や細胞数の上昇は軽微であるにも 関わらずカテーテル抜去が必要となったのは,腹膜炎がトンネル感染に由来す ること,人工物に定着しやすい菌による感染であったことが考えられた.本菌 にかぎらず様々な弱毒菌が,腹膜炎を惹起しうる.菌の検出に努め,適切な抗 菌薬投与でも培養が陰性化しない場合はカテーテル抜去が必要である. - 24 - 一般演題 2 腹膜透析患者に対する二種類の持続型赤血球造血刺激因子製剤の 長期投与経験 中倉兵庫(なかくらひょうご)1)2),松村英樹 2),芦田 明 2),玉井 浩 2) 第一東和会病院 小児科 1),大阪医科大学 小児科学教室 2) 【はじめに】 持続型の赤血球造血刺激因子製剤(ESA)は既存の ESA よりも長い血中半減 期を有し,少ない投与頻度で目標ヘモグロビン値を達成することが可能となり, 腎性貧血の改善に有用とされている.本邦ではダルベポエチンアルファ (DA) とエポエチンベータ ペルコ(C.E.R.A.)が使用可能である. 今回,既存の ESA から DA に切り替え,約 3 年経過後に C.E.R.A. に変更し約 2 年経った小児の腹膜透析 (PD) の症例を経験したので報告する. 【症例】 出生後より 4 型尿細管性アシドーシスにて無尿のため PD を 3 日間施行し離 脱した.徐々に腎機能が低下したため 1 歳 11 ヶ月時に PD 導入となる.1 歳 8 ヶ月より既存の ESA の皮下注射を導入していた. (DA 切り替え時)2 歳 6 ヶ月 8.4kg.DA は静脈内投与とし当初は 2 週間隔で投 与していたが,DA 切り替えより 30 週後より 4 週間隔の投与に切り替えた.Hb 値は DA 切り替え時 8.7g/dl であったが,DA に切り替えて 12 週で 11.0g/dl と なり,その後も体重の増加に伴い投与量を調節し 11.0g/dl 前後をほぼ保てて いた. (C.E.R.A. 切り替え時)5 歳 8 ヶ月 12kg.DA を約 3 年使用後,C.E.R.A. に 変更となった.当初,月に 1 ~ 2 回静脈内投与を行い,Hb は良好に上昇を認め, Hb14mg/dl 台と高度上昇を認めた場合は休薬や減量で調節した. 両剤とも明らかな副反応はなく経過は良好であった. 【まとめ】 DA と C.E.R.A. はともに既存の ESA と比べ,投与間隔が長いにもかかわらず 腎性貧血の改善が良好で容易なコントロールが可能であった.それぞれの薬剤 とも長期投与において明らかな有害事象を認めず安全に治療できた.また痛み の軽減という観点から静脈内投与が可能なこれらの薬剤は小児にとって大きな メリットがあると思われた.今後 DA および C.E.R.A. のそれぞれの特徴を活か した使い分けのためにも,さらなる検討が必要と思われた. - 25 - 一般演題3 慢性腎不全をもつ学童・思春期の子どものセルフマネジメントと その困難 ‐ 腹膜透析・血液透析を行う 4 症例の分析から ‐ 内海加奈子(うつみかなこ) 千葉県こども病院 看護局 【研究目的】 慢性腎不全をもつ学童・思春期の子どものセルフマネジメントとその困難を 明らかにし,看護援助を検討する. 【研究方法】 研究対象は,腹膜透析(以下,PD とする)あるいは血液透析(以下,HD とする) を行う 7 ~ 20 歳にある患者とした.患者と保護者両者から研究参加の承諾を 得た上で,質問紙調査と半構造化面接,診療録や看護記録,外来受診時の様子 について参加観察によるデータ収集を行った.質問紙調査の内容は単純集計を 行い,面接内容は逐語録を作成し,質的に分析を行った. 尚,本研究は所属機関ならびにデータ収集を行った医療機関の倫理審査委員会 の審査を受け,承認を得て実施した. 【結果及び考察】 対象となった患者 4 例(男子 2 例,女子 2 例)の年齢は 10 歳 6 か月から 20 歳, 腎代替療法の種類では PD2 例,HD2 例であり,保存期期間は 4 ~ 5 年,透析期 間は 2 か月~ 3 年であった. PD 患者のケースでは,PD により体調の改善を捉えており,内服や栄養制限, 運動制限に嫌な気持ちがあっても児なりに守ろうと生活の中で判断し,工夫す る一方で,少しずつ血液検査の結果と療養行動との関連がないと感じる経験か ら制限に疑問を感じ,親の目が離れた場で隠れて行動することや,思いを隠す 行動が現れていた. HD 患者のケースでは,透析前や透析中の吐き気や頭痛などの症状が和らぐよ う工夫していた.また急激な尿量減少から幼少期から判断してきた療養行動の 変更への戸惑いを感じていた.さらに,仕事や仲間関係の都合で内服を飲み忘 れていた. 結果より,学童期から療養行動の頑張りを支え,必要性を理解できるような 支援や,思春期以降の社会生活の中で内服習慣が確立できるような支援の重要 性が示唆された. (本研究は,平成 23 - 25 年度文科省科研費基金若手研究 B「慢性腎不全をもつ 学童・思春期の子どものセルフマネジメントを支える看護援助モデルの考案」 の一部である.) - 26 - 一般演題 4 PD/HD 併用療法を施行した長期 PD の女児例 浅野達雄(あさのたつお),笹田洋平,中野栄治,末廣真美子,久野正貴 千葉県こども病院 腎臓科 【症例】 症例は7歳女児,複雑な家族背景のため施設入所中である.1歳 8 ヶ月時に 発症した巣状分節性糸球体硬化症のため 2 歳時に末期腎不全に陥り PD を導入 した.その後,5 年以上に渡り PD を施行してきたが,徐々に除水不良になり水 分管理が困難になっていった.7歳時に除水不良のため肺水腫になり集中治療 を要した.PD カテーテルを入れ替え,一旦は除水が改善したが,安定した除水 は得られなかった.透析メニューをタイダール方式に変更し透析時間を 12 時 間以上に設定する等の工夫で,辛うじて水分管理を行えるようになったが,厳 格な水分制限・栄養管理と降圧剤の投与を必要とした.PD カテーテル入れ替え 後,約半年の心エコー評価では左室拡大,心室の肥厚を認め容量・圧負荷に伴 うものと思われた.水分管理・栄養管理を考慮すると PD 単独での透析は限界 と考え,血液透析カテーテルを留置した.PD による溶質除去は十分に行われて いたため,当初は ECUM のみを併用した.週に 2 回の HD(ECUM)併用で維持透 析が行われる様になったが,除水・溶質除去は良好で体重・血圧や検査値の推 移も安定するようになった.約1ヶ月が経過したところで,PD の排液量が注液 量を大きく下回る様になったため,PD/HD 併用から HD 単独に切り替えた.維持 透析として HD を週 3 回のスケジュールで行ったが,透析効率が悪く 1 回の透 析に 5 時間以上を要した.また,透析間の体重の増加が想定よりも大きかった ため HD 後に ECUM を追加することも頻繁にあった.約半年間,HD を施行したと ころで脳死献腎移植の候補となり,死体腎移植術を施行した.移植後,透析か らは離脱し,その後の腎機能も良好である. 【考察】 小児慢性腎不全の腎代替療法の多くは PD を選択する.長期の PD は腹膜機能 の低下や被嚢性腹膜硬化症の発症の可能性があるため,PD は移植への橋渡し医 療として小児腎臓科医には認識されている.本症例でも当初は余裕をもって PD から生体腎移植を行う予定であったが,様々な事情のため頓挫した.体重・血 圧や検査値の推移を考えると,PD または HD 単独透析時よりも PD/HD 併用療法 時のほうが管理が良好で,児の負担も少なかった.成人領域では PD/HD 併用療 法はそれぞれの長所を生かし,かつ患者の QOL を向上させる方法として注目さ れている.小児の場合はバスキュラーアクセスや体格の問題があり同列には述 べられないが,PD 治療期間が長期になり腹膜機能の低下が疑われる症例には PD/HD 併用療法を検討しても良いと考えた. - 27 - 一般演題 5 浮腫の管理に腹膜透析を導入した巣状分節性糸球体硬化症の 1 例 上田博章(うえだひろあき),熊谷雄介,藤丸季可 大阪市立総合医療センター 小児総合診療科 【はじめに】 近年,巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)に代表される難治性ネフローゼ症候 群(NS)においても,強力な免疫抑制療法によって高度蛋白尿の減少効果が認 められるようになってきている.しかし今回は,あらゆる治療に抵抗し,浮腫 の管理に腹膜透析(PD)を導入した FSGS 症例を報告する. 【症例】 3 歳男児.前医で NS 初発と診断され,プレドニゾロン(PSL)が開始された が,寛解が得られず当科転院となった.4週間の PSL 治療後も浮腫の増悪を認 め,メチルプレドニゾロンパルス療法(MPT)を施行したが,直後に敗血症や 急性腎障害を発症した.約 3 週間の抗菌薬投与,持続血液透析(CHD),MPT, シクロスポリン(CsA)投与などを行ったが,蛋白尿減少効果は限定的で,連 日のアルブミン補充や利尿薬投与にても浮腫の管理に難渋した.腎組織所見は, FSGS であった.経過中,CsA は血中濃度が安定せず,腎機能の悪化を認めたた め継続が困難であった.HD で除水しながら,血漿交換と MPT を併用したが,蛋 白尿減少効果はみられず,中心静脈カテーテル感染症を認めた.リツキシマブ 投与も検討したが,高度蛋白尿持続時での治療効果が不明瞭であることや菌血 症を繰り返しているために断念した.家族に説明後,免疫抑制療剤を漸減し, 浮腫管理目的に発症約 4 か月後に PD を導入した.強制除水にて尿量が減少し, アルブミン補充の必要がなくなり,発症約 7 か月後に退院となった. 【まとめ】 高度蛋白尿は持続しているが,尿量減少により総漏出蛋白量が減り,浮腫を 抑える事が可能となった.難治性 NS において,薬剤副作用や重症感染症を繰 り返す場合は,日常生活動作を最も妨げる要因である高度な浮腫を軽減するた めに,PD を導入することは重要な選択肢となる. - 28 - 一般演題 6 ビタミン C 過剰で血中蓚酸が上昇し , ミルク変更が有効であった 原発性過蓚酸尿症の 1 症例 北山浩嗣(きたやまひろつぐ),和田尚弘,山田昌由,鵜野裕一,村田乃理子, 森下英明 静岡県立こども病院 腎臓内科 【はじめに】 原発性過蓚酸尿症 1 型(以下 PH1)の乳児型は,重症で早期に PD 導入となる. PD が必要となる保存期慢性腎不全の状態では,高リン血症・高 K 血症となるため, 中リン低 K ミルク(ビタミン C( 以下 VC)高く含有.)が使用されることがある. PH1 症例に対して上記ミルクを使用して一時的に高蓚酸血症の状態となったが, すぐにその原因がミルクと考えて,ミルク変更して VC と蓚酸が低下したこと を経験したので報告する. 【症例】 某年 2 月 5 日,在隊週数 40 週 1 日,出生体重 2870g で出生.Apgar0 点で心 肺蘇生を行って 5 分で 6 点と回復し NICU で集中管理が必要であった.順調に 回復したが尿素窒素;35,Cr;0.93 と腎不全の状態で退院.その後,健診で体 重増加不良を指摘され,小児科受診.腎不全,特徴的な腎石灰化があり当科紹 介受診. 8 月 2 日当科受診時,尿素窒素;52,Cr;2.1 でアシドーシスがあり,特徴 的な石灰化,シュウ酸の値等から PH1 と診断. 8 月 20 日より中リン低 K ミルクを開始.8 月 28 日に採血の結果 VC;337 μ mol/L, 血清蓚酸;168 μ mol/L と極めて高値.そこで低蛋白低ミネラルミルクと普通 ミルクを合わせたミルクへ変更.9 月 30 日の検体で VC;55 μ mol/L,血清蓚酸; 44 μ mol/L へ低下.その後腎不全の進行と共に VC の増加はなかったが蓚酸の 増加があり PD 導入. 【考察】 中リン低 K ミルクでは VC として 180mg 投与されていた.ミルク変更後は 50 ㎎へ減量.その後 VC の過度の上昇は見られなかった.しかし腎不全のコント ロールと特に蓚酸の排泄のために PD 導入が必要であった. 【結語】 ミルクの種類によって VC が多量に含まれているものがあり慢性腎不全の病 態によって VC を制限する必要がある症例もあり注意が必要である.PD への蓚 酸と VC の排泄量,文献的考察を加え報告する. - 29 - 一般演題 7 透析液の混合不足によって低 Na 血症を示した 4 歳女児 西山 慶(にしやまけい),今井崇史,原田真理,西村真直,島袋 渡,郭 義胤 九州大学病院 小児科,福岡市立こども病院・感染症センター 腎疾患科 腹膜透析液の Na 濃度は 132 から 135mEq/L に調整されており,腹膜透析(PD) を原因とする急性低 Na 血症は起こりにくい.しかし我々は PD 施行による急速 な血清 Na の低下を経験したので報告する. 症例は 4 歳 6 か月女児,先天性の膣閉鎖のため閉塞性水腎症から慢性腎不 全となった.2 歳 10 か月のときに腹膜透析を開始された.生体腎移植を希望 し,1 か月前から当院での腹膜透析管理となった.定期受診時に低 Ca 血症(Ca 5.9mg/dl)を認め,精査加療目的で入院した.原因として透析不足を疑い,グ ルコン酸 Ca の静脈投与を併用し,1 回注液量を増やした.徐々に血清 Ca 値は 上昇した.入院 6 日目,APD を開始して 2 時間の時点で不機嫌に泣き出し,嘔 吐を繰り返した.APD を中止し,制吐剤の投与で症状は改善したが,翌日も同 じタイミングで嘔吐を繰り返した.同日朝の血液検査で Na 136mEq/l であった が,症状時には 119mEq まで低下しており,症候性の急性低 Na 血症と考えられ た.尿検査では Na 93mEq/l,K 2.1mEq/l と自由水排泄を認め,SIADH は否定的 であった.また,体重増加や経口摂取の変化も見られず,PD の関与を疑った. 回路内を検索したところ,透析液バッグ内の Na194mEq/l,排液バッグ内の Na 117mEq/l と極端な濃度差を認めた.使用している透析液バッグは 2 室式でサイ クラ―に接続する側には Na が含まれておらず,透析液の混合不足が原因と考 えられた. 患児はこれまで使用透析バッグ数が少なかったが,透析不足のため使用バッ グ数が増加した.透析液混合の重要性を家族が十分理解していなかったため使 用バッグ数増加に伴い混合操作が不足したと推測される.PD 施行中の急性電解 質異常は起こりにくいという思い込みから診断まで時間を要した.医療機器を 用いる際には human error が起こりうることを再認識した. - 30 - 一般演題 8 血液透析における低ナトリウム血症補正の計算法 森下英明(もりしたひであき),和田尚弘,北山浩嗣,山田昌由,鵜野裕一, 村田乃理子 静岡県立こども病院 腎臓内科 低ナトリウム血症を急激に補正すると橋中心髄症崩壊を起こすリスクがあ る.一般的には,血清ナトリウム濃度と目標ナトリウム濃度の差,体内ナトリ ウム分布液量と補正時間から,0.5mEq/L/hour 以下の上昇速度となるように投 与量を計算して補正されている.しかし,血液透析での補正における透析液・ 補充液の投与速度・濃度の明確な指標はない.我々は血液透析における低ナト リウム血症補正の計算法を考察してみたのでここに提言する.除水を行わない 場合の理論上の血清ナトリウム変動は,ナトリウムのインとアウトから計算す ると下記式となる.例えば,血清ナトリウム 115mEq/L の 10kg 児(体内ナトリ ウム分布液量 6L と計算)に,120mEq/L の透析液で透析液ポンプ流量と補液ポ ンプ流量の速度和 1L/hour で計算する.この場合,1 時間後の血清ナトリウム 値は 115.8mEq/L となり,1 時間で 0.8mEq/L の補正となる.6 時間後の血清ナ トリウム値は 118.1mEq/L となり,6 時間で 3.1mEq/L の補正となる.実測値と は多少の乖離があるが,当院は透析液ナトリウム濃度を(透析濾過型人工腎臓 用補充液に注射用水を加え調整し)補正前血清ナトリウム濃度より 5mEq/L 高 く設定することで,大きなトラブルなく補正できている.尚,回路内の影響や, 除水量が 0 でない時,その他に補液が繋がっている時も,やや複雑にはなるが 同様の計算が出来,今後発表していく予定である. Na = N - (N - N0) e - q t B t(hour):時間 ←変数 N a (mEq/L):血清ナトリウム濃度 ← t の関数 N0(mEq/L):初期血清ナトリウム濃度 N(mEq/L):透析液ナトリウム濃度 q(L/hour):補液ポンプ流量 QF と透析液ポンプ流量 QD の速度和 B(L):体内ナトリウム分布液量 e:自然対数 N0 N t 0 - 31 - 一般演題 9 改訂版災害時マニュアルの指導に向けて ~患者指導の工夫と看護師教育~ 波多野美季(はたのみき)1),小南未来 1),林 里美 1),福本智恵美 1), 上村 治 2),永井琢人 2),山川 聡 2),田中一樹 2),河口亜津彩 2),片山寿夫 2) あいち小児保健医療総合センター 31病棟 1) 腎臓科 2) 当センターでは 2006 年に作成した PD 災害時対応マニュアルを用いて,PD 患 者・家族へ指導を行ってきた.2011 年東日本大震災の発生を受け,現行のマニ ュアルでは災害時の対応として不十分であり改訂の必要性が考えられた.2012 年 PD 患者・家族及び病棟看護師を対象に実施したアンケート調査結果をもとに マニュアルを改訂し,その過程を 2012 年・2013 年の当研究会で発表した.マ ニュアル改訂後の課題として,患者指導の工夫と看護師教育が挙げられた. 今年度,改訂版災害時対応マニュアル運用開始にあたり,災害時をイメージ できる様な患者指導の工夫として,緊急時切り離し操作を実践できる機会を検 査入院時に設定する事とした.また,災害発生時は当センターへ電話するよう にマニュアルへ記載していたが,災害発生時に電話回線は繋がりにくく,病棟 の混乱も予想されるため,災害伝言ダイヤルの使用を導入した.看護師教育と して,病棟看護師の PD 看護の知識や経験の現状を把握するために病棟看護師を 対象にアンケート調査を行った.その結果,知識や指導経験に個人差があり患 者を指導するための知識や経験不足が明らかになった.PD 患者に対して病棟看 護師全員が統一した指導が行えるように,看護師用指導マニュアルを作成し周 知に努めた.アンケート結果で理解が不十分であった通常の PD 管理が行えない 状況での日常生活管理や「ゆめ」の強制終了や緊急時切り離し操作などに対し 学習会を開催した. 改訂版災害時マニュアルの運用を開始した際,患者から災害時について具体 的な質問や意見が聞かれた.また,新たに課題として,災害発生時の患者,病院, 透析会社との連携をどう図っていくのか,看護師教育の継続実施などがみられ た. - 32 - 謝 辞 第 28 回日本小児 PD・HD 研究会を開催するにあたり,ご支援を受け 賜りました各方面の方々に誌上を借りて御礼申し上げます. 旭化成ファーマ株式会社 旭化成メディカル株式会社 アレクシオンファーマ合同会社 協和発酵キリン株式会社 株式会社 ジェイ・エム・エス 中外製薬株式会社 テルモ株式会社 日機装株式会社 バクスター株式会社 (50 音順) 第 28 回日本小児 PD・HD 研究会 当番世話人 久野 正貴 - 33 -