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会見詳録 - 日本記者クラブ

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会見詳録 - 日本記者クラブ
日本記者クラブ
研究会
ウクライナ、ベラルーシ、モルドバの経済情勢
服部倫卓
ロシアNIS経済研究所
2009年5月27日
1991年、旧ソ連が崩壊して15の国が新興独立諸国(NIS=Newly
Independent States)として誕生した。そのうちのヨーロッパよりの3カ国(ウ
クライナ、ベラルーシ、モルドバ)を「西NIS」と呼ぶ。独立後、異なった
経済成長の過程を経てきた3カ国について解説した。
ウクライナは、体制変換不況が長引いたものの2000年代に入って急速に
回復したもの、政治的には様々な対立を抱えており液状化の様相を呈している。
ベラルーシは、ルカシェンコ大統領の独裁下で市場経済化を見直し、旧社会主
義的経済モデルによって95年からV字回復を果たしたが、ロシア経済に大き
く依存している点で危うさを抱えている。モルドバのGDPはロシアの6分の
1と小さく貧しい国。経済を牽引する産業がなく、多くの働き手がロシアやE
Uに出稼ぎに出ている。
また、ロシアとヨーロッパの狭間に位置するこの地域機の最大の注目点とし
て、昨年EUがコーカサス地方を対象に新たな枠組みとして打ち出した「EU
の東方パートナーシップ」を紹介した。
C 社団法人 日本記者クラブ
○
ロシアNIS貿易会・ロシアNIS経済研究
所の服部です。本日はよろしくお願いいたしま
大国予備軍のウクライナ
す。
私どもの団体の名前にも、それから、きょう
さて、そもそもあまり知られていない国々で
の報告のタイトルにも「NIS」という言葉が
すし、まず簡単にデータ的なことを申し上げま
あります。いきなりNISとは何ぞや、と疑問
す。一応この地域の盟主であるロシアとも比較
に思う方もいらっしゃるかもしれないのでご
しながらいうと、これらの国々は、一目みてわ
説明します。NISはニューリー・インディペ
かるのは、規模が全然違うということですね。
ンデント・ステイツ(Newly Independent
人口の規模からして、ロシアは1億5,000
States)の略です。日本語でいえば「新興独立
万近い国ですが、ウクライナとなるとその約3
諸国」ということになろうかと思うのですが、
分の1。ベラルーシになるとさらに小さくなっ
旧ソ連が崩壊したのが91年のことでしたけ
て、モルドバは一番小さい。大体この順番にそ
れども、それで15の国ができました。これを
の国の経済規模も異なっています。ロシアに比
"新たに独立した国"ということで、ニューリ
べれば規模が小さいとはいえ、この中のウクラ
イナという国をよくみてみますと、国土面積も、
ー・インディペンデント・ステイツと呼んでい
ます。要するに、旧ソ連諸国という理解でよろ
それから人口の規模も、よくいわれるのですが、
しいかと思うのですが、その中のさらに耳なれ
ない「西NIS」という言葉を使っております。
フランスと同じぐらいです。
ですから、ヨーロッパの規模では準大国と
ヨーロッパ寄りの3つの国(図1)――ウクラ
いいますか、単純に規模からいえばそのぐらい
の存在です。要するに、ソ連の崩壊によって忽
イナ、ベラルーシ、モルドバということになる
のですけれども――本日はこの3つの国に焦
然とユーラシア大陸に一つの大国予備軍みた
点を当てて報告してみようということです。
いなものが誕生したというのがこのウクライ
ナという国です。まだまだその発展水準は低い
私どもの団体でありますこのロシアNIS
貿易会で、私はその中の研究所というセクショ
のですけれども、これから当然経済は成長して
ンに勤めているのですが、いろんな書籍を出し
ておりまして、もちろんロシア関係のものも多
いくでしょう。それから、ロシアとヨーロッパ
のはざまに位置しておりまして、皆さんご存じ
数ございますけれども、きょうの報告のタイト
の天然ガス紛争とか、あるいはパイプライン紛
ルに近いものでいえば、『ウクライ
ナ・ベラルーシ経済ガイドブック』
図1
というようなものも出しておりま
す。これは私の個人のものなのです
けれども、先ほどご紹介にあったよ
うに、私は10年ほど前、ベラルー
シという国に3年間駐在してしま
いました。せっかく3年間も行って
いたので、本の一つでも書いてみよ
うということで書いたのが、この
『不思議の国ベラルーシ』という本
です。ウクライナ、ベラルーシ等々
をもっと知りたいという向きは、ぜ
ひこれらの書籍を参照してみてい
ただきたいと思います。
2
図2
すが――言わ
西 NIS 諸国の基礎データ
ロシア連邦
ウクライナ
ベラルーシ共和国
モルドバ共和国
ば市場経済化
においては全
国名と国旗
くの落第生で
1,708万km2
60.4万km2
20.8万km2
3.4万km2
モスクワ
キエフ
ミンスク
キシニョフ
総人口(2006年初め)
1億4,280万人
4,690万人
980万人
420万人
GNP(2007年、世銀)
1兆698億ドル
1,189億ドル
409億ドル
41億ドル
これも何か
7,530ドル
2,560ドル
4,220ドル
1,210ドル
と話題になる
65%
65%
30%
65%
ことが多いの
国土面積
首都
国民1人当たりGNP(同上)
GDPに占める民間セクターの
比率(2008年、EBRD)
あるというこ
とです。
ですが、なぜ
そうなってい
るかというと、
大統領
メドヴェージェフ
1965年生まれ
2008年就任
ユーシチェンコ
1954年生まれ
2005年就任
ルカシェンコ
1954年生まれ
1994年就任
ヴォロニン
1941年生まれ
2001年就任
ルカシェンコ
大統領という
非常に濃いキ
争とか、いろんなことで何かと話題になること
が多い。そういうことで、これから存在感もま
ャラクターの大統領がいまして、彼の信念に基
づいてそういう国づくりが行われているので
すけれども、旧ソ連圏といいますか、旧社会主
すます強くなっていくのではないか、と思いま
す。
義圏において非常に特異な体制をとっている
私の趣味の世界でいえば、2014年のサッ
ということであります。
カーのヨーロッパ選手権が、ポーランドとウク
ライナの共催ということになっております。そ
小さく貧しいモルドバ
ういう意味でも、何年か後に再びスポットライ
トが当たる、それがウクライナという国です。
もう一つ目につくのは、モルドバという国で、
規模が非常に小さいのですが、小さいだけでは
民営化進めないベラルーシ
なくて、非常に貧しい国なのですね。一応豊か
さ指数的な国民 1 人当たりのGNP、これは世
図2にデータ、数字が並んでいます。貧しい
国、そこそこ中進国的な国と、いろいろあるの
界銀行発表の数字なのですけれども、これを比
べれば一目瞭然で、1人当たり1,210ドル
という非常に低い数字になる。これは実はヨー
ですが、数字をみて明らかに極端に違うのは、
ベラルーシの民間セクターの
比率が社会主義が崩壊した後
図3
にほとんど民営化されていな
いということです。要するに、
社会主義時代の昔ながらの旧
国営の経済をかなり維持して
いる。ほかの国は大体民営化が
済んで、民間セクターの割合が
過半数になっていますけど、こ
のベラルーシという国だけ―
―旧ソ連諸国でいえば、トルク
メニスタンも同じ数字なので
2
ロッパの中で一番低い値でありまして、要する
じていて、それはそれで問題だったのですけれ
にこの国は欧州最貧国であるということにな
ども、やはり昨年秋以降の経済の急激な悪化を
ります。
受け、伝えられるところによると、ロシアでも
それをグラフを使って比較してみたのが図
これらのNIS諸国から来た出稼ぎ労働者が
3です。いま申しあげた数字をグラフにしただ
切られているという現象があるそうです。そう
けですが、ロシアとモルドバの 1 人当たりのG
なると、いままで出稼ぎによって支えられてい
NPを比べると、――いま、普通はGDPを使
た、例えばモルドバの経済、それから、きょう
うことが多いのですけれども、世界銀行はたま
の対象ではないのですが、例えばグルジアとか
たまGNPを使っていまして、その数字なので
アルメニアとか、ああいう国の経済というのは
すが――ロシアとモルドバで6.2倍の差が開
大打撃を受けることになります。
いているのです。もうちょっと差は小さいとは
このモルドバという国なんかもそうなので
いえ、2008年の平均賃金を比べてみても、
すけど、モルドバの年間輸出額が例えば50億
やっぱりかなり差がある。ソ連という国があっ
ドルあったとしますと、出稼ぎ収入がそれと同
て、その中で70年なり50年なり一緒に国づ
じぐらいあったりするというのが、こういうN
くりをして経済発展をしてきて、それが崩壊し
ISの貧しい国の現実だったのです。中でもモ
て20年近くたつのですけれども、とても何十
ルドバというのはその典型なのですが、地域内
年も同じ道を歩んでいたとは思えない。中央ア
ジアあたりならまだ低開発というのも理解で
の経済格差が生む労働力の移動がいままであ
りましたし、それがいまの経済危機でかなり変
きるのですが、同じヨーロッパの、もと同じソ
調を来しているというところだと思います。
連の地域でありながら、これだけ経済の格差が
あるというのは、やはり改めて着目せざるを得
ソ連崩壊後のGDPの推移
ないところであります。
したがって、これらの地域の現象として、基
本的にロシアがこの地域では一番経済力があ
るので、モルドバからロシアに出稼ぎに行く、
皆さんの直接的なご関心は、直近の経済危機
を受けてということかもしれませんが、もうち
ょっと長い目で各国の経済発展の推移をみる
あるいはウクライナの中でも西のほうが貧し
と、各国経済の特徴が非常によく出ているので、
図4のようなグラフをつくってみまました。こ
かったりするのですが、西ウクライナからロシ
アに、例えば建設労働者などとして出稼ぎに行
くというのは、一般的によくみられる現象です。
特にこの何年か、ロシアが大変なバブル景気、
原油高の中で、モスクワの建設ラッシュがあり、
ロシアで労働力不足が非常に深刻化しました。
特にいまのロシア人は、いわゆる3K的なきつ
れはソ連が崩壊する最後の年である91年を
100としてみた場合に、その後、各国のGD
Pの実質水準がどのように推移してきたかを
跡づけたものです。
これをみると、各国それぞれ特徴がありまし
て、赤い点線がベラルーシなのですが、見事な
までにV字回復を果たしているかのようにみ
くて汚い仕事はしないので、モスクワの街中で
も、例えば掃除婦をしている人とかは、ほとん
ど明らかにロシア人じゃないな、という顔つき
えます。これをみると、95年あたりから経済
になっていたのが、ここ何年かの現象でした。
ベラルーシ、ウクライナ、モルドバだけでは
なくて、中央アジア諸国などからも多くの出稼
ぎ労働者が、モスクワのような大都市をはじめ、
ロシア各地に殺到していたわけです。そこで非
が急激に回復しているということがみてとれ
るかと思います。当然のことなのですが、91
年にソ連が崩壊して、ただ単に国がばらばらに
なっただけではなくて、社会主義システムとい
うものが崩壊したわけです。それから、例えば
ロシアとウクライナ、ロシアとベラルーシとい
常に悲惨な労働条件とかいろいろな問題も生
った、各国の共和国の間に築かれていたいろん
3
か、イノベーションとか、外資
図4
の導入といったようなことは
当然置き去りになっています。
そういう市場経済化、近代化の
課題を置き去りにしたまま、昔
のやり方でひたすら数字だけ
は伸びていく。もちろんこれは
独裁的な国ですから、統計の信
憑性にも怪しい面があります
が、さまざまな問題を抱えつつ
も、形のうえでは急激に伸びて
きたのがベラルーシの特徴で
す。
青の実線がウクライナとい
う国なのですけれども、この中
でもロシアに次ぐ重要性を持
な有機的な経済連関というものがあったので
った国です。ウクライナという
のは、NIS諸国の中でも体制転換不況が一番
すけれども、そういうものが断絶してしまって、
長引いて、99年までずるずると落ち込みを続
90年代の前半は、各国とも大幅な下落を余儀
なくされたわけです。
けてきたという国でありました。2000年代
に入ってから急激に伸びたのですけれども、非
その中でも、このベラルーシという国は95
年から急回復するわけです。それというのは、
常に不況が長引いた。それにはいろんな理由が
あるのですが、国の中でいろんな対立関係――
派閥対立、政党間対立、地域間対立など――が
先ほど申しあげたように、94年にルカシェン
コという、いまもってベラルーシに君臨してい
る大統領がこの年に当選するのです。彼は、
「9
あって、経済云々というよりも、国づくりとし
て破綻していたところがあった。そういうとこ
ろでなかなか浮上するきっかけがつかめなか
0年代の前半の我々は間違いでした」というこ
とで、旧ソ連復古的といいますか、市場経済化
も見直して、ロシアとの関係も昔のよしみを取
ったというのがウクライナという国なのかな、
り戻すという路線を打ち出しました。国の主導
最後に緑の破線がモルドバという国です。モ
ルドバというのは、後でまた申しあげますけど、
と思います。
でロシアといろんな条約とか協定を結んだり
して、ロシアに自国の商品の販路を築く。その
経済改革を型どおりやることはやって、例えば
かわりロシアからはソ連時代並みの安い値段
IMFとか国際金融機関からの受けは分割と
よかったりするのですが、改革をしてでも、モ
でエネルギーを売ってもらうという、旧ソ連復
古型の経済モデルを打ち出しました。それによ
ルドバという国自体が小さい国で、国内市場が
って形のうえではベラルーシの経済は急激に
狭隘ですし、それから、産業らしい産業がほと
んどない国で、いくら改革をしても経済を浮上
回復してきたわけなのです。
去年あたりも10%成長を遂げていますし、
この図でも天井を突き破らんかの勢いなので
させるための原動力みたいなものが残念なが
らないという、そういう国で、割と早目に底を
打つかなという場面もあったのですけれども、
すが、これにはもちろんいろいろ問題がありま
す。ロシア市場一辺倒の路線というのは当然危
ういですし、既存の工場や生産力を活用して回
実際には2000年近くまでずるずると落ち
込んで、その後もなかなか浮上できないという
のが、このモルドバという国です。
復するということなので、新しい技術の導入と
4
自分たちは競争力があると自信満々だった
のですけれども、国際市場に出してみればそう
2000年代に高成長したウクライナ
でもないという現実がありました。国内の政治
的混乱や対立のようなものもずるずると続き
では個別にもうちょっと具体的に各国の経
まして、結局CIS諸国、NIS諸国で最も長
済の基本点をみていこうと思います。何度も申
引いた体制転換不況を経験することになりま
しあげているように、ウクライナというのはロ
した。しかもウクライナという国は東と西で随
シアに次ぐ非常に重要な国で、経済力もポテン
分国情が違います。おもしろいことに、ヨーロ
シャルとしては非常に大きい国です。その中で
ッパに近い西のほうが貧しい。国の東部を中心
も、肥沃な農地を擁する大穀倉地帯です。その
に鉄鋼業が栄え、その関連で機械産業なども東
昔からヨーロッパを代表する大穀倉地帯なの
のほうに多く、東の重工業地帯の方が豊かなの
ですね。ですから、昨今のように世界食料危機
です。西のほうはどちらかというと農村地帯で
の危険が叫ばれるような中では、これからウク
して、貧困も蔓延し、男はロシアに行って出稼
ライナの農業生産力というのは非常に脚光を
ぎをして、建設労働者として働くとか、そうい
浴びてくると思うし、実際、輸出なんかも伸び
うことがかなり蔓延しておりました。
ている。まず農業国として重要であるというこ
2000年あたりから中国特需とか資源高
とです。
それから、国内で石炭と鉄鉱石がとれまして、
鉄鋼業というのが一大産業となっています。昨
年、一昨年あたりの生産量でいうと、ウクライ
ナは世界第8位の鉄鋼生産国です。なおかつ世
界第3位の鉄鋼輸出国でした。鉄鋼輸出国の世
界1位というのは日本で、その次はロシアで、
などがありまして、鉄鋼輸出が上向いて、それ
にお金が入ってきたものですから、今までくす
ぶっていた内需に火がつきました。日本の自動
車もたくさん売れ、カローラなんか半年待たな
いと買えないというぐらいの大変な消費ブー
ムが起きました。それが2000年代に入って、
ここ数年続いてきました。ウクライナは非常に
高度成長に移行していったというところだっ
第3位がウクライナらしいのですが、輸出国と
してとりわけ重要であるということです。
たのです。ところが鉄鋼価格が去年の夏ぐらい
それから、機械産業などもかなり発達してお
にピークに達して、そこから秋にかけて鉄鋼価
格が急激に下落します。まずこれでウクライナ
りまして、特に軍需産業の一大拠点になってい
ます。
が変調を来した。そこにリーマン・ショックが
91年にソ連が壊れまして、15カ国ばらば
らになるのですけれども、実はその引き金を引
加わって、おそらく新興国の中でもかなり早い
段階で、9月ぐらいの段階でウクライナの経済
いたのはこのウクライナという国だったので
す。ウクライナはロシアに次ぐ重要性を持つ国
は大分怪しくなってまいりました。これは後で
補足説明をしますが、結局、11月にはIMF
の164億ドル支援を仰ぐことになりました。
で、しかもソ連の中核といっていいような国で
した。ウクライナなしではソ連というのは存在
し得なかった、そのぐらいの存在なわけなので
す。そのウクライナ人が何を考えたかというと、
ロシアに大きく依存するベラルーシ経済
「我々はこれだけ農業も豊かだし、工業も豊か
である。ロシアの呪縛から、あるいはソ連の呪
ウクライナが最重要国なので、後でまた戻る
縛から逃れさえすれば、我々はこれだけ豊かな
として、一通り3つの国を説明しておきます。
ベラルーシというのは、どういう経済かという
ポテンシャルを持っているのだから、当然もっ
ともっと豊かになれて、ヨーロッパのひとかど
と、日本人と相通ずるところがあって、物づく
りの精神のある国なのですね。
の国になれるに違いない」と彼らは思ったので
すね。
結局、ロシアの最近の高成長というのは、石
5
油のたまものですし、ウクライナも製造業とは
のです。
いえ鉄鋼ですから。これらはある種素材産業と
どういうことかというと、ベラルーシには製
いうか、加工度は非常に低い、製造業とはいえ
油所が2カ所ありまして、ロシアでとれた原油
ないような製造業なのですけれども、ベラルー
をその製油所で加工して、それをヨーロッパに
シという国に限っては、旧ソ連の中で唯一とい
輸出する。それが実はベラルーシがズルをして
っていいと思うのですけど、製造業立国であり、
おりまして、ロシアは石油製品を輸出するとき
加工産業に特化した国なのです。それというの
に、輸出関税というのをかけているのですけれ
も資源がないから、好むと好まざるとにかかわ
ども、ベラルーシはそれを低く抑えていた。そ
らず、そうなってしまっているのですが。ソ連
うすれば当然ロシアとベラルーシの間は関税
時代にトラック、トラクター、テレビ、冷蔵庫
同盟になっているので、輸出関税なしでベラル
といった組み立て産業が発達しまして、
「ソ連
ーシの製油所に持ってこられるのですね。そこ
の組み立て工場」と呼ばれていたという国であ
で石油製品を加工して輸出すれば、ロシアから
ります。
石油製品を輸出するよりもその分関税を安く
しかしながら、その分やはりロシアへの依存
できる。そのためロシアの石油メジャーがこの
度――ロシアへの依存度というのは、両面あり
ベラルーシの製油所に殺到しまして、ベラルー
まして、エネルギーとか資源とか部品をロシア
シは産油国でもないのに非常にそのおこぼれ
に依存するというのも当然ですけど、できたも
のをロシアに売るというわけで、原料の面でも
にあずかっていたという、こういう"せこい"
もうけ口を持っていたのです。
販売先の面でも、両方ロシアに依存しているの
事ほどさように、ベラルーシというのはロシ
アに寄生するような形で経済的利益を引き出
ですが――結局、その関係がソ連が崩壊して崩
れてしまった。そういう反動の中で登場したの
が、「欧州最後の独裁者」ともいわれるルカシ
すということを続けてきたのですけれども、そ
の間に景気もよくなり、市民消費、市民生活な
ェンコ大統領です。彼が94年にロシアとの再
統合を掲げて、大統領選挙に圧勝しました。そ
んかもかなり改善されてきました。そこに昨年
のまま現在に至るのですけれども、ロシアは基
の経済危機が起きたわけですが、統計をみる限
り、工業生産とかGDPの落ち込みというのは
本的に市場経済に移行しているわけですから、
ベラルーシがそういう旧社会主義的なやり方
一応小さい。確かにロシアとかウクライナみた
でロシアと再統合しようとしてもうまくいか
いに国際金融市場とダイレクトに結びついて、
資源価格に完全に翻弄されるような国に比べ
ないわけです。そのため、今日に至るまでロシ
アとの経済統合というのはかけ声倒れになっ
れば、体制が閉鎖的な分、ベラルーシの生産の
てしまって、結局、反動的なベラルーシの経済
落ち込みは実際小さいのだろうなとは思うの
です。しかし、孤立しているように見えながら、
体制だけが残っているような形になっており
ます。
やはり国際的な投機マネーというのが行き先
を求めて、いろんな貸出先を探していた中で、
ベラルーシにも一定程度貸し出しがあったよ
最近数年だけをみると、ベラルーシの経済成
長というのは非常に高いものがあります。ある
うなのです。日本の銀行なんかも含めて、案外
意味でロシアよりも非常に景気がよかった。そ
れがこのベラルーシという、ロシアにつかず離
ベラルーシに貸していたことが、ふたをあけて
みたら判明しました。生産の落ち込みはいまの
れずで、おいしいところだけいただくという、
ところ小さいようなのですが、直近ではかなり
そういうやり方に関係しているのですけれど
も、ベラルーシでは石油はちょっとしか産出さ
資金繰りの悪化もあって、いままでIMFの支
援なんか要らんということで、10年以上借り
れないので、石油供給はほぼロシアに依存して
もしなかったのですけど、10年ぶり以上にこ
いるのですが、おもしろいことに、ベラルーシ
は過去数年石油景気というのを謳歌していた
の1月にIMFの融資が決まったというとこ
ろです。
6
たワインの8割か9割ぐらいは、いままでロシ
アに輸出してきたわけですね。その最大の販路
出稼ぎでしのぐモルドバ
をここで断たれてしまったということになり
ます。
最後に、一番規模の小さいモルドバという国
話が戻ってしまいますけど、そもそも先ほど
です。この国の産業構造というのは非常に単純
申しあげたように、割とまじめに改革とか開放
でありまして、農業と食品産業にほぼ特化した
には取り組んできた国なのですが、いかんせん
構造を持っております。その中でもワインの輸
産業がなくて、貧困が蔓延しているという国で
出が一番の中心の産業です。一昔前のロシアに
す。この国の最大の課題を挙げろといわれれば
行かれた方なら、例えばスーパーマーケットに
貧困削減ということに当然なるのですけれど
行って、ワインの売り場をみると、7割ぐらい
も、そうした中で、国内の働き手のかなりの部
がモルドバとグルジアのワインで占められて
分が、ロシアやEUに出稼ぎに出ていたという
いた。モルドバもグルジアもロシア圏といいま
ことです。
すか、旧ソ連のNIS諸国ですから、そういう
昔ながらのロシア人の味の嗜好とか、あるいは
2007年11月に世界銀行がレポートを
値段が安いとか、いろんなことでモルドバとグ
発表しています。これによると、モルドバの出
ルジアのワインが多かったのです。そのモルド
稼ぎ収入というのは、先ほど申しあげたように、
バとグルジアという2つの国は、ともに外交面
でロシアとの懸案というか、問題を抱えている
大体輸出収入と同じぐらいの規模といわれて
いるのですが、このレポートによれば、GDP
の36%に上ります。これはタジキスタンとい
ということなのですね。
う中央アジアの貧困国と並んでGDPに占め
グルジアについては皆さん報道もされるの
でご存じだと思うのですけれども、モルドバの
場合は、沿ドニエステル地域という、ロシア系
る出稼ぎの比率が大きい国であると、この世界
銀行のレポートは指摘しております。
ヨーロッパにもこういう貧困にあえいで、出
稼ぎだけで何とか生き長らえている国がある
住民が多数居住しているところがありまして、
そこがモルドバからの分離独立を主張してい
るのです。グルジアの例えば南オセチアとか、
というのを知っておいていただきたいのです
が、モルドバというのはこういう問題を抱えて
おります。
アブハジアとか、あれと似通った問題を実はこ
の国も抱えています。ロシア系住民ということ
で、ロシアとしてもその庇護に乗り出さざるを
得ないという構図があって、モルドバとロシア
出稼ぎに加えて、国内の産業らしい産業とい
えばこのワインなのですけれども、これがロシ
はそれをめぐって多少の緊張関係というのを
ずっと抱えてきた。その中で2006年春、遂
アの禁輸に遭ってしまった。ロシアにエネルギ
ー供給を依存している国というのはどこもそ
にロシアがモルドバからのワイン輸入を全面
うなのですが、こういうふうに主力輸出品の市
的に禁止するという事件がありました。
場としてもロシアに依存しているという面で、
モルドバは二重の意味でロシアに依存してい
ロシアは、表向きはモルドバワインの品質と
るわけです。その後、政治的譲歩をしたのかど
か衛生基準などに問題があるという理由で輸
入を禁止しました。同時にグルジアからも禁止
うかはわかりませんが、2007年12月にな
って、ロシアはようやくモルドバ産ワインの輸
したのですけれども、専門家のみるところ、た
入禁止を解除しました。幸いにも2008年に
だ単にそういう品質面の問題よりは、やはり安
全保障、とりわけモルドバの場合は沿ドニエス
は天候に恵まれ――モルドバだけではなく、ロ
シアでもウクライナでも穀物収穫は非常に豊
テル地域に関する圧力ではないかという見方
作だったのですけれども――モルドバは農業
が専らです。いずれにしても、モルドバという
のも当然国内市場が小さい国で、おそらくでき
と食品だけでもっているような国なので、世界
7
経済危機の中でも2008年の成長率はかな
の鉄鋼生産の技術指標とか、あるいは生産の構
りいい数字を出しました。6.4%ぐらいの高
造とかをみると、本当に暗たんたる前近代的な
い成長率でした。しかし国内産業以上に出稼ぎ
構造を抱えているのですけれども、そういう中
に依存している部分が大きいので、先ほど申し
でも、あまりにも景気がよくて、過去数年特需
あげたように、ロシアがNISの近隣国からの
を謳歌してきたというわけなのです。
出稼ぎ労働者を締め出しにかかっているとい
ともかく、基幹産業の鉄鋼が盛り上がりま
われています。EUでも当然景気は悪いでしょ
したし、そこについ最近までの投機資金がウク
うから、そこからモルドバの出稼ぎたちが締め
ライナに流れ込みました。いままでロシアとか
出されるとなると、国内産業の痛手以上にモル
旧ソ連圏では、車や家を買うとき、ローン販売
ドバのこうむる打撃は大きいと考えられてい
というのがなかったのですね、驚くべきことに。
ます。
ローン販売ができたのが、ここ10年ぐらいの
ことなのです。そういう中で外国からじゃんじ
ゃんお金が流れてきて、それを利用したローン
ウクライナの「トリプル複合危機」
販売があって、市民が乗用車などの消費財を買
いまくる、消費を謳歌する時代になりました。
さて、何といってもこの中で一番重要な国は
ウクライナで、ウクライナの経済について、特
さすがに96、97年ぐらいになると、これは
明らかに消費は過剰だなというのは、数字をみ
ても明らかでした。しかしバブルの時代という
に今般の経済危機についてもうちょっと詳し
くみていきたいと思います。
のは、金が入り続ける限り回るわけで、当時は
ウクライナ経済の根本的な問題を考えるに、
それで問題ないのかなと思われたのです。とこ
らがやはり2008年の夏をピークに、そこか
産業構造とか付加価値、技術水準、そういうも
のがずっと低いまま、ソ連時代につくられた産
ら鉄鋼価格が一気に3分の1ぐらいに下落し
業構造とか技術水準のままずっと来てしまっ
てしまう。
たということだと思います。
しかもリーマン・ショックで、外資がウクラ
イナの金融セクターから一斉に引き揚げまし
結局、ウクライナは鉄鋼でもっている国なの
ですけれども、振り返ってみると、おそらく9
た。現地に駐在している日系の企業の方なんか
0年代というのは近代化とか付加価値とかい
にいわせると、かなり早い段階で、ウクライナ
の場合は9月にダイレクトに津波が来ました。
っている余裕もなくて、生き残るだけで精いっ
ぱいだったということです。さらにその前のソ
そして通貨グリブナが下落し、IMFの支援と、
連時代というのは、テクノロジー、技術水準よ
お決まりのコースとなったわけです。
りも、あるいは品質よりも総生産量が優先され
ました。その結果、こういう産業構造ができ上
このように短期資金が引き揚げて、新興国
が危機に陥るというのはよくあるパターンで、
別にウクライナに限ったことではないと思い
がってしまったということなのですが、ソ連崩
壊からおそらく10年ぐらいはずっと不況が
続いてきましたし、生き残るだけで精いっぱい
ます。ウクライナの場合、ひときわ深刻だった
だったということです。
のは、もともといろんな構造的な問題を抱えて
いて、それがバブルによって勘違いをしていた、
ところが2000年ぐらいから中国特需と
かいろんな要因が重なりまして、鉄鋼の国際的
だまされていた部分があったわけで、それがバ
ブルの崩壊によってあらわになったというの
が、基本的にはウクライナの経済危機が新興国
な市況がものすごくよくなった。ウクライナみ
たいに品質は低いし、生産性も低いし、問題を
の中でもひときわ深刻である点です。
多々抱えていても、飛ぶように売れてしまった。
別に設備投資をしなくても売れたものですか
ら、それでここまで来てしまった。ウクライナ
8
それが最大の原因だとは思うのですけれど
も、それに加えて、私は「トリプル複合危機」
と呼んでいるのですが、この経済危機がエネル
要するに、銀行セクターに外資が急激に流入し
ギー危機と政治危機と同時進行しており、それ
た分、ウクライナのバブルが非常に膨れ上がっ
が相互作用しながら複雑に絡み合って事態が
たということを示しています。
複雑になっている。さすがにこれだけ悪い条件
当面、IMFの融資が再開されることになり
が重なった国は世界を見渡してもないのでは
ましたので、一時期ジョージ・ソロスが「ウク
ないかと思うのですけれども、そういう特異な
ライナは危ない」といったりして、デフォルト
状況に直面している。
があるのではないかということもかなり心配
エネルギー危機というのは、皆さんご存じだ
されたのですけれども、ひとまずは事なきを得
と思うのですが、ロシアから輸入される天然ガ
るのではないかということです。ここで注目し
スの価格がどんどん引き上げられて、遂にこと
ていただきたいのは、ウクライナの場合、IM
しからはヨーロッパ価格並みになりました。こ
Fがパフォーマンスをレビューして、パフォー
れは四半期ごとに見直されたりするので、変わ
マンスが改善したから、融資を出そうといって
っていくのですけれども、ことしの初めの時点
いるのではないんですよね。もともと財政赤字
では、前の年から比べて、為替レートの変動も
ゼロで行きなさいといっていたのを、対GDP
あるので、ウクライナが輸入する天然ガスの価
比4%まで赤字を認めますということで、IM
格は急に2倍ぐらいになったのですね。
Fの側が条件を緩める形で融資が出たという
その反面、ウクライナが売る鉄鋼や化学肥料
の価格が、急に3分の1ぐらいに下がっていた
わけです。単純にいうと、交易条件が急に6分
ことですね。
の1になってしまったような、そういう考えら
ーマンスは上がらないけど、放置すると大変だ
れない状況がこのエネルギー危機ということ
です。
から融資を出しましょうという、そういうこと
であるわけです。
それから、ウクライナでは、いってみれば独
立してからずっと政治危機が続いているので
ガス戦争については、報道なども多いので、
今回ちょっと省略するとして、直近で、ウクラ
すけれども、昨今は特にそれが流動化を通り越
イナのティモシェンコ首相が日本に来たとい
して、何か液状化の様相を呈しております。政
治についてはまた後で触れますが、いろんな政
うのは話題になりました。実はティモシェンコ
首相は、かなりこの訪日に強い意欲を持ってい
治家とか政治勢力が一致団結してこの危機を
たということが知られていています。それは日
乗り越えるというよりは、むしろこの経済危機
とかエネルギー危機を利用して政敵を引きず
本の環境・省エネ技術を導入して、それに絡め
て、あわよくば融資も調達したいというもので
したがって、ウクライナ自体のパフォーマン
スは全然上がっていない。ウクライナのパフォ
りおろすとか、そういう残念な
風潮があります。これが経済危
機やエネルギー危機をさらに深
図5
ウクライナの対外債務残高の推移
(年初、100万ドル)
刻化させるというトリプル複合
危機の構造であります。
100,000
一般民間企業
銀行
通貨当局
政府
破綻を回避したウクライナ
50,000
若干重複するのですが、いま、
いったことを数字で裏付けるの
が図5になります。黄色い部分
が銀行の対外借入の残高です。
0
2004
2005
9
2006
2007
2008
2009
す。とにかくロシアからは天然ガスを値上げさ
この地域にかかわるEUの新政策である東方
れるし、IMFからはいろんな厳しい指導があ
パートナーシップというものです。それについ
るし、国内の政治対立も厳しいということで、
て簡単に触れて終わりにしたいのですが、これ
ティモシェンコ首相としては非常に四面楚歌
は昨年浮上したEUの新しい政策であります。
の状態にあるわけです。そこでティモシェンコ
もともとEUは、地中海諸国とか中近東諸国
さんは切り札として日本の技術に着目したよ
とかも含めて、欧州近隣諸国政策という政策を
うで、実はこの訪日のときにかなり強い意欲を
とっていまして、そこでいろんな協力の体制を
持っていたということを指摘しておきたいと
しいてきました。その延長上に、昨年、ウクラ
思います。
イナ、ベラルーシ、モルドバの3国に加えて、
そのウクライナの政治情勢ですけど、4月1
いわゆるコーカサス諸国、アゼルバイジャン、
日に一たん10月25日に大統領選挙を実施
アルメニア、グルジアという3つの国――ちょ
すると決定したのですが、この日取りが違憲で
っと地図が小さくてわかりにくいのですが、そ
あるということで、ユーシチェンコ大統領が憲
こで茶色になっている6つの国なのですけれ
法裁判所に提訴しました。つい先日、これは違
ども――を対象とした東方パートナーシップ
憲であるという判断が出ました。では実際に、
という新たな枠組みを打ち出しました。
いつ、どういう形で選挙をやるのかというのが
いままでベラルーシは、一応は欧州近隣諸国
政策の枠に入っていました。これは2国間協定
いま現在、非常に不透明なのですけれども、こ
ういう細かいことはさておき、重要なのは、ル
ール自体が決まっていないというか、流動的で
のようなものを結んで、それに基づいて、相手
の改革の進展度によって進めていくというも
あることです。アメリカ大統領選挙みたいにル
ールとかいろんな流れとかがわかっていれば、
のです。しかし、ベラルーシを含む3つの国に
支持率をみて、こういう結果になりそうだなと
ついて、地理的な枠には入っているんだけど、
ベラルーシは反動的な体制をとってきました
か予想できるし、展開が読めるのですけど、液
状化しているいまのウクライナの体制では、そ
ので、EUとの2国間協定が実現しなかったの
ですね。
もそもルール自体が流動的であるということ
ところが、今回の東方パートナーシップでは、
です。
ベラルーシを改めて協力のパートナーとして
取り込んだ。いってみれば、EUが初めてベラ
したがって、そもそもどういうルールで戦わ
れるか、そして、その結果として、だれが勝つ
ルーシ向けの太陽政策に乗り出したというこ
かというのももちろん大事なのですが、どうい
う体制ができるかということが肝心なのです。
一説には、例えば、ティモシェンコ首相のグル
ープと、野党のヤヌコヴィチ氏が裏で密談をし
とになっております。これはルカシェンコ政権
にとっても、またEUにとってもジレンマを突
きつけているのですが、非常に注目すべき点で
あります。
ていて、国民の選挙ではなくて、議会の投票で
大統領を決めるように憲法を変えてしまうと
この東方パートナーシップは年に1回首脳
会議を開くことになっていて、これが5月7日
かいう、そういう観測もあるぐらいで、一寸先
にありまして、この枠組が立ち上がった形にな
は闇であります。
っております。ただ、これは首脳会議なのです
が、ベラルーシは第1副首相と、モルドバは副
首相をそれぞれ派遣しまして、明らかにちょっ
EUの東方パートナーシップ政策
と後ろ向きの対応をとっているわけです。
最後に、これは経済ばかりの問題ではなく、
安全保障、外交、あらゆる面にかかわってくる
のですが、最近の新しい話題をご紹介します。
10
ベラルーシはこれまで国際的に孤立してい
て、したがってロシアと経済統合は進展しない
のですけれども、結局、ロシアの庇護下にある
ような、言いなりになるようなそういう状況だ
(質疑応答)
ったのですが、やはりこれを打破したいという
願望をもっている。したがって、EUが新たに
司会
東方パートナーシップという枠組みを打ち出
あまりなじみのない国々なんですけ
ど、いろいろ説明していただきました。
して、ベラルーシに協力の手を差し伸べたこと
ちょっと脱線で、一言だけつけ加えたいと思
は、当然ベラルーシとしては歓迎すべきことで
います。ウクライナ、ベラルーシ、モルドバ、
あります。
グルジアあたりから出稼ぎという話がありま
ただし、この東方パートナーシップでは、民
したけど、実は、これらの国から日本へも女性
主化、市民社会ということがかなり重視されて
がいっぱい来ていて、いわゆるロシアンパブと
おりまして、これはやはりいまの独裁的なルカ
いうのは半分ぐらいが実はロシア人ではなく
シェンコ政権の根幹にかかわってくるわけで
て、ウクライナ、モルドバ、グルジア人という
すね。ルカシェンコは虫のいいことをいってお
りまして、EUとの間で自由貿易協定ができて、
関税なしで輸出できればいいなとか、あるいは
ことで、ちょっと脱線ですけれども。
では、これから皆さんの質問を受けたいと思
います。
何か運輸関係の国際プロジェクトにベラルー
質問 ウクライナにつきましては、西側も大
きな誤算をしていたと思います。独立機運が高
シも参加できればいいなというような、そうい
う恩恵ばかりをいっています。けれどもEUと
しては、当然民主化の要求をもっている。特に
まっている91年の秋ぐらいのドイツの銀行
の調査では、ウクライナは旧ソ連の中でも独立
2011年にベラルーシの大統領選挙がある
すれば最も将来性がある、と述べていました。
ので、一応はいまは歩み寄った形にはなってい
るのですが、大統領選挙が近づくにつれ、また
ヨーロッパにもう一つのフランスができるぐ
らいの可能性を秘めた国だと、大変楽観的な展
このルカシェンコ政権の正統性の問題という
望を発表した。いまからみれば大変な誤算だっ
のは問われていくでしょうし、そうなるとまた
ぞろルカシェンコはロシアの庇護を仰がざる
を得ない、というようなことも予想されます。
たと思いますが、そのことについて何かコメン
トがあればうかがいたい。
もう一つは、軍需産業がいまはどうなってい
るのかということです。前の大統領はロケッ
この中で、ウクライナは一貫してEUに加入
したいということをずっといっています。そう
いう声に応じるためにも、EUが今回の新政策
ト・ミサイル工場の社長だったそうですけども、
それだけの存在だったんですが、いまはどうな
を打ち出したという面もあったわけです。興味
っていますでしょうか。
深いのは、ウクライナのユーシチェンコ大統領
が、独裁者のはずのベラルーシのルカシェンコ
大統領と最近急接近しています。何か急に仲よ
服部 確かにウクライナはソ連崩壊の時点
で一番その出方が注目を浴びました。しかもポ
くなってしまいまして、しきりにこの東方パー
トナーシップの枠組みにルカシェンコを招き
テンシャルが非常に大きいと言うことで、西側
からの期待も関心も高まったというのはその
入れようと、何か弁護するようなことばっかり
通りです。ポテンシャルとして大きい国だとい
いっているのですね。その辺の思惑というのは
どうなるかというのも興味深いところですし、
うのは、当時もいまも変わらないんですが、抱
えているいろんな問題を割と容易に克服でき
今後のヨーロッパ、ロシアとEUのはざまに位
るんじゃないかという期待がありました。それ
置するこの地域の最大の注目点は、やはりこの
東方パートナーシップの行方ですので、私も注
はウクライナ人にもあったし、欧米、それから
日本も幻想を持っていたということじゃない
目していきたいと思っております。
かと思います。で、ふたをあけてみたら、我々
が想像していた以上にいろんな困難が大きく
て、それを克服するのに10年単位の時間を要
11
しているというのが、いま現在の状況ではない
しています。
かと思います。
質問
2点質問したいと思います。ベラルー
シにいらっしゃったということなので、できれ
それから、軍需産業なんですけど、これは正
直私も勉強途上というか、気になっていながら
ば現地のエピソードなんかも踏まえて教えて
なかなか実態がみえてこないところです。一つ
いただきたいんですが、まずアメリカという国
いえることは、ウクライナ単独で作るのもさる
をこの3国の人々は具体的にどう思っている
ことながら、ロシアとの分業関係の問題があり
のか。ロシア人の話を聞くと、
「今回の経済危
ます。分業によってようやく完成品ができると
機はアメリカのせいだ、アメリカがこういう経
いう側面があって、そうなると、その経済が断
済政策をとったから、我々が被害を受けてい
絶したというのは痛い。そもそもいまみたいに
る」と、そういうようなことをいうんですけど
経済的というか政治的に対立しているのは、さ
も、アメリカという国を具体的に人々はどう思
らにまずいということもあって、非常に影が薄
っているのか。
くなっています。一部は民需に切りかえて、あ
2点目は、冒頭でおっしゃって、私も非常に
る程度軌道に乗ったところもあると思うので
注目しているんですが、ポーランドとウクライ
すが、ユーラシアに冠たる軍需産業国家という
ナがサッカーのヨーロッパ選手権を共催する
感じではなくなってきている。
ことになっています。そのとき政治的、経済的、
さらにいえば、ウクライナはNATOに加盟
することを目標として正式に掲げました。とい
うことは、武器の標準なんかも全部NATOに
もしくは人の流れも含めて大きな動きが出て
合わせていかなきゃいけないということにな
うことが予測されるのか。
ります。そうすると、自国の軍需産業を放棄す
るのかという問題が出てくるわけです。そうい
服部 得意なほうから先にお答えすると、サ
ッカーの話なんですが、サッカーは単に娯楽だ
う意味でも存在感は薄れてきているのかな、と
けじゃなくて、実は今後のヨーロッパの方向性
をある意味で示唆しているといえるかもしれ
くると思います。そのときに向けてウクライナ
はどういうふうに準備をしているのか、どうい
いうのが印象です。
司会
ウクライナがヨーロッパの経済や政
ないですね。ヨーロッパ選手権がポーランドと
治を左右するような本当の大国になる時期と
いうのはくるんでしょうか。
ウクライナで共催されることに決まった背景
には、ヨーロッパサッカー連盟の会長で、名選
服部 EUとの近隣諸国政策から始まって、
今回のパートナーシップということで、なるべ
手だったフランス人のプラティニさんがヨー
く早期に自由貿易協定を結ぶという方向が出
ています。ただ、ウクライナの国内の法律備と
ロッパの比重を東のほうに移していく、という
意志を持っていたことがあります。EUも東方
に拡大してきたんですけど、プラティニさんと
してはヨーロッパサッカーの比重も東に移し
ていくことを考えた。そこで重要になってくる
か、いろんな課題は当然出てくると思うんです
が、自由貿易協定ができると、EUに向けての
生産基地という役割が浮上してくる可能性が
のは、東欧の市場です。そういう東欧重視の一
つの帰結としてポーランド・ウクライナ共催と
いうのが出てきたんです。
あります。
いわゆるEUの東方拡大で、ポーランドやチ
ェコ、ハンガリーに、日系も含めて世界の工場
ポーランドとウクライナというのは、歴史的
にみると、言わば支配する側とされる側だった
が立地した。そういったところでは、だんだん
労賃も上がってくる。さらに先のフロンティア
わけです。そのためいろんな遺恨みたいなもの
も歴史的にはあるんですが、いま現在、例えば
として、ウクライナが欧州の生産拠点として浮
上してくる可能性がある。そうなってくれば、
やはり存在感は当然大きくなってくると予想
12
ロシアに背を向けてヨーロッパの中に入って
いくという立ち位置とか、いろんな面でかなり
手を結んでいるところがあるのが、このポーラ
くないのかな、というふうに感じています。
ンドとウクライナという国だと思うんですね。
ベラルーシあたりですと、特につながりが弱
したがって、隣国でもありますし、そういう
い分、何か非常に昔の冷戦時代のステレオタイ
ことで共催ということになったんですけど、と
プ的な、アメリカに対する反感も一部にはある
ころがこれがなかなかいろいろ難しい面があ
ようです。去年のいまごろ、外交官を相互追放
る。ウクライナ国内に4カ所の会場を設けて、
する事件もありました。そういう中で、今回、
ポーランドも4カ所だと思うんですが、そうい
EUが東方パートナーシップという新しいも
う基本方針だったんですけど、ウクライナのス
のを出してきたというのは、非常に興味深い。
タジアムの建設がなかなか進まないという問
アメリカとベラルーシは、少なくともブッシュ
題があります。一番重要なのは、決勝戦を行う
政権時代まではあからかさまにいがみ合って
キエフの7万人収容のオリンピックスタジア
いた。そういう政権の態度を庶民がどれだけ共
ムの改修工事が去年の経済危機で滞っている
有しているか不明ではありますが、やはりNA
という状況がありまして、それ以外の地方都市
TOに象徴される恐るべき国というイメージ
はさらに怪しい。せっかくウクライナに誘致し
は根強いのではないかと思います。
たプラティニ会長も、
「ことし暮れの時点でも
司会
もしウクライナが欧州もしくはEU
し完成していなかったら、ウクライナから開催
に統合されていくとなると、ロシアとの関係は
権を剥奪して全部ポーランドに持っていく」と
いうようなことをいったとか、いわないとかい
どうなるんでしょうか。ロシアと戦争するとい
うようなことがあるんでしょうか。
うことが盛んに報道されております。
服部
ウクライナ自体の当事者能力、例えば
したがって、この問題はウクライナが現在の
経済危機を克服できるかどうかということの
象徴でもあります。さらにサッカーを一つのシ
改革をする能力、それから、国内のガバナビリ
ティーといったものが重要になります。そもそ
ンボルとして、今後ヨーロッパが東のほうに重
いるよりもはるかに混乱して、腐敗した国家で
すので、予見できるような将来にウクライナが
もウクライナという国自体が、我々が想像して
心を移していくかということの、非常に暗示的
なテーマでもありますので、皆さん、ぜひ注目
当事者能力を蓄えて、ちゃんとした形でEUに
していただきたいと思います。
入れるような可能性というのはかなり低いと
思います。
それから、アメリカについての態度というか
評価ですけれども、やはりこれらの国々にとっ
そうはいいながら、ウクライナはそれを目指
しているわけですし、今回の東方パートナーシ
て一番身近なのは、隣にあるEUだと思うんで
すよね。アメリカというのはどうしても軍事機
構であるNATOと結びつけて考えられてい
ップというものは、これによって加盟の将来の
展望が描けるとか、約束されるとか、そういう
るところがある。したがって、ヨーロッパに比
べれば、アメリカは恐るべき軍事機構NATO
ものでは全然ないんですが、頑張り次第で将来
の親玉であるという、そういうステレオタイプ
の可能性は排除しないというのが、ウクライナ
についてはいまのEUの基本姿勢だと思うん
的なことも含めて、若干警戒の意識というのは
当然あると思います。
ですよね。
特にウクライナの場合、とにかくヨーロッパ
というか、EU一辺倒というところがあって、
圧倒的なパートナーとしてEUを想定してい
る。アメリカに行くと、ウクライナ系移民が結
そういうことで、ウクライナ自身の頑張り次
第では、将来的にそういう可能性が10年、2
0年先に出てくるかもしれない。当然、ロシア
として、それが自分たちにとって不利益である
という考えがありますので、相当危機感を抱く
構いて、発言力を持っているとか、そういうこ
でしょう。そのため、それなりの対抗策をとっ
て、いろんな形でのあつれきというものがEU
とはあるにせよ、案外アメリカの存在感は大き
13
との間、あるいはロシアとウクライナの間で出
ルーシ経由のルートもあります。供給先も供給
てくることは避けられないのではないか、と思
源も輸送ルートも多角化しつつある。その中で、
います。
EUがウクライナのパイプライン輸送路の近
それで、戦争ということはもちろんないとは
代化に、資金的と技術的協力をするというよう
思いますけど、やはりそれと同時並行でNAT
なことも、この3月に打ち出されました。まだ
Oの問題が当然出てくる。場合によってはNA
いろんな流れが混沌としています。全体として
TOのほうが先行することになれば、ロシアと
多様化してはいくんでしょうけど、決定的にこ
しては黙っていられないところですので、戦争
うなりますというようなことは、現時点でいう
は起きないまでも、いろいろなあつれきが懸念
のは難しいと思います。
されるというところかと思います。
司会
司会
では、もう一つ。いま、起きているウ
クライナの危機ですけれども、これからもっと
ロシアはウクライナが欧州の大国に
なる、もしくはEUに入るということについて、
ひどくなるのでしょうか。それとも山を越えて、
終局的には認める、とお考えですか。
年末には何とか抜け出しそうな感じでしょう
服部
か。
まあ、止める権利はないので、認めざ
服部
るを得ないと思うんですが。問題はウクライナ
経済的には非常に厳しい状況が続い
の中にロシア人あるいはロシア系住民がいっ
て、一番不安視されているのが、デフォルトを
ぱいいることです。一応国境はありますし、別
の国ではあるんですけど、親戚関係とかいろん
起こすんじゃないかということです。これは、
先ほど申しあげたように、ウクライナが立ち直
ってというよりも、デフォルトを起こさせるの
な人的つながり等々があるので、例えばビザの
はまずいという、IMFを初めとする国際的な
問題をどうするのかとか、国境管理をどうする
のか、あるいは中央アジアやアフガニスタンな
周りの声がデフォルトを起こさせないという
ことになっているので、それは回避されると期
どから、麻薬が流れ込んでくる危険に、どこで
待している。ただ危機について、これが底かと
どう線を引いて、どう対処するのかというよう
な問題が出てきます。したがって、ロシアから
いうと、まだそうとは言い切れない部分がある。
もっと破局的なことが起こるんじゃないかと
前向きな協力を取りつけないと、そういうEU
のとりでを守るだけの体制が築けないと思う
んですね。ただ単にウクライナを取り込んで、
国が増えましたというだけではすまない。EU
がEUでなくなってしまうということなので、
そういうことを考えると、ロシアとEUの特別
な戦略的パートナーシップを前向きな形でよ
いう人もいますし、まあ小康状態を保っている
ようではあるんですが、こればかりは何ともい
えなません。鉄鋼市況が改善したとか、いろん
な声がありますが、もともと非常に付加価値の
低い構造で、例えば原料とか燃料の効率とかが
悪い中でガスが値上がりしたりしたわけです。
ですから、市況が改善しても自国の構造的な競
り進展させていくという方向で、ロシアもある
意味取り込む必要がある。ロシアを敵に回した
争力が弱いので、ウクライナの鉄鋼業が果たし
てこれからどうなるのかというのは不安視さ
ままで、ただ単にウクライナを取り込みました
れますし、浮上の展望が描けない。
ということは、技術的に考えても難しいのでは
ないか。
しかも政治的には、大統領選挙で決着がつい
て、向こう5年間はこの体制で行きますという、
司会 その関連で、いま、天然ガスはウクラ
イナ経由で7割が欧州へ流れていますけど、こ
そういうことじゃないんですね。先ほど申しあ
げたように、だれが勝っても、それでどういう
の天然ガスのルートは今後どうなると推測さ
れますか。
政治体制をつくるのかが問われます。例えばテ
ィモシェンコが大統領で、ヤヌコヴィチが首相
になって権力を分け合いますといっても、それ
服部 もちろんノース、サウス含めて、いろ
んな代替のルートも建設されつつあるし、ベラ
が5年間もつはずはない。またいろんな対立関
14
係で流動化するでしょうし、政治的環境がなか
が西側の知識人、西ウクライナ知識人だったと
なか安定しないとなると、経済にとってプラス
いうのはそのとおりですけど、やはり決定的だ
であるはずはないので、そういう意味では厳し
ったのは、東も含めて国全体がそういうふうに
いと思います。
動いたからだということかと思います。
司会
もしウクライナがデフォルトとか破
それで、いま現在も当然西ウクライナの知識
局的な状況になった場合、他の中東欧諸国や世
人のような人たちは、ヨーロッパの一部だ、ハ
界経済にはどの程度の影響を与えるんでしょ
プスブルクの伝統がある、というような自負を
うか。
持っていて、場合によっては東に対する優越感
服部
例えばハンガリーとか、セルビアとか、
みたいなものを持っているというのもそのと
ラトビアとか、ウクライナに割と地理的に近い、
おりだと思います。ただ、おもしろかったのは、
そういう中東欧の国々の格付などをみると、ウ
例えば、何年か前の選挙の結果なんかをみると、
クライナは現状でCCC+という非常に悲惨
西のほうで共産党がそこそこ票をとっていた
な格付になっています。これは2月にIMFの
というようなことがありました。これはかつて
融資がとまったので、2段階下がってこういう
はなかったことなんですけど、やはり貧困が蔓
格付になったんですが、ほかの国をみると、B
延しているがゆえに、もともとの価値観とは別
とかが多いですね。BとかBBぐらいなので、
に共産党に票を入れていたわけです。もちろん
ウクライナよりは経済的にみればまだ余裕は
おっしゃるようなこともあることはあるんで
すが、何といっても人々の日常的な価値基準の
あるんですけど、やはりローカルな中東欧圏で
のドミノということが懸念されていると思い
中では、そういう生活などの問題が大きいとい
ます。
うことなんじゃないかなと思います。
質問 ティモシェンコ首相にせよ、ユーシチ
ェンコ大統領にせよ、もともとは反共産主義体
ウクライナの今の政治をみるときに、一番特
徴的なのは、ユーシチェンコさんは「我々のウ
制の同志であったはずで、ここまで対立すると
いうのが、いまいち外からみているとわからな
クライナ」という政治ブロックを持っています
いんですが、その支持基盤に何か違いがあるの
し、ティモシェンコさんは「ティモシェンコブ
ロック」を持っているということです。ほかの
でしょうか。
人をみても、何とかブロックというのが多いん
ですよね。結局、政党が政策とか世界観の集団
ではなくて、オーナー政党の性格が非常に強い
もう一つ、西ウクライナは確かに貧しいかも
しれないけれども、文化的には自分たちのほう
ということです。逆にいうと、理念とか理想に
が東のロシア系よりは高いんだ、ハプスブルク
よっていろんな軸ができて、それによって政党
ができているというのとはちょっと違いそう
だとかポーランドの影響を受けて、こっちがは
るかに高いんだ、という自負があると思うんで
だということですよね。
すね。結局、ウクライナの独立も西が先導した
わけでしょう。いまの西のそういう経済的な貧
困の中においてロシア観の変化などはあるの
オレンジ革命のときのように、反クチマとい
うことによって、例えば民主主義という理念が
でしょうか。
燃え上がることは確かにあるんですが、日常的
な権力闘争においては、残念ながらそういう理
服部 もともと独立を強く唱えたのが西の
人々だったというのはそのとおりです。知識人
念的なことよりも、やはり各党首の権力欲や利
権的な側面が、現実にかなり表に出てしまって
いるというのが、いまのウクライナだと思いま
とか宗教関係者とか歴史家とか、そういう人た
ちが主導してということだったと思うんです
す。
が、それだけでは独立は実現しない。結局、全
(了)
国民が9割方独立に賛成したからこそ独立に
向かったわけです。そういう流れをつくった人
(文責・編集部)
15
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