Comments
Description
Transcript
ナノマテリアルの(神経)細胞機能影響に対する評価法の研究
ナノマテリアルの(神経)細胞機能影響に対する評価法の研究 国立医薬品食品衛生研究所・薬理部・中澤憲一 目的 ナノ粒子の神経等の細胞に対する作用を(薬理学的に)検討する. 評価系 1. アフリカツメガエル卵母細胞発現系 2. 神経培養系 1)脳切片培養系 2)神経細胞培養系 3)グリア細胞培養系 アフリカツメガエル卵母細胞発現系 受容体を卵母細胞に発現させる 各種受容体 のcDNA In vitro 転写 RNA 注入 アフリカツメガエル 卵母細胞 直鎖化 プラスミド (大腸菌でふやす) 電流記録 薬物 インキュベーション (18℃,2-7日) アフリカツメガエル卵母細胞発現系を使った研究例 P2X受容体(ATP受容体チャネル) P2X receptor (ATP-activated channel) 細胞膜に存在するタンパク質である. ATPが細胞外から結合し,この結合によりチャネル孔が開く. ATP Na+ Ca2+ 細胞外 out 細胞膜 cell membrane 細胞内 in P2X receptor/channel P2X2受容体のcDNAよりRNAをインビトロ転写し,これを卵母細胞に注入して受容体を発現 subclasses (subunits): P2X 1 - P2X7 させる. expressing in brain, sympathetic neuron, sensory neuron, smooth muscles, and many other tissues ヒトのcDNAも発現可能であるため,ヒトへの影響の検討も可能である. ATP受容体への2価,3価イオンの作用. この系では各種化合物の作用の評価だけではなく,作用点を解明することが可能. A. C. + La3+ 10 µM control 2+ Ca % ATP 30 µM 100 WT: -50 mV : -80 mV WT 80 N333A: -50 mV : -80 mV 5s 60 200 nA ATP 30 µM 40 N333A 20 0 0.1 1 2+ 10 100 (mM) [Ca ] B. D. 2+ 3+ La % % 120 100 WT: -50 mV : -80 mV 80 N333A: -50 mV : -80 mV 40 40 20 20 10 [La3+ ] 100 (µM) N333A: -50 mV : -80 mV 80 60 1 WT: -50 mV : -80 mV 100 60 0 Mn 0 0.01 0.1 2+ [Mn ] 1 10 (mM) アフリカツメガエル卵母細胞発現系の別の利用方法 各種受容体 のcDNA In vitro 転写 RNA 注入 アフリカツメガエル 卵母細胞 直鎖化 プラスミド (大腸菌でふやす) 電流記録 薬物 インキュベーション (18℃,2-7日) ここで化学物質を処置すれば, 受容体タンパク質の発現(翻 訳)に対しての影響の評価が可 能. フラーレンをどのように溶かすか? 山越:ポリビニルピロリドンで可溶化 →しかし,この方法だとフラーレンが水相に出てこない可能性がある. 武隈:γ-シクロデキストランで包接し可溶化 トルエン溶液をγ-シクロデ キストランの水溶液の上に のせ,2日間加熱還流 水溶性の高いγ-シク ロデキストランで包む. 近藤:フラーレンとγ-シクロデキストランをメノウ乳鉢中でよくすりつぶ し,固相反応により包接させる. http://www.ota-hs.gsn.ed.jp/spp/spp.htm 操作 C60 7.2 mg (10 µmol),γ-cyclodextrin 26 mg (20 µmol)をメノウ乳鉢ですりつぶして混ぜる(5 min). ガラス管に移し,dH2O 1 mLを加え,撹拌. エッペンドルフチューブに移し,遠心(15000 rpm, 3 min). 上清を取り,遠心(1500 rpm, 10 min). 上清をフィルター(0.22 µm)で濾過. 259 nmでの吸光度を武隈のデータと比較したところ,8 mg/100 mL(約100 µM) の濃度の包接化合物溶液が生成したと考えられた. なお,このピークはC60あるいはγ-cyclodextrinのみで上記の操作を加えた場 合には認められなかった. アフリカツメガエル卵母細胞に発現させたP2X2受容体に対する作用 -50 -80 + C60/ γ-cyclodextrin (ca. 10 µM) control ATP 30 µM 0 nA → → 5s 100 nA A. B. 120 soluble fraction of C60 10 mg + gamma-cylclodextrin 30 mg in 50 mL 120 100 relative amplitude (% ATP alone) relative amplitude (% ATP alone) 100 80 60 40 20 0 .001 80 60 C60 + cyc C60 cyc 40 20 .01 .1 times 1 10 0 0.1 1 times その他の知見として: 1. C60/γ-シクロデキストリンを1時間処置しても卵母細胞の膜に機 能的な損傷は起こらない. 2. C60/γ-シクロデキストリンを数日間処置しても,卵母細胞に外見 的な変化は観察されない. 培養神経系を利用した研究の例(エストロゲンの脳への影響の検討) β-エストラジオールは海馬におけるグルタミン酸誘発細胞毒性を増悪する E2 cont regional damage (%) 80 256 500 µm 0 90 CA1 CA3 DG CA1 70 ** ** ** 60 ** ** 50 SR 40 CA3 30 20 SL SP SO 10 DG 0 glu 1 pM 1 nM 1 µM E2 100 µM *: p<0.05, **: p<0.01 vs. the group exposed to L-glu alone. N=8, Tukey’s test following ANOVA. 2.0 -1 Spine density (µm ) β-エストラジオールは海馬の神経のスパイン密度を増加させ,受容 体数を増やすことにより,グルタミン酸の作用を増強する. 1.5 1.0 Cont E2 CA1 ** ** SR CA3 SL SP SO 0.5 DG Red: DiI, green: PSD95 0.0 SR-CA1 SL-CA3 *: p<0.05, **: p<0.01 vs. control group. N=8, student’s t test. 5 µm 神経線維 エストロゲン スパイン スパインの数が増える Ca グルタミン酸 2+ 受容体 (イオン・チャネル) 細胞障害