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生体試料中分析および皮膚透過性 について
ナノマテリアルの安全性確認における 健康影響評価手法の確立に関する研究 生体試料中分析および皮膚透過性 について 徳永 裕司(国立衛研・環境衛生化学部) 1.フラーレンの生体試料中の分析に ついて 2.酸化チタンの経皮吸収について フラーレンの生体試料中の分析について はじめに ナノマテリアルの応用分野 フラーレン、カーボンナノチューブをはじめとするナノマテリアルはさまざまな分野 で応用されているが・・・ 注目の度合い ナノマテリアルのベネフィットの面がおもに注目されており、対するリスクの面につ いての評価・調査研究は始まったばかり・・・ フラーレンの生体試料中の分析について はじめに フラーレンについて *グラファイト、ダイヤモンドにつぐ炭素同素体 *直径1nmの球状分子 *自然界にも存在 *有機溶媒に可溶 フラーレンの有用性について *金属ドープ、化学修飾が可能 *ラジカル種を捕集する *酵素活性を阻害する ・ ・ ・ 抗ガン剤、抗エイズ剤等、 医薬品に応用されつつあ る 産業用ナノマテリアル の安全性評価?? フラーレンの生体試料中の分析について 研究計画(対象物質:フラーレン(無修飾C60)) 検討項目1:分析条件の確立 分析機器:LC-MS and/or LC-MS/MS *分離カラムの検討 *移動相の検討 *定量イオンの選択 *その他の諸条件検討 定量下限値を決定 検討項目2:生物試料を対象とした分析法の確立 抽出法:組織からの抽出法の検討 抽出液のクリーンナップ フラーレンの生体試料中の分析について 研究計画(対象物質:フラーレン(無修飾C60)) 検討項目1:分析条件の確立 分析機器:LC-MS/MS *プローブ、イオンモードの選択 →APCI ネガティブイオンモード *定量イオンの選択 →m/z = 720 *分離カラム、移動相の検討 →ODS系逆相カラム →移動相(メタノール、アセトニトリル、トルエン等) グラジエント法の検討 フラーレンの生体試料中の分析について 分析条件の検討(LC-MS/MS) ◇HPLC 装置:Waters Alliance 2695 ☆カラム:Waters Atlantis dC18 or Develosil RPFULLERENE(C30) ☆移動相 ポンプA ポンプB トルエン アセトニトリル トルエン:2-プロパノール( 9 : 1 ) 2-プロパノール (アイソクラティック法) ☆流量:0.2∼1ml/min ☆注入量:5∼50μl フラーレンの生体試料中の分析について 分析条件の検討(LC-MS/MS) ◇MSD 装置:Waters Micromass Quattro micro API イオン化:APCI(ネガティブ) C60 プレカーサイオン プロダクトイオン 720 720 Cone 120 Coll Energy 60 C70 840 840 120 Corona(uA): 15 ; プローブ温度(℃):400 *C70はサロゲートとしての使用を想定しており、 C60と同一条件 で分析が可能であるかどうかを検討した。 60 フラーレンの生体試料中の分析について 移動相の条件の検討 ◇移動相 A:トルエン: 2-プロパノール ( 9: 1) B:2-プロパノール ◇分離カラム Atlantis dC18 ◇流速 0.2ml/min ◇注入量 5μ l ◇カラムオーブンの温度 40℃ C60 C70 A:30% B:70% A:40% B:60% A:50% B:50% フラーレンの生体試料中の分析について 移動相の条件の検討 ◇移動相 A:トルエン B:アセトニトリル C70 C60 A:40% B:60% ◇分離カラム Atlantis dC18 ◇流速 0.2ml/min A:50% B:50% ◇注入量 5μ l ◇カラムオーブンの温度 40℃ A:60% B:40% フラーレンの生体試料中の分析について 分離カラムの検討 ◇移動相 A:トルエン B:アセトニトリル C60 C70 A:70% B:30% ◇分離カラム Develosil RPFULLERENE ◇流速 1ml/min ◇注入量 5μ l ◇カラムオーブンの温度 30℃ A:60% B:40% フラーレンの生体試料中の分析について C60 注入量の検討 ◇移動相 A:トルエン B:アセトニトリル 50μl 40μl ◇分離カラム Develosil RPFULLERENE 30μl ◇流速 1ml/min 20μl 15μl 10μl 5μ l C70 フラーレンの生体試料中の分析について 検討結果のまとめ ◇分離カラム Develosil RPFULLERENE C60 ◇移動相 A:トルエン:70% B:アセトニトリル:30% アイソクラティック法 C70 ◇流速 1ml/min ◇カラムオーブンの温度 30℃ ◇注入量 20μl ◇分析時間 20min フラーレンの生体試料中の分析について 検討結果のまとめ 1000 ◇分離カラム Develosil RPFULLERENE ◇流速 1ml/min y = 4.0399x + 111.39 2 R = 0.9993 800 700 y = 3.8955x + 42.079 2 R = 0.9993 600 面積値 ◇移動相 A:トルエン:70% B:アセトニトリル:30% アイソクラティック法 C60 900 500 C70 400 300 ◇カラムオーブンの温度 30℃ ◇注入量 20μl ◇定量下限値 20μg/L ◇分析時間 20min 200 100 0 0 50 100 150 濃度(μ 濃度(μg/L) /L) 200 250 フラーレンの生体試料中の分析について 研究計画(対象物質:フラーレン(C60)) 検討項目2:生物試料を対象とした分析法の確立 抽出法:組織からの抽出法の検討 →組織にフラーレンを添加し、ホモジナイズして溶媒 (トルエン等)で振とう抽出、濃縮操作→測定溶液の調整 (移動相で希釈等) →クリーンナップの操作(?) フラーレンの生体試料中の分析について 組織からの抽出法 組織(50 ∼150mg)をホモジナイズ管にとり、 0.01M SDSを 組織(50∼ 150mg)をホモジナイズ管にとり、0.01M SDSを0.5m 0.5mL、 サロゲートのC70 を加え静かにホモジナイズする サロゲートのC70を加え静かにホモジナイズする ホモジネートを遠沈管に移し、 トルエン1mL ×5回、酢酸0.5mL で洗いこみする トルエン1mL× 回、酢酸0.5mLで洗いこみする 2分間振とうし、その後15 分間超音波処理する 分間振とうし、その後15分間超音波処理する 遮光し、室温で5 遮光し、室温で5時間振とうする 2分間振とうし、その後15 分間超音波処理する 分間振とうし、その後15分間超音波処理する 2000gで遠心分離後、トルエン層をSPC に分取する で遠心分離後、トルエン層をSPCに分取する トルエン5ml を加え、2 2分間振とうし、その後15 分間超音波処理する トルエン5mlを加え、 分間振とうし、その後15分間超音波処理する 2000gで遠心分離後、トルエン層をSPC に合わせる で遠心分離後、トルエン層をSPCに合わせる 抽出液(10mL )を窒素気流下で濃縮し、1mL 1mLの一定量とする の一定量とする 抽出液(10mL)を窒素気流下で濃縮し、 フラーレンの生体試料中の分析について 組織からの抽出法 脳 肝臓 標準試料 標準試料 マウスの肝臓、脳をもちいて フラーレンの添加回収試験を行った。 *組織にフラーレンのトルエン溶液 (1mg/L溶液を 0.5ml))を添加し、 (1mg/L溶液を0.5ml その後抽出操作をした。 回収率 脳:94.6 %(C60 C60)、 )、82.0 82.0%( %(C70 C70) ) 脳:94.6%( 肝臓:85.2 %(C60 C60)、 )、96.0 96.0%( %(C70) C70) 肝臓:85.2%( →良好な回収率を得た *妨害ピークは観察されず →クリーンナップは不要! 酸化チタンの経皮吸収について 目的 ナノマテリアルは、近年、紫外線遮へい剤の酸化 チタンとして化粧品分野への応用が急速に進んで いる。しかし、ナノマテリアルの生体影響については 不明な点が多い。 酸化チタンの培養細胞に対する安全性及び経皮 的な透過性を検討する観点から、培養細胞あるい は3次元培養ヒト皮膚モデルに粒子径の異なる酸 化チタンを暴露し、細胞毒性及び透過性を検討し た。 酸化チタンの経皮吸収について 測定に用いたサンプル 微粒子酸化チタン: LU-175 平均粒子径 : 20 nm 結晶形 :ルチル型、コーティング無し ****************** 通常酸化チタン 平均粒子径 結晶形 : LU-205 : 250 nm :ルチル型、コーティング無し 酸化チタンの経皮吸収について CHO細胞を用いた毒性試験 CHO細胞(5×104 cells/mL)を96穴マイクロプ レート(表面積0.5 cm2/well)に0.1 mLずつ播種し、 37℃、2日間培養後、LU175及びLU205を分散 した培地(RPMI 1640-10% FBS)0.1 mLを添加 し24時間培養した。 培地を除き、培地で5倍希釈したテトラカラーワン 0.1 mLを加えて2時間培養し、475 nm付近の吸 光度を測定し、細胞の生存率を測定した。 酸化チタンの経皮吸収について CHO細胞中の酸化チタンの存在部位 CHO細胞(5×104 cells/mL)を60 mm 皿に5 mLずつ播種し、37℃で2 日間培養した。LU175あるいはLU205の0.2%を分散した培地5 mLを60 mm 皿に添加し24時間培養した。PBSで5回細胞を洗浄した。 トリプシンで処理して細胞をはがし、5分間、超音波を照射した。細胞膜を破 砕した後、3,000 rpm 10分遠心分離を行い、得られた沈殿を5mLのPBSに 懸濁し、9,000 gで10分間遠心分離を行った。上清を更に4℃で100,000 g で1時間遠心分離した。 ①100,000 gで得られた沈殿(ミクロゾーム)並びに② 9,000 gの遠心分離で得られた沈殿(膜画分)に濃硝酸を5 mL加えて2時間 放置した。マイクロウエーブオーブンで沈殿を湿式分解した後、 酸化チタンの 含量をICP-MSで測定した。 一方、 100,000 gで遠心分離して得られた上清(サイトゾール)に硝酸を最 終濃度が7%になるよう加え、 酸化チタンの濃度をICP-MSで測定した。 酸化チタンの経皮吸収について 3次元培養ヒト皮膚モデルでの透過実験 0.1 mL of LU175 or LU205 0-1% in medium Plastic ring (0.5 cm2 ) 24 well plate 0.5 mL of medium Vitrolife-skin 37℃,1-24 hr Medium: ①LDH assay ②ICP-MS Cells: HE staining 酸化チタンの経皮吸収について ICP-MSの測定条件 ICP-MS (HP-4500) conditions RF power RF refraction current Plasma gas current Carrier gas current Peri pump Monitaring mass Integrating interval Sampling Period :1250W : 5W : 15 L/min : 0.85 L/min : 0.2 rps. : m/z 48 (Ti) : 0.1 sec. : 0.31 sec. 酸化チタンの経皮吸収について マイクロウエーブオーブンで湿式分解前後での Tiのカウントの相違 25000000 before digestion after digestion count 20000000 15000000 10000000 5000000 0 LU175 500 ppb LU205 500 ppb Effect of digestion on LU175 and LU205 count 酸化チタンの経皮吸収について ICP-MSによる酸化チタンの検量線 30000000 LU175 y = 49854.804x - 426703.881 r = 0.999 LU205 Ti 20000000 count 検出限界 LU175:1.4 ppb, LU205: 0.8 ppb 10000000 y = 8488.051x - 85562.020 r = 0.999 y = 2547.392x + 6235.925 r = 1.000 0 0 100 200 300 400 500 600 Calibration curves of LU175, LU205 and Ti TiO 2 conc.(ppb) 酸化チタンの経皮吸収について CHO細胞に対する細胞毒性 125 LU175 LU205 Viability (%) 100 75 IC50 LU175: 0.12% LU205: >1% 50 25 0 0.01 0.10 1.00 TiO 2 concentration(%) Fig.1 Effect of crystal size of TiO 2 on viability against CHO cells 酸化チタンの経皮吸収について CHO細胞中の酸化チタンの存在部位 酸化チタン濃度 (μg/well) 細胞膜画分 ミクロソーム画分 サイトゾール画分 LU175 酸化チタン存在比(%) 細胞膜画分 ミクロソーム画分 サイトゾール画分 LU175 LU205 62.9 0.22 0.17 870 1.2 0.32 LU205 99.4 0.35 0.25 99.8 0.13 0.07 酸化チタンの経皮吸収について 酸化チタンの3次元培養皮膚モデルに対する透過性 1h LU175 LU175 LU175 LU175 LU205 LU205 LU205 LU205 0.1% 0.2% 0.5% 1% 0.1% 0.2% 0.5% 1% 430 814 1150 796 226 466 320 268 1h LU175 LU175 LU175 LU175 LU205 LU205 LU205 LU205 0.1% 0.2% 0.5% 1% 0.1% 0.2% 0.5% 1% 0.43 0.41 0.23 0.08 0.23 0.23 0.06 0.03 透過量(ng/cm2) 0-2h 0-4h 0-24h 788 1236 1630 1144 1796 2348 1550 1836 2440 1068 1402 1746 332 398 674 612 728 928 668 954 1264 456 730 1012 透過率(%) 0-2h 0-4h 0.79 0.57 0.31 0.11 0.34 0.3 0.13 0.05 0-24h 1.2 0.9 0.37 0.14 0.41 0.36 0.19 0.08 1.6 1.2 0.49 0.17 0.69 0.46 0.25 0.11 酸化チタンの経皮吸収について 酸化チタンの3次元培養皮膚モデルに対する透過性 3000 LU175 0.1% LU175 0.2% LU175 and LU205 penetrate amount (ng/cm 2 ) LU175 0.5% 2000 LU175 1% LU205 0.1% LU205 0.2% 1000 LU205 0.5% LU205 1% 0 0 4 8 12 16 20 24 Incubation time (h) 酸化チタンの経皮吸収について まとめ 1.粒子径の小さい酸化チタンは大きいものに比較して単層培 養細胞に対する細胞毒性が強く、IC50は0.12%であった。 2.Vitrolife-skinの経皮吸収試験では、LU175の0.5%の懸濁液 を用いた場合、2440 ng/cm2の酸化チタンがreceivor側に観 察されたが、細胞毒性は見られなかった。 3.角層のバリヤー機能により酸化チタンの吸収が制限され、皮 膚モデルに与える影響は小さいことが示された。 4.酸化チタンが細胞内にある程度移行することが示された。