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DESIGN TIPS DT 92-1J ・APPLICATION ENG・ ・233 KANSAS ST.・ ・EL SEGUNDO,CA.90245・ ・TEL(310) )322-3331・ ・FAX(310) )322-3332 INTERNATIONAL RECTIFIER・ パワーICによる大電力・高周波ドライブ時の ノイズ問題の解決について By Laszlo Kiraly はじめに の付加電力損失 −不安定な動作に起因するノイズの発生 IR2110・ハーフブリッジドライバパワーICは、 高電圧ハーフブリッジやHブリッジ回路において、適 切で費用効率のよいゲート駆動を提供するIR社製デ バイス系列の1つです。この系列には、IR2125 (電流検出機能付きハイサイドドライバ)、IR212 1(電流検出機能付きローサイドドライバ)、IR21 30(3相ブリッジドライバ)も含まれています。グ ランド基準の、ロジックレベルの入力信号を受けて、 MOSゲートパワートランジスタ(500Vまでオフ セットされる一方はローサイド、もう一方はハイサイ ドのトランジスタ)を駆動するので、IR2110を 使うとシンプルな回路設計になります。必要なのは、 IR2110を1つと、2∼3個の外付けの部品だけ です。 ノイズは制御回路を妨げるので、スイッチング素子の 誤動作や不動作の原因となります。ハイサイドMOS ゲートドライバの出力(Vsと記したピン5)の際、逆 電圧スパイクがおこると、ドライバICは破壊します。 1.浮遊インダクタンス 一般的なハーフブリッジ回路を図1に示します。この 回路にはMOSFETが2個、IR2110が1個使 われます。浮遊インダクタンスも図1に示します。 しかし、高スピードで大電流をスイッチするには障害 があります。そういった回路を設計する際に考慮に入 れるべきややこしい点を、このDESIGN TIP Sで詳しく説明します。最も効果的なレイアウトにす るには、回路の動作に最も影響する浮遊インダクタン スを最小にしなければなりません。主電流の浮遊イン ダクタンスは、かなりのエネルギーを貯え、スイッチ ング素子がターンオフするとき次のような問題が起こ ります。 −高スパイク電圧 −吸収された誘導エネルギーによるスイッチング素子 Page1 図 1: DESIGN TIPS 回路の動作に最も影響を及ぼす重大な浮遊インダクタ ンスは、大電流が流れるライン上にあります。 LD1とLs2は、MOSFETとデカップリングコ ンデンサの間のワイヤのインダクタンスに左右されま す。Ls1とLD2は、MOSFET間のワイヤのイ ンダクタンスに左右されます。 次の例で問題の重大さがわかります。Q1(図1参照) が20nsで10Aの負荷電流をスイッチオフすると 仮定して下さい。もしも電流ルートに10nHのイン ダクタンスがあれば、ターンオフの間に5Vのスパイ クが計測できます。AWG24で長さ3/4インチの 電線がまっすぐなときに約10nHのインダクタンス があります。 図 2: 2.実験結果 テスト回路を図2に示します。この回路には、IR2 110ブリッジドライバデザイナーズキット(品番I R2119) を含むプリントボードの回路を使います。 電源とテスト回路間の配線の影響をなくすために、Q 1DとQ2Sの端子の間に100uF/250Vの電 解コンデンサを接続します。 図3に関連する波形を示します。Q1がターンオフ すると、Q2のボディーダイオードがフリーホイー ルの電流を通します。フリーホイールダイオード上 の電圧スパイクは約10Vで、ダイオードのターン オンの遅延とパッケージ内部のインダクタンスに左 右されます。 図 3: Page2 DESIGN TIPS IR2110のピン5での逆スパイクは50Vで、こ れは、LD2とLS2の影響で、ピン5がフリーホ イールダイオードから絶縁することが原因です。 4.安全領域を増やすための素子の追加 IR2110のピン5とハイサイドMOSFETの ソースとの間に抵抗を挿入することによって、逆の過 渡期間中のピン5へ流れる電流を制限することができ ます。この抵抗(R1A)の位置を図5に、R1Aの 値に対するスパイクの大きさとターンオフ時間を図6 に示します。図4と図6を比較すると、R1Aは、ター ンオフ時間では効果が落ちるものの、ピン5での逆ス パイクをR1よりも効果的に抑制していることがわか ります。 図 4: 3.スイッチング速度制限 MOSゲートパワートランジスタを、IR2110、も しくはそれに似たMOSゲートドライバから直接駆動さ せると、どうしても高スイッチング速度になります。図 2の回路は、 0Ωの直列のゲート抵抗ではターンオフ時 間が4nsになり、 IR2110のピン5で90Vの逆 スパイクが生じます。 直列のゲート抵抗に対する、 逆スパイクとターンオフ時 間のグラフを図4に示します。ターンオフ時間は、直列 のゲート抵抗の一次関数ですから、 直列のゲート抵抗の 値が増えるにつれて、 逆スパイクの大きさはすばやく減 少します。 グラフの急な屈曲部(図4参照)からちょうどよい抵抗 値を選ぶと、 スパイクの大きさとターンオフ速度間のト レードオフがよくなります。 テスト回路で27Ωのゲー ト抵抗を選んだ結果は、スパイク電圧が18Vで、ター ンオフ時間が48nsでした。 Page3 図 5: DESIGN TIPS 逆スパイクを抑制するもう1つの方法は、ダイオード をピン5からアースに配置することです。図5におい て、これは高速・高耐圧のダイオードのD1Aですが、 R1Aはこのダイオードを通る電流を制限します。こ のアプリケーションでダイオードを選ぶ際の最も重要 な要素は、ターンオン時間です。逆回復時間は問題に なりませんが、もし長すぎるようであれば、R1Aは 動作周波数が高いと相当の電力を損失します。一般的 に、ダイオードの逆回復時間が短ければ、ターンオン 時間が長くなるのは事実です。 この回路で、いくつかの異なったダイオードがテスト されました。逆スパイクの幅がたった15nsだった ので、これらのダイオードでは、ピン5の逆スパイク の幅にたいした違いはありませんでした。 しかし、もしも浮遊インダクタンスが高くなれば、逆 スパイクも広がり、ダイオードが効果的にクランプし ます。 5.まとめ 浮遊インタクタンスが接続された状態で高速スイッチ ングを行うと、高圧・高速スパイクが生じます。この スパイクのエネルギーは、浮遊インダクタンスと電流 の2乗に比例して憎加します。IRはグランドから− 5VまでMOSゲートドライバの動作を保証します。 このことにより、ロジック側のグランドとMOSFE Tの電力側のグランド間で適度の逆電圧スパイクのあ る場合でも、適切な回路の動作が確約されます。 信頼性のある回路の動作を確実にするためには、次の ようなことをしなければなりません。 −レイアウトを考慮して、主電流沿いの浮遊インダク タンスを最小にする −電力側に物理的に近い、適切な高周波の減結合を用 いる −高電流ループの範囲を最小にする −可能なかぎりツイスト線を用いる −スイッチング素子のスイッチング速度を制限する 特に直列のゲート抵抗を一定の大きさにして、ハイサ イドスイッチのターンオフ速度を制限する −ピン5への電流と電圧を制限するためにR1A抵抗 とD1Aのダイオードを用いる 図 6: Page4