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台湾経済の現状と展望 - Mizuho Bank

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台湾経済の現状と展望 - Mizuho Bank
みずほ台湾セミナー
台湾経済の現状と展望
~蔡英文政権の経済政策と今後の課題~
2016年6月
調査本部アジア調査部
中国室長
伊藤 信悟
Copyright Mizuho Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
《構 成》
Ⅰ.台湾の景気の現状
Ⅱ.世界経済の現状と見通し
Ⅲ.台湾経済の見通し
Ⅳ.蔡英文政権の経済政策と今後の課題
1
Ⅰ.台湾の景気の現状
~力強さを欠く状態が持続~
2
1.経済の低迷が持続
◯ 一致指数、先行指数ともに下落傾向が持続
◯ 2016年4月になり、景気対策信号が「冷え込み加速」から抜け出し「冷え込み注意」になったが、依然低水準
【 先行指数・一致指数 】
【 景気対策信号 】
(点数)
106
先行指数
一致指数
104
44
過熱加速
39
過熱注意
34
102
29
100
安全
24
98
19
96
冷え込み注意
14
94
12
13
14
15
(注)先行指数、一致指数ともにトレンド除去成分。
(資料)台湾国家発展委員会より、みずほ総合研究所作成
16 (年)
冷え込み加速
9
12
13
14
15
(資料)台湾国家発展委員会より、みずほ総合研究所作成
16
(年)
3
2.実質GDP成長率にも弱さ
◯ 2016年1~3月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.1%と、2015年10~12月期の同+0.8%から上昇。ただし、輸出、
総資本形成はマイナスの伸び、個人消費も減速しており、輸入の大幅な縮小で成長率が上振れたにすぎない
‧ 前年比では、3四半期連続でマイナス成長に(2016年1~3月期は▲0.7%)
【 台湾の実質GDP成長率 】
① 前期比年率(季節調整値)
② 前年比
12
(前期比年率、%)
5
(前年比、%)
10
4
8
6
3
4
2
2
0
1
▲2
▲4
0
▲6
純輸出
総資本形成
政府消費
個人消費
実質GDP
▲8
▲ 10
▲ 12
▲ 14
13
14
15
純輸出
総資本形成
政府消費
個人消費
実質GDP
▲1
▲2
16 (年)
▲3
13
14
15
16 (年)
(注)前期比年率(季節調整値)の需要項目別寄与度は、みずほ総合研究所推計。統計上の不突合があるため、項目の合計とGDPは一致しない。
(資料)台湾行政院主計総処より、みずほ総合研究所作成
4
3.勢いを欠く輸出(1)世界経済の弱含みの影響
◯ 2016年1~3月期の財貨・サービス輸出の実質伸び率は前期比年率▲2.0%と、再びマイナスに転落
‧ 前年比伸び率は▲4.1%と、4四半期連続でマイナスに
◯ 財貨輸出の低迷がその主因。すべての主要輸出相手国・地域からの輸出受注が2016年1~3月期は減少
【 実質財貨・サービス輸出伸び率 】
20
(%)
15
【 輸出受注指数(国・地域別) 】
前期比年率
150
前年比
140
10
130
5
120
0
110
▲5
100
▲ 10
90
▲ 15
80
▲ 20
70
2012
13
14
15
(注)SNAベース。前期比年率は季節調整値。
(資料)台湾行政院主計総処より、みずほ総合研究所作成
16 (年)
(2013Q1=100)
全体
米国
日本
中国・香港
欧州
2013
14
15
16 (年)
(注)季節調整値はみずほ総合研究所推計値。
(資料)台湾経済部統計処より、みずほ総合研究所作成
5
(2)輸出動向は製品によりまだら模様、光学機器の落ち込みが顕著
◯ 輸出数量指数(季節調整値)をみると、電子製品、機械、鉱物製品が前期比増加したが、基本金属、プラスチック・ゴム、
液晶パネルに代表される光学機器、輸送機器の輸出は減少
‧ 特に光学機器の持続的な落ち込みが顕著。中国の液晶パネル自給政策の影響を受けている可能性
130
【 輸出数量指数(財別) 】
(2013年Q1=100)
(2013年Q1=100)
130
120
120
110
110
100
100
90
90
80
80
70
全体
鉱物製品
プラスチック・ゴム
基本金属
電子製品
機械
70
輸送機器
光学機器
60
60
2013
14
15
16 (年)
2013
14
15
16 (年)
(注)季節調整値はみずほ総合研究所推計値。
(資料)台湾財政部統計処より、みずほ総合研究所作成
6
(3) 海外来台客の流入の好調さは2016年1~3月期まで持続
◯ 海外からの来台者数の好調さは2016年1~3月期まで持続(前期比伸び率は+3.1%、前年比伸び率は+16.0% )
‧ 香港・マカオ、日本、中国からの来台者数が好調
――― ただし、5月に入り、中国人観光客の流入が減っているとの報道も
【 海外からの来台者数 】
350
(万人)
(%)
35
300
30
250
25
200
20
その他(左目盛)
香港・マカオ(左目盛)
日本(左目盛)
150
15
100
10
50
5
0
0
中国(左目盛)
前年比伸び率(右目盛)
前期比伸び率(右目盛)
▲5
-50
13
14
15
16 (年)
(注) 伸び率は、海外来台客総数の伸び率。前期比伸び率は、季節調整値(みずほ総合研究所推計)。
(資料) 台湾交通部観光局より、みずほ総合研究所作成
7
4.輸入の伸びもマイナスに
◯ 2016年1~3月期の財貨・サービス輸入の実質伸び率は前期比年率▲6.7%と、再びマイナスに転化(前年比では、3四半
期連続でマイナスの伸びに)
‧ 輸出の低迷に伴う原料・中間財輸入の伸び悩みが主因。機械輸入は高水準を維持しつつも、やや減速
‧ 一方、海外渡航者数は、訪日客の増加がけん引役となり、堅調な伸びを維持
【 実質財貨・サービス輸入伸び率 】
20
【 輸入数量指数(財別) 】
(%)
(2013年Q1=100)
(2013年Q1=100)
160
160
機械
全体
15
150
鉱物製品
化学製品
140
10
0
▲5
前期比年率
前年比
▲ 10
140
基本金属
130
5
150
130
120
120
110
110
100
100
90
90
80
2012
13
14
15
16 (年)
(注)SNAベース。前期比年率は季節調整値。
(資料)台湾行政院主計総処より、みずほ総合研究所作成
2013
14
15
80
2013
16 (年)
輸送機器
光学機器
電子製品
14
15
16 (年)
(注)季節調整値(みずほ総合研究所推計値)。
(資料)台湾財政部統計処より、みずほ総合研究所作成
8
5.総資本形成は3四半期連続で前期比減少
◯ 2016年1~3月期の総資本形成(総固定資本形成+在庫品投資)は前期比年率▲3.7%と、3四半期連続でマイナスの伸
びに(前年比でも▲2.1%と減少持続)
‧ 民間設備投資は、半導体メーカーの先端設備導入が下支え役となるも、前期よりやや減少した可能性あり。民間建設投
資も、住宅市況の悪化の影響から低迷が持続。公共投資も勢いを欠いた模様
‧ 一方、在庫調整の勢いは、2015年10~12月期と比べて若干緩やかになった可能性あり
【 総資本形成実質伸び率 】
35
30
25
20
15
10
5
0
▲5
▲ 10
▲ 15
▲ 20
(%)
前期比年率
前年比
【 総固定資本形成実質伸び率 】
(寄与度分解)
10
【 総固定資本形成実質伸び率 】
(主体・目的別)
(前年比、%)
8
全体
建設
公営
4
政府
2
民間
輸送機器
0
公営
▲2
政府
公共部門
民間
▲4
民間無形資産
機械設備
民間輸送機器
▲6
公営
民間建設
政府
▲8
民間機械設備
民間
総固定資本形成
▲ 10
無形資産
14
15
16 (年) 公営
2012
13
14
15
16(年) 2013
政府
(注)前期比年率は季節調整値。
民間
(注)寄与度はみずほ総合研究所推計値。
(資料)台湾行政院主計総処より、みずほ総合研究所作成
6
(資料)台湾行政院主計総処より、みずほ総合研究所作成
Q2
0.6
▲ 1.5
▲ 7.5
▲ 0.1
▲ 1.8
0.2
▲ 40.7
1.4
2.1
2.1
37.9
▲ 0.8
▲ 2.0
2.6
4.5
3.2
2.5
(単位:前年比、%)
15年
16年
Q3
Q4
Q1
3.2
1.4 ▲ 0.5
▲ 1.8 ▲ 1.8 ▲ 4.2
▲ 30.3 ▲ 4.6 ▲ 20.1
▲ 10.8 ▲ 14.1 ▲ 6.1
1.8
4.0 ▲ 3.6
10.1
5.9 ▲ 6.0
▲ 52.3 ▲ 62.1 ▲ 33.3
14.8
24.7
48.1
14.1
21.2 ▲ 5.8
8.0
3.5
3.7
1.9 ▲ 4.5
3.4
5.2
11.4
0.2
8.8
5.0
3.9
2.3
2.8
2.2
6.2 ▲ 2.2
0.9
3.3
0.6
0.5
2.0
3.5
2.4
(資料)台湾行政院主計総処より、みずほ総合研究所作成
9
6.個人消費は減速、ただしプラスの伸びは維持
◯ 一方、2016年1~3月期の個人消費は前期比年率+1.6%と、2015年10~12月期の同+5.1%から減速。ただし、プラスの
伸びは維持(前年比では+2.2%、2015年10~12月期は同+1.7%)
‧ 生鮮食品価格の上昇を主因とする物価上昇が影響(1~3月期のCPI上昇率は前年比+1.7%、10~12月期は同+0.3%)
‧ 寒気の影響で衣類の売上が高い伸びを保ったほか、春節休暇や228連休時の気候がよかったことなどから、交通費など
旅行関連支出が堅調さを維持
【 個人消費実質伸び率 】
10 (%)
【 個人消費実質伸び率(費目別) 】
前期比年率
前年比
8
15 Q1
Q2
Q3
Q4
16 Q1
6
4
2
0
▲2
▲4
2012
13
14
15
16 (年)
(注)前期比年率は季節調整値。
(資料)台湾行政院主計総処より、みずほ総合研究所作成
15 Q1
Q2
Q3
Q4
16 Q1
個人 食品・
酒・
衣類
消費 飲料 タバコ
・靴
2.9
1.5
0.3 ▲ 2.8
1.4
4.1 ▲ 7.0
4.9
▲ 0.1 ▲ 2.0 ▲ 3.5 ▲ 10.6
5.1 ▲ 2.3
10.1
22.3
1.6
1.8 ▲ 6.2
11.4
交通
通信
3.0
▲ 0.5
▲ 4.8
10.1
6.3
9.5
6.4
▲ 4.3
13.7
▲ 2.8
レジャー
・文化
9.4
▲ 1.6
0.1
7.7
▲ 3.9
教育
1.2
▲ 1.1
▲ 1.0
▲ 0.7
▲ 0.0
(単位:前期比年率、%)
住宅・ 家庭設備・ 医療・
光熱 サービス 保健
1.3
▲ 5.6 ▲ 2.1
1.7
▲ 2.9
2.5
0.3
2.5
1.8
1.4
8.2
8.0
3.1
▲ 1.7
6.9
飲食・
その他
ホテル
6.3 ▲ 0.6
2.6
27.7
1.1 ▲ 23.0
4.9
5.4
0.2
14.9
(注)季節調整値(個人消費全体以外は、みずほ総合研究所推計)。
(資料)台湾行政院主計総処より、みずほ総合研究所作成
10
Ⅱ.世界経済の現状と見通し
~持ち直しに向かうも、緩慢さは否めず~
11
1.世界経済見通し ~回復に向かうも、そのペースは緩慢なものにとどまる見込み~
◯ 予測対象地域計の成長率は2016年が前年比+3.2%、2017年が同+3.7%となる見込み
‧ 持ち直しの色が幾分濃くなるのは2017年。米国の回復がその主因。ブラジル、ロシアも弱いながらもプラス成長に回帰
‧ ただし、日本、ユーロ圏の回復ペースは緩慢、中国の減速傾向も持続
【 世界経済見通し総括表 】
暦年
(前年比、%)
2013年
2014年
2015年
2016年
2017年
(実績)
(実績)
(実績)
(予測)
(予測)
3.3
3.5
3.2
3.2
3.7
日米ユーロ圏
0.8
1.5
1.9
1.4
1.7
米国
1.5
2.4
2.4
1.6
2.3
▲ 0.3
0.9
1.6
1.4
1.4
1.4
▲ 0.0
0.6
0.5
0.6
6.4
6.3
6.1
6.0
6.0
中国
7.7
7.3
6.9
6.6
6.5
NIEs
2.9
3.4
2.0
1.8
2.2
ASEAN5
5.0
4.6
4.7
4.6
4.5
インド
6.3
7.0
7.3
7.5
7.5
オーストラリア
2.0
2.6
2.5
2.6
2.5
ブラジル
3.0
0.1
▲ 3.8
▲ 3.5
0.6
ロシア
1.3
0.7
▲ 3.7
▲ 1.2
1.0
日本(年度)
2.0
▲ 0.9
0.8
0.9
0.2
原油価格(WTI,$/bbl)
98
93
49
44
46
予測対象地域計
ユーロ圏
日本
アジア
(注)予測対象地域計はIMFによる2012年GDPシェア(PPP)により計算。
(資料)IMF、各国統計より、みずほ総合研究所作成
12
2.米国経済(1) 1~3月期は大きく減速
◯
‧
‧
‧
1~3月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.5%と、10~12月期(同+1.4%)から大きく減速
これまでのドル高と原油安による悪影響が輸出、設備投資を大きく下押し
年初の金融市場混乱が企業の投資活動や個人消費を抑制
暖冬による季節商品の販売下振れも個人消費の下押し要因
【 米国の実質GDP成長率 】
(前期比年率、%)
8
6
4.6
純輸出
政府支出
在庫投資
住宅投資
個人消費
GDP
4.3
4
設備投資
3.9
2.1
2.0
0.6
1.4
2
0.5
0
設備投資
在庫投資
外需
「悪化」
2
4
0.9
1
個人消費
「減速」
2
3
4
2014
1
2
3
2015
4
1
2016
(年/四半期)
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
13
(2) 今後は緩やかな拡大基調に復する見通し
◯ 1~3月期にみられた一時的な下押し要因が徐々にはく落するなかで、今後景気は緩やかな拡大基調に戻ると予測
‧ 個人消費は、雇用所得の拡大やマインドの安定が下支え。求人数増や賃金上昇を受けて労働参加率も上昇
‧ 急速なドル高や原油安の進行に歯止めがかかることで、輸出や設備投資への下押し圧力が徐々に緩和に向かう見込み
――― ISM調査の輸出受注指数は上昇が継続。ドル高が一服するなかで、輸出需要に回復の兆候
――― 化学・金属関連などが改善。ただし、コンピュータや電気機械は低調、一般機械も一進一退
【 米ドル実質実効レート(左)と原油価格(右) 】
(1973年=100)
【 米国製造業ISM輸出受注指数(業種別) 】
16/01
(ドル/1バレル)
120
105
受注「増加」業種数
110
100
100
90
80
95
70
60
90
50
40
85
30
80
2010 11 12 13 14 15 16
(年)
20
2010 11 12 13 14 15 16
(資料) FRB、Haverより、みずほ総合研究所作成
16/02
16/03
16/04
ISM輸出受注指数 ......................................................
47.0
46.5
52.0
52.5
(年)
4
5
7
8
受注「減少」業種数
9
7
10
4
食品・飲料・タバコ製品 ..................................................
非金属鉱物製品 ..........................................................
衣料品 ..................................................................
コンピュータ・電子製品 ..................................................
電気機械 ................................................................
繊維 ....................................................................
紙製品 ..................................................................
+
プラスチック・ゴム製品 ..................................................
+
輸送機器 ................................................................
+
一般機械 ................................................................
+
+
家具 ....................................................................
+
一次金属 ................................................................
+
+
+
加工金属製品 ............................................................
+
+
+
石油・石炭製品 ..........................................................
木製品 ..................................................................
+
+
+
化学 ....................................................................
+
+
+
印刷 ....................................................................
+
+
+
その他製造業 ............................................................
+
+
+
(注)前月と比べて輸出受注が増加した業種を+、減少した業種を-で表示。
(資料) 米サプライマネジメント協会より、みずほ総合研究所作成
14
(3) 2016年は+1.6%、2017年は+2.3%の成長に、ただし下振れリスクは残存
◯ 今後経済は回復に向かうも、1~3月期の成長率の水準が低かったことから、2016年通年の実質GDP成長率は前年比
+1.6%に(2015年は同+2.4%)。2017年通年では+2.3%に回復
‧ ただし、レバレッジの拡大や収益の伸び悩みによる財務健全性の低下を背景に、企業向け貸出基準の厳格化がまだ収
まっていない状況。それが長期化すれば、設備投資や雇用の抑制を通じて経済に下押し圧力がかかる恐れも
【 米国短期見通し総括表 】
2014 2015 2016 2017
暦年
実質GDP
2015
1~3
4~6
2016
7~9 10~12 1~3
4~6
2017
7~9 10~12 1~3
4~6
7~9 10~12
前期比年率、%
2.4
2.4
1.6
2.3
0.6
3.9
2.0
1.4
0.5
2.0
2.0
2.2
2.2
2.4
2.5
2.4
個人消費
前期比年率、%
2.7
3.1
2.4
2.2
1.8
3.6
3.0
2.4
1.9
2.5
2.0
2.3
2.3
2.3
2.0
2.0
住宅投資
前期比年率、%
1.8
8.9
9.4
4.7
10.1
9.3
8.2
10.1
14.8
6.5
5.0
6.5
4.0
4.0
4.0
4.0
設備投資
前期比年率、%
6.2
2.8 ▲ 2.0
1.7
1.6
4.1
2.6
▲ 2.1 ▲ 5.9 ▲ 2.4 ▲ 1.6
▲ 0.2
2.5
3.0
5.0
5.0
在庫投資
前期比年率寄与度、%Pt
0.1
0.2 ▲ 0.1 ▲ 0.0
0.9
0.0 ▲ 0.7
0.2
0.0 ▲ 0.2
0.0
0.0
0.0
3.8
3.5
2.0
2.0
2.0
▲ 0.0
政府支出
純輸出
前期比年率、% ▲ 0.6
0.7
2.1
2.6 ▲ 0.1
前期比年率寄与度、%Pt ▲ 0.2 ▲ 0.6 ▲ 0.2 ▲ 0.0 ▲ 1.9
2.6
1.8
▲ 0.2 ▲ 0.3 ▲ 0.1
0.1
1.2
3.8
2.0
0.2 ▲ 0.3
▲ 0.1 ▲ 0.3 ▲ 0.2 ▲ 0.2
▲ 0.2 ▲ 0.0 ▲ 0.0 ▲ 0.0
▲ 0.8
2.0
2.2
2.4
2.2
0.2 ▲ 0.4 ▲ 0.0
0.4
1.8
1.9
2.0
2.0
輸出
前期比年率、%
3.4
1.1 ▲ 1.3
0.8 ▲ 6.0
5.1
0.7
▲ 2.0 ▲ 2.6 ▲ 2.0 ▲ 1.8
輸入
前期比年率、%
3.8
4.9
0.3
1.2
7.1
3.0
2.3
▲ 0.7
%
6.2
5.3
5.1
5.0
5.6
5.4
5.2
5.0
4.9
5.1
5.1
5.1
5.1
5.0
4.9
4.8
非農業部門雇用者数 1か月当たり、千人
251
229
201
220
190
251
192
282
203
181
210
210
220
220
220
220
前年比、%
1.4
0.3
0.9
1.8
0.2
0.3
0.3
0.5
1.0
0.6
0.8
1.1
1.8
1.8
1.7
1.7
前年比、%
1.5
1.3
1.4
1.6
1.3
1.3
1.3
1.4
1.7
1.3
1.3
1.4
1.4
1.5
1.6
1.7
失業率
個人消費支出デフレーター
食品・エネルギーを除くコア
(注)網掛けは予測値。
(資料)米国商務省、米国労働省より、みずほ総合研究所作成
15
3.ユーロ圏経済(1) 1~3月期の成長率は上振れ、4月以降の景気回復テンポは緩慢
◯ 1~3月期のユーロ圏GDP成長率は前期比+0.5%と約1年ぶりの高い伸び。4月のユーロ圏合成PMIは伸び悩み
‧ 個人消費が1~3月期の景気回復をけん引した模様。固定投資・政府支出は暖冬・難民対応で上振れたとみられる
‧ 1~3月期の合成PMIは低下。景気回復の勢いが基調的に強まっているわけではないことを示唆
――― 4月のユーロ圏合成PMIは景気判断の節目となる50を上回るも、3月からは伸び悩み
‧ 各国の中期財政計画に基づくと、2016年は従来よりも緩和気味の財政政策が志向されている模様
【 ユーロ圏・主要国のGDP成長率と合成PMI 】
(前期比、%)
1.0
成長率
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
▲0.2
▲0.4
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
2014
ユーロ圏
フランス
スペイン
15
16
(年/四半期)
ドイツ
イタリア
(Pt)
60
59
58
57
56
55
54
拡
張 53
← 52
51
景 50
気 49
→ 48
縮 47
小 2014/4
ユーロ圏
フランス
スペイン
(資料) Eurostat、各国統計局、Markitより、みずほ総合研究所作成
PMI
15/4
16/4
(年/月)
ドイツ
イタリア
【 ユーロ圏・主要国の構造的財政赤字(2016年) 】
(構造的財政赤字(GDP比)、%)
2.0
1.8
1.6
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
2016年春時点の想定
2015年秋時点の想定
1.2
1.8
1.3
1.2
1.0
0.7
0.7
0.5
0.0
ユーロ圏
0.0
ドイツ
フランス
イタリア
スペイン
(注) 2015年秋時点の想定=各国2016年予算案ベース、2016年春時点の想定=
各国2016年安定レポートベース。ユーロ圏は、各国の想定を加重平均したもの。
(資料) 各国財務省より、みずほ総合研究所作成
16
(2) 企業は年内投資拡大に対して慎重姿勢を維持する見込み
◯ 1~3月期の成長率を上振れさせた一時的要因ははく落。4~6月期以降は、消費改善が続くも、企業が投資に慎重姿勢を
維持するとみられることなどから、2016年の景気回復テンポは緩やかに
‧ 金融市場でリスクオン局面が持続するほど、固定投資が増えやすいという経験則あり。足元、リスクオン局面の持続期間
は1四半期程度であり、投資回復テンポが顕著に加速するほど、企業は楽観的になっていない模様
◯ 2017年の成長率は2016年と同水準だが、景気回復テンポは加速。世界経済の持ち直しや、企業の慎重姿勢の和らぎを
背景に、輸出や投資の伸びが徐々に高まると予測
【 グローバル金融市場のリスクオン局面 】
(金融市場がリスクオンである確率、%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
08/5
2008/5
【 金融市場のリスクオンの持続期間が固定投資に与える影響 】
シャドーはリスクオン期間
(リスクオン確率≧50%)
(固定投資の前期比年率伸び率に対する影響、%pt)
2.2
リスクオンが
1四半期なら
加速は限定的 +0.1%pt
2.0
1.8
+0.4%pt
1.6
1.4
1.2
1.0
10/5
12/5
(注) 2016年5月は第2週目までのデータに基づく。
(資料) Datastream、Bloombergなどより、みずほ総合研究所作成
14/5
16/5
(年/月)
ベンチマーク:
GDPが年率
1.5%増加
リスクオンが
1四半期継続
リスクオンが
1年継続
(注) ユーロ圏固定投資を、GDP成長率、GDP成長率×リスクオン局面の持続期間、
設備稼働率で説明する回帰モデルを推計。GDPが年率1.5%増加したケースにおいて、
リスクオン局面の持続期間がゼロの場合をベンチマークとし、リスクオン局面が継続した
場合の限界的な押し上げ効果を、交差項の係数から求めた。
(資料) Eurostatなどより、よりみずほ総合研究所作成
17
(3) 2016年、2017年ともに+1.4%成長に
◯
‧
◯
‧
2016年、2017年のユーロ圏の実質GDP成長率はいずれも+1.4%となる見通し
潜在成長率をやや上回る、緩やかなテンポでの景気回復が持続
リスクファクターは、政治の情勢の不透明化
英国のEU離脱国民投票の行方(6月23日)、スペイン再選挙(6月26日)でどの党も過半数を取れない可能性、ギリシャ支
援協議の遅延(7月20日に大口償還期限到来)など
【 ユーロ圏短期見通し総括表 】
2014
2015
2016
2015
2017
暦年
1~3
4~6
2016
7~9 10~12
1~3
4~6
2017
7~9 10~12
1~3
4~6
7~9 10~12
前期比、%
0.9
1.6
1.4
1.4
0.6
0.4
0.3
0.3
0.5
0.2
0.3
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
前期比、%
1.0
1.7
1.7
1.4
0.8
0.0
0.7
0.6
0.6
0.1
0.2
0.3
0.4
0.4
0.4
0.4
前期比、%
0.8
1.7
1.4
1.3
0.5
0.3
0.5
0.2
0.5
0.3
0.3
0.3
0.3
0.3
0.4
0.4
総固定資本形成 前期比、%
1.4
2.6
2.5
1.4
1.4
0.1
0.4
1.3
1.2 ▲ 0.1
0.1
0.3
0.4
0.5
0.5
0.6
政府消費
0.8
1.3
1.6
0.9
0.5
0.3
0.3
0.6
0.5
0.3
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
0.0 ▲ 0.0
0.0
0.1
0.2 ▲ 0.2
0.3
0.1
0.0 ▲ 0.1 ▲ 0.1
0.1
0.1
0.1
0.0
0.0
▲ 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.3
0.1
▲ 0.2
実質GDP
内需
個人消費
前期比、%
在庫投資 前期比寄与度、%Pt
外需
前期比寄与度、%Pt
0.4 ▲ 0.4 ▲ 0.3
0.4
▲ 0.1
0.1
0.1
0.1
0.0 ▲ 0.0 ▲ 0.0
0.0
輸出
前期比、%
4.1
4.9
1.9
4.2
1.4
1.7
0.2
0.2
0.1
0.6
0.8
1.0
1.1
1.2
1.2
1.2
輸入
前期比、%
4.5
5.6
2.7
4.5
2.1
1.0
1.2
0.9
0.3
0.4
0.7
0.9
1.2
1.4
1.4
1.4
消費者物価指数
前年比、%
0.4
0.0
0.3
1.3
▲ 0.3
0.2
0.1
0.2
0.0
0.1
0.4
0.8
1.3
1.1
1.3
1.6
食品・エネルギーを除くコア前年比、%
0.8
0.8
1.0
1.3
0.7
0.8
0.9
1.0
1.0
0.9
0.9
1.0
1.2
1.3
1.4
1.5
(注) 網掛けは予測値。
(資料) Eurostatより、みずほ総合研究所作成
18
4.日本経済(1) 引き続き踊り場、4月は熊本地震が企業業況を下押し
◯ 1~3月期の実質GDPは、前期比年率+1.7%とプラス成長。ただし、10~12月期の減少分(同▲1.7%)と均せば横ばい
‧ 個人消費が高めのプラス(前期比+0.5%)となったが、10~12月期の落ち込み(同▲0.8%)を取り戻すには至らず。うるう
年による押し上げがあったことも考慮すると、消費回復の鈍さは変わらないとの評価
◯ 4月は、熊本地震が企業の景況感を下押し。もっとも、少なくとも4月時点では、マインド悪化の全国的な広がりは回避
‧ 景気の現状判断DI(景気ウォッチャー調査)を過去の震災時と比較すると、今回の熊本地震では、震源地の九州地方が
新潟県中越沖地震時の東北地方(新潟含む)よりも悪化。ただし、震源地以外の景況感は、ほぼ横ばいにとどまる結果
【 景気の現状判断DI(景気ウォッチャー調査、
過去の震災時との比較) 】
【 実質GDP成長率の寄与度分解 】
(前期比、%)
3
(Pt)
実質GDP
成長率
2
公的需要
震源地
(Pt)
60
60
1
50
50
0
40
40
30
30
20
20
▲1
▲2
民間在庫投資
外需
家計
(消費+住宅)
▲3
▲4
10
民間設備投資
地震
0
Q2
Q3
2014
Q4
Q1
Q2
Q3
2015
(資料)内閣府「四半期別GDP速報」より、みずほ総合研究所作成
Q4
Q1 (期)
2016 (年)
中越沖地震
(07/7)
東日本大震災
(11/3)
熊本地震
(16/4)
10
地震
▲5
Q1
震源地以外
0
-3 -2 -1 0
1
2
3
(カ月)
-3 -2 -1 0
1
2
3
(カ月)
(注) 震源地は、中越沖地震と東日本大震災は東北(景気ウォッチャー調査では新潟は東北に
分類される)、熊本地震では九州とした。震源地以外は回答者数で加重平均して算出。
(資料) 内閣府「景気ウォッチャー調査」より、みずほ総合研究所作成
19
(2) 2016年度成長率は消費増税前の駆け込み需要で上振れるも、2017年度は低下
◯ 2016年度の景気は、海外経済の減速などから不透明感の強い状況が続く見通し。後半にかけ消費増税(2017年4月)前
の駆け込み需要が顕在化することで、成長率は+0.9%と潜在成長率(+0.2%~+0.3%と推計)を上回る見通し
‧ 2016年度成長率は、3月見通し(+0.9%)から据え置き。1~3月期のGDP上振れにより成長率のゲタが上昇する一方、熊
本地震や円高が成長率下振れ要因に(地震・円高・財政を総合すると、0.1%Pt程度の下振れ要因)
◯ 2017年度は、駆け込み需要の反動減により、成長率は+0.2%に低下。年度後半には反動減が一巡することで、景気腰
折れは回避できる見込み
【 実質GDP成長率の見通し 】
(前年比、%)
公的需要
3
2.0
2
1
【 熊本地震・円高・財政出動による経済見通しへの影響整理 】
予測
外需 潜在成長率
0.8
0.9
熊本
地震
•生産:2016年2Qが1%弱下振れ(その後挽回)
•消費:2016年2Qが0.1%程度下振れ
円高
• 輸出:2016年度通年で0.5%程度の押下げ
• 企業収益:2016年度通年が1兆円程度の下振れ
財政
• 経済対策:5兆円を想定(1.5兆円は前回織り込み済み)
• 震災復興:1.5兆円を想定
実質GDP
0.9 成長率
0.2
0
企業
▲0.9 (設備+在庫)
▲1
家計
(消費+住宅)
▲2
まとめ
▲3
2012
13
14
15
16
(注)潜在成長率はみずほ総合研究所推計値。
(資料) 内閣府「国民経済計算」などより、みずほ総合研究所作成
• GDP:2016年度通年で0.1%程度の下振れ
17 (年度)
(注)図中の数値は、3月見通しからの修正幅を示している。
(資料) みずほ総合研究所作成
20
【 日本経済見通し総括表 】
2014
2015
2016
2017
年度
実質GDP
2015
7~9
2016
10~12
1~3
4~6
2017
7~9
10~12
1~3
2018
4~6
7~9
10~12
1~3
前期比、%
▲ 0.9
0.8
0.9
0.2
0.4
▲ 0.4
0.4
0.0
0.5
0.4
0.5
▲ 0.6
▲ 0.3
0.4
0.4
前期比年率、%
--
--
--
--
1.6
▲ 1.7
1.7
0.1
1.9
1.5
2.0
▲ 2.5
▲ 1.0
1.4
1.6
前期比、%
▲ 1.5
0.7
1.0
0.0
0.3
▲ 0.5
0.2
0.1
0.5
0.6
0.8
▲ 0.9
▲ 0.3
0.3
0.4
前期比、%
▲ 1.9
0.7
0.7
▲ 0.3
0.5
▲ 0.7
0.1
0.0
0.4
0.6
0.9
▲ 1.4
▲ 0.4
0.4
0.3
個人消費
前期比、%
▲ 2.9
▲ 0.3
1.2
▲ 0.6
0.5
▲ 0.8
0.5
0.1
0.4
0.5
1.6
▲ 2.5
0.1
0.4
0.3
住宅投資
前期比、%
▲ 11.7
2.4
3.2
▲ 6.6
1.7
▲ 1.0
▲ 0.8
2.2
1.9
0.7
▲ 0.6
▲ 3.5
▲ 3.2
▲ 2.0
▲ 0.8
設備投資
前期比、%
0.1
1.6
1.0
0.6
0.7
1.2
▲ 1.4
0.1
0.5
0.9
0.9
▲ 0.8
0.0
0.3
0.3
在庫投資
前期比寄与度、%Pt
0.6
0.4
▲ 0.4
0.2
▲ 0.1
▲ 0.1
▲ 0.0
▲ 0.1
▲ 0.1
0.0
▲ 0.4
0.7
▲ 0.3
0.0
0.0
前期比、%
▲ 0.3
0.8
1.8
1.1
▲ 0.3
▲ 0.1
0.6
0.4
0.8
0.4
0.4
0.4
▲ 0.0
0.2
0.4
政府消費
前期比、%
0.1
1.6
1.5
1.4
0.2
0.7
0.7
0.2
0.3
0.3
0.3
0.3
0.4
0.4
0.4
公共投資
前期比、%
▲ 2.6
▲ 2.2
3.0
0.2
▲ 2.2
▲ 3.5
0.3
1.7
2.9
0.5
1.0
0.6
▲ 1.7
▲ 1.0
0.4
前期比寄与度、%Pt
0.6
0.1
▲ 0.1
0.1
0.1
0.1
0.2
▲ 0.1
▲ 0.0
▲ 0.2
▲ 0.3
0.3
0.1
0.0
0.0
輸出
前期比、%
7.9
0.4
1.0
2.7
2.6
▲ 0.8
0.6
▲ 0.4
0.5
0.4
0.3
0.7
0.9
0.9
0.9
輸入
前期比、%
3.4
▲ 0.1
1.5
2.1
1.7
▲ 1.1
▲ 0.5
0.3
0.7
1.4
1.9
▲ 1.1
0.6
0.7
0.7
名目GDP
前期比、%
1.5
2.2
1.3
1.8
0.7
▲ 0.2
0.5
▲ 0.5
1.2
0.4
0.7
▲ 0.6
1.2
0.8
0.1
GDPデフレーター
前年比、%
2.4
1.4
0.4
1.7
1.8
1.5
0.9
0.2
0.6
0.4
0.5
1.0
1.7
2.2
1.7
前年比、%
2.1
▲ 0.2
▲ 0.2
1.8
▲ 0.1
▲ 0.2
▲ 0.5
▲ 0.6
▲ 0.6
▲ 0.1
0.7
1.6
1.8
2.0
1.8
内需
民需
公需
外需
内需デフレーター
(注)網掛けは予測値。
(資料)内閣府「四半期別GDP速報」より、みずほ総合研究所作成
21
(3)消費増税の影響を除くと、2016年度成長率は+0.6%、2017年度は+1.0%に
◯ 消費増税の影響を除くと、2016年度の成長率は+0.6%に低下。一方、2017年度の成長率は+1.0%に上昇
‧ 2016年度は、駆け込み需要による押し上げを除くと、成長率が0.3%Pt程度低下
‧ 2017年度は、駆け込み需要の反動と家計負担増を除くことで、0.7~0.8%Pt分の下押し圧力が緩和
――― 駆け込みの反動が0.5%Pt程度、家計負担増(実質所得の低下)の影響が0.2~0.3%Pt
【 日本経済見通し(消費増税の影響の有無別) 】
消費増税の影響を除いた場合(参考試算)
予定通り増税の場合(メインシナリオ)
2014
2015
2016
2014
2017
2015
2016
2017
年度
年度
実質GDP
前期比、%
▲ 0.9
0.8
0.6
1.0
実質GDP
前年比、%
▲ 0.9
0.8
0.9
0.2
内需
前期比、%
▲ 1.5
0.7
0.6
1.0
内需
前年比、%
▲ 1.5
0.7
1.0
0.0
前期比、%
▲ 1.9
0.7
0.1
0.7
前年比、%
▲ 1.9
0.7
0.7
▲ 0.3
個人消費
前期比、%
▲ 2.9
▲ 0.3
0.5
1.0
個人消費
前年比、%
▲ 2.9
▲ 0.3
1.2
▲ 0.6
住宅投資
前期比、%
▲ 11.7
2.4
0.7
▲ 0.9
住宅投資
前年比、%
▲ 11.7
2.4
3.2
▲ 6.6
設備投資
前期比、%
0.1
1.6
0.6
1.0
設備投資
前年比、%
0.1
1.6
1.0
0.6
在庫投資
前期比寄与度、%Pt
0.6
0.4
▲ 0.3
▲ 0.1
在庫投資
前年比寄与度、%Pt
0.6
0.4
▲ 0.4
0.2
前期比、%
▲ 0.3
0.8
1.9
1.7
前年比、%
▲ 0.3
0.8
1.8
1.1
政府消費
前期比、%
0.1
1.6
1.5
1.7
政府消費
前年比、%
0.1
1.6
1.5
1.4
公共投資
前期比、%
▲ 2.6
▲ 2.2
3.2
1.7
公共投資
前年比、%
▲ 2.6
▲ 2.2
3.0
0.2
前期比寄与度、%Pt
0.6
0.1
0.0
0.0
前年比寄与度、%Pt
0.6
0.1
▲ 0.1
0.1
輸出
前期比、%
7.9
0.4
1.1
2.8
輸出
前年比、%
7.9
0.4
1.0
2.7
輸入
前期比、%
3.4
▲ 0.1
0.8
2.5
輸入
前年比、%
3.4
▲ 0.1
1.5
2.1
民需
公需
外需
民需
公需
外需
(注)網掛けは予測値。
(資料)内閣府「四半期別GDP速報」より、みずほ総合研究所作成
22
5.中国経済(1) 減速傾向が持続
◯
‧
‧
‧
◯
1~3月期の実質GDPは前年比+6.7%と10~12月期(同+6.8%)から緩やかな減速にとどまるも景気の足腰は依然弱い
小売の伸びは鈍化。食品価格の高騰などによる実質所得の弱含みが影響した可能性あり
輸出のマイナスの伸びが持続。米国やASEAN、EU向けなどの輸出が減速
一方、投資の伸びが加速し景気を下支え。ただし、政策による不動産業やインフラの投資の持ち直しが投資加速の主因
4月の主要指標は3月と比べて減速するも、概ね1~3月期並みの伸びを維持。ただし、自律的回復力を欠く状態は持続
【 中国の主要経済指標(四半期) 】
(前年比、%)
【 中国の主要経済指標(月次) 】
(前年比、%)
25
10
(前年比、%)
(前年比、%)
工業生産(左目盛)
社会消費品小売総額(左目盛)
固定資産投資(左目盛)
輸出(右目盛)
25
75
20
8
20
15
6
15
45
10
4
10
30
5
2
5
15
0
0
0
0
実質GDP成長率(右目盛)
社会消費品小売総額(左目盛)
固定資産投資(左目盛)
輸出(左目盛)
▲5
▲ 10
12
13
14
▲2
▲4
15
16 (年)
(注)1.社会消費品小売総額は小売物価指数、固定資産投資は 固定資産価格指数で実質化
(みずほ総合研究所推計値)。輸出は輸出価格指数で実質化。
2. 2013年1~3月期の輸出は虚偽報告による水増しの可能性大。
(資料)中国国家統計局、海関総署、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
▲5
60
▲ 15
▲ 10
12/01
13/01
14/01
15/01
▲ 30
16/01
(年/月)
(注) 1. 工業生産、小売、固定資産投資の1、2月は1~2月累計の前年同期比。
2. 固定資産投資は年初来累計を単月に変換。
3. 工業生産は実質値。社会消費品小売総額、 固定資産投資は名目値。
4. 輸出は名目米ドル建て。
(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
23
(2)第2次産業の名目GDP成長率の低迷続く
◯ 1~3月期は、名目GDP成長率が実質GDP成長率を上回ったものの、第2次産業の名目GDP成長率が実質値を大きく下回
る状態は持続
◯ 改善方向にあるとはいえ、前年比でみた資源価格、生産者物価の大幅な下落が、第2次産業の名目GDP成長率の低迷
の主因
【 中国のGDP成長率(名目・実質比較) 】
(前年比、%)
14
12
実質GDP(全体)
名目GDP(全体)
実質GDP(第2次)
名目GDP(第2次)
【 中国の物価上昇率 】
6
(前年比、%)
4
2
10
0
▲ 2
8
▲ 4
6
▲ 6
▲ 8
4
▲ 10
2
▲ 12
0
▲ 14
2012
2012
13
14
15
(資料) 中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
16 (年)
CPI
PPI
輸入価格指数
13
14
15
16
(年)
(注)輸入価格指数は元建て(みずほ総合研究所による推計値)
(資料)中国国家統計局、海関総署より、みずほ総合研究所作成
24
(3)投資は持ち直すも、依然自律的回復力は弱い状態
◯ 固定資産投資の実質伸び率は、2四半期連続で上昇。ただし、政策発動による不動産投資の持ち直し、インフラ投資によ
るところが大きく、投資の自律的な回復力は依然として弱い状態
【 中国の固定資産投資の実質伸び率(業種別寄与度) 】
(前年比、%)
22
20
その他
18
その他サービス
16
鉱業
14
不動産
12
製造業
10
水利・環境・インフラ管理
8
交通・倉庫・郵便
6
電気・ガス・水道
4
全体
2
0
▲2
11
12
13
14
15
16 (年)
(注) 固定資産価格指数により実質化。みずほ総合研究所推計値。
(資料) 中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
25
(4)個人消費は底堅く推移してきたが、足元若干弱含み
◯ 経済が減速するなかにあっても、個人消費は底堅く推移してきたが、足元若干弱含み
‧ 2012年より生産年齢人口(15~59歳)が減少するなど、労働供給側の要因で労働需給がタイトになりやすい状態。それが
可処分所得の伸びが底堅く推移してきた主因とみられる
‧ ただし、可処分所得にやや弱含みがみられるうえ、雇用・所得の先行きに対する家計の見方がやや弱気になっていること
が、小売の伸び鈍化の主因と推察される。そうしたなか、2015年10月より実施の小型車減税が消費を下支え
【 中国の乗用車販売台数 】
【 中国の小売売上高、可処分所得実質伸び率 】
14
(前年比%)
25
12
(前年比、%)
20
10
15
8
10
6
5
4
1人当たり可処分所得(全国)
0
1人当たり可処分所得(都市部)
2
社会消費品小売総額
▲5
0
13
14
15
16 (年)
(注) みずほ総合研究所推計値。
(資料) 中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
13
14
15
16 (年)
(資料)中国汽車工業協会より、みずほ総合研究所作成
26
(5) 在庫調整が一定程度進展
◯ 中国の生産在庫バランスは2016年3月に、2013年12月以来のプラスに転換
‧ 素材類も含めて、ほとんどの主要業種で生産在庫バランスが改善
――― ただし、素材類に関しては、価格上昇などを受けて生産が上振れた可能性も否定はできず
【 中国の生産在庫バランス 】
25
【 中国の生産在庫バランス(業種別) 】
生産在庫バランス
在庫
生産
(前年比%、%Pt)
20
15
10
5
0
▲5
▲ 10
▲ 15
11/01
12/01
13/01
14/01
(注)1. 生産在庫バランス=(生産前年比)-(在庫前年比)。
2. 在庫は生産者出荷価格指数により実質化。
(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
15/01
16/01
(年/月)
(単位:%Pt)
14/Q4 15/Q1 15/Q2 15/Q3 15/Q4 16/Q1
工業全体
▲ 9.1
▲ 7.0 ▲ 6.1 ▲ 6.3 ▲ 4.8
0.3
石油加工
▲ 12.4 ▲ 6.4
4.5 ▲ 4.9 ▲ 1.5
9.8
化学
▲ 7.3
▲ 4.6 ▲ 3.2 ▲ 1.7 ▲ 1.2
2.3
素材 非金属
▲ 6.7
▲ 6.0 ▲ 7.1 ▲ 3.8 ▲ 5.5 ▲ 1.0
鉄鋼
▲ 8.9
▲ 5.7 ▲ 7.9 ▲ 12.3 ▲ 10.6
6.9
非鉄金属
▲ 0.1
▲ 1.0 ▲ 3.0 ▲ 11.2 ▲ 11.8
0.6
食品加工
▲ 8.7
4.5
9.8
7.3
4.2
4.2
軽工業 食品製造
▲ 6.6
▲ 6.1 ▲ 1.5
0.8
1.4
3.5
紡織
▲ 2.2
1.1
3.0
3.6
2.0
1.6
一般機械
▲ 8.3
▲ 6.5 ▲ 3.6 ▲ 3.2 ▲ 3.6
1.4
自動車
▲ 15.8 ▲ 11.2 ▲ 15.5 ▲ 10.9
5.5
8.3
機械
電気機械
▲ 6.5
▲ 1.9 ▲ 3.0 ▲ 2.6 ▲ 0.5
2.7
通信・電子機器 ▲ 15.1 ▲ 17.8 ▲ 20.5 ▲ 14.9 ▲ 7.1
5.0
(注)1. 生産在庫バランス=(生産前年比)-(在庫前年比)。
2. 在庫は生産者出荷価格指数により実質化。
(資料)中国国家統計局、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
27
(6) 自律的な回復力の弱さを政策で支え、減速ペースを抑える展開が持続
◯ 2016年の中国の実質GDP成長率は前年比+6.6%、2017年は同+6.5%と減速が続くと予測
◯ 好材料として、在庫調整が一定程度進展してきていること、外部環境が緩やかながらも改善し、輸出が次第に持ち直すと
予想されることなどがあげられる
◯ ただし、過剰生産能力の調整圧力が残るなか、投資の自律的な回復力が弱い状況が続く
‧ 平均設備稼働率はまだ低水準で推移している見込み。鉄鋼業や石炭採掘業の過剰生産能力の調整も長期化の見通し
【 中国製造業の平均設備稼働率 】
85
【 産業別の生産能力淘汰実績・目標 】
(%)
80
75
鉄鋼
石炭
生産能力
12億トン
57億トン
生産量
8億トン
37億トン
過剰生産能力
4億トン
20億トン
67%
65%
2016年から
5年間で
1~1.5億トン
(生産能力の
約8~13%)
2016年から
3~5年間で
5億トン以上
(生産能力の
約9%以上)
363万人(都市部
就業者の0.9%)
442万人(都市部
就業者の1.1%)
稼働率
70
今後の淘汰目標
65
60
2006 07
08
09
10
11
12
13
14
15
(年)
(注)アンケート調査。直近は、2015年8~9月調査時点の値。2010年のデー
タは存在しないため、2009年と2011年の平均値で補間。
(資料)中国企業家調査系統・各年版よりみずほ総合研究所作成
従業者数
(注) 鉄鋼の生産能力は、中国鋼鉄工業協会による。石炭の生産能力は、国家発
展改革委員会の連維良主任による。生産量は国家統計局による。過剰生
産能力=(生産能力)-(生産量)。稼働率=生産量÷生産能力。
(資料) 国務院、中国鋼鉄工業協会、国家発展改革委員会、国家統計局、各種報
道より、みずほ総合研究所作成
28
(7) 住宅投資の回復はプラス材料だが、2017年には息切れする可能性
◯
‧
◯
‧
‧
足元、住宅市況が改善。販売面積に続き、販売価格、住宅開発投資も前年比プラスに回帰
利下げ、住宅ローンの頭金比率の引き下げ、不動産取引にかかる取引税・営業税の減免といった政策テコ入れの影響
ただし、かつてほどの住宅開発投資の高い伸びは期待できないうえ、2017年には息切れする見込み
3級都市などでは住宅在庫水準が依然高止まりしており、新規の住宅投資に踏み切りにくい環境が持続。
住宅価格が高騰している1級都市や一部の2級都市では、住宅建設用地の供給増加方針の下、一定の住宅開発投資の
伸びが期待できるが、住宅購入規制も強化されているため、住宅開発投資が著しく伸びる可能性は低い
【 中国の住宅販売・価格・投資の推移 】
(前年比、%)
【 都市別の新築住宅販売価格(100都市)
住宅販売面積
80
住宅開発投資
70
住宅販売価格
】
(前年比、%)
30
1級都市
25
60
20
50
2級都市
15
40
10
30
5
20
10
0
0
▲5
▲ 10
▲ 10
3級都市
12/01
▲ 20
09
10
11
12
13
14
15
16
(注)グラフ中の破線部分は、住宅販売面積・価格がともに前年比プラスとなっている期間を示す。
(資料)中国国家統計局より、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
13/01
14/01
15/01
16/01
(年/月)
(注)1級都市:北京、上海、広州、深圳の4都市。
(年)
2級都市:天津、重慶、杭州、南京、武漢、瀋陽、成都、西安、大連、青島、寧波、蘇州、
長沙、済南、厦門、長春、ハルピン、太原、鄭州、合肥、南昌、福州の22都市。
3級都市:上記以外の74都市。
(資料) Windより、みずほ総合研究所作成
29
(8)企業の債務拡大の結果、不良債権比率が上昇、社債デフォルトも増加
◯ 世界金融危機後の景気刺激策を契機として、債務の拡大傾向が持続
‧ 非金融部門の債務残高の対GDP比は、2008年末まで150%前後で推移していたが、2009年以降は上昇傾向をたどり、
2015年9月末には248.6%まで上昇。特に、非金融民間企業(国有企業も含む)の債務水準が高い
◯ 不良債権比率の上昇傾向が続き、社債のデフォルトや発行取消も増加。それが投資抑制要因に
‧ 2016年3月末の不良債権比率は1.75%、要注意債権まで含めると5.8%にまで上昇
‧ 2016年3月以降、社債デフォルトが増加。モラルハザード回避のため、国有企業のデフォルトも容認されるように
【 中国の債務残高(非金融部門) 】
(対GDP比、%)
【 中国商業銀行の不良債権 】
2015年9月末:248.6%
250
200
2008年末:148.3%
非金融民間
企業部門
150
50
非金融民間部門
非金融民間企業
+家計部門
0
01/3
家計部門
政府部門
04/3
07/3
10/3
13/3
(年/月末)
(注)2015年9月末時点。
(資料) BISより、みずほ総合研究所作成
(%)
6,000
6
要注意債権残高(左目盛)
総残高
100
(10億元)
5,000
不良債権残高(左目盛)
5
4,000
不良債権比率(右目盛)
4
3,000
不良債権比率+
要注意債権比率(右目盛)
3
2,000
2
1,000
1
0
0
09/3
10/3
11/3
12/3
13/3
14/3
15/3
16/3
(年/月末)
(資料)中国銀行業監督管理委員会、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
30
(9)金融緩和を継続、減税主眼の財政赤字拡大により景気を下支えする展開に
◯
‧
‧
◯
‧
自律的回復力が弱いため、緩和的な金融環境は維持されるも、過度な金融緩和は回避される方針
足元でやや過熱感のみられる住宅市況など物価動向に配慮しながら、利下げや預金準備率引き下げを模索する展開に
中国人民銀行の周総裁は、「成長率目標達成のために過度な金融緩和で経済を刺激する必要はない」と発言
2016年の財政赤字の対GDP比を3.0%に拡大(2015年:2.4%)。財政支出拡大よりも減税・行政手数料減免に力点
企業・家計の負担軽減規模は5,000億元超(対GDP比0.7%)の見込み。ただし、新規投資や消費押し上げに結びつかず、
景気浮揚効果が限定的となる可能性も。景気下振れ時には、財政支出を拡大しテコ入れを強化する余地あり
【 貸出・預金基準金利、預金準備率 】
(%)
24
【 財政収支(一般公共予算) 】
(%)
12
預金準備率(大型金融機関、左目盛)
20
10
16
貸出基準金利(1年物、右目盛)
8
(%)
(前年比、%)
財政赤字対GDP比(左目盛)
3.5
3.0
財政収入伸び率(右目盛)
35
財政支出伸び率(右目盛)
30
2.5
25
2.0
20
12
6
1.5
15
8
4
1.0
10
0.5
5
0.0
0
4
2
預金基準金利(1年物、右目盛)
0
12/1
13/1
14/1
(資料) 中国人民銀行より、みずほ総合研究所作成
15/1
0
16/1 (年/月)
2008
09
10
11
12
13
14
15
16 (年)
(注)2016年は予算ベース。2015年以降財政収入、財政支出いずれも定義が変更されている
ため、それらの伸びについて、どの程度厳密に時系列の比較ができるか不明な点あり。
(資料)中国国家統計局、財政部「关于2015年中央和地方預算執行情况与2016年中央和地方
預算草案的報告」より、みずほ総合研究所作成
31
(10)金融リスクの高まりには警戒が必要
◯ 今後、過剰生産能力解消や国有企業改革に伴い、社債デフォルトや不良債権が増える見通し
‧ 石炭・鉄鋼などの生産能力過剰業種や国有企業では、財務レバレッジが高止まりしている状況。過剰生産能力解消や国
有企業改革に伴い、デレバレッジが進められるにつれて、社債のデフォルトや不良債権が増加する見通し
‧ IMFによると、インタレスト・カバレッジ・レシオが1以下の企業の借入額は、全社の借入金の約14%に相当(2015年)
――― この割合は近年上昇しており、全体的に企業の金利返済負担能力が低下傾向にあることを示唆
◯ 連鎖的なデフォルトが発生し政府の対応能力が疑われる事態となれば、金融リスクが大きく高まる恐れも
【 財務レバレッジ(企業形態別・業種別) 】
(倍)
3.5
【 社債スプレッド 】
(倍)
3.5
12
3.0
3.0
10
2.5
2.5
8
2.0
2.0
6
1.5
工業全体
1.5
工業全体
国有
石炭
1.0
(%)
1.0
鉄鋼
私営
外資
0.5
BBB+
A
4
AA-
2
AA
0.5
0.0
AAA
0
12/01
0.0
96 98 00 02 04 06 08 10 12 14
(年)
(資料) 中国国家統計局より、みずほ総合研究所作成
13/01
14/01
15/01
16/01
(年/月)
96 98 00 02 04 06 08 10 12 14
(年)
(資料) Windより、みずほ総合研究所作成
32
Ⅲ.台湾経済の見通し
~回復に向かうも力強さを欠く展開に~
33
1.台湾経済の見通し ~回復に向かうも力強さを欠く展開に~
◯ 2016年の台湾の実質GDP成長率は前年比+1.1%、2017年は同+1.9%と予測(2015年は同+0.6%)
‧ 先進国の景気回復、中国の在庫調整の進展を背景に輸出は回復に向かうも、勢いを欠く展開になると予測
‧ 総資本形成も回復に向かう。IT産業での先端設備導入の動きが追い風に。ただし、住宅市況の悪化が理由で、民間建設
投資は低迷する見込み。公共投資も2016年は7年ぶりに前年比増加に転じるも、その景気浮揚効果は限定的。輸出の力
強い回復が見込みにくいなか、在庫復元の動きも緩慢なものにとどまると予測
‧ 当面個人消費は、生産性改善のための賃金調整や消費刺激策の息切れで弱含む見込み。輸出・生産の回復につれ、雇
用・所得が改善に向かい、個人消費も持ち直すだろうが、そのペースは鈍いものになると予測
【 台湾経済見通し総括表(暫定値) 】
実質GDP
個人消費
政府消費
総資本形成
内需小計
輸出
輸入
2012年
2.1
1.8
2.2
▲ 3.1
0.6
0.4
▲ 1.8
2013年
2.2
2.3
▲ 0.8
3.2
2.0
3.5
3.4
2014年
3.9
3.3
3.6
4.1
3.6
5.9
5.7
2015年
0.6
2.3
▲ 0.3
0.5
1.5
▲ 0.2
0.9
(単位:前年比、%)
2016年(f) 2017年(f)
1.1
1.9
1.4
1.2
1.4
▲ 0.5
1.1
1.0
1.4
0.9
0.6
2.6
1.2
2.2
(注)予測値はみずほ総合研究所。
(資料)台湾行政院主計総処より、みずほ総合研究所作成
34
2.企業マインドに改善の兆し
◯ 足元、製造業、サービス業の景況感に改善傾向がみられるように。ただし、建設業の景況感は引き続き低迷
◯ 製造業PMIも足元2カ月景況感の境目となる50を上回るように。新規輸出受注の増加が景況感の改善に寄与
【 台湾経済研究院景況感指数 】
110
【 台湾の製造業PMI 】
(2006年=100)
105
製造業PMI
新規輸出受注
6カ月先の景況感
70
製造業
サービス業
建設業
65
100
60
95
55
50
90
45
85
40
80
35
75
30
2014
15
16
(資料) 台湾経済研究院、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
(年)
2014
15
16 (年)
(資料)中華経済研究院、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
35
3.輸出 ~回復に向かうも、緩慢な回復にとどまる見込み~
◯ 台湾の輸出は今後回復傾向に向かうも、そのペースは緩慢なものにとどまる見込み
‧ 台湾の主要輸出相手国・地域の輸入は今後回復に向かうものの、力強さを欠くと予測
‧ 世界の半導体、パネル需要も回復に向かうも、回復の度合いは限定的(Gartnerは、2016年通年の半導体売上高は前年
比▲0.6%と、2015年の同▲2.3%に続き、マイナス成長になると予測[2016年4月時点])
‧ 次世代iPhoneの仕様と売れ行き、中国パネル企業のキャッチアップと過剰生産能力の解消度、台湾企業の中国への生産
拠点移転の動き、貿易摩擦の動向等を引き続き注視する必要あり
【 主要国・地域輸入伸び率 】
10
(%)
予測
【 世界半導体売上高 】
10
8
(前年比、%)
予測
アジア太平洋
日本
欧州
米州
世界
8
6
4
6
2
4
0
2
▲2
米国
ユーロ圏
日本
中国
▲4
▲6
▲8
▲ 10
2015
16
17
【 大型液晶パネル出荷枚数予測 】
0
タブレット
前年比伸び率
ノートPC
前年比伸び率
モニター
前年比伸び率
テレビ
前年比伸び率
(単位:百万枚、%)
2015年 2016年 2017年
209
192
178
▲ 24.0 ▲ 8.1 ▲ 7.3
165
155
145
▲ 9.8 ▲ 6.1 ▲ 6.5
144
136
129
▲ 6.5 ▲ 5.6 ▲ 5.1
264
252
256
7.3 ▲ 4.5
1.6
(資料)中根康夫「大型LCDパネル需給見通しの修正」2016
年4月12日より、みずほ総合研究所作成
▲2
▲4
(年)
(注) 中国は実質通関輸入額前年比伸び率(ドルベース)、それ
以外は実質財貨・サービス輸入額前期比年率。ユーロ圏は
2016年1~3月期以降が予測値。
(資料)各国・地域統計より、みずほ総合研究所作成
2014
15
16
17 (年)
(資料) “WSTS has published the Q4 2015
semiconductor market figures,” 25. February
2016より、みずほ総合研究所作成
36
4.総資本形成(1)IT関連企業等の設備投資計画
◯ 2016年の主要ITメーカーの資本支出計画は、総じて2015年に投資が計画よりも縮小されたことも手伝って、前年比増加。
輸出の力強い回復が期待しにくい環境下ではあるが、競争力強化を目的とした民間設備投資は行われ、総資本形成の
持ち直しに寄与すると予測
‧ なお、下記計画の中には、台湾以外に投じられるもの(例えばAUOの昆山の第6世代工場等)も含まれている
【 台湾主要ITメーカー等の資本支出計画に関する報道 】
企業
TSMC
UMC
ASE
2014年
95.22億USD
14億USD
8.66億USD
Nanya
58億NTD
2016年
90~100億USD
22億USD
2015年以上
100~120億
70~80億NTD
NTD?
38.4億NTD
252.53億NTD
Inotera
220億NTD
約560億NTD
Winbond
AUO
Innolux
130億NTD
39億NTD
213.62億NTD 334億NTD
205億NTD
245億NTD
力成科技 108億NTD
2015年
81.23億USD
19億USD
5.83億ドル
出所等
2016年4月14日法人説明会
2016年4月27日法人説明会資料
2016年4月29日法人説明会
『經濟日報』2016年2月3日、
『中央通訊社』2016年2月2日
2016年4月27日法人説明会
アナリスト見込み・予測(『經
280億NTD以下
濟日報』2016年2月24日)
76億NTD
2016年1月29日法人説明会
450億NTD
『工商時報』2016年2月15日
350億NTD
『工商時報』2016年2月15日
(資料)上記「出所等」
37
(2)稼働率関連指標
◯ 主要業種の稼働率は、やや余裕ある状況
◯ 輸出の力強い伸びも期待しにくいなか、生産設備のひっ迫を理由として設備投資が積極的に行われる状況にはない
【 2016年4月時点の製造業生産指数とピーク時の数値の比較 】
業種
製造業
化学原料
電子部品
化学製品
基本金属
医薬品
その他
金属製品
ゴム製品
食品
パルプ・紙・紙製品
機械修繕
非金属鉱物製品
電機
生産ピーク 15年10月 16年4月
時期
ピーク時=100
15年3月
92.8
90.7
10年5月
93.1
93.5
14年9月
92.1
90.8
11年3月
91.4
90.7
11年3月
80.4
89.7
16年2月
87.5
89.4
16年2月
94.3
86.7
14年12月
85.8
86.5
11年3月
87.8
85.2
11年1月
86.3
83.8
05年3月
15年12月
05年1月
06年3月
85.2
76.3
81.1
69.8
83.0
81.4
74.6
74.3
業種
石油・石炭製品
プラスチック製品
家具
機械設備
その他輸送機器
タバコ
繊維
飲料
自動車・同部品
コンピュータ・電子・
光学製品
木竹製品
印刷
アパレル・同付属品
皮革・毛皮・同製品
生産ピーク 15年10月 16年4月
時期
ピーク時=100
06年5月
81.2
73.4
05年3月
75.1
73.2
05年1月
79.8
71.7
10年12月
75.5
71.6
08年4月
78.9
70.2
10年12月
75.3
68.5
05年3月
70.5
68.1
10年12月
79.8
67.1
05年3月
79.2
65.9
11年8月
75.7
65.6
05年4月
05年10月
05年3月
05年3月
68.1
70.3
35.9
26.6
59.9
59.1
26.7
25.4
(資料)台湾経済部統計処より、みずほ総合研究所作成
38
(3)在庫動向
◯ 在庫調整は進展しつつあるが、需要の力強い回復見込みが立たない中、在庫復元の動きが本格化するには時間がかか
ると予測
【 在庫循環図 】
①製造業全体
5
15Q1
▲ 10
▲5
0 13Q1
16Q1
10
10
12Q1
▲ 10
10
15
12Q1
15Q1
10
14Q1
0
10
▲ 10
16Q1
13Q1
30
20
16Q1
15Q1
10 20
12Q1
30
40
出
荷
指
数
伸
び
率
50
%
X軸 在庫指数伸び率
40
Y
軸
15Q1 10
14Q1
0
▲ 20
▲ 20
(注) 前年比。 (資料)台湾経済部統計処より、みずほ総合研究所作成
16Q1
⑥自動車・同部品
X軸 在庫指数伸び率
20
Y
軸
40
出
荷
指
数
12Q1
伸
び
率
%
▲ 10
⑤機械
X軸 在庫指数伸び率
50
0
13Q1
▲ 20▲ 10 0
▲ 10
5
出
荷
指
数
伸
20 び
率
%
Y
軸
▲ 15
④基本金属
10
13Q1
0
▲ 15▲ 10 ▲ 5 0
▲5
▲ 10
14Q1
15Q1
5
14Q1
X軸 在庫指数伸び率%
20
Y
軸
15
出
荷
指
数
伸
び
率
%
14Q1
0
X軸 在庫指数伸び率
20
Y
軸
10
③化学原料
②電子部品
X軸 在庫指数伸び率%
15
▲ 10
▲ 10
13Q1
▲ 20
0
10
12Q1
出
荷
指
数
20 伸
び
率
%
11Q1
15Q1
20
14Q1
0
0
▲ 20
20 13Q1
Y
軸
出
荷
指
数
伸
び
40 率
%
16Q1
▲ 20
16Q1
39
(4)民間建設投資 ①住宅市況の悪化が持続
◯ 台北市を中心に、住宅価格の下落傾向が持続
◯ 住宅取引量、新規建設もリーマンショック後に近い水準まで縮小
◯ 住宅市場信頼感指数の下落ペースは緩やかになったものの、依然下落傾向に歯止めがかかっていない状況
【 信義住宅価格指数 】
230
【 国泰住宅指数 】
(10年平均
=100)
250
(09Q1=100)
台湾全体
新北市
新竹地区
高雄市
210
190
台北市
桃園県
台中市
200
(10年平均
=100)
取引量(左)
新規建設(左)
取引価格(右)
160 160
140 140
120
100
150
170
【 住宅市場信頼感指数】
80
150
100
60
130
110
20
0
08
09
10
11
12
13
14
15
16 (年)
(資料)信義房屋、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
100
総合
現在
6ヵ月後
80
40
50
90
120
0
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16(年)
(注)季節調整値(みずほ総合研究所推計)。
(資料)国泰建設、CEIC Dataより、みずほ総合研究所
作成
60
40
10
11
12
13
14
15 (年)
(注)2015年第1、第3四半期は、それぞれ同年上半期、下半
期の値
(資料)内政部営建署、CEIC Dataより、みずほ総合研究所
作成
40
(4)民間建設投資 ②投資の低迷が持続する可能性大
◯ 金融緩和に伴う住宅ローン金利の低下により、住宅ローンの新規融資額の伸びがプラスに転化するという好材料もみら
れるが、住宅価格の調整は今後も続くと予測
‧ ①在庫水準の高さ、②住宅取得コストの高止まり、③「房地合一課税」を背景とした住宅購入価格下落期待、④中国人投
資家による住宅投機期待の低下などがその理由
◯ こうした状況の下、建設許可面積の減少傾向が続いており、リーマンショック後の水準に近づきつつある状況。民間建設
投資の低迷が続く可能性は高い
【 住宅ローン金利・伸び率 】
4.5
(%)
120
住宅ローン新規融資額
伸び率(右目盛)
4.0
100
3.5
【 房地合一課税が住宅購入価格に
与える影響 】
【 住宅建設・所有許可面積 】
7
上昇効果あり
17.1
6
80
住宅ローン金利
(左目盛)
3.0
60
2.5
40
2.0
20
1.5
0
1.0
▲ 20
0.5
▲ 40
0.0
▲ 60
2009 10
11
12
13
14
15
16
(年)
(注)五大銀行(台銀、合庫銀、土銀、華銀、一銀)のデータ。
(資料)台湾中央銀行、CEIC Dataより、みずほ総合研究所
作成
(百万m2)
下落効果あり
24.3
双方の効果あり
5
4
28.5
影響なし
3
11.1
2
わからない
18.9
建設許可
所有許可
1
0
10
20
30 (%)
(注)調査時点は2016年1月、調査対象は2015年下半期に住宅購入
意欲を持っていた者。
(資料)台灣內政部營建署「住宅需求動向調查 民國 104 年下半年」
2016年4月12日より、みずほ総合研究所作成
0
02
04
06
08
10
12
14
16 (年)
(資料)台湾内政部営建署、CEIC Dataより、みずほ総合
研究所作成
41
(5)公共投資 ~久しぶりに前年比プラスになるも、景気浮揚効果は限定的~
◯ 2016年の公共投資は足元やや弱い状況とみられるが、通年では前年比+3.5%と、7年ぶりにプラスに転じる見込み(主
計総処予測値)
◯ ただし、経済に対する公共投資の規模は小さく、2016年の実質GDP成長率に対する寄与度は0.1%Ptにとどまる見込み
◯ 蔡英文政権は、馬英九政権下における潜在的政府債務の増大を批判してきたうえ、公共債務法の縛りもあるため、経済
活性化のために公共投資を大幅に積み増す可能性は低い
‧ イノベーション誘発につながる分野に財政資金の再配分を図る構え
【 公共投資の実質伸び率 】
15
(前年比、%)
予測
政府
10
公営
公共投資
5
0
▲5
▲ 10
▲ 15
2008
10
12
14
16 (年)
(注)寄与度、および、2016年の公共投資全体の伸び率は、台湾行政院主計総処の公営企業、政府部門の投資に
関する予測値から推計。
(資料)台湾行政院主計総処より、みずほ総合研究所作成
42
5.個人消費(1)労働需給は依然軟調
◯ 経済が振るわぬなか、就業者数の増加ペースが鈍化。失業率(季節調整値)をみても、2015年3月以来の緩やかな上昇
傾向に歯止めがかかっていない状態(2016年4月は4.0%)
◯ 雇用循環図をみても、依然として被雇用者数の伸び抑制、労働時間の短縮が続いていることがうかがえる
30
【 失業率・就業者数増減 】
(千人)
【 雇用循環図 】
(%)
横軸 被雇用者数伸び率%
3
7
20
6
10
5
2
1
0
4
0
就業者数前月比増減
(左目盛)
失業率(右目盛)
▲ 10
▲ 20
3
▲3
1
▲1
16Q1
▲1
2
▲2
▲ 30
09
10
11
12
13
14
15
1
16 (年)
(注) 季節調整値。就業者数前月比増減は、3カ月移動平均。
(資料) 台湾行政院主計総処、CEIC Dataより、みずほ総合研究所
作成
縦
軸
労
働
時
3間
伸
15Q1 び
率
%
▲3
(注) 前年比。
(資料) 台湾行政院主計総処、CEIC Dataより、みずほ総合
研究所作成
43
(2)賃金の伸びもマイナスに転化
◯ 2016年1~3月期の賃金は名目、実質ともに前年比マイナスに転化
‧ 工業、サービス業いずれも賃金の伸びがマイナスに
‧ 名目経常賃金の伸びは抑えられていないが、ボーナスや残業などの非経常賃金が減少
【 賃金上昇率 】
年
13
14
15
16
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
Q2
Q3
Q4
Q1
全体
▲ 1.7
0.7
0.9
1.3
5.5
2.3
5.0
1.1
5.2
1.8
1.4
0.9
▲ 1.6
名目賃金上昇率
平均賃金
経常賃金
工業 サービス 全体 工業 サービス
▲ 2.4
▲ 1.2
0.8
1.1
0.5
1.1
0.3
0.7
1.1
0.3
0.6
1.1
1.3
1.4
1.2
2.1
0.8
1.3
1.1
1.4
2.5
7.7
1.3
1.1
1.4
2.1
2.4
1.6
1.2
1.9
6.6
3.7
2.2
1.6
2.5
0.7
1.3
2.2
1.5
2.7
6.9
3.9
1.6
1.1
1.9
1.6
2.0
1.5
0.8
1.9
2.1
0.8
1.0
0.9
1.0
0.3
1.3
1.2
1.3
1.1
▲ 1.5
▲ 1.8
1.5
1.4
1.5
全体
▲ 3.5
▲ 0.1
0.9
0.8
4.7
0.7
3.5
0.2
5.7
2.5
1.6
0.5
▲ 3.4
(単位:前年比、%)
実質賃金上昇率
平均賃金
経常賃金
工業 サービス 全体 工業 サービス
▲ 4.2
▲ 3.0 ▲ 1.0 ▲ 0.7
▲ 1.3
0.3
▲ 0.5 ▲ 0.1
0.4
▲ 0.5
0.5
1.1
1.2
1.3
1.1
1.6
0.2
0.7
0.6
0.8
1.7
6.9
0.5
0.3
0.6
0.5
0.8 ▲ 0.0 ▲ 0.4
0.2
5.1
2.2
0.6
0.1
1.0
▲ 0.1
0.5
1.3
0.6
1.8
7.5
4.5
2.2
1.7
2.5
2.3
2.7
2.2
1.5
2.7
2.3
1.1
1.3
1.2
1.3
▲ 0.1
1.0
0.9
0.9
0.8
▲ 3.2
▲ 3.5 ▲ 0.2 ▲ 0.3
▲ 0.2
(資料)台湾行政院主計総処、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
44
(3)雇用・賃金、個人消費の力強い回復は期待薄
◯ 製造業雇用PMIは足元2カ月50以上となっているが、製造業の単位労働コストが依然としてプラス圏で推移しているうえ、
輸出の回復が緩慢なものにとどまることから判断して、賃金の調整はしばらく続く。力強い消費の回復は期待しにくい
‧ 2015年10月に馬政権が打ち出した消費刺激策は、一部延長されるも、2016年6月末で終了。蔡英文政権は消費刺激策よ
りも経済体質の改善を重視する方針で、政策による個人消費の力強い回復も期待薄
◯ 天候不順による食品価格上昇の影響は漸減する見込み。今後、原料価格の上昇がどの程度台湾のインフレや交易条件
の悪化を通じて個人消費に影響を与えるか、要注視
【 製造業雇用PMI 】
【 単位労働コスト 】
70
20
65
15
60
10
55
5
50
0
【 物価上昇率 】
(前年比、%)
4
0
▲2
▲6
実質賃金
▲ 15
35
▲ 20
30
▲ 25
2014
15
16 (年)
(資料)中華経済研究院、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
卸売物価指数
▲4
▲ 10
40
コアCPI
2
▲5
45
(前年比、%) 消費者物価指数(CPI)
▲8
単位労働コスト
▲ 10
▲ 12
10
11
12
13
14
15
16 (年)
(注)製造業の数値。
(資料)台湾行政院主計総処、CEIC Dataより、みずほ
総合研究所作成
14
15
16 (年)
(資料)台湾行政院主計総処、CEIC Dataより、みず
ほ総合研究所作成
45
Ⅳ.蔡英文政権の経済政策と今後の課題
~イノベーション、持続可能性、安心・安全を重視~
46
1.「完全執政」を手に入れた民進党・蔡英文政権
◯
‧
‧
◯
2016年1月の総統選挙、立法委員選挙で民進党がいずれも勝利を収め、「完全執政」が可能に
民進党の蔡英文・陳建仁ペアで56.1%の得票率を確保
立法院でも113議席中、民進党が68議席を掌中に収め、初めて過半数の議席を確保
民進党の勝因は、「国民党の実績に対する不満」(回答率43.9%、財団法人台湾智庫「2016総統大選後:台湾民衆対新政
局的期待 民調記者会」2016年1月21日)
【 2016年1月総統選挙得票率 】
宋楚瑜・徐欣瑩
157万6,861票
12.8%
【 立法院政党別獲得議席数 】
政党
朱立倫・王如玄
381万3,365票
31.0%
蔡英文・陳建仁
689万4,744票
56.1%
(注)前者は総統候補、後者は副総統候補。
(資料)台湾中央選挙委員会選挙資料庫網站より、みずほ総合研究所作成
民主進歩党
中国国民党
親民党
時代力量
無党籍
無党団結連盟
台湾団結連盟
合計
2012年選挙
議席数
シェア
40
35.4
64
56.6
3
2.7
-
-
1
0.9
2
1.8
3
2.7
113
100.0
(単位:議席、%)
2016年選挙
議席数
シェア
68
60.2
35
31.0
3
2.7
5
4.4
1
0.9
1
0.9
0
0.0
113
100.0
(資料)台湾中央選挙委員会選挙資料庫網站より、みずほ総合研究所作成
47
2.蔡政権に対する期待の所在
◯ 蔡英文政権に対して台湾有権者が期待しているのは、経済発展に代表される生活の質の向上、両岸関係の維持、安心・
安全の確保など
【 蔡英文総統就任後に優先処理を希望する事項・問題 】
経済発展
両岸関係の維持
食品安全の維持
賃金水準の引き上げ
就業改善・失業減少
「居住正義」の実現
貧富の差縮小
高齢者長期介護の推進
国会改革の推進
その他
意見なし
最優先項目
29
7
10
11
7
5
6
4
6
N.A.
9
(単位:%)
優先3項目
51
29
25
23
21
20
18
17
15
22
9
(注)調査時点は、2016年1月26~27日。優先3項目は、重視する3項目について複数回答を求めたもの。
(資料) TVBS民意調查中心「民眾對蔡英文上任總統期望民調」2016年1月27日(http://www.tvbs.com.tw/export/sites/tvbs/
file/other/poll-center/0501262.pdf)より、みずほ総合研究所作成
48
3.馬英九政権期の経済パフォーマンス (1)未達に終わった「経済建設633目標」
◯ 未達に終わった馬英九総統の「経済建設633目標」
‧ 「経済建設633目標」とは、2期8年のうちに年平均実質GDP成長率を6%以上、1人当たりGDPを3万ドル以上に引き上げる
とともに、失業率を3%以下に引き下げるという目標
――― なかでも15~24歳の失業率は2015年時点で12.1%と高率(2007年は10.7%)
【 台湾の経済パフォーマンス 】 2015年
(前年比%)
12
陳水扁政権期
10
年平均成長率
4.8%
8
22,317ドル
2007年
17,814ドル
2015年
3.8%
6
4
(米ドル)
24,000
20,000
1人当たりGDP
(右目盛)
16,000
実質GDP成長率
(左目盛)
12,000
失業率
(左目盛)
8,000
2
4,000
2007年
3.9%
0
0
馬英九政権期
年平均成長率
2.8%
▲2
▲4
-4,000
-8,000
2000
02
04
06
08
10
12
14(年)
(注) 失業率は年平均値。
(資料) 台湾行政院主計総処より、みずほ総合研究所作成
49
(2) 実質賃金の低迷
◯ 近年の実質賃金のピークは2003年。世界金融危機の影響もあり、馬英九政権期に実質賃金は低迷を続け、2003年の水
準を上回ることができなかった
◯ 資本集約型産業への移行に伴い、減価償却(固定資本減耗)の負担が増大し、雇用者報酬の拡大を抑制。資本集約型
産業の業況が振るわず、賃金の伸びが抑制されることに
‧ 付加価値の向上が今の台湾には必要なことを示唆
【 台湾の実質賃金指数 】
102
【 台湾の国民所得分配状況 】
(2003年=100)
60
100
(%)
雇用者報酬
固定資本減耗
営業余剰
間接税-補助金
50
98
2015年
99.4
96
94
40
30
92
20
90
10
88
0
86
2000 02
04
06
08
10
12
14 (年)
(注) みずほ総合研究所推計値。工商業部門の1人当たり賃金をCPIで実質化。
(資料) 台湾行政院主計総処より、みずほ総合研究所作成
1990
93
96
99
2002
05
08
11
14 (年)
(資料) 台湾行政院主計総処より、みずほ総合研究所作成
50
(3)所得格差に対する台湾市民の意識の高まり
◯ 馬英九政権期に所得格差が開いたわけではないが、高止まりの状態が持続
◯ 意識の上では、格差が拡大しているとの認識が広がっている模様
‧ 自らを中間層と位置付ける人の割合が減少、貧富の差が非常に深刻だとの認識をもつ台湾市民も過半を超える状況(林
宗弘「台灣階級不平等擴大的原因與後果」(『台灣經濟預測與政策』中央研究院經濟研究所)2015年第45卷第2期)
‧ 住宅取得コストは長期的にみて上昇傾向が持続。とりわけ失業率が高く、所得が低い若年層にとっては、格差が意識され
やすい状態と推察される
【 台湾の住宅取得コスト 】
【 台湾の所得格差 】
(倍)
(%)
(倍)
50
10
9
8
7
6
5
4
政府による所得再分配前
所得移転後
3
9
45
8
40
7
35
6
30
5
25
4
20
3
2
2
1
1
0
0
1992
96
2000
04
08
12 (年)
(注) 世帯可処分所得上位20%の可処分所得÷同下位20%の可処分所得。
(資料) 台灣行政院主計總處『103年家庭收支調查結果綜合分析』(http://win.dgbas.gov.t
w/fies/a11.asp?year=103)より、みずほ総合研究所作成
住宅価格年収比(左目盛)
住宅ローン返済額対月収比
(右目盛)
15
10
5
0
04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年)
(注)住宅価格年収比=住宅価格の中央値÷世帯年間可処分所得の中央値、住宅ローン
対月収比=住宅ローン月間返済額の中央値÷世帯月間可処分所得の中央値×100。
(資料)台湾内政部不動産資訊平台より、みずほ総合研究所作成
51
(4) 馬英九政権の「中国活用型発展戦略」の経済効果とその限界
◯ 馬英九政権の「中国活用型発展戦略」(①対中経済交流の「正常化」、②ECFA、③政府による産業協力推進)は、対中経
済交流に係るコスト削減、対中経済交流の選択肢の拡大、中国人観光客の流入増などのメリットを創出
‧ 中国人来台者がもたらした外貨収入は、2008年の136億台湾ドル(GDP比0.1%)から2014年には1,874億ドル(同1.2%)に
拡大(みずほ総合研究所試算)
◯ ただし、中国市場における台湾製品のシェアは、韓国製品に劣後する状態にあり、対中輸出競争力の低下を補って余り
あるほどの効果は、「中国活用型発展戦略」にはなかった模様。台湾の産業競争力の強化が課題に
【 中台間の人的往来 】
(千人)
【 中国の輸入に占める台湾・韓国製品のシェア 】
6,000
14
(%、%Pt)
12
5,000
10
4,000
8
その他
経済活動
3,000
《ECFAアーリーハーベスト
対象商品のみの場合》 (単位:%、%Pt)
台湾 韓国
差
2011年 11.5 17.4 ▲ 5.9
2012年 11.6 17.9 ▲ 6.3
2013年 12.0 18.0 ▲ 6.0
2014年 12.1 18.1 ▲ 6.0
2015年 11.8 18.2 ▲ 6.4
6
中国人台湾入境者数
観光
4
台湾人中国入境者数
2
2,000
0
1,000
台湾-韓国
台湾
韓国
▲2
▲4
0
2008
09
10
11
12
13
(資料) CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
14
15 (年)
2000
03
06
09
12
15 (年)
(資料)中国海関総署、CEIC Data、台灣經濟研究院「各國商品進出口統計資料庫」 より、
みずほ総合研究所作成
52
4.蔡英文政権の経済政策(1)「五大イノベーション研究開発計画」
◯ 「五大イノベーション研究開発計画」の力点は、①トータルソリューションの提供やシステム全体の設計のための研究開発、
②先進国の先端的なイノベーションセンターとのリンケージ強化。地域間の均衡的発展にも配慮
‧ 産業発展基金の規模拡大と機能強化、財政投入の拡大、大学教育・学生による出資規制の緩和、IPO規制の緩和、個人
所得税の最高税率の見直しなどを検討する見込み
【 「五大イノベーション研究開発計画」の概要 】
グリーン
エネルギー
技術
・エネルギー自給率の低さ(3%弱)の克服、世界のグリーンエネルギー産業の今後の発展性の高さ、2025年までの脱原発目
標の提示がグリーンエネルギー技術重視の理由
・台南での「沙侖創新緑能科技園区」を建設(周辺の精密機械メーカー、グリーンテクノロジー関係業者、大学・政府系機関の
活用)
・台湾海峡での風力発電、台湾南部での太陽光発電、宜蘭県での地熱発電・太平洋海流発電
スマート機械
・次世代産業(航空宇宙、潜水艦、精密医療器材、IoT等)の発展、インダストリー4.0の推進に必要な基盤産業として「スマート
機械」を重視
・機械産業の集積地である台中を「スマート機械」のイノベーションの中心として選択
アジアシリコン
バレー計画
・IT分野を中心に、世界の先進的なイノベーションセンターと台湾のリンケージを強化。それにより、台湾をインダストリー4.0、
IoT、ビッグデータ産業の新たな集積地にすることを企図
・桃園を中核拠点として選択。IoTの応用実験舞台となる桃園空港の存在、台北・新竹の間に位置する優位性、多様な業種の
存在がその理由
バイオ医薬
・台湾の「アジアバイオ・医薬研究開発産業センター」化が目標
・米国、スイス、ベルギー、スウェーデン、オランダなどとのリンケージ強化を図る方針
・クラスター形成を目指すのは、台北南港(バイオテクノロジーのイノベーションと新薬開発)、新竹北部(ハイエンドの医療器
材、バイオ製剤)、中部科学園区(精密医療器材・検査用器材)、南部科学園区(骨・歯用精密器材を重視)
国防産業
・兵器の自己調達能力の向上による自主防衛能力の維持・強化、軍事技術開発の強化による将来の民生転用と産業高度化
を企図
・台中・台南・桃園中央科学院を航空宇宙産業、高雄・屏東・宜蘭を船舶産業、台北・新竹を情報セキュリティ産業の拠点化
(資料) 蔡英文、陳建仁競選總部「五大創新研發計畫」( http://iing.tw/policies/ )より、みずほ総合研究所作成
53
(2) 「五大社会安心計画」
◯ 「五大社会安心計画」は、馬英九政権に対する不満を意識した社会・経済政策
‧ 長期介護システムは社会保険方式ではなく税方式とし、不動産交易税・相続税・贈与税等を固定財源とする案を例示
【 五大社会安心計画の概要 】
安心住宅計画
・2期8年中に20万戸の公営賃貸住宅を提供(台湾の全住宅ストックの約2.5%に相当)
・土地コストを建設コストに反映させないことにより、賃料を安価に抑制
・長期低利融資により資金を調達し、賃料収入で償還することが基本方針
食品安全計画
・ISO22000(食品安全マネジメントシステム)、HACCP(Harzard Analysis and Critical Control Point、危害要
因分析に基づく必須管理点)などの国際規格の採用促進、強制的なトレーサビリティ制度、産地表示制
度の全面展開など
コミュニティケア
計画
・託児サービスの公共化推進(保母に対する職業訓練・支援サービス充実による託児サービスの量・質
の向上、未使用教室等を活用した公共幼稚園・非営利幼稚園の供給拡大、学童放課後保育サービス
の普及等)
・コミュニティ型長期介護サービスの普及(「予防介護」の推進、「小規模多機能型」の統合介護サービス
センターの整備、長期介護のための公的支出拡充等)⇒「長照十年2.0版」を策定予定
・上記サービスの拡充を通じた雇用の創出
年金永続計画
・目標:高齢者のベーシックニーズの充足、年金収支の永続的なバランス確保
・原則:漸進的調整、制度の簡素化、適度な退職年齢の引き上げ、所得代替率の漸進的合理化
・「国家年金改革委員会」「年金国是会議」の開催と職業による不平等、世代間不公平の解消
治安確保計画
・マフィア・銃問題、ドラッグ、詐欺、婦女・児童への暴行問題の解決
(資料) 蔡英文、陳建仁競選總部「五大社會安定計畫-解決問題的政府,安居樂業的生活-」(http://iing.tw/policies/fssp)等より、みずほ総合研究所作成
54
(3) 財政政策
◯ 財政規律に関しては、今後の債務の増加率は過去3年間の平均経済成長率以下に抑制、中央政府の公共投資は県市を
跨ぐものを優先するとの方針等を発表
‧ 2016年3月末時点の政府債務残高(公共債務法の規定対象)は6.6兆台湾ドル(2015年の対GDP比約40%)、潜在的な政
府債務残高は2015年6月末現在18兆台湾ドル(同1.1倍)
◯ 財政制約下、社会保障の拡充、インフラの整備を図る必要あり。その負担と受益の再調整が蔡英文政権の大きな課題
‧ 長期介護のために遺産・相続税を10%から20%に、営業税を5%から5.5%に上げるとの意見も
【 台湾の潜在的政府債務残高の推計値(2015年6月末) 】
旧軍人・公務員・教員退職金
公務員退職基金
労工保険
公務員・教育保険給付
国民年金保険
軍人保険
農民健康保険
地方政府等積立不足健保等
保険料補助金および退職公務員
・教員優遇預金の金利差
合計
合計
56,526
27,673
87,421
1,198
4,100
393
1,057
(単位:億台湾ドル)
中央政府 地方政府
24,953
31,573
11,531
16,142
87,421
-
1,198
-
4,100
-
393
-
1,057
-
681
43
638
179,049
130,696
48,353
(資料)台灣行政院主計總處 「105年度中央政府總預算案」2015年8月31日( http://www.dgbas.gov.tw/ct.asp?xItem=380
90&CtNode=6184&mp=1 )より、みずほ総合研究所作成
55
(4)労働政策、エネルギー政策等
◯ 長時間労働、低賃金、非正規雇用の問題などの改善を公約
◯ 例えば、時間外割増賃金の引き上げ、「責任制」の乱用防止、「最低工資法」の制定による労働者・同家族の最低生活水
準の保障、「同一労働・同一賃金」などを盛り込んだ「派遣労工専法」の制定、パートタイマーの権利保護(失業給付・育児
給付・高齢者給付等)を定めた「部分工時労工保護」関連立法の実現、中高齢者の就業環境の整備を目的とした「中高齢
就業専法」の推進
◯ 再生エネルギーの普及を通じた脱原発政策を推進する予定。安定供給と電力価格の上昇抑制が課題
‧ 2月29日、蔡英文総統は民生用小口電力契約者の電気料金を今後10年は値上げせずと発表
【 蔡英文政権のエネルギー政策概要 】
【 台湾の電力供給構成 】
(10億kW)
●2025年までに脱原発を実現
・第4原発の建設停止、第1~3原発の期限どおりの退役
●発電量に占める再生エネルギーのシェア拡大
・現在の4%から2025年に20%に引き上げ(500億kW程度)
●節電推進
・原発1基分節電運動の推進
●電業法改革の推進
・発電・送電・配電・小売の分割化
(資料) 蔡英文、陳建仁競選總部「新能源工作坊首場會議結束 提出開發綠能及節電具
體目標」2015年4月18日より、みずほ総合研究所作成
(%)
300
6
250
5
コジェネ
原子力
天然ガス
200
4
150
3
100
2
石油
石炭
水力
太陽光
50
1
風力
0
0
再生エネルギー
シェア(右目盛)
2001
03
05
07
09
11
13
15 (年)
(資料) 台湾経済部能源局より、みずほ総合研究所作成
56
(5)通商政策の行方 ①対中経済関係
◯ 蔡英文総統は、「92年会談」とそこで「小異を残して大同につく」との共通認識が形成されたことを「歴史的事実」として「尊
重」すると発言。両岸間の対話と意思疎通に関しては、「現有のメカニズムを維持するよう努力する」との方針を示す
◯ ただし、「92年コンセンサスは歴史的事実」との中国側の認識とは開きがある状態。蔡総統は「一つの中国」の認識に基づ
く「中華民国憲法」、「国家統一前」の往来について規定した「両岸人民関係条例」に依拠して「両岸の事務を処理」すると
述べたものの、今後の方向性は「中華民国憲政」や台湾の民主の原則等の政治的基礎に立って決めることを示唆
◯ 経済交流が大きく後退する可能性は低いが、ECFAの後続協議など、新たな取り組みは行いにくい環境に
【 両岸関係に関連する蔡総統就任演説の内容 】
●中華民国憲法によって私は総統に当選しており、中華民国の主権と領土を守る責任がある。東シナ海・南シナ海の問題
については争いを棚上げし、共同開発を主張する。
●両岸間の対話と意思疎通について、我々も、現有のメカニズムを維持するよう努力する。1992年の両岸両会は、相互理
解、小異を残して大同につくという政治的考えを堅持し、意思疎通・協議を行い、若干の共通の認識と了解に達しており、
私はこの歴史的事実を尊重する。1992年以降、20年余りの双方の交流・協議により蓄積され形成されてきた現状と成果
を両岸はともに大切にし、守るべきであり、かつ、この既存の事実と政治的基礎のうえで両岸関係の平和的で安定的な
発展を引き続き推進していくべきである。また、新政府は、中華民国憲法、両岸人民関係条例、および、その他の関連
法律に依拠して両岸の事務を処理していく。両岸の二つの執政党は歴史の重荷を下ろし、良性な対話を行い、両岸人
民を幸せにしなければならない。
●私が言う既存の政治的基礎とは、次のカギとなる要素を含んでいる。第一に、1992年両岸両会会談の歴史的事実と小
異を残して大同につくという共同認識が歴史的事実であること、第二に、中華民国の現行憲政体制、第三に、両岸の過
去20年余りの協議と交流・インタラクションの成果、第四に、台湾の民主の原則と普遍的な民意、である。
(資料) 「中華民國第14任總統蔡英文女士就職演說」(總統府『新聞稿』2016年5月20日、http://www.president.gov.tw/Default.aspx?tabid=131&itemid=37408&rmid=514)より、みずほ総合研究所
作成
57
(6)通商政策の行方 ②その他の国・地域との関係
◯ 「これまでのように単一市場に過度に依頼する状態に別れを告げ」、対外経済交流のレベル向上と多元化を進める方針を
就任演説で発表
‧ TPP、RCEPなどのマルチ・バイの経済協力・自由貿易交渉に積極的に参画する構え。「新南向政策」も改めて提起。米国、
日本、欧州などの友好的な民主国家との関係を引き続き進化させていくとも発言
◯ 中国が台湾と他国との交流拡大に対してけん制を強める可能性も
【 主要通商・外交政策に関する公約 】
【 TPPへの加入・不加入が台湾経済にもたらす経済的影響 】
(単位:百万米ドル、人、%)
●貿易多元化の推進(TPP、RCEP等)
加入した場合
不加入の場合
●国際法・国連海洋法条約の遵守と航行の自由の尊重
増減
増減
●米国や日本、欧州など理念が近い民主的国家との
パートナーシップ強化の重視
・二国間の経済・文化面でのつながり拡大、地域の安全
保障、地域経済統合に関する実質的な対話への参加
・欧州とのイノベーション、ハイテク、グリーンエネルギー、
農業などの領域での協力推進
●「新南向政策」の推進
・東南アジア諸国やインドとの関係強化。台湾企業の直
接投資だけでなく、より広範な領域での連携を強化
(資料)蔡英文、陳建仁競選總部「民主進步黨29週年黨慶外交使節酒會蔡英文主席致詞
全文」 2015年9月22日( http://iing.tw/posts/142 )等より、みずほ総合研究所作成
増減率
増減率
実質GDP
+7,801
+1.95
▲1,091
▲0.27
就業者数
+65,219
+0.65
▲7,038
▲0.07
輸出額
+15,844
+5.65
▲394.31
▲0.13
輸入額
+16,351
+7.61
▲591.66
▲0.28
(注) 物品貿易は全品目開放、サービス貿易は関税率換算で2/3引き下げのケース。
(資料) 台灣經濟部「我國推動加入「跨太平洋夥伴協定(TPP)」之經濟影響評估報告」20
13年10月( http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1
&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwit47iTnePMAhUlLaYKHcITCcwQFggbMAA&url=htt
p%3A%2F%2Fwww.trade.gov.tw%2FApp_Ashx%2FFile.ashx%3FFilePath%3D..%2FFiles%
2FDoc%2Feaded980-aaaf-477f-8650-28d110201ae3.pdf&usg=AFQjCNGz4IG0wdejj7AIZpaxxDX4I6AXA&bvm=bv.122448493,d.dGY )より、みずほ総合研究所作成
58
留意事項
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信頼に足り且つ正確であると判断した情報に基づき作成されておりますが、弊社はその正確性・確実性を保証するものではあ
りません。本資料のご利用に際しては、ご自身の判断にてなされますようお願い申し上げます。
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