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民間運営の有料道路
INFRASTRUCTURE SEPTEMBER 18, 2014 RATING METHODOLOGY 民間運営の有料道路 Privately Managed Toll Roads 概要 目次: 概要 1 格付対象について 3 格付手法について 5 主要格付要因 9 格付マッピング表の前提と限界、およ びその他の格付上の考慮事項につい ての議論 25 他の格付上の考慮事項 26 結論:マッピング表に基づく格付結果 27 のまとめ 付録 A:民間運営有料道路の格付マッ 28 ピング表 付録 B:民間運営による有料道路 – マ 33 ッピング結果のサンプル 付録 C:建設中の有料道路およびラン プアップリスク:格付マッピング表以外 37 の追加考慮事項 付録 D:管理車線プロジェクト:固有の 39 格付考慮事項 付録 E:IFRS における会計上の考慮事 40 項 付録 F:車線キロあたりの AADT 計算 および予測 41 ムーディーズの関連リサーチ 43 コンタクト: 東京 本格付手法は、ムーディーズが世界の民間により運営されている有料道路セク ターにおける会社の信用リスクを評価する際のアプローチを説明するものである。 本稿は、発行体、投資家、およびその他の市場参加者に、民間運営の有料道 路セクターにおける企業の信用プロファイルの評価に関する全般的なガイダン スを提供し、主要な定量・定性リスク要因がどのように個々の格付結果に影響を 与えるかを理解する一助となることを目的としている。本稿はムーディーズの格 付に反映されるすべての要因を網羅しているわけではないが、この業界の格付 において、通常、最も重要と考えられる考慮事項、財務指標の理解に役立つと 考える 本格付手法は、2014 年 1 月に発行された「稼働中の有料道路の格付手法」の 改訂版である。反映されている中核的な原則の多くは 2014 年版の格付手法と 共通しているが、改訂版では業界の主要な信用ファンダメンタルズをより適切に 反映するよう分析を精緻化した。本格付手法の発行に伴う格付変更はない。 本稿には、詳細な格付マッピング表と、格付対象企業がマッピング表の要因に 対してどのようにマッピングされるかを示す例を掲載した。格付マッピング表は、 ほとんどのケースにおいて民間運営の有料道路セクターの信用プロファイルの 推定に用いることができる参照ツールとなっている。マッピング表は、民間運営 の有料道路セクターにおける企業に格付を付与するにあたって通常最も重要と される要因をまとめたガイダンスであるが、格付上の全ての考慮事項を含んでい るわけではない。マッピング表の各要因のウェイトは、格付の決定における重要 性を大まかに示したものだが、実際の重要性は大きく異なることがある。また、本 稿に示した格付表へのマッピングは過去の実績を用いたものだが、実際の格付 は将来の見通しを織り込んでいる。そのため、マッピング表により推定された格 付が各社の実際の格付と一致しないケースが大半を占める。 03.5408.4100 This rating methodology is based on Moody’s Investors Service’s rating methodology titled “Privately Managed Toll Roads, (May 21, 2014).” The rating approach described in the Moody’s Investors Service report was adopted on September 18, 2014. ムーディーズ・ジャパン株式会社 INFRASTRUCTURE マッピング表では有料道路セクターの格付において重要な以下の 6 つの要因を重視してい る。 » 資産タイプおよび事業エリア » 交通の状況およびパフォーマンス傾向 » コンセッション(運営権)と規制の枠組み » 財務方針 » カバレッジおよびレバレッジ 要因 1~5 のスコアリングの結果として、マッピング表が示唆する暫定的な格付が得られる。さ らに、以下の要因 6 を適用することで、組織構造または資金調達(主にプロジェクト・ファイナ ンス型の事業者に関連する)においてストラクチャー上の補完の恩恵を受けている発行体の 格付がノッチアップする場合がある。 ストラクチャー上の考慮事項のアップリフト 主要要因は複数のサブ要因で構成される。特定の主要要因またはサブ要因についての発行 体のスコアが最終格付と一致しないことがしばしばあるため、この点が理解しやすいように、付 録 B に「アウトライヤー」(格付マッピング表上の特定のサブ要因のスコアが実際の格付と大き く異なる事例)について解説した。 本格付手法は、当該セクターに対する格付において、考慮すべき全ての要因を網羅したもの ではない。格付分析では、全ての業種に共通する要因(株主構成、経営陣、流動性、企業の 組織構成、コーポレート・ガバナンス、カントリーリスク等)や、特定の企業において重要となり うる要因も考慮している。ムーディーズの格付には、これ以外の格付マッピング表に明確に示 すことができない定性的な考慮事項や要因が織り込まれる。本格付手法で用いるマッピング 表は、それにより推定される格付が実際の格付により近いものとなるような複雑性の高いものと はしておらず、多くの場合、このセクターの格付において最も重要な要因を簡潔かつ透明な 形で示すものとした。 本稿の主な内容は次の通りである。 » 格付対象企業の概観 » 格付手法の概要 » 信用力を左右する要因の説明 » 格付マッピング表に含まれない格付上の考慮事項を含む、格付手法の前提、限界につ いてのコメント 付録には、格付マッピング表の全体像(付録A)、格付を付与している 25 の発行体(代表サン プル)にマッピング表を適用した表、および各サブ要因のスコアとムーディーズの実際の格付 の間に比較的大きな差があるケースについての補足説明(付録B) 1、建設段階にある有料道 路および開業間もない有料道路の評価における特殊な考慮事項(付録C)、管理車線プロジ ェクトの格付における特殊な考慮事項(付録D)、国際会計基準(IFRS)に基づき財務報告を 実施している企業に関連する会計上の考慮事項(付録E)、交通密度の指標としての車線キロ 当たりの年間平均 1 日交通量(AADT)(付録F)を掲載した。 本件は信用格付付与の公表で はありません。文中にて言及さ れている信用格付については、 ムーディーズのウェブサイト (www.moodys.com)の発行体の ページの Ratings タブで、最新の 格付付与に関する情報および 格付推移をご参照ください。 2 SEPTEMBER 18, 2014 1 ほとんどの場合、マッピング表に基づく格付との比較には、シニア無担保債務格付を参照した。政府系発行体にはベー スライン信用リスク評価(BCA)を用い、ストラクチャー上の補完が組み込まれたファイナンス構造である発行体(主にプロ ジェクト・ファイナンス発行体)に対してはシニア有担保債務格付を参照した。 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 本格付手法では、信用格付の決定に用いられる分析のフレームワークを紹介する。場合によ っては、業種に固有ではない分析上の考慮事項(短期債務格付、様々な債務クラスやハイブ リッド証券の相対的な格付、ソブリン債の格付が他の発行体に及ぼす影響、他の事業体から の信用サポートの評価など)についての考え方を説明した他のレポートも、分析に用いる場合 がある。こうした全てのセクターに適用する格付上の考慮事項については、ムーディーズのウ ェブサイト上のクロス・セクター格付手法を参照されたい。 格付対象について 本グローバル格付手法でカバーする発行体は、道路、橋梁、トンネルなどの道路資産の運営 および維持を主な業務とする多様な有料道路である。主な収益源は道路資産の交通利用か ら直接徴収される通行料金である。民間運営の有料道路は、一般には関係政府当局または コンセッション供与機関とのコンセッション契約に基づく。 民間運営の有料道路は、収益から営業キャッシュフローへのコンバージョンの高さを特徴とす るシンプルなビジネスである。しかし、稼働段階で多くのフリー・キャッシュフローを創出する能 力はあるが、コンセッション期間の終了に伴う債務返済によってこれが相殺される可能性もあ る。 本手法の格付マッピング表は、稼働中とみなされる有料道路の信用力を評価することを主な 目的としている。すなわち、中核資産の建設段階が終了し、建設段階からの契約上の積み残 しがなく、中核道路資産に関わる既存の有料交通の実績を示せる状態にある道路が対象で ある。しかし、本格付手法で概説されている要因のほとんどが建設段階または稼働開始段階 にある有料道路の長期格付に(フォワード・ルッキングベースで)適用可能であることから、そ れらの有料道路の評価に際し、本格付手法を参考資料として利用することもできるだろう。こう した場合、建設段階、交通量や収益の予測、および予想される立ち上げ期間などに関連する リスクに特有の信用事項は極めて重要であるため、安定稼動期間に達成可能な格付よりも低 い格付になる場合がある。各企業に対するマッピング表ベースの格付は、実際の格付とは一 致しないのが一般的である。また、マッピング表は稼働中の有料道路向けに調整されている ため、建設段階または稼働開始段階にある有料道路に適用する場合は、上記の追加リスクが 反映され、差異がさらに大きくなる可能性がある(例えば、付与された格付がノッチダウンする 可能性がある)。 本格付手法のマッピング表は、道路(「シャドウ・トール」道路)の利用者数に応じて政府から支 払いを受ける有料道路事業者の評価に際しても参考となる。 2この場合は、オフテイカーの信 用力や支払いの適時性に関する特殊な信用考慮事項も分析の鍵となる。こうした考慮事項は マッピング表に含まれていないため、付与されている格付とマッピング表ベースの格付との間 に重大な相違が生じる可能性が高い。 本手法で格付した民間運営の有料道路事業者の所有形態は多岐にわたる。発行体の多くは 民間が保有するものであるが、本手法は政府系発行体(GRI)に分類される企業にも適用され る。 3この場合、民間運営の有料道路向けの本格付手法はベースライン信用リスク評価(BCA) であるが、GRIの格付手法ではBCAの押し上げ要因の当社の評価基準について説明してい る。 3 SEPTEMBER 18, 2014 2 このモデルは例えばスペインで使用されおり、当社でもいくつかのシャドー・トール道路事業者を格付している。 3 ムーディーズの格付手法"Government-Related Issuers: Methodology Update" (Moody's Investors Service, July 2010)(ムーデ ィーズ・ジャパン版「政府系発行体に対する格付手法のアップデート」(2010 年 9 月発行))を参照されたい。 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 一方、政府が所有・運営する有料道路、または政府関連機関(例えば有料道路機関)が運営 する有料道路は、別の格付手法でカバーしている 4。政府が所有・運営するモデルは、民間 運営の有料道路とは根本的に異なる。前者では一般的に、その時点で予想される維持・管理 (O&M)費用および債務返済をカバーするのに十分な金額を元に通行料金が設定される。 今日まで、主に米国でこのモデルが採用されている。 民間運営の有料道路は、本質的に利益の最大化を動機としていることから、信用力と測定さ れた財務レシオの間に強い相関関係が見られる。政府運営セクターの信用力は、前会計年 度に達成し今年度に持ち越された余剰金よりも、通行料引き上げの能力と意思に強く依存し がちであるため、信用力と財務レシオの相関関係は比較的弱くなる傾向にある。 本手法は、シングルアセット事業者、および複数の異なるコンセッションの株式を保有する企 業に適用する。また、民間運営の有料道路が利用する様々な種類のファイナンシング(コーポ レート・ファイナンスおよびプロジェクト・ファイナンスなど)も含まれる。 世界全体で、ムーディーズは現在、本手法で 60 の有料道路事業者を格付しており、格付対 象債務の総額は約 750 億ドルに上る。 表1 民間運営の有料道路の格付分布 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 Aaa Aa1 Aa2 Aa3 A1 A2 A3 Baa1 Baa2 Baa3 Ba1 Ba2 Ba3 B1 B2 B3 Caa1 Caa2 Caa3 Ca 出典:ムーディーズインベスターズサービス、2014年5月19日現在の格付 本格付手法の対象となる有料道路事業者は、規模、市場の地位、および事業地域などが多 種多様な発行体の代表サンプルである。格付対象のうち、発行体の 65%は投資適格である が、35%は投機的格付である。格付には A1 から Caa3 があるが、本手法に含まれる発行体の 大多数(60%)は Baa カテゴリーの低投資適格格付である。発行体の数ではラテンアメリカ(全 体の 58%)が最も多く、格付対象債務の金額ではヨーロッパ(58%)が最大である。発行体の 約 85%は「安定的」な格付見通し、8%は「ネガティブ」な格付見通し、7%は「ポジティブ」な格 付見通しである。 格付の偏りは、このインフラセクターの性質によるものである。非金融企業発行体の全体を見 ても一般的に事業リスクが比較的低く、膨大な資本コストおよび長期のコンセッション期間を 主要因とする高いレバレッジを有するという特徴がある。 4 4 SEPTEMBER 18, 2014 “Government Owned Toll Roads”(Moody's Investors Service, October 2012). 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE セクターへの参入障壁が高く、多くの有料道路事業者が事業エリア内においてほとんど独占 に近い地位にあることから、総じて事業リスクが低くなっている。コンセッションによって料金と 資本要件が決定され、一部では、特定のシナリオが発生した場合や交通量が予測を下回っ た場合に補填金が提供されるため、国、州/県、地域レベルでの安定的かつ総じて確立され た規制枠組みによって、一定の予測可能性がもたらされている。 しかし、有料道路のファンダメンタルズがこのプロファイルに一致しない場合(例えば、当該道 路が既存または新規のルート(無料のルートも含む)との厳しい競争にさらされる場合)、事業 リスクは実質的に高まる。Baa カテゴリーに集中している一方で、格付が広く分布している理由 の一つはここにある。 このセクターの信用力は地域間でも差があり、事業エリアにおける経済の健全性と経済活動 から大きな影響を受ける。例えば、過去 5 年間、ヨーロッパの複数の有料道路の信用力はヨ ーロッパ経済の弱体化 5による交通量の減少から悪影響を受けている。一方、ラテンアメリカ のポートフォリオの多くでは、同時期の交通量は総じて堅調に推移しているか増加している。 格付手法について 本レポートは 7 つのセクションにおいて、民間運営の有料道路の格付手法にを説明する。各 セクションの概要は次の通りである。 1. 格付マッピング表の構成要因の特定と検討 本格付手法のマッピング表は、6 つの主要要因から構成される。最初の 5 つの主要要因は、 要因を詳細に評価するためのサブ要因から構成される。6 番目の要因はストラクチャー上の 事項を考慮してノッチを調整する際に用いるが、一般的にはプロジェクト・ファイナンス事業体 にのみ有意である。 5 5 SEPTEMBER 18, 2014 一部の発行体の信用力はソブリン信用力の低下の影響を受けた。ムーディーズの格付手法”(How Sovereign Credit Quality May Affect Other Ratings” (Moody’s Investors Service, February 2012) (ムーディーズ・ジャパン版「ソブリンの信用 力はどのように他の格付に影響しうるか」(2012 年 2 月発行))を参照されたい。 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 表2 民間運営の有料道路 格付要因 1. 2. 3. 資産タイプおよび事業エリア 要因の ウェイト 25% サブ要因 資産タイプ 10% 競合ルート 10% 事業エリアの経済のリジリエンス 5% 交通の状況 5% 有料交通の交通量の実績と安定性 5% 交通の密度 5% 交通の状況およびパフォーマン ス傾向 15% コンセッション(運営権)と規制の 枠組み 10% 料金の引き上げ能力と意志 5% コンセッションと規制の枠組みによるプロテ クション 4. 財務方針 10% 財務方針 5. カバレッジとレバレッジ 40% キャッシュ・インタレスト・カバレッジ 合計 サブ要因の ウェイト 5% 10% 8% FFO/有利子負債 8% ムーディーズのデット·サービス·カバレッジ· レシオ 8% RCF/設備投資 8% コンセッション・ライフ・カバレッジ・レシオ(CLCR) 8% 100% 合計 100% 要因 6(ストラクチャー上の考慮事項のためのアップリフト)は、要因 1~5 で導出する暫定的 なマッピング表ベースの格付に対して、ノッチを調整するためのものである。 2. 格付マッピング表の主要要因とサブ要因の測定または推定 以下に、各格付要因のスコアリングについての全般的なアプローチを説明し、格付マッピング 表で用いるウェイトを示す。また、これらの要因が信用力の指標として重要な理由も説明する。 格付要因とサブ要因の評価に用いる情報は通常、各社の財務諸表を用いるか(もしくはそれ を参考に算出)、またはその他の情報から導くか、あるいはムーディーズのアナリストが推定す る。 ムーディーズの格付は将来を見据えたものであり、将来の財務と事業実績についてのムーデ ィーズの予想を織り込む。ただし、過去の実績は、企業および比較対象企業の実績のパター ンやトレンドを把握するうえで有益である。本稿では、格付マッピング表の適用例の透明性を 高めるため、過去のデータ(多くの場合、報告された実績の過去 12 カ月のデータ)を用いる。 定量的信用指標はいずれも、損益計算書、キャッシュフロー計算書、貸借対照表に対し、事 業再編、減損、オフバランス項目、売掛債権証券化プログラム、未積立年金債務、オペレー ティングリース等に関わるムーディーズの標準的調整を加える。 ムーディーズが通常用いる比率の定義については Moody's Basic Definitions for Credit Statistics, User's Guide (Moody's Investors Service, June 2011)を参照されたい。ムーディーズの 標準的調整については、格付手法 Moody's Approach to Global Standard Adjustments in the Analysis of Financial Statements for Non-Financial Corporations (Moody's Investors Service, December 2010) (ムーディーズ・ジャパン版「事業会社の財務諸表分析におけるムーディーズ の標準的調整アプローチ」2011 年 3 月)を参照されたい。これらはムーディーズのウェブサイ トから入手可能である。 6 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 本稿では、原則として過去 12 ヵ月の財務データを使用しているが、格付マッピング表の要因 の全てに適用しているわけではない。例えば、格付委員会が過去の業績に加え、数年間ある いはそれ以上の期間にわたる将来の予想業績を分析することが有用と考える場合もある。 3. 格付カテゴリーへの要因別マッピング 各サブ要因を推定または算出した後、その結果を格付カテゴリー(Aaa、Aa、A、Baa、Ba、B、 Caa、Ca)にマッピングする。 4. 格付マッピング表への発行体のマッピングとアウトライヤー このセクション(付録 B)では、幾つかの企業が、各主要要因およびサブ要因にどのようにマッ ピングされるかを表で示す。ムーディーズは、特定のサブ要因についての格付マッピング表に よる推定結果が、実際の格付より文字格付で 2 カテゴリー以上高いまたは低い場合に注目し、 特定のサブ要因についてそうしたポジティブアウトライヤーおよびネガティブアウトライヤーと なった理由を説明する。 5.格付マッピング表の前提と限界、マッピング表に含まれない考慮事項 このセクションでは、実際の格付に対し、格付マッピング表を用いることの限界、格付マッピン グ表には含まれないが格付を決定する際に重要となりうる追加的要因、格付手法全般におけ る限界と主な前提について説明する。 6.格付マッピング表から推定される格付の決定 格付マッピング表から推定される格付を決定するにあたり、まず各サブ要因にスコア付けして から、以下のスケールに基づいてサブ要因の格付スコアを数値に変換する。 Aaa 1 Aa A 3 Baa 6 Ba 9 B 12 15 Caa Ca 18 20 さらに、以下の表に示す格付カテゴリーのウェイトが適用される。 Aaa Aa A Baa Ba B Caa 1 1 1 1.15 2 3 5 ムーディーズでは高い格付スコアよりも低い格付スコアのウェイトを重くしている。ある分野で の深刻な弱みは、別の分野での強みによって完全には相殺できないためである。例えば、一 般的に高いレバレッジには柔軟性の欠如が伴い、それによってリスクが高まる可能性があるが、 こうしたリスクを反映するには、この基準における投機的等級のスコアのウェイトを重くしなけれ ばならない。 以上で説明したマッピングを経て、格付カテゴリーごとのウェイトの最終分布が決定される。そ の後、これらのウェイトと個々の格付カテゴリーの価値に対応する数字を掛け合わせる。 7 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE こうして導き出された複合ウェイト要因スコアを、以下の表に示す範囲に基づいて、英数字の 格付にマッピングし直す。 マッピング表ベースの格付 マッピング表ベースの格付 ウェイト適用後の合計スコア Aaa x < 1.5 Aa1 1.5 ≤ x < 2.5 Aa2 2.5 ≤ x < 3.5 Aa3 3.5 ≤ x < 4.5 A1 4.5 ≤ x < 5.5 A2 5.5 ≤ x < 6.5 A3 6.5 ≤ x < 7.5 Baa1 7.5 ≤ x < 8.5 Baa2 8.5 ≤ x < 9.5 Baa3 9.5 ≤ x < 10.5 Ba1 10.5 ≤ x < 11.5 Ba2 11.5 ≤ x < 12.5 Ba3 12.5 ≤ x < 13.5 B1 13.5 ≤ x < 14.5 B2 14.5 ≤ x < 15.5 B3 15.5 ≤ x < 16.5 Caa1 16.5 ≤ x < 17.5 Caa2 17.5 ≤ x < 18.5 Caa3 18.5 ≤ x < 19.5 Ca x ≥ 19.5 例えば、要因 1~5 の複合ウェイト要因スコアが 8.7 である発行体の、暫定的なマッピング表 ベースの格付は Baa2 である。 「ストラクチャー上の考慮事項のためのアップリフト」である 6 番目の要因を、要因 1~5 から導 出したマッピング表ベースの暫定的な格付スコアに適用し、最終的なマッピング表ベースの 格付を得る。要因 6 によって、資金調達におけるストラクチャー上の補完(主にプロジェクト・フ ァイナンス型の事業に関連する)に基づき発行体の格付をノッチアップさせることもある。 6 つすべての要因に同様の手順を用いてマッピング表ベースの格付を得た。付録 B にその 結果を示した。 7. 付録 付録では、過去の財務情報に基づいて格付マッピング表から推定した格付の実例を示ストと もに、当該セクターおよび格付対象に特有の信用上の考慮事項についても補足的に説明し た。 8 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 主要格付要因 民間運営の有料道路向けのマッピング表では、次の 5 つの主要格付要因に注目する。 » 資産タイプおよび事業エリア » 交通の状況およびパフォーマンス傾向 » コンセッション(運営権)と規制の枠組み » 財務方針 » カバレッジとレバレッジ さらに 6 番目の要因として、「ストラクチャー上の考慮事項のためのアップリフト」も含めた。上記 の 5 つの主要要因を総合して導き出した暫定的なマッピング表ベースの格付スコアに対して、 ノッチを調整するためのスコアである。 要因 1:資産タイプおよび事業エリア(ウェイト:25%) この要因を重視する根拠 有料道路は通常、価格弾力性の弱い独占的形態のサービスを提供し、事業の可視性と収益 の安定性は高い。そのため、有料道路事業者は多くの企業セクターと比較してより長期的な 視点で財務戦略を構築する傾向にある。従って、資産タイプ(より広い意味での交通インフラ ストラクチャーにおける当該有料道路の重要性)、競争力、事業エリアのレジリエンスを評価す ることが、分析で重要な役割を果たす。 マッピング表での評価基準 有料道路の競争力と事業の可視性を評価するにあたり、資産タイプ、競合ルート、および事業エ リアの経済のリジリエンスという 3 つのサブ要因を用いる。 資産タイプ: 有料道路の資産タイプは、大規模な全国ネットワークから橋梁などの小型のシングルアセット まで多岐にわたる。交通量を呼びこむ道路の潜在力は、主に道路の長さ、事業を実施してい る人口集中地区、カバーするルートの種類から求められる。有料道路の重要性と資産の規模 が連動する場合もあるが、直接の相関があるとは言えないだろう。従って、資産タイプの強さを 評価する際には、重要性と規模の両方の要素が関連してくる。 その国の中で重要な横断道路が何本も走る大規模な主要幹線道路網は、特定の地域経済 から独立した多様性をもたらしているため、このサブ要因で「Aaa」スコアを獲得するであろう。 アメリカ-メキシコ間の特に重要な通商路の要所を結ぶ道路など、小規模ではあるが必要不 可欠な有料道路は、このサブ要因で「A」スコアに値すると言える。比較的小規模な地域で事 業を実施し、特定の地域経済からしかアクセスがなく、広範な輸送ネットワークの根幹を成して いない道路は、このサブ要因では「Ba」以下のスコアになるだろう。 9 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 競合ルート: 有料道路の交通量の継続的な安定性や成長性は、長期的に収益を上げられるかどうかを左 右する。従って、他の(有料および無料の)道路や現実的な代替手段としてのその他交通シス テムが有料道路の交通の動向に与える影響について、評価対象資産からの距離、競合ルー トの品質および安全性の観点から評価する。とりわけ、競合道路およびその他の輸送手段の 数と種類における変化から生じる有料道路の交通量に与える将来的な影響は重要となる。 評価は、有料道路の交通量に及ぶであろう影響と、交通量の変化への長期的な影響に焦点 をあてて行う。例えば、新しい競合ルートが開通すると、交通量が急激かつ永続的に影響を 受ける可能性がある。ただし、国家政策としてその他の交通手段(鉄道貨物輸送など)が奨励 されている場合は、さらに長期的に交通量が減るおそれがある。そのため、競合ルートによっ て交通状況がすでに悪化しており、今後さらなる悪化が急速に現実化しそうな事業者には、 「B」または「Caa」のスコアが付与されることになろう。 他の場合では、近隣に無料の品質の良い道路がある比較的重要な有料道路は、経済的な圧 力を受け、無料道路に短期的に交通量を奪われる可能性があるため、「Baa」または「Ba」のス コアになるだろう。需要の奪い合いのリスクの評価に際しては、有料道路の過去の実績も考慮 する(過去データが入手可能な場合)。事業期間が比較的短い資産や、異常かつ不安定な 経済状況下での事業実績しかない資産については、他の関連ルートにおける交通ダイナミク スや、通行料金、利便性、混雑度、通行料金水準などの道路使用者にとって重要な主要要 因を考慮する。 新しい道路の建設それ自体が事業エリアの交通ダイナミクスを変えてしまうため、新しく開設し た有料道路の競合環境を正確に評価することはさらに難しくなるだろう。特に、道路が実際に 事業を開始するまでは、事実上、その競争力はテストされていないことになる。そのため、稼 働開始段階の有料道路は「Ba」以下のスコアになるだろう。 事業エリアの経済のリジリエンス: 事業エリアの全般的な経済実績、経済多様性、および見通しは、将来の収益動向を左右する 重要な要因である。資産の業績は通常、近隣の経済環境に依存するが、事業の中心エリア 以外の経済活動にも依存する場合がある(例えば、異なる経済圏を結ぶ国境を超えたルート)。 有料道路の事業エリアにおける経済の多様性、経済成長の実績、ネガティブなショックに対 するヒストリカルな脆弱性およびその時期からの回復トレンド、さらに事業エリアの全体的な人 口動態トレンドを検討する。一般的に、国家経済が発展している事業エリアは高いスコアを得 る。国の経済的なファンダメンタルズが弱い場合や悪化している場合は、このサブ要因では低 いスコアが付与される場合がある。 要素の複雑性や、完全に比較可能なデータの入手困難性(例えば、大国と発展途上の市場 の小規模な地方自治体を比較する場合)を考慮すると、データの入手可能性や品質がスコア に影響することもある。このサブ要因の評価は通常、発行体から得た公表情報や、産業セクタ ーチーム、ソブリン、サブソブリン、および米国地方財政のアナリスト・チームなどからなるムー ディーズのアナリストの知見に基づいている。 10 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 要因1 資産タイプおよび事業エリア(25%) サブ要因 サブ要因の ウェイト Aaa Aa A Baa Ba B Caa 資産タイプ 10% 主要な幹線道 路の大規模な 道路網。必要不 可欠なサービス (例えば、国全 体の大規模な 高速道路網) 必要不可欠な 接続ルート。1つ または少数の 大規模な幹線 道路または都 市ルート 必要不可欠な 接続ルート。小 規模な幹線道 路または重要な 都市接続ルート (例:トンネルや 橋梁) 小規模な経済 圏またはニッチ な市場における シングルアセッ トまたは小数の 道路。事業エリ アでは重要 地域経済の影 悪化する市場に 実績のない、ま 響を非常に受け おける小規模な たは非常に弱 やすいシングル シングルアセッ い市場における アセットまたは ト。または重要 小規模なシング 少数の道路。ま 性が非常に疑 ルアセット。また たは重要性が わしい資産 は明らかに必要 限定的な資産 性が疑われる 資産 競合ルート 10% 現在も将来も競 合ルート(他の 交通手段や道 路)が存在し ない 盤石かつ安定 的な競争環境。 かつ、 長期的に多少 長期的に競争 競争が強まる可 が強まる可能性 能性がある がある 競争環境が変 競争環境が急 化しつつある。 速に変化しつつ 新しいルートの ある。または、 開通時に、交通 量が顕著に変 高品質または 交通量が短期 化する可能性 改良が予想され 間に著しく(20% が高い る既存の代替 超)悪化するこ 道路が、経済的 とが予想される な圧力がある場 既存の代替道 合に交通量を奪 路は幹線道路/ ったり、事業エリ 事業エリアの交 アの交通量が 通量を十分に 増加した場合に 吸収できる 簡単に受け皿 になってしまう 新しいルートの 開通後に予想さ 今後10年間で れる直近の交 予想される段階 通量の減少が 的な交通量の 10%~20% 減少が 10%~15% 競争環境により 現在の交通量 が減少してい る。または、幹 線道路の交通 量が急速な減 少を示している か、急速な悪化 が予想される 非常に大規模 大規模で、高度 高度に発展し多 発展し多様化し 経済基盤は発 経済基盤が貧 で、高度に発展 に発展し十分に 様化した経済 た経済基盤であ 展し適度に多様 弱で、悪化して し十分に多様化 多様化した経済 基盤 るが、一定の経 化しているが、 いる。かつ、 した経済基盤。 基盤。かつ、 済変動が見ら 経済の見通しが 長期にわたって れ、今後の経済 多様性は限定 かつ、 貧弱 長期にわたって 経済成長の実 は停滞するか、 的。あるいは、 予測可能な経 績があり、経済 ある程度悪化す 非常に長い期 ショックには脆 ショックに脆弱。 済成長の実績 変動もほとんど ることが予測さ 間(10年を超え 弱であると見ら あるいは、 ない る期間)にわた があり、経済変 れている れる って堅調かつ予 動もほとんどな 人口構成の 経済環境および 強固な経済基 い。かつ、 測可能な経済 経済基盤は発 動向が好ましく 人口構成は発 盤であるが多様 成長の実績が 展途上または ない 好ましい経済環 展途上にあり、 性に欠ける ある。かつ、 低水準からの 境と人口構成 長期的な方向 成長途中 性が不確実 人口構成は中 ネガティブなショ 期的に悪化する ックを受けた実 人口構成は過 可能性がある 績がない好まし 渡期にある い経済環境。 かつ、 経済基盤が貧 弱で回復の見 込みはほとん どない。ある いは、 事業エリア の経済のリ ジリエンス 5% 予見可能な将 来にわたって主 要な交通手段 に変化がない。 かつ、 近距離にある高 品質な既存の 代替道路は、深 刻な経済的な 圧力がある場 合にしか交通量 の分散をもたら その他の既存 さないか、ある の有料道路は、 いは事業エリア 十分に離れた の交通量の増 場所にある、品 加を簡単に吸収 質が劣ってい できない る、または経済 的な圧力があっ たとしても脅威 今後10年間で が限定的 予想される段階 的な交通量の 減少が10% 未満 多様性が非常 に限定的。ある いは、 ショックに非常 に脆弱。ある いは、 人口構成の動 向が非常に好 ましくない 強力かつ予測 可能な人口 構成 11 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 要因 2:交通の状況およびパフォーマンス傾向(ウェイト:15%) この要因を重視する根拠 有料道路事業者は一般に営業利益率が非常に高く、キャッシュフロー創出力も盤石である。総じ てキャッシュフロー創出を決定する主因は収益であり、交通量(要因 3 で検討する通行料)が その収益を支えている。したがって、収益創出に影響する可能性がある、将来的に直面する かもしれない潜在的な変動に対するリジリエンスを検討するにあたっては、有料道路の利用 者のタイプや数が重要な情報となる。 マッピング表での評価基準 有料道路の交通の状況およびパフォーマンス傾向を評価するに際して、交通の状況、有料 交通の交通量の実績と安定性、および交通の密度という 3 つのサブ要因を用いる。 交通の状況: 格付対象の道路資産の実際の利用者の評価は、交通量が継続的に安定しているか、または 交通の流れにいかなる変動をもたらす可能性があるかを判断する際の重要な考慮事項であ る。 ムーディーズの評価では小型車両と大型車両の詳細な内訳(有料道路事業者が一般的に公 開するデータ)を検討する。さらに、事業エリアおよびルート上の主要な出発地と目的地につ いての情報や入手可能な情報源を活用することで、日常的な通勤・通学の車両、レジャーな どの目的の車両の割合を評価することを試みる。これに際し、当該ルートを利用する乗用車 および大型トラックの主要な移動目的について有料道路事業者が所有しているであろう情報 に関して、事業者と掘り下げた議論を行っている場合もある。すべての事業者が公開している わけではないが、今日では電子料金収受システム(ETC)の活用を通じて、事業者は利用頻 度や移動距離などの詳細かつ正確な利用パターン情報を収集し、利用者の内訳をより詳しく 知ることができている。 一般に、通勤・通学による交通利用は、運送業者やレジャー利用と比較して変動が少ない傾 向にあると考える。しかしながら、そのバランスは常に各事業エリアの経済変動に左右される ため、ケースごとに評価している。大型車両または貨物輸送車は、移動距離が長いため認識 するのは比較的容易だが、通勤・通学による交通利用よりも一般的に予想しにくい。特筆す べきは、貨物輸送交通が高めの通行料金によって道路収益の過大なシェアを生み出す場合 があることである。したがって、この種の交通量は減少が比較的小幅だったとしても、料金収 益にかなり大きな影響を及ぼしうる。例えば、ブラジルの格付対象の有料道路の多くは、現在、 大型車両は合計車両数の約 1/3 を占めているが、収益の点ではそのシェアは約 2/3 にも上 る。 一方、レジャーの道路利用は季節性が強く、景気の変動に左右されやすいため、道路の収 益内訳が変動しやすくなる。したがって、主にレジャーで利用される有料道路はこのサブ要因 では一般的に低いスコアを獲得する傾向にある。 結果として、マッピング表で高いスコアを得るのは、脆弱性がきわめて低く最もリジリエンスの 高い交通状況であり、それは一般的に通勤・通学で使われる割合の高い道路である。利用者 プロファイルを段階的に分類し、それぞれのプロファイルに格付カテゴリーを割り当てることで、 世界各国の格付対象の有料道路における多様な特徴をマッピング表で表現した。 12 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 有料交通の交通量の実績と安定性: 有料道路、競合ルート、代替ルートなどの交通情報を含むヒストリカルな交通情報は、交通動 向の将来的な安定性の見通しを評価する際の重要な構成要素である。非常に長期の安定し た実績は、その道路の重要性、事業エリアの安定性、競合する交通ルート(道路や他の輸送 手段)の不在、利用者プロファイルのリジリエンスなど、様々な要因と相関している可能性があ る。重要な点として、ムーディーズは全体的な交通動向のみならず、その事業者の有料交通 の実績、すなわち料金水準や料金変更が長期的に受け入れられているかどうかに注目する。 過去の業績が必ずしも将来の交通動向の強力な指標になるとは限らないが、安定的かつ予 測可能な有料交通の実績が長いほど、その実績に則した将来の交通予測に大きな信頼を得 ることも可能になってくる。 有料交通として 20 年を超えた成長の実績があり、大規模なマイナスのショックがなくネガティ ブな変動も予想されない有料道路は、このサブ要因で「Aaa」の評価を得ることになろう。反対 に、有料交通としての実績がない有料道路は、実質的にまだテストされていないビジネスプラ ンであるので、マッピング表で低い評価を得ることになろう。この場合、ムーディーズの将来の 交通動向の評価に際しては、ビジネスプランが示すよりも保守的な見方をとっていく。同様に、 交通量が比較的短い期間で大幅に下方修正された有料道路に対しては、長期的な安定性と 予測性に欠けると見なし、マッピング表で低い評価を得ることになろう。 交通密度: 交通密度は、ネットワークの交通流量を測る指標であり、それゆえ実質的には有料道路の交 通の「規模」を表す指標でもある。一般的に、交通密度が高いと、交通量のリジリエンスが比較 的高いと考えることができる。非常に大きな交通量を支える道路網は、地方の限られた交通に 寄与する小規模な道路に比べると、将来の変動やマイナスのショックを受けにくいはずである。 世界中有料道路事業者は、多くの異なる方法で交通量を測定している。ムーディーズでは、 道路の両方向における車線キロ当たりの年間平均 1 日交通量(AADT)という最も一般的な指 標を採用している。この指標は車線数の異なる資産に関わる統計との相性が良い。しかし、距 離ベースの料金制や片道均一料金制、さらには車両がルート上の電子料金所を通過した回 数に基づくような料金制が混在しているため、公表されている統計に差が生じている場合があ ることに留意されたい。このため、利用可能な情報を基にして両方向の車線キロあたりの AADT の概算を算出することで、本サブ要因のスコアを導くこととしている。相対的な交通の 密度を確認または概算し、道路資産とその地域の性質の文脈に当てはめて評価する。資産 の場所、通過する地形のタイプ、利用者のタイプ、車線数は交通密度の程度に影響し、それ により高、中、低などに評価する。従って、マッピング表のスコアは、交通密度の定性的な評 価に依存している。部分的には定量的な情報も参考にするものの、最終的には分析的判断 に基づいている。 付録 F にこの評価の計算例を示す。本セクションは AADT を概算するケースも示し、その概 算に影響を及ぼす仮定についても説明する。 13 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 要因2 交通の状況およびパフォーマンス傾向(15%) サブ要因 サブ要因の ウェイト 交通の状況 有料交通の交 通量の実績と 安定性 Aaa Aa 5% 景気後退期にも 交通量の減少 はないと思わ れる 5% A Baa 5% B Caa 景気後退期には 景気後退期には 景気後退期には 利用者の内訳と 大きく変動しや 僅かに交通量が 僅かに交通量が 交通量が顕著に は関係なく、大 すい交通が非常 減少する可能性 減少する可能性 減少する可能性 きく変動しやす に高い割合を占 があるが、経済 があるが、中期 があるが、回復 い交通の割合が める。道路の利 状況が好転すれ 的には回復する までの期間がは 高い(季節/レ 用を左右する要 ば直ちに完全に と見込まれて っきりしている ジャー利用な 因が偏っている 回復する いる ど)。かつ、 ため、不可逆的 に交通量が変化 交通量は小型 一般的に、交通 一般的に、小型 車両と大型車両 回復の見込み してしまう傾向に あると思われる の約3/4が小型 車両が比較的 の割合が拮抗。 はあるものの、 非常に長く安定 した有料交通の 実績(20年超)。 かつ、 長く安定した有 料交通の実績 (15~20年)。 かつ、 安定した有料交 通の実績(10~ 15年)。 ネガティブな ショックの 履歴がない ポジティブな交 通動向 車両で、通勤・ 通学利用者の 割合が大きいと 評価 多く、貨物輸送 は全体の1/3以 下。小型車両の 大半は通勤・通 学利用者である と評価 小型車両の一 定程度は通勤・ 通学利用者であ ると 評価 中期から長期に わたると予想さ れる 有料交通の実 績は限定的(5 ~10年)だが、 予想通りまたは 交通に多少の変 予想以上に成長 動あり している。また は、 有料交通の実 績は限定的(0 ~5年)で、予想 通りに成長して いる。または、 有料交通の実 績が限定的であ るが、他の比較 可能な地域の有 料道路について の情報はある。 または、 有料交通の実績 は長いものの、 一定程度の交通 量減少の履歴が ある(中期的な 10%未満の減少) 交通の密度 Ba 景気後退期には 一時的(半年か ら一年)にごく僅 かに交通量が減 少する可能性が 一般的に小型車 ある。経済状況 両の割合が非 が好転すれば交 常に高く、通勤・ 通量は直ちに完 全に回復する 通学者が主要で あると評価 一般的に小型車 両の割合が高 く、通勤・通学利 用者が主要であ ると評価 交通密度が非 常に高い (例:車線キロあ たりのAADTが 20,000超 6) 交通密度が高い 交通密度が高い 交通密度が中 (例:車線キロあ (例:車線キロあ 程度 たりのAADTが たりのAADTが (例:車線キロあ 13,000超) 7,000超) たりのAADTが 3,000超) 有料交通の実 績は長いもの の、大幅な交通 量減少の履歴 がある(中期的 な10%超の 減少) 交通密度がや や低い (例:車線キロあ たりのAADTが 1,000超) 有料交通の 実績もデータも ない 大きく変動した 実績がある。 または、 データ品質に問 題がある 交通密度が低い 交通密度が非 (例:車線キロあ 常に低い(例:車 たりのAADTが 線キロあたり 500超) のAADTが 500以下) 要因 3:コンセッションと規制の枠組み(ウェイト:10%) この要因を重視する根拠 コンセッションは有料道路事業者の権利を規定するものであり、規制環境と合わせて、道路資産の 経済的価値の活用範囲を設定している。このような権利および規制は、事業者が事業環境の変 化に適応する能力にも影響する。債権者にとっての重要な側面としては、(1)事業環境の変 化に合わせて料金を設定することについて事業者がどこまで裁量を持てるのか(交通量の減 少を相殺するための値上げなど)、(2)コンセッションの条件変更に際して事業許可取得者に 対する補償はどの程度盛り込まれるのか、(3)事業許可取得者の制御が及ばないイベントに 対するプロテクションをコンセッションと規制の枠組みでどこまで提供できるのか、さらには事 業の経済性にどの程度の影響を及ぼし得るのか、(4)コンセッションの条件変更に対するコン トロール権を債権者がどの程度維持できるのか、などがある。コンセッション契約の変更は事業 許可取得者と政府またはその他のコンセッション付与機関による交渉を必要とする場合が非常に 多いため、これらの検討事項は有料道路事業者にとってとりわけ重要になってくる。 マッピング表での評価基準 料金の引き上げ能力と意志: 料金の引き上げは事業者にとって、長期的なキャッシュフローの水準を調整するために利用 できる最も簡単な方法である。それ以外にもキャッシュフロー拡大策としてコスト削減(例えば、 6 14 SEPTEMBER 18, 2014 または、車線マイルあたりの AADT の相当量 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 電子料金収受システムの活用)などの選択肢はあるが、そのようなコスト削減はより広範な戦 略的イニシアチブを色濃く反映している場合が多い。 ムーディーズの評価は、有料道路事業者が料金を引き上げる能力に主に焦点を当てる。料 金調整メカニズムは一般的にコンセッションの契約条件に含まれている。事業の好調な経済 状況を維持するための、料金引き上げにおける有料道路事業者の裁量について検討するこ とが重要である。事業者の決定権が大きければ大きいほど、コンセッション契約によって提供 される潜在的な柔軟性は高まる。コンセッション契約では事業者の権利は明確に定義されて いるだろうが、実際に料金を変更する能力は政治的な介入によって阻害される場合もある。そ のため、ムーディーズは料金変更の実施における遅延または妨害のリスクも評価する。最後 に、有料道路事業者の料金変更の意志と、その料金が利用者に受け入れられる期待について 検討する。料金を調整する/しないの判断は、例えば交通量への悪影響や社会的考慮事項 などの予想される反動に影響される場合がある。 一般的に使用される料金調整メカニズムには次のタイプがある。(1)決まった方式に則った調 整(完全なインフレ連動型など)、(2)もっぱら政府との定期的な検証に基づいた調整、(3)以 上 2 つのタイプの混合型で、定型式に代入する様々なパラメーターを定期的に見直すもの (この種の方法は現在フランスで採用されている)。 料金の引き上げ能力が制限されていない事業者や、または料金がインフレ指数に連動して定 期的に引き上げられ、毎回の引き上げに際して介入が予想されない事業者は、最も高いスコ アを得るであろう。政府の大幅な介入が認められるコンセッション体制や、過去に料金引き 上げが認可されなかったコンセッション体制は、低いスコアになるであろう。 コンセッションと規制の枠組みによるプロテクション: 有料道路のコンセッション契約の条件は一般的に各有料道路に固有であり、何よりも資産の 種類や関係する司法管轄区域によって異なる。一般的に、コンセッション契約の条件は、譲 与者と事業許可取得者の合意に基づいて修正される。例えば、ある水準に違反した場合や、 条件を満たした場合に行われる。つまり、有料道路のコンセッションは政府と事業許可取得者 との交渉によって成立した関係である。しかし、政府が規制枠組みの契約条件に一方的に変 更を強制する司法管轄区域もある。政府または事業許可取得者が契約の条件を変更しようと する場合、その変更が債権者に肯定的、中立、または否定的な影響を与えるかという問題は 一般的に、そのコンセッションに盛り込まれた具体的な合意事項に左右される。しかし、合意 に至らない場合の仲裁プロセスや法規範などの要因の影響も受ける可能性がある。 このサブ要因では、政府または事業許可取得者の意向によってコンセッションが変更される 場合、補償措置やそれに相応する変更など、有料道路の債権者に与えられるであろう影響を 考慮する。債権者を保護する適切な補償を担保する安全策がなくても、コンセッション契約に 規定された補償が少なくとも財務指標を維持するに十分であるかを予想する。さらに、補償を 決定する際の適時性およびプロセスについても評価する。 したがって、いかなる種類のプロテクションや補償もコンセッション契約に組み込まれておら ず、その司法管轄区域において、当該発行体のコンセッションの条件が一方的に変更された り、その他の有料道路や関連する前例を持つ同様のセクターにおいてコンセッションの条件 が一方的に変更されたりした実績がある場合には、最低のスコアが付与される可能性もある。 契約によって補償が義務付けられており、コンセッションやコンセッション以外の法的枠組み に明確な補償のガイドラインはないが、当該司法管轄区域において類似事例で適切な補償 が行われた実績があれば、「Baa」の評価が下されることになろう。対照的に、このサブ要因で 最高のスコアが与えられる可能性があるのは、コンセッション契約のいかなる変更も債権者の 全面的な同意が必要だと規定されているケースである。 15 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 要因3 コンセッションと規制の枠組み(10%) サブ要因 サブ要因の ウェイト 5% 料金の引き上げ 能力と意志 Aaa Aa A Baa Ba 事業者は自由 に料金を設定す る権利があり、 必要に応じて値 上げを実施した 実績がある。 かつ、 コンセッション期 インフレなどに インフレなどに コンセッション期 間全体を通じ 連動した料金の 連動した料金の 間中の料金設 て、インフレなど 引き上げが可能 引き上げが可能 定は固定されて に連動した料金 なモデルが確立 なモデルが確立 いないが、定期 の引き上げや、 されているが、 されているが、 的に見直し交渉 追加業務に対 承認または定期 承認または定期 が行われる する公正かつ適 的な検証が 的な検証が必 時の費用回収 必要 要で、料金調整 料金の変更や が可能なモデル の程度や時期 遅延は、わずか 将来的に障害ま たは否定的な反 が確立されてい 必要に応じて随 に一定の不確 に否定的な反動 る。かつ、 実性を伴う を引き起こすお 動は予想され 時調整が必要と それがある。 ない 予想される/そ または、 否定的な反動 の実績がある 否定的な反動 は予想されな は予想されない い。かつ、 否定的な反動ま か、あったとして 料金引き上げの たは介入は予 も非常に限定的 前例や透明性 介入の実績も見 込みもない が限定的。 または 想されない B 料金の引き上げ 承認後の料金 には交渉が 引き上げ中止や 必要。 料金設定に対 または する政府の介入 という重大な実 績または懸念が 料金引き上げの 能力および意志 ある。または、 において、実質 的な遅延または 不確実性の実 績がある/予想 される。または、 料金の変更は 実質的に否定 的な反動をもた らすと予想され る、または 何らかの介入が 何らかの実質的 予想される な介入が予想さ れる サブ要因 サブ要因の ウェイト コンセッションと 規制の枠組みに よるプロテク ション 16 SEPTEMBER 18, 2014 5% Aaa Aa 条件はコンセッ コンセッション契 ション契約で明 約の変更に際し 確に定義されて ては、最低でも おり、債権者の 実際の業績と予 完全な同意がな 想された業績を ければこれを変 維持するための 更できない。 完全かつ自動 かつ、 的な補償措置 が伴う。かつ、 事業環境の変 化など、あらゆ 事業環境の変 る種類のイベン 化など、多くのイ トに完全かつ即 ベントに即時の 時の補償措置 補償措置が期 が用意されてお 待される り、それについ てコンセッション または規制の枠 組みでテスト済 みである A Baa Ba コンセッション契 約では、不利な 変更の場合に 「公正な」補償 措置が担保され ているが、補償 の程度は詳細 には定義されて いない コンセッション契 約において、不 利な変更の場 合は補償が必 要であると規定 されているが、 明確さに欠け、 ガイドラインも ない 不利な変更の 場合に補償の 権利はあるが、 金額が明確で ない 適時かつ透明 性を持って契約 が適用され信用 指標への悪影 響がない、とい う確かな実績と 期待がある 補償は特定の 場合に限られ、 交渉が必要に なる 関連するコンセ ッション契約ま たは規制枠組 事業環境の変 み内で適切な補 化など、多くのイ 償が行われた ベントに対して 前例がある 補償が期待され ている 補償には交渉 が必要。一般法 においても特定 の条項や保護 規定が存在し ない 関連するコンセ ッション契約ま たは規制枠組 み内で前例が ない Caa B 現在まで、料金 引き上げは阻ま れている。 または 実質的な介入 が予想される、 または極めて柔 軟性が乏しい状 態が続く/乏しい 状態に陥ると予 想される Caa 不利な変更の 事業許可取得 場合についての 者の制御が及 補償の権利が ばないイベント 限定的。 に対して、コンセ または、 ッション契約や 法的枠組みに 保護規定が存 補償体制が不 在しない 明確であり、政 治介入の対象と なる コンセッション契 約の条件につい て補償を伴わな い一方的な変更 の実績がある か、そうした事 態が予想さ れる 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 要因 4:財務方針(ウェイト:10%) この要因を重視する根拠 財務リスクの管理と取締役会の許容度は、重要な格付要因である。負債レベル、信用力、資 本構造のリスク(例えば、借り換えリスク、複雑なヘッジ、金利や為替変動のリスク)、買収など のイベントリスクによる財務・資本構造への悪影響のリスクに直接影響するためだ。 全般的に安定した高水準のキャッシュフローを創出する有料道路事業者のビジネスモデルは、デ ット·ファイナンスを実施して新たなコンセッションや他の事業活動に投資する大きな能力を生み出 す。それゆえ、事業者による債務能力の活用方法、およびレバレッジや他の事業活動への拡大に おける制約(契約または自己による制約)は、最終的な信用力を評価するうえで重要な要素である。 有料道路のビジネスモデルは安定していることから、株主へのリターンを向上しようとする意欲は、 直接的にあるいは戦略的な投資を通じて、レバレッジの拡大をより魅力的なものにするかもしれな い。さらに、コンセッションの期間が限られていることは、新規事業分野への多角化を通じて企 業の存在を永続的なものにするようにとの経営陣への圧力につながる可能性がある。これは 多かれ少なかれ漸進的に、中核事業である有料道路コンセッション活動によって生み出される キャッシュフローの質を毀損する恐れがある。したがって、契約上であれ自主的であれ、何ら かの制約があることは将来の信用力の重要な決定要因となる。 つまり、この格付要因で評価しようしているのは、財務方針の決定が将来のキャッシュフローの水 準の不確実性を増幅し、経営資源を債権者から別の方向に向かわせてしまう可能性である。 マッピング表での評価基準 ムーディーズは、発行体が望む資本構造や目標とする信用プロファイル、これまでの行動実 績、およびコミットメントの順守を評価する。経営陣の実績および様々な経済循環のフェーズ におけるキャッシュフローの利用状況に注目する。さらに、信用市場や流動性環境の変化、 法的措置、競合の問題、および規制圧力などの主要イベントに対する経営陣の対応にも焦点 を当てる。 経営陣の M&A 活動への欲求についても、取引種類(中核事業や新規事業)と投資決定に 焦点を当てて評価する。買収の頻度と成功状況およびこれまでの財務選択を評価する。デッド・フ ァイナンスまたは信用転換による買収は、この要因では一般的に低いスコアを得るであろう。 最後に、企業とその所有者が株主へのリターンと債権者への返済でどのようにバランスを取っ たかについての過去の実績を検討する。債権者を犠牲にして株主のリターンを優先してきた 実績は、この要因のスコアでは低く評価されるであろう。 プロジェクト・ファイナンス型の有料道路は単一目的であることから、一般的に創出された超 過キャッシュフローをすべて分配する政策を取り、このサブ要因では総じて「Ba」カテゴリーに 評価した。一方、保守的な実績を伴う発行体の場合は、この要因ではより高い評価を得ること になろう。ただし、ほぼすべてのプロジェクト・ファイナンス型の有料道路では、資金調達構造 によって、株主に超過のリターンを還元したり買収を行ったりする能力は制限されている。こ のようなストラクチャー上の補完は信用力にとって重要であるため、ウェイトを定めた 5 つの要 因によるマッピング表スコアへのノッチ調整として評価する。従って、二重計上を避けるため、 この考慮事項はここでは評価しない。ストラクチャー上の補完については、要因 6 の「ストラク チャー上の考慮事項のアップリフト」で検討した。 17 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 要因4 財務方針(10%) サブ要因 財務方針 サブ要因の ウェイト 10% Aaa Aa 非常に保守的な 財務方針の長期 にわたる実績が あり、今後もその 継続が予想され る。非常に安定 的な財務指標。 業界的水準と比 較して負債レベ ルが低い。 かつ、 保守的な財務方 針の長期にわた る実績があり、 今後もその継続 が予想される。 非常に安定的な 財務指標。負債 レベルが業界平 均よりも低い。 かつ、 A Baa Ba B Caa 保守的な財務方 保守的な財務方 債権者よりも株 攻撃的な財務方 極端に高い債務 主を優先しうる財 針の実績がある/ レバレッジを継続 針の実績があ 針について一定 期間の実績があ り、今後もその継 務方針の実績が 債権者にはわず した実績がある あるか、そうした かなクッションし か、そうした政策 続が予想され り、今後もその継 を取ることが予 る。業界平均の 政策を継続する か確保せず、高 続が予想され 想されているた 負債レベルで、 と予想される。レ いレベルのレバ る。債務のレバ バレッジ水準は レッジによって株 め、債権者に不 株主と債権者と レッジは控えめ 主を優先する財 利となる財務方 平均よりも高い のバランスを で、株主と債権 務方針を取る可 針をとることが予 が、過度では 取っている 者とのバランスを 想される。 能性がある。 ない 取っている または、 または、 信用プロファイル 長期にわたる非 信用プロファイル の弱体化を招く、 長期にわたる最 常に高い信用力 の弱体化を招く、 株主への利益配 高水準の信用力 へのコミットメント 株主への利益配 分の増加や買収 を行うリスクが 分の増加や買収 を公言 へのコミットメント ある を行う可能性は を公言 ない 高い信用力への 確かなコミット メント 所有者は株式分 配や買収を重視 すると予想され るが、財務安定 性を犠牲にする ことはない 株主への利益配 分または買収に よる高い財務 リスク 債務リストラの 可能性がある 目標指標への 確かなコミット メント 要因 5:カバレッジとレバレッジ(ウェイト:40%) この要因を重視する根拠 以上の 4 つの格付要因は、有料道路事業者の基本的な業務と財務方針によって提供される 信用力の強みや弱みを捕捉することを目的としている。しかし、業務内容や財務方針の似通 った 2 つの有料道路事業者が、財務指標で証明される違いによって全く異なる信用プロフ ァイルを示すケースもある。 マッピング表では、発行体の絶対的な債務返済能力と、同業他社との相対的な債務負担の 大きさの両方を測定する指標を用いる。有料道路においては、コンセッションの残余期間を考 慮に入れる必要がある。 一般に有料道路事業者は非常に長期の資金調達を実施することから、本分析では「その時 点」の指標(従来のレバレッジ比率など)と、コンセッションの残余期間を考慮に入れた事業者 の信用力測定を目的としたフォワード·ルッキングな指標を組み合わせて用いる。 マッピング表での評価基準 他の非金融業界の企業と比較して、コンセッションを有する有料道路事業者の財務諸表には 財務分析に影響を与える固有の側面がある。会計上の考慮事項は付録 E で検討する。 ゼロクーポン債、資本の増強、指数連動債、スワップ取引などの非伝統的な負債性資金調達 手段を活用する有料道路事業者については、比率計算を適宜調整することで、同業他社の ポートフォリオとの一貫性と比較可能性の向上を計った。 コンセッションは長期に及び、また一般的に有料道路の経済モデルは向こう数年間にわたる 見通しを持ちやすいことから、有料道路のヒストリカルな財務内容と将来的な業績予想の両方 を分析する。資金調達構造の制約があるためにイベントリスクが著しく小さいプロジェクト・ファ イナンス型の有料道路の方が、一般的に予想指標をより長期にわたって適用できる。有料道 路事業者が計画した財務プロファイルを達成できないリスクが高まり、資金調達構造がデフォ ルトリスクにさらされる可能性がある場合、短期的な予想比率により注目して分析する場合も ある。 18 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 稼働中の有料道路を分析するにあたり、最も一貫して利用できると考える 5 つの主要な比率 を選定した。しかしながら、一つの財務指標だけでは、このような非常に多岐にわたる企業の 相対的な信用力を適切に表現することはできない。格付では企業の全般的な経済力を考慮 するが、個別的にその他の財務指標を重視したケースもある。 キャッシュ・インタレスト・カバレッジ: (ファンズ・フロム・オペレーションズ(FFO)+支払利息)÷(支払利息-非現金利息) 7 キャッシュフロー・インタレスト・カバレッジ比率は、有料道路事業者が債務の利払をカバーす る能力についての指標である。 キャッシュ·インタレスト·カバレッジは事業者が債務の利払を履行する際の基本的な財務の柔 軟性を捕捉する目的があり、その計算では現金利息と経過利息を区別する。 ファンズ・フロム・オペレーションズ(FFO)/有利子負債: ファンズ・フロム・オペレーションズ÷総債務 この指標は、有料道路事業者の現金創出能力をその総債務と比較した指標であり、同業他 社と比較した当該発行体の負債の規模を示す。8 ムーディーズのデット·サービス·カバレッジ·レシオ(DSCR): ムーディーズでは、コーポレート・ファイナンス型の有料道路の DSCR を算出する際に、プロ ジェクト・ファイナンス型の有料道路とは異なる DSCR を用いている。 コーポレート・ファイナンス型の有料道路の場合の比率の定義は次のとおり: (FFO+支払利息-メンテナンス設備投資)÷年間債務返済額 備考: メンテナンス設備投資は、道路/ネットワークを運営するのに必要となる継続的な保守・管理費 用 9を指す。 年間債務返済額は、コンセッションの期間全体にわたって未払債務を返済するのに必要なア ニュイティ型の元利払いを指す。年間債務返済額は、毎年の規則的な支払額の現在価値 (PV)を求める標準的な計算式を使って算出される。 10言い換えると、ムーディーズは、(1)年 間債務返済額が一定の数字であること、(2)金利(計算式で用いられる割引率 11)が一定であ 19 SEPTEMBER 18, 2014 7 ムーディーズでは、デット·ファイナンスの重要な部分をゼロクーポン債、資本の増強、指数連動債といった非伝統的な手 段で対応する(あるいはスワップ取引を通じて同様のポジションを構築してきた)有料道路事業者について、支払利息か ら非現金利息を除く。 8 稼働中の有料道路は一般に多額の現金残高を維持しないため、このセクターでは総債務の指標を用いるのが望まし い。ただし、発行体が事前資金調達戦略の一環として多額の現金残高を有した実績がある場合、ムーディーズの評価で 純負債を考慮する場合もある。 9 道路/道路網を改良または拡張するための設備投資(AADT が一定の水準に達した場合の車線増設など)は、通常は通 行料収益の増加や料金引き上げと関連しているため、この計算から除外する。プロジェクト・ファイナンスで建設されたシ ングルアセットの道路では、具体的なメンテナンス設備投資の必要性に関する検証と考察の機会が一般的に予想される。 通常、融資元の代理人を務める独立したテクニカル・アドバイザーによってその正当性も認証される。コーポレート・ ファイナンス型の発行体についてはメンテナンス設備投資を個別的に検討する。ただし、コンセッション期間を通じて有 料道路事業者が必要とするメンテナンスコストを適切に捕捉できると判断する場合は、一般的な前提を用いることもある。 IFRS に基づく会計上の考慮事項の説明は付録 E を参照されたい。 10 年間債務返済額の計算式は次のとおり:((短期負債+長期負債(総額))x 割引率)/(1–(1/(1+割引率)残存コンセッション期間))。 11 使用される割引率は通常、(1)コンセッションの期間を通じて概ね固定されている場合は企業の実際の負債コスト、また は(2)企業の格付に基づく長期平均負債コストの想定値のいずれかである。 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE ること、さらには(3)会計年度末の未払債務の総額(将来の支払額のPV)がコンセッションの 期間を通じてゼロへと逓減していくこと、の 3 つを前提としている。 12 プロジェクト・ファイナンス型の有料道路に対するムーディーズの DSCR の計算は次のように 定義される: 債務返済に利用可能な現金(CAFDS)÷(利息+元本) 備考: CFADS=(利息支払い前の)営業キャッシュフロー-合計設備投資額 13±適宜利用可能な準 備金からの繰り戻しまたは繰り入れ 14 CFADSの計算はCFOを元にしているため、この分子で は運転資本の動きが考慮されている。FFOを元にする上述の「コーポレート」の分子とは異な る。 15 利息と元本の支払額は、現金で支払われた利息と元本、もしくは当該期間中に支払いが予定 されている利息と元本に等しい。実際に支払われた現金利息と元本は、通常キャッシュフロー 計算書に記載されている。支払利息は利息収入を含む(後者が分子に含まれるため)。 プロジェクト·ファイナンスで建設され、完全分割の住宅ローン形式の元本返済スケジュールを 定めたシングルアセット型の有料道路の場合は、通常、実際の借入期間を元に(比率計算が 標準的であることを想定して)算出した DSCR を利用する。 ただし、プロジェクト·ファイナンスが完全分割の住宅ローン形式の元本返済スケジュールを定 めていない場合、この計算式の分母には上で定義した年間債務返済額を用いる。 この指標は、債務の返済に当たり、企業のキャッシュフローから生じる「余裕」の金額を評価す るためのカバレッジ比率である。分子において、設備投資額だけでなく、事業者のキャッシュ 創出を伴うコンセッション活動を行う期間が限定されていることも考慮していることから、当該セ クター固有の指標であるといえる。 企業から報告された実際の債務返済額(元本と利息)ではなく、年間債務返済額を分母として 使用した計算では、コンセッションの期間全体の平均返済額を算出し、未払債務は最終期限 までに完済されることを想定するため、フォワード·ルッキングベースでの企業のより正常な債 務返済能力を評価することができる。 プロジェクト・ファイナンス型の有料道路では通常、債務返済に利用可能な資金を準備する前 に従う必要があるキャッシュウォーターフォールが定められているため、分子には CFADS を 使用する。 この指標の主要な利点の 1 つは、多様な資金調達構造形式を持つ有料道路事業者を比較 できるということである。有料道路の事業許可取得者は資金調達の期間が長いことから、この 指標は将来的な借り換えのニーズや様々なアモチゼーション・プロファイルに先手を打つこと を可能にする。これにより、資本構造において満期一括償還が基本の事業許可取得者と、債 務を定期的に償還するアモチゼーションが基本の事業許可取得者とを、より的確に比較する ことができる。 12 20 SEPTEMBER 18, 2014 企業が満期の異なる複数のコンセッションを保有する場合は、加重平均した残存コンセッション期間を用いる。 13 設備投資支出は設備投資準備金の操作により円滑化される場合がある。 14 ムーディーズでは、メンテナンス、営業、および債務などの準備金の動向も含める。準備金口座からの繰り戻しは CFADS に肯定的な影響を与え、準備金口座への繰り入れは CFADS に否定的な影響をもたらす。 15 稼働中の有料道路では、運転資本の増減は一般的に重要ではない(初年度の VAT 関連フローが重要な場合もある)。 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 保留キャッシュフロー(RCF)/設備投資(Capex): (FFO-支払配当金)÷設備投資金額(有形および無形の固定資産を含む) この比率は、有料道路事業者が特定の期間、内部資金だけで設備投資を賄えるかどうかを示 す。ムーディーズは、事業者が道路網の改良を目的に行う設備投資をネガティブな格付要因 とは見なさない。追加投資が料金引き上げを通じて賄われることもあれば、通行量の増加に つながる可能性もあるからだ。しかし、設備投資の必要性が限られ、内部で生み出されたキ ャッシュフローによって容易に賄えるのであれば、その有料道路事業者の財務の柔軟性をポ ジティブと見なす。そうした企業は、追加資金を調達するために市場にアクセスする必要はな いだろうし、経済情勢の変化に対応するための幅広い選択肢を持っている可能性がある。た だし、多額の金融黒字を生み出してもそれを株主に分配してしまう企業は、経営陣が株主還 元の抑制に消極的である場合、実際には景気の下降局面で高い財務柔軟性を保持できない かもしれない。 標準的な計算では、プロジェクト構造におけるメンテナンスその他の適宜利用可能な準備金 の活用がこの比率には適切に反映されないかもしれない。しかし、プロジェクトキファイナンス で建設された道路の一般的な構造の場合、この比率はコンセッションの期間を通じて 1 を上 回るのが普通である。結果として、ほとんどの標準的な構造のプロジェクト・ファイナンスはこの 指標で「Baa」カテゴリーに評価されるであろう。 コンセッション・ライフ・カバレッジ・レシオ(CLCR): この比率は、異なる資金調達構造、料金制度、コンセッション期間、潜在成長力を持つ有料道 路事業者の、測定可能かつ比較可能なレバレッジ指標を提供する目的で考案されたものであ る。コンセッション期間を通じた債務返済への活用が可能になると予想されるキャッシュフロー を算出し、その正味現在価値と対比する形で事業者の負債金額を評価する。CLCR の計算 式は、有料道路がコーポレート・ファイナンス型か、またはプロジェクト・ファイナンス型であ るかにより異なる。安定したキャッシュフローパターンを示しているコーポレート・ファイナンス 型の有料道路の場合は、さらに別の計算式を用いる。 コーポレート・ファイナンス型の有料道路の場合、CLCR の標準的な計算式は次のとおり: 債務返済に利用可能な将来的なキャッシュフローの正味現在価値(NPV)÷総債務 債務返済に利用可能なキャッシュフローは上記で定義した CFADS の基本計算式を利用して 計算するが、適宜利用可能な準備金からの繰り戻し/繰り入れは、コーポレート・ファイナンス の有料道路には関連しないため考慮しない。この比率は、メンテナンスおよび成長に沿った 設備投資を含む、すべての将来的なキャッシュフローを捕捉することに留意されたい。 この計算では、例えば料金の段階的な変更、料金パターンの変更、有料道路網の拡大など による、多様なキャッシュフロープロファイルを捕捉することができる。また、個々のコンセッショ ンの満了によるキャッシュフロープロファイルの段階的な変化を捕捉することができるため、満 期の異なる複数のコンセッションのポートフォリオを保有する有料道路事業者に対してはより 正確な値となる。 安定的な稼動状態にあり、交通量と料金が段階的かつ安定的に上昇することが期待されるコ ーポレート・ファイナンス型の有料道路に対しては、次の計算式を用いる。 (1/(割引率(DR)-成長率(GR))x(FFO +支払利息–メンテナンス設備投資 16)x(1 -((1 + GR)/(1 + DR))^コ ンセッションの残存年数(Y))/総債務 16 21 SEPTEMBER 18, 2014 より具体的には、この比率は通常、当該年の FFO、支払利息、およびメンテナンス設備投資に基づいて算出される。安 定した状態にある有料道路では実質的な成長設備投資は期待されないため、成長設備投資は含まれていない。 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 備考: DR(割引率)は、(1)コンセッションの期間を通じて概ね固定されている場合は企業の実際の 負債コスト、または(2)企業の格付に基づく長期平均負債コストの想定値のいずれかである。 GR(成長率)は、コンセッションの期間を通じて平均的に毎年の拡大が想定される現在のキャッシュ フローの年率換算値(例えば、コンセッション期間を通じたインフレ率と通行量伸び率の合算)であ る。 Yは、コンセッション終了までの残存年数に等しい。 17 上記の計算式は、安定的かつ段階的な収益の増加が期待できる場合に適用される。考慮すべきキ ャッシュフローの伸びに反映される要因は、次の 2 つに限られる。1 つ目は、新規投資を伴うことな く予想される料金収益の伸びである。料金の改定はコンセッション契約に規定されたインフレ率 に連動するケースが珍しくないため、多くの事業者に関しては、料金収益の伸びを想定インフレ率 に基づくものと考えることができる。2 つ目は、コンセッション期間にわたる通行量増加に関しての 推計である。 プロジェクト・ファイナンスの有料道路の分析では、債務返済準備資金の未払い残高がある場 合に、この資金が特に債務返済用に確保され(一般的なコーポレート・ファイナンス型の有料 道路にはない特徴)、格付対象債務コストを割引率として利用しているときは、CFADSの正味 現在価値に追加することで入力値を調整する。 18 このことから、プロジェクト・ファイナンス型の有 料道路のCLCRは次のように表される。 (CFADS の正味現在価値+債務返済準備資金)÷総債務 CLCR をマッピングする場合、それぞれのメイン格付カテゴリーの基準として、以下の点を考 慮していることを留意されたい。 ベース・キャッシュフローを導き出す計算式では、長い年月を経るごとに成長率は一段と高ま る。とくに初期の数年間、実際の成長率が想定水準から比較的小幅な差で推移しても、やが て大きな違いとなって表れる可能性がある。欧州の一部の大規模なネットワークではごく最近 の数年間、通行量の伸び率が落ち込みマイナスに転じることすらあった。また、他の地域でも 想定成長率を下回った。また、将来の交通パターンは、経済の状況や回復状態、燃料価格、 (他の交通手段または在宅勤務よりも道路利用の経済を大きく変容させねないような)気候変 動に対する政府の政策にも影響される可能性がある。 割引率は資本コストではなく負債のコストである。CLCR は将来のベース・キャッシュフローを 債務の返済に使うことができる能力に注目している。一方、現実には、有料道路事業者は将 来のキャッシュフローの大半を株主への分配に使用することが予想される。さらに、発行体は コンセッション期間中に満期になった債務を、計算時に使用した予測利率では借り換えられ ない可能性がある。 メンテナンスに必要なコストがムーディーズの想定以上に膨らむ可能性がある。とくに後年に なると、有料道路資産の老朽化が進むうえ、コンセッション譲与者への返還にも備えなくては ならない。ベース・キャッシュフローを算出する計算式は、資産返還のためのメンテナンスまで は考慮していない。これは将来の返還まで長い年月が残されている間は小さな問題で済むと 予想されるためである。しかしながら、コンセッションの期間が短くになるにしたがい、大きな不 安材料となるかもしれない。 22 SEPTEMBER 18, 2014 17 民間運営の有料道路は通常コンセッション・ベースのモデルで運営されているが、この手法は資産を永久に所有する企 業の信用力評価にも用いることができる。その場合、企業の負債は 100 年にわたって定額で償却されるものと仮定する。 18 プロジェクト・ファイナンスの案件およびアモチゼーションを伴う債務構造の場合、評価の際にローン・ライフ・カバレッジ・ レシオ(LLCR)も考慮する。これは、コンセッションではなく債務の残存期間を考慮するものである。 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 要因5 カバレッジとレバレッジ(40%) 19 サブ要因の ウェイト Aaa Aa A Baa Ba B Caa キャッシュ・インタレスト・ カバレッジ 8% ≥10x 7~10x 4.5~7x 2.5~4.5x 1.8~2.5x 1.5~1.8x <1.5x FFO/有利子負債 8% ≥40% 25-40% 14-25% 8-14% 6-8% 4-6% <4% ムーディーズのデット· サービス·カバレッジ·レシオ 8% ≥8x 5~8x 3~5x 1.8~3x 1.3~1.8x 1.0~1.3x <1x RCF/設備投資 8% ≥3.5x 2.5~3.5x 1.5~2.5x 1~1.5x 0.5~1x 0~0.5x <0x コンセッション・ライフ・カバレッ ジ・レシオ 8% ≥10x 5~10x 3.3~5x 2.5~3.3x 1.7~2.5x 1.25~1.7x < 1.25x サブ要因 要因 6:ストラクチャー上の考慮事項のアップリフト 本格付手法の対象となる発行体は、様々な債務構造を採用している。多くの有料道路事業 者はより一般的なシニア無担保/有担保の債務手段で資金を調達しているが、高いレバレッジ を軽減する方法として債権者保護規定に同意している事業者もある。 一般的に輸送インフラ、とりわけ有料道路セクターでは、ストラクチャー上の補完は債権者に 価値ある保護を提供していると考える。それゆえ、このような保護を供与しない発行体とは対 照的に、格付のアップリフト要因となる場合がある。格付のアップリフト要因として定義した条件、 その潜在的な特徴、およびその測定方法を以下に示す。 20 評価基準 債務構造は主に 2 つのカテゴリーに分けられると考える。 A) 発行体がデフォルトに陥るリスクを低減する要因。および、 B) 信用力の悪化を阻止/逆転する修正アクションを取ることに影響する権利または能力のい ずれかを債権者に与える要因。 分析の主要な要素を以下に説明する。 A) 発行体がデフォルトに陥るリスクを低減する要因 構成要素: 1. 事業活動に対する規制。発行体による新規事業への関与または買収の実施を禁止する ことは、企業活動に関連する事業リスクを取り除き、すべての重要な機能が債務構造の対 象であることを保証するため、信用力に肯定的であるとみなされる。 2. 追加債務に対する規制。追加債務に対する規制は、追加の支払義務が支払不履行を引 き起こすリスクを低減する。 3. 分配ロックアップテスト。財政難の状況下で株主への分配を禁止することによって、企業 内に現金を留保できるため、デフォルトリスクが低減される。 4. 債務構造の制限。金利、通貨、または借り換えのリスクなどの財務リスクを取り除いたり緩 和したりするように発行体に求めるもの。リスクの緩和については、債務満期集中の制限 から、完全分割の債務償還の実施まで多岐にわたり、これ自体が格付を 1 ノッチ分アップ 23 SEPTEMBER 18, 2014 19 ムーディーズの DSCR と CLCR の計算方法は、コーポレート・ファイナンスの有料道路とプロジェクト・ファイナンスの有料 道路では異なることに留意されたい。該当する計算式については上述の各セクションを参照されたい。 20 ムーディーズのスペシャル・コメント“Evolving Financial Structures Leave More Credit Risk with Leveraged European Infrastructure Companies”(Moody’s Investors Service, November 2013)を参照されたい。 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE リフトさせる要因となる。発行体によるデリバティブ商品の使用が条項で制限されることも あり、これによって事業における追加的な債務や大規模な債務の可能性が低減される。 5. 将来または想定外の大規模なコストをカバーするための準備金。一時的な設備投資など の大規模なコスト項目専用の適宜利用可能な準備金。 B) 信用力の悪化を阻止/逆転する修正アクションを取ることに影響する権利または能力のい ずれかを債権者に与える要因。 レバレッジがかかったインフラの債務構造においては、債権者が所有者に対して債務の削減 を強制することで株式価値や債務の損失を未然に防いだり、仮にそうした状況に陥った場合 に担保を行使することで債務の支払いを強制したりする権限が重要である。デフォルトテスト の債務イベントとそれに続く結果は、この保護の主要な要素である。有効な保護を債権者に 提供するには、こうした機能が融資されている事業の文脈の中で作用する必要があり、ほとん どの場合、継続企業として事業を続けさせるとともに、必要な措置を実行しつつ利用可能な流 動資産を通じて債務を返済させなければならない。 制御権を提供する債務構造機能の要素は、次の側面で評価する。 1. 制御権の有効性。制御権の行使が妨げられる程度(例:管轄地域の法律または特定の 規制による制限)。提示されている条件を法的なガイダンスに照らし合わせて評価し、提 示されている制御権が意図されたとおりに実施できるかどうかを確認する。 2. 制御期間の長さ。発行体が資産からキャッシュフローを創出する権利を失う前(例:破産 処理の前またはコンセッションが終了する前)に、債権者が制御権を行使する必要がある 期間。 3. 専用の流動性支援。専用の流動性支援は、制御権の行使中の継続的な債務返済を促 進する。有意義であるためには、制御権が行使されている状況でこの専用の流動性が利 用可能である必要がある。 ほぼすべての場合、有効性を保ったり構造の整合性を保証したりするには、債務構造機能に 次の要素が含まれている必要がある。 融資と制限の対象となる事業体が、上位の所有グループおよび事業グループから分離してい る。この分離が、発行体の設立に関する法律や財務構造における規制によって実現されてい る。 すべての債権者に対して共通の条項が適用され、個々または複数の債権者が一方的な行動 によって財政の安定性を阻害することはできない。 債権者の介入権は、コンセッションまたは法的枠組みと財務関係書類に基づいて特別に許 可されるべきである。潜在的な問題を早期に発見して、可能であれば(初めは会社の現金収 支を黒字に維持することによって)それを修正する債権者の能力の改善を念頭に置いた、通 常は重要な要素ではあるが、幅広いパッケージのあくまで 1 つの要素として、ムーディーズは 担保設定を捉えている。さらに、是正措置が不可能な場合や失敗した場合、担保設定を利用 して債権回収の見込みを最大化する。 有意義なレベルの債権者保護を提供する構造的な特徴によって、マッピング表要因から生成 された複合スコアのノッチがアップリフトされ、最終的なマッピング表ベースの格付が得られる。 格付アップリフトを評価する場合、ムーディーズはパッケージ全体(つまり、上記 A および B の 両方の要素)を考慮して全体の有効性を測定する。例えば、財務制限条項の順守に関する 独立した検証を行うことは、そうした条項の現状の実効性を評価するための重要な判断材料 になるかもしれない。 24 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 担保は特定の資産に対しては時として許容されないか実施不可能であったり、その権利が国 家などの譲渡機関によって保持されていたり、既存の法規によって企業による資産の担保化 が制限されていたりする場合がある。 非常に包括的かつ有効性の高いものであれば、ストラクチャー上の補完はマッピング表にお いて最大で 3 ノッチの格付アップリフトにつながる可能性がある。しかし、格付対象全体として は、現状のアップリフトは一般的に 1~2 ノッチの範囲におさまっている。利用可能な資金調 達構造が多岐にわたることから(取り得る組み合わせが多岐にわたるため様々な要素が関係 してくる)、このような補完は 1/2 ノッチ単位で格付に反映される。債務の構造的な特徴は理論 的には本格付対象のものよりも強固になり得るが、厳しい契約条項によって、戦略や政策を追 求する経営陣の能力が制限されている場合や、特定の種類の事業には適さない可能性もあ る。そのため、比較的狭い範囲に落ち着いた。 格付には、各事業における実際の構造または契約の特徴についてのムーディーズの知見が 完全に織り込まれている。非常に稀ではあるが、契約の特徴によって、発行体の信用力がス コアカードに反映されているものよりも大きくアップリフトされる場合もある。 格付マッピング表の前提と限界、およびその他の格付上の考慮事項についての 議論 格付手法に基づくマッピング表には、透明性を向上させるために簡便性が求められる一方、 実際の格付により近いマッピングを行えるようにすれば複雑性が高まるというトレードオフがあ る。格付マッピング表で用いられる 6 つの主要格付要因は、民間運営の有料道路セクターに おける会社の格付で重視されるすべての考慮事項を網羅したものではない。また、ムーディ ーズの格付は将来のパフォーマンスの予想を織り込んでいるが、本稿のマッピング例では主 に過去の財務情報を用いている。一部のケースでは、開示できない機密情報に基づいて将 来のパフォーマンスを予測している。過去のパフォーマンス、業界トレンド、競合他社の動向、 他の要因に基づいて、将来の業績を推定する場合もある。いずれにせよ、将来の予測は相当 に不正確なものとなるリスクがある。 ムーディーズによる予想は、マクロ経済環境と全般的な金融市場環境、業界の競争状況、破 壊的技術、行政措置や法的措置といった想定外の変化によって、不正確なものになり得る。 本セクターに適用する主要な格付上の想定としては、次のようなものがあげられる。ソブリンの 信用リスクは他の国内発行体の信用リスクと強い相関性があること、法的な請求権優先順位 は様々な債務クラスの平均回収率に影響を与えて同一発行体の異なる債務クラスの格付差 異を十分に正当化すること、流動性調達力は信用リスクの重要な決定要因になることなどであ る。 本格付手法のマッピング表で用いる指標を選択するにあたり、経営陣の質と経験、コーポレ ート・ガバナンス評価、財務報告と情報開示の質など、あらゆる業界のすべての企業に共通 するいくつかの重要な要因を、明示的な形では含めなかった。従って、それらをマッピング表 に基づいて格付カテゴリーでランキングすれば、他の様々なセクターの格付対象発行体に対 して特定の発行体の相対的ランキングが緻密になりすぎる場合もある。 格付には、定量化が難しい、あるいは特定の場合に限り信用力の差別化に有効となる追加要 因が含まれることもある。そうした要因としては、財務コントロール、不確実なライセンス体制の リスク、および一部の国での政治介入の可能性などが挙げられる。規制、訴訟、流動性、テク ノロジーおよび評判に関するリスク、さらに家計や企業の消費パターンの変化、競合他社の戦 略、マクロ経済トレンドも格付に影響する。これらは重要な考慮事項ではあるが、格付マッピン グ表で正確に表現しようとすれば、過度に複雑になり透明性が大幅に低下することは避けら れない。また、格付には、特定の要因のウェイト付けが格付マッピング表で用いるウェイトとは 大きく異なる状況を考慮している場合がある。 25 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 格付での考慮事項としてのこのようなウェイトの変更は、格付マッピング表には含めなかった 格付要因にも適用されるケースがある。例えば、流動性は格付に極めて重要な影響を与えう る要因であるが、状況によっては、類似した信用プロファイルの発行体の差別化に実質的な 影響を与えないこともある。デフォルト・リスクを高めるような極めて低い流動性は、格付に大き く影響する。しかし、2 社の信用プロファイルが全く等しく、唯一の違いが、一方は流動性が良 好であり、もう一方が「極めて」良好であるという場合、両社の格付は同じになることがある。 他の格付上の考慮事項 ムーディーズが考慮する要因は本稿で考察した要因以外にもあるが、ここで述べた考慮事項 を理解すれば、ほとんどの場合、民間運営の有料道路の信用力に対するムーディーズの見 方をほぼ推定できると考えられる。格付においては、経営陣の質、コーポレート・ガバナンス、 財務管理、流動性管理、イベントリスク、季節要因なども考慮する。これらの要因の分析は格付 プロセスにおいて不可欠な部分である。 経営戦略 経営陣の質は企業の信用力を支える重要な要因である。長期的な事業計画の実行状況の評 価は、経営陣の事業戦略・方針・哲学を評価する一助となり、競合他社のパフォーマンスやム ーディーズによる予想と比較した経営陣のパフォーマンスの評価となる。経営陣の質の一貫 性が一旦確立されれば、将来のストレス状況下での経営陣のパフォーマンスについての知見 が得られ、設定した計画や指針から大きく逸脱する傾向を示す指標となり得る。 コーポレート·ガバナンス コーポレート・ガバナンスの評価において注目する分野には、監査委員会の財務に関する専 門知識、上級幹部の報酬制度が規定するインセンティブ、関連当事者間取引、外部監査人と のやり取り、所有構造などがある。 財務管理 ムーディーズは、監査済み財務諸表の正確性を信頼して、格付の付与とモニタリングを行っ ている。こうした正確性は、業務の一元化、経営陣の適切な方針、会計方針と手続きの一貫 性といった、強力な内部統制によって可能になる。 全体的な財務報告プロセスの弱点、財務諸表の修正や規制当局への提出遅延は、内部統 制の潜在的な機能不全を示すものである。 流動性管理 流動性は全ての民間運営の有料道路にとって重要な格付要因であり、事業および財務の柔 軟性が一般に低い投機的等級の有料道路事業者にとっては、とりわけ重要である。ムーディ ーズは、現金の源泉と使途の両面から、企業の短期的な流動性需要に関する意見を形成す る。 26 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE その他の事業による影響 本手法によるマッピング表は、主要事業が高速道路や同様のインフラ資産の運営および建設 である発行体の評価に適用される。当該企業が、コア事業である高速道路以外の事業に手を 広げたか手を広げようとしている場合は、ファンダメンタルズ全体に対するその事業の存在の 影響を判断する。 21特に、コアである有料道路コンセッションより高いリスクを伴う事業への投 資は、マッピング表ベースの格付において格下げを招くだろう。 イベントリスク ムーディーズは、予想外のイベントの発生により発行体のファンダメンタルな信用力が突然、 大幅に低下する可能性があることを認識している。例外的なイベントの例として、買収・合併、 資産売却/スピンオフ、資本再編計画、訴訟、株主への利益配分などがある。 結論:マッピング表に基づく格付結果のまとめ ソブリン/サブソブリンまたは構造的に劣後することによる影響を強く受ける発行体の最終格付 から、こうした影響を取り除いて格付を調整した場合、25 の発行体のマッピング表ベースの評 価と実際の格付との対応状況は以下のようになる(詳細は付録を参照)。 27 SEPTEMBER 18, 2014 » 10 社のマッピング表に基づく格付が、実際の格付と一致した。 » 9 社のマッピング表に基づく格付と実際の格付の差が、数字付加記号格付で 1 ノッチで ある。 » 4 社のマッピング表に基づく格付と実際の格付の差が、数字付加記号格付で 2 ノッチで ある。 » 2 社のマッピング表に基づく格付と実際の格付の差が、数字付加記号格付で 3 ノッチで ある。 21 この点に関しては、何が「コア」事業であるかを適切に判断することが重要である。例えば、有料道路会社が 2 つの異 なるコンセッションを運営している場合、ムーディーズはこの格付マッピング表の適用においては、これらのコンセッショ ンを単一のコア·コンセッションとして見なす。この場合に、各コンセッションが実質的に異なる事業リスク性質を示している 場合は、「総合的な」スコアを用いて企業の信用力を適切に評価する。 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 付録 A:民間運営有料道路の格付マッピング表 サブ要因の ウェイト Aaa Aa A 主要な幹線道路の大 規模な道路網。必要 不可欠なサービス(例 えば、国全体の大規 模な高速道路網) 必要不可欠な接続ル ート。1 つまたは少数 の大規模な幹線道路 または都市ルート 必要不可欠な接続ル ート。小規模な幹線道 路または重要な都市 接続ルート(例:トンネ ルや橋梁) Baa Ba B Caa 要因 1:資産タイプおよび事業エリア(25%) 資産タイプ 10% 小規模な経済圏また はニッチな市場にお けるシングルアセット または小数の道路。 事業エリアでは重要 地域経済の影響を非 常に受けやすいシン グルアセットまたは少 数の道路。または重 要性が限定的な資産 悪化する市場におけ る小規模なシングル ア セット。または 実績のない、または 非常に弱い市場にお ける小規模なシング ルア セット。または 重要性が非常に疑わ しい資産 競合ルート 10% 現在も将来も競合ル ート(他の交通手段や 道路)が存在しない 盤石かつ安定的な競 争環境。かつ、 長期的に多少競争が 強まる可能性がある 長期的に競争が強ま る可能性がある 予見可能な将来にわ たって主要な交通手 段に変化がない。か つ、 近距離にある高品質 な既存の代替道路 は、深刻な経済的な 圧力がある場合にし か交通量の分散をも たらさないか、あるい は事業エリアの交通 量の増加を簡単に吸 収できない 高品質または改良が 予想される既存の代 替道路が、経済的な 圧力がある場合に交 通量を奪ったり、事業 エリアの交通量が増 加した場合に簡単に 受け皿になってしまう その他の既存の有料 道路は、十分に離れ た場所にある、品質 が劣っている、または 経済的な圧力があっ 今後 10 年間で予想さ たとしても脅威が限定 今後 10 年間で予想さ れる段階的な交通量 れる段階的な交通量 の減少が 10%~15% 的 の減少が 10%未満 28 SEPTEMBER 18, 2014 競争環境が変化しつ つある。新しいルート の開通時に、交通量 が顕著に変化する可 能性が 高い 競争環境が急速に変 化しつつある。また は、 交通量が短期間に著 しく(20%超)悪化する ことが予想される 明らかに必要性が疑 われる資産 競争環境により現在 の交通量が減少して いる。または、幹線道 路の交通量が急速な 減少を示しているか、 急速な悪化が予想さ れる 既存の代替道路は幹 線道路/事業エリアの 交通量を十分に吸収 できる 新しいルートの開通 後に予想される直近 の交通量の減少が 10%~20% 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE サブ要因の ウェイト 事業エリアの経済 のリジリエンス 5% Aaa 非常に大規模で、高 度に発展し十分に多 様化した経済基盤。 かつ、 非常に長い期間(10 年を超える期間)にわ たって堅調かつ予測 可能な経済成長の実 績がある。かつ、 ネガティブなショックを 受けた実績がない好 ましい経済環境。か つ、 Aa 大規模で、高度に発 展し十分に多様化し た経済基盤。かつ、 A 高度に発展し多様化 した経済基盤 長期にわたって経済 成長の実績があり、 長期にわたって予測 可能な経済成長の実 経済変動もほとんど 績があり、経済変動も ない ほとんどない。かつ、 経済環境および人口 好ましい経済環境と 構成は発展途上にあ り、長期的な方向性 人口構成 が不確実 Baa Ba B Caa 発展し多様化した経 済基盤であるが、一 定の経済変動が見ら れ、今後の経済は停 滞するか、ある程度 悪化することが予測さ れている。または、 経済基盤は発展し適 度に多様化している が、経済の見通しが 貧弱 経済基盤が貧弱で、 悪化している。かつ、 経済基盤が貧弱で回 復の見込みはほとん どない。または、 強固な経済基盤であ るが多様性に欠ける 経済基盤は発展途上 または低水準からの 成長途中 人口構成は中期的に 悪化する可能性があ る ショックには脆弱であ ると見られる。または 多様性は限定的。 または、 多様性が非常に限定 的。または、 ショックに脆弱。 または、 人口構成の動向が好 ましくない ショックに非常に脆 弱。または、 人口構成の動向が非 常に好ましくない 人口構成は過渡期に ある 強力かつ予測可能な 人口構成 要因 2:交通の状況およびパフォーマンス傾向(15%) 交通の状況 29 SEPTEMBER 18, 2014 5% 景気後退期にも交通 量の減少はないと思 わ れる。 景気後退期には一時 的(半年から一年)に ごく僅かに交通量が 減少する可能性があ る。経済状況が好転 一般的に小型車両の すれば交通量は直ち 割合が非常に高く、通 に完全に回復する 勤・通学者が主要で 一般的に小型車両の あると評価 割合が高く、通勤・通 学利用者が主要であ ると 評価 景気後退期には僅か に交通量が減少する 可能性があるが、経 済状況が好転すれば 直ちに完全に回復す る 一般的に、交通の約 3/4 が小型車両で、通 勤・通学利用者の割 合が大きいと評価 景気後退期には僅か に交通量が減少する 可能性があるが、中 期的には回復すると 見込まれている 景気後退期には交通 量が顕著に減少する 可能性があるが、回 復までの期間がはっ きりしている 一般的に、小型車両 が比較的多く、貨物輸 送は全体の 1/3 以 下。小型車両の大半 は通勤・通学利用者 であると評価 交通量は小型車両と 大型車両の割合が拮 抗。小型車両の一定 程度は通勤・通学利 用者であると 評価 利用者の内訳とは関 係なく、大きく変動し やすい交通の割合が 高い(季節/レジャー 利用など)。かつ、 大きく変動しやすい交 通が非常に高い割合 を占める 道路の利用を左右す る要因が偏っている 回復の見込みはある ため、不可逆的に交 ものの、中期から長期 通量が変化してしまう にわたると予想される 傾向にあると思われ る 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE サブ要因の ウェイト 有料交通の交通量 の実績と安定性 5% Aaa Aa A 非常に長く安定した有 長く安定した有料交通 安定した有料交通の 料交通の実績(20 年 の実績(15~20 年)。 実績(10~15 年)。 超)。かつ、 かつ、 交通に多少の変動あ ネガティブなショックの ポジティブな交通動向 り 履歴がない Baa Ba B Caa 有料交通の実績は限 定的(5~10 年)だ が、予想通りまたは予 想以上に成長してい る。 または、 有料交通の実績は限 定的(0~5 年)で、予 想通りに成長してい る。 または、 有料交通の実績が限 定的であるが、他の 比較可能な地域の有 料道路についての情 報はある。または、 有料交通の実績もデ ータもない 有料交通の実績は長 いものの、大幅な交 通量減少の履歴があ る(中期的な 10%超 の 減少) 大きく変動した実績が ある。または、 有料交通の実績は長 いものの、一定程度 の交通量減少の履歴 がある(中期的な 10% 未満の減少) 交通の密度 5% 交通密度が非常に 高い (例:車線キロあたり のAADTが 20,000 超 22) データ品質に問題が ある 交通密度が高い (例:車線キロあたり の AADT が 13,000 超) 交通密度が高い 交通密度が中程度 交通密度がやや低い (例:車線キロあたり (例:車線キロあたり (例:車線キロあたり の AADT が 7,000 超) の AADT が 3,000 超) の AADT が 1,000 超) 交通密度が低い (例:車線キロあたり の AADT が 500 超) コンセッション期間全 体を通じて、インフレ などに連動した料金 の引き上げや、追加 業務に対する公正か つ適時の費用回収が 可能なモデルが確立 されている。 かつ、 インフレなどに連動し た料金の引き上げが 可能なモデルが確立 されているが、承認ま たは定期的な検証が 必要 料金の引き上げには 交渉が必要。または 交通密度が低い (例:車線キロあたり の AADT が 500 超) 要因 3:コンセッションと規制の枠組み(10%) 料金の引き上げ能 力と意志 5% 事業者は自由に料金 を設定する権利があ り、必要に応じて値上 げを実施した実績が ある。かつ、 将来的に障害または 否定的な反動は予想 されない 否定的な反動は予想 されない。かつ、 介入の実績も見込み もない 必要に応じて随時調 整が必要と予想され る/その実績がある 否定的な反動または 介入は予想されない インフレなどに連動し た料金の引き上げが 可能なモデルが確立 されているが、承認ま たは定期的な検証が 必要で、料金調整の 程度や時期に一定の 不確実性 を伴う 否定的な反動は予想 されないか、あったと しても非常に限定的 コンセッション期間中 の料金設定は固定さ れていないが、定期 的に見直し交渉が行 われる 料金の変更や遅延 は、わずかに否定的 な反動を引き起こす おそれがある。また は、 料金引き上げの前例 や透明性が限定的。 または 何らかの介入が予想 される 22 30 承認後の料金引き上 げ中止や料金設定に 対する政府の介入と 料金引き上げの能力 いう重大な実績また および意志において、 は懸念がある。また 実質的な遅延または は、 不確実性の実績があ る/予想される。また 現在まで、料金引き 上げは阻まれている。 は、 または 料金の変更は実質的 に否定的な反動をも たらすと予想される、 または 何らかの実質的な介 入が予想される 実質的な介入が予想 される、または極めて 柔軟性が乏しい状態 が続く/乏しい状態に 陥ると予想される または、車線マイルあたりの AADT の相当量 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE サブ要因の ウェイト コンセッションと規制 の枠組みによるプロ テクション 5% Aaa Aa A Baa Ba B Caa 条件はコンセッション 契約で明確に定義さ れており、債権者の完 全な同意がなければ これを変更できない。 かつ、 コンセッション契約の 変更に際しては、最低 でも実際の業績と予 想された業績を維持 するための完全かつ 自動的な補償措置が 伴う。 かつ、 コンセッション契約で は、不利な変更の場 合に「公正な」補償措 置が担保されている が、補償の程度は詳 細には定義されてい ない コンセッション契約に おいて、不利な変更 の場合は補償が必要 であると規定されてい るが、明確さに欠け、 ガイドラインもない 不利な変更の場合に 補償の権利はある が、金額が明確でな い 不利な変更の場合に ついての補償の権利 が限定的。または、 事業許可取得者の制 御が及ばないイベント に対して、コンセッショ ン契約や法的枠組み に保護規定が存在し ない 事業環境の変化な ど、あらゆる種類のイ ベントに完全かつ即 時の補償措置が用意 されており、それにつ いてコンセッションま たは規制の枠組みで テスト済みである 事業環境の変化な ど、多くのイベントに 即時の補償措置が期 待さ れる 適時かつ透明性を持 って契約が適用され 信用指標への悪影響 がない、という確かな 実績と期待がある 事業環境の変化な ど、多くのイベントに 対して補償が期待さ れて いる 補償は特定の場合に 限られ、交渉が必要 になる 関連するコンセッショ ン契約または規制枠 組み内で適切な補償 が行われた前例があ る 補償体制が不明確で 補償には交渉が必 あり、政治介入の対 要。一般法においても 象となる 特定の条項や保護規 定が存在しない 関連するコンセッショ ン契約または規制枠 組み内で前例がない コンセッション契約の 条件について補償を 伴わない一方的な変 更の実績があるか、 そうした事態が予想さ れる 要因 4:財務方針(10%) 財務方針 10% 非常に保守的な財務 方針の長期にわたる 実績があり、今後もそ の継続が予想され る。非常に安定的な 財務指標。業界的水 準と比較して負債レベ ルが低い。 かつ、 保守的な財務方針の 長期にわたる実績が あり、今後もその継続 が予想される。非常に 安定的な財務指標。 負債レベルが業界平 均よりも低い。かつ、 保守的な財務方針に ついて一定期間の実 績があり、今後もその 継続が予想される。 債務のレバレッジは 控えめで、株主と債権 者との バランスを取ってい る。 保守的な財務方針の 実績があり、今後もそ の継続が予想され る。業界平均の負債 レベルで、株主と債権 者とのバランスを取っ ている。 長期にわたる非常に 信用プロファイルの弱 高い信用力へのコミッ 体化を招く、株主への 長期にわたる最高水 ト 信用プロファイルの弱 利益配分の増加や買 準の信用力へのコミッ メントを公言 体化を招く、株主への 収を行うリスクがあ ト 利益配分の増加や買 る。目標指標への確 収を行う可能性はな かなコミット メントを公言 い。高い信用力への メント 確かなコミットメント 31 SEPTEMBER 18, 2014 債権者よりも株主を優 先しうる財務方針の 実績があるか、そうし た政策を継続すると 予想される。レバレッ ジ水準は平均よりも 高いが、過度ではな い。 攻撃的な財務方針の 実績がある/債権者に はわずかなクッション しか確保せず、高いレ ベルのレバレッジによ って株主を優先する 財務方針を取る可能 性がある。または、 所有者は株式分配や 株主への利益配分ま 買収を重視すると予 たは買収による高い 想されるが、財務安 財務リスク 定性を犠牲にすること は ない 極端に高い債務レバ レッジを継続した実績 があるか、そうした政 策を取ることが予想さ れているため、債権者 に不利となる財務方 針をとることが予想さ れる。 または、 債務リストラの可能性 がある 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE サブ要因の ウェイト Aaa Aa A Baa Ba B Caa 要因 5:カバレッジおよびレバレッジ(40%) キャッシュ・インタレ スト・カバレッジ 8% ≥10x 7~10x 4.5~7x 2.5~4.5x 1.8~2.5x 1.5~1.8x <1.5x FFO/有利子負債 8% ≥40% 25-40% 14-25% 8-14% 6-8% 4-6% <4% ムーディーズのデッ ト·サービス·カバレッ ジ·レシオ 23 8% ≥8x 5~8x 3~5x 1.8~3x 1.3~1.8x 1~1.3x <1x RCF/設備投資 8% ≥3.5x 2.5~3.5x 1.5~2.5x 1~1.5x 0.5~1x 0~0.5x <0x コンセッション・ライ フ・カバレッジ・レシ オ 24 8% ≥10x 5~10x 3.3~5x 2.5~3.3x 1.7~2.5x 1.25~1.7x < 1.25x 要因 6:ストラクチャー上の考慮事項のアップリフト 債務構造の特徴によるノッチの増加数(0~3 ノッチ) 23 この比率の定義は次の通り。 コーポレート:(FFO +支払利息–メンテナンス設備投資)/年間債務返済額。※年間債務返済額は以下の計算式により求められる:((ST 負債 + LT 負債(総額))x 割引率)/(1 –(1/(1 +割引率)残存コンセッション 期間))。 プロジェクト・ファイナンス(完全分割の住宅ローン形式の元本返済):CFADS/(利息と元本の支払金額)。※CFADAS=営業キャッシュフロー+支払利息-合計設備投資額±適宜利用可能な準備金からの繰り戻 しまたは繰り入れ プロジェクト・ファイナンス(非完全分割)CFADS/年間債務返済額。 24 この比率の定義は次の通り。 コーポレート(標準計算):CFADS の正味現在価値(NPV)/総債務適宜利用可能な準備金からの繰り戻し/繰り入れは、有料道路のコーポレート構造には関連しないことに留意されたい。 コーポレート(安定的):(1/(割引率-成長率)x(FFO+支払利息-メンテナンス設備投資)x(1 -((1 +成長率)/(1 +割引率))^コンセッションの残存年数)/総債務。 プロジェクト・ファイナンス:((CFADS の正味現在価値(NPV))+債務返済準備資金)/総債務。 32 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 付録 B:民間運営による有料道路 – マッピング結果のサンプル 下表では、特定のサブ要因のマッピング結果が、実際の格付よりも 2 カテゴリー以上高いか低い発行体を、そのサブ要因に関するポジティブあるいはネガティブ なアウトライヤーと定義している(例えば、特定のサブ要因のマッピング結果が Baa となる B 格の企業は、そのサブ要因におけるポジティブ・アウトライヤーとして表 示 ) 。 緑色のセル:ポジティブ・アウトライヤー:特定のサブ要因において、マッピング結果がムーディーズによる格付を文字格付で 2 カテゴリー以上上回る 赤色のセル:ネガティブ・アウトライヤー:特定のサブ要因のマッピング結果がムーディーズによる格付を文字格付で 2 カテゴリー以上下回る 資産タイプおよび事業エリ 交通の状況および ア パフォーマンス傾向 社名 Airport Motorway Trust Atlantia S.p.A. カバレッジおよびレバレッジ コンセッショ 料金の引 ンと規制の枠 き上げ能 組みによるプ 力と意志 ロテクション キャッ シュ・イ ンタレ ムーデ スト・カ FFO/有 ィーズ バレッ 利子 RCF/設 の ジ 負債 DSCR 備投資 CLCR ストラク チャー上 の考慮事 項のアッ プリフト A3 A3 A A Aa A A A Aa A Aa Ba Baa Ba A A 0.50 Baa1 Baa1 Aa Aa A A A A A Baa Baa Baa Baa Baa Ba Baa 0.00 マッピ ング表 ムー ディーズ ベース 資産 の格付/ の格付 タイ プ BCA1 2 競合 ルート 有料交通 の交通量 の実績と 安定性 交通 の密 度 財務 政策 Autoroutes du Sud de la France(ASF) Baa1 A3 Aaa Aa Aa A Aa Aa Aa Baa Baa Baa Baa Baa Baa Ba 0.00 Autovias S.A. Baa3 Baa3 Baa A Baa Ba Ba Baa Aa Baa Ba A Aa Ba B Ba 0.00 Carretera de Cuota Constit. y Ref. La Venta Baa2 Baa2 Aa A A Aa Aa A Aa A Baa Ba Ba B Baa B 1.00 Concessionaria Auto Raposo Tavares S.A. Ba2 B1 Baa Baa Baa Ba Ba A Baa Baa Ba B Caa Caa B Ba 0.00 Concessionaria de Rodovias Interior Paulista Baa3 Baa2 Baa A Baa Ba A Baa Baa Baa Baa Baa A Baa Ba Baa 0.00 Concessionaria Rod.Oeste SP Viaoeste S.A. Baa2 Baa2 A Baa A A Aa Aa Baa Baa Ba A Aa Ba Baa Ba 0.00 Concessionaria Rodovias do Tiete S.A. Ba2 B2 Ba Ba Baa Baa B Baa Baa Baa Baa Caa Caa Caa B B 0.00 ConnectEast Finance Pty Ltd Baa2 Baa1 Aa Aa Aa A Ba A Aa A Baa Ba Ba Ba Ba Baa 0.50 ENA Norte Trust3 ba1 ba3 A A Baa Aa Aa Ba Ba Baa Baa B Caa B Baa Caa 1.00 Fideicomiso IDEAL de Carreteras(FIC) Baa1 Baa2 A A A A A A Aa A Baa Ba B Ba Baa Ba 1.00 Interlink Roads Pty Ltd Korea Expressway Corporation3 33 事業エリ アの経 済のリジ 交通 リ の状 エンス 況 コンセッション(運営権)と 規制の枠組み SEPTEMBER 18, 2014 A2 A2 A A Aa A Aa Aa Aa A A A A Baa Baa Baa 0.50 baa2 ba2 Aaa Aa Aa Aa Aa Aa B Ba Baa B Caa Ba B Ba 0.00 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 資産タイプおよび事業エリ 交通の状況および ア パフォーマンス傾向 事業エリ アの経 済のリジ 交通 リ の状 エンス 況 コンセッション(運営権)と 規制の枠組み カバレッジおよびレバレッジ コンセッショ 料金の引 ンと規制の枠 き上げ能 組みによるプ 力と意志 ロテクション キャッ シュ・イ ンタレ ムーデ スト・カ FFO/有 ィーズ バレッ 利子 RCF/設 の ジ 負債 DSCR 備投資 CLCR ストラク チャー上 の考慮事 項のアッ プリフト Metropistas Baa3 Ba1 A Aa Baa A Aaa Aa A Ba Baa Ba Caa Caa Baa A 1.00 Rota das Bandeiras S.A. Ba1 Baa3 Baa Ba A Ba Ba A Baa Baa Baa Ba Baa Baa Ba Baa 0.00 Ruta del Maipo Sociedad Concesionaria S.A. Baa3 Baa3 Aa Aa Aa A A A Aa A Baa Ba Ba B Baa Caa 1.00 Sanef Baa1 Baa2 Aaa Aa Aa A Aa A Aa Baa Ba Baa Baa B A B 0.00 Shenzhen International Holdings Limited Baa3 Baa2 A Baa A Baa A Aaa Ba Ba Baa Baa Baa Baa Ba Ba 0.00 Sociedad Conces.Autopista Vespucio Norte S.A. Ba1 Ba2 A Baa Aa Aa Ba A Aa A Baa B Caa Caa Baa B 1.00 Sociedad Concesionaria Autopista Central Baa1 A2 Aa Aa Aa Aa Baa Aa Aa A Baa Baa Baa Baa Baa Ba 1.00 Societa Iniziative Autostrad(SIAS) Baa2 Baa2 Aa Aa A A Baa A Baa Baa Baa A A Ba Ba B 0.00 社名 マッピ ング表 ムー ディーズ ベース 資産 の格付/ の格付 タイ プ BCA1 2 競合 ルート 有料交通 の交通量 の実績と 安定性 交通 の密 度 財務 政策 Toll Road Investors Partnership II Ba2 Ba2 Baa A Aa Baa Baa A Baa Baa Baa B Caa B Ba Caa 1.50 Transurban Finance Company Pty Ltd Baa1 Baa3 Aaa Aa Aa A Aa Aa Aa A Baa Ba B Ba B Baa 0.00 Verdun Participations2S.A. Baa3 Baa3 A Aa Aa B Baa Ba Aa Baa Ba Ba Caa B Baa Ba 2.00 1 ベースライン信用リスク評価は、発行体のスタンドアローンの本質的な信用力についての見解である(関連会社または政府からの外的な支援は除く) 2 (該当する場合は)ノッチアップ/ノッチダウンを含むスコアカードマッピング表に基づく(関連会社または政府からの外的な追加支援は除く) 3 GRI 34 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE アウトライヤーの説明 要因 1:資産タイプおよび事業エリア マッピングの結果は、格付の対象となった有料道路事業者の総じて強固な資産の質を反映し て、高い相関性またはポジティブ·アウトライヤーを示している。格付された有料道路の多くは、 成熟化した大規模な道路網(欧州)か、競争の限られた極めて重要な設備(オーストラリア、北 米、中南米)に該当する。また、事業エリアのリジリエンスは一般的に強い。これらの考慮事項 は、レバレッジの高さや経済指標の弱さによって相殺される。 要因 2:交通の状況およびパフォーマンス傾向 この要因のマッピング結果は、高い相関性または総じてポジティブなアウトライヤーを示している。 ポジティブ・アウトライヤーとしては、たとえば、チリの都市エリアで有料道路事業を実施してお り、そのため強力な資産や比較的安定した交通実績を備え、それによって経済指標の弱さを 補っているようなケースが挙げられる。 ネ ガ テ ィ ブ ・ ア ウ ト ラ イ ヤ ー と し て は 、 顕 著 に 季 節 性 が あ る 交 通 に 利 用 さ れ て い る Verdun Participations2S.A.などがある。こうした弱みは、資産および資金調達構造の強みにより部分的に補 完されている。 要因 3:コンセッション(運営権)と規制の枠組み 実際の格付とマッピングの結果との相関性は、いくつかのポジティブ·アウトライヤーはあるもの の、全般的に良好である。 ポジティブ・アウトライヤーには、料金引き上げの能力は強いが、比較的弱い経済指標により 格付に制約がある企業などがある。たとえば、Autoroutes du Sud de la France、Autovias、 Carretera de Cuota Constit.Y Ref. La Venta、ConnectEast Finance Pty、FIC、Ruta del Maipo Sociedad Concesionaria 、 Sanef 、 Sociedad Conces.Autopista Vespucio Norte 、 Sociedad Concesionaria Autopista Central、Transurban Finance Company、および Verdun Participations 2 などである。 要因 4:財務方針 マッピングの結果は全般的に中程度のスコアに相当するもので「Baa」カテゴリーの周辺に集 中している。 要因 5:カバレッジとレバレッジ 格付対象の有料道路事業者は比較的レバレッジが高い財務プロファイルを持つことから、マ ッピングの結果には全般的にネガティブ・アウトライヤーが現れている。このような弱い信用指 標は通常、強力な事業リスクプロファイルによって補完されている。 Concessionaria Auto Raposo Tavares は、レバレッジが高いためネガティブなアウトライヤーであ る。こうした弱みは、長いコンセッション寿命と、比較的強力な資産により部分的に補完されて いる。 35 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE Concessionaria Rodovias do Tiete の高いレバレッジと弱いキャッシュ・インタレスト・カバレッジは、 長いコンセッション寿命と、すでに資金が全額用意されている投資プログラムの完了後には交 通量が増加するであろうという期待により軽減されている。 ENA Norte および Metropistas もネガティブ・アウトライヤーの一部であり、その格付は資産の 重要性と強さ、盤石な交通の状況およびパフォーマンス傾向、さらに資金調達構造により評 価されている。 Korea Expressway Corporation の高いレバレッジは、有料道路の長年の実績に加えて、強力な 資産特徴および交通の状況によって部分的に軽減されている。 Ruta del Maipo Sociedad Concessionaria、Toll Road Investors Partnership II、Sociedad Conces. Autopista Vespucio Norte および Verdun Participations2 の高いレバレッジは、資金調達構造に 加えて、資産の重要性と強さにより軽減されている。 36 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 付録 C:建設中の有料道路およびランプアップリスク:格付マッピング表以外の追 加考慮事項 本レポートで概説されている要因がまたは稼働開始段階にある有料道路の長期的な格付に(フォ ワード・ルッキングベースで)適用可能である場合、本手法はそれらの有料道路の評価のガイダン スにも利用される場合がある。本付録では、建設段階、交通量や収益の予測、および予想され る立ち上げ期間などに関連する特有のリスクについて触れる。これらのリスクがある場合は、 安定的な稼動状態にある有料道路の格付結果と比較して、一般的に低い格付が付与される。 建設リスク: 新規有料道路プロジェクトの建設段階は、資金調達が終了して長期格付が付与されるまで通 常 3~5 年に及ぶ。そのため、格付に建設段階に伴うリスクを織り込むことが重要である。債務 返済のためのキャッシュフローは道路の稼働が始まらないと開始されないため、プロジェクトが 計画通りかつ予算内で完了する可能性を評価する。 建設中のインフラプロジェクトの不測の事態については明文化されており、有料道路にも適用 できる主要な建設段階リスクを選定した。 資産および物理的な建設に関するリスクのうち、以下について分析した。 » 建設中のプロジェクトの複雑性(例えば、単純な道路なのか橋梁やトンネルなのか、ある いはその両方を含むのか) » 掘削、トンネル掘り、ボーリング、防水工事、およびその他の同様に複雑な作業など、用 地準備要件 » 通行権の取得 » 建設技術、使用資材、実績のある技術か新規の技術か » 用地へのアクセスしやすさや建設期間中の建設制約などのロジスティック » 請負業者の経験および業績、有料道路事業者の建設監督経験 有料道路プロジェクトの要素の複雑さが増すと、建設の遅延や予算超過の可能性が高まる。 そのような場合、付与される格付はマッピング表ベースの格付よりも低くなる可能性がある。さ らに、プロジェクト予算を拡大し、プロジェクト完了を遅延させ、それにより稼働期間の開始日 を遅らせる恐れがあると当社が評価するすべての要因を格付に織り込む。 契約、法律および財政に関する条項も建設リスクの評価において重要である。このリスクには 以下のようなものがある: コンセッション契約のリスク分担。通行権取得、地質学的/考古学的リスク、収用リスクを誰が負 担するかなど。 建設契約条件。固定費用で日付が確定した契約なのか資材費用と人件費に基づくのか、契 約の遅延または不履行に際して請負業者が支払う損害賠償額の予定の条項、不可抗力事 象、および請負業者の負担上限など 建設遅延へのスケジュールの予備期間(実質的な完了の期限または最終期限のいずれかの 延長) 25 負債性資金調達と比較したプロジェクトへの出資の金額および時期 25 37 SEPTEMBER 18, 2014 両方の条項は有料道路プロジェクトの法定書類に定義。「実質的な完了日」は一般的に、資産の商用稼働が求められる 日付を意味する。「最終期限」は建設および引受が完了する、あるいはコンセッションが終了する日付である。 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 予算超過や遅延の場合に発行体が利用できる流動性支援の金額、種類、および健全性など、 建設段階で利用可能な流動性。 事業許可取得者が負担するプロジェクトの複雑性とリスクは、適切なリスク軽減に必要な保護 レベルを決定する主要な要素である。 交通量と収益の予測およびランプアップリスク: 交通および収入の実績がない有料道路を格付する主な問題点の一つは、業務開始から数年 後に道路が安定的な稼動状態に達する時点までの、将来的な業績の正確な評価である。こう した不確実性が伴うため、建設中または立ち上げ段階にある有料道路の初期格付は、最も可 能性が高いと考えられるシナリオに基づいて、マッピング表ベースの格付よりも数ノッチ低くな る可能性がある。 ムーディーズは一般的に、独立した第三者機関のコンサルタントにより提供される交通及び収 益(T&R)予測を利用して、建設中または業務開始段階(一般的には立ち上げ段階と呼ばれ る)のいずれかにある新規有料道路の営業リスクを評価する。これらのレポートは、コンセッシ ョン期間を通じた有料道路のキャッシュフロー創出能力(将来的な債務を支える能力の鍵とな る)の分析の出発点となる。 しかし、コンサルタントの予測は、時間とともに変化する恐れのある複数の仮定および複雑な 要素に基づいている。そのため、経験のある交通分野のコンサルタントが信頼の置けるヒストリ カルデータおよび実証済みの経済モデルテクニックを駆使しても、導出された T&R 予測に はかなりの不確実性が含まれる。通常はコンサルタントによる規範事例を参考にしながら、交 通量が予測を下回った場合に立ち上げ期間中の債務返済を満たすのに十分な流動性があ るかどうかなど、ストレスに対するリジリエンスをテストし、複数の下振れシナリオや損益分岐シ ナリオを分析する。 初期の T&R 分析後に利用可能な交通情報の可用性および頻度も、発行体の格付に影響し うる。更新された調査がなければ、利用可能な関連データに基づいて稼働業績に関する予想 を改定し続けることになるだろう。 稼働段階に入ると、利用者ベースが具体化してくる。経験則に従えば、初期の数年間に有料 道路が当初予想に比較的近い範囲の業績を上げない場合は、稼働後の数年間に著しく増 加する債務返済のスケジュールをカバーするにあたって、十分なキャッシュフローを中長期的 に創出できない可能性が高い。また、このような道路の安定的な交通量は数年、または数十 年にわたって予測レベルをかなり下回る可能性が高い。結果として、稼働後数年間の有料道 路の格付は、安定的な状態にある有料道路よりも変動が大きくなる。 繰り延べ債務の返済スケジュールをはじめ、有力な銀行からの信用状(LC)、偶発資本 (CC)、立ち上げ期間準備金、および債務返済準備金などの形式でのその他の流動性資産 などの構造上の要素は、稼働開始期間の信用リスクを軽減する。当社は、これらの側面はこ の段階における有料道路の資金調達の主要な部分であると考える。ムーディーズは、予想さ れる交通量と照らし合わせてこのような流動性が適切であるのかという点や、資金調達の確実 性を取り巻く問題についても与えられた流動性の形態に基づいて評価する。 38 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 付録 D:管理車線プロジェクト:固有の格付考慮事項 交通計画当局が都市圏の過密な道路の許容量を増やすソリューションをますます検討するよ うになっていることを背景として、無料の代替車線と平行して有料道路を建設するという比較 的新しい現象が生じるようになっている。管理車線は、道路主要幹線道路の既存の無料車線 または汎用車線に隣接した有料道路で構成され、有料車線への出入口が 1 つ以上設けられ ている。 管理車線プロジェクトに固有の特徴は、有料道路とは異なるリスクプロファイルをもたらす。 第一に、価格設定が変動することに加えて、隣接する汎用車線が順調に流れているかどうか によって利用者が意思決定を下すため、特に立ち上げ期間における管理車線プロジェクトの 交通量と収益は予測することが難しい。加えて、管理車線プロジェクトではユニークな価格設 定メカニズムが採用されており、収益の最大化ではなく、速度と渋滞レベルの許容値を満た すように価格が設定される。料金が交通量の増加とともに上昇し、交通量の減少に合わせて 低下することを考慮すると、収益の変動性は従来型の有料道路よりも大きく、収益予想の困難 さが増す。さらに、この新しい道路形態の実績は限られているため、収益を最大化しつつ、利 用者に受け入れられる料金で適度な移動時間を確保し、効果的かつ効率的にダイナミックな 料金システムを管理することに伴う実行リスクは大きい。 T&R 予測に関して、収益の変動性が内在しており、複雑性が増していることを考えると、一般 的に管理車線プロジェクトの資金調達は、同じ格付の有料道路よりも大幅に強固なデット·サ ービス·カバレッジ·レシオと流動性を創出するような構造になっていると期待することができる。 高いデット·サービス·カバレッジ·レシオと流動性支援は、交通量や収益の予測未達時に必要 なバッファーを提供する。安定した利用者基盤を獲得するまでに比較的長い時間がかかり、 そのことによって立ち上げ期間後も交通量と収益の変動が長引くことから、流動性支援につ いても通常より長期にわたって必要になるであろう。 管理車線プロジェクトに固有の特徴やリスクについての詳しい分析は、ムーディーズのスペシ ャ ル コ メ ン ト “ Managed lanes are HOT!Unique risks and benefits versus traditional tolling”(Moody’s Investors Service, May 2013)を参照されたい。 39 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 付録 E:IFRS における会計上の考慮事項 本付録では、民間運営の有料道路事業者の分析に関連した国際会計基準(IFRS)における 会計上の考慮事項について簡単に説明する。 国際財務報告解釈指針委員会(IFRIC)第 12 号「サービス譲渡契約」は民間事業者によるコ ンセッション契約についての会計処理ガイダンスを提供している。IFRIC 12 の適用によって、 有料道路が金融資産または固定資産のどちらに分類されるかが決まる。事業者が公共サー ビスの利用者に課金する権利がある場合、コンセッション契約下の有料道路資産は無形資産 に分類されるであろう。ただし、利用者に課金する権利があるからといって無条件に現金を受 領できるわけではなく、課金金額は公衆によるサービスの利用量に依存する。反対に、事業 者がコンセッション譲与者から(または譲与者の裁量で)現金を無条件に受領する権利を有す る場合は、有料道路資産は金融資産とみなされる。後者の場合、コンセッション資産は利子 付き金融債権に分類される。IFRIC 12 は、単一契約内で現金受領の条件付き権利および無 条件の権利が共存する可能性を認めている。 財務諸表は、事業者が金融資産または無形資産のどちらに分類しているかによって大きく異 なってくる。特に、コンセッション期間を通じて 2 つのモデルの EBITDA と FFO の間に差異が 生じるのが普通である。金融資産モデルでは、資金流入の一部は債権の支払として記帳され (その結果 EBITDA および FFO からは除かれる)、一部は前倒しの金利収益として記帳され る(EBITDA および FFO に含まれる)ため、モデル間の大きな差異が表面化することになる。 FFO は有料道路事業者の信用力の評価に通常使用する財務指標であることから、当社の分 析においては FFO が一貫していて比較可能であることが非常に重要になってくる。 ムーディーズでは監査後の財務諸表を用いて財務指標を算出することとしているが、報告さ れている金額に大きな差が生じている場合があることは認識している。差異が大きい可能性 があり、利用可能な公開データが十分にある場合は、収益、営業費用、および受取利息を適 宜調整することを検討し、資金流入総額を EBITDA および FFO に加え、それらの値を用い て比率を算出することで、他の格付対象の有料道路と比較できるようにする。より一般的には、 ムーディーズの評価では会計上の記載ではなく実際の事業の経済性を考慮する。 IFRIC 12 で解決されているとは言えない会計上の差異が生じる可能性がある領域としては、 資産状態の維持または回復の必要費用に関連したものがある。コンセッション契約において、 コンセッション契約の終了時に有料道路事業者が資産を一定の有用性/状態のレベルまで維 持または回復してから、資産を譲与者に譲渡する必要があると定められている場合は、当該 費用は理論上、営業キャッシュフローに分類されるべきである。しかし、これについては企業 ごとに分類方法が異なっており、コンセッション契約対象の資産の状態を維持または回復する ためのキャッシュフローを営業活動ではなく、依然として投資活動に分類している場合がある ことに留意されたい。 有料道路のメンテナンス義務は、例えば資産の種類、カバーしている地形の種類、地理的な 位置、交通の種類および密度、さらには気候にさえも左右されると認識している。ムーディー ズの経済指標の分析および計算では、監査済みの財務諸表を出発点として、メンテナンス費 用の相対的な金額を判断する。また、コンセッション契約期間にわたるメンテナンス投資の必 要合計額について格付対象の有料道路事業者と議論するとともに、第三者機関によるレポー トを参考にすることで、メンテナンス費用を個別に概算する。 40 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE 付録 F:車線キロあたりの AADT 計算および予測 本付録では、交通密度の尺度である車線キロ当たりの年間平均 1 日交通量(AADT)の計算 または概算のアプローチについて、例を用いてより詳細に説明する。 この比率の定義は次の通り: AADT/車線キロ=双方向で見た毎日車線 1 キロを利用する平均車両台数 平均で 4,000 台の車両が毎日道路の一方向(例:北から南)だけ利用し、さらに 4,000 台の車 両が反対方向(例:南から北)を利用している場合、車線キロあたりの合計 AADT は 8,000 にな る。片側 2 車線道路(各方向に 2 車線)の場合は、車線キロあたりの AADT は 4,000 となる。 それぞれの司法管轄区域では利用できるデータが異なる場合もある。以下の例は、AADT/車 線キロの代替計算方法の一部を示している。ある事業者の有料道路網の車線数が路線によ って異なる場合、ムーディーズは各路線の長さに基づいてウェイトをかける加重平均車線数を 用いる。 例 1 – ムーディーズが適切な AADT 数値を利用可能であると考える場合 1 キロメートル当たりの AADT = 16,000 各方向の加重平均車線数 = 2.3 AADT/車線キロ = 16,000 / 2.3 = 6,956 例 2 – 事業者が距離ベースで料金を徴収するケース 車 両 台 数× 走 行キ ロ ( つま り 1 年 当た りの走 行 距離 の合 計 、通 常 は双 方向 を含 む )= 146,000,000 道路の長さ = 25 キロ 各方向の加重平均車線数 = 2.3 AADT/車線キロ = 146,000,000 / 25 / 365 / 2.3 = 6,956 例 3 – 事業者が総通行台数を記録する場合 例 3a 1 年当たりの有料通行台数合計(双方向) = 5,840,000 各方向の加重平均車線数 = 2.3 この場合、ムーディーズがほとんどの車両が道路の全長を使用したと仮定すると、 AADT/車線キロ = 5,840,000 / 365 / 2.3 = 6,956 例 3b 1 年当たりの有料通行台数合計(双方向) = 17,520,000 各方向の加重平均車線数 = 2.3 41 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE この場合、ムーディーズが平均で各車両が道路の全長の 1/3 を使用したと仮定すると、 AADT/車線キロ = 17,520,000 / 3 / 365 / 2.3 = 6,956 例 4 – 事業者が片道均一料金を徴収するケース: 例 4a 1 年当たりの有料通行台数合計(片側) = 2,920,000 各方向の加重平均車線数 = 2.3 この場合、ムーディーズがほとんどの車両が道路の全長を使用したと仮定すると、 AADT/車線キロ = 2,920,000 x2/ 365 / 2.3 = 6,956 例 4b 1 年当たりの有料通行台数合計(片側) = 8,760,000 各方向の加重平均車線数 = 2.3 この場合、ムーディーズが平均で各車両が道路の全長の 1/3 を使用したと仮定すると、 AADT/車線キロ = 8,760,000 x2/ 3 / 365 / 2.3 = 6,956 例 5 – 事業者が電子料金所を使用して、各料金所を通過した車両 1 台を 1 取引として数 える場合 1 年当たりの有料通行台数合計 = 23,358,248 各方向の加重平均車線数 = 2.3 この場合、ムーディーズがほとんどの車両は 4 箇所の料金所を通過したと仮定すると、 AADT/車線キロ = 23,358,248 / 4 / 365 / 2.3 = 6,956 42 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INFRASTRUCTURE ムーディーズの関連リサーチ 格付手法: » 政府系発行体に対する格付手法のアップデート (Moody’s Investors Service, July 2010) (ム ーディーズ・ジャパン版 2010 年 9 月) » ソブ リン の信用 力 はどのよ うに他の 格付に 影響 しうる か (Moody’s Investors Service, February 2012) (ムーディーズ・ジャパン版 2012 年 2 月) 上記レポートにアクセスするには、各エントリをクリック。上記の参考資料は本レポートの発行 時点では最新であるが、最新版が利用可能な場合があることに留意されたい。一部のクライア ントしかアクセスできないレポートもある。 このセクターで付与された信用格付は、主にこの信用格付手法によって決定されたものであ る。当セクターの発行体および格付手段の決定には、(1 つまたは複数の二次的な信用格付 手法、あるいは複数のセクターにまたがる信用格付手法で表される)広範な格付手法を検討 することも重要かもしれない。潜在的に関連性のある二次的またはクロスセクターの信用格付 手法はこちらを参照されたい。 この信用格付手法を用いて付与した信用格付のヒストリカルな頑健性と予測能力をまとめた データについては、ムーディーズのウェブサイトをご覧いただきたい。 43 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路 INSERT SECTOR HERE ムーディーズ・ジャパン株式会社 〒105-6220 東京都港区愛宕 2 丁目 5-1 愛宕グリーンヒルズ MORI タワー 20F Report Number: 著者 Joanna Fic 173716(Japanese) 165911 (English) プロダクション・アソシエイト 高瀬 美紀 著作権表示(C)2014 年ムーディーズ・ジャパン株式会社、ムーディーズ SF ジャパン株式会社及び(又は)これらのライセンサー及び関連会社(以下、総称して「ムーディーズ」といいます)。無 断複写・転載を禁じます。 ムーディーズ・ジャパン株式会社及びムーディーズ SF ジャパン株式会社(以下、それぞれ「MJKK」、「MSFJ」といいます。)により付与される信用格付は、事業体、与信契約、債務又は債務類 似証券の相対的な将来の信用リスクについての、ムーディーズの現時点での意見です。MJKK 及び(又は)MSFJ が発行する信用格付及び調査刊行物(以下「MJKK 及び(又は)MSFJ の刊行 物」といいます)は、事業体、与信契約、債務又は債務類似証券の相対的な将来の信用リスクについてのムーディーズの現時点での意見を含むことがあります。MJKK 及び(又は)MSFJ は、 信用リスクを、事業体が契約上・財務上の義務を期日に履行できないリスク及びデフォルト事由が発生した場合に見込まれるあらゆる種類の財産的損失と定義しています。信用格付は、 流動性リスク、市場価値リスク、価格変動性及びその他のリスクについて言及するものではありません。信用格付並びに MJKK 及び(又は)MSFJ の刊行物に含まれているムーディーズの意 見は、現在又は過去の事実を示すものではありません。信用格付並びに MJKK 及び(又は)MSFJ の刊行物は、投資又は財務に関する助言を構成又は提供するものではありません。信用 格付並びに MJKK 及び(又は)MSFJ の刊行物は特定の証券の購入、売却又は保有を推奨するものではありません。信用格付並びに MJKK 及び(又は)MSFJ の刊行物はいずれも、特定の 投資家にとっての投資の適切性について論評するものではありません。MJKK 及び(又は)MSFJ は、投資家が、相当の注意をもって、購入、保有又は売却を検討する各証券について投資家 自身で研究・評価するという期待及び理解の下で、それぞれ、信用格付を付与し、MJKK 及び(又は)MSFJ の刊行物(のいずれか該当する方)を発行します。 MJKK 及び(又は)MSFJ の信用格付並びに MJKK 及び(又は)MSFJ の刊行物は、個人投資家の利用を意図しておらず、個人投資家が何らかの投資判断を行う際に MJKK 及び(又は)MSFJ の 信用格付並びに MJKK 及び(又は)MSFJ の刊行物を考慮することは、慎重を欠く行為です。もし、疑問がある場合には、ご自身のフィナンシャル・アドバイザーその他の専門家にご相談する ことを推奨します。 ここに記載する情報はすべて、著作権法を含む法律により保護されており、いかなる者も、いかなる形式若しくは方法又は手段によっても、全部か一部かを問わずこれらの情報を、ムーディ ーズの事前の書面による同意なく、複製その他の方法により再製、リパッケージ、転送、譲渡、頒布、配布又は転売することはできず、また、これらの目的で再使用するために保管すること はできません。 ここに記載する情報は、すべてムーディーズが正確かつ信頼しうると考える情報源から入手したものです。しかし、人的及び機械的誤りが存在する可能性並びにその他の事情により、ムー ディーズはこれらの情報をいかなる種類の保証も付すことなく「現状有姿」で提供しています。ムーディーズは、信用格付を付与する際に用いる情報が十分な品質を有し、またその情報源が ムーディーズにとって信頼できると考えられるものであること(独立した第三者がこの情報源に該当する場合もあります)を確保するため、すべての必要な措置を講じています。しかし、ムー ディーズは監査を行う者ではなく、格付の過程で又は MJKK 及び(又は)MSFJ の刊行物の作成に際して受領した情報の正確性及び有効性について常に独自に確認することはできません。 法律が許容する範囲において、ムーディーズ及びその取締役、役職員、従業員、代理人、代表者、ライセンサー及びサプライヤーは、いかなる者又は法人に対しても、ここに記載する情報 又は当該情報の使用若しくは使用が不可能であることに起因又は関連するあらゆる間接的、特別、二次的又は付随的な損失又は損害に対して、ムーディーズ又はその取締役、役職員、 従業員、代理人、代表者、ライセンサー又はサプライヤーのいずれかが事前に当該損失又は損害((a)現在若しくは将来の利益の喪失、又は(b)関連する金融商品が、ムーディーズが付与 する特定の信用格付の対象ではない場合に生じるあらゆる損失若しくは損害を含むがこれに限定されない)の可能性について助言を受けていた場合においても、責任を負いません。 法律が許容する範囲において、ムーディーズ及びその取締役、役職員、従業員、代理人、代表者、ライセンサー及びサプライヤーは、ここに記載する情報又は当該情報の使用若しくは使用 が不可能であることに起因又は関連していかなる者又は法人に生じたいかなる直接的又は補償的損失又は損害に対しても、それらがムーディーズ又はその取締役、役職員、従業員、代理 人、代表者、ライセンサー若しくはサプライヤーのうちいずれかの側の過失によるもの(但し、詐欺、故意による違反行為、又は、疑義を避けるために付言すると法により排除し得ない、その 他の種類の責任を除く)、あるいはそれらの者の支配力の範囲内外における偶発事象によるものである場合を含め、責任を負いません。 ここに記載される情報の一部を構成する格付、財務報告分析、予測及びその他の見解(もしあれば)は意見の表明であり、またそのようなものとしてのみ解釈されるべきものであり、これに よって事実を表明し、又は証券の購入、売却若しくは保有を推奨するものではありません。ここに記載する情報の各利用者は、購入、保有又は売却を検討する各証券について、自ら研究・ 評価しなければなりません。 ムーディーズは、いかなる形式又は方法によっても、これらの格付若しくはその他の意見又は情報の正確性、適時性、完全性、商品性及び特定の目的への適合性について、(明示的、黙 示的を問わず)いかなる保証も行っていません。 MJKK は、ムーディーズ・グループ・ジャパン合同会社(Moody's Corporation (以下、「MCO」といいます。)の完全子会社である Moody’s Overseas Holdings Inc.の完全子会社)が全額出資する信用 格付会社です。MSFJ は、MJKK が全額出資する信用格付会社です。MSFJ は、NRSRO(「全米で認知された統計的格付機関」として、米国SEC(米国証券取引監視委員会)の登録を受けた格 付機関)ではありません。したがって、MSFJ の信用格付は、NRSRO ではない者により付与された「NRSRO ではない信用格付」であり、それゆえ、MSFJ の信用格付の対象となる債務は、米国 法の下で一定の取扱を受けるための要件を満たしていません。MJKK 及び MSFJ は日本の金融庁に登録された信用格付業者であり、登録番号はそれぞれ金融庁長官(格付)第 2 号及び第 3 号です。 MJKK 又は MSFJ(のうち該当する方)は、同社が格付を行っている負債証券(社債、地方債、債券、手形及び CP を含みます)及び優先株式の発行者の大部分が、MJKK 又は MSFJ(のうち該 当する方)が行う評価・格付サービスに対して、格付の付与に先立ち、20 万円から約 3 億 5,000 万円の手数料を MJKK 又は MSFJ(のうち該当する方)に支払うことに同意していることを、ここ に開示します。また、MCO、MJKK 及び MSFJ は、MJKK 及び MSFJ の格付及び格付過程の独立性を確保するための方針と手続を整備しています。MCO の取締役と格付対象会社との間、及 び、 MJKK 又は MSFJ(のうち該当する方)から格付を付与され、かつ MCO の株式の 5%以上を保有していることを SEC に公式に報告している会社間に存在し得る特定の利害関係に関する 情報は、ムーディーズのウェブサイト www.moodys.com 上に"Shareholder Relations-Corporate Governance-Director and Shareholder Affiliation Policy"という表題で毎年、掲載されます。 オーストラリアについてのみ:この文書のオーストラリアでの発行は、ムーディーズの関連会社である Moody's Investors Service Pty Limited ABN 61 003 399 657(オーストラリア金融サービス認可 番号 336969)によって行われます。この文書は 2001 年会社法 761G 条の定める意味における「ホールセール顧客」のみへの提供を意図したものです。オーストラリア国内からこの文書に継 続的にアクセスした場合、貴殿は、ムーディーズに対して、貴殿が「ホールセール顧客」であるか又は「ホールセール顧客」の代表者としてこの文書にアクセスしていること、及び、貴殿又は 貴殿が代表する法人が、直接又は間接に、この文書又はその内容を 2001 年会社法 761G 条の定める意味における「リテール顧客」に配布しないことを表明したことになります。ムーディー ズの信用格付は、発行者の債務の信用力についての意見であり、発行者のエクイティ証券又はリテール顧客が取得可能なその他の形式の証券について意見を述べるものではありませ ん。リテール顧客が、ムーディーズの信用格付に基づいて投資判断をするのは危険です。もし、疑問がある場合には、ご自身のフィナンシャル・アドバイザーその他の専門家に相談すること を推奨します。 44 SEPTEMBER 18, 2014 格付手法:民間運営の有料道路